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特許7394076分岐鎖ケト酸(BCKA)の混合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】分岐鎖ケト酸(BCKA)の混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 59/185 20060101AFI20231130BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20231130BHJP
   A61K 31/19 20060101ALN20231130BHJP
   A61P 21/00 20060101ALN20231130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C07C59/185
A23L33/10
A61K31/19
A61P21/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020570116
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070223
(87)【国際公開番号】W WO2020025489
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】18186513.0
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン ジャレッキ
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ファイト
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/012706(WO,A1)
【文献】特表2012-522739(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102988357(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101991570(CN,A)
【文献】特開平03-031211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A61P 31/00-31/327
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のケト酸の均質な混合物を製造する方法であって、
- 第1のステップにおいて、2種以上の遊離ケト酸を混合し、
- 第2のステップにおいて、混合したケト酸を1種または複数のアルカリ土類金属塩で共結晶化する、
該2種以上のケト酸が、ケトロイシン、ケトバリンおよびケトイソロイシンから選択される、方法。
【請求項2】
アルカリ土類金属が、マグネシウムおよびカルシウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカリ土類金属塩が、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および酢酸マグネシウムから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
遊離ケト酸が、化学量論量のアルカリ土類金属塩を加えておいた水または母液溶液へ、所望のモル比で加えられる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
遊離ケト酸が、水溶液として添加される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
遊離ケト酸が、メチルイソブチルケトン、アセトンおよびtert-ブチルメチルエーテルから選択される有機溶媒の溶液として添加される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
混合ケト酸が、以下のもの:水蒸気蒸留、溶媒抽出、イオン交換クロマトグラフィー、またはアルカリ土類金属塩との粗結晶化のうちの1つを使用して、共結晶化ステップの前に精製される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
混合ケト酸が、複合水蒸気蒸留または溶媒抽出を使用して、共結晶化ステップの前に精製される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の分岐鎖ケト酸の均質な混合物の製造方法であって、第1のステップにおいて、2種以上の遊離ケト酸を混合し、第2のステップにおいて、混合されたケト酸を1種または複数のアルカリ土類金属塩で共結晶化する方法に関する。本発明はまた、対応するアミノ酸の摂取および体内の窒素代謝の改善と比較して、窒素供給の低減による窒素の解毒代謝の同時緩和により、筋肉構造を補助し、筋肉の能力を向上させ、全般的な健康を改善するための分岐鎖ケト酸の混合物を含有する食品、栄養補助食品および医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
