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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制動システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20231130BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20231130BHJP
   B60T 8/26 20060101ALI20231130BHJP
   B62L 3/08 20060101ALI20231130BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20231130BHJP
   B62J 50/21 20200101ALI20231130BHJP
   B62J 50/22 20200101ALI20231130BHJP
   B62J 45/413 20200101ALI20231130BHJP
【FI】
B60T8/17 B
B60T7/02 A
B60T8/26 K
B62L3/08
B62J45/00
B62J50/21
B62J50/22
B62J45/413
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020094527
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187298
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030395(JP,A)
【文献】特開2019-011058(JP,A)
【文献】特開2019-107998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 1/00-7/10
B60T 8/18-8/30
B62L 1/00-5/20
B62J 45/00
B62J 50/21
B62J 50/22
B62J 45/413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制動システムであって、
人力駆動車の回転体に制動力を付与する制動装置と、
前記人力駆動車に設けられる第1操作部と、
前記人力駆動車に設けられる第2操作部と、
前記制動装置を制御する制御部と、を備え、
前記制動装置は、前記第1操作部の操作量に応じて前記制動力を変更し、
前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記人力駆動車の移動速度が第1所定速度以下、前記回転体の回転速度が第2所定速度以下、または、前記制動力が所定制動力以上になるように、前記制動装置を制御する、制動システム。
【請求項2】
前記第1所定速度および前記第2所定速度は、0である、請求項1に記載の制動システム。
【請求項3】
前記第2操作部は、ボタンまたはスイッチである、請求項1または2に記載の制動システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1操作部の操作量に応じて前記制動力が変化するように前記制動装置を制御する、請求項1から3のいずれか一項に記載の制動システム。
【請求項5】
前記第1操作部と、前記第2操作部とは、単一の操作ユニットに設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の制動システム。
【請求項6】
前記回転体は、第1回転体と、第2回転体と、を備え、
前記制動装置は、前記第1回転体に第1制動力を付与する第1制動装置と、前記第2回転体に第2制動力を付与する第2制動装置と、を備え、
前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、
前記第1回転体の回転速度が第3所定速度以下、または、前記第1制動力が所定第1制動力以上になるように、前記第1制動装置を制御し、かつ、
前記第2回転体の回転速度が第4所定速度以下、または、前記第2制動力が所定第2制動力以上になるように、前記第2制動装置を制御する、請求項1から5のいずれか一項に記載の制動システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、
前記第1回転体の回転速度と前記第2回転体の回転速度との差が第5所定速度以下になるように、前記制動装置を制御する、請求項6に記載の制動システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2操作部が操作され、かつ、前記人力駆動車の移動速度が第6所定速度以上である場合、
前記第1回転体の回転速度と前記第2回転体の回転速度との差が前記第5所定速度以下になるように、前記制動装置を制御する、請求項7に記載の制動システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2操作部が操作され、かつ、前記人力駆動車の移動速度が前記第6所定速度以上の場合、
前記人力駆動車の移動速度が前記第6所定速度より小さい場合よりも、前記第1制動力および前記第2制動力の少なくとも1つが大きくなるように、前記制動装置を制御する、請求項8に記載の制動システム。
【請求項10】
前記人力駆動車の周辺に情報を報知するように前記人力駆動車に設けられる第1報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記第1報知部に前記制動装置の動作に関する情報を報知させる、請求項1から9のいずれか一項に記載の制動システム。
【請求項11】
前記第1報知部は、前記人力駆動車の後方に情報を報知するように前記人力駆動車に設けられる、請求項10に記載の制動システム。
【請求項12】
前記第1報知部は、発光部を含む、請求項10または11に記載の制動システム。
【請求項13】
前記人力駆動車のライダに情報を報知するように前記人力駆動車に設けられる第2報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記第2報知部に前記制動装置の動作に関する情報を報知させる、請求項1から12のいずれか一項に記載の制動システム。
