(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】改質Y型分子篩、それを含む接触分解触媒、それらの作製及びそれらの応用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/24 20060101AFI20231130BHJP
B01J 29/08 20060101ALI20231130BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20231130BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231130BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20231130BHJP
B01J 37/30 20060101ALI20231130BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C01B39/24
B01J29/08 Z
B01J35/10 301A
B01J37/08
B01J37/10
B01J37/30
C10G11/18
(21)【出願番号】P 2021507985
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 CN2019100715
(87)【国際公開番号】W WO2020035014
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】201810942883.6
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810940965.7
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】周靈萍
(72)【発明者】
【氏名】沙昊
(72)【発明者】
【氏名】許明徳
(72)【発明者】
【氏名】張蔚琳
(72)【発明者】
【氏名】袁帥
(72)【発明者】
【氏名】陳振宇
(72)【発明者】
【氏名】姜秋橋
(72)【発明者】
【氏名】田輝平
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107973315(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104549424(CN,A)
【文献】特表2006-503689(JP,A)
【文献】特表2017-501871(JP,A)
【文献】特開2000-024508(JP,A)
【文献】特表2021-533974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
C01G 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質Y型分子篩であって、
前記改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量
は4重量%
~11重量%であり、P
2O
5に基づいて算出されるリンの含量
は0.05重量%
~10重量%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウムの含量
は0.5重量%以下であり、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素の含量は、当該活性元素の酸化物に基づいて算出すると
、0.1重量%
~5重量%であり、
前記改質Y型分子篩は、
全細孔体積
が0.36mL/g
~0.48mL/gであり、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の比率
が20%
~40%であり、
格子定数
が2.440nm
~2.455nmであり、格子崩壊温度
が1060℃以上であり、総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率
が10%以下であり、
前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率
が3.5以上である、改質Y型分子篩。
【請求項2】
前記改質Y型分子篩は、
前記改質Y型分子篩の全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の比率
が28%
~38%である特性と、
前記改質Y型分子篩の総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率
が5%
~9.5%である特性と、
n(SiO
2)/n(Al
2O
3)に基づいて算出される、前記改質Y型分子篩の骨格におけるアルミナに対するケイ素の比
が7~14である特性と、
前記改質Y型分子篩の格子崩壊温度
が1065℃
~1085℃である特性と、
ピリジン吸着赤外分光法により350℃において測定される、前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうちL酸価に対するB酸価の比率
が3.5
~6.5である特性と、
前記改質Y型分子篩の相対結晶化度
が70%
~80%である特性と、
800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRDによって測定される前記改質Y型分子篩の相対結晶化度維持率
が38%以上である特性と、
のうち1つ以上の特性を有する、請求項1に記載の改質Y型分子篩。
【請求項3】
前記改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量
は4.5重量%
~10重量%であり、P
2O
5に基づいて算出されるリンの含量
は0.1重量%
~6重量%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウムの含量
は0.05重量%
~0.3重量%であり、
前記改質Y型分子篩の格子定数
は2.442nm
~2.451nmであり、n(SiO
2)/n(Al
2O
3)に基づいて算出される骨格におけるアルミナに対するケイ素の比
は8.5
~12.6であ
る、請求項1又は2に記載の改質Y型分子篩。
【請求項4】
前記希土類は、La、Ce、Pr、Nd及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される希土類元素を含み、
前記活性元素がガリウムである場合、酸化ガリウムに基づいて算出される、前記改質Y型分子篩のガリウムの含量が0.1重量%~3重量%であり、
前記活性元素がホウ素である場合、酸化ホウ素に基づいて算出される、前記改質Y型分子篩のホウ素の含量が0.5重量%~5重量%であり、又は、
