(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20231130BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231130BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20231130BHJP
【FI】
C07D471/04 105E
C07D471/04 CSP
H05B33/14 B
H05B33/22 B
(21)【出願番号】P 2020507865
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011640
(87)【国際公開番号】W WO2019181997
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2018055656
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】イ スジン
(72)【発明者】
【氏名】キム シイン
(72)【発明者】
【氏名】駿河 和行
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄太
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0248022(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0027660(KR,A)
【文献】国際公開第2015/083948(WO,A1)
【文献】The Journal of Organic Chemistry,2014年,Vol. 79,pp. 11395-11408
【文献】Organic Letters,2017年,Vol. 19,pp. 4726-4729
【文献】The Journal of Organic Chemistry,2005年,Vol. 70,pp. 4879-4882
【文献】Advanced Synthesis & Catalysis,2017年,Vol. 360,pp. 86-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される
、ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
【化1】
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
Arは相互に同一でも異なってもよく、
R
3およびR
5は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を表
す。)
【請求項2】
一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも1つの前記有機層が請求項
1に記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む前記有機層が電子輸送層である、請求項
2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む前記有機層が正孔阻止層である、請求項
2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む前記有機層が発光層である、請求項
2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む前記有機層が電子注入層である、請求項
2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)に適した化合物と素子に関するものであり、詳しくはベンゾイミダゾール環構造を有する化合物と、該化合物を用いた有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子に比べて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であることから、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体と正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるようになった(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、積層構造の各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、および陰極を設けた電界発光素子によって高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、発光効率の更なる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光性化合物の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
そして、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されている。2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって5.3%の外部量子効率を実現させた。(例えば、非特許文献3参照)
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光性化合物や燐光発光性化合物または遅延蛍光を放射する材料をドープして作製することもできる。前記非特許文献に記載されているように、有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。(例えば、非特許文献2参照)
【0007】
有機EL素子においては、両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られるが、正孔、電子の両電荷を如何に効率良く発光層に受け渡すかが重要である。電子注入性を高め、電子移動度を高め、更に陽極から注入された正孔をブロックする正孔阻止性を高め、正孔と電子が再結合する確率を向上させ、更に発光層内で生成した励起子を閉じ込めることによって、高効率発光を得ることができる。そのため電子輸送材料の果たす役割は重要であり、電子注入性が高く、電子移動度が大きく、正孔阻止性が高く、さらには正孔に対する耐久性が高い電子輸送材料が求められている。
【0008】
また、素子の寿命に関しては材料の耐熱性やアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料では、素子駆動時に生じる熱により、低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料では、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。そのため使用する材料には耐熱性が高く、アモルファス性が良好な性質が求められる。
【0009】
代表的な発光材料であるトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以後、Alq3と略称する)は電子輸送材料としても一般的に用いられるが、電子移動が遅く、また仕事関数が5.6eVなので正孔阻止性能が十分とは言えない。
【0010】
電子注入性や移動度などの特性を改良した化合物として、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物が提案されているが(例えば、特許文献3)、これらの化合物を電子輸送層に用いた素子では、発光効率などの改良はされているものの、未だ十分とはいえず、さらなる低駆動電圧化や、さらなる高発光効率化が求められている。
【0011】
また、正孔阻止性に優れた電子輸送材料として、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(以後、TAZと略称する)が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0012】
TAZは仕事関数が6.6eVと大きく正孔阻止能力が高いために、真空蒸着や塗布などによって作製される蛍光発光層や燐光発光層の、陰極側に積層する電子輸送性の正孔阻止層として使用され、有機EL素子の高効率化に寄与している(例えば、非特許文献4参照)。
【0013】
しかし電子輸送性が低いことがTAZにおける大きな課題であり、より電子輸送性の高い電子輸送材料と組み合わせて、有機EL素子を作製することが必要であった(例えば、非特許文献5参照)。
【0014】
また、バソクプロイン(以後、BCPと略称する)においても仕事関数が6.7eVと大きく正孔阻止能力が高いものの、ガラス転移点(Tg)が83℃と低いことから、薄膜の安定性に乏しく、正孔阻止層として十分に機能しているとは言えない。
【0015】
