IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日機装株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図1
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図2
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図3
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図4
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図5
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図6
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図7
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図8
  • 特許-ウエハの製造方法及びサセプタ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ウエハの製造方法及びサセプタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20231130BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/44 B
H01L21/68 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021025071
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127115
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2021-09-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松倉 勇介
(72)【発明者】
【氏名】ペルノ シリル
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】市川 武宜
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/683
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されたAlGaN系の窒化物半導体を有するウエハの製造方法であって、
Al組成比が80%以上のAlGaN系の窒化物半導体からなるコーティング層が、前記ウエハを構成する基板を載置する載置面に形成されたサセプタを用意し、
前記コーティング層における前記載置面と反対側の面に、前記基板を配置し、
前記基板における前記コーティング層と反対側に、前記ウエハを構成する各層を成長させる、
ウエハの製造方法。
【請求項2】
前記ウエハは、前記基板における前記載置面と反対側の面に形成されたバッファ層を有し、
前記コーティング層は、前記バッファ層と同じ材料からなる、
請求項に記載のウエハの製造方法。
【請求項3】
前記基板は、サファイア基板である、
請求項1又は2に記載のウエハの製造方法。
【請求項4】
前記コーティング層の厚みは、3μm以上である、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のウエハの製造方法。
【請求項5】
前記コーティング層の厚みは、20μm以下である、
請求項に記載のウエハの製造方法。
【請求項6】
積層されたAlGaN系の窒化物半導体を有するウエハの製造に用いられるサセプタであって、
前記ウエハを構成する基板を載置する載置面に、Al組成比が80%以上のAlGaN系の窒化物半導体からなるコーティング層が形成されている、
サセプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハの製造方法及びサセプタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、III族窒化物半導体を含有するウエハを化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によって製造する方法が開示されている。特許文献1に記載のウエハの製造方法においては、チャンバ内に配されたサセプタの載置面に基板を載置し、ウエハの各層の原料となる原料ガスをチャンバ内に導入して基板上にウエハの各層を順次成長させることによって、ウエハが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-116331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のウエハの製造方法においては、サセプタの載置面と基板の裏面(すなわち基板における載置面側の面)との隙間に原料ガスが回り込み、基板の裏面において、意図しない結晶成長を招くおそれがある。基板の裏面において意図しない結晶成長が生じた場合、一例として、ウエハを用いて製造された半導体製品において所望の性能を得ることができないおそれが考えられる。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、基板の裏面において結晶が成長することを抑制することができるウエハの製造方法及びサセプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、積層されたAlGaN系の窒化物半導体を有するウエハの製造方法であって、Al組成比が80%以上のAlGaN系の窒化物半導体からなるコーティング層が、前記ウエハを構成する基板を載置する載置面に形成されたサセプタを用意し、前記コーティング層における前記載置面と反対側の面に、前記基板を配置し、前記基板における前記コーティング層と反対側に、前記ウエハを構成する各層を成長させる、ウエハの製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、積層されたAlGaN系の窒化物半導体を有するウエハの製造に用いられるサセプタであって、前記ウエハを構成する基板を載置する載置面に、Al組成比が80%以上のAlGaN系の窒化物半導体からなるコーティング層が形成されている、サセプタを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板の裏面において結晶が成長することを抑制することができるウエハの製造方法及びサセプタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態における、ウエハの製造装置の模式的な断面図である。