【請求項14】
前記人力駆動車のライダに情報を報知するように前記人力駆動車に設けられる第2報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記制動装置の動作の開始と、前記第1報知部による前記制動装置の動作に関する情報の報知と、前記第2報知部による前記制動装置の動作に関する情報の報知と、の少なくとも2つが、所定期間内に実行されるように前記制動装置、前記第1報知部、および、前記第2報知部を制御する、請求項10から12のいずれか一項に記載の制動システム。
【請求項15】
前記第2報知部は、発音部および振動部の少なくとも1つを含む、請求項13または14に記載の制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用の制動システムは、制動装置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-30395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の人力駆動車用の制動システムは、ライダによる操作部の操作に応じて制動装置を制御する。
【0005】
本発明の目的の1つは、ユーザビリティに貢献できる人力駆動車用の制動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に従う制動システムは、人力駆動車用の制動システムであって、人力駆動車の回転体に制動力を付与する制動装置と、前記人力駆動車に設けられる第1操作部と、前記人力駆動車に設けられる第2操作部と、前記制動装置を制御する制御部と、を備え、前記制動装置は、前記第1操作部の操作量に応じて前記制動力を変更し、前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記人力駆動車の移動速度が第1所定速度以下、前記回転体の回転速度が第2所定速度以下、または、前記制動力が所定制動力以上になるように、前記制動装置を制御する。
上記第1側面の制動システムによれば、操作されると操作量に応じて制動力を変更する第1操作部と、操作されると人力駆動車の移動速度が第1所定速度以下、回転体の回転速度が第2所定速度以下、または、制動力が所定制動力以上になるように、制動装置を制御する第2操作部を備えるため、ユーザビリティに貢献できる。
【0007】
前記第1側面に従う第2側面の制動システムにおいて、前記第1所定速度および前記第2所定速度は、0である。
上記第2側面の制動システムによれば、ライダが第2操作部を操作することで簡便に人力駆動車を停車に導くことができる。
【0008】
前記第1または第2側面に従う第3側面の制動システムにおいて、前記第2操作部は、ボタンまたはスイッチである。
上記第3側面の制動システムによれば、第2操作部は、ボタンまたはスイッチであるため、ライダが第2操作部を簡単に操作できる。
【0009】
前記第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の制動システムにおいて、前記制御部は、前記第1操作部の操作量に応じて前記制動力が変化するように前記制動装置を制御する。
上記第4側面の制動システムによれば、制御部は、第1操作部の操作量に応じて制動力を制御できるため、制動装置を好適に制御できる。
【0010】
前記第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の制動システムにおいて、前記第1操作部と、前記第2操作部とは、単一の操作ユニットに設けられる。
上記第5側面の制動システムによれば、第1操作部と第2操作部とが単一の操作ユニットに設けられるため、ライダが第1操作部と第2操作部とを操作しやすい。
【0011】
前記第1から第5側面のいずれか1つに従う第6側面の制動システムにおいて、前記回転体は、第1回転体と、第2回転体と、を備え、前記制動装置は、前記第1回転体に第1制動力を付与する第1制動装置と、前記第2回転体に第2制動力を付与する第2制動装置と、を備え、前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記第1回転体の回転速度が第3所定速度以下、または、前記第1制動力が所定第1制動力以上になるように、前記第1制動装置を制御し、かつ、前記第2回転体の回転速度が第4所定速度以下、または、前記第2制動力が所定第2制動力以上になるように、前記第2制動装置を制御する。
上記第6側面の制動システムによれば、第2操作部が操作されると、第1回転体の回転速度が第3所定速度以下、または、第1制動力が所定第1制動力以上になるように、第1制動装置を制御し、かつ、第2回転体の回転速度が第4所定速度以下、または、第2制動力が所定第2制動力以上になるように第2制動装置を制御できる。
【0012】
前記第6側面に従う第7側面の制動システムにおいて、前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記第1回転体の回転速度と前記第2回転体の回転速度との差が第5所定速度以下になるように、前記制動装置を制御する。
上記第7側面の制動システムによれば、第2操作部が操作されると、第1回転体の回転速度と第2回転体の回転速度との差を第5所定速度以下にできる。
【0013】
前記第7側面に従う第8側面の制動システムにおいて、前記制御部は、前記第2操作部が操作され、かつ、前記人力駆動車の移動速度が第6所定速度以上である場合、前記第1回転体の回転速度と前記第2回転体の回転速度との差が前記第5所定速度以下になるように、前記制動装置を制御する。
上記第8側面の制動システムによれば、第2操作部が操作され、かつ、人力駆動車の移動速度が第6所定速度以上である場合、第1回転体の回転速度と第2回転体の回転速度との差を第5所定速度以下にできる。
【0014】
前記第8側面に従う第9側面の制動システムにおいて、前記制御部は、前記第2操作部が操作され、かつ、前記人力駆動車の移動速度が前記第6所定速度より小さい場合、前記人力駆動車の移動速度が前記第6所定速度以上である場合よりも、前記第1制動力および前記第2制動力の少なくとも1つが大きくなるように、前記制動装置を制御する。
