(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】溶接作業評価装置、溶接作業評価方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20231130BHJP
G09B 19/24 20060101ALI20231130BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20231130BHJP
B23K 9/095 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B19/24 Z
B23K31/00 Z
B23K9/095 515Z
(21)【出願番号】P 2020097168
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】多羅沢 湘
(72)【発明者】
【氏名】杉江 一寿
(72)【発明者】
【氏名】田中 明秀
(72)【発明者】
【氏名】沖崎 直也
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-12859(JP,A)
【文献】特開2019-179457(JP,A)
【文献】特開2019-168887(JP,A)
【文献】特開2013-202618(JP,A)
【文献】特開2013-156428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0200394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
17/00-19/26
B23K 9/00,31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接作業における溶接トーチの位置であるトーチ位置を取得する座標計測部と、
複数の作業評価アルゴリズムの中から、前記トーチ位置の動きに対応する一つの前記作業評価アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部と、
選択された前記作業評価アルゴリズムに基づいて、前記溶接作業を評価する溶接作業評価部と、を備え
、
前記溶接作業評価部は、
複数の前記作業評価アルゴリズムの一部に各々対応する複数の基準データの中から、少なくとも二つの前記基準データを選択し、選択した少なくとも二つの前記基準データを内挿することによって、選択した前記作業評価アルゴリズムに対応する新たな基準データを生成する補完部を備える
ことを特徴とする溶接作業評価装置。
【請求項2】
前記溶接トーチまたは前記溶接トーチを操作する溶接作業者には、マーカが装着され、
前記座標計測部は、前記マーカの位置を計測するモーションキャプチャ装置からの情報に基づいて、前記トーチ位置と、前記溶接トーチの傾きであるトーチ傾斜角と、を計算する機能を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接作業評価装置。
【請求項3】
前記アルゴリズム選択部は、
前記トーチ位置と、前記溶接トーチの傾きであるトーチ傾斜角と、に基づいて前記溶接トーチを操作する溶接作業者の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記姿勢推定部の推定結果である推定溶接姿勢に対応する前記作業評価アルゴリズムを選択する比較選択部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接作業評価装置。
【請求項4】
前記溶接作業評価部は、
複数の前記作業評価アルゴリズムに各々対応する複数の基準データの中から、選択された前記作業評価アルゴリズムに対応する一つの前記基準データを選択し、選択した前記基準データと、前記トーチ位置の動きとを比較する比較部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接作業評価装置。
【請求項5】
前記溶接作業評価部は
、
新たな前記基準データと、前記トーチ位置の動きとを比較する比較部
をさらにを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接作業評価装置。
【請求項6】
溶接作業における溶接トーチの位置であるトーチ位置を取得する座標計測過程と、
複数の作業評価アルゴリズムの中から、前記トーチ位置の動きに対応する一つの前記作業評価アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択過程と、
選択された前記作業評価アルゴリズムに基づいて、前記溶接作業を評価する溶接作業評価過程と、
をコンピュータに実行させ、
前記溶接作業評価過程は、
複数の前記作業評価アルゴリズムの一部に各々対応する複数の基準データの中から、少なくとも二つの前記基準データを選択し、選択した少なくとも二つの前記基準データを内挿することによって、選択した前記作業評価アルゴリズムに対応する新たな基準データを生成する補完過程を備える