いずれの材料も膜安定性が不足しており、もしくは正孔を阻止する機能が不十分である。有機EL素子の素子特性を改善させるために、電子の注入・輸送性能と正孔阻止能力に優れ、薄膜状態での安定性が高い有機化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】日本国特開平8-048656号公報
【文献】日本国特許第3194657号公報
【文献】国際公開第2013/054764号
【文献】日本国特許第2734341号公報
【文献】国際公開第2014/009310号
【文献】国際公開第2010/074422号
【文献】国際公開第2017/111439号
【非特許文献】
【0017】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【文献】第50回応用物理学関係連合講演会28p-A-6講演予稿集1413ページ(2003)
【文献】応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会会誌11巻1号13~19ページ(2000)
【文献】EurJOC.,19,2780(2017)
【文献】Tetrahedron,14,2993(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は高効率、高耐久性の有機EL素子用材料として、電子注入・輸送性能に優れ、正孔阻止能力を有し、薄膜状態での安定性が高い優れた特性を有する有機化合物を提供し、更にこの化合物を用いて、高効率、高耐久性の有機EL素子を提供することにある。
【0019】
本発明が提供しようとする有機化合物が具備すべき物理的な特性としては、(1)電子の注入特性が良いこと、(2)電子の移動度が大きいこと、(3)正孔阻止能力に優れること、(4)薄膜状態が安定であること、(5)耐熱性に優れていることをあげることができる。また、本発明が提供しようとする有機EL素子が具備すべき物理的な特性としては、(1)発光効率および電力効率が高いこと、(2)発光開始電圧が低いこと、(3)実用駆動電圧が低いこと、(4)長寿命であること、をあげることができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、電子親和性であるベンゾイミダゾール環の窒素原子が金属に配位する能力を有していることと、耐熱性に優れているということに着目して、ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を設計して化学合成し、該化合物を用いて種々の有機EL素子を試作し、素子の特性評価を鋭意行なった結果、本発明を完成するに至った。
【0021】
上記課題を解決することのできる本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0022】
【0023】
(式中、X1、X2は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、もしくはトリフェニルシリル基を有する炭素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を有する炭素原子、置換もしくは無置換の芳香族複素環基を有する炭素原子、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を有する炭素原子、または窒素原子を表し、
Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
R1およびR2は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を表し、
mは0~4の整数を表す。
また、mが2以上の整数である場合、同一のベンゼン環に複数個結合するArは相互に同一でも異なってもよく、また、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0024】
また、上記課題を解決することのできる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なく1つの前記有機層が上記一般式(1)で表される化合物を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有機EL素子は電子の注入・輸送の役割を効果的に発現できる特定のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を選択したことにより、電子輸送層から発光層へ電子を効率良く注入・輸送できることによって、電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れ、高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を実現することができる。本発明の化合物によれば、従来の有機EL素子の発光効率および駆動電圧、そして耐久性を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例8~12、比較例1~3の有機EL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、本実施形態について、その態様を列挙して説明する。
【0028】
[1]
下記一般式(1)で表される、ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
【0029】
【0030】
(式中、X1、X2は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、もしくはトリフェニルシリル基を有する炭素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を有する炭素原子、置換もしくは無置換の芳香族複素環基を有する炭素原子、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基を有する炭素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を有する炭素原子、または窒素原子を表し、
Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
R1およびR2は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を表し、
mは0~4の整数を表す。
また、mが2以上の整数である場合、同一のベンゼン環に複数個結合するArは相互に同一でも異なってもよく、また、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
[2]
下記一般式(2)で表される、[1]に記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
【0031】
【0032】
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
R3~R6は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を表し、
mは0~4の整数を表す。
また、mが2以上の整数である場合、同一のベンゼン環に複数個結合するArは相互に同一でも異なってもよく、また、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
[3]
下記一般式(3)で表される、[1]に記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
【0033】
【0034】
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
R7~R9は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を表し、
mは0~4の整数を表す。
また、mが2以上の整数である場合、同一のベンゼン環に複数個結合するArは相互に同一でも異なってもよく、また、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
[4]
下記一般式(4)で表される、[1]に記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
【0035】
【0036】
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
R10~R12は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を表し、
mは0~4の整数を表す。
また、mが2以上の整数である場合、同一のベンゼン環に複数個結合するArは相互に同一でも異なってもよく、また、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
[5]