図2】第1の実施の形態における、コーティング層付きのサセプタの模式的な斜視図である。
図3】第1の実施の形態における、ウエハを利用して製造される窒化物半導体発光素子の構成を概略的に示す図である。
図4】第1の実施の形態における、ウエハの製造装置を用いてウエハを製造する工程を示すフローチャートである。
図5】比較形態における、基板の裏面側にウエハの原料ガスが流れ込んでいる様子を示す模式図である。
図6】第2の実施の形態における、ウエハの製造装置の模式的な断面図である。
図7】第3の実施の形態における、ウエハの製造装置の模式的な断面図である。
図8】比較例における、ウエハの製造装置の模式的な断面図である。
図9】第4の実施の形態における、ウエハの製造装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(ウエハWの製造装置1)
図1は、本形態におけるウエハWの製造装置1の模式的な断面図である。なお、図1はあくまでも模式図であり、サセプタ3の寸法と、コーティング層31の寸法と、ウエハWの寸法との比は、必ずしも実際のものと一致するものではない。また、詳細は後述するが、ウエハWは、基板(後述の図3における符号61参照)上に、窒化物半導体発光素子(図3における符号6参照)を構成するための複数の半導体層が積層されたものである。
【0012】
本形態において、製造装置1は、有機金属化学気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いてウエハWを製造するMOCVD装置である。MOCVD法は、有機金属化学気相エピタキシ(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法と呼ばれることもある。なお、製造装置1としては、分子線エピタキシ法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)、ハイドライド気相エピタキシ法(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)等のMOCVD法以外のエピタキシャル成長法を用いた装置を採用することも可能である。
【0013】
製造装置1は、リアクタ2、サセプタ3、回転軸4、及びヒータ5を備える。リアクタ2は、ウエハWの各層を構成するための原料ガスGを内部に導入する導入口21、及び原料ガスGを外部に排出する排出口22を有し、ウエハWを成長させる反応室20を区画するチャンバである。リアクタ2内の反応室20に、サセプタ3が配されている。
【0014】
図2は、コーティング層31付きのサセプタ3の模式的な斜視図である。サセプタ3は、例えば熱伝導性に優れた黒鉛等からなり、略円板状に形成されている。サセプタ3は、ウエハWを形成するための基板61(後述の図3参照)を設置するトレイである。本形態の製造装置1は、縦型のMOCVD装置であり、サセプタ3に対して垂直に原料ガスGが導入される。以後、サセプタ3に垂直な方向(すなわちサセプタ3の厚み方向であって、図1における上下方向)を上下方向という。本形態において、ウエハWを製造する際、上下方向は鉛直方向となる。なお、上下方向は、製造されたウエハWの鉛直方向に対する姿勢を限定するものではない。そして、上下方向の一方側であって、サセプタ3に対する導入口21側(すなわち図1の上側)を上側とし、その反対側(すなわち図1の下側)を下側とする。
【0015】
図1に示すごとく、サセプタ3の上面32には、複数のポケット部33が形成されている。なお、図2においては、便宜上、複数のポケット部33のうちの1つのみを表しており、他のポケット部33の図示は省略している。複数のポケット部33は、互いに同等の形状を有する。ポケット部33は、サセプタ3の上面32から下側に向かって凹むよう形成されている。ポケット部33は、上側から見た形状が円形となるよう形成されている。
【0016】
ポケット部33の底面331は、円形に形成されており、上下方向に直交する平面状に形成されている。底面331は、基板61を配置する載置面である。なお、底面331は、例えば、下側に膨らむよう湾曲した構成、上下方向において径が変わる段状の構成等、平面ではない構成を有していてもよい。ポケット部33の側面332は、底面331の周縁から上下方向にまっすぐ形成されている。なお、側面332は、例えば下側に向かうほど拡径するテーパ状等のような他の形状に形成されていてもよい。
【0017】
ここで、図1及び図3に示すごとく、ポケット部33の深さをd1[mm]、基板61の厚みをd2[mm]とする。ポケット部33の深さd1は、コーティング層31が形成されていないときのポケット部33の最大深さ(すなわち上下方向の長さ)である。このとき、ポケット部33の深さd1は、d2-0.1mm≦d1≦d2+0.5mm、を満たすことが好ましい。d1≧d2-0.1mmとすることにより、サセプタ3を高速回転させつつウエハWを製造している際に基板61が遠心力によってポケット部33から飛び出ることを抑制することができる。また、d1≦d2+0.5mmとすることにより、基板61の周囲において原料ガスGの流れが乱れることを抑制することができる結果、製造されるウエハWの膜厚分布にばらつきが生じることを抑制することができる。ウエハWの膜厚分布にばらつきが生じた場合、ウエハWにおいて窒化物半導体発光素子(図3における符号6参照)として利用可能な部位が減少する(すなわち歩留まりが低下する)ことが懸念されるところ、d1≦d2+0.5mmとすることにより、ウエハWの膜厚を均一化することができ、歩留まりの低下を抑制することができる。
