(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20231130BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231130BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20231130BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20231130BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231130BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231130BHJP
C08L 75/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60C19/00 J
B60C1/00 B
B60C13/00 A
B60C13/00 C
B60C1/00 Z
C08L75/04
C08K3/013
C08K3/04
C08L75/06
(21)【出願番号】P 2020105627
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】浦田 智裕
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/054799(WO,A1)
【文献】特開2006-305926(JP,A)
【文献】特開2009-166419(JP,A)
【文献】特開2013-052579(JP,A)
【文献】特開2011-170105(JP,A)
【文献】特開平09-068924(JP,A)
【文献】特表2002-535422(JP,A)
【文献】特開2017-105406(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244578(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/090758(WO,A1)
【文献】特開昭63-216790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B29D 30/00-30/72
B41M 5/00-5/52
B23K 26/00
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴム上に形成された樹脂組成物膜を備え、
前記樹脂組成物膜は、ウレタンフォームと、少なくともカーボンブラックを含む2種以上の顔料とを含有し、レーザー照射によって、一次元コード又は二次元コードが印字されることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記ウレタンフォームが、エステル系ウレタンフォームであることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記顔料のうち、前記カーボンブラック以外の顔料の分解温度が、いずれも130℃以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記樹脂組成物膜に印字された二次元コードは、スタック型二次元コード又はマトリクス型二次元コードであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記加硫ゴムと前記樹脂組成物膜との間に形成された、ブチル系ゴムを含有する中間層をさらに備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記中間層の厚さが、0.2~0.4mmであることを特徴とする、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記樹脂組成物膜が、サイドウォール部に形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記加硫ゴムが、老化防止剤を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記加硫ゴムにおける前記老化防止剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して6質量部以下であることを特徴とする、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記レーザー照射後の、前記樹脂組成物膜の加飾部分のカーボンブラックの含有量が、0.1質量%以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤに対して、文字、マーク、図形等の絵柄を付与する表面加飾が行われることがある。また、表面加飾の1つとして、商品管理等の目的でタイヤに付されるバーコードやQRコード(登録商標)等のコードが挙げられる。
例えば特許文献1には、タイヤ識別コードとして二次元バーコードを用いたタイヤ識別ラベルに関する技術が開示されている。
【0003】
ここで、タイヤへ加飾する方法としては、インクジェット等の印刷によって絵柄を付す方法が知られている。印刷による加飾は、高精細の絵柄を付することができるという利点や、タイヤは使用中に歪みが発生することが想定されるところ、印刷による加飾部分はその歪みに追従することができるという利点がある。
