(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 1/02 20060101AFI20231130BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231130BHJP
F16H 37/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C1/02 104
B05C11/10
F16H37/02 C
(21)【出願番号】P 2020060148
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】丸崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智史
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-40615(JP,A)
【文献】実開昭50-45356(JP,U)
【文献】実開昭61-30039(JP,U)
【文献】特開昭61-181199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/02
B05C 11/10
F16H 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークの外周面に塗布剤を塗布する塗布装置であって、
前記複数のワークのそれぞれに対応して設けられ、前記ワークの外周面の少なくとも一部に当接することで前記塗布剤を当該ワークに塗布する複数の塗布ローラと、
前記複数のワークをそれぞれ軸線周りに回転可能に保持するワーク保持部と、
回転動力を前記塗布ローラの少なくとも一つに付与する駆動部と、
前記回転動力を前記複数の塗布ローラのそれぞれに同期させて伝達すると共に前記複数の塗布ローラの回転を前記複数のワークのそれぞれに同期させて伝達する伝達機構と、を有し、
前記塗布ローラの回転により、前記ワークの外周面に対して円周方向全周に亘って前記塗布剤を塗布するようにしたことを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外周面に接着剤やグリスなどの塗布剤を塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管の内面雌ネジ部にグリスを塗布する塗布装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の塗布装置では、グリスを含んだ塗布ローラ(ブラシローラに相当)を回転駆動し、ターニングローラ上に回転可能に保持された鋼管の内面雌ネジ部に塗布ローラを押し付けることによりグリスを塗布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、チューブなどを他の部材の内部に圧入する場合は、圧入前にチューブの外周面に接着剤を塗布し、圧入時にチューブと他の部材とを接着している。上述の接着剤の塗布にあたり特許文献1の塗布装置を適用する場合、チューブを軸線周りに回転可能に支持しておき、チューブの外周面に回転駆動される塗布ローラを押し付けて、摩擦力によりチューブを回転させながらグリスを塗布することが想定される。
【0005】
しかしながら、特許文献1の塗布装置は、塗布ローラの駆動回転を摩擦力でチューブに伝達し、当該摩擦力でチューブを回転させることで、チューブの外周面の円周方向に接着剤を塗布するものとされている。そのため、チューブと塗布ローラの摩擦力が不足した場合に、チューブの外周面に均等に接着剤を塗布できない問題がある。特に、塗布面積が狭い場合は、塗布ローラの幅も小さく形成されているため、摩擦力が小さくなることが想定され、チューブの回転不足による塗布ムラがより一層発生しやすくなる問題がある。
【0006】
また、特許文献1の塗布装置は、塗布剤を塗布するワークがターニングローラ上に載置されているだけであるため、例えば、一端側がL字状に曲げられたワークの他端側に接着剤等を塗布する場合、重心位置が回転軸線上からずれて、ワークがターニングローラから浮き上がりやすくなる。そのため、塗布ローラとワークとの接触位置がばらついて、塗布位置がずれる問題が発生しやすくなる。
【0007】