ことを特徴とする溶接作業評価方法。
【請求項7】
コンピュータを、
溶接作業における溶接トーチの位置であるトーチ位置を取得する座標計測手段、
複数の作業評価アルゴリズムの中から、前記トーチ位置の動きに対応する一つの前記作業評価アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択手段、
選択された前記作業評価アルゴリズムに基づいて、前記溶接作業を評価する溶接作業評価手段、
として機能させるためのプログラム
であって、
前記溶接作業評価手段は、
複数の前記作業評価アルゴリズムの一部に各々対応する複数の基準データの中から、少なくとも二つの前記基準データを選択し、選択した少なくとも二つの前記基準データを内挿することによって、選択した前記作業評価アルゴリズムに対応する新たな基準データを生成する補完機能を備える
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接作業評価装置、溶接作業評価方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、溶接等の高度技能は、経験豊富な溶接作業者が時間をかけてOJT等を通して初心者に教育してきた。しかし、近年の少子高齢化に伴う熟練溶接作業者の急速な減少の中、初心者は必ずしも熟練者からの教育を受けられない場合があり、製造現場から熟練技能が急速に失われている。このような状況において、溶接作業をロボットを用いて自動化する取り組みも行われており、工数低減や品質安定化の上で成果を上げている。一方、ロボットのアクセスできない狭隘部や、寸法ばらつきが大きい大型構造物の溶接においては手動溶接の必要性が依然として高く、次の世代の作業者を効率的に育成するシステムが求められている。
【0003】
近年のこのような状況を鑑み、溶接作業に対する教育の支援システムや方法がいくつか提案されている。例えば、下記特許文献1の要約には、「溶接環境を容易に模擬することができ、生徒一人の自習であっても溶接作業を教育、矯正又は指導することができる、溶接技能教育支援システムを提供する。」と記載されている。
また、下記特許文献2の要約には、「不適合事例を再現した模型を通じて、訓練受講者が簡便に不適合事例を疑似体感可能な品質体感訓練装置および品質体感訓練方法を提供する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-156428号公報
【文献】特開2017-111387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した技術において、溶接作業の一層適切な技能評価を実現したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、溶接作業の一層適切な技能評価を実現する溶接作業評価装置、溶接作業評価方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の溶接作業評価装置は、溶接作業における溶接トーチの位置であるトーチ位置を取得する座標計測部と、複数の作業評価アルゴリズムの中から、前記トーチ位置の動きに対応する一つの前記作業評価アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部と、選択された前記作業評価アルゴリズムに基づいて、前記溶接作業を評価する溶接作業評価部と、を備え、前記溶接作業評価部は、複数の前記作業評価アルゴリズムの一部に各々対応する複数の基準データの中から、少なくとも二つの前記基準データを選択し、選択した少なくとも二つの前記基準データを内挿することによって、選択した前記作業評価アルゴリズムに対応する新たな基準データを生成する補完部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶接作業の一層適切な技能評価を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】好適な第1実施形態による溶接作業評価システムの模式図である。
【
図2】好適な第2実施形態による溶接作業評価システムの模式図である。
【
図3】制御装置において実行される溶接作業評価処理のフローチャートである。
【
図4】溶接作業者の溶接姿勢の推定原理を示す図である。
【
図6】採点処理サブルーチンのフローチャートである。
【
図7】好適な第3実施形態による溶接作業評価システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の前提]
溶接作業は多くの物理現象が組み合わさった複雑な作業であり、熟練の溶接作業者は、数多くの経験から溶接条件を微調整している。例えば、同じ溶接方法であっても、接合部を見上げるようにして行う上向姿勢と、接合部を見下ろすようにして行う下向姿勢の溶接では、溶融金属への重力の作用の仕方が異なる。一般的に、上向姿勢の溶接においては、溶接中に溶接金属が垂れやすいため、溶接速度を上げ素早く凝固させる必要がある、とされる。