上記第9側面の制動システムによれば、人力駆動車の移動速度が第6所定速度より小さい場合、人力駆動車の移動速度が第6所定速度以上である場合よりも、第1制動力および第2制動力の少なくとも1つを大きくできる。
【0015】
前記第1から第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制動システムにおいて、前記人力駆動車の周辺に情報を報知するように前記人力駆動車に設けられる第1報知部をさらに備え、前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記第1報知部に前記制動装置の動作に関する情報を報知させる。
上記第10側面の制動システムによれば、第2操作部が操作されると、第1報知部が制動装置の動作に関する情報を報知できる。
【0016】
前記第10側面に従う第11側面の制動システムにおいて、前記第1報知部は、前記人力駆動車の後方に情報を報知するように前記人力駆動車に設けられる。
上記第11側面の制動システムによれば、人力駆動車の後方に制動装置の動作に関する情報を報知できる。
【0017】
前記第10または第11側面に従う第12側面の制動システムにおいて、前記第1報知部は、発光部を含む。
上記第12側面の制動システムによれば、発光部によって制動装置の動作に関する情報を報知できる。
【0018】
前記第1から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制動システムにおいて、前記人力駆動車のライダに情報を報知するように前記人力駆動車に設けられる第2報知部をさらに備え、前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記第2報知部に前記制動装置の動作に関する情報を報知させる。
上記第13側面の制動システムによれば、第2操作部が操作されると、第2報知部によってライダに制動装置の動作に関する情報を報知できる。
【0019】
前記第10から第12側面のいずれか1つに従う第14側面の制動システムにおいて、前記人力駆動車のライダに情報を報知するように前記人力駆動車に設けられる第2報知部をさらに備え、前記制御部は、前記第2操作部が操作されると、前記制動装置の動作の開始と、前記第1報知部による前記制動装置の動作に関する情報の報知と、前記第2報知部による前記制動装置の動作に関する情報の報知と、の少なくとも2つが、所定期間内に実行されるように前記制動装置、前記第1報知部、および、前記第2報知部を制御する。
上記第14側面の制動システムによれば、第2操作部が操作されると、制動装置の動作の開始と、第1報知部による制動装置の動作に関する情報の報知と、第2報知部による制動装置の動作に関する情報の報知と、の少なくとも2つを、所定期間内に実行できる。
【0020】
前記第13または第14側面に従う第15側面の制動システムにおいて、前記第2報知部は、発音部および振動部の少なくとも1つを含む。
上記第15側面の制動システムによれば、発音部および振動部の少なくとも1つによってライダに制動装置の動作に関する情報を報知できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の人力駆動車用の制動システムは、ユーザビリティに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の人力駆動車用の制動システムを含む人力駆動車の側面図。
図2】実施形態の人力駆動車用の制動システムを含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
図3図2の制御部によって実行され、第1操作部の操作に応じて制動装置を制御する処理のフローチャート。
図4図2の制御部によって実行され、第2操作部の操作に応じて制動装置を制御する処理のフローチャートの第1部分。
図5図2の制御部によって実行され、第2操作部の操作に応じて制動装置を制御する処理のフローチャートの第2部分。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態>
図1から図5を参照して、実施形態の人力駆動車用の制動システム50について説明する。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0024】
人力駆動車10は、人力駆動力が入力されるクランク12を備える。人力駆動車10は、車輪14と、車体16と、を、さらに備える。車輪14は、後輪14Rと、前輪14Fと、を含む。車体16は、フレーム18を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能なクランク軸12Aと、クランク軸12Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられる一対のクランクアーム12Bとを含む。各クランクアーム12Bには、一対のペダル20がそれぞれ連結される。後輪14Rは、クランク12が回転することによって駆動される。後輪14Rは、フレーム18に支持される。クランク12は、駆動機構22によって後輪14Rと連結される。駆動機構22は、クランク軸12Aに連結される第1駆動回転体24を含む。クランク軸12Aは、第1駆動回転体24と一体回転するように連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1駆動回転体24を前転させ、クランク12が後転した場合に、クランク12と第1駆動回転体24との相対回転を許容するように構成される。第1駆動回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構22は、第2駆動回転体26と、連結部材28とをさらに含む。連結部材28は、第1駆動回転体24の回転力を第2駆動回転体26に伝達する。連結部材28は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0025】