【0018】
基板61の直径に対するポケット部33の直径の比率、すなわち、(ポケット部33の直径)/(基板61の直径)は、1.002以上、1.018以下であることが好ましい。この場合、基板61の外周部とポケット部33との間の径方向の隙間の体積が小さくなり、ウエハWの原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込み難くなる。ポケット部33の直径は、例えば、8インチ(203.2mm)以下、4インチ(101.6mm)以下、3インチ(76.2mm)以下等とすることができる。
【0019】
ポケット部33の底面331には、コーティング層31が形成されている。コーティング層31は、ウエハWの後述のバッファ層62(図3参照)と同じ材料にて構成されており、本形態においては、窒化アルミニウム(AlN)にて構成されている。なお、これに限られず、コーティング層31は、その表面においてウエハWの原料ガスGが吹き付けられることによって結晶が成長し得る材料によって構成することができる。例えば、製造されるウエハWが、積層された窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系の半導体を備える場合、コーティング層31は、窒化アルミニウム、又はAl組成比80%以上の窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)にて構成されることが好ましい。これにより、バッファ層62を構成する原料ガスGが基板61の裏面611側の隙間に回り込んだ場合であっても、コーティング層31の表面において結晶成長が促されやすく、基板61の裏面611において結晶が成長することを抑制することができる。
【0020】
コーティング層31の厚みは、3μm以上とすることができる。サセプタ3は、コーティング層31が形成された状態でウエハWを交換しながら複数回使用され得るところ、コーティング層31の厚みを3μm以上とすることにより、コーティング層31が早期に摩耗して使用不能となることを防止することができる。かかる観点から、コーティング層31の厚みは、5μm以上とすることがより好ましい。また、コーティング層31の厚みは、20μm以下とすることができる。この場合、後述するようにコーティング層31を製造する際の時間短縮及び原料ガスの量を削減することができるとともに、ウエハW製造中におけるサセプタ3の回転によって基板61がポケット部33から飛び出ることを防止しやすい。かかる観点から、コーティング層31の厚みは、10μm以下とすることがより好ましい。本形態において、コーティング層31の厚みは、4μm以上、8μm以下である。
【0021】
回転軸4は、その中心軸を中心に自転するとともにサセプタ3を回転させる。回転軸4は、図示しない回転機構に接続されており、回転機構から回転力を受けて回転するよう構成されている。
【0022】
ヒータ5は、例えば通電によって発熱するものを採用することができる。ヒータ5は、サセプタ3を介してウエハWを加熱する役割を有する。
【0023】
(窒化物半導体発光素子6の概要)
図3は、ウエハWを利用して製造される窒化物半導体発光素子6の構成を概略的に示す図である。なお、図3において、窒化物半導体発光素子6の各層の積層方向の寸法比は、必ずしも実際のものと一致するものではない。以後、窒化物半導体発光素子6を、単に「発光素子6」ということもある。
【0024】
発光素子6は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)を構成するものとすることができる。発光素子6は、例えば、中心波長が365nm以下の紫外光を発するLEDを構成する。具体的には、本形態の発光素子6は、例えば200nm以上365nm以下の深紫外光を発することができるよう構成されている。
【0025】
発光素子6を構成する半導体としては、直接遷移型の窒化物半導体のうち、例えばAlGaIn1-x-yNにて表される組成を有する2~4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。ここで、下付きの記号xはAlGaIn1-x-yNのAl組成比を表し、x及びyは、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1、の関係を満たす。本形態において、発光素子6を構成する半導体は、AlGaN系の窒化物半導体からなる。AlGaN系の窒化物半導体は、組成がAlGa1-zNにて表される窒化物半導体であり、下付きの記号zは、Al組成比を表し、0≦z≦1を満たす。なお、発光素子6を構成するIII族元素の一部をホウ素(B)、タリウム(Tl)等のIII族元素に置き換えてもよく、また、窒素の一部をリン(P)、ヒ素(As)等のV族元素に置き換えてもよい。
【0026】
発光素子6は、基板61、バッファ層62、n型クラッド層63、活性層64、電子ブロック層65、p型クラッド層66、及びp型コンタクト層67を、この順に積層して構成されている。発光素子6の各層は、これらの積層方向に厚みを有する。
【0027】
基板61は、サファイア(Al)単結晶を含むサファイア基板である。本形態において、基板61の厚みは、405μm以上、455μm以下である。なお、基板61としては、サファイア基板の他に、例えば、窒化アルミニウムからなる窒化アルミニウム基板、窒化アルミニウムガリウムからなる窒化アルミニウムガリウム基板等を用いてもよいが、後述するように基板61の裏面611における結晶成長を防ぐ観点からは、基板61はサファイア基板とすることが好ましい。
