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  • 特許-レーザ加工用光ファイバ 図1
  • 特許-レーザ加工用光ファイバ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】レーザ加工用光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20231130BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20231130BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B6/02 B
B23K26/064 K
G02B6/02 461
G02B6/036
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021081404
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175189
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】八若 正義
(72)【発明者】
【氏名】浦松 知史
(72)【発明者】
【氏名】石田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】北澤 敏幸
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/150064(WO,A1)
【文献】特開2008-076655(JP,A)
【文献】特表2020-513325(JP,A)
【文献】国際公開第2021/045871(WO,A1)
【文献】特開2010-102276(JP,A)
【文献】特開2005-298222(JP,A)
【文献】特開平01-219707(JP,A)
【文献】国際公開第2021/145358(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159857(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/203367(WO,A1)
【文献】特開2023-015423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/036
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに所定のレーザ加工を施すレーザ光を伝送するための相対的にコア径が小さい断面形状が円形である単一の第1コアと、
前記ワークのレーザ加工予定部を予熱するレーザ光を伝送するための相対的にコア径が大きい断面形状が円形である単一の第2コアと、
を有する断面形状が円形であるレーザ加工用光ファイバであって
前記第1及び第2コアは、ファイバ断面において、いずれの中心もファイバ中心からずれるとともに、それらの中心間にファイバ中心が位置し、かつ、クラッド内で離間して設けられているレーザ加工用光ファイバ。
【請求項2】
請求項1に記載されたレーザ加工用光ファイバにおいて、
前記第1コア及び前記第2コアのいずれもが石英で形成されているレーザ加工用光ファイバ。
【請求項3】
請求項2に記載されたレーザ加工用光ファイバにおいて、
前記第2コアを形成する石英が、前記第1コアを形成する石英よりも、OH含有量が多いレーザ加工用光ファイバ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたレーザ加工用光ファイバを用いた銅製のワークの溶接方法であって、
前記レーザ加工用光ファイバ及び前記銅製のワークを相対的に移動させることにより、前記銅製のワークの加工予定部に前記レーザ加工用光ファイバの前記第2コアから青色のレーザ光を照射して前記銅製のワークの前記加工予定部を予熱するのに続いて、前記予熱された前記銅製のワークの前記加工予定部に前記第1コアから近赤外線領域のレーザ光を照射して前記銅製のワークの前記加工予定部を溶接する溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工用光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレーザ光を伝送する手段として、特許文献1には、赤色、緑色、及び青色のレーザ光を、1本の光ファイバに、それぞれのビーム中心位置をずらして入射する技術が開示されている。
【0003】
ところで、ファイバレーザは、高出力化が進んでおり、高密度熱源として溶接等のレーザ加工に応用されている。ところが、電子部品等で用いられる銅や金は、ファイバレーザが発する波長が約1000nmの近赤外線領域のレーザ光の吸収率が低いため、ファイバレーザを用いたレーザ加工が難しいという問題がある。一方、銅は、青色半導体レーザが発する波長450nmのレーザ光の吸収率が高く、また、温度が上昇すると近赤外線領域のレーザ光の吸収率が高まる。