第2駆動回転体26は、後輪14Rに連結される。第2駆動回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2駆動回転体26と後輪14Rとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2駆動回転体26が前転した場合に、後輪14Rを前転させ、第2駆動回転体26が後転した場合に、第2駆動回転体26と後輪14Rとの相対回転を許容するように構成される。
【0026】
フレーム18には、フロントフォーク30を介して前輪14Fが取り付けられている。フロントフォーク30には、ハンドルバー34がステム32を介して連結されている。本実施形態では、後輪14Rが駆動機構22によってクランク12に連結されるが、後輪14Rおよび前輪14Fの少なくとも1つが、駆動機構22によってクランク12に連結されてもよい。
【0027】
好ましくは、人力駆動車10は、回転体36を備える。回転体36は、第1回転体38と、第2回転体40と、を備える。回転体36は、第1回転体38と、第2回転体40と、を備える。例えば、第1回転体38および第2回転体40の一方は、後輪14Rであり、第1回転体38および第2回転体40の他方は、前輪14Fである。本実施形態では、第1回転体38は、前輪14Fであり、第2回転体40は、後輪14Rである。
【0028】
好ましくは、人力駆動車10は、移動速度センサ42を備える。移動速度センサ42は、人力駆動車10の走行方向の移動速度Vを検出するように構成される。移動速度センサ42は、例えば、人力駆動車10の走行路の地面のパターンを検出する光学センサである。移動速度センサ42は、GPS(Global positioning system)受信部を含んでいてもよい。
【0029】
好ましくは、人力駆動車10は、第1回転速度センサ44を含む。第1回転速度センサ44は、第1回転体38の回転速度W1に応じた情報を検出するように構成される。第1回転速度センサ44は、例えば、人力駆動車10の前輪14Fに設けられる環状体の回転を検出するように構成される。環状体は周方向に複数の被検出部を有する。被検出部は溝または孔である。第1回転速度センサ44は、環状体に設けられる複数の被検出部の通過に基づいて、前輪14Fの回転速度Wに応じた信号を出力する。第1回転速度センサ44は、例えば、コイルと磁極とから構成される。環状体が回転するとコイルを通過する磁束が変化し、交流電圧が発生するため、前輪14Fの回転速度が検出される。第1回転速度センサ44は、例えば、ホール素子を含む。第1回転速度センサ44は、前輪14Fに設けられる被検出部を検出する構成に限らず、例えば、リードスイッチを構成する磁性リード、または、光学センサなどを含んで構成されてもよい。第1回転速度センサ44は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部58に接続される。好ましくは、第1回転速度センサ44は、例えば、前輪14Fが1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。好ましくは、予め定める回数は、4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、30以上である。本実施形態において、第1回転速度センサ44は、前輪14Fが一回転した場合に、被検出部を60回以上検出するように構成される。
【0030】
好ましくは、人力駆動車10は、第2回転速度センサ46を含む。第2回転速度センサ46は、第2回転体40の回転速度W2に応じた情報を検出するように構成される。第2回転速度センサ46は、例えば、人力駆動車10の後輪14Rに設けられる環状体の回転を検出するように構成される。環状体は周方向に複数の被検出部を有する。被検出部は溝または孔である。第2回転速度センサ46は、環状体に設けられる複数の被検出部の通過に基づいて、後輪14Rの回転速度W2に応じた信号を出力する。第2回転速度センサ46は、例えば、コイルと磁極とから構成される。環状体が回転するとコイルを通過する磁束が変化し、交流電圧が発生するため、前輪14Fの回転速度が検出される。第2回転速度センサ46は、例えば、ホール素子を含む。第2回転速度センサ46は、後輪14Rに設けられる被検出部を検出する構成に限らず、例えば、リードスイッチを構成する磁性リード、または、光学センサなどを含んで構成されてもよい。第2回転速度センサ46は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部58に接続される。好ましくは、第2回転速度センサ46は、例えば、後輪14Rが1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。好ましくは、予め定める回数は、4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、30以上である。本実施形態において、第2回転速度センサ46は、後輪14Rが一回転した場合に、被検出部を60回以上検出するように構成される。
【0031】
人力駆動車用の制動システム50は、制動装置52と、第1操作部54と、第2操作部56と、制御部58と、を備える。
【0032】
制動装置52は、人力駆動車10の回転体36に制動力Bを付与する。制動装置52は、車輪14のホイールを制動可能に設けられる。制動装置52は電動アクチュエータを含む。電動アクチュエータは、例えば、電気モータを含む。制動装置52は、例えば、リムブレーキ、ローラブレーキ、および、ディスクブレーキの少なくとも1つを含む。制動装置52は、ホイールと接触可能な摩擦部材を電動アクチュエータによって動作させるものであってもよく、油圧式の制動装置52の油圧を電動アクチュエータによって制御するものであってもよく、摩擦部材と接続されるケーブルを電動アクチュエータによって移動させるものであってもよい。
【0033】
好ましくは、制動装置52は、第1回転体38に第1制動力B1を付与する第1制動装置60と、第2回転体に第2制動力B2を付与する第2制動装置62と、を備える。
【0034】