ただし、印刷による加飾では、印刷した加飾が擦れて経時的に加飾部分の色彩が薄くなり、耐久性に問題があった。
【0004】
また、印刷とは別の加飾方法として、タイヤの表面に凹凸を形成することによって加飾を行う技術が知られている。例えば特許文献2には、タイヤ識別のため、タイヤ表面に複数の凹凸を形成することで、バーコードを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-128063号公報
【文献】特開2012-224194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術では、タイヤの表面に簡単なバーコードを形成することは可能であるものの、高精細なコードを付することが難しいという問題があった。また、高精細なコードを付する場合には、タイヤの表面に形成された凹凸が細かくなり、耐久性が低下するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、耐久性が高く、高精度な一次元コード又は二次元コードが印字されたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究を行った。タイヤの加硫ゴム上に形成された樹脂組成物膜について、ウレタンフォームと、少なくともカーボンブラックを含む2種以上の顔料とを含有させ、レーザー照射によって樹脂組成膜中のカーボンブラックを、を分解・蒸発させることによって、印字された一次元コード又は二次元コードは、高精度であり、耐久性についても高くなることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明のタイヤは、加硫ゴム上に形成された樹脂組成物膜を備え、前記樹脂組成物膜は、ウレタンフォームと、少なくともカーボンブラックを含む2種以上の顔料とを含有し、レーザー照射によって、一次元コード又は二次元コードが印字されることを特徴とする。
上記構成により、耐久性が高く、高精度な一次元コード又は二次元コードが印字されたタイヤを得ることができる。
【0010】
また、本発明のタイヤでは、前記ウレタンフォームが、エステル系ウレタンフォームであることが好ましい。印字されたコードの耐久性をより高めることができるためである。
【0011】
さらに、本発明のタイヤでは、前記顔料のうち、前記カーボンブラック以外の顔料の分解温度が、いずれも130℃以上であることが好ましい。より高精度にコードを印字できるためである。
【0012】
さらにまた、本発明のタイヤでは、前記樹脂組成物膜に印字された二次元コードは、スタック型二次元コード又はマトリクス型二次元コードであることが好ましい。種々の二次元コードに対応できるためである。
【0013】
また、本発明のタイヤでは、前記加硫ゴムと前記樹脂組成物膜との間に形成された、ブチル系ゴムを含有する中間層をさらに備えることが好ましい。印字されたコードの耐久性をより高めることができるためである。
【0014】
さらに、本発明のタイヤでは、前記中間層の厚さが、0.2~0.4mmであることがより好ましい。印字されたコードの耐久性をより高めることができるためである。
【0015】
また、本発明のタイヤでは、前記樹脂組成物膜が、サイドウォール部に形成されていることが好ましい。印字されたコードの視認性が高く、コードを長期間保持できるためである。
【0016】
さらに、本発明のタイヤでは、前記加硫ゴムが、老化防止剤を含むことが好ましい。加硫ゴムの劣化を抑えるためである。
【0017】
さらにまた、本発明のタイヤでは、前記加硫ゴムにおける前記老化防止剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して6質量部以下であることがより好ましい。加硫ゴムの劣化を抑えつつ、印字されたコードの耐久性をより高めることができるためである。
【0018】
また、本発明のタイヤでは、前記レーザー照射後の、前記樹脂組成物膜の加飾部分のカーボンブラックの含有量が、0.1質量%以下であることが好ましい。より高精度にコードを印字できるためである
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐久性が高く、高精度な一次元コード又は二次元コードが印字が印字されたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの樹脂組成物膜が形成された部分を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態に係るタイヤの樹脂組成物膜が形成された部分を模式的に示した断面図である。
【
図3】タイヤの加硫ゴム上に、樹脂組成物膜を形成する工程の一例を示したフロー図である。
【
図4】実施例によって得られた画像を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<タイヤ>
以下に、本発明のタイヤの一実施形態について詳細に説明する。
なお、
図1及び
図2では、図面の上方向がタイヤ外方(タイヤ径方向外側又はタイヤ幅方向外側)を示し、図面の下方向がタイヤ内方(タイヤ径方向内側又はタイヤ幅方向内側)を示す。また、
図1~
図3については、説明の便宜上、実物とは異なる寸法や形状で示されている部分もある。
【0022】
本発明のタイヤ100は、
図1に示すように、加硫ゴム10上に形成された樹脂組成物膜12を備えたタイヤである。