【0010】
上述した特許文献1を適用した技術では、溶接姿勢が限定されており、熟練技能を十分に教育することができない。また、円筒の溶接のような徐々に溶接姿勢が変化していくような溶接作業を評価することが困難という課題もある。また、特許文献1および2を適用した技術では、寸法のばらつきが大きい場合が想定されておらず、理想的な組み立てが実現したパターンの溶接しか教育することができないため、実際の製造現場での柔軟な対応が求められる溶接作業者を育成できるものとは言えない。
【0011】
そこで、以下に述べる好適な実施形態においては、溶接姿勢が異なる場合であっても、それぞれの溶接姿勢に対して適切な基準データや作業評価アルゴリズムを適用して、溶接作業を評価できるシステムを提供する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、好適な第1実施形態による溶接作業評価システム1の模式図である。
図1において溶接作業評価システム1は、信号発信部11と、信号受信部12と、デジタル溶接機60と、溶接トーチ62と、制御装置100(溶接作業評価装置)と、ディスプレイ140と、入力装置142と、を備えている。入力装置142は、マウスやキーボード等(図示せず)を備え、これらの操作状態は制御装置100に供給される。ディスプレイ140は、制御装置100の制御に基づいて、各種情報を表示する。また、デジタル溶接機60、信号受信部12、制御装置100等の装置は、無線LAN、有線LAN等の通信網を介して相互に接続されている。
【0013】
デジタル溶接機60は、溶接トーチ62に供給される電流と電圧、溶接材料の供給量等を管理する機能を備えている。また、これら電流、電圧、溶接材料の供給量等は、制御装置100に供給される。これにより、制御装置100は、電流、電圧、溶接材料の供給量等をディスプレイ140に随時表示可能である。溶接トーチ62は、溶接作業者50によって把持される。デジタル溶接機60から溶接トーチ62に電力が供給されると、これによって被溶接材70を溶接し、被溶接材70に溶接ビード72を形成する。
【0014】
信号発信部11は、溶接トーチ62に装着され、溶接トーチ62の先端位置の座標(以下、トーチ位置という)と、溶接トーチ62の中心軸の水平面に対する傾斜角(以下、トーチ傾斜角という)と、に応じて変化する座標情報を送信する。信号発信部11には、例えば、特定波長を反射することによって位置座標を特定する複数の反射材塗布マーカ、GPSセンサ、水平センサ、慣性センサ等を適用することができる。信号受信部12は、信号発信部11から発信された座標情報を受信し、この座標情報を制御装置100に供給する。
【0015】
信号受信部12には、例えば、モーションキャプチャや、上述した各種センサからの信号を受信できる受信機を適用することができる。実際の溶接においては、強力なアーク光が発生するため、信号発信部11および信号受信部12には、この影響を受け難い発信機および受信機を適用することが望ましい。なお、図示の例において信号発信部11は溶接トーチ62に装着されているが、例えば溶接作業者50に装着する手袋等に信号発信部11を装着してもよい。
【0016】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、SSDには、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、各種データ等が格納されている。OSおよびアプリケーションプログラムは、RAMに展開され、CPUによって実行される。
図1において、制御装置100の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能を、ブロックとして示している。
【0017】
すなわち、制御装置100は、座標計測部110と、アルゴリズム選択部120と、溶接作業評価部130と、を備えている。そして、座標計測部110(座標計測過程、座標計測手段)は、取得部113と、計算部114と、を備えている。また、アルゴリズム選択部120(アルゴリズム選択過程、アルゴリズム選択手段)は、作業評価データベース121と、比較選択部122と、姿勢推定部123と、を備えている。
【0018】
また、溶接作業評価部130(溶接作業評価手段、溶接作業評価過程)は、基準データベース131と、比較部132と、評価部133と、データベース補完部134(補完部)と、表示制御部135と、を備えている。
【0019】
座標計測部110は、トーチ位置とトーチ傾斜角とを計算する。アルゴリズム選択部120は、トーチ位置とトーチ傾斜角とに基づいて、複数の作業評価アルゴリズムの中から何れかの作業評価アルゴリズムを選択する。溶接作業評価部130は、選択された作業評価アルゴリズムに基づいて、溶接作業者50による溶接作業を評価する。
【0020】
座標計測部110において、取得部113は、信号受信部12から溶接トーチ62の座標情報を受信し、これを一時的に保存する。計算部114は、座標情報に基づいて、トーチ位置とトーチ傾斜角とを計算し、その結果を時間情報とを関連づけして「溶接状態データ」として記録する。計算された溶接状態データは、アルゴリズム選択部120および溶接作業評価部130に供給される。