身体的運動の不足は、身体的効率の低下、ひいては生活の質の低下につながり得る危険因子である。身体的効率の下落を予防し、再度増強するためには、例えば、筋肉の損傷および筋肉の破壊、筋肉の再生、筋肉の肥大および筋線維の変質などの一連の細胞プロセスが進行する身体トレーニングが不可欠である。細胞プロセスでは、エネルギーおよびタンパク質の代謝が決定的な役割を果たす。その結果、アミノ酸の供給は、筋肉組織で進行する代謝プロセスに関して決定的な役割を果たす。特に、分岐鎖アミノ酸であるバリン、ロイシン、およびイソロイシンは、タンパク質生合成における必須基質および重要な調節因子であり、骨格筋におけるグルタミンおよびアラニン合成の主要な窒素源である。さらに、アラニンは糖新生の重要な前駆体であり、グルタミンは臓器間の窒素輸送体として機能する。
【0003】
タンパク質の平均必要量は、約660mg/kg体重であるが、身体トレーニングによって大幅に増加させることができる。タンパク質の必要量は、バランスの取れた食事により全般的にまかなうことができるが、これは容易に達成することはできない。身体トレーニングは、タンパク質分解の増加およびタンパク質合成の低下のために、栄養素の必要量の変化につながり、さらに、例えば、身体トレーニングのホルモン系への効果に起因する代謝の位置の改変が生じ、そして最終的に、特に年齢に関連して、身体的負荷の増加を伴う適切な食事に関する知識もまた不足し、結果として栄養不良が急速に起こり得る。
【0004】
これらの理由のため、栄養補助食品の使用は、身体的負荷にさらされている個人において合理的であると思われる。これに関連して対象の効率へのクレアチン補給の効果に関連する様々な結果を伴う研究がすでに実施されている。さらに、筋肉の再生が高炭水化物供給によって促進され得ることが知られている。
【0005】
栄養代替物としての分岐鎖アミノ酸(BCAA)の使用は、過去に同様に集中的に研究されたが、明確な結果は得られなかった。ある研究では、BCAA補給による精神的および肉体的な能力の向上が報告され(Blomstrand,Eら、Eur.J.Appl.Physiol.Occup Physiol 63:83~88、1991)、別の研究では、身体的効率への効果は見られなかった(van HG、Raaymakers、Saris、Wagenmakers、J.Physiol 486(Pt3)、789~794、1995)。
【0006】
分枝鎖アミノ酸のα-ケト酸も同様に、特に骨格筋および肝臓において、アミノ酸代謝に重要な役割を果たす。筋タンパク質の3分の1は、身体により形成することができない分岐鎖アミノ酸からなり、食物と一緒に摂取する必要がある。筋肉では、特に身体運動の場合、タンパク質は継続的に合成および分解され、アミノ酸の分解では、対応するα-ケト酸は、運搬体へのアミノ基の転移によって形成される。次いで、得られたケト酸は、エネルギー生産のためにさらに酵素的に酸化され得る。運搬体は肝臓に輸送され、そこで有毒なアンモニアを放出し、これは尿素に変換され、腎臓を経て排泄される必要がある。
【0007】
分岐鎖アミノ酸から誘導されるα-ケト酸の製薬の目的での使用は、昔から知られている。例えば、特にα-ケトイソカプロン酸(ケトロイシン)は、筋肉内のタンパク質分解を低減するため、および筋肉が働いた後のタンパク質分解に起因する尿素の形成を低減するために使用することができる(US4,677,121)。栄養不良、筋ジストロフィーまたは尿毒症における、および筋肉におけるタンパク質分解の二次的結果である他の障害におけるケトロイシンの使用もまたそこに記載されている。この場合、ケトロイシンは静脈内に投与される。さらに、ロイシン、イソロイシン、およびバリンのα-ケト酸を、例えば腎不全のために減タンパク食を続ける必要のある患者に投与することが提案されてきた(US4,100,161)。様々な医学的適用に関するタンパク質の代謝におけるα-ケト酸の役割はまた、Walser,Mら、Kidney International、38巻(1990)、595~604頁に記載されている。
【0008】
対照的に、機能性食品分野においては、分岐鎖アミノ酸が、例えばアスリートの筋肉増強を補助するために直接的に使用される(Shimomura,Yら、American Society for Nutrition)。筋肉の能力を改善するため、および疲労後の筋肉の回復も補助するためのロイシン、イソロイシン、およびバリンのα-ケト酸の使用は、US6,100,287に記載されており、対応するアニオン性ケト酸と対イオンとしてのカチオン性アミノ酸との塩、例えば、アルギニンまたはリジンなどが使用されている。しかしながら、結果として、アポトーシス(プログラム細胞死)をもたらし得ることが知られているポリアミンも形成される。ポリアミンの分解生成物の排出は、腎臓を介して進行し、結果として、腎臓にさらにストレスがかかる。
【0009】
WO2008/122613は、対応するアミノ酸の摂取および体内の窒素代謝の改善と比較して、窒素供給の低減による窒素の解毒代謝の同時緩和により、筋肉構造を補助し、筋肉の能力を向上させ、全般的な健康を改善するための分岐鎖アミノ酸のα-ケト類似体を含有する栄養補助食品を記載している。特に、α-ケトイソカプロン酸と、α-ケトイソ吉草酸もしくはα-ケト-β-メチル吉草酸との組合せ、またはα-ケトイソ吉草酸と、α-ケト-β-メチル吉草酸との組合せ、または全3種のα-ケト酸の組合せ、またはそれらの塩を有する栄養補助食品が開示されている。さらに、異なるα-ケト類似体に対して特定の比率が好ましい。