下記一般式(5)で表される、[1]に記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
【0037】
【0038】
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
R13およびR14は相互に同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を表し、
mは0~4の整数を表す。
また、mが2以上の整数である場合、同一のベンゼン環に複数個結合するArは相互に同一でも異なってもよく、また、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
[6]
mが1または2の整数で表される、[1]~[5]のいずれかに記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
[7]
mが1の整数で表される、[1]~[5]のいずれかに記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
[8]
mが2の整数で表される、[1]~[5]のいずれかに記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物。
[9]
一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なく1つの前記有機層が[1]~[5]のいずれかに記載のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
[10]
前記ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む前記有機層が電子輸送層である、[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[11]
前記ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む前記有機層が正孔阻止層である、[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[12]
前記ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む前記有機層が発光層である、[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[13]
前記ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を含む前記有機層が電子注入層である、[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0039】
一般式(1)中のX1およびX2で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を有する炭素原子」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基を有する炭素原子」、または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を有する炭素原子」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的には、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などが挙げられる。その他に、炭素数6~30からなるアリール基、および炭素数2~30からなるヘテロアリール基から選択することができる。また、上述した置換基と置換されたベンゼン環とが、または同一のベンゼン環に複数置換された置換基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0040】
一般式(1)中のX1およびX2で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する炭素原子」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基を有する炭素原子」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を有する炭素原子」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5~10のシクロアルキル基」、または「炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、および2-ブテニル基などをあげることができる。また、これらの置換基と置換されたベンゼン環とが、または同一のベンゼン環に複数置換された置換基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0041】
一般式(1)中のX1およびX2で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基を有する炭素原子」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を有する炭素原子」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、または「炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができる。また、これらの置換基と置換されたベンゼン環とが、または同一のベンゼン環に複数置換された置換基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0042】
一般式(1)中のX1およびX2で表される「置換芳香族炭化水素基を有する炭素原子」、「置換芳香族複素環基を有する炭素原子」、「置換縮合多環芳香族基を有する炭素原子」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する炭素原子」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基を有する炭素原子」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を有する炭素原子」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基を有する炭素原子」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基を有する炭素原子」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基のような基をあげることができる。これらの置換基はさらに、前記例示した置換基で置換されていても良い。また、これらの置換基と置換したベンゼン環とが、または同一のベンゼン環に複数置換された置換基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0043】
一般式(1)~(5)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、前記一般式(1)中のX1およびX2における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0044】
一般式(1)~(5)中のArで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、前記一般式(1)中のX1およびX2における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0045】
一般式(1)~(5)中のR1~R14で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、前記一般式(1)中のX1またはX2における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0046】
一般式(1)~(5)中のR1~R14で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5~10のシクロアルキル基」、または「炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、前記一般式(1)中のX1またはX2における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5~10のシクロアルキル基」、または「炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0047】