【0021】
作業評価データベース121は、トーチ位置およびトーチ傾斜角の範囲に対応する複数の作業評価アルゴリズムを予め記憶する。姿勢推定部123は、トーチ位置とトーチ傾斜角の範囲とに基づいて、溶接作業者50の溶接姿勢を推定する。そして、比較選択部122は、推定された溶接姿勢(推定溶接姿勢)に基づいて、何れかの作業評価アルゴリズムを選択する。但し、比較選択部122は、推定溶接姿勢を用いることなく、溶接状態データに含まれるトーチ位置およびトーチ傾斜角に基づいて、何れかの作業評価アルゴリズムを選択してもよい。
【0022】
溶接作業評価部130において、基準データベース131は、トーチ位置およびトーチ傾斜角の範囲に対応して、基準データを格納する。ここで、基準データとは、基準となる溶接作業の状態、例えば理想的な溶接作業の状態を示すデータである。比較部132は、実際の溶接時の動作と、基準データとをを比較し、両者の差分を算出する。評価部133は、比較部132が出力した差分に基づいて、溶接作業者50の溶接作業を評価する。
【0023】
また、データベース補完部134は、基準データベース131に基準データが記録されていないトーチ位置およびトーチ傾斜角の範囲に対して、(換言すれば、データベースに記載のない溶接姿勢に対して)、他の基準データを内挿することによって基準データを計算する。換言すれば、データベース補完部134は、複数の作業評価アルゴリズムの一部に各々対応する複数の基準データの中から、少なくとも二つの基準データを選択し、選択した少なくとも二つの基準データを内挿することによって、選択した作業評価アルゴリズムに対応する新たな基準データを生成する。
【0024】
但し、基準データベース131が充実していれば、データベース補完部134は、省略することができる。表示制御部135は、外部のディスプレイに対して、評価部133による評価結果を表示させる。また、表示制御部135は、該ディスプレイに対して、デジタル溶接機60が溶接トーチ62に供給している電流値や電圧値を表示させてもよい。
【0025】
また、基準データベース131および比較部132に代えて、機械学習によって複数の熟練した溶接作業者の動作を学習した学習モデルを適用してもよい。この場合、学習モデルは、例えば、実際の溶接時の溶接状態データを入力すると、理想的な動作に対する乖離度を出力するものである。そして、評価部133は、この乖離度に応じて溶接作業者50の溶接作業を評価するとよい。
【0026】
また、表示制御部135に接続されるディスプレイは、例えば、溶接ブースの外部の人に対して情報を表示するものであってもよい。また、溶接作業者50が装着している溶接面52の中に装着した小型ディスプレイであってもよい。後者のディスプレイを適用すると、溶接作業者50に対して、評価部133による評価結果を、逐一フィードバックすることができる。
【0027】
[第2実施形態]
図2は、好適な第2実施形態による溶接作業評価システム2の模式図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図2において、被溶接材70は、円筒状に形成された円筒試験片170であり、水平に配置されている。円筒試験片170の周囲には、略長方形板状に形成された複数の遮蔽板160が配置され、これら遮蔽板160によって溶接ブース180が形成されている。
【0028】
従って、制御装置100およびこれに接続されるディスプレイ140は、溶接ブース180の外側に設置されている。これにより、制御装置100およびディスプレイ140には、アーク光やスパッタが到達しないようになっている。溶接作業者50の側方には、モーションキャプチャ装置152が配置されている。溶接トーチ62の先端付近には、信号発信部11として、複数の反射材塗布マーカ64(マーカ)が装着されている。このように、複数の反射材塗布マーカ64を装着したことにより、溶接トーチ62の先端の動きを詳細に追跡することができる。
【0029】
モーションキャプチャ装置152は、反射材塗布マーカ64からの反射光に基づいて、溶接作業者50および溶接トーチ62の姿勢や動きを検出し、これによって溶接トーチ62の位置および傾きを特定する。また、遮蔽板160には、随所に略長方形の貫通孔162,164が形成されており、これら貫通孔162,164の外側には、モーションキャプチャ装置150,154が配置されている。これらモーションキャプチャ装置150,152,154は、信号受信部12として機能する。このように、複数のモーションキャプチャ装置150,152,154を適用したことにより、溶接作業者50および溶接トーチ62の姿勢や動きを高精度に検出することができる。
【0030】
図2において、円筒試験片170の軸方向をz軸とする。また、z軸に直交する水平方向の軸をx軸とし、x軸およびz軸に直交する鉛直方向の軸をy軸とする。溶接ブース180の内部には、円筒試験片170を固定する治具(図示略)が配置されている。これにより、円筒試験片170の位置および姿勢は一定に保たれ、円筒試験片170を交換したとしても、x軸,y軸,z軸の座標系を変更する必要はない。