これらのことから、非特許文献1には、銅に対し、青色半導体レーザが発する波長450nmのレーザ光を照射して予熱することにより、近赤外線領域のレーザ光の吸収率を高め、その後、ファイバレーザが発する近赤外線領域のレーザ光を照射して溶接加工を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-5604号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】黒田裕志,藤尾駿平,竹中啓輔,井藤里香,佐藤雄二,吉田実,塚本雅裕,「ファイバーレーザーと青色半導体レーザーを用いたハイブリットレーザーシステムによる銅の溶接」,レーザー学会学術講演会第41回年次大会講演予稿集,2021年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に開示された技術では、ファイバレーザ及び青色半導体レーザが発するレーザ光を、それぞれ光ファイバで伝送し、それらを合波してワークに照射する。このとき、レーザ光の合波は、ワークの直上の加工ヘッドで行われる。通常、レーザ加工の加工ヘッドは、三次元的な動きを高速で行うことができるように、小型で且つ軽量であることが望まれる。しかしながら、非特許文献1に開示された技術の場合、加工ヘッドは、ファイバレーザ及び青色半導体レーザから延びる光ファイバの先端に取り付けられた2個の光コネクタ及びそれらから発されるレーザ光を合波するためのダイクロイックミラーの設置が必要であるため、大型で且つ重くなる。また、振動を伴う加工ヘッドへのダイクロイックミラーの設置は好ましくない。
【0007】
本発明の課題は、ワークに所定のレーザ加工を施すレーザ光及びワークのレーザ加工予定部を予熱するレーザ光を用いるレーザ加工装置について、加工ヘッドを小型で且つ軽量にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ワークに所定のレーザ加工を施すレーザ光を伝送するための相対的にコア径が小さい断面形状が円形である単一の第1コアと、前記ワークのレーザ加工予定部を予熱するレーザ光を伝送するための相対的にコア径が大きい断面形状が円形である単一の第2コアとを有する断面形状が円形であるレーザ加工用光ファイバであって、前記第1及び第2コアは、ファイバ断面において、いずれの中心もファイバ中心からずれるとともに、それらの中心間にファイバ中心が位置し、かつ、クラッド内で離間して設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワークに所定のレーザ加工を施すレーザ光及びワークのレーザ加工予定部を予熱するレーザ光を用いるレーザ加工装置に適用すれば、それらの両方のレーザ光を単一の光ファイバで伝送できるので、その先端に取り付けられる加工ヘッドを小型で且つ軽量とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係るレーザ加工用光ファイバの断面図である。
図2】実施形態1に係るレーザ加工用光ファイバを含むレーザ加工装置の構成を示す図である。
図3】実施形態2に係るレーザ加工用光ファイバの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るレーザ加工用光ファイバ10を示す。このレーザ加工用光ファイバ10は、例えば銅の溶接等のレーザ加工に用いられるレーザ加工装置に装着されるものである。
【0013】
実施形態1に係るレーザ加工用光ファイバ10は、第1コア111と、その第1コア111に接触して被覆する第1クラッド121と、その第1クラッド121に接触して被覆する第2コア112と、その第2コア112に接触して被覆する第2クラッド122と、第2クラッド122に接触して被覆するジャケット13とを備えた二重コア構造を有する。この二重コア構造では、断面形状が円形の第1コア111がファイバ中心に設けられるとともに、その第1コア111を中心として、各々、断面形状が環状の層の第1クラッド121、第2コア112、第2クラッド122、及びジャケット13が、内側から外側に向かって連続するように同心状に設けられている。したがって、第1コア111は、第1クラッド121を介して第2コア112内に設けられている。
【0014】
第1コア111は、例えば銅製のワークに溶接等の所定のレーザ加工を施すファイバレーザが発する波長が約1000nmの近赤外線領域のレーザ光(以下「IR光」という。)を伝送する。第1コア111は、IR光の伝送のため、相対的にコア径が小さい。第1コア111のコア径は、例えば50μm以上150μm以下である。
【0015】
第1コア111は、例えば高屈折率の石英で形成されている。第1コア111を形成する石英は、純粋石英であることが好ましいが、GeやP等の屈折率を高めるドーパントがドープされた石英であってもよい。第1コア111を形成する石英は、IR光の伝送損失が低いという観点から、OH含有量が少ないことが好ましい。
【0016】
第1クラッド121は、例えば第1コア111よりも低屈折率の石英で形成されている。第1クラッド121を形成する石英は、FやB等の屈折率を下げるドーパントがドープされた石英であることが好ましい。
【0017】
第2コア112は、例えば銅製のワークのレーザ加工予定部を予熱する青色半導体レーザが発する波長450nmのレーザ光(以下「青色光」という。)を伝送する。第2コア112は、青色光の伝送のため、相対的にコア径が大きい。第2コア112のコア径は、例えば200μm以上600μm以下である。
【0018】