そして、本発明では、前記樹脂組成物膜12は、ウレタンフォーム13と、少なくともカーボンブラック14を含む2種以上の顔料とを含有し、レーザー照射によって、一次元コード又は二次元コードが印字されることを特徴とする。
【0023】
タイヤ100の加硫ゴム10上に形成された樹脂組成物膜12中に含まれたカーボンブラック14を、レーザー照射によって分解・蒸発させることで、取り除くことができるため、カーボンブラック以外の顔料15によって印字が行われる。そして、一次元コード又は二次元コードは、レーザーの照射位置を制御したり、前記樹脂組成物膜12における前記顔料14、15の含有箇所を制御することによって、高精度に得ることが可能となる。また、前記樹脂組成物膜12は、樹脂の含侵性が高く、柔軟性及び強度の高いウレタンフォーム13を含んでいるため、長期間使用した際の耐久性についても向上できる。
【0024】
(加硫ゴム)
本発明のタイヤ100は、
図1に示すように、タイヤの構成材料である加硫ゴム10を備える。
前記加硫ゴム10は、ゴム組成物を加硫させてなり、ゴム組成物の構成については、要求されるタイヤの種類、部位、性能等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記ゴム組成物は主として、ゴム成分、充填剤、及び、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等の各種成分を含むことができる。各成分の配合量についても、要求されるタイヤの性能に応じて適宜選択することができる。
【0025】
ただし、本発明のタイヤ100において、加硫ゴム10中に過剰の老化防止剤が含まれていると、老化防止剤が経時的に樹脂組成物膜12に移行し、加飾領域及び非加飾領域の色調が経時的に変化し、十分な耐久性が得られないおそれがある。そのため、前記ゴム組成物中の老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0質量部を超え6質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0026】
(樹脂組成物膜)
本発明のタイヤ100は、
図1に示すように、前記加硫ゴム10上に形成された樹脂組成物膜12を備える。
前記樹脂組成物膜12は、少なくともウレタンフォーム13を含有し、複数の孔13aを有している。これら複数の孔13aは、
図1に示すように粒状の空隙となっていてもよいし、層状の空洞であってもよい。
【0027】
前記樹脂組成物膜12の樹脂成分(ここではエラストマーを含む)としては、樹脂の含浸性の観点から、樹脂組成物膜12は、ウレタンフォームを含有し、必要に応じて、ポリスチレン、ポリプロピレン、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等をさらに含有することもできる。さらに、前記ウレタンフォームについては、強度が高く、印字されたコードの耐久性をより高めることができる観点から、エステル系ウレタンフォームであることが好ましい。
【0028】
また、前記ウレタンフォーム13は、複数の孔13aを有するが、セル径(孔13aの大きさの平均)が600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。
前記セル径の上限値が上記範囲であると、前記ウレタンフォーム13の孔13内に十分な量の顔料が存在することとなり、印字された一次元コード又は二次元コードの色調を適切な範囲とすることが可能となる。なお、前記ウレタンフォーム13の孔13内に顔料を含ませる観点から、前記セル径は200μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましい。
なお、前記ウレタンフォーム13の孔13aは、積層体10の断面を走査型電子顕微鏡で観察することによって確認できる。
【0029】
前記樹脂組成物膜12に含まれるウレタンフォーム13は、圧縮されていないものでもよいし、圧縮されたものであってもよい。なお、前記ウレタンフォームが圧縮された場合も、ポリウレタンフォームのセル径は上述の範囲であることが好ましい。
【0030】
なお、前記樹脂組成物膜12の厚さについては、要求される性能に応じて適宜設定することができる。例えば、タイヤのサイドウォール部やトレッド部に設けられる場合には、樹脂組成物膜12の厚さを100~500μmとすることが好ましい。
【0031】
そして、前記樹脂組成物膜12は、
図1に示すように、前記ウレタンフォーム13に加えて、少なくともカーボンブラック14を含む2種以上の顔料を含有する。
本発明のタイヤ100では、前記樹脂組成物膜12中に、2色以上の顔料を用いることにより、後述する加飾によって積層体に所望の一次元コード又は二次元コードを付与することができる。すなわち、意匠性に優れる高精細なコードを得ることができる。前記顔料については、
図1に示すように、1つの孔13内にカーボンブラック14と発色剤としてのカーボンブラック以外の顔料15とが共存していることが好ましいが、1つの孔13内に一方の顔料のみが収容する場合があってもよい。
【0032】
前記顔料としてカーボンブラックを用いることにより、上述した老化防止剤の移行による色調の変化や、表面に発生したクラック等の傷を目立ちにくくすることができる。また、後述する加飾により、加飾領域と非加飾領域との色のコントラストを大きくし、積層体表面に形成する絵柄を鮮明にすることも可能であり、意匠性に優れる一次元コード又は二次元コードを得ることが可能となる。さらに、前記カーボンブラックは、レーザー照射による分解が行いやすいという利点を有する。