第1制動装置60は、前輪14Fに第1制動力B1を付与する。第1制動装置60は電動アクチュエータを含む。電動アクチュエータは、例えば、電気モータを含む。第1制動装置60は、例えば、リムブレーキ、ローラブレーキ、および、ディスクブレーキの少なくとも1つを含む。第1制動装置60は、ホイールと接触可能な摩擦部材を電動アクチュエータによって動作させるものであってもよく、油圧式の第1制動装置60の油圧を電動アクチュエータによって制御するものであってもよく、摩擦部材と接続されるケーブルを電動アクチュエータによって移動させるものであってもよい。
【0035】
第2制動装置62は、後輪14Rに第2制動力B2を付与する。第2制動装置62は電動アクチュエータを含む。電動アクチュエータは、例えば、電気モータを含む。第2制動装置62は、例えば、リムブレーキ、ローラブレーキ、および、ディスクブレーキの少なくとも1つを含む。制動装置52は、ホイールと接触可能な摩擦部材を電動アクチュエータによって動作させるものであってもよく、油圧式の第2制動装置62の油圧を電動アクチュエータによって制御するものであってもよく、摩擦部材と接続されるケーブルを電動アクチュエータによって移動させるものであってもよい。
【0036】
第1操作部54および第2操作部56は、ライダが制動装置52を操作可能に構成される。第1操作部54は、人力駆動車10に設けられる。第2操作部56は、人力駆動車10に設けられる。好ましくは、第2操作部56は、ボタンまたはスイッチである。好ましくは、第1操作部54は、操作量を変更可能に構成される。第1操作部54は、例えば、ブレーキレバーである。好ましくは、第1操作部54と、第2操作部56とは、単一の操作ユニット64に設けられる。好ましくは、操作ユニット64は、ハンドルバー34に設けられる。好ましくは、第2操作部56は、人力駆動車10のうちのライダが人力駆動車10の走行中に操作しやすい位置に設けられる。第2操作部56は、例えば、操作ユニット64において、ライダが操作ユニット64に手をかけている状態においてライダの指が接触する位置、または、ライダの指が少ない移動量で接触しやすい位置に設けられる。
【0037】
制動装置52が第1制動装置60と、第2制動装置62と、を備える場合、好ましくは、第1操作部54は、第1制動装置60を操作可能に構成される第1操作部54Aと、第2制動装置62を操作可能に構成される第1操作部54Bと、を備える。好ましくは、第1操作部54Aは、第1操作ユニット64Aに設けられ、第2制動装置62を操作可能に構成される第1操作部54は、第1操作ユニット64Aとは異なる第2操作ユニット64Bに設けられる。制動装置52が第1制動装置60と、第2制動装置62と、を備える場合、好ましくは、第2操作部56は、第1制動装置60と第2制動装置62の両方を操作可能に構成される。この場合、第2操作部56は、第1操作ユニット64Aおよび第2操作ユニット64Bの一方に設けられる。
【0038】
制御部58は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部58は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、制動システム50は、記憶部66をさらに含む。記憶部66には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部66は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0039】
制御部58は、制動装置52を制御する。制動装置52は、第1操作部54の操作量に応じて制動力Bを変更する。好ましくは、制御部58は、第1操作部54の操作量に応じて制動力Bが変化するように制動装置52を制御する。制御部58は、第1操作部54の操作量が大きいほど、制動力Bが大きくなるように制動装置52を制御する。制動装置52が第1制動装置60と、第2制動装置62と、を備え、第1操作部54が第1操作部54Aと、第1操作部54Bと、を備える場合、制御部58は、第1操作部54Aの操作量に応じて第1制動力B1が変化するように制動装置52を制御する。制御部58は、第1操作部54Aの操作量が大きいほど、第1制動力B1が大きくなるように制動装置52を制御する。制動装置52が第1制動装置60と、第2制動装置62と、を備え、第1操作部54が第1操作部54Aと、第1操作部54Bと、を備える場合、制御部58は、第1操作部54Bの操作量に応じて第2制動力B2が変化するように制動装置52を制御する。制御部58は、第1操作部54Bの操作量が大きいほど、第2制動力B2が大きくなるように制動装置52を制御する。
【0040】
制御部58は、第2操作部56が操作されると、人力駆動車10の移動速度Vが第1所定速度VX以下、回転体36の回転速度Wが第2所定速度WX以下、または、制動力Bが所定制動力BX以上になるように、制動装置52を制御する。好ましくは、第1所定速度VXおよび第2所定速度WXは、0である。第1所定速度VXは、例えば、時速0キロメートルである。第2所定速度WXは、例えば、0rpmである。例えば、第1所定速度VXは、時速0キロメートルから時速5キロメートルまでの低速でもよい。第2所定速度WXは、例えば、0rpmから50rpmまでの低回転でもよい。制御部58は、第2操作部56が操作されると、人力駆動車10の移動速度Vが第1所定速度VX以下になるように、制動装置52を制御する場合、例えば、移動速度Vが第1所定速度VXよりも大きい状態から第1所定速度VX以下になると、制動力Bによる制動を終了する、または、制動力Bを小さくする。制御部58は、第2操作部56が操作されると、回転体36の回転速度Wが第2所定速度WX以下になるように、制動装置52を制御する場合、例えば、回転体36の回転速度Wが第2所定速度WXよりも大きい状態から第2所定速度WX以下になると、制動力Bによる制動を終了する、または、制動力Bを小さくする。制御部58は、第2操作部56が操作されると、制動力Bが所定制動力BX以上になるように、制動装置52を制御する場合、例えば、第2操作部56が操作されなくなると、制動力Bによる制動を終了する、または、制動力Bを所定制動力BXよりも小さくする。
【0041】