また、特許文献1の装置は、単数のワークにグリスを塗布するものであり、複数のワークに適用する場合、駆動源を複数設ける必要があるため、コストが高くなる問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、複数のワークの外周面のそれぞれに接着剤やグリスなどの塗布剤を均一に塗布することが可能な塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の塗布装置は、複数のワークの外周面に塗布剤を塗布する塗布装置であって、前記複数のワークのそれぞれに対応して設けられ、前記ワークの外周面の少なくとも一部に当接することで前記塗布剤を当該ワークに塗布する複数の塗布ローラと、前記複数のワークをそれぞれ軸線周りに回転可能に保持するワーク保持部と、回転動力を前記塗布ローラの少なくとも一つに付与する駆動部と、前記回転動力を前記複数の塗布ローラのそれぞれに同期させて伝達すると共に前記複数の塗布ローラの回転を前記複数のワークのそれぞれに同期させて伝達する伝達機構と、を有し、前記塗布ローラの回転により、前記ワークの外周面に対して円周方向全周に亘って前記塗布剤を塗布するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の塗布装置は、駆動部による回転動力を、複数の塗布ローラに同期させて伝達すると共に前記複数の塗布ローラの回転を前記複数のワークのそれぞれに伝達する伝達機構を有しているので、前記塗布ローラの回転により、前記ワークの外周面に対して円周方向全周に亘って塗布剤を塗布することができる。したがって、複数のワークの外周面に対して円周方向全周に亘って均一に塗布剤を塗布することができ、塗布量のばらつきを抑制できる。これにより、ワークの製品品質を向上することができる。ここで、ワークは、例えば、配管等に圧入されるチューブ等の円筒形状の部材を用いると良い。また、塗布剤は、例えば、接着剤やグリス等を用いると良い。
【0011】
(2)上述した課題を解決すべく提供される本発明の塗布装置は、前記伝達機構が、前記複数の塗布ローラのそれぞれと同軸上に設けられ、前記複数の塗布ローラと共に回転する複数の第一ギアと、前記複数の第一ギアのそれぞれと同軸上に設けられ、前記複数の第一ギアと共に回転する複数の第二ギアと、前記複数の第一ギアのそれぞれを同期させて回転させる同期機構と、を有し、前記ワーク保持部が、前記第二ギアのそれぞれと噛合すると共に前記複数のワークのそれぞれと一体に回転する複数の第三ギアを有し、前記複数の第一ギアの少なくとも一つに前記駆動部の回転動力を伝達することにより、前記複数の第一ギア、前記複数の第二ギア及び前記複数の第三ギアをそれぞれ同期させて回転させるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の塗布装置は、伝達機構が、複数の塗布ローラと共に回転する複数の第一ギアと、前記複数の第一ギアと共に回転する複数の第二ギアとを有し、前記複数の第一ギアが、同期機構によってそれぞれ同期回転されるものである。また、ワーク保持部が、前記複数の第二ギアとそれぞれ噛合してワークと一体に回転する複数の第三ギアを有しており、前記第一ギアの少なくとも一つに駆動部の回転動力を伝達することで、前記第一ギア、前記第二ギア及び前記第三ギアのそれぞれが同期回転されるものとされている。したがって、少なくとも一つの第一ギアが1回転することで、前記複数の第三ギアが前記複数のワークのそれぞれと一体に1回転する。これにより、複数のワークのそれぞれが、同期して回転するので、駆動源や回転軸の個数を低減できる。そのため、塗布装置のコスト低減と、塗布装置のコンパクト化が期待できる。
【0013】
また、上述した構成によれば、前記ワークが、前記第三ギアによって駆動されるため、ワークが塗布ローラに対して空転することを抑制できる。したがって、複数のワークの外周面に対して円周方向全周に亘って均一に塗布剤を塗布することができ、塗布量のばらつきを抑制できる。これにより、ワークの製品品質を向上することができる。
【0014】
また、上述した構成において、第一ギアと第三ギアの歯数を一致させておくことにより、第一ギアと第三ギアとが1対1のギア比で回転するようにすると良い。上述のように第一ギアと第三ギアとを1対1で回転させるようにすることにより、例えば複数のワークのそれぞれの径が異なる場合であっても、それぞれのワークを同一の回転数で回転させることができる。これにより、塗布装置の汎用性を高めることができる。
