(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】着色断熱ボードとその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20231130BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20231130BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20231130BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20231130BHJP
E04C 2/20 20060101ALI20231130BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B32B15/20
B32B15/095
E04F13/08 A
E04C2/20 K
E04B1/94 V
(21)【出願番号】P 2020062440
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】596105644
【氏名又は名称】株式会社東北イノアック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 恭浩
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-293894(JP,A)
【文献】特開平11-293893(JP,A)
【文献】特開2001-279843(JP,A)
【文献】特開2019-025774(JP,A)
【文献】特開2006-321882(JP,A)
【文献】特表2019-507210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
E04F 13/00-13/18
E04B 1/62- 1/99
E04C 2/00- 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアヌレート発泡体の両面に面材を有し、前記面材のうち少なくとも一方の面材はアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する着色断熱ボードにおいて、
前記アルミニウム層の厚みは12~80μmであり、
前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面と前記ポリイソシアヌレート発泡体との境界部分に加熱連通層を有し、
前記加熱連通層は、前記着色断熱ボードの加熱によって連通性を生じるものであることを特徴とする着色断熱ボード。
【請求項2】
ポリイソシアヌレート発泡体の両面に面材を有し、前記面材のうち少なくとも一方の面材はアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する着色断熱ボードにおいて、
前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面と前記ポリイソシアヌレート発泡体との境界部分に加熱連通層を有し、
前記加熱連通層は、耐火塗料あるいは熱分解型発泡剤の層からなり、前記耐火塗料の塗布量(乾燥時の耐火塗料層の存在量)は5~25g/m
2
であり、前記熱分解型発泡剤の塗布量(乾燥時の熱分解型発泡剤の存在量)は10~40g/m
2
であり、
前記加熱連通層は、前記着色断熱ボードの加熱によって連通性を生じるものであることを特徴とする着色断熱ボード。
【請求項3】
ポリイソシアヌレート発泡体の両面に面材を有し、前記面材のうち少なくとも一方の面材はアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する着色断熱ボードにおいて、
前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面と前記ポリイソシアヌレート発泡体との境界部分に加熱連通層を有し、
前記加熱連通層は、熱分解型発泡剤の層からなり、前記熱分解型発泡剤は、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p′-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドから選択され、
前記加熱連通層は、前記着色断熱ボードの加熱によって連通性を生じるものであることを特徴とする着色断熱ボード。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の着色断熱ボードの製造方法であって、
アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材と他の面材との間に、ポリイソシアヌレート発泡体を有する着色断熱ボードの製造方法において、
前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に耐火塗料または熱分解型発泡剤を塗布して、前記耐火塗料または前記熱分解型発泡剤の層からなる加熱連通層を形成し、
前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面の前記加熱連通層と、前記他のアルミニウム層の裏面との間でポリイソシアヌレート組成物を発泡させることにより、前記加熱連通層と接する前記ポリイソシアヌレート発泡体を形成することを特徴とする着色断熱ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が着色された着色断熱ボードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装などに用いられる断熱ボードとして、ポリイソシアヌレート発泡体の少なくとも一方の面にアルミニウムの面材を貼り合わせたものがある。ポリイソシアヌレート発泡体は、断熱性及び難燃性を有し、かつ強度を有することから、建材に利用されている。
【0003】
ポリイソシアヌレート発泡体にアルミニウムの面材を貼り合わせた断熱ボードは、アルミニウムの面材の表面がアルミニウムの金属色であってカラーバリエーションが無いことから、使用場所によっては色彩的に適さないことがある。そのため、近年では、表面が種々の色の断熱ボードが望まれるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3948014号公報
【文献】特許第4541970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の断熱ボードにおいてアルミニウムの表面に着色塗膜を設けたものは、アルミニウムが有する遮熱効果が着色塗膜によって低くなり、発熱性試験であるコーンカロリーメータ試験時に、着色断熱ボードに蓄熱され、総発熱量が国土交通省の定める不燃材料認定における準不燃性能の規定を越える(準不燃性能に合格しない)問題がある。また、コーンカロリーメータ試験時に、ポリイソシアヌレート発泡体の熱分解ガスが発生し、その発生した熱分解ガスが、ポリイソシアヌレート発泡体と着色塗膜を設けたアルミニウム層との界面に滞留し、着色塗膜を設けたアルミニウム層が滞留ガスで外側へ膨らんで試験装置の点火プラグに接触し、判定が不能になって準不燃性能に合格しなくなる問題がある。