一般式(1)~(5)中のR1~R14で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、または「炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」としては、前記一般式(1)中のX1またはX2における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、または「炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0048】
一般式(1)~(5)中のR1~R14で表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、「置換縮合多環芳香族基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、前記一般式(1)中のX1およびX2における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0049】
一般式(1)~(5)中のmは1または2の整数で表されるとの好ましく、2の整数で表されると好ましい。また、mが2以上の整数である場合、2以上のArのうちの少なくとも2つが異なっていると好ましい。
【0050】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)~(5)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物は、有機EL素子の電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層または発光層の構成材料として使用することができる。電子の移動度が高く電子注入層または電子輸送層の材料として好ましい化合物である。
【0051】
本実施形態の有機EL素子は電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた有機EL素子用の材料を使用しているため、従来の有機EL素子に比べて、電子輸送層から発光層への電子輸送効率が向上し、発光効率が向上すると共に、駆動電圧が低下して、有機EL素子の耐久性を向上させることができ、高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を実現することが可能となった。
【0052】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
本実施形態の一般式(1)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物は新規な化合物である。これら化合物は例えば以下のように、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば、非特許文献6、7参照)。
【0059】
【0060】
一般式(1)~(5)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法、昇華精製法などによって行う。化合物の同定は、NMR分析によって行なう。物性値として、融点、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定を行う。融点は蒸着性の指標となるものであり、ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となり、仕事関数は正孔輸送性や正孔阻止性の指標となるものである。
【0061】
融点とガラス転移点(Tg)は、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって測定する。一般式(1)~(5)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物の融点は、特に限定されるものではないが、200℃以上であると好ましい。融点の上限は特に限定されるものではないが、例えば400℃以下の化合物を採用できる。また、一般式(1)~(5)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物のガラス転移点は、特に限定されるものではないが、形成された薄膜の安定性の観点から100℃以上であると好ましい。ガラス転移点の上限は特に限定されるものではないが、例えば250℃以下の化合物を採用できる。
【0062】
仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって求める。一般式(1)~(5)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を用いてITO基板の上に作成した、膜厚100nmの蒸着膜における仕事関数は、特に限定されるものではないが、5.5eVよりも大きいと好ましい。この蒸着膜の仕事関数の上限は特に限定されるものではないが、例えば6.5eV以下の蒸着膜とすることができる。
【0063】
本実施形態の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び陰極からなるもの、また、正孔輸送層と発光層の間に電子阻止層を有するもの、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略あるいは兼ねることが可能であり、例えば正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすること、正孔輸送層と電子阻止層を兼ねた構成とすること、電子輸送層と正孔阻止層を兼ねた構成とすることなどもできる。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることが可能であり、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成、などもできる。
【0064】
本実施形態の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。
【0065】
本実施形態の有機EL素子の正孔注入層として、銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、分子中にトリフェニルアミン構造またはカルバゾリル構造を2個以上有し、それぞれが単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物などを用いることができる。その他に、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0066】
本実施形態の有機EL素子の正孔輸送層として、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)-ベンジジン(以後、TPDと略称する)やN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)-ベンジジン(以後、NPDと略称する)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(以後、TAPCと略称する)、分子中にトリフェニルアミン構造またはカルバゾリル構造を2個以上有し、それぞれが単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、例えば、N、N、N’、N’-テトラビフェニリルベンジジンなどを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、上記複数の材料による単独で成膜した層同士、上記複数の材料による混合して成膜した層同士、または上記複数の材料による単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。また、正孔の注入・輸送層として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(以後、PEDOTと略称する)/ポリ(スチレンスルフォネート)(以後、PSSと略称する)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0067】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(例えば、特許文献5参照)をPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0068】
本実施形態の有機EL素子の電子阻止層として、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(以後、TCTAと略称する)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(以後、mCPと略称する)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン(以後、Ad-Czと略称する)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、上記複数の材料による単独で成膜した層同士、上記複数の材料による混合して成膜した層同士、または上記複数の材料による単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0069】