制動装置52が第1制動装置60と、第2制動装置62と、を備える場合、制御部58は、第2操作部56が操作されると、第1回転体38の回転速度W1が第3所定速度W1A以下、または、第1制動力B1が所定第1制動力B1A以上になるように、第1制動装置60を制御し、かつ、第2回転体40の回転速度W2が第4所定速度W2A以下、または、第2制動力B2が所定第2制動力B2A以上になるように、第2制動装置62を制御する。好ましくは、第3所定速度W1Aおよび第4所定速度W2Aは、第2所定速度WXと等しい。第3所定速度W1Aおよび第4所定速度W2Aは、0である。制御部58は、第2操作部56が操作されると、第1回転体38の回転速度W1が第3所定速度W1A以下になるように、第1制動装置60を制御する。制御部58は、第2操作部56が操作されると、第1制動力B1が所定第1制動力B1A以上になるように、第1制動装置60を制御する。制御部58は、第2操作部56が操作されると、第2回転体40の回転速度W2が第4所定速度W2A以下になるように、第2制動装置62を制御する。制御部58は、第2操作部56が操作されると、第2制動力B2が所定第2制動力B2A以上になるように、第2制動装置62を制御する。
【0042】
制御部58は、第2操作部56が操作されると、人力駆動車10の移動速度Vが第1所定速度VX以下になるように、制動装置52を制御する場合、例えば、移動速度Vが第1所定速度VXよりも大きい状態から第1所定速度VX以下になると、第1制動力B1および第2制動力B2による制動を終了する、または、第1制動力B1および第2制動力B2の少なくとも1つを小さくする。
【0043】
制御部58は、第2操作部56が操作されると、第1回転体38の回転速度W1が第3所定速度W1A以下になるように、制動装置52を制御する場合、例えば、第1回転体38の回転速度W1が第3所定速度W1Aよりも大きい状態から第3所定速度W1A以下になると、第1制動力B1による制動を終了する、または、第1制動力B1を小さくする。制御部58は、第2操作部56が操作されると、第1制動力B1が所定第1制動力B1A以上になるように、制動装置52を制御する場合、例えば、第2操作部56が操作されなくなると、第1制動力B1による制動を終了する、または、第1制動力B1を所定第1制動力B1Aよりも小さくする。制御部58は、第2操作部56が操作されると、第2回転体40の回転速度W2が第4所定速度W2A以下になるように、制動装置52を制御する場合、例えば、第2回転体40の回転速度W2が第4所定速度W2Aよりも大きい状態から第4所定速度W2A以下になると、第2制動力B2による制動を終了する、または、第2制動力B2を小さくする。制御部58は、第2操作部56が操作されると、第2制動力B2が所定第2制動力B2A以上になるように、制動装置52を制御する場合、例えば、第2操作部56が操作されなくなると、第2制動力B2による制動を終了する、または、第2制動力B2を所定第2制動力B2Aよりも小さくする。
【0044】
好ましくは、制御部58は、第2操作部56が操作されると、第1回転体38の回転速度W1と第2回転体40の回転速度W2との差DWが第5所定速度DX以下になるように、制動装置52を制御する。差DWは、絶対値によって表される。好ましくは、制御部58は、第2操作部56が操作され、かつ、人力駆動車10の移動速度Vが第6所定速度VA以上である場合、第1回転体38の回転速度W1と第2回転体40の回転速度W2との差DWが第5所定速度DX以下になるように、制動装置52を制御する。制御部58は、例えば、第1回転体38の回転速度W1と第2回転体40の回転速度W2とを第1回転速度センサ44および第2回転速度センサ46から取得し、第1回転体38の回転速度W1と第2回転体40の回転速度W2との差DWを算出する。制御部58は、差DWが第5所定速度DXよりも大きく、かつ、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2よりも大きい場合、第1制動装置60の第1制動力B1、および、第2制動装置62の第2制動力B2の一方を大きくする。制御部58は、差DWが第5所定速度DXよりも大きく、かつ、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2よりも小さい場合、第1制動装置60の第1制動力B1、および、第2制動装置62の第2制動力B2の一方を大きくする。
【0045】
好ましくは、制御部58は、第2操作部56が操作され、かつ、人力駆動車10の移動速度Vが第6所定速度VAより小さい場合、人力駆動車10の移動速度Vが第6所定速度VA以上である場合よりも、第1制動力B1および第2制動力B2の少なくとも1つが大きくなるように、制動装置52を制御する。第6所定速度VAは、時速0キロメートルよりも大きい。
【0046】
好ましくは、人力駆動車10は、第1報知部68をさらに備える。第1報知部68は、人力駆動車10の周辺に情報を報知するように人力駆動車10に設けられる。第1報知部68は、人力駆動車10の後方に情報を報知するように人力駆動車10に設けられる。好ましくは、第1報知部68は、人力駆動車10の後方の人間に情報を報知するように構成される。人力駆動車10の後方の人間は、歩行者および車両に搭乗する人間を含む。第1報知部68は、発光部を含む。発光部は、例えば、ランプである。第1報知部68は、人力駆動車10の制動に関する情報を人間が把握しやすいアイコンまたは文字を表示可能に構成されていてもよい。第1報知部68は、発音部であってもよい。第1報知部68は、例えば、フレーム18、サドル、シートポスト、および、ペダル20の少なくとも1つに設けられる。
【0047】
制御部58は、第2操作部56が操作されると、第1報知部68に制動装置52の動作に関する情報を報知させる。第1報知部68が発光部を含む場合、制御部58は、第2操作部56が操作されると、発光部を発光させるように第1報知部68を制御する。
【0048】
人力駆動車10は、第2報知部70をさらに備える。第2報知部70は、人力駆動車10のライダに情報を報知するように人力駆動車10に設けられる。好ましくは、第2報知部70は、発音部および振動部の少なくとも1つを含む。制御部58は、第2操作部56が操作されると、第2報知部70に制動装置52の動作に関する情報を報知させる。