【0010】
US2011/0257236A1およびUS4,677,121から、分岐鎖アミノ酸であるL-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンと、それらの各ケト酸の双方の約2:1:1の比率での組合せにより、集中的な運動の間の筋肉への損傷を抑制できることが知られている。さらに、ケト酸であるロイシン、イソロイシン、バリン、およびヒドロキシメチオニンが、慢性腎臓疾患の場合にタンパク質レベルを維持するために使用される医薬品に使用されることはすでに十分に確立されている(US4,100,160およびUS4,100,161に記載)。分岐鎖L-アミノ酸の組合せ処理の方法および利点が報告されているが、これまでのところ、カルシウム塩としての個々の分岐ケト酸およびヒドロキシメチオニンの処理が報告されている。
【0011】
しかしながら、分岐鎖ケト酸塩を別々に生成し、後の段階で混合する場合、分岐鎖ケト酸塩は異なる粒度分布を有し、結晶形も異なる。特に、ケトイソロイシンのカルシウム塩は非常に大きな結晶を有する。結果として、分岐鎖ケト酸塩の均質な混合物を調製することは困難であり、この生成物を栄養補給食品での使用に適した均質な混合物を提供するために粉砕する必要がある。均一な粒度分布を有する均質な混合物を提供するために、例えば、乾式混合プロセスを適用することができ、均質性を確保するために、様々な粒度を有するいくつかの成分を秤量し、予備混合し、粉砕し、再度混合する必要がある。混合物中の所望の組成に従って、第1のステップとして、適切な量の個々の遊離アミノ酸が、予備混合ステップのために秤量される。予備混合では、均一な混合物を得るために、混合物を乾燥機に移し、混合する必要がある。次のステップでは、適切な均一な粒度分布を得るために混合物を粉砕する必要がある。最後の混合ステップでは、均質なアミノ酸混合物を得るために、混合物を乾燥機に移す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】US4,677,121
【文献】US4,100,161
【文献】US6,100,287
【文献】WO2008/122613
【文献】US2011/0257236A1
【文献】US4,100,160
【非特許文献】
【0013】
【文献】Blomstrand,Eら、Eur.J.Appl.Physiol.Occup Physiol 63:83~88、1991
【文献】van HG、Raaymakers、Saris、Wagenmakers、J.Physiol 486(Pt3)、789~794、1995
【文献】Walser,Mら、Kidney International、38巻(1990)、595~604頁
【文献】Shimomura,Yら、American Society for Nutrition
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の技術から前進して、スポーツの活動後の健康を促進し、筋肉合成および筋肉の効率を向上し、代謝の窒素負荷を恒久的に低下させる分岐鎖ケト酸の組合せを有する栄養補助食品に対する要求がある。より特に、所定の比率の分岐鎖ケト酸からなる均質な混合物に対する、ならびにケト類似体および必須アミノ酸のケトおよびヒドロキシル成分を含有する均一な粒子分布を有する均質な混合物の製造のための単純化された方法に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
問題は、2種以上のケト酸の均質な混合物の製造方法であって、
- 第1のステップにおいて、2種以上の分岐鎖ケト酸を混合し、
- 第2のステップにおいて、混合されたケト酸を1種または複数のアルカリ土類金属塩で共結晶化する方法を提供することによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、約2:1:1のケトロイシン:ケトバリン:ケトイソロイシンのカルシウム塩の共蒸留および共結晶化を示す。
図2図2は、複合水蒸気蒸留中の遊離ケト酸の面積%組成を示す。
図3図3は、個々の分岐鎖ケト酸のカルシウム塩の顕微鏡写真を示す。
図4図4は、個々の分岐鎖ケト酸のカルシウム塩の対応する粒度分布(PSD)を示す。
図5図5は、分岐鎖ケト酸であるケトバリン、ケトイソロイシン、およびケトロイシンについて示す。
図6図6は、共結晶化した分岐鎖ケト酸のカルシウム塩(2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリン)の顕微鏡写真を示す。
図7図7は、共結晶化した分岐鎖ケト酸のカルシウム塩(2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリン)の粒度分布(PSD)を示す。
図8図8は、a)共結晶化した分岐鎖ケト酸のカルシウム塩(2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリン)、およびb)分岐鎖ケト酸のカルシウム塩の混合物(2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリン)の粒度分布(PSD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