【0033】
前記カーボンブラックについては、特に限定されず、公知のカーボンブラックを用いることができる。前記カーボンブラックとして、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAF等の各種グレードのカーボンブラック、カラー用カーボンブラックなどを使用することができる。
なお、前記カーボンブラックの粒子径は特に限定されない。例えば、粒子径が10~400nmのものを使用することができる。
【0034】
前記顔料は、発色剤として、カーボンブラック以外の(すなわち、黒色以外の色を有する)顔料を含有させる。これによって、後述するレーザー照射により加飾(印字)した際に、加飾領域に所望の色を付与することができ、意匠性に優れる一次元コード又は二次元コードを得ることができる。
特に、前記カーボンブラックと色調が大きく異なる顔料を用いることにより、加飾領域と非加飾領域との色のコントラストを大きくして、鮮明な一次元コード又は二次元コードを形成することが可能であり、意匠性をより高めることが可能となる。
【0035】
前記カーボンブラック以外の顔料としては、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。前記樹脂組成物膜は、後述するように加硫工程を経て製造されるため、前記カーボンブラック以外の顔料は、加硫温度で分解しないものであることが好ましく、具体的には、分解温度が130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。
【0036】
前記無機顔料としては、例えば、亜鉛華、亜鉛末、亜鉛化鉛、アルミニウム顔料、一酸化鉛、雲母状酸化鉄顔料、塩基性クロム酸鉛、塩基性炭酸鉛、鉛丹、鉛白、黄鉛、オーカー、カオリン、クレー、群青、ご粉、紺青、酸化鉄顔料、酸化鉄粉、シアナミド鉛、重質炭酸カルシウム、ジンククロメート、タルク、地の粉、沈降炭酸カルシウム、沈降硫酸バリウム、鉄黄、との粉、二酸化チタン、白亜、バライト粉等が挙げられる。
【0037】
前記有機顔料としては、例えば、溶性アゾレッド、モノアゾイエロー、モノアゾレッド、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料;銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、コバルトフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料が挙げられる。なお、分解温度の観点から、前記有機顔料からは、リソールレッド、ボンマルーンライト、Pigment yellow 5等は除外される。
【0038】
前記樹脂組成物膜中の前記カーボンブラックの含有量は、0.1~1.0質量%であることが好ましく、0.2~0.8質量%であることがより好ましい。前記カーボンブラックの含有量を上記範囲とすることにより、前記樹脂組成物膜を所望の色調とすることができるとともに、加飾領域と非加飾領域とのコントラストを大きくすることができる。
また、前記樹脂組成物膜中のカーボンブラック以外の顔料の含有量は、顔料の種類、加飾後の加飾領域(一次元コード又は二次元コード)の色調、加飾領域と非加飾領域とのコントラストなどを考慮して適宜設定することができる。
【0039】
また、本発明のタイヤ100では(
図1)、前記樹脂組成物膜12中の前記ウレタンフォーム13の孔13a内はバインダー樹脂(図示せず)が充填されていてもよい。前記バインダー樹脂は、前記顔料を孔内部に固定する役割を果たす。前記バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、クロロプレンゴム等が挙げられる。前記バインダー樹脂は、1種単独であっても良いし、2種以上を組み合わせたものであっても良い。特に、前記バインダー樹脂は、樹脂組成物膜12と同じ樹脂成分、つまりウレタンを含有することが好ましい。
【0040】
前記樹脂組成物膜12は、本発明の趣旨に反しない範囲で、前駆体である樹脂発泡体に含まれる添加物を含有していても良い。このような添加物の例としては、触媒、発泡剤、消泡剤、界面活性剤、硬化剤などである。
【0041】
そして、本発明のタイヤ100では、前記樹脂組成物膜12がレーザー照射によって、一次元コード又は二次元コードが印字される。
レーザー照射された領域(加飾部分)では、孔内のカーボンブラック14が消失しているが、カーボンブラック以外の顔料15が残留している。このため、加飾領域では、カーボンブラック以外の顔料15に由来する色調を呈する。一方、レーザー照射されていない領域(非加飾領域)は、主にカーボンブラックに由来する黒色を呈する。すなわち、レーザー照射による加飾により、樹脂組成物膜12に、カーボンブラック以外の顔料15が呈する色で、一次元コード又は二次元コードを付与することができる。
【0042】
前記樹脂組成物膜12にレーザーが照射されることにより、カーボンブラック14が焼失することになるが、前記加飾部分での前記カーボンブラックの含有量は0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが最も好ましい。高精細な一次元コード又は二次元コードを、より鮮明に表示できるためである。
【0043】
ここで、前記一次元コード又は二次元コードについては、特に限定はないが、より高精細なコードを形成する点からは、前記コードは二次元コードであることが好ましい。前記二次元コードとしては、例えば、スタック型二次元コードや、マトリクス型二次元コード等が挙げられる。