前記活性元素がガリウム及びホウ素である場合、酸化ガリウム及び酸化ホウ素に基づいて算出される、前記改質Y型分子篩のガリウム及びホウ素の合計含量が0.5重量%~5重量%である、請求項3に記載の改質Y型分子篩。
【請求項5】
改質Y型分子篩の作製方法であって、
水溶液中でNaY分子篩を希土類
塩に接触させてイオン交換反応を行い、イオン交換後の分子篩を得る
ステップであって、前記イオン交換反応は、15℃~95℃の反応温度、30分~120分の反応時間、1:(0.01~0.18):(5~20)の前記NaY分子篩と希土類塩と水との重量比、の条件下で実施されるステップ(1)と、
前記イオン交換後の分子篩
を350℃
~480℃の温度、及
び30体積%
~90体積%の水蒸気雰囲気下
で4.5時間
~7時間焼結し、緩和水熱超安定改質分子篩を得るステップ(2)と、
前記緩和水熱超安定改質分子篩をガス状態のSiCl
4と接触させて反応させることにより気相超安定改質を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させることにより酸処理を行い、酸処理後の分子篩を得るステップ(4)と、
前記酸処理後の分子篩をリン化合物と接触させることによりリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(5)と、
前記リン改質分子篩を、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素を含有する溶液と接触させることにより改質処理を行い、焼結を経て前記改質Y型分子篩を得るステップ(6)と、を含む方法。
【請求項6】
前記イオン交換後の分子篩のドライベース重量に対し、前記イオン交換後の分子篩の、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウムの含量は
、9.5重量%以下である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン交換後の分子篩は、格子定数
が2.465nm
~2.472nmであり、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量
が4.5重量%
~13重量%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウムの含量
が4.5重量%
~9.5重量%である、請求項
5又は
6に記載の方法。
【請求項8】
前記希土類塩は、塩化希土類又は硝酸希土類である、請求項
5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(2)において、前記イオン交換後の分子篩
を380℃
~460℃の温度、及
び40体積%
~80体積%の水蒸気雰囲気下
で5時間
~6時間焼結
する、請求項
5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
得られる緩和水熱超安定改質分子篩は、格子定数が2.450nm~2.462nmであり、含水量が1重量%以下である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(3)において、SiCl
4の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記緩和水熱超安定改質分子篩の重量との重量比
が(0.1~0.7):1であり、前記接触の反応温度
が200℃
~650℃、反応時間
が10分
~5時間
である、請求項
5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
さらに前記ステップ(3)は、得られた気相超安定改質分子篩を、洗浄後の洗浄液中から遊離のNa
+
、Cl
-
及びAl
3+
などのイオンが検出されなくなるまで水洗浄する処理を含み、
洗浄条件としては、洗浄液のpHが2.5~5.0であり、洗浄温度が30℃~60℃であり、水の使用量と洗浄前の前記気相超安定改質分子篩の重量との重量比が(6~15):1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(4)における酸処理の条件は
、
80℃
~99℃の酸処理温度と
、
1時間
~4時間の酸処理時間と、
有機酸及び/又は無機酸を含む前記酸溶液と
、
(0.001~0.15):(5~20):1である、前記酸溶液のうち酸の重量と、前記酸溶液のうち、水の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記気相超安定改質分子篩の重量との重量比と、を含
む、請求項
5~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、及びそれらによる任意の組み合わせからなる群より選択され、及び/又は、
前記無機酸は、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、及びそれらによる任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、ステップ(4)における酸処理は、前記気相超安定改質分子篩を無機酸溶液と接触させてから有機酸溶液と接触させる処理を含み、
無機酸溶液と接触する条件は
、
60分
~120分の接触時間と
、
90℃
~98℃の接触温度と
、
(0.01~0.05):(5~20):1である、前記無機酸溶液のうち無機酸の重量と、前記無機酸溶液のうち水の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記気相超安定改質分子篩の重量との重量比と、を含み、
有機酸溶液と接触する条件は
、
60分
~120分の接触時間と
、
90℃
~98℃の接触温度と
、
(0.02~0.1):(5~20):1である、前記有機酸溶液のうち有機酸の重量と、前記有機酸溶液のうち水の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記気相超安定改質分子篩の重量との重量比と、を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記リン化合物は、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、及びそれらによる任意の組み合わせからなる群より選択され
る、請求項
5~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
さらに前記ステップ(5)は、15℃~100℃の条件下で前記酸処理後の分子篩をリン化合物含有溶液と、10分~100分接触させて反応させる処理を含み、
前記リン化合物含有溶液のうちP
2
O
5
に基づいて算出されるリンの重量と、前記リン化合物含有溶液のうち水の重量と、前記酸処理後の分子篩の重量との重量比が、(0.0005~0.10):(2~5):1である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記活性元素を含有する溶液は、ガリウム塩