2種以上のケト酸の共結晶化の後に、この生成物の均質性を達成するための追加の処理が必要ないことは驚くべき発見であった。得られた混合物は、均一な粒度分布および均質な結晶形を有する。
【0018】
好ましい実施形態では、アルカリ土類金属は、マグネシウムおよびカルシウムから選択され、好ましくはカルシウムである。
【0019】
アルカリ土類金属塩が、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酢酸マグネシウムから選択される場合が、特に好ましい。
【0020】
本発明に従う方法において使用されるケト酸は、本発明の代替的な実施形態では、ケトロイシン、ケトバリン、ケトイソロイシン、ケトフェニルアラニン、およびヒドロキシメチオニンから選択される。好ましい実施形態では、ケト酸は、ケトロイシン、ケトバリン、およびケトイソロイシンから選択される。
【0021】
本発明の一実施形態では、遊離ケト酸は、化学量論量のアルカリ土類金属塩を加えておいた水または母液溶液へ所望のモル比で加えられる。
【0022】
この実施形態では、水相は、好ましくは母液のリサイクルによって、生成物で飽和される。この母液のリサイクルは予想外の効果を有する。母液の最適な飽和に起因して、様々な溶解度を補正するために組成を調整することなく目標組成を達成することができることが見出された。遊離酸は、化学量論量のカルシウム塩を加えておいた母液溶液に所望の比率で加えられる。
【0023】
代替的な実施形態では、遊離ケト酸は、水溶液として、または好ましくはメチルイソブチルケトン、アセトンおよびtert-ブチルメチルエーテルから選択される有機溶媒の溶液として添加される。
【0024】
本発明の好ましい構成では、混合されたケト酸は、以下:水蒸気蒸留、溶媒抽出、イオン交換クロマトグラフィー、またはアルカリ土類金属塩との粗結晶化のうちの1つを使用して、共結晶化ステップの前に精製される。
【0025】
ケト酸は、化学合成または発酵プロセスを介して生成することができる。精製は通常、溶媒抽出または水蒸気蒸留、それに続く塩化によって達成される。
【0026】
本発明のさらに好ましい構成では、混合されたケト酸は、複合水蒸気蒸留を使用して精製され、投入量と同様の比率の精製されたケト酸の水溶液が得られる。沸点の違い:ケトバリン遊離酸(5mbarにて70~80℃)、ケトロイシン遊離酸(5mbarにて約100℃)、およびケトイソロイシン遊離酸(5mbarにて約115℃)を考えると、このことは驚くべき結果であった。
【0027】
本発明のさらなる対象は、上記のとおりの方法によって得られる少なくとも2つのケト酸の混合物であり、この混合物は、混合アルカリ土類金属塩を含有し、均一な粒度分布および均質な結晶形を有する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、混合物中の粒度は、400μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、または最も好ましくは150μm以下である。
【0029】
特に好ましい構成では、混合物は、ケトロイシンとケトイソロイシンとの混合カルシウムまたはマグネシウム塩を含有する。
【0030】
特に好ましい構成では、混合物は、ケトロイシンとケトバリンとの混合カルシウムまたはマグネシウム塩を含有する。
【0031】
特に好ましい構成では、混合物は、ケトイソロイシンとケトバリンとの混合カルシウムまたはマグネシウム塩を含有する。
【0032】
特に好ましい構成では、混合物は、約2:1:1の比率におけるケトロイシン、ケトイソロイシンおよびケトバリンの混合カルシウムまたはマグネシウム塩を含有する。
【0033】
特に好ましい構成では、混合物は、ケトロイシン、ケトイソロイシン、ケトバリン、ヒドロキシメチオニン、およびケトフェニルアラニンの混合カルシウムまたはマグネシウム塩を含有する。
【0034】
本発明はまた、上記の実施形態に従うケト酸の混合物を含有する食品、栄養補助食品または医薬品を対象とする。
【0035】
さらに、さらに窒素を含まない添加剤を、栄養補助食品に添加することができる。特に強調し得る添加剤は、好ましくは、例えばグルコースなどの炭水化物の群に由来するエネルギー源化合物であるが、それだけでなく、例えば、ビタミン、特にビタミンA、ビタミンB1、B2、B6、およびB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸、ナイアシン、葉酸、ビオチン、コリン、ならびにイノシトールなどの再生プロセスを促進する添加剤である。さらに、例えば、ベータカロチン、クエン酸カリウム、クエン酸、乳酸、トコフェロール、アスコルビン酸ナトリウム、またはアスコルビン酸カリウム、またはアスコルビン酸などの抗酸化剤が、栄養補助食品中に存在し得る。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、セレン、クロム、リン、およびヨウ素の群に由来するミネラルおよび微量元素も同様に添加剤としての可能性がある。この場合の前記添加剤は、食品分野の従来の量で添加される。
【0036】
好ましい栄養補助食品は、例えば、以下を含有することができる(各場合の量は、好ましい1日用量である):
10~500mgのナトリウム、
10~500mgのカリウム、
50~500mgのカルシウム、
10~300mgのマグネシウム、
1~20mgの亜鉛、
5~50mgの鉄、