【0028】
バッファ層62は、窒化アルミニウムにより形成されている。基板61がサファイア基板又は窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層62は、窒化アルミニウムによって形成されることが、基板61とn型クラッド層63との間の格子不整合を緩和する観点から好ましい。本形態において、バッファ層62の厚みは、1.8μm以上、2.2μm以下である。なお、バッファ層62は前述したものに限定されず、例えば基板61が窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層62は、窒化アルミニウムガリウムにより形成されていてもよい。この場合、バッファ層62は、基板61のAl組成比に対して±5%程度のAl組成比を有する窒化アルミニウムガリウムにより形成されることが、基板61とn型クラッド層63との間の格子不整合を緩和する観点から好ましい。
【0029】
n型クラッド層63はn型AlGaNからなり、活性層64はアンドープのAlGaNからなり、電子ブロック層65はp型AlGaNからなり、p型クラッド層66はp型AlGaNからなり、p型コンタクト層67はp型GaNからなる。n型の不純物は、シリコン(Si)としたが、シリコンに代えて、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)等を用いてもよい。また、p型の不純物は、マグネシウム(Mg)としたが、マグネシウムに代えて、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、又は炭素(C)等を用いてもよい。
【0030】
活性層64は、3.4eV以上のバンドギャップを有し、波長365nm以下の深紫外光を発生させる。特に本形態において、活性層64は、中心波長が200nm以上365nm以下の深紫外光を発生することができるよう構成されている。活性層64の構造は、例えば井戸層及び障壁層を備える、単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造とすることができる。単一量子井戸構造は、井戸層が1つ設けられた構造であり、多重量子井戸構造は、井戸層が複数設けられた構造であり、例えば井戸層と障壁層とを交互に積層することができる。
【0031】
なお、ウエハWを利用して製造される発光素子6は、前述したものに限られず、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有すれば他の構成を採用し得る。例えば、n型クラッド層63は、単層としてもよいし複数層としてもよい。また、活性層64のうち、例えば障壁層を、n型不純物及びp型不純物の少なくとも一方が含まれた層とすることもできる。また、電子ブロック層65をアンドープのAlGaNによって構成することも可能である。そして、電子ブロック層65を、互いにAl組成比が異なる複数層にて構成することも可能である。さらに、発光素子6において電子ブロック層65を省略し、活性層64の直上にp型クラッド層66が形成される構成を採用することも可能である。また、p型クラッド層66を省略してもよい。また、p型コンタクト層67は、例えば、10%以下のAl組成比を有するp型AlGaNによって形成された層でもよい。
【0032】
また、発光素子6は、n型クラッド層63上に設けられたn側電極68と、p型コンタクト層67上に設けられたp側電極69とをさらに備える。n側電極68は、n型クラッド層63における活性層64からの露出面上に形成されている。n側電極68は、例えば、n型クラッド層63上にチタン(Ti)、アルミニウム、チタン、及び金(Au)が順に積層されてなる。p側電極69は、p型コンタクト層67上に形成されている。p側電極69は、例えば、p型コンタクト層67上に、ニッケル(Ni)、金が順に積層されてなる。
【0033】
(ウエハWの製造方法)
図4は、ウエハWの製造装置1を用いてウエハWを製造する工程を示すフローチャートである。図4を参照しつつ、ウエハWの製造装置1を用いて、ウエハWを製造する工程を説明する。本形態のウエハWの製造方法は、判断工程S1、コーティング工程S2、ウエハ形成工程S3、及びウエハ取出工程S4を備える。
【0034】
判断工程S1は、サセプタ3の複数のポケット部33のそれぞれの底面331に、コーティング層31が形成されているか否かを判断する工程である。サセプタ3の複数のポケット部33のそれぞれの底面331に、コーティング層31が形成されていなければコーティング工程S2に進み、コーティング層31が形成されていればウエハ形成工程S3に進む。
【0035】
コーティング工程S2は、サセプタ3の複数のポケット部33のそれぞれの底面331に、コーティング層31を形成する工程である。コーティング工程S2においては、まず、サセプタ3におけるポケット部33の底面331以外の部位において結晶が成長しないよう、サセプタ3における底面331以外の部位をマスクにて被覆する。そして、リアクタ2内の反応室20に、底面331以外がマスクにて被覆されたサセプタ3を配置する。次いで、ヒータ5を作動させ、サセプタ3の温度をコーティング層31の成長に適した温度にする。本形態のようにコーティング層31を窒化アルミニウムにて構成する場合は、ヒータ5を用いて、サセプタ3を窒化アルミニウムのエピタキシャル成長に適した1000℃以上1400℃以下に昇温させる。
【0036】