本実施形態の有機EL素子の発光層として、本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物のほか、Alq3をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成してもよく、ホスト材料として、アントラセン誘導体が好ましく用いられるが、そのほか、本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物を初めとする前記発光材料に加え、インドール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜してもよいが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用してもよく、上記複数の材料による単独で成膜した層同士、上記複数の材料による混合して成膜した層同士、または上記複数の材料による単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としてもよい。
【0070】
また、発光材料として燐光発光体を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)3などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、Btp2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては正孔注入・輸送性のホスト材料として4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(以後、CBPと略称する)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などに加え、本実施形態のベンゾアゾール環構造とピリドインドール環構造を有する化合物を用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(以後、UGH2と略称する)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(以後、TPBIと略称する)などを用いることができ、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0071】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0072】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(例えば、非特許文献3参照)これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0073】
本実施形態の有機EL素子の正孔阻止層として、本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物のほか、BCPなどのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(以後、BAlqと省略する)などのキノリノール誘導体の金属錯体、各種の希土類錯体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾアゾール誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、上記複数の材料による単独で成膜した層同士、上記複数の材料による混合して成膜した層同士、または上記複数の材料による単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物とその他の材料を併用する場合、これらの混合比としては特に限定されるものではないが、例えば、本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物:その他の材料=100:1~1:100とすることができ、好ましくは本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物:その他の材料=100:1~1:4とすることができる。
【0074】
本実施形態の有機EL素子の電子輸送層として、本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物のほか、Alq3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、ピリドインドール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、上記複数の材料による単独で成膜した層同士、上記複数の材料による混合して成膜した層同士、または上記複数の材料による単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物とその他の材料を併用する場合、これらの混合比としては特に限定されるものではないが、例えば、本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物:その他の材料=100:1~1:100とすることができ、好ましくは本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物:その他の材料=100:1~1:4とすることができる。
【0075】
本実施形態の有機EL素子の電子注入層として、本実施形態のベンゾイミダゾール環構造を有する化合物のほか、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、リチウムキノリノールなどのキノリノール誘導体の金属錯体、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、あるいはイッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)などの金属などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0076】
さらに、電子注入層あるいは電子輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
【0077】
本実施形態の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムカルシウム合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金やITO、IZOなどが電極材料として用いられる。
【0078】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0079】
<6,8-ビス{4-(ピリジル-3-イル)フェニル}-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-30)の合成>
反応容器に2,4,6-トリブロモアニリン:10.0g、2-ブロモピリジン:9.6g、炭酸カリウム:12.6g、銅粉:0.2g、キシレン:100mLを入れて、加熱還流下にて24時間撹拌した。撹拌後に放冷し、濾過および濃縮して粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル)による精製を行うことで、6,8-ジブロモ-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジンの茶色粉体:5.9g(収率60%)を得た。
【0080】
【0081】
得られた茶色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の6個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=9.11(1H)、8.72(1H)、7.92(1H)、7.77(1H)、7.67(1H)、7.11(1H)。
【0082】
続けて、6,8-ジブロモ-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン:5.0g、4-(ピリジル-3-イル)フェニルボロン酸:6.7g、トルエン:50mL、エタノール:10mLを入れて、続いて、予め炭酸カリウム:6.4gをH2O:20mLに溶解した水溶液を加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:0.5gを加えて加熱還流下にて24時間撹拌した。撹拌後に放冷し、メタノールを加えて析出した固体を採取して粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/酢酸エチル)による精製を行うことで、6,8-ビス{4-(ピリジル-3-イル)フェニル}-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-30)の黄色粉体:3.6g(収率50%)を得た。