【0015】
(3)上述した課題を解決すべく提供される本発明の塗布装置は、少なくとも前記ワーク保持部を支持する支持部を有し、前記ワーク保持部が、前記第三ギアの軸心と同軸上であって、当該第三ギアと間隔を空けて設けられた軸受部を有し、前記支持部に対して、前記第三ギアと前記軸受部との少なくとも二箇所で支持されていることを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成によれば、ワーク保持部が支持部に対して二箇所で支持されるので、例えば、L字状のワークなどのように重心位置が回転軸上に無い場合であっても、ワークを安定に回転させることができる。これにより、ワークの外周面の円周方向全周に亘って均一に塗布することができる。
【0017】
(4)上述した課題を解決すべく提供される本発明の塗布装置は、前記ワーク保持部が、前記支持部に対して着脱可能であることを特徴とするものである。
【0018】
かかる構成によれば、ワークを交換する際に、支持部からワーク保持部を取り外しできるので、作業性が向上する。また、ワークの径に応じて、複数のワーク保持部を用意しておくことにより、ワークの品種替えを容易に行うことができる。また、複数のワーク保持部を用意しておくことにより、塗布装置で塗布作業を行っている間に、他のワークをワーク保持部にセットすることができるので、作業効率の向上が期待できる。
【0019】
(5)上述した課題を解決すべく提供される本発明の塗布装置は、前記支持部が、前記軸受部の支持位置にマグネットを有し、前記軸受部が、前記マグネットにより保持されることを特徴とするものである。
【0020】
かかる構成によれば、ワーク保持部における軸受部がマグネットにより支持部に保持されるので、軸受部を安定に支持部に保持させることができる。また、ワーク保持部を支持部に対して容易に着脱することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のワークの外周面のそれぞれに接着剤やグリスなどの塗布剤を均一に塗布することが可能な塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態を示す塗布装置の全体斜視図である。
【
図3】
図1において、ワーク及びワーク保持部を取り外した状態の斜視図である。
【
図5】
図4において、ワーク及びワーク保持部を取り付けた状態のA-A方向断面矢視図である。
【
図6】
図4において、ワーク保持部を取り付けた状態のB-B方向断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の塗布装置10の一実施形態について、
図1~
図6を参照しつつ以下に詳細を説明する。
【0024】
図1及び
図2は、塗布装置10の全体斜視図であり、
図3は、ワーク保持部40を取り外した状態の塗布装置10の斜視図である。また、
図4は、
図3の平面図であり、
図5は、ワーク保持部40を取り付けた状態での
図4のA-A方向断面矢視図である。
図1及び
図2に示すように、塗布装置10は、大きく分けて、塗布ローラ20を支持する本体部11と、ワークWを保持するワーク保持部40と、塗布ローラ20の回転とワークWの回転とを同期させる伝達機構60とで構成されている。本体部11は、テーブル等の載置面上に支持されるベース12と、塗布ローラ20の支持部15を形成する支持枠13a、13b等を有している。
【0025】
図3~
図5に示すように、塗布ローラ20は、本実施形態では3本並列にそれぞれ間隔を空けて設けられている。塗布ローラ20は、円盤状に形成されており、軸21を中心として一体的に回転可能に支持されている。塗布ローラ20は、塗布剤3やワークWに合わせて、各種の形状のものを採用できる。また、塗布ローラ20の材質も樹脂やゴム等の各種の素材を採用できる。軸21は、中間部分がベアリング22に回転可能に支持されている。ベアリング22は、本体部11の中央付近に立てられた支持枠13aに支持されている。したがって、軸21は、支持部15に対して回転可能なものとされている。
【0026】
図5及び