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、表面が着色され、かつ準不燃性能以上の防火材料である着色断熱ボードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、ポリイソシアヌレート発泡体の両面に面材を有し、前記面材のうち少なくとも一方の面材はアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する着色断熱ボードにおいて、前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面と前記ポリイソシアヌレート発泡体との境界部分に加熱連通層を有し、前記加熱連通層は、前記着色断熱ボードの加熱によって連通性を生じるものであることを特徴とする。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記加熱連通層は、耐火塗料あるいは熱分解型発泡剤の層からなることを特徴とする。
【0009】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、前記ポリイソシアヌレート発泡体の密度が25~45kg/m3であることを特徴とする。
【0010】
第4の態様は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材と他の面材との間に、ポリイソシアヌレート発泡体を有する着色断熱ボードの製造方法において、前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に耐火塗料または熱分解型発泡剤を塗布して、前記耐火塗料または前記熱分解型発泡剤の層からなる加熱連通層を形成し、前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面の前記加熱連通層と、前記他のアルミニウム層の裏面との間でポリイソシアヌレート組成物を発泡させることにより、前記加熱連通層と接する前記ポリイソシアヌレート発泡体を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の着色断熱ボードは、通常時の非加熱時(非燃焼時)においては、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面とポリイソシアヌレート発泡体との境界部分に設けられている加熱連通層が非連通性であり、ポリイソシアヌレート発泡体の断熱性を損なわない。
【0012】
一方、本発明の着色断熱ボードが加熱されると、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面とポリイソシアヌレート発泡体との境界部分に設けられている加熱連通層が、連通性を生じるようになる。そして、着色断熱ボードの加熱時に生じるポリイソシアヌレート発泡体の熱分解ガスは、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面とポリイソシアヌレート発泡体との境界部分に設けられている加熱連通層を通って、外部へ放出される。その結果、熱分解ガスが、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材とポリイソシアヌレート発泡体との界面に滞留するのを防ぎ、または、蓄熱を低減させ、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が、滞留ガスで外側へ膨らむのを防ぐ、または低減することができる。
【0013】
そのため、本発明の着色断熱ボードは、発熱性試験であるコーンカロリーメータ試験時に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が膨らんで試験装置の点火プラグに接触するおそれがなくなり、準不燃性能以上に合格することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の着色断熱ボードの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の着色断熱ボードにおける加熱時の排気を示す図である。
【
図4】耐火塗料の場合の比較例と実施例の構成と物性及び発熱性試験の結果等の測定結果を示す表である。
【
図5】炭酸水素ナトリウムの場合の比較例と実施例の構成と物性及び発熱性試験等の測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す本発明の一実施形態に係る着色断熱ボード10は、ポリイソシアヌレート発泡体11の両面に面材23、31を有し、少なくとも一方の面材23は、アルミニウム層21の表面に着色塗膜層22を有するものからなる。
【0016】
ポリイソシアヌレート発泡体11は、ポリイソシアヌレート組成物(ポリイソシアヌレート発泡原料)を反応、発泡させて得られる。ポリイソシアヌレート発泡体11は、独立気泡率(独泡率)が75%以上、より好ましくは80~90%である。本発明における独立気泡率(独泡率)は、ASTM D 2856に準じて測定される値である。
【0017】
ポリイソシアヌレート発泡体11の独立気泡率が高いほど断熱性が高くなる反面、加熱時にポリイソシアヌレート発泡体11が膨らみ易くなって発熱性試験で不利になる。一方、ポリイソシアヌレート発泡体11の独立気泡率が低すぎる場合、例えば、ポリイソシアヌレート発泡体11が殆ど連通気泡で構成されている場合には、断熱性が低下し、また、ポリイソシアヌレート発泡体11が酸素を取り込み燃焼しやすく、亀裂あるいは穴を生じ易くなったり、総発熱量の規定を超過しやすくなり、発熱性試験で不利になる。
【0018】
ポリイソシアヌレート発泡体11の密度(JIS K7222:2005)は、25~45kg/m3が好ましい。密度が低すぎると強度不足になり、逆に密度が高すぎると天井材や壁材としての用途としては重くなり過ぎ、また施工時にも軽量のものが好まれ、壁構造材としての観点から好ましくない。
また、ポリイソシアヌレート発泡体11の厚みは適宜設定されるが、例として10~200mmを挙げる。
【0019】
ポリイソシアヌレート組成物は、ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、ポリイソシアネート、及び適宜配合される助剤を含む。
ポリオールは、ポリイソシアヌレート発泡体用として公知のものを使用することができる。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。
【0020】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0021】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0022】
ポリオールの量は、ポリイソシアヌレート組成物100重量%中に1~20重量%が好ましい。
【0023】
発泡剤は、化学発泡剤である水、あるいは物理発泡剤であるペンタンなどの炭化水素、ハイドロフルオロオレフィンを、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤の量は適宜とされるが、前述の通りポリイソシアヌレート発泡体11の密度(JIS K7222:2005)が好ましい25~45kg/m3になるように添加する。
【0024】
触媒は、ポリイソシアヌレート発泡体の製造に使用される三量化触媒あるいは三量化触媒とウレタン化触媒を併用することができる。