そして、回転軸4を介してサセプタ3を高速回転させながら、アルミニウム源としてのトリメチルアルミニウム(TMA)及び窒素源としてのアンモニア(NH)を含む原料ガスを導入口21から反応室20内に供給し、ポケット部33の底面331上にコーティング層31をエピタキシャル成長させる。このとき、原料ガスの濃度、流量、及びサセプタ3の温度等を考慮し、コーティング層31が所望の厚みとなるよう原料ガスの供給時間を調整する。これにより、ポケット部33の底面331に、所望の厚みを有するコーティング層31が形成される。そして、サセプタ3からマスクを除去することにより、ポケット部33の底面331のみに、所望の厚みを有するコーティング層31が形成されたサセプタ3を得ることができる。なお、コーティング工程S2は前述した方法に限られない。例えば、まずマスクにて被覆されていないサセプタ3を反応室20に配置し、サセプタ3の上面32及びポケット部33の底面331の双方にコーティング層を形成した後、サセプタ3の上面32に形成されたコーティング層のみを除去することにより、ポケット部33の底面331のみにコーティング層31が形成されたサセプタ3を製造することができる。この場合は、サセプタ3の上面32に形成されたコーティング層を、例えばウェットエッチング、研磨、又は切削等によって除去することが可能である。
【0037】
判断工程S1においてサセプタ3の複数のポケット部33のそれぞれの底面331にコーティング層31が形成されていると判断された場合(図4のYesの場合)、又は、コーティング工程S2が終了した場合、ウエハ形成工程S3が行われる。ウエハ形成工程S3においては、まず、サセプタ3のポケット部33の底面331に形成されたコーティング層31の上に基板61を配置する。基板61は、ポケット部33よりも僅かに直径が小さい円形に形成されている。なお、基板61には、基板61の結晶方位を示すためのオリエンテーションフラット(いわゆるオリフラ)が形成されていてもよい。
【0038】
そして、ヒータ5を用いて、基板61の温度を、バッファ層62の成長温度に適した温度(本形態においては1000℃以上1400℃以下)に昇温する。そして、回転軸4を介してサセプタ3を高速回転させながら、アルミニウム源としてのトリメチルアルミニウム及び窒素源としてのアンモニアを含む原料ガスGを導入口21からリアクタ2の反応室20に供給し、基板61上に窒化アルミニウムからなるバッファ層62を形成する。つまり、バッファ層62及びコーティング層31のそれぞれは、同様の製法にて形成される。
【0039】
そして、バッファ層62上に、ウエハWの各層(すなわちn型クラッド層63、活性層64、電子ブロック層65、p型クラッド層66、及びp型コンタクト層67)を順次形成する。各層を成長させるにあたっては、基板61の温度を、各層を成長させるために適した成長温度に適宜調整しつつ、各層を構成する原料ガスGをリアクタ2の反応室20に供給する。各層を構成する原料ガスGとしては、アルミニウム源としてのトリメチルアルミニウム及び窒素源としてアンモニアの他、ガリウム源としてトリメチルガリウム(TMG)、シリコン源としてテトラメチルシラン(TMSi)、及びマグネシウム源としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いることができる。各層をエピタキシャル成長させるための成長温度、成長圧力、及び成長時間等の製造条件については、各層の構成に応じた一般的な条件とすることができる。以上により、ウエハWが製造される。
【0040】
次いで、ウエハ取出工程S4が行われる。ウエハ取出工程S4においては、完成したウエハWがポケット部33から取り出される。
以上のようにして、ウエハWが製造され得る。
【0041】
そして、判断工程S1からウエハ取出工程S4までの製造サイクルが繰り返されることによって、多数のウエハWが製造される。ここで、一度形成されたコーティング層31を用いた製造サイクルが多数回繰り返された場合、コーティング層31の摩耗の進行が懸念される。そこで、1つのコーティング層31を用いた場合の製造サイクルの上限回数を予め決定しておき、1つのコーティング層31を用いて前記上限回数だけウエハWの製造工程を行った後は、サセプタ3から使用済のコーティング層31を研磨によって除去してサセプタ3のみの状態に戻してもよい。そうすると、次の製造サイクルにおいては、判断工程S1にて、サセプタ3の複数のポケット部33の底面331にコーティング層31が形成されていないと判断され、コーティング工程S2において新たなコーティング層31が形成されることとなる。
【0042】
以上のようにして製造されたウエハWは、さらに加工されることによって発光素子6となる。ウエハWから発光素子6を製造する際には、ウエハWの一部をp型コンタクト層67の上面から積層方向のn型クラッド層63の途中までエッチングにより除去することによってn型クラッド層63を上側に露出させる。そして、露出したn型クラッド層63の上面にn側電極68を形成し、さらにp型コンタクト層67の上面にp側電極69を形成する。そして、ウエハWを切断して小片化させることによって、1つのウエハWから多数の発光素子6が形成される。
【0043】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態のウエハWの製造方法においては、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するコーティング層31が、ウエハWを構成する基板61を載置する載置面(本形態においてはポケット部33の底面331)に形成されたサセプタ3を用意する。そして、コーティング層31の上面に基板61を配置し、基板61の上側に、ウエハWを構成する各層を成長させる。それゆえ、ウエハWの各層を成長させるための原料ガスGを基板61の上面に吹き付けた際に原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込んだ場合であっても、基板61の裏面611において意図しない結晶成長が生じることを抑制することができる。以後、このメカニズムについて詳説する。
【0044】
まず、図5に示すごとく、比較形態の製造装置を用いてウエハWを形成する場合について検討する。図5に示す比較形態の製造装置は、サセプタ3のポケット部33の底面331にコーティング層(図1等の符号31)が形成されていない製造装置である。基板61上にウエハWの各層を成長させる際、基板61は、ウエハWの各層の成長温度とすべく高温となるが、これに伴って基板61の外周部が上方に向かって反ることがある。これにより、基板61の外周部とポケット部33の底面331との間には空隙Sが形成され、空隙SにウエハWの各層の原料となる原料ガスGが回り込む。なお、図5においては、便宜上、基板61の反りを誇張して表している。