【0049】
制御部58は、第2操作部56が操作されると、制動装置52の動作の開始と、第1報知部68による制動装置52の動作に関する情報の報知と、第2報知部70による制動装置52の動作に関する情報の報知と、の少なくとも2つが、所定期間TX内に実行されるように制動装置52、第1報知部68、および、第2報知部70を制御する。
【0050】
図3を参照して、第1操作部54が操作される場合に制動装置52を制御する処理について説明する。制御部58は、制御部58に電力が供給されると、処理を開始して図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部58は、図3のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0051】
制御部58は、ステップS11において、第1制動装置60を操作可能に構成される第1操作部54Aが操作されるか否かを判定する。制御部58は、ステップS11において、第1制動装置60を操作可能に構成される第1操作部54Aが操作されない場合、ステップS13に移行する。制御部58は、第1制動装置60を操作可能に構成される第1操作部54Aが操作される場合、ステップS12に移行する。制御部58は、ステップS12において、第1操作部54Aの操作量に応じて第1制動力B1を変更するように第1制動装置60を制御し、ステップS13に移行する。
【0052】
制御部58は、ステップS13において、第2制動装置62を操作可能に構成される第1操作部54Bが操作されるか否かを判定する。制御部58は、ステップS13において、第2制動装置62を操作可能に構成される第1操作部54Bが操作されない場合、処理を終了する。制御部58は、第2制動装置62を操作可能に構成される第1操作部54Bが操作される場合、ステップS14に移行する。制御部58は、ステップS14において、第1操作部54Bの操作量に応じて第2制動力B2を変更するように第2制動装置62を制御し、処理を終了する。
【0053】
図4および図5を参照して、第2操作部56が操作される場合に制動装置52を制御する処理について説明する。制御部58は、制御部58に電力が供給されると、処理を開始して図4に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部58は、図4のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0054】
制御部58は、ステップS21において、第2操作部56が操作されるか否かを判定する。制御部58は、第2操作部56が操作されない場合、処理を終了する。制御部58は、第2操作部56が操作される場合、ステップS22に移行する。制御部58は、ステップS22において、第1制動装置60および第2制動装置62を制御し、ステップS23に移行する。
【0055】
制御部58は、ステップS22において、第1制動装置60による制動を開始し、第2制動装置62による制動を開始する。好ましくは、ステップS22において第1回転体38に付与される第1制動力B1は、所定制動力B1X以上である。好ましくは、ステップS22において第2回転体40に付与される第2制動力B2は、所定制動力B2X以上である。所定制動力B1Xは、例えば、人力駆動車10の走行を停止するために好適な制動力Bである。所定制動力B2Xは、例えば、人力駆動車10の走行を停止するために好適な制動力Bである。
【0056】
制御部58は、ステップS23において、第1報知部68および第2報知部70を制御し、ステップS24に移行する。制御部58は、ステップS23において、第1報知部68によって、人力駆動車10の後方に第2操作部56の操作に関する情報を報知し、第2報知部70によって第2操作部56の操作に関する情報をライダに報知する。好ましくは、ステップS22の処理とステップS23の処理とは、所定期間TX内に行われる。ステップS22の処理とステップS23の処理とは、いずれかが先に行われてもよい。
【0057】
制御部58は、ステップS24において、移動速度Vが第6所定速度VA以上か否かを判定する。制御部58は、移動速度Vが第6所定速度VA以上ではない場合、ステップS30に移行する。制御部58は、移動速度Vが第6所定速度VA以上の場合、ステップS25に移行する。
【0058】
制御部58は、ステップS25において、差DWが第5所定速度DXよりも大きいか否かを判定する。制御部58は、差DWが第5所定速度DXよりも大きくない場合、ステップS30に移行する。制御部58は、差DWが第5所定速度DXよりも大きい場合、ステップS26に移行する。
【0059】
制御部58は、ステップS26において、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2よりも大きいか否かを判定する。制御部58は、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2よりも大きい場合、ステップS27に移行する。制御部58は、ステップS27において、移動速度Vが第1推定速度V1Aよりも大きいか否かを判定する。第1推定速度V1Aは、第1回転体38の回転速度W1によって算出される移動速度Vの推定値である。制御部58は、例えば、第1回転体38の回転速度W1に第1回転体38の周長を乗算することによって第1推定速度V1Aを算出する。
【0060】
制御部58は、ステップS27において、移動速度Vが第1推定速度V1Aよりも大きくない場合、ステップS28に移行する。制御部58は、ステップS28において、第1制動力B1が大きくなるように第1制動装置60を制御し、ステップS33に移行する。制御部58は、例えば、ステップS22において第1回転体38に付与される第1制動力B1よりも第1制動力B1を大きくする。ステップS28において、制御部58は、例えば、第1制動力B1が所定第1制動力B1A以上になるように第1制動装置60を制御する。
【0061】