0.1~1mgのヨウ素、
5~100μgのセレン、
5~100μgのクロム、
最大100mgのビタミンB1、
最大100mgのビタミンB2、
最大100mgのビタミンB6、
最大200mgのビタミンB12、
最大5gのビタミンC、
最大500mgのビタミンE、
最大300mgのパントテン酸、
最大1gのナイアシン、
最大10mgの葉酸、
最大1mgのビオチン。
【0037】
添加物として考慮されるさらなる添加剤は、飽和または不飽和の脂肪酸、特にC6~C22の脂肪酸である。さらに、ヒマワリ、ゴマ、菜種、ヤシ、ヒマシ油、ココナッツ、ベニバナ、ダイズ、豚肉ラード、牛脂、および魚油の群に由来する油脂の使用がなされ得る。さらに、保存剤、食用色素、甘味料、調味料および/または芳香物質は、当業者に知られている通例の量で栄養補助食品中に存在し得る。特に、例えば、遊離α-ケト酸が酸性の味がする場合があるか、またはそれらの塩が不快な味がする場合があるため、添加剤として、味をマスキングする物質が考慮される。用いられる添加剤が比較的大量に使用される場合、窒素を含まない添加剤がこの場合に頼りとなる。しかしながら、特に好ましい栄養補助食品は、窒素添加剤を含有しない。
【0038】
特許請求の栄養補助食品は、例えば、粉末、錠剤、ミニ錠剤、ペレット、顆粒、サシェ、カプセルの形態で、または溶液または懸濁液の形態で使用することができる。錠剤の形態では、α-ケト酸またはその塩は、好ましくは栄養補助食品中に約30~80体積パーセントで、好ましくは、窒素を含まない添加剤、特に炭水化物、油脂、ならびに適切な場合、例えばロイシン、イソロイシン、およびバリンなどのアミノ酸も使用して配合され、これらは栄養補助食品中に約70~20体積パーセントで存在し得る。
【0039】
例えば、カプセルは、コーティングされたペレットまたはコーティングされた顆粒の形態の本発明の組成物を充填され得、「コーティングされた」とは、少なくともコーティング層でコーティングされることを意味する。別の実施形態では、コーティング層でそれ自体がコーティングされたカプセルが、コーティングされた、もしくはコーティングされていないペレットを、粉末を、またはコーティングされた、もしくはコーティングされていない顆粒を充填され得る。
【0040】
粉末または錠剤の形態の栄養補助食品の直接投与が望ましい場合、従来の担体の添加が有利となり得る。適切な担体は、例えば、線状または(超)分岐状のポリエステル、ポリエーテル、ポリグリセロール、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリラクチド-co-グリコリド、ポリ酒石酸および多糖、またはポリエチレンオキシドベースのデンドリマー、ポリエーテルデンドリマー、コーティングされたPAMAMデンドリマー(例えばポリラクチド-co-グリコリドコーティングなど)、またはポリアリールエーテルである。
【0041】
錠剤、ペレットまたはカプセルは、例えば、最初に腸管での栄養補助食品の放出を可能にするために、コーティングがさらに与えられ得る。この場合、以下のカプセル化材料:カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、シェラック、カラギーナン、アルギネート、ゼラチン、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC-AS)、セルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロース、ポリグリセロール、ポリエステル、またはメタクリル酸およびメタクリル/アクリルエステルもしくはそれらの誘導体に基づくコポリマー(例えばEudragit(登録商標)など)が好ましくは使用される。
【0042】
対照的に、栄養補助食品の溶液または懸濁液が投与される場合、乳化剤またはコロイドの添加は、水系において可能な限り全ての所望の成分を摂取することができるようにするために有用となり得る。適切な添加剤は、例えば、ポリビニルアルコール;食用脂肪酸のグリセリド;酢酸、クエン酸、乳酸または酒石酸のエステル;ポリオキシエチレンステアレート;炭水化物エステル;プロピレングリコールエステル;グリセロールエステル、または食用脂肪酸もしくはラウリル硫酸ナトリウムのソルビタンエステルである。
【0043】
本発明はさらに、特許請求の栄養補助食品を含有する食物(機能性食品)に関する。これらは、例えば、栄養補助食品を消費するのに特に適した飲料またはバーとし得る。
【0044】
この場合の食物は、それらの製造中に特許請求の栄養補助食品と混合でき、または栄養補助食品の配合物を、食物へ、例えば粉末または錠剤の形態で後に添加し得る。発泡錠または粉末のミネラルウォーターでの溶解は、例として本明細書にて言及することができる。
【0045】
記載の栄養補助食品または食物の使用は、原則として終日可能となり得るが、特に運動中または運動後であることが望ましい。身体トレーニングは、筋肉の損傷、筋肉の肥大、および筋肉の変形を含む筋肉の適応を引き起こす。この場合、トレーニング1単位は、トレーニング段階と再生段階との組合せとみなされる。このトレーニング単位の設計が最適ではないと、例えば、身体的効率が低下した長期的な倦怠感で表されるオーバートレーニング症候群につながり得る。このようなオーバートレーニング症候群は、栄養不良によって引き起こされる、または増幅されることが多い。