【0045】
空隙Sに回り込んだ原料ガスGは、基板61の裏面611に結晶を成長させ得る。これは、黒鉛等からなるサセプタ3のポケット部33の底面331よりも、サファイアからなる基板61の裏面611の方が、原料ガスGの反応性が高いためである。特に、基板61の直上に形成されるバッファ層62を構成する原料ガスGは基板61との反応性がよく、基板61の裏面611において成長が促されやすい。
【0046】
基板61の裏面611において意図しない結晶成長が生じた場合、完成したウエハWから形成される発光素子6の性能が低下するおそれがある。さらに、図5に示すごとく、基板61の中央部のみがヒータ5に熱された高温のサセプタ3に接触するため、基板61の中心部においては、サセプタ3からの熱伝達、及びサセプタ3からの熱放射を特に受けやすい。そのため、上から見たときの基板61の中央部のみにおいて、ウエハWの各層の異常成長が生じ、製造されたウエハWの中央部のみが白濁する現象が生じることがある。こうなると、ウエハWの中央部は発光素子6として利用することができなくなり、ウエハWの歩留まりが著しく悪化する。
【0047】
一方、図1に示すごとく、本形態のウエハWの製造方法においては、ポケット部33の底面331に、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するコーティング層31が形成されている。ここで、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するウエハWの原料となる原料ガスGは、サファイアからなる基板61の裏面611よりもAl,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するコーティング層31の表面において反応しやすい。そのため、本形態においては、ウエハWの各層の形成時、基板61の外周部が上側に反って基板61の裏面611側に原料ガスGが流入した場合、コーティング層31の表面において、原料ガスGの反応が促進されて結晶の成長が生じることとなる。このように、基板61の裏面611側に回り込んだ原料ガスGはコーティング層31の表面に吸収されやすいため、基板61の裏面611において結晶が成長することを抑制することができる。さらに、基板61の外周部が上側に反って基板61の中央部のみがコーティング層31に接触している場合であっても、基板61はコーティング層31を介してサセプタ3に接触するため、基板61の中心部の過剰な温度上昇を抑制することができる。これにより、上側から見たときの基板61の中央部のみにおいて、ウエハWの各層の異常成長が生じてウエハWの中央部のみ白濁する現象が生じることを抑制することができる。
【0048】
また、ウエハWは、積層されたAlGaN系の窒化物半導体を有し、コーティング層31は、Al組成比が80%以上のAlGaN系の窒化物半導体(本形態においては窒化アルミニウム)からなる。それゆえ、ウエハWの各層の原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込んだ場合、原料ガスGは、基板61の裏面611よりもコーティング層31の表面において反応しやすくなるため、基板61の裏面611において結晶成長が生じることを抑制することができる。
【0049】
また、コーティング層31は、バッファ層62と同じ材料(すなわち窒化アルミニウム)からなる。ここで、前述のごとく、バッファ層62は、基板61の直上に形成される層であり、その原料ガスGが基板61の裏面611と反応しやすい。そこで、コーティング層31をバッファ層62と同じ材料にて形成することにより、基板61の裏面611側に回り込んだバッファ層62の原料ガスGは、基板61の裏面611よりもコーティング層31表面において反応しやすくなる。その結果、バッファ層62の原料ガスGによって基板61の裏面611に結晶成長が生じることを抑制することができる。
【0050】
また、基板61は、サファイア基板である。それゆえ、ウエハWの各層の原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込んだ場合、サファイアからなる基板61の裏面611よりもAl,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するコーティング層31の表面において反応しやすい。そのため、基板61の裏面611において結晶成長が生じることを一層抑制することができる。
【0051】
また、コーティング層31の厚みは、3μm以上である。サセプタ3は、コーティング層31が形成された状態で、ウエハWを交換しながら複数回使用され得るところ、コーティング層31の厚みを3μm以上とすることにより、コーティング層31が早期に摩耗し使用不能となることを防止することができる。
【0052】
また、コーティング層31の厚みは、20μm以下である。それゆえ、コーティング層31を製造する際の時間短縮及び原料ガスの量を削減することができるとともに、ウエハW製造中におけるサセプタ3の回転によって基板61がポケット部33から飛び出ることを防止しやすい。
【0053】
以上のごとく、本形態によれば、基板の裏面において結晶が成長することを抑制することができるウエハの製造方法及びサセプタを提供することができる。
【0054】
[第2の実施の形態]
図6は、本形態におけるウエハWの製造装置1の模式的な断面図である。本形態は、サセプタ3の上面32に堆積層34が形成された形態である。サセプタ3の上面32に形成された堆積層34は、サセプタ3のポケット部33の底面331に形成されたコーティング層31と同じ組成を有する。堆積層34は、サセプタ3の上面32全体に形成されている。また、堆積層34の厚みは、コーティング層31の厚みよりも大きくすることができるが、これに限られない。