【0083】
【0084】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の22個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=9.28(1H)、9.03(2H)、8.82(1H)、8.61(2H)、8.49(2H)、8.20(2H)、8.19(1H)、8.10(2H)、7.93(4H)、7.82(1H)、7.64(1H)、7.54(2H)、7.11(1H)。
【実施例2】
【0085】
<6,8-ビス{4-(ナフタレン-1-イル-フェニル)}-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-21)の合成>
反応容器に6,8-ジブロモ-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン:5.0g、4-(ナフタレン-1-イル)フェニルボロン酸:8.4g、トルエン:50mL、エタノール:10mLを入れて、続いて、予め炭酸カリウム:6.4gをH2O:20mLに溶解した水溶液を加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:0.5gを加えて加熱還流下にて24時間撹拌した。撹拌後に放冷し、H2Oを加えて抽出および分液操作を行い、取り出した有機層を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/酢酸エチル)による精製を行うことで、6,8-ビス{4-(ナフタレン-1-イル-フェニル)}-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-21)の黄色粉体:2.6g(収率30%)を得た。
【0086】
【0087】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の28個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=9.31(1H)、8.88(1H)、8.52(2H)、8.28(1H)、8.16(2H)、8.10-7.93(6H)、7.84(1H)、7.75-7.51(13H)、7.13(1H)。
【実施例3】
【0088】
<8-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-6-(4-ピリジン-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-56)の合成>
反応容器に8-クロロ-6-(4-ピリジン-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン:4.5g、2-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン)-ボロン酸:5.5g、1,4-ジオキサン:80mLを入れて、続いて、予めリン酸三カリウム:8.1gをH2O:20mLに溶解した水溶液を加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.3g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.4gを加えて加熱還流下にて24時間撹拌した。撹拌後に放冷し、メタノールを加えて析出した固体を採取して粗製物を得た。粗製物を1、2-ジクロロベンゼン溶媒による再結晶精製を行うことで、8-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-6-(4-ピリジン-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-56)の黄色粉体:3.7g(収率46%)を得た。
【0089】
【0090】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の31個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=9.26(1H)、9.02(1H)、8.69(1H)、8.61(1H)、8.41(2H)、8.20(1H)、8.11(1H)、8.02(4H)、7.92(2H)、7.79(1H)、7.62(1H)、7.54(1H)、7.45(2H)、7.39-7.21(11H)、7.09(1H)。
【実施例4】
【0091】
<8-(9,9’ -スピロビ-9H-フルオレン-2-イル)-6-(4-ピリジル-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-57)の合成>
反応容器に8-クロロ-6-(4-ピリジン-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン:3.5g、2-(9,9’ -スピロビ-9H-フルオレン)-ボロン酸:4.6g、1,4-ジオキサン:70mLを入れて、続いて、予めリン酸三カリウム:6.3gをH2O:15mLに溶解した水溶液を加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.2g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.3gを加えて加熱還流下にて24時間撹拌した。撹拌後に放冷し、メタノールを加えて析出した固体を採取して粗製物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/酢酸エチル)による精製を行うことで、8-(9,9’ -スピロビ-9H-フルオレン-2-イル)-6-(4-ピリジル-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-57)の黄色粉体:4.3g(収率69%)を得た。
【0092】
【0093】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の29個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=9.17(1H)、9.00(1H)、8.60(1H)、8.44(1H)、8.31(2H)、8.21(1H)、8.17(1H)、8.09(1H)、8.06(2H)、8.03(1H)、7.88(3H)、7.73(1H)、7.57(1H)、7.53(1H)、7.43(3H)、7.16(4H)、6.92(1H)、6.73(2H)、6.57(1H)。
【実施例5】
【0094】
<8-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-6-(4-ピリジル-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-71)の合成>
反応容器に8-クロロ-6-(4-ピリジン-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン:3.5g、4’-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-4-カルボニトリル:3.3g、1,4-ジオキサン:60mL、THF:15mLを入れて、続いて、予めリン酸三カリウム:6.3gをH2O:15mLに溶解した水溶液を加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.2g、トリシクロヘキシルホスフィン:0.3gを加えて加熱還流下にて24時間撹拌した。撹拌後に放冷し、メタノールを加えて析出した固体を採取して粗製物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/酢酸エチル)による精製を行うことで、8-(4’-シアノ-ビフェニル-4-イル)-6-(4-ピリジル-3-イル-フェニル)-ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリジン(化合物-71)の黄色粉体:3.2g(収率65%)を得た。
【0095】
【0096】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の22個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=9.28(1H)、9.03(1H)、8.83(1H)、8.62(1H)、8.49(2H)、8.22(1H)、8.19(1H)、8.12(2H)、8.07-7.90(8H)、7.82(1H)、7.64(1H)、7.55(1H)、7.12(1H)。
【実施例6】
【0097】