前記スタック型二次元コードについては、従来のバーコードを縦に積み重ねた構造を持つ二次元コードである。前記マトリクス型二次元コードは、セルと呼ばれる正方形又は点を格子状に配列した構造を持つ二次元コードであり、二次元コードの位置検出を容易にするために、正方形の枠やL字のフレームで囲われていたり、ファインダパターン(切り出しシンボル)と呼ばれる特徴的なマークがシンボルのなかに配置されている。これらの二次元コードについて、正確な読み取りが行えるようにするためには、コードを高精度に印字する必要がある。
【0044】
なお、本発明のタイヤにおいて、前記樹脂組成物膜を設ける箇所は、特に限定はされず、用途や仕様等に応じて、適宜選択することができる。
例えば、印字された一次元コード又は二次元コードの視認性が高く、コードを長期間保持できる観点からは、前記樹脂組成物膜を、タイヤのサイドウォール部に形成することができる。
【0045】
(中間層)
本発明のタイヤ100については、
図2に示すように、前記加硫ゴム10と前記樹脂組成物膜12との間に形成された、ブチル系ゴムを含有する中間層11をさらに備えることが好ましい。前記加硫ゴム10から老化防止剤等の成分が前記樹脂組成物膜12へ移行し、樹脂組成物膜12の色調が変化することを防ぐことができるためである。
【0046】
前記中間層11は、ブチル系ゴムを含む。該ブチルゴムについては、特に限定はされず、公知のブチルゴムを用いることができる。ブチルゴムは未変性ブチルゴムでもよく、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどの変性ブチルゴムでもよい。
これらのブチルゴムは、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせることもできる。
【0047】
また、前記中間層11を構成するゴム成分中のブチルゴムの割合は、中間層に要求される性能に応じて適宜調節することができる。例えば、前記中間層11を構成するゴム成分中のブチルゴムの割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0048】
前記中間層11を構成するゴム成分については、ブチルゴム以外のゴム成分を含むことができる。前記ブチルゴム以外のゴム成分としては、例えば、イソブチレンと少なくとも1種の他のコモノマーとのコポリマー及びターポリマーなどが挙げられる。有用なコモノマーとしては、例えば、ジビニル芳香族モノマー、アルキル置換ビニル芳香族モノマー、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。ジビニル芳香族モノマーとしては、ビニルスチレンが挙げられる。アルキル置換ビニル芳香族モノマーとしては、α-メチルスチレンおよびp-メチルスチレンが挙げられる。
【0049】
前記コポリマーおよびターポリマーは、塩素化、臭素化などハロゲン化されていてもよい。例えば、ハロゲン化コポリマーまたはハロゲン化ターポリマーとして、p-ブロモメチルスチレンなどのモノマーに由来するものが挙げられる。
【0050】
例えば、中間層を構成するゴム組成物は、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマー、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーの臭素化物(p-ブロモメチルスチレニルのモノマー単位を有するコポリマーを生ずる)、および、これらのハロゲン化物などが挙げられる。
【0051】
前記イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーは、当該コポリマーの全質量に対して、0.5~25質量%、または2~20質量%のp-メチルスチレンを含み、当該コポリマーの残りはイソブチレンとしても良い。
また、前記イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーは、上述のように臭素などでハロゲン化されていても良い。ハロゲン化されている場合は、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーは、0質量%より多く10質量%以下、または0.3~7質量%のハロゲンを含有しても良い。
【0052】
前記イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマーは、当該ターポリマーの全質量に対して、95~99質量%、または96~98.5質量%のイソブチレンと、0.5~5質量%、または0.8~2.5質量%のイソプレンとを含み、当該ターポリマーの残りはビニルスチレンとしてもよい。
【0053】
前記ハロゲン化物の場合、前記コポリマーまたはターポリマーの全質量に対して、0.1~10質量%、または0.3~7質量%、または0.5~3質量%のハロゲンが含まれていてもよい。
例えば、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーのハロゲン化物及び非ハロゲン化物は、商品名「Exxpro(商標)」(ExxonMobil Chemical Co.)として入手可能である。また、例えば、p-ブロモメチルスチレニルのマー単位を有するコポリマーは、商品名「Exxpro 3745」(ExxonMobil Chemical Co.)として入手可能である。また、例えば、イソブチレンと、イソプレンと、ビニルスチレンとのターポリマーのハロゲン化物および非ハロゲン化物は、商品名「Polysar Butyl(商標)」(Lanxess;Germany)として入手可能である。