【0055】
堆積層34は、例えば、サセプタ3にマスクをせずにサセプタ3にコーティング層31を形成することによって、コーティング層31の形成と同時に形成することができる。すなわち、コーティング層31の原料ガスが、ポケット部33の底面331において反応することによってコーティング層31が形成され、サセプタ3の上面32において反応することによって堆積層34が形成される。また、堆積層34は、ウエハW製造時に、ウエハWの原料ガスGがサセプタ3の上面32に吹き付けられることによってサセプタ3の上面32において結晶成長して形成されることもあり、AlGaN系の窒化物半導体を含み得る。
【0056】
その他は、第1の実施の形態と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0057】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0058】
[第3の実施の形態]
図7は、本形態におけるウエハWの製造装置1の模式的な断面図である。本形態は、サセプタ3表面全体に、セラミック層35を形成し、セラミック層35を介してサセプタ3のポケット部33の底面331にコーティング層31を配置した形態である。
【0059】
セラミック層35は、例えば炭化ケイ素(SiC)、熱分解窒化ホウ素(PBN)等からなるコーティングであるが、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するコーティング層31とは異なる。セラミック層35は、黒鉛等からなるサセプタ3が、リアクタ2の反応室20内において、高温環境下で水素、アンモニア等のエッチング性ガスに曝されることに起因して腐食することを防止する役割を有する。そして、本形態において、コーティング層31は、セラミック層35を介してポケット部33の底面331に形成されている。また、セラミック層35を介してサセプタ3の上面32全体に、堆積層34が形成されている。なお、図7におけるセラミック層35は、便宜上、その厚みを誇張して表している。
その他の構成は、第2の実施の形態と同様である。
【0060】
(第3の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、サセプタ3表面全体にセラミック層35が形成されているため、前述の図5に示すごとく基板61の外周部が上側に反った場合であっても、基板61の中央部は、コーティング層31及びセラミック層35の双方を介してサセプタ3と熱的に接触することとなる。そのため、基板61の中央部においてウエハWが異常成長し、ウエハWの中央部のみが白濁することを一層防止しやすい。
その他、本形態においても、第2の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0061】
(実験例)
本実験例は、図7に示すごとく、第3の実施の形態における製造装置1と基本構造を同じくする製造装置1の実施例と、図8に示すごとく、ポケット部33の底面331にコーティング層(図7の符号31参照)が存在しないこと以外は実施例と概ね同様の製造装置9の比較例1及び比較例2とにおいて、製造されたウエハWの状態を確認した実験例である。比較例1と比較例2とでは、堆積層34の厚み及び堆積層34の材質が異なる。
【0062】
実施例、比較例1及び比較例2のそれぞれの各部寸法及び各部材質につき、下記表1に記載し、実施例、比較例1、及び比較例2のそれぞれを用いて製造されるウエハWの各部寸法、及び面内合格率を表2に示している。なお、表2における「面内合格率」は、ウエハWを厚み方向から見たときにおける、ウエハWの全面積に対する、ウエハWにおいて異常成長が生じていない部分の面積の総面積の割合である。ウエハWにおいて異常成長が生じた箇所とは、例えば基板61上においてウエハWに白濁が生じている箇所、又は、基板61の裏面611において結晶成長が生じることによって変色している箇所等である。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表2から分かるように、サセプタ3の底面331にコーティング層31を形成した実施例は、サセプタ3の底面331にコーティング層31を形成していない比較例1及び比較例2のいずれよりも面内合格率が高くなっているとともに、面内合格率が100%となっている。それゆえ、サセプタ3の底面331にコーティング層31を形成することにより、ウエハWの面内合格率を確保できるため、ウエハWにおいて発光素子6として使用不能な箇所が形成されて歩留まりが悪化することを防止することができる。
【0066】
また、比較例1と比較例2とは、表1から分かるように互いに堆積層34の厚みが異なっているが、堆積層34の厚みが大きい比較例1の方が、比較例2よりも面内合格率が高くなっていることが表2から分かる。そのため、サセプタ3の上面32の堆積層34の厚みが大きい程、製造されるウエハWの面内合格率が高くなるものと推論することができる。つまり、サセプタ3の上面32の堆積層34は、面内合格率向上の観点からは、可能な限り厚いことが好ましい。かかる観点から実施例を検討すると、実施例においてはサセプタ3の上面32の堆積層34の厚みが18μmにて面内合格率が100%となっているため、本実施例においてはサセプタ3上面の堆積層34の厚みが18μm以上となる場合において高い面内合格率が得られるものと推論することができる。
【0067】
[第4の実施の形態]
図9は、本形態におけるウエハWの製造装置1の模式的な断面図である。本形態は、基本的な構成を第2の実施の形態と同様としつつ、サセプタ3のポケット部33の側面332にもコーティング層31が形成された形態である。つまり、本形態において、コーティング層31は、サセプタ3のポケット部33の底面331上のみではなく、ポケット部33の側面332、及びサセプタ3の上面32にも形成されている。なお、本形態においては、サセプタ3の表面に、第3の実施の形態におけるセラミック層(符号35)は形成されていない。