制御部58は、ステップS27において、移動速度Vが第1推定速度V1Aよりも大きい場合、ステップS29に移行する。制御部58は、ステップS29において、第2制動力B2が大きくなるように第2制動装置62を制御し、ステップS33に移行する。制御部58は、例えば、ステップS22において第2回転体40に付与される第2制動力B2よりも第2制動力B2を大きくする。ステップS29において、制御部58は、例えば、第2制動力B2が所定第2制動力B2A以上になるように第2制動装置62を制御する。
【0062】
制御部58は、ステップS26において、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2よりも大きくない場合、ステップS30に移行する。制御部58は、ステップS30において、移動速度Vが第2推定速度V2Aよりも大きいか否かを判定する。第2推定速度V2Aは、第2回転体40の回転速度W2によって算出される移動速度Vの推定値である。制御部58は、例えば、第2回転体40の回転速度W2に第2回転体40の周長を乗算することによって第2推定速度V2Aを算出する。
【0063】
制御部58は、移動速度Vが第2推定速度V2Aよりも大きくない場合、ステップS31に移行する。制御部58は、ステップS31において、第2制動力B2が大きくなるように第2制動装置62を制御し、ステップS33に移行する。制御部58は、例えば、ステップS22において第2回転体40に付与される第2制動力B2よりも第2制動力B2を大きくする。ステップS31において、制御部58は、例えば、第2制動力B2が所定第2制動力B2A以上になるように第2制動装置62を制御する。
【0064】
制御部58は、ステップS30において、移動速度Vが第2推定速度V2Aよりも大きい場合、ステップS32に移行する。制御部58は、ステップS32において、第2制動力B2が大きくなるように第2制動装置62を制御し、ステップS33に移行する。制御部58は、例えば、ステップS22において第1回転体38に付与される第1制動力B1よりも第1制動力B1を大きくする。ステップS32において、制御部58は、例えば、第1制動力B1が所定第1制動力B1A以上になるように第1制動装置60を制御する。
【0065】
制御部58は、ステップS33において、移動速度Vが第1所定速度VX以下か否かを判定する。制御部58は、移動速度Vが第1所定速度VX以下の場合、処理を終了する。制御部58は、移動速度Vが第1所定速度VX以上の場合、ステップS24に移行する。
【0066】
制御部58は、差DWが第5所定速度DXよりも大きく、かつ、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2よりも大きく、かつ、移動速度Vが第1推定速度V1A以下の場合、第1制動力B1が大きくなるように第1制動装置60を制御する。このため、前輪14Fのスリップを抑制できる。
【0067】
制御部58は、差DWが第5所定速度DXよりも大きく、かつ、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2よりも大きく、かつ、移動速度Vが第1推定速度V1Aよりも大きい場合、第2制動力B2が大きくなるように第2制動装置62を制御する。このため、後輪14Rのロックを抑制できる。
【0068】
制御部58は、差DWが第5所定速度DXよりも大きく、かつ、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2以下、かつ、移動速度Vが第2推定速度V2A以下の場合、第2制動力B2が大きくなるように第2制動装置62を制御する。このため、後輪14Rのスリップを抑制できる。
【0069】
制御部58は、差DWが第5所定速度DXよりも大きく、かつ、第1回転体38の回転速度W1が第2回転体40の回転速度W2以下、かつ、移動速度Vが第2推定速度V2Aよりも大きい場合、第1制動力B1が大きくなるように第1制動装置60を制御する。このため、前輪14Fのロックを抑制できる。
【0070】
第2操作部56が操作されると、制御部58は、第1制動装置60および第2制動装置62の両方を動作させる。このため、制御部58は、第2操作部56の操作によって好適に人力駆動車10の走行を停止させられる。第2操作部56は、ボタンまたはスイッチであるため、ライダは操作量を大きくするような操作をせずに、人力駆動車10の走行を停止できる。
【0071】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制動システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制動システムは、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図4および図5の処理からステップS24、ステップS25、および、ステップS26の少なくとも1つを省略してもよい。
図4および図5の処理からステップS27、ステップS28、および、ステップS29の処理を省略してもよい。
図4および図5の処理からステップS30、ステップS31、および、ステップS32の処理を省略してもよい。
【0073】
・制動システム50は、ABS(Anti-lock Braking System)を備えていてもよい。制御部58は、第2操作部56の操作に応じて制動装置52が制御される場合に、ABSを動作させる。
【0074】
・制動装置52は、第1制動装置60および第2制動装置62の一方のみを備えてもよい。この場合、第1制動装置60および第2制動装置62の他方は、手動の制動装置であってもよい。
【0075】
・制御部58は、第1操作部54の操作に応じて制動装置52を制御する構成でなくてもよい。この場合、例えば、第1操作部54は、制動装置52と機械的に接続される。
【0076】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0077】
10…人力駆動車、36…回転体、38…第1回転体、40…第2回転体、50…制動システム、52…制動装置、54…第1操作部、56…第2操作部、58…制御部、60…第1制動装置、62…第2制動装置、64…操作ユニット、68…第1報知部、70…第2報知部。
図1
図2
図3
図4
図5