三量化触媒としては、1)酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム等の金属酸化物類;2)メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、プロポキシナトリウム、ブトキシナトリウム等のアルコキシド類;3)酢酸カリウム、2-エチルヘキサンカリウム、オクチル酸カリウム、カプリル酸カリウム、シュウ酸鉄等の有機金属塩類;4)2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、N,N′,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類;5)エチレンイミンの誘導体;6)アルカリ金属、アルミニウム、遷移金属類のアセチルアセトンのキレート類、4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独、又は2種以上を混合して使用することができ、なかでも、3)有機金属塩類や6)4級アンモニウム塩を使用することがより好ましい。好適には、酢酸カリウムとオクチル酸カリウムとを組み合わせたものが使用できる。
【0025】
ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン等のアミン触媒、スタナスオクトエート等のスズ系触媒、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。
【0026】
混合触媒の好ましい量は、前記ポリイソシアヌレート組成物100重量%中に0.8~7重量%が好ましい。
【0027】
整泡剤は、ポリイソシアヌレート発泡体用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。整泡剤の量は、前記ポリイソシアヌレート組成物100重量%中に、前記整泡剤の量が0.2~3.0重量%であるのが好ましい。整泡剤の量を前記範囲にすることにより、ポリイソシアヌレート発泡体の独泡率を75~90%にすることができる。
【0028】
ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートが用いられ、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)等を挙げることができる。ポリイソシアネートは、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリイソシアネートの量は、イソシアネートインデックスが300~600となるようにするのが好ましく、より好ましくは350~500である。イソシアネートインデックスが300未満の場合は燃えやすく熱収縮しやすくなり、それに対して600より大の場合にはポリイソシアヌレート発泡体がもろくなり、圧縮強度や曲げ物性などが低下し構造体として好ましくない。イソシアネートインデックスの定義は、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[ポリイソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0030】
適宜配合される助剤としては、難燃剤や着色剤等を挙げることができる。難燃剤としては、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリマー、リン酸エステルやハロゲン化リン酸エステル化合物、或いはメラミン樹脂やウレア樹脂などの有機系難燃剤、酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤等を挙げることができる。難燃剤の量は、前記ポリイソシアヌレート組成物100重量%中に1~15重量%が好ましく、より好ましくは2~13重量%である。
着色剤の樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができ、顔料、染料、カーボン等も使用できる。
【0031】
ポリイソシアヌレート組成物は、公知の発泡装置で混合されることにより、ポリオールとポリイソシアネートが反応して発泡し、ポリイソシアヌレート発泡体を形成する。
【0032】
アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23は、着色断熱ボード10の意匠面(表面)を構成する。
アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23のアルミニウム層21は、厚みが12~150μmのアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム層21の厚みが薄すぎると、アルミニウム層にピンホールが存在するようになって、コーンカロリー試験時に準不燃性能に合格し難くなり、逆に厚すぎると着色断熱ボード10が重くなり、かつコストアップになる。
【0033】
着色塗膜層22は、着色された樹脂の塗膜からなる。着色塗膜層22の形成は、樹脂を溶媒に溶かして着色剤を分散させた樹脂塗料をアルミニウム層21の表面に所定厚みで塗布し、乾燥させることにより形成することができる。着色塗膜層22を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。着色塗膜層22の目付量(塗布量)は1.5~12.0g/m2が好ましい。着色塗膜層22の目付量が少ない場合は均一に塗膜層が形成できなかったり、着色が不十分になったりする。着色の色は、白色、黄色、水色、アイボリー等、着色断熱ボード10の設置場所等に応じて適宜決定される。なお、着色塗膜層22の塗装方法は、グラビア塗装、スプレー、ロールコーター、コンマコーター等を挙げることができる。
【0034】
また、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23は、ポリイソシアヌレート発泡体11の発泡時にポリイソシアヌレート発泡体11と接着一体化するが、その接着力を高めるため、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面に、接着用樹脂を塗布しておくのが好ましい。接着用樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0035】
アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23とは反対側となる他の面材31は、着色断熱ボード10の裏面を構成する。他の面材31は、クラフト紙面材、アルミクラフト紙面材、炭酸カルシウム紙面材、水酸化アルミニウム紙面材、金属箔、アルミニウム箔(アルミニウム層)などから選択される。他の面材31は、厚みが12~150μmアルミニウム箔が好ましい。他の面材31は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23と同様に、ポリイソシアヌレート発泡体11の発泡時にポリイソシアヌレート発泡体11と接着一体化するが、その接着力を高めるため、接着用樹脂を塗布しておくのが好ましい。接着用樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0036】
ポリイソシアヌレート発泡体11と、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23との界面には、加熱連通層25が形成されている。加熱連通層25は、着色断熱ボード10が通常時の非加熱時(非燃焼時)には非通気性を有する一方、加熱によって連通性を生じるものである。なお、加熱による連通性発揮については後述する。
加熱連通層25は、耐火塗料または熱分解型発泡剤の層からなる。