図6に示すように、伝達機構60は、モータ25(駆動部25とも称する)の回転動力をワークWに同期させて伝達するものである。伝達機構60は、軸21に設けられ、塗布ローラ20と一体的に回転する第一ギア23と、軸21に設けられ、塗布ローラ20と一体的に回転する第二ギア24と、ワーク保持部40に設けられ、ワークWと一体的に回転する第三ギア51等を有している。
【0027】
図4及び
図5に示すように、第一ギア23は、ベアリング22の後方側に位置するように軸21上に設けられている。第一ギア23は、軸21を中心として一体的に回転可能とされている。また、軸21には、ベアリング22と第一ギア23との間に、第二ギア24が設けられている。本実施形態では、第二ギア24として歯付プーリが用いられており、第二ギア24は、軸21を中心として、一体的に回転可能とされている。
【0028】
モータ25は、軸21のうちの少なくとも1本(本実施形態では、図示左端)に接続されている。モータ25は、軸21に回転動力を伝達する。したがって、軸21を回転させることにより、塗布ローラ20が軸21と一体的に回転する。
【0029】
図5に示すように、塗布ローラ20の下方には、塗布剤3を溜めるタンク16が形成されている。塗布ローラ20は、回転に伴い、外周の一部がタンク16内を通過することが可能であり、タンク16内を通過する際に、外周の円周方向全周に亘って塗布剤3が付着される。ここで、塗布剤3は、例えば、接着剤やグリス等が用途に応じて使用される。また、塗布ローラ20は、ワークWの外周面と当接して、ワークWの外周面に塗布剤3を塗布することが可能なものとされている。
【0030】
図6は、
図4において、ワーク保持部40を取り付けた状態のB-B方向矢視断面図である。図示のように、複数の第二ギア24には、同期機構としてのタイミングベルト26(以下、同期機構26とも称する)が掛け渡され、テンションローラ27によって、張力が付与されている。したがって、モータ25を駆動することにより、複数の第二ギア24が同期して回転する。これにより、複数の塗布ローラ20のそれぞれが、複数の第二ギア24と同期して回転する。なお、本実施形態では、第二ギア24として歯付プーリを用い、タイミングベルト26によって、複数の第二ギア24を同期させるものとしたが、ギア等を介して複数の第二ギア24を同期回転させても良い。
【0031】
次に、ワークWを回転可能に保持するワーク保持部40について、以下に詳細を説明する。なお、本実施形態では、円筒形状のチューブ等のワークWa,Wbと円筒形状で中間部がL字状に曲げられたワークWcの3本のワークWに同時に塗布剤3を塗布する場合を例として説明する。
【0032】
図5に示すように、ワーク保持部40は、ワークWのそれぞれを、軸線周りに回転可能に保持するものである。ワーク保持部40は、ワークWの内部に挿入される挿入部41と、挿入部41の後端側に接続された軸50とを有している。また、ワーク保持部40は、軸50を中心として一体的に回転可能であり、伝達機構60の一部を構成する第三ギア51と、軸50を回転可能に支持するベアリング52(軸受部52とも称する)と、軸50の後端側に接続されたハンドル53等を有している。
【0033】
挿入部41は、円柱状に形成されており、先端側の外径がワークWの内径よりもやや小径に形成された小径部42を有している。小径部42は、ワークWに挿入可能とされている。また、小径部42は、外周面に開口43を有している。開口43は、逆L字形状に形成され、開口43の後方に設けられた貫通孔45と内部で連通している。また、開口43と貫通孔45の内部には、クランク状に曲げて形成されたレバー44が収容されている。
【0034】
レバー44は、開口43内に支持された回転軸48周りに回転可能に支持されており、レバー44が、回転することで、レバー44の先端が小径部42の外周面から突没可能とされている。また、貫通孔45にレバー44の後端側が挿入されている。レバー44の後端側には、ボタン46が設けられ、ボタン46を押下げすることにより、レバー44が回転して先端側が開口43の内部に没入する。
【0035】
また、貫通孔45のボタン46と反対側(図示上方側)には、バネ等の弾性部材47が挿入されており、弾性部材47が、レバー44を開口43の突出方向へと付勢している。すなわち、弾性部材47は、ボタン46が挿入部41の外周面から突出する方向にレバー44の後端側を押圧している。したがって、ボタン46を押圧しない(操作しない)状態において、レバー44は開口43から突出して、小径部42を拡径するものとされている。これにより、小径部42に挿入されたワークWの内径部分にレバー44の先端が当接し、ワークWが小径部42から抜け落ちることを抑制できる。