第2コア112は、例えば第1クラッド121よりも高屈折率の石英で形成されている。第2コア112を形成する石英は、第1コア111と同様、純粋石英であることが好ましいが、GeやP等の屈折率を高めるドーパントがドープされた石英であってもよい。第2コア112を形成する石英は、青色光の伝送損失が低いという観点から、OH含有量が多いことが好ましい。第1コア111及び第2コア112のいずれもが石英で形成されている場合、第2コア112を形成する石英は、第1コア111を形成する石英よりも、OH含有量が多いことが好ましい。
【0019】
第2クラッド122は、例えば第2コア112よりも低屈折率の石英で形成されている。第2クラッド122を形成する石英は、FやB等の屈折率を下げるドーパントがドープされた石英であることが好ましい。
【0020】
ジャケット13は、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂等で形成された単一層又は複数層で構成されている。
【0021】
図2は、実施形態1に係るレーザ加工用光ファイバ10を有するレーザ加工装置20を示す。
【0022】
このレーザ加工装置20は、装置本体21と、装置本体21に光コネクタCを介して取り付けられて延びる光ファイバケーブル22と、光ファイバケーブル22の先端に光コネクタCを介して取り付けられた加工ヘッド23とを備える。
【0023】
装置本体21は、光源としてのファイバレーザ211及び青色半導体レーザ212と、ファイバレーザ211及び青色半導体レーザ212のそれぞれから延びるレーザ光伝送用の光ファイバ212,213と、それらの光ファイバ212,213がそれぞれ光コネクタCを介して接続されたダイクロイックミラー215とを含む。光ファイバケーブル22は、実施形態1に係るレーザ加工用光ファイバ10を含む。
【0024】
このレーザ加工装置20では、ファイバレーザ211がIR光を発するとともに、青色半導体レーザ212が青色光を発する。光ファイバ212,213は、ファイバレーザ211からのIR光及び青色半導体レーザ212からの青色光を伝送する。ダイクロイックミラー215は、IR光を透過させるとともに、青色光を反射して、それらを合波する。光ファイバケーブル22のレーザ加工用光ファイバ10には、ダイクロイックミラー215からの合波が入射し、第1コア111がIR光を伝送するとともに、第2コア112が青色光を伝送する。加工ヘッド23は、レーザ加工用光ファイバ10が伝送したIR光及び青色光を出射してワークWのレーザ加工予定部に照射する。ワークWが銅製の場合、ワークWのレーザ加工予定部は、スポットの大きい青色光が照射されて予熱されることにより、温度が上昇してIR光の吸収率が高まる。予熱されてIR光の吸収率が高まったワークWのレーザ加工予定部は、スポットの小さいIR光が照射されて溶接等の所定のレーザ加工が施される。
【0025】
上記の実施形態1に係るレーザ加工用光ファイバ10によれば、ワークWに所定のレーザ加工を施すIR光及びワークWのレーザ加工予定部を予熱する青色光を用いるレーザ加工装置20に適用すれば、それらの両方のレーザ光を単一の光ファイバで伝送できるので、その先端に取り付けられる加工ヘッド23を小型で且つ軽量とすることができる。
【0026】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係るレーザ加工用光ファイバ10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号で示す。
【0027】
実施形態2に係るレーザ加工用光ファイバ10では、第1コア111及び第2コア112が、ファイバ断面において、クラッド12内で離間して設けられている。クラッド12は、実施形態1に係るレーザ加工用光ファイバ10の第1クラッド121及び第2クラッド122と同様の構成を有する。
【0028】
実施形態2に係るレーザ加工用光ファイバ10を用いた場合、図2の矢印の向きに移動させると、銅製のワークは、まず第2コア112からのスポットの大きい青色光が照射及び走査されて予熱されることにより、温度が上昇してIR光の吸収率が高まる。予熱されてIR光の吸収率が高まったワークは、それに続いて、第1コア111からのスポットの小さいIR光が照射及び走査されて溶接等の所定のレーザ加工が施される。
【0029】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0030】
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、第1コア111及び第2コア112のいずれの外形も円形である構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、第1コアの外形が円形であり、第2コアの外形が矩形等の非円形である構成であってもよい。なお、非円形の第2コア112のコア径は、第2コア112の断面積と同一の面積を有する円の等価直径である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、レーザ加工用光ファイバの技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0032】
10 レーザ加工用光ファイバ
111 第1コア
112 第2コア
12 クラッド
121 第1クラッド
122 第2クラッド
13 ジャケット
20 レーザ加工装置
21 装置本体
211 ファイバレーザ
212 青色半導体レーザ
213,214 光ファイバ
215 ダイクロイックミラー
22 光ファイバケーブル
23 加工ヘッド
C 光コネクタ
W ワーク
図1
図2
図3