【0046】
前記態様では、本発明の栄養補助食品は、特に、アスリート、この場合、パワーアスリートを含むアマチュアアスリートおよびトップアスリートの両方、ならびに健康およびフィットネスに関心のある者も対象とする。知られているとおり、制限された窒素エコノミーおよび制限された窒素排泄能力を頻繁に有する高齢者による栄養補助食品の使用は、同様に特に有利である。
【0047】
本発明はさらに、例えば、特に飲料、ゲル、クリーム、ブロス、エネルギーバーなどの機能性食品など、および例えば、サシェ、バッグ、チューブにおいて提供することができる錠剤、粉末などの経口摂取することができる製品を製造するため、ならびに窒素解毒に関して代謝の同時緩和により、筋肉の増強、筋肉組織の効率を補助するため、ストレス下での細胞損傷に対する筋肉組織の保護のため、全般的な健康、全般的な身体的効率を向上するため、および身体的ストレス後の筋肉の再生を補助するための、特許請求の栄養補助食品の使用に関する。
【0048】
本発明は、食物、飲料、補助食品、医療目的の特別な食物、または医薬品などの医療目的の食物も包含する。
【0049】
したがって、本発明は、食品、栄養補助食品、または医薬品の調製のための上記の実施形態に従う混合物の使用も包含する。
【実施例
【0050】
方法の出発材料は、化学的または発酵的プロセスを介して調製されたケト酸のナトリウム塩水溶液である。出発溶液の好ましい濃度を表1に一覧する。
【0051】
【表1】
【0052】
ケト酸を、以前に報告された化学的または発酵的プロセスを介して生成することができる。精製は、発酵溶液からの水蒸気蒸留、溶媒抽出、または粗沈殿、それに続く塩化によって達成することができる。
【0053】
プロセスフローの例を、約2:1:1のケトロイシン:ケトバリン:ケトイソロイシンのカルシウム塩の共蒸留および共結晶化を示す図1に示す。図1に示すとおり、分岐鎖ケト酸であるケトロイシン(KIC)、ケトバリン(KIV)およびケトイソロイシン(KMV)を合わせて、約pH1にて酸性化する。水を添加し、複合水蒸気蒸留を行い、続いてCa(OAc)を使用して塩化する。得られた生成物を濃縮し、共結晶化し、最後のステップにおいて単離することができる。
【実施例1】
【0054】
複合水蒸気蒸留を使用する分岐鎖ケト酸(BCKA)の精製
耐酸性容器に、ケトロイシン(22.8gのナトリウム塩を含有する、331gの6.9%w/wの溶液)、ケトイソロイシン(11.4gのナトリウム塩を含有する、61gの18.8%w/wの溶液)およびケトバリン(12.4gのナトリウム塩を含有する、144gの8.6%w/wの溶液)の各ナトリウム塩溶液を上で明記した濃度で加えて、2:1:1.2の活性ベースの比率を得た。この実施例で記載されるケトバリンの量は、新たな塩化用の液体の使用に適用する(記載については実施例5~7を参照)。リサイクルされた母液を使用する場合、ケトバリンの割合を1に減らすことができる。
【0055】
周囲温度で撹拌して、約165gの50%w/wの硫酸を加えて、溶液のpHをpH<1に調整した。pH調整の後、加熱および真空を適用して、60~80℃/200~300mbarにて蒸留を達成した(温度がより高くなると、遊離ケト酸の熱分解につながる)。
【0056】
さらに水を添加し、約42g/gケト酸が蒸留されるまで、270~300mbarの真空下で最大80℃にて蒸留した。蒸留物は約2.2重量%のBCKAを含有していた。
【0057】
3種の分岐鎖ケト酸を同時に蒸留し、投入量と同様の比率の精製されたケト酸の水溶液を得ることができることが見出された(複合水蒸気蒸留中の遊離ケト酸の面積%組成を示す図2を参照)。
【0058】
溜り(残留物)の分析は、ケト酸の回収がほぼ定量的であることを示している。さらに、個々のケト酸の蒸留と比較した場合、複合蒸留は、蒸気の消費に関して全体的により効率的であることが見出された。これは、図2に示すとおり、特にケトイソロイシンの場合であった。
【0059】
【表2】
【実施例2】
【0060】
溶媒抽出を使用する分岐鎖ケト酸の精製
そのそれぞれの遊離酸、ナトリウム塩またはカルシウム塩の形態としての以下のケト酸を水に添加して、次のモル比:約1:2:1のケトバリン:ケトロイシン:ケトイソロイシンの約5%w/vの溶液を得る。溶液を周囲温度にて塩酸水溶液でpH<1に調整し、次いで酸性溶液をメチルイソブチルケトン(MIBK)で抽出する。遊離ケト酸を含有するMIBK溶液を60℃に加熱し、次いで炭酸カルシウム固体を添加してpHを>3に調整する(目標:3~5、与えられた実施例ではわずかに超過した)。二相混合物を80℃に加熱し、これらの層を安定させて、次いで分離する。下側の水層(生成物含有)を80℃にてMIBKでさらに抽出して不純物を除去した後、真空蒸留して残りのMIBKを除去し、バッチを部分的に濃縮し、水層を周囲温度に冷却して生成物を結晶化する。固体を濾過により単離し、水で洗浄し、次いで乾燥するまで真空下で最大75℃にて乾燥させる。
【実施例3】
【0061】
発酵溶液からの沈殿による分岐鎖ケト酸の精製
ケトロイシン発酵溶液の約5%の水溶液を塩酸水溶液でpH約2に酸性化する。pHが>3になるまで(目標:約3~5)周囲温度にて炭酸カルシウム固体を加える。沈殿した固体を濾過により単離し、水で洗浄し、次いで乾燥するまで真空下で最大75℃にて乾燥させる。
【実施例4】
【0062】
(比較)個々の分岐鎖ケト酸のカルシウム塩の調製