【0036】
また、ボタン46を弾性部材47の付勢力に抗して押下げることにより、レバー44が回転軸48を中心として回転し、小径部42の拡径状態が解除される。これにより、ワークWの内周面と小径部42との間に隙間が形成され、ワークWを小径部42から容易に抜去することができる。
【0037】
第三ギア51は、挿入部41とベアリング52との間に設けられており、軸50を中心として軸50と一体的に回転可能とされている。ワーク保持部40を本体部11に取り付けた状態において、第三ギア51は、第一ギア23と噛合することが可能である。したがって、伝達機構60は、第一ギア23の回転動力を第三ギア51に伝達することができる。これにより、複数の第一ギア23の回転と複数の第三ギア51の回転とを同期させることができるので、第三ギア51と一体的に回転するワークWの回転を同期させることができる。
【0038】
ベアリング52は、磁力と引き合う素材で形成されており、本体部11の後方側に立てられた支持枠13bの支持部15(支持位置15とも称する)に支持されている。ここで、支持部15は、例えば、磁力を有するマグネットで形成されている。したがって、ベアリング52は支持部15に着脱可能に支持される。これにより、ワーク保持部40が、本体部11に対して着脱可能とされている。
【0039】
また、ワーク保持部40は、第三ギア51が第一ギア23に支持され、ベアリング52が支持部15に支持される。すなわち、ワーク保持部40が、第三ギア51とベアリング52との二箇所で、間隔を空けた状態で支持される。これにより、ワーク保持部40が浮き上がることが抑制され、安定にワークWを保持することができるので、ワークWと塗布ローラ20とを均一に接触させることができる。また、複数のワークWのそれぞれの回転が、複数の塗布ローラ20のそれぞれの回転と同期して回転することに伴い、複数のワークWの外周面の円周方向全周に亘って塗布剤3が塗布される。以上が、本発明の塗布装置10の一実施形態の構成である。
【0040】
次に、塗布装置10を用いて、ワークWa,Wb,Wcのそれぞれに塗布剤3を塗布する方法について、以下に説明する。なお、本実施形態では、ワークWaの外径がワークWb及びワークWcよりも大径であり、ワークWbとワークWcの外径が同等である場合について例示する。
【0041】
図1及び
図2に示すように、まずワーク保持部40のそれぞれにワークWa,Wb,Wcが保持される。このとき、
図5に示すように、ボタン46が押下げられた状態で、それぞれのワークWを小径部42に挿入する。続いて、ボタン46を解除することにより、挿入部41にワークWが挿入されて保持される。ワーク保持部40にそれぞれのワークWが保持された状態で、ワーク保持部40を本体部11に保持させる。このとき、ベアリング52を支持部15に位置決めして支持させることにより、第三ギア51が第一ギア23に噛合する。
【0042】
ワーク保持部40が、本体部11に保持されると、モータ25を駆動する。これにより、モータ25の回転動力が、軸21の一つに伝達され、伝達機構60を介して前記回転動力が、複数の第二ギア24のそれぞれに同期して伝達される。複数の第二ギア24のそれぞれが同期して回転することにより、複数の第一ギア23のそれぞれが同期して回転する。
【0043】
ここで、
図6に示すように、ワークWaと対応する第一ギア23は、ワークWb及びワークWbと対応する第一ギア23に対して大径とされているが、噛合する第一ギア23と第三ギア51の歯数が同じである。第一ギア23と噛合する第三ギア51も第一ギア23と同径に形成され、それぞれの第三ギア51の歯数も第一ギア23と同一のものとされている。したがって、第一ギア23の1回転により、第三ギア51のそれぞれが1回転する。これにより、それぞれ径が異なる複数のワークWであっても、それぞれのワークWを同一回転で回転させることができる。そのため、塗布ローラ20により、複数のそれぞれのワークWに対して、外周面の円周方向全周に亘って塗布剤3を均一に塗布することができる。なお、それぞれのワークWを同一回転させる場合だけではなく、例えば、2:1や1:3等、それぞれのワークWを異なる回転比で回転させても良い。かかる場合は、第一ギア23と第三ギア51との歯数を回転比に合わせて変更すれば良い。