【0054】
前記中間層を構成するゴム組成物においては、ゴム成分中のブチルゴム以外のゴム成分の割合は、適宜調節すればよい。ゴム成分中の当該割合は、例えば、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、または10質量部以下とすることができる。
【0055】
例えば、前記ブチルゴム以外のゴム成分として、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマー、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーの臭素化物およびこれらのハロゲン化物からなる群より選択される1種以上を選択し、当該ゴム成分の割合は、全ゴム成分の20~30質量%とすることが好ましい。
なお、前記ブチルゴム以外のゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
前記中間層を構成するゴム組成物は、前記ゴム成分以外に、フィラー、オイル、ステアリン酸、架橋剤、共架橋剤など、公知の添加剤を含むことができる。なお、前記樹脂組成物膜の色調変化を抑制する観点からは、前記中間層を構成するゴム組成物は、実質的に老化防止剤を含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、老化防止剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以下であることを意味する。
【0057】
また、前記中間層を構成するゴム組成物は、上述した添加材の中でもフィラーを含んでいることが好ましい。前記フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、層状又は板状粘土鉱物が挙げられる。これらの中でも、前記中間層を構成するゴム組成物は、層状又は板状粘土鉱物を含むことが好ましい。上述した加硫ゴムからの老化防止剤の移行を更に抑制することができるためである。
【0058】
前記層状又は板状粘土鉱物は、天然品、合成品のいずれも使用することができる。層状又は板状粘土鉱物としては、例えば、カオリン質クレー、セリサイト質クレー、焼成クレー、表面処理を施したシラン改質クレー等のクレー;モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物;マイカ、長石、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク及び膨潤性マイカ等が挙げられる。これらの中でも、加硫ゴム11からの老化防止剤の移行を抑制する観点から、クレー、マイカ、タルク及び長石が好ましく、クレー、マイカ及びタルクがより好ましく、クレー及びタルクがさらに好ましく、クレーが特に好ましい。また、前記クレーの中でも、カオリン質クレーが特に好ましい。これら層状又は板状粘土鉱物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記層状又は板状粘土鉱物の平均粒径(Malvern Methodにより測定)は、積層体の耐屈曲性を考慮すると、50μm以下であることが好ましく、0.2~30μmであることがより好ましく、0.2~5μmであることがさらに好ましい。
【0060】
前記中間層を構成するゴム組成物中に前記層状又は板状粘土鉱物が含まれる場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、25質量部以上であることが特に好ましい。前記層状又は板状粘土鉱物の含有量が上記割合であることにより、加硫ゴムからの老化防止剤の移行を抑制することができる。一方、ゴム組成物の混練における作業性(混練し易さ)を向上させる観点から、前記層状又は板状粘土鉱物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0061】
なお、前記中間層の厚さは、特に限定はされないが、0.2~1.5mmであることが好ましく、0.3~1mmであることがより好ましい。印字された一次元コード又は二次元コードの耐久性をより高めることができるためである。前記中間層の厚さが0.2mm以上である場合には、前記加硫ゴムから前記樹脂組成物膜へ老化防止剤が移行するのを十分に抑制でき、前記中間層の厚さが1.5mm以下の場合には、前記樹脂組成物と前記中間層との積層体が厚くなりすぎ、剥離等が発生するのを抑制できる。
【0062】
<タイヤに一次元コード又は二次元コードを印字する方法>
本発明のタイヤに一次元コード又は二次元コードを印字する方法は、特に限定はされない。
例えば、顔料担持工程(
図3(a))、積層工程(
図3(b))、加硫工程(
図3(c))、レーザー照射工程(図示せず)を経て、一次元コード又は二次元コードを印字することができる。
【0063】
前記顔料担持工程では、
図3(a)に示すように、複数の孔13a’を含むウレタンフォーム13’に、顔料14、15を担持させる。ウレタンフォーム13’として、シート状など、任意の形状及び大きさに切断されたものを使用することができる。
前記ウレタンフォーム13’は、例えば、ポリウレタンフォームに加えて、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)フォーム等を含むこともできる。