一般式(1)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって融点とガラス転移点とを測定した。
融点 ガラス転移点
実施例1の化合物 238℃ 112℃
実施例2の化合物 242℃ 130℃
実施例3の化合物 334℃ 164℃
実施例4の化合物 278℃ 177℃
実施例5の化合物 240℃ 126℃
【0098】
一般式(1)で表されるベンゾイミダゾール環構造を有する化合物は100℃以上のガラス転移点を有していた。このことは、薄膜状態が安定であることを示すものである。
【実施例7】
【0099】
一般式(1)で表されるベンゾイミダゾール環を有する化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって仕事関数を測定した。
仕事関数
実施例1の化合物 6.01 eV
実施例2の化合物 5.97 eV
実施例3の化合物 5.95 eV
実施例4の化合物 5.95 eV
実施例5の化合物 6.00 eV
【0100】
一般式(1)で表されるベンゾイミダゾール環を有する化合物はAlq3などの一般的な電子輸送材料がもつ仕事関数5.8~6.0eVと比較して、好適なエネルギー準位を示した。このことから、良好な電子輸送能力を有していることが分かる。
【実施例8】
【0101】
本実施例における有機EL素子は、
図1に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものを用意し、その上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、正孔阻止層兼電子輸送層6、電子注入層7、および陰極(アルミニウム電極)8をこの順に蒸着して作製した。
【0102】
具体的には、以下の手順により有機EL素子を作製した。膜厚50nmのITOを成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、200℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥した。その後、UVオゾン処理を15分間行った後、このITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。続いて、下記構造式の電子アクセプター(Acceptor-1)と下記構造式の化合物(HTM-1)とを、蒸着速度比がAcceptor-1:HTM-1=3:97となる蒸着速度で透明陽極2の上に二元蒸着した。これにより、透明陽極2を覆う正孔注入層3を、膜厚10nmとなるように形成した。この正孔注入層3の上に、下記構造式の化合物(HTM-1)を蒸着し、正孔輸送層4を膜厚60nmとなるように形成した。この正孔輸送層4の上に、下記構造式の化合物(EMD-1)と下記構造式の化合物(EMH-1)を、蒸着速度比がEMD-1:EMH-1=5:95となる蒸着速度で二元蒸着した。これにより、発光層5を膜厚20nmとなるように形成した。この発光層5の上に、実施例1の化合物(化合物-30)と下記構造式の化合物(ETM-1)を、蒸着速度比が化合物-30:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着した。これにより、正孔阻止層兼電子輸送層6を膜厚30nmとなるように形成した。この正孔阻止層兼電子輸送層6の上にフッ化リチウムを蒸着し、電子注入層7を膜厚1nmとなるように形成した。最後に、アルミニウムを蒸着して、陰極8を膜厚100nmとなるように形成した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0103】
【実施例9】
【0104】
実施例8において、正孔阻止層兼電子輸送層6の材料として実施例1の化合物(化合物-30)に代えて、実施例2の化合物(化合物-21)を用い、蒸着速度比が化合物-21:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例10】
【0105】
実施例8において、正孔阻止層兼電子輸送層6の材料として実施例1の化合物(化合物-30)に代えて、実施例3の化合物(化合物-56)を用い、蒸着速度比が化合物-56:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例11】
【0106】
実施例8において、正孔阻止層兼電子輸送層6の材料として実施例1の化合物(化合物-30)に代えて、実施例4の化合物(化合物-57)を用い、蒸着速度比が化合物-57:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例12】
【0107】
実施例8において、正孔阻止層兼電子輸送層6の材料として実施例1の化合物(化合物-30)に代えて、実施例5の化合物(化合物-71)を用い、蒸着速度比が化合物-71:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0108】
[比較例1]
比較のために、実施例8において、正孔阻止層兼電子輸送層6の材料として実施例1の化合物(化合物-30)に代えて、下記構造式の化合物(ETM-2)(例えば、特許文献6参照)を用い、蒸着速度比がETM-2:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0109】
【0110】
[比較例2]
比較のために、実施例8において、正孔阻止層兼電子輸送層6の材料として実施例1の化合物(化合物-30)に代えて、下記構造式の化合物(ETM-3)(例えば、特許文献7参照)を用い、蒸着速度比がETM-3:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0111】
【0112】
[比較例3]
比較のために、実施例8において、正孔阻止層兼電子輸送層6の材料として実施例1の化合物(化合物-30)に代えて、下記構造式の化合物(ETM-4)(例えば、特許文献7参照)を用い、蒸着速度比がETM-4:ETM-1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行った以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0113】
【0114】
実施例8~12および比較例1~3で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した結果を表1にまとめて示した。素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を2000cd/m2として定電流駆動を行った時、発光輝度が1900cd/m2(初期輝度を100%とした時の95%に相当:95%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0115】
【0116】
表1に示す様に、電流密度10mA/cm2の電流を流したときの駆動電圧は、前記構造式の化合物ETM-2~ETM-4を用いた比較例1~比較例3の有機EL素子では3.66~3.81Vであった。これに対し、実施例8~12の有機EL素子では駆動電圧は3.39~3.53Vであり、低電圧化が確認された。
また、発光効率は、比較例1~3の有機EL素子では6.95~7.62cd/Aであった。これに対し、実施例8~12の有機EL素子では発光効率は8.62~8.97cd/Aであり、発光効率の向上が確認された。
電力効率は、比較例1~3の有機EL素子の5.80~6.45lm/Wであった。これに対し、実施例8~12の有機EL素子では電力効率は7.68~8.32lm/Wであり、電力効率の大きな向上が確認された。
素子寿命(95%減衰)は、比較例1~3の有機EL素子では43~65時間であった。これに対し、実施例8~12の有機EL素子では素子寿命は134~178時間であり、特に大きな長寿命化が確認された。
【0117】
このように本発明の有機EL素子は、比較例で示した構造式の化合物(ETM-2~4)を用いた素子と比較して、発光効率および電力効率に優れており、長寿命の有機EL素子を実現できることがわかった。
【0118】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願は、2018年3月23日付で出願された日本国特許出願(特願2018-55656)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の、特定のベンゾイミダゾール環を有する化合物は、電子の注入特性が良く、電子輸送能力に優れており、薄膜状態が安定であるため、有機EL素子用の化合物として優れている。該化合物を用いて有機EL素子を作製することにより、高い効率を得ることができると共に、駆動電圧を低下させることができ、耐久性を改善させることができる。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層兼電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極