カルシウム塩(一般的に炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、または酢酸カルシウム)との遊離ケト酸の結晶化(またはより正確には塩化)のための方法は十分に確立されている。遊離ケト酸を、十分に希釈されている場合は水溶液として、または有機溶媒もしくはメチルイソブチルケトン、アセトン、tert-ブチルメチルエーテルなどの溶媒(ただしこれらに限定されない)中の溶液として添加することができる。
【0063】
3種のケト酸塩を別々に作製する場合、それらは異なる粒度分布を有し、結晶形も全く異なる。図3は、個々の分岐鎖ケト酸のカルシウム塩の顕微鏡写真を示す(大きさ:100倍、スケールバーは200μmである)。a)ケトバリンのCa塩、b)ケトロイシンのCa塩、c)ケトイソロイシンのCa塩。特に、ケトイソロイシンのカルシウム塩は特に大きな結晶を有する。個々の分岐鎖ケト酸のカルシウム塩の対応する粒度分布(PSD)を図4に示し、ケトバリン、ケトロイシン、およびケトイソロイシンのカルシウム塩の様々な粒度分布を明確に示している。a)ケトバリンのCa塩、b)ケトロイシンのCa塩、c)ケトイソロイシンのCa塩。x軸はμm単位の粒度を示し、y軸は粒子の%を示す。赤色の線は、粒子の合計を示す。
【0064】
結果のとおり、ケト酸塩の均質な混合物を調製することは困難であり、栄養補給食品または任意の他の用途での使用に適した混合物を得るために、この生成物を粉砕する必要がある。
【実施例5】
【0065】
カルシウム塩の混合物の調製(酢酸カルシウムを用いる)
共結晶化の場合の出発遊離ケト酸の組成は、最終生成物における所望の比率を達成するために、カルシウム塩の溶解度の変動性を考慮する必要がある(比較表3は、20℃にてg/L単位での水への溶解度を示す)。
【0066】
【表3】
【0067】
全般に、結晶化プロセスの収率を最大化するために、母液のリサイクルが適用されることが多い。共結晶化の場合、母液のこのようなリサイクルは予想外の効果を有していた。母液の最適な飽和に起因して、上記のとおり様々な溶解度を補正するために組成を調整することなく目標の組成を達成できることが見出され、化学量論量のカルシウム塩を加えておいた母液溶液に、遊離酸を所望の比率で単に加えることが可能である。これは、分岐鎖ケト酸であるケトバリン、ケトイソロイシン、およびケトロイシンについて図5に示されている。
【0068】
組合せ、酸性化、および水蒸気蒸留
この場合では、耐酸性容器に、ケトロイシン(22.8gのナトリウム塩を含有する、331gの6.9%w/wの溶液)、ケトイソロイシン(11.4gのナトリウム塩を含有する、61gの18.8%w/wの溶液)およびケトバリン(12.4gのナトリウム塩を含有する、144gの8.6%w/wの溶液)のナトリウム塩溶液を表1に明記した濃度で加えて、2:1:1.2の活性ベースの比率を得た。この実施例で記載されるケトバリンの量は、塩化用の新たな液体の使用に適用する(記載については実施例5~7を参照)。リサイクルされた母液を使用する場合、ケトバリンの割合を1に減らすことができる。周囲温度にて撹拌して、約165gの50%w/wの硫酸を加えて、溶液のpHをpH<1に調整した。pH調整の後、加熱および真空を適用して、60~80℃/200~300mbarにて蒸留を達成した。さらに水を添加し、約42g/gケト酸が蒸留されるまで、270~300mbarの真空下で最大80℃にて蒸留した。蒸留物は約2.2重量%のBCKAを含有していた。
【0069】
塩化および単離
23.3gの水中の7.7g(約0.5モル当量)の酢酸カルシウムの溶液(約25%溶液)に、約12gの分岐鎖ケト酸を含有する550gの遊離ケト酸蒸留物を加えた。pHを確認した後、さらなる量の25%の酢酸カルシウム溶液を添加してpHを3~4にした。pHを調整した後、次のステップで記載されるとおりバッチを75~80℃に加熱し、250~350mbarの真空下で蒸留して、濃縮した。
【0070】
新たな液体を有する第1のバッチ
バッチを75~80℃にて約15%w/wに濃縮し、次いで約20~25℃に冷却して結晶化した。約20~25℃にて約1時間撹拌した後、生成物を濾過により単離し、乾燥した。生成物の収量は11.8gであり、78%に対応した(出発材料を参照)。母液は次のバッチで使用するために保持した。
【0071】
後続のリサイクルされた母液を用いるバッチ
78gの母液に15g(0.5モル当量)の酢酸カルシウムを加えた。酢酸カルシウム/母液溶液に、2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリンの比率で約12gの分岐鎖ケト酸を含有する550gの遊離ケト酸蒸留物を加えた。予想されるpHは3~4であった。バッチを75~80℃にて約11~13%w/wに濃縮し、次いで約20~25℃に冷却して結晶化した。約20~25℃にて約1時間撹拌した後、生成物を濾過により単離し、乾燥した。生成物の収量は12.2~14gであり、80~94%に対応した。母液は次のバッチで使用するために保持した。
【0072】