【0037】
耐火塗料としては、加熱により発泡膨張して難燃性を発揮するイントメッセント系難燃剤を含むものが好ましい。イントメッセント系難燃剤とは、大きく3つの効果、1)リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ホウ酸リンアンモニウムなどの反応性化合物、2)デキストリンなどの炭化水素化合物、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールなどの泡を形成する骨格となるもの、3)アンモニウム塩、ジシアンジアミド、メラミンなどアミド化合物などの発泡剤となるもの、をもつ材料から構成された難燃剤である。
【0038】
耐火塗料の市販品としては、エスケー化研株式会社製のSKタイカコート、関西ペイント株式会社製の発泡性耐火被覆ナリファイアシステムに用いられる発泡性耐火塗料であるベースコートS605、菊水化学工業株式会社製の水系発泡性耐火塗料であるウェスタ、株式会社エフテック社製のJERICO-FPなどがある。なお、株式会社エフテック社製のJERICO-FPの大まかな組成は、ポリリン酸アンモニウム:20~25%、アクリル樹脂:20~30%、水:20~30%、水酸化アルミニウム:3~8%、多価アルコール:3~8%、その他:少量となっている。
【0039】
熱分解型発泡剤としては、加熱(150~300℃)により分解してガスを放出するものであり、例えば、炭酸水素ナトリウム(分解温度 約270℃)、アゾジカルボンアミド(分解温度 約200℃)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(分解温度 約200℃)、p,p′-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(分解温度 約160℃)等が挙げられる。
【0040】
耐火塗料あるいは熱分解型発泡剤からなる加熱連通層25の形成は、後述する着色断熱ボード10の製造時に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面に耐火塗料あるいは熱分解型発泡剤を塗布しておくことにより形成することができる。耐火塗料の塗布量(乾燥時の耐火塗料層の存在量)は5~25g/m2が好ましい。一方、熱分解型発泡剤の塗布量(乾燥時の熱分解型発泡剤層の存在量)は10~40g/m2が好ましい。
【0041】
着色断熱ボード10における加熱による連通性の発揮について説明する。
加熱連通層25が耐火塗料からなる場合、発熱性試験等の際の加熱によってポリイソシアヌレート発泡体11と、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23との界面で、加熱連通層(耐火塗料の層)25が僅かに膨張し、該加熱連通層25内に連続した隙間を生じ、それにより加熱連通層25に連通性を生じる。
【0042】
連通性の加熱連通層25の作用について、
図2を用いて説明する。着色断熱ボード10の加熱により、ポリイソシアヌレート発泡体11が熱分解して発生した熱分解ガスは、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23とポリイソシアヌレート発泡体11との界面に位置する連通性の加熱連通層25を通って、着色断熱ボード10の外部へ排気され、前記界面に滞留するのが防がれる。そのため、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23が、前記界面に滞留する熱分解ガスで膨らむのを防ぐ、あるいは低減することができる。
【0043】
また、加熱連通層25を構成する耐火塗料が膨張することにより、加熱連通層25自体の断熱性が向上し、外部からの熱をポリイソシアヌレート発泡体11へ伝わり難くでき、ポリイソシアヌレート発泡体11の熱分解ガスの発生を抑えることができる。これによっても、蓄熱を減らすと共に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23が前記界面で滞留する熱分解ガスによって膨らむのを防ぐ、あるいは低減することができる。
【0044】
一方、加熱連通層25が熱分解型発泡剤からなる場合、発熱性試験等の際の加熱によって、ポリイソシアヌレート発泡体11と、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23との界面で、加熱連通層25の熱分解型発泡剤が熱分解されてガスを生じる(炭酸水素ナトリウムを用いる場合、加熱によって水と炭酸ガスになる)。加熱分解型発泡剤が加熱によってガスに分解されることにより、加熱連通層25の内部には連続した隙間(通路)を生じ、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23とポリイソシアヌレート発泡体11との境界における加熱連通層25の部分で、連通性を生じるようになる。
【0045】
耐火塗料の場合に説明したのと同様に、着色断熱ボード10の加熱時にポリイソシアヌレート発泡体11が熱分解して発生した熱分解ガスは、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23とポリイソシアヌレート発泡体11との界面に位置する連通性の加熱連通層25を通って、着色断熱ボード10の外部へ排気され、前記界面に滞留するのが防がれる。そのため、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23が、前記界面に滞留する熱分解ガスで膨らむのを防ぐ、あるいは低減することができる。
【0046】
本発明の着色断熱ボード10は、コーンカロリーメータ試験の準不燃性能以上に合格する。コーンカロリーメータ試験は、輻射電気ヒーターによって50kW/m2をサンプルに照射して加熱し、発熱量等を測定して発熱性を判断する試験であり、ISO 5660-1に規定されている。
コーンカロリーメータ試験における準不燃の判定基準は、サンプル表面に50kW/m2の輻射熱を当ててサンプルの加熱を開始した後、600秒(10分)間において、次の(1)~(4)の全てを満たした場合に合格であり、(1)~(3)の何れか1つでも満たさない場合は不合格、(4)を満たさない場合は判定不能となって準不燃に合格しなくなる。
(1)総発熱量が8MJ/m2以下であること。
(2)防火上有害となるサンプル裏面まで貫通する亀裂・穴が無いこと。
(3)最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を越えないこと。
(4)点火プラグに接触しないこと。
【0047】
一方、不燃の判定基準は、加熱開始後1200秒(20分)間において、上記の(1)~(4)の全てを満たした場合に合格であり、(1)~(3)の何れか1つでも満たさない場合は不合格、(4)を満たさない場合は判定不能となって不燃に合格しなくなる。
【0048】
着色断熱ボード10の製造について説明する。アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に、好ましくは接着用樹脂を塗布し、その接着用樹脂の上に耐火塗料または熱分解型発泡剤を塗布する。耐火塗料の塗布量(乾燥時の耐火塗料層の存在量)は、5~25g/m2とするのが好ましい。一方、熱分解型発泡剤の塗布は、分解型発泡剤が粉末状のため、熱分解型発泡剤にバインダー溶液を混合したものを用いるのが好ましい。バインダー溶液の例として、ポリビニルアルコール(PVA)と水を混合した溶液を挙げる。熱分解型発泡剤の塗布量(乾燥時の熱分解型発泡剤層の存在量)は、10~40g/m2が好ましい。耐火塗料及び熱分解型発泡剤の塗布方法は、スプレー塗布、グラビア塗装、ロールコーター、コンマコーター等を挙げることができる。