【0044】
以上が、本発明の塗布装置10の実施形態であるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内で適宜の変更を行うことができる。
【0045】
本実施形態では、円筒形状のワークWに塗布剤3を塗布するものとしたが、ワークWは、これに限定されず、各種の形状のワークを採用することができる。例えば、ワークWが円柱状のものであっても良い。かかる場合は、ワーク保持部40に円柱状のワークWをチャックして保持するものや、ワーク保持部40にワークWを挿入して保持するものとすれば良い。
【0046】
また、ワークWの外径は、各種のサイズのものとすることができる。かかる場合は、第一ギア23や第三ギア51の外径を変更すれば良い。なお、噛合する第一ギア23と第三ギア51の歯数を同一としておけば、それぞれのワークWを同一回転で回転させることができる。また、ワークWの数量も2個以上の各種の数量に変更することができる。また、本実施形態では、複数のワークWを支持部15に保持させるものであったが、塗布装置10に単数のワークWを保持させて使用しても良い。塗布ローラ20の形状も、ワークWへの塗布形態に応じて、各種の形状のものとすることができる。塗布ローラ20の材質も樹脂やゴム等の各種の素材を用いることができる。
【0047】
本実施形態では、第一ギア23と第三ギア51の歯数を同一として、複数のそれぞれのワークWが同一回転で回転するようにしたが、歯数をそれぞれ異なるものとして、異なった比率で複数のワークWのそれぞれが回転するようにすることもできる。かかる場合は、例えば、1つのワークWは、他のワークWよりも塗布剤3の塗布量を多くしたい場合などに利用することができる。
【0048】
本実施形態では、ワークWの外周面の円周方向全周に亘って塗布剤3を塗布するものであったが、円周方向の一部に塗布するものであっても良い。かかる場合は、ワークWの円周方向の所定位置にのみ塗布剤3を塗布するようにすることもできる。
【0049】
本実施形態では、伝達機構60が、第一ギア23と、第二ギア24と、第三ギア51とを有し、複数の塗布ローラ20のそれぞれと、複数のワークWのそれぞれとを同期させて回転させることができるものであれば各種の機構を採用することができる。
【0050】
本実施形態では、同期機構26として、タイミングベルト26と第二ギア24としてのプーリとを用いたが、タイミングベルト26やプーリに代えて、第二ギア24同士が直接同期するものであっても良い。また、タイミングベルト26でなくとも、空転させることなく第二ギア24を回転させることが可能であれば各種の機構を採用することができる。
【0051】
本実施形態では、ワーク保持部40が、第三ギア51とベアリング52との二箇所で支持されるものであったが、ワーク保持部40を安定に支持することができるものであれば単数で支持するものであっても良い。また、ワーク保持部40が、第三ギア51やベアリング52以外のもので支持されるものであっても良い。
【0052】
本実施形態では、ワーク保持部40が、支持部15に対して着脱可能であるものとしたが、ワーク保持部40が、支持部15に固定されているものであっても良い。また、支持部15が、ベアリング52の支持位置にマグネットを有するものとし、ベアリング52がマグネットにより保持されるものとしたが、マグネット以外の保持手段で保持するものとしても良い。例えば、ベアリング52を押える押え手段を設けるものや、ベアリング52を嵌め込む溝を支持部15に形成したものであっても良い。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の塗布装置は、円柱状の部材や円筒状の部材の外周面に塗布剤を塗布する際に利用することができる。また、本発明の塗布装置は、自動車等の車両における配管等の各種部品へのボンドやグリスなどの塗布に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
3 :塗布剤
10 :塗布装置
11 :本体部
15 :支持部(支持位置)
16 :タンク
20 :塗布ローラ
21 :軸
23 :第一ギア
24 :第二ギア
25 :モータ
26 :タイミングベルト
40 :ワーク保持部
41 :挿入部
50 :軸
51 :第三ギア
52 :ベアリング(軸受部)
60 :伝達機構