【0031】
制御装置100の構成は第1実施形態のもの(
図1参照)と同様である。すなわち、座標計測部110は、信号受信部12であるモーションキャプチャ装置150,152,154から溶接トーチ62の座標情報を受信し、トーチ位置およびトーチ傾斜角を計算する。そして、座標計測部110は、計算したトーチ位置およびトーチ傾斜角をアルゴリズム選択部120および溶接作業評価部130に随時供給する。
【0032】
図3は、制御装置100において実行される溶接作業評価処理のフローチャートである。
図3において処理がステップS1に進むと、制御装置100は、溶接作業者50による作業開始に伴い、溶接作業評価を開始する。但し、ステップS1は、溶接作業の少し前に開始してもよい。また、デジタル溶接機60から供給された、アーク点火開始信号を契機として、ステップS1を自動的に実行するようにしてもよい。
【0033】
次に、処理がステップS2に進むと、「溶接作業評価区間」の入力を行う。すなわち、ユーザが入力装置142を操作して溶接作業評価区間を入力すると、制御装置100は、その内容を記憶する。ここで、溶接作業評価区間とは、制御装置100が溶接作業を評価する区間のことを指し、溶接作業全体を評価したい場合にはアーク点火から消失時までを評価すればよい。また、一部の区間での溶接作業を細かく評価したい場合には、その範囲の溶接作業評価区間を入力するとよい。また、「溶接作業評価区間」は、「時間範囲」によって指定してもよく、また、一定時間ごとに評価区間を設けてもよい。例えば、円筒座標系において、0°から30°までの範囲を溶接作業評価区間とすることができる。
【0034】
次に、処理がステップS3では、溶接作業が開始される。溶接作業においては、アーク熱により溶接材料が溶融し、
図2に示すように、円筒試験片170にビード172が形成される。その際、溶接トーチ62に供給される電流、電圧、溶接材料の供給量等は、デジタル溶接機60から制御装置100に対して、随時供給される。
【0035】
次に、処理がステップS4に進むと、制御装置100は、トーチ位置およびトーチ傾斜角を検出する。すなわち、溶接トーチ62に装着された複数の反射材塗布マーカ64の位置をモーションキャプチャ装置150~154が検出し、その結果に基づいて、座標計測部110がトーチ位置とトーチ傾斜角とを算出する。
【0036】
より詳細に述べると、まず、座標計測部110(
図1参照)は、座標情報と時間情報とを関連づけし、その結果を1次データとして記録する。計算部114(
図1参照)は、この1次データに基づいて、トーチ位置とトーチ傾斜角とを随時計算し、計算したトーチ位置とトーチ傾斜角とを時間情報と関連付けし、2次データである「溶接状態データ」として記録する。また、トーチ位置とトーチ傾斜角とは、ディスプレイ140に随時表示され、溶接作業者50以外の人間も溶接作業における溶接状態データを観察することができる。
【0037】
次に、処理がステップS5に進むと、座標計測部110は、トーチ位置が溶接作業評価区間の終了位置に達したか否かを判定する。なお、溶接作業評価区間が、「時間範囲」によって指定された場合、座標計測部110は、現在時刻が終了時刻に達したか否かを判定する。ステップS5において「no」と判定されると、ステップS4の処理が繰り返される。一方、ステップS5において「yes」と判定されると、処理はステップS6に進む。ステップS6において、座標計測部110は、溶接作業評価区間の開始位置と終了位置におけるトーチ位置とトーチ傾斜角とに基づいて、溶接作業者50の溶接姿勢を推定する。
図4および
図5を参照し、その詳細を説明する。
【0038】
図4は、溶接作業者50の溶接姿勢の推定原理を示す図である。
図4において、y軸に沿った上方向の角度を0°とする。ここで、トーチ位置、すなわち溶接トーチ62の先端位置は、円筒試験片170の外周に沿った位置になるため、y軸に対する角度によって、トーチ位置を表すことができる。この角度を、トーチ極座標角θと呼ぶ。トーチ極座標角θが-θ1~θ1の範囲であれば、溶接作業者50は円筒試験片170を上から見下ろすような姿勢で溶接作業を行うと考えられる。そこで、この姿勢を「下向姿勢」と呼ぶ。
【0039】
また、トーチ極座標角θがθ2~-θ2の範囲であれば、溶接作業者50は円筒試験片170を下から見上げるような姿勢で溶接作業を行うと考えられる。そこで、この姿勢を「上向姿勢」と呼ぶ。また、トーチ極座標角θがθ1~θ2、または-θ1~-θ2の範囲であれば、溶接作業者50は円筒試験片170に立ち向かうような姿勢で溶接作業を行うと考えられる。そこで、この姿勢を「立向姿勢」と呼ぶ。
【0040】
図5は、溶接作業評価区間の例を示す図である。
例えば、溶接作業評価区間が「トーチ極座標角0°~30°」の範囲であったとすると、溶接トーチ62の位置P1が溶接作業評価区間の開始位置になり、位置P2が終了位置になる。
【0041】
上述したアルゴリズム選択部120の比較選択部122(