なお、耐火塗料または熱分解型発泡剤の塗布は、接着用樹脂と耐火塗料または熱分解型発泡剤を混合したものを塗布してもよい。
【0049】
次に、前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材を、裏面の耐火塗料または熱分解型発泡剤の塗布面が上向きとなるように配置し、耐火塗料または熱分解型発泡剤の塗布面にポリイソシアヌレート組成物を吐出して発泡させ、その発泡途中のポリイソシアヌレート組成物上に、好ましくは予め接着用樹脂を塗布したアルミニウム層(他の面材)を、接着用樹脂が下向きとなるように積層し、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と他方のアルミニウム層(他の面材)との間にポリイソシアヌレート発泡体を形成し、
図1の着色断熱ボード10を得る。
なお、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と、他の面材の裏面とを、上下さかさまにして、他の面材の裏面上にポリイソシアヌレート組成物を吐出して発泡させ、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と他の面材との間にポリイソシアヌレート発泡体を形成しても、
図1の着色断熱ボード10を得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下に比較例と実施例を示す。
下型と上型からなり、300×300×50mmのキャビティが形成されたモールド(発泡成形型)を用い、下型のキャビティの底面に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材(表面側の面材)を、着色塗膜層を下向きにして配置した。なお、実施例については、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材を下型に配置する前に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に、後述するように耐火塗料あるいは熱分解型発泡剤を塗布した。また、比較例及び実施例におけるアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材については、後述する各比較例及び各実施例の説明において詳述する。前記モールドを90℃に温調した状態で、モールドのキャビティ内に、
図3に示す及び後述の連通処方あるいは独泡処方のポリイソシアヌレート組成物を、約180g注入した。そして、他の面材(裏面側の面材)としてのアルミニウム層を、裏面の接着用樹脂が下向きとなるように予めセットしたモールドの上型を、モールドの下型に被せて閉型し、ポリイソシアヌレート組成物をキャビティ内で発泡させて、着色断熱ボードを形成した。その後に着色断熱ボードの成形品を脱型し、100mm角×厚み50mmに裁断して各比較例及び各実施例のサンプルを作製した。
【0051】
連通処方及び独泡処方に用いた原料を示す。
・連通処方の原料
ポリイソシアネート:ポリメリックMDI、NCO%;31.3、品名;ミリオネートMR-200、東ソー株式会社製
ポリエステルポリオールA:オルトフタル酸とジエチレングリコール(DEG)とを脱水縮合してなるポリエステルポリオール(水酸基価:323mgKOH/g、数平均分子量350)、25℃での粘度2600mPa・s、官能基数2
ジエチレングリコール:官能基数2、分子量106、水酸基価1057mgKOH/g、丸善石油化学株式会社製
難燃剤:トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、品名;ProFlame-PC1389、ProFlame社製
三量化触媒:次の(1)~(3)
(1)2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、水酸基価213mgKOH/g、品名;ルベアックDMP-30、ナカライテスク株式会社製
(2)オクチル酸カリウム溶液、水酸基価271mgKOH/g
(3)酢酸カリウム溶液、水酸基価270mgKOH/g
破泡剤-1:ブタジエン系破泡剤、品名;オルテゴール501、エボニックジャパン株式会社製
破泡剤-2:シリコーン系破泡剤、品名;テゴスターブB8523、エボニックジャパン株式会社製
発泡剤-1:水
発泡剤-2:ハイドロフルオロオレフィン、品名;ソルスティスLBA、ハネウェルジャパン株式会社製
連通処方におけるイソシアネートインデックスは406である。
【0052】
・独泡処方の原料
ポリイソシアネート:ポリメリックMDI、NCO%;31.3、品名;ミリオネートMR-200、東ソー株式会社製
ポリエステルポリオールB:オルトフタル酸とジエチレングリコール(DEG)とを脱水縮合してなるポリエステルポリオール(水酸基価:400mgKOH/g、数平均分子量280)、25℃での粘度1100mPa・s、官能基数2
ジエチレングリコール:官能基数2、分子量106、水酸基価1057mgKOH/g、丸善石油化学株式会社製
難燃剤:トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、品名;ProFlame-PC1389、ProFlame製
整泡剤:シリコーン系、品名SH-193、ダウ・東レ株式会社製
三量化触媒:次の(1)~(3)
(1)2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、水酸基価213mgKOH/g、品名;ルベアックDMP-30、ナカライテスク株式会社製
(2)オクチル酸カリウム溶液、水酸基価271mgKOH/g
(3)酢酸カリウム溶液、水酸基価270mgKOH/g
発泡剤:シクロペンタン
独泡処方におけるイソシアネートインデックスは404である。
【0053】
各実施例及び各比較例のサンプルについて、独立気泡率、発泡体密度、熱伝導率の測定及び発熱性試験(コーンカロリーメータ試験)を行った。
独立気泡率の測定は、各実施例及び各比較例のサンプルにおけるポリイソシアヌレート発泡体について、発泡体中心部(コア部)を切り出し、ASTM D 2856に準じて行った。
発泡体密度の測定は、各実施例及び各比較例のサンプルにおけるポリイソシアヌレート発泡体について、JIS K7222:2005に準じて行った。
熱伝導率の測定は、英弘精機株式会社製、Heat Flow Meter HC-074を用いて、各実施例及び各比較例のサンプルについて、JIS A-1412-2に規定されている熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法によって行った。
発熱性試験は、ISO5660に規定されているコーンカロリーメータ試験に準拠し、株式会社東洋精機製作所製コーンカロリーメータC4を用いて、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材を加熱面側として各実施例及び各比較例のサンプルに対して1200秒(20分)間行った。
【0054】
各比較例と各実施例の構成及び結果と総合評価を
図4に示す。総合評価は、発熱性試験において、総発熱量が6MJ/m
2未満、かつ、防火上有害となるサンプル裏面まで貫通する亀裂・穴がないこと、かつ、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えないこと、かつ、点火プラグに接触しない、かつ、熱伝導率が0.024W/m・K以下である場合に「◎」、総発熱量が6MJ/m