共結晶化によって調製された生成物は、一方で、図6に示すとおり均質であり、より均一な粒度分布を有しているため(図7に示すとおり)、さらに処理することなく適用することに適している。図6は、共結晶化した分岐鎖ケト酸のカルシウム塩(2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリン)の顕微鏡写真を示す(大きさ:100倍、スケールバーは200μmである)。図7は、共結晶化した分岐鎖ケト酸のカルシウム塩(2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリン)の粒度分布(PSD)を示す。x軸はμm単位の粒度を示し、y軸は粒子の%を示す。赤色の線は、粒子の合計を示す。
【0073】
均一な粒度分布の効果は、本発明に従う共結晶化されたBCKAの混合物の粒度分布を、任意の共結晶化または共処理を伴わないBCKAの混合物と比較すると、さらに視覚化することができる。
【0074】
図8a)に示すとおり、共結晶化した分岐鎖ケト酸塩について、均一な粒度分布を測定することができる。しかしながら、同じ分岐鎖ケト酸塩を任意の共結晶化または共処理を伴わずに混合する場合、図8b)に示されるとおり、3種のケト酸の3本の異なるピークを検出することができ、ケトイソロイシンはケトロイシンよりもはるかに大きな粒子を有し、ケトバリンは最小の粒度を示す。図8は、a)共結晶化した分岐鎖ケト酸のカルシウム塩(2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリン)、およびb)分岐鎖ケト酸のカルシウム塩の混合物(2:1:1のケトロイシン:ケトイソロイシン:ケトバリン)の粒度分布(PSD)を示し、x軸はμm単位の粒度を示し、y軸は粒子の体積%を示す。
【実施例6】
【0075】
カルシウム塩の混合物の調製(炭酸カルシウムを用いる)
BCKAの母液(約5%w/v)に分岐鎖ケト酸を、次のモル比、1.1:2:1のケトバリン:ケトロイシン:ケトイソロイシンで加える。混合物を60℃に加熱し、次いで約0.5モル当量の炭酸カルシウムを少しずつ加える。懸濁液を>75℃に加熱し、一定時間撹拌した後、反応混合物を周囲温度に冷却する。固体を濾過により単離し、水で洗浄し、乾燥する。
【実施例7】
【0076】
カルシウム塩の混合物の調製(水酸化カルシウムを用いる)
水(あるいは母液)中に1.1:2:1のケトバリン:ケトロイシン:ケトイソロイシンから構成される2当量のケト酸混合物を含む5~10%の溶液(単相または二相でもよい)を調製し、約50~70℃に加熱する。この温度にて、約1当量の水酸化カルシウムを加える。添加が完了した後、内容物を75~90℃に加熱して、固体を溶解し、次いで溶液を周囲温度に冷却する。得られた固体を濾過により単離し、水で洗浄する。固体を真空下で最大60℃にて乾燥することができる。達成された収率は40~80%であった。リサイクルされた母液を使用する場合、より高い収率が達成された。
【実施例8】
【0077】
カルシウム塩の混合物の調製
以下のカルシウム塩は、(遊離酸を形成するために)実施例2および塩化/単離のために実施例4~7に記載されたものと類似の方法を使用して調製した。
・ケトフェニルアラニン/α-ヒドロキシメチオニン
・ケトフェニルアラニン/ケトバリン
・α-ヒドロキシメチオニン/ケトイソロイシン
【実施例9】
【0078】
マグネシウム塩の混合物の調製(酢酸マグネシウムを用いる)
水中の約1当量の酢酸マグネシウム四水和物の約5~10%の溶液に、1.1:2:1のケトバリン:ケトロイシン:ケトイソロイシン(BCKA)から構成されるケト酸混合物の30~60%のメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液を50~75℃にて添加する。二相性溶液を温度相分離が行われる75~85℃に加熱する。水溶液を真空下で最大80℃にて最小体積に濃縮し、次いでn-ブタノールの添加後、再度濃縮してn-ブタノール残留水を除去して(共沸蒸留により)、固体を得る。固体は真空下で最大70℃にて乾燥することができる。達成された収率は約80~90%であった。分枝鎖ケト酸の様々なマグネシウム塩の特性を表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
以下の混合物も調製した:
ケトロイシンとケトイソロイシンとの混合マグネシウム塩、
ケトロイシンとケトバリンとの混合マグネシウム塩、および
ケトイソロイシンとケトバリンとの混合マグネシウム塩。
【実施例10】
【0081】
マグネシウム塩の混合物の調製(水酸化マグネシウムを用いる)
水中(あるいは母液)の2当量のケト酸を含む5~10%の溶液(単相または二相でもよい)を調製し、約50~70℃に加熱する。この温度にて、約1当量の水酸化マグネシウムを加える。添加が完了した後、固体が得られるまで内容物を75℃にて真空下で濃縮する。固体を乾燥する。達成された収率は>90%であった。
【実施例11】
【0082】
異なる比率の混合カルシウム/マグネシウム塩の混合物の調製
水中(または母液中)の2当量のケト酸を含む5~10%の溶液(単相または二相でもよい)を調製し、約50~70℃に加熱する。この温度にて、合計約1当量の水酸化マグネシウム/水酸化カルシウムを2:1、1:1または1:2の比率で加える。添加が完了した後、固体が得られるまで内容物を75℃にて真空下で濃縮する。固体を乾燥する。達成された収率は>90%であった。混合比の異なる分岐鎖ケト酸の混合カルシウム/マグネシウム塩の特性を表5に示す。
【0083】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8