図1参照)では、溶接作業評価区間の開始位置におけるトーチ極座標角θおよびトーチ傾斜角と、終了位置におけるトーチ極座標角θおよびトーチ傾斜角と、を比較する。例えば、
図5に示すように、溶接トーチ62の先端位置のx軸方向(水平方向)の移動距離がy軸方向(垂直方向)の移動距離より大きければ、主として水平方向に溶接トーチ62が移動したと判断できる。
【0042】
また、
図5に示すように、溶接トーチ62が、x軸方向に対して45°~75°程度の正の角度だけ傾斜していれば、溶接作業者50は、円筒試験片170の溶接箇所に対して下向きになって溶接していると推定される。そこで、以上の例において、比較選択部122は、トーチ位置およびトーチ傾斜角の双方に基づいて、溶接作業評価区間における溶接作業者50の推定溶接姿勢は下向姿勢(
図4参照)であると判定する。
【0043】
また、溶接トーチ62の先端位置のx軸方向の移動距離がy軸方向の移動距離よりも大きく、かつ、溶接トーチ62が、x軸方向に対して負の角度だけ傾斜していれば、溶接作業者50は、円筒試験片170の溶接箇所に対して上向きになって溶接していると推定される。従って、比較選択部122は、溶接作業評価区間における溶接作業者50の推定溶接姿勢は上向姿勢(
図4参照)であると判定する。
【0044】
また、溶接トーチ62の先端位置のy軸方向の移動距離がx軸方向の移動距離よりも大きい場合、溶接作業者50は、円筒試験片170の溶接箇所に対して立ち向かって溶接していると推定される。従って、比較選択部122は、溶接作業評価区間における溶接作業者50の推定溶接姿勢は立向姿勢であると判定する。さらに、比較選択部122は、開始位置のy座標値が、終了位置のy座標値より大きい場合は立向下進姿勢、小さい場合は立向上進姿勢であると判定する。比較選択部122は、判定した推定溶接姿勢と、該推定溶接姿勢に対応する作業評価アルゴリズムと、を溶接作業評価部130に対して送信する。
【0045】
図3に戻り、次に処理がステップS7に進むと、溶接作業評価部130は、判定した推定溶接姿勢に対応して、基準データベース131を照合し、溶接状態データを採点する。具体的には、ステップS7においては、
図6に示す採点処理サブルーチンが呼び出される。なお、
図3に示す「横向姿勢」については、後述する第3実施形態において詳述する。
【0046】
図6は、ステップS7において呼び出される採点処理サブルーチン(
図6)のフローチャートである。
図6において処理がステップS71に進むと、溶接作業評価部130は採点処理を開始する。次に、処理がステップS72に進むと、比較部132は評価パラメータを選択する。ここで、評価パラメータとは、溶接品質に影響を与えるパラメータである。評価パラメータの候補になるパラメータは、例えば、溶接速度、トーチ傾斜角、ウィービング速度、止端停止時間、溶接電流、溶接電圧、ワイヤ供給量等である。ここでは、一例として、溶接品質に強く影響を与えると考えられる溶接速度とトーチ傾斜角とを評価パラメータとして選択する場合について説明する。
【0047】
次に、処理がステップS73に進むと、比較部132は、先に特定された推定溶接姿勢に対応する基準データを基準データベース131から読み出す。例えば、特定された推定溶接姿勢が「下向姿勢」であって、基準データにおける溶接速度が200mm/minであり、基準データにおけるトーチ傾斜角が20°であったとする。
【0048】
次に、処理がステップS74に進むと、比較部132は、基準データにおける理想的な動作と、実際に取得された溶接状態データとの差分を計算する。例えば、溶接状態データにおける平均溶接速度が180mm/minであったとすると、基準データ(200mm/min)との差分は「±10%」になる。また、溶接状態データにおける平均トーチ傾斜角が15°であったとすると、基準データ(20°)との差分は「±25%」になる。
【0049】
次に、処理がステップS75に進むと、比較部132は、これらの差分値の合算値を評価結果にするか否かを判定する。ここで「Yes」と判定されると、処理はステップS76に進み、評価部133は、各パラメータ(溶接速度、トーチ傾斜角、ウィービング速度、止端停止時間、溶接電流、溶接電圧、ワイヤ供給量等)の差分値について、重みづけ処理を行い、その結果を合算し、これを採点結果とする。なお、差分値を合算するか否かの指定、および合算する場合の各パラメータの重みづけは、上述した作業評価データベース121に含まれる作業評価アルゴリズムに含まれている。
【0050】
例えば、作業評価アルゴリズムにおいて「溶接速度とトーチ傾斜角の重みづけを4:1として合算する」と規定されている場合には、「理想的な溶接動作に対し、差分が±13%である」という採点結果を得ることができる。なお、ステップS75において「no」と判定された場合は、個々のパラメータに対する差分値が、そのまま採点結果になる。次に、処理がステップS77に進むと、採点が終了し、処理は溶接作業評価処理(
図3)に戻る。
【0051】
図3において、次に処理がステップS8に進むと、表示制御部135(