本発明では、前記ウレタンフォーム13’の厚さは、前記樹脂組成物膜12の膜厚を考慮して適宜選択することができる。例えば、ポリウレタンフォーム13’の厚さを0.5~50mmとすることができる。
【0064】
前記ウレタンフォーム13’は、セル径が600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。セル径の上限値が上記範囲であると、孔内に十分な量の顔料を担持させることができる。セル径は200μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましい。なお、前記セル径は、JIS K6400-1:2004年の付属書1に従って求めることができる。
【0065】
また、前記ウレタンフォーム13’は、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォームのいずれでもよい。前記ウレタンフォーム13’の気泡構造は特に限定されず、独立気泡構造、連続気泡構造、または独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造(以下、単に「混在気泡構造」という)のいずれでもよい。これらの中でも、前記ウレタンフォーム13’の気泡構造は、顔料を担持させるとの観点から、独立気泡構造がより好ましい。
【0066】
前記ウレタンフォーム13’の気泡に顔料を担持させる方法としては、例えば、顔料14、15を含む含浸液に、ウレタンフォーム13’を浸漬し、気泡13a’内に顔料14、15を含有させる方法がある。
この場合、顔料14、15を含有する含浸液は少なくとも、上述した顔料14、15と、分散媒と、を含む。
前記分散媒は、有機溶媒、水、バインダー樹脂のうち少なくとも1種である。分散媒は、含浸液の粘度、顔料の分散性などを考慮して、適宜選択することができる。
【0067】
有機溶媒としては、トルエン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、クロロプレンゴムなどが挙げられる。バインダー樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記バインダー樹脂を他の分散媒(有機溶媒、水)と併存させる場合は、バインダー樹脂が有機溶媒または水に溶解することが好ましい。また、バインダー樹脂には、架橋剤などの公知の添加物が含まれていてもよい。
【0068】
なお、前記含浸液中のカーボンブラックの配合量は、分散媒100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましい。前記カーボンブラックの配合量が上記範囲であることにより、積層体(加飾後においては非加飾領域)を所望の色調とすることができるとともに、加飾領域(一次元コード又は二次元コードの印字部分)と非加飾領域とのコントラストを大きくすることができる。一方で、後述する加飾工程で照射されるレーザー光をカーボンブラックが吸収するため、カーボンブラックの配合量が多すぎると積層体が損傷するおそれがある。積層体の熱損傷を抑制する観点から、カーボンブラックの配合量は、分散媒100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましい。レーザー照射によりカーボンブラックを確実に消失させて、加飾領域と非加飾領域とのコントラストを大きくするとの観点から、前記カーボンブラックの配合量は、分散媒100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
【0069】
また、前記含浸液中のカーボンブラック以外の顔料の配合量は、発色剤の種類、加飾領域の色調、加飾領域と非加飾領域とのコントラストを大きくすることなどを考慮して調整することができる。
【0070】
さらに、非加飾領域及び加飾領域を所望の色調とするとともに、コントラストを大きくするとの観点から、含浸液中のカーボンブラック(CB)と、カーボンブラック以外の顔料(CF、複数の顔料を含む場合は合計量)との比率(CF/CB、質量比)は、8/2~5/5であることが好ましく、7/3~6/4であることがより好ましい。
特に、前記含浸液がバインダー樹脂を含む場合には、バインダー樹脂(BD、固形分)と顔料(カーボンブラック及びそれ以外の顔料の合計、PG)との比率(BD/PG、質量比)は、100/1~100/20であることが好ましい。
【0071】
前記含侵液を前記ウレタンフォーム13’中に含浸させる方法としては、(iウレタンフォーム13’に圧力をかけて圧縮し、圧縮した状態で含浸液中に浸漬し、含浸液中で圧力を解除して樹脂発泡体を膨張させる方法、(ii)ウレタンフォーム13’を含浸液中に浸漬し、浸漬した状態で樹脂発泡体に対して圧力の付与及び解除を行う方法、とが挙げられる。含浸液から取り出されたウレタンフォーム13’を、その後、所定間隔を空けて配置されたロールの間を通過させることにより、樹脂発泡体中の含浸液の量が調整されても良い。含浸後のウレタンフォーム13’は、所定の条件(温度、時間など)で乾燥される。
ウレタンフォーム13’に付与される圧力、含浸時間、ロール間隔、乾燥温度・時間などの条件は、樹脂発泡体に担持される顔料の量、バインダー樹脂量、後工程での取り扱い性等を考慮して適宜設定することができる。
【0072】
前記積層工程は、
図3(b)に示すように、前記顔料担持工程(
図3(a))により、気泡13a’に顔料14、15を担持したウレタンフォーム13’を、加硫ゴムを構成するゴム組成物10’に積層させる。