2以上8MJ/m
2未満、かつ、防火上有害となるサンプル裏面まで貫通する亀裂・穴がないこと、かつ、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えないこと、かつ、点火プラグに接触しない、かつ、熱伝導率が0.024W/m・K以下である場合に「〇」、総発熱量が8MJ/m
2以上、または、防火上有害となるサンプル裏面まで貫通する亀裂・穴がある、または、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超える、または、点火プラグに接触する、または、熱伝導率が0.024W/m・K以上の何れか1つ以上に該当する場合に「×」とした。
以下に各比較例及び各実施例の構成および物性、発熱性試験結果について詳述する。
【0055】
<耐火塗料の場合の例>
図4は耐火塗料の場合の比較例及び実施例の構成と物性及び発熱性試験結果等を示す表であり、以下に説明する。
(比較例1)
比較例1は、ポリイソシアヌレート発泡体が、独泡処方のポリイソシアヌレート組成物からなり、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に耐火塗料及び熱分解型発泡剤の何れも塗布せず、代わりにアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の着色塗膜層の表面に耐火塗料を塗布した例である。
【0056】
・アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材
表面側(意匠面側)のアルミニウム層としてアルミニウム箔(合金番号1N30、東洋アルミニウム株式会社製、厚み80μm)を用い、そのアルミニウム層(アルミニウム箔)の表面に、着色材を含むエポキシ樹脂(ホワイト、品名;ロックホールドホワイト、ロックペイント株式会社製)をシンナーで希釈した希釈樹脂液を、目付量を5g/m2としてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置することによりアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材を作製した。その後、着色塗膜層の上に、耐火塗料を乾燥後の塗布量が16g/m2となるように、スプレーで均一塗布し、70℃の乾燥炉で2時間乾燥して耐火塗料の層を作製した。また、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に、接着用樹脂を目付量1.5g/m2としてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置した。接着用樹脂は、エポキシ樹脂(透明、品名;RC12〔硬化剤〕、JER828〔主剤〕、三菱ケミカル株式会社製、主剤100gに対して硬化剤50で配合)をメチルエチルケトンで希釈した希釈樹脂液を用いた。
【0057】
・裏面側の他の面材
裏面側のアルミニウム層としてアルミニウム箔(合金番号1N30、東洋アルミニウム株式会社製、厚み35μm)を用い、そのアルミニウム層(アルミニウム箔)の裏面に、接着用樹脂を目付量1.5g/m2としてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置した。接着用樹脂は、エポキシ樹脂(透明、品名;RC12〔硬化剤〕、JER828〔主剤〕、三菱ケミカル株式会社製、主剤100gに対して硬化剤50で配合)をメチルエチルケトンで希釈した希釈樹脂液を用いた。
【0058】
比較例1は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.4%、密度が33.5kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が13.02MJ/m2、最高発熱速度が56.4kW/m2、亀裂「あり」、点火プラグ接触「あり」になった。比較例1の着色断熱ボードでは、表面の着色塗膜層の外面に耐火塗料を塗布したが、総発熱量が規定の8MJ/m2を越え、かつ、亀裂及び点火プラグ接触の何れもあったため、総合評価「×」になった。
【0059】
(比較例2)
比較例2は、外面の耐火塗料を乾燥後の塗布量が26g/m2となるように塗布した以外、比較例1と同様にした例である。
比較例2は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が84.4%、密度が34.0kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が13.10MJ/m2、最高発熱速度が58.7kW/m2、亀裂「あり」、点火プラグ接触「あり」になった。比較例2の着色断熱ボードでは、外面の耐火塗料の塗布量を比較例1よりも増加させたが、総発熱量が比較例1と同程度であって規定の8MJ/m2を越え、かつ、亀裂及び点火プラグ接触の何れもあったため、総合評価「×」になった。
【0060】
(比較例3)
比較例3は、外面の耐火塗料を乾燥後の塗布量が30g/m2となるように塗布した以外、比較例1及び比較例2と同様にした例である。
比較例3は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.2%、密度が34.4kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が2.33MJ/m2、最高発熱速度が14.4kW/m2、亀裂「あり」、点火プラグ接触「あり」になった。比較例3の着色断熱ボードでは、総発熱量及び最高発熱温度の何れも比較例1及び比較例2よりも低くなったが、これは試験中に点火プラグを退避させたことによるもので、亀裂及び点火プラグ接触の何れもあったため、総合評価「×」になった。
【0061】
(実施例1)
・アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材
実施例1におけるアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材は、比較例1のアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の着色塗膜層の表面(外面)に耐火塗料を塗布せず、裏面の接着樹脂層の上に耐火塗料を乾燥後の塗布量が5g/m2となるように、スプレーで均一塗布し、70℃の乾燥炉で2時間乾燥して裏面に耐火塗料の層(加熱連通層)を作製した。その他は、比較例1におけるアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材と同様である。耐火塗料は、比較例1で用いたものと同一である。
・裏面側の他の面材
実施例1における裏面側のアルミニウム層は、比較例1の裏面側のアルミニウム層と同様である。
【0062】
実施例1は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が85.7%、密度が35.0kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が0.49MJ/m2、最高発熱速度が3.5kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」になった。実施例1の着色断熱ボードは、総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、亀裂なしで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材も点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0063】