図1参照)は、上述した採点結果等をディスプレイ140に表示させる。ディスプレイ140には、採点結果に加えて、トーチ軌跡等の1次データ、溶接速度やトーチ角度等の2次データ、デジタル溶接機60から得られる電流や電圧の値を表示してもよい。次に、処理がステップS9に進むと、制御装置100は、溶接作業が終了したか否かを判定する。
【0052】
ここで、「no」と判定されると、処理はステップS4に戻り、次の溶接作業評価区間について、上述したステップS4~S8の処理が繰り返される。そして、ステップS9において「yes」と判定されると、処理はステップS10に進み、制御装置100は溶接作業評価処理を終了させる。
【0053】
[第3実施形態]
図7は、好適な第3実施形態による溶接作業評価システム3の模式図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図7において、円筒試験片170は、軸方向がy軸方向になるように、溶接ブース180の床面に配置されている。
【0054】
円筒試験片170の円中心部のx座標値、z座標値を共に「0」とし、円筒試験片170の上端面のy座標値を「0」とする。本実施形態においても、溶接ブース180の内部には、円筒試験片170を固定する治具(図示略)が配置されている。これにより、円筒試験片170の位置および姿勢は一定に保たれ、円筒試験片170を交換したとしても、x軸,y軸,z軸の座標系を変更する必要はない。そして、本実施形態においては、円筒試験片170の周回方向に沿って溶接作業を行うものとする。
【0055】
また、本実施形態の遮蔽板160においては、円筒試験片170に水平方向に対向する位置に貫通孔166が形成され、貫通孔166の外側には、モーションキャプチャ装置156が設置されている。これにより、モーションキャプチャ装置156は、反射材塗布マーカ64の位置を確実に捕捉することができる。上述した以外の溶接作業評価システム3の構成は、第2実施形態のもの(
図2参照)と同様である。
【0056】
次に、本実施形態の動作を説明する。本実施形態の制御装置100においても、溶接作業評価処理(
図3)が実行される。
図3において、ステップS1~S5の処理は第2実施形態のものと同様である。すなわち、ステップS1において制御装置100は溶接作業評価を開始し、ステップS2において溶接作業評価区間が入力され、ステップS3において溶接作業が開始される。次に、ステップS4において制御装置100はトーチ位置およびトーチ傾斜角を検出し、ステップS5において座標計測部110は、トーチ位置が溶接作業評価区間の終了位置に達したか否かを判定する。
【0057】
次に、ステップS6において、座標計測部110は、溶接作業評価区間の開始位置と終了位置におけるトーチ位置とトーチ傾斜角とに基づいて、溶接作業者50の推定溶接姿勢を特定する。
図7に示したように、本実施形態において、溶接作業者50は、円筒試験片170の周回方向に沿って溶接ビード172を形成する。
【0058】
ここで、溶接作業評価区間が、例えばトーチ極座標角θの90°~120°の範囲であったとすると、溶接作業評価区間においてトーチ位置のx座標値およびz座標値が大きく変化し、y座標値はほとんど変化しない。このような場合、溶接作業者50は、円筒試験片170の溶接箇所に対して横向きになって溶接していると考えられる。そこで、以上の例において、比較選択部122は、トーチ位置およびトーチ傾斜角の双方に基づいて、溶接作業評価区間における溶接作業者50の推定溶接姿勢は横向姿勢であると判定する。
【0059】
図3において、次に処理がステップS7に進むと、第2実施形態の場合と同様に、採点処理サブルーチン(
図6)が呼び出される。同ルーチンにおいて、ステップS71~S73の処理は上述した第2実施形態のものと同様である。すなわち、ステップS71において溶接作業評価部130は採点処理を開始し、ステップS72において比較部132は評価パラメータを選択する。
【0060】
次に、処理がステップS73に進むと、比較部132は、先に特定された推定溶接姿勢、すなわち横向姿勢に対応する基準データを基準データベース131から読み出す。この横向姿勢において、基準データにおける溶接速度が150mm/minであり、基準データにおけるトーチ傾斜角が30°であったとする。
【0061】
次に、処理がステップS74に進むと、比較部132は、基準データにおける理想的な動作と、実際に取得された溶接状態データとの差分を計算する。ここで、実際に取得された溶接状態データにおいて平均溶接速度が180mm/minであり、平均トーチ傾斜角が30°であったとする。すると、平均溶接速度の差分は「±20%」になり、トーチ傾斜角について差分は「0」になる。
【0062】
次に、ステップS75~S77の処理も第2実施形態のものと同様である。すなわち、ステップS75~S77においては、横向姿勢の作業評価アルゴリズムに基づいて、個々のパラメータの差分値、またはこれら差分値に重みづけ処理を行い合算した結果を採点結果とする。例えば、横向姿勢の作業評価アルゴリズムにおいて「溶接速度とトーチ傾斜角の重みづけを4:1として合算する」と規定されている場合には、理想的な溶接動作に対し、差分が「±16%」である評価結果が得られる。次に、処理は溶接作業評価処理(