図2に示すように中間層11を備える場合には、ウレタンフォーム13’と加硫ゴムを構成する未加硫のゴム組成物10’との間に、中間層11を構成するゴム組成物を含んだ成型体を配置することができる。
【0073】
前記加硫ゴムとなるゴム組成物10’は、公知の方法により、上述した加硫ゴムを構成するゴム組成物を成形したものである。該ゴム組成物10’は、未加硫のものであっても良いし、予め加硫されたものを用いることもできる。なお、層間の接着性や再加硫による加硫ゴムの劣化抑制の観点から、該ゴム組成物10’は未加硫であることが特に好ましい。
【0074】
前記中間層となる成型体は、公知の方法により、上述した中間層のゴム組成物から成形される。該成型体は、未加硫のものであっても良いし、予め加硫されたものであっても良い。なお、層間の接着性や再加硫による中間層の劣化抑制の観点から、該成型体は未加硫であることが特に好ましい。
該成型体の厚さは、積層体としたときの中間層の厚さを考慮して設定することができる。例えば、0.1~1.5mmの厚さを有する中間層となるようにゴム組成物を含む成型体を用いることができる。
【0075】
前記加硫工程は、
図3(c)に示すように、積層工程(
図3(b))でゴム組成物10’上に形成した、気泡13a’に顔料14、15を担持したウレタンフォーム13’を、圧縮しながら加熱する。これにより、ゴム組成物10’が加硫されて加硫ゴム10が形成されるとともに、加硫ゴム10と密着した樹脂組成物膜12が形成される。
加硫の条件(圧力、温度など)は特に限定されず、加硫ゴム10(及び中間層11)のゴム組成物を考慮して適宜設定することができる。
【0076】
前記加硫工程(
図3(c))を経て得られた樹脂組成物膜12を備えるタイヤは、加飾工程において、レーザー照射によって一次元コード又は二次元コードが前記樹脂組成物膜12に印字される。レーザー照射により、樹脂組成物膜12中のカーボンブラック14がレーザー光を吸収し、消失する。レーザー照射された領域(一次元コード又は二次元コードの印字部分)にはカーボンブラックがなくなり、加飾領域は発色剤による色を呈することになる。
【0077】
ここで、前記一次元コード又は二次元コードを印字するためのレーザー照射は、照射位置を制御することによって、一次元コード又は二次元コードを印字することができる。また、前記樹脂組成物膜12における前記顔料14、15の含有箇所を制御し、レーザー照射を前記樹脂組成物膜12前面に施すことも可能である。ただし、樹脂組成物膜12中に一次元コード又は二次元コードをより高精度に描画する観点から、照射位置を制御することによって、一次元コード又は二次元コードを印字することが好ましい。
【0078】
前記カーボンブラックを消失させるためには、レーザー光の波長は、カーボンブラックの吸収波長域の範囲内にある必要がある。一方で、加飾領域でカーボンブラック以外の顔料による色を発色させるためには、該顔料が吸収しない、あるいは、吸収量が小さい波長のレーザー光を選定することが好ましい。また、レーザー照射された加飾積層体の表面状態など良好な外観を保持するためには、少なくとも樹脂組成物膜の主成分が吸収しない、あるいは、吸収量が小さい波長のレーザー光を選定することが好ましい。
使用するレーザー光は、基本波であっても良く、高調波であってもよい。例えば、レーザーとしては、Nd:YAGレーザー(波長:1.06μm)、Nd:YOV4レーザー(波長:1.06μm)、希土類添加ファイバーレーザーなどが挙げられる。
なお、出力、照射時間などのレーザー照射条件は、加飾領域の色調、一次元コード又は二次元コードの印字部分と非加飾領域とのコントラストなどを考慮して、適宜設定することができる。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
図1に示すように、ウレタンフォーム13中に、カーボンブラック14を固形分で0.5%含有する着色剤(大日精化工業社製「DW1790」)、及び、酸化チタン15を固形分で6.4%含有する着色剤(大日精化工業社製「DW1012」)含有させた樹脂組成物膜12を、加硫ゴム上に設けた。
その後、LDF社製「UM-2」を使用して、出力:50%(max1Wに対する割合)、ステップサイズ(移動量):40μm(xy軸両方)、速度(次点に移動するまでの速度):200mm/min、パルス数((同一点に連続照射する回数):2回、Q-S周波数(同一点に連続照射する間隔):10kHz、回数(一連の動作の繰り返し回数):1回、の条件でYAGレーザーを照射し、加硫ゴム上の樹脂組成物膜12にQRコード(登録商標)を印字した。印字したQRコード(登録商標)を
図4に示す。
【0081】
図4から、種々のサイズの高精細なQRコード(登録商標)を樹脂組成物膜12上に印字できていることがわかる。
また、それぞれのQRコード(登録商標)について、スマートフォンのQR読み込みアプリケーションを用いてスキャンを行った結果、直径20mmのQRコード(登録商標)及び直径10mmのQRコード(登録商標)については、問題なくスキャンできた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、耐久性が高く、高精度な一次元コード又は二次元コードが印字が印字されたタイヤを提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 加硫ゴム
11 中間層
12 樹脂組成物膜
13 ウレタンフォーム
14 カーボンブラック
15 カーボンブラック以外の顔料
100 タイヤ