その他は、第2の実施の形態と同様である。
【0068】
(第4の実施の形態の作用及び効果)
本形態は、ポケット部33の側面332にもコーティング層31が形成されている。ここで、ウエハWの原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込む場合は、必ずポケット部33の側面332付近を通過するため、ポケット部33の側面332にコーティング層31を形成することにより、基板61の裏面611側に回り込もうとするウエハWの原料ガスGを、ポケット部33の側面332に配されたコーティング層31によって吸収することができる。
その他、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0069】
(実施の形態のまとめ)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0070】
(発明の実施態様)
次に、以上説明した実施の形態から把握される本発明の実施態様について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0071】
[1]本発明の第1の実施態様は、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するウエハWの製造方法であって、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するコーティング層31が、前記ウエハWを構成する基板61を載置する載置面331に形成されたサセプタ3を用意し、前記コーティング層31における前記載置面331と反対側の面に、前記基板61を配置し、前記基板61における前記コーティング層31と反対側に、前記ウエハWを構成する各層を成長させる、ウエハWの製造方法である。
これにより、ウエハWの各層を成長させるための原料ガスGを基板61の上面に吹き付けた際に原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込んだ場合であっても、基板61の裏面611において意図しない結晶成長が生じることを抑制することができる。
【0072】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様のウエハWの製造方法において、前記ウエハWが、積層されたAlGaN系の窒化物半導体を有し、前記コーティング層31が、Al組成比が80%以上のAlGaN系の窒化物半導体からなることである。
これにより、ウエハWの各層の原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込んだ場合、原料ガスGは、基板61の裏面611よりもコーティング層31の表面において反応しやすくなるため、基板61の裏面611において結晶成長が生じることを抑制することができる。
【0073】
[3]本発明の第3の実施態様は、第1又は第2の実施態様のウエハWの製造方法において、前記ウエハWが、前記基板61における前記載置面331と反対側の面に形成されたバッファ層62を有し、前記コーティング層31が、前記バッファ層62と同じ材料からなることである。
これにより、基板61の裏面611側に回り込んだバッファ層62の原料ガスGは、基板61の裏面611よりもコーティング層31表面において反応しやすくなるため、バッファ層62の原料ガスGによって基板61の裏面611に結晶成長が生じることを抑制することができる。
【0074】
[4]本発明の第4の実施態様は、第1~第3のいずれかの実施態様のウエハWの製造方法において、前記基板61が、サファイア基板であることである。
これにより、ウエハWの各層の原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込んだ場合、サファイアからなる基板61の裏面611よりもAl,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するコーティング層31の表面において反応しやすくなるため、基板61の裏面611において結晶成長が生じることを一層抑制することができる。
【0075】
[5]本発明の第5の実施態様は、第1~第4のいずれかの実施態様のウエハWの製造方法において、前記コーティング層31の厚みが、3μm以上であることである。
これにより、コーティング層31が早期に摩耗し使用不能となることを防止することができる。
【0076】
[6]本発明の第6の実施態様は、第5の実施態様のウエハWの製造方法において、前記コーティング層31の厚みが、20μm以下であることである。
これにより、コーティング層31を製造する際の時間短縮及び原料ガスの量を削減することができるとともに、ウエハW製造中におけるサセプタ3の回転によって基板61がポケット部33から飛び出ることを防止しやすい。
【0077】
[7]本発明の第7の実施態様は、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するウエハWの製造に用いられるサセプタ3であって、前記ウエハWを構成する基板61を載置する載置面331に、Al,Ga及びInの少なくとも一つの元素とNとを含有するコーティング層31が形成されている、サセプタ3である。
かかるサセプタ3を用いてウエハWを製造することにより、ウエハWの各層を成長させるための原料ガスGを基板61の上面に吹き付けた際に原料ガスGが基板61の裏面611側に回り込んだ場合であっても、基板61の裏面611において意図しない結晶成長が生じることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0078】
3…サセプタ
31…コーティング層
331…底面(載置面)
61…基板
62…バッファ層
W…ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9