図3)に戻るが、ここでのステップS8~S10の処理も第2実施形態のものと同様である。
【0063】
以上のように、第2,第3実施形態によれば、溶接作業者50の推定溶接姿勢が異なる場合であっても、それぞれの推定溶接姿勢に対して適切な基準データを参照して、溶接作業を評価でき、次世代の溶接作業者を効率的に養成することが可能となる。
【0064】
[実施形態の効果]
以上のように好適な実施形態によれば、溶接作業評価装置(100)は、溶接作業における溶接トーチ(62)の位置であるトーチ位置を取得する座標計測部(110)と、複数の作業評価アルゴリズムの中から、トーチ位置の動きに対応する一つの作業評価アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部(120)と、選択された作業評価アルゴリズムに基づいて、溶接作業を評価する溶接作業評価部(130)と、を備える。これにより、複数の作業評価アルゴリズムの中から、トーチ位置の動きに対応する作業評価アルゴリズムを採用することができ、溶接作業の一層適切な技能評価を実現できる。
【0065】
ここで、溶接トーチ(62)または溶接トーチ(62)を操作する溶接作業者(50)には、マーカ(64)が装着され、座標計測部(110)は、マーカ(64)の位置を計測するモーションキャプチャ装置(150~156)からの情報に基づいて、トーチ位置と、溶接トーチ(62)の傾きであるトーチ傾斜角と、を計算する機能を有すると一層好ましい。これにより、トーチ傾斜角も計測できるため、さらに適切な技能評価を実現できる。
【0066】
また、アルゴリズム選択部(120)は、トーチ位置と、溶接トーチ(62)の傾きであるトーチ傾斜角と、に基づいて溶接トーチ(62)を操作する溶接作業者(50)の姿勢を推定する姿勢推定部(123)と、姿勢推定部(123)の推定結果である推定溶接姿勢に対応する作業評価アルゴリズムを選択する比較選択部(122)と、を備えると一層好ましい。これにより、推定溶接姿勢に対応する作業評価アルゴリズムを選択することができ、さらに適切な技能評価を実現できる。
【0067】
また、溶接作業評価部(130)は、複数の作業評価アルゴリズムに各々対応する複数の基準データの中から、選択された作業評価アルゴリズムに対応する一つの基準データを選択し、選択した基準データと、トーチ位置の動きとを比較する比較部(132)を備えると一層好ましい。これにより、適切な基準データを選択できるため、さらに適切な技能評価を実現できる。
【0068】
また、溶接作業評価部(130)は、複数の作業評価アルゴリズムの一部に各々対応する複数の基準データの中から、少なくとも二つの基準データを選択し、選択した少なくとも二つの基準データを内挿することによって、選択した作業評価アルゴリズムに対応する新たな基準データを生成する補完部(134)と、新たな基準データと、トーチ位置の動きとを比較する比較部(132)と、を備えると一層好ましい。これにより、予め準備しておく基準データの種類が少ない場合においても、適切な技能評価を実現できる。
【0069】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0070】
(1)上記各実施形態においては、溶接トーチ62の中心軸の水平面に対する傾斜角を「トーチ傾斜角」として適用した例を説明した。しかし、トーチ傾斜角はこれに限られるものではなく、溶接個所における被溶接材70の表面に対する溶接トーチ62の傾斜角、溶接個所における被溶接材70の法線方向に対する溶接トーチ62の傾斜角、溶接進行方向に対する溶接トーチ62の傾斜角等をトーチ傾斜角として適用してもよい。
【0071】
(2)上記各実施形態における制御装置100のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、
図3、
図6に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。従って、これらプログラム等をこれら記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0072】
(3)
図3、
図6に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。また、
図1に示した作業評価データベース121、基準データベース131は、ネットワーク(図示せず)上のクラウドに設けてもよい。
【符号の説明】
【0073】
50 溶接作業者
62 溶接トーチ
64 反射材塗布マーカ(マーカ)
100 制御装置(溶接作業評価装置)
110 座標計測部(座標計測過程、座標計測手段)
120 アルゴリズム選択部(アルゴリズム選択過程、アルゴリズム選択手段)
122 比較選択部
123 姿勢推定部
130 溶接作業評価部(溶接作業評価手段、溶接作業評価過程)
132 比較部
134 データベース補完部(補完部)
150~156 モーションキャプチャ装置