(実施例2)
実施例2は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材における裏面の耐火塗料を、乾燥後の塗布量が10g/m2となるように塗布した以外は、実施例1と同様である。
実施例2は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.7%、密度が33.1kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が0.57MJ/m2、最高発熱速度が3.9kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」になった。実施例2の着色断熱ボードは、総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、亀裂なしで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材も点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0064】
(実施例3)
実施例3は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材における裏面の耐火塗料を、乾燥後の塗布量が20g/m2となるように塗布した以外は、実施例1及び実施例2と同様である。
実施例3は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.6%、密度が32.9kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が0.32MJ/m2、最高発熱速度が1.9kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」であった。実施例3の着色断熱ボードは、総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、亀裂なしで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材も点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0065】
<熱分解型発泡剤の場合の例>
図5は熱分解型発泡剤の場合の比較例及び実施例の構成と物性及び発熱性試験結果等を示す表であり、以下に説明する。
(比較例4)
比較例4は、ポリイソシアヌレート発泡体が、連通処方のポリイソシアヌレート組成物からなり、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材に耐火塗料及び熱分解型発泡剤の何れも塗布しなかった例である。
【0066】
・アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材
表面側(意匠面側)のアルミニウム層としてアルミニウム箔(合金番号1N30、東洋アルミニウム株式会社製、厚み80μm)を用い、そのアルミニウム層(アルミニウム箔)の表面に、着色材を含むエポキシ樹脂(ホワイト、品名;ロックホールドホワイト、ロックペイント株式会社製)をシンナーで希釈した希釈樹脂液を、目付量を5g/m2としてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置することにより、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材を作製した。また、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に、接着用樹脂を目付量1.5g/m2としてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置した。接着用樹脂は、エポキシ樹脂(透明、品名;RC12〔硬化剤〕、JER828〔主剤〕、三菱ケミカル株式会社製、主剤100gに対して硬化剤50で配合)をメチルエチルケトンで希釈した希釈樹脂液を用いた。
【0067】
・裏面側の他の面材
裏面側のアルミニウム層としてアルミニウム箔(合金番号1N30、東洋アルミニウム株式会社製、厚み35μm)を用い、そのアルミニウム層(アルミニウム箔)の裏面に、接着用樹脂を目付量1.5g/m2としてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置した。接着用樹脂は、エポキシ樹脂(透明、品名;RC12〔硬化剤〕、JER828〔主剤〕、三菱ケミカル株式会社製、主剤100gに対して硬化剤50で配合)をメチルエチルケトンで希釈した希釈樹脂液を用いた。
【0068】
比較例4は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が2.0%、密度が35.1kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.036W/m・K、総発熱量が1.59MJ/m2、最高発熱速度が3.6kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」になった。比較例4の着色断熱ボードは、総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、かつ点火プラグ接触もなかったが、断熱ボードの熱伝導率が高く、断熱性の低いものであり、断熱ボードとして劣るため、総合評価が「×」になった。
【0069】
(比較例5)
比較例5は、表面側のアルミニウム層の厚みを35μmとし、ポリイソシアヌレート発泡体を独泡処方とした以外は、比較例4と同様である。
比較例5は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.3%、密度が34.4kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が1.56MJ/m2、最高発熱速度が3.2kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「あり」になった。比較例5の着色断熱ボードは、総発熱量及び最高発熱温度の何れも不燃基準を満たし、亀裂はなかったが、点火プラグ接触があったため、総合評価「×」になった。
【0070】
(比較例6)
比較例6は、表面側のアルミニウム層の厚みを50μmとした以外は、比較例5と同様である。
比較例6は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.8%、密度が33.8kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が0.72MJ/m2、最高発熱速度が3.5kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「あり」になった。比較例6の着色断熱ボードは、総発熱量及び最高発熱温度の何れも不燃基準を満たし、亀裂はなかったが、点火プラグ接触があったため、総合評価「×」になった。
【0071】
(比較例7)
比較例7は、表面側のアルミニウム層の厚みを80μmとした以外は、比較例5及び比較例6と同様である。
比較例7は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が84.2%、密度が34.6kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が1.38MJ/m2、最高発熱速度が2.4kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「あり」になった。比較例7の着色断熱ボードは、総発熱量及び最高発熱温度の何れも不燃基準を満たし、亀裂はなかったが、点火プラグ接触があったため、総合評価「×」になった。
【0072】
(実施例4)
・アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材
実施例4におけるアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材は、比較例7と同様に、表面の着色塗膜層と裏面の接着樹脂層を設けたものを用い、その裏面の接着樹脂層の上に、熱分解型発泡剤としての炭酸水素ナトリウム(株式会社丹羽久社製)と、バインダーとしてのポリビニルアルコールとの混合液を、刷毛塗りで塗布し、70℃の乾燥炉で乾燥させて加熱連通層を作製した。炭酸水素ナトリウムとポリビニルアルコールとの混合液は、炭酸水素ナトリウムとポリビニルアルコールの混合比が90:10であり、塗布後の炭酸水素ナトリウムの乾燥重量が15g/m2となるように塗布した。
・裏面側の他の面材
実施例4における裏面側のアルミニウム層は、比較例7の裏面側のアルミニウム層と同様である。
【0073】
実施例4は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が84.0%、密度が33.5kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が7.14MJ/m2、最高発熱速度が16.8kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」になった。実施例4の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、亀裂なしで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材も点火プラグに接触しなかったが、総発熱量が6MJ/m2以上8MJ/m2未満だったため、総合評価が「○」になった。
【0074】
(実施例5)
実施例5は、炭酸水素ナトリウムとポリビニルアルコールとの混合液を、塗布後の炭酸水素ナトリウムの乾燥重量が30g/m2となるようにした以外は、実施例4と同様である。
実施例5は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.1%、密度が35.2kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が4.91MJ/m2、発熱速度が9.1kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」になった。実施例5の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、亀裂なしで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材も点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0075】
(実施例6)
実施例6は、炭酸水素ナトリウムとポリビニルアルコールとの混合液を、炭酸水素ナトリウムとポリビニルアルコールとの重量混合比が95:5のものとし、乾燥後の炭酸水素ナトリウムの塗布量が15g/m2となるようにして塗布した以外、実施例4及び実施例5と同様である。
【0076】
実施例6は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が85.5%、密度が35.0kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が6.32MJ/m2、最高発熱速度が10.5kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」になった。実施例6の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、亀裂なしで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材も点火プラグに接触しなかったが、総発熱量が6MJ/m2以上8MJ/m2未満だったため、総合評価が「○」になった。
【0077】
(実施例7)
実施例7は、炭酸水素ナトリウムとポリビニルアルコールとの混合液を、乾燥後の炭酸水素ナトリウムの塗布量が20g/m2となるようにして塗布した以外、実施例6と同様である。
【0078】
実施例7は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.6%、密度が33.2kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が2.21MJ/m2、最高発熱速度が6.4kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」になった。実施例7の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、亀裂なしで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材も点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0079】
(実施例8)
実施例8は、炭酸水素ナトリウムとポリビニルアルコールとの混合液を、乾燥後の炭酸水素ナトリウムの塗布量が25g/m2となるようにして塗布した以外、実施例6及び実施例7と同様である。
【0080】
実施例8は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が84.9%、密度が35.4kg/m3、着色断熱ボードの熱伝導率が0.021W/m・K、総発熱量が2.43MJ/m2、最高発熱速度が5.9kW/m2、亀裂「なし」、点火プラグ接触「なし」になった。実施例8の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、亀裂なしで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材も点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0081】
このように、本発明の着色断熱ボードは、表面が着色され、かつコーンカロリーメータ試験において点火プラグに接触せず、準不燃以上に合格するため、カラー装飾性と難燃性の両方が求められる内装材などの建材に好適なものである。なお、実施例では、着色断熱ボードの片面(意匠面側)にのみ着色塗膜層を設けたが、両面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 着色断熱ボード
11 ポリイソシアヌレート発泡体
21 アルミニウム層
22 着色塗膜層
23 一方の面材(アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材)
25 加熱連通層
31 他の面材