の水溶液及び/又はホウ素化合物
の水溶液であ
る、請求項
5~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップ(6)は、さらに、前記リン改質分子篩を、ガリウム酸化物に基づいて算出されるガリウムの重量と、水の重量と、ドライベースに基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が(0.001~0.03):(2~3):1であるガリウム塩水溶液に均一に混合した後、15℃~40℃において24時間~36時間静置する処理を含み、前記ガリウム塩は、Ga(NO
3
)
3
、Ga
2
(SO
4
)
3
、GaCl
3
、及びそれらによる任意の組み合わせからなる群より選択され、
又は、
前記ステップ(6)は、さらに、前記リン改質分子篩を60℃~99℃まで加熱した後、ホウ素酸化物に基づいて算出されるホウ素の重量と、水の重量と、ドライベースに基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が(0.005~0.045):(2.5~5):1である水溶液中で、前記リン改質分子篩をホウ素化合物と1時間~2時間接触及び混合させる処理を含み、前記ホウ素化合物は、ホウ酸、ホウ酸塩、メタホウ酸塩、ポリホウ酸塩、及びそれらによる任意の組み合わせからなる群より選択され、
又は、
さらに前記ステップ(6)は、前記リン改質分子篩を85℃~95℃に加熱した後、ホウ素酸化物に基づいて算出されるホウ素の重量と、水の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が(0.005~0.03):(2.5~5):1である第1水溶液中で、前記リン改質分子篩をホウ素化合物と1時間~2時間接触及び混合させ、ろ過した後、ろ過後の試料分子篩を、ガリウム酸化物に基づいて算出されるガリウムの重量と、水の重量と、トライベース重量に基づいて算出される前記試料分子篩の重量との重量比が(0.001~0.02):(2~3):1である、ガリウム塩を含有する第2水溶液に均一に混合し、15℃~40℃において24時間~36時間静置する処理を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(6)における焼結は、焼結温度
が350℃
~600℃、焼結時間
が1時間
~5時間である条件下で行われる、請求項
5~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
接触分解触媒であって、
前記触媒のドライベース重量に対し
、10重量%
~50重量%の改質Y型分子篩と、アルミナに基づいて算出され
る10重量%
~40重量%のアルミナバインダと、粘土ドライベースに基づいて算出され
る10重量%
~80重量%の粘土と、を含み、
前記改質Y型分子篩は、請求項1~3のいずれか1項に記載の改質Y型分子
篩である、接触分解触媒。
【請求項22】
原料炭化水素の接触分解反応における、請求項1~3のいずれか1項に記載の改質Y型分子篩の使用であって、
接触分解の条件下で前記原料炭化水素を、前記改質Y型分子篩を含む接触分解触媒と接触させる処理
を含む、使用。
【請求項23】
前記原料炭化水素は水素添加軽質循環油(LCO)であり、及び/又は、
前記接触分解の条件は500℃~610℃の反応温度と、2h
-1
~16h
-1
である単位時間当たりの重量空間速度と、3~10である油に対する触媒の重量比とを含む、請求項22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互援用〕
本願は、出願人が2018年8月17日に中国特許庁に提出した、出願番号が201810942883.6、発明の名称が「改質Y型分子篩、その作製方法及びその応用」の特許出願の優先権、及び、出願人が2018年8月17日に中国特許庁に提出した、出願番号が201810940965.7、発明の名称が「接触分解触媒、その作製方法及びその応用」の特許出願の優先権を主張するとともに、これらの特許出願の全ては参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、分子篩及び接触分解の技術分野に関し、より具体的には改質Y型分子篩、それを含む接触分解触媒、それらの作製方法及びそれらの応用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
ベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)などの軽質芳香族炭化水素は、有機化学における重要な基礎的原料として、ポリエステル、合成繊維などの生産に幅広く利用され、近年、その需要が増している。ベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)などの軽質芳香族炭化水素は主に、原料ナフサを触媒作用下でリフォームする工法、及び蒸気クラッキング工法から生成される。しかし、原料ナフサが欠乏しているため、市場への軽質芳香族炭化水素の供給が不足している。
【0004】
接触分解によって得られた軽質循環油(LCO)は、接触分解の重要な副生成物であり、その量が多く、芳香族炭化水素、特に低品質ディーゼルの留分である多環式芳香族炭化水素を豊富に含む。市場の需要及び環境保護の要求が変化していく中、LCOはディーゼルの調合組成として厳しく制限されている。LCOは、その炭化水素成分としてパラフィン、ナフテン(オレフィンを少量含む)及び芳香族炭化水素を含む。LCOの炭化水素成分は、接触分解へ供される原料油の種類及び処理の苛烈度に応じて大きく変動するが、共に芳香族炭化水素が主要成分であり、一般的に芳香族炭化水素の重量部は70%を超え、場合には約90%まで達し、残部はパラフィン及びナフテンである。LCOは、その典型的成分として二環式芳香族炭化水素の含量が最も高い。二環式芳香族炭化水素は、接触分解による軽質芳香族炭化水素の生成に影響を与える主要成分でもある。多環式芳香族炭化水素は、接触分解の反応条件下では、軽質芳香族炭化水素へと開環分解し難いが、水素添加処理の条件下では、飽和したアルキルベンゼン及びシクロアルキルベンゼン(インダン系、テトラヒドロナフタレン系及びインデン系)などの重質単環式芳香族炭化水素になりやすい。このような重質単環式芳香族炭化水素は、接触分解によって芳香族炭化水素を生産するための潜在的成分であり、接触分解の条件下で軽質芳香族炭化水素へと分解可能である。したがって、LCOは、軽質芳香族炭化水素の生産における潜在的且つ安価な資源であり、水素添加処理、接触分解という順の工法に基づく軽質芳香族炭化水素の生産において、重要な研究価値がある。
【0005】
中国特許出願公開CN103923698A、CN104560185A及びCN104560187Aには、LCOを適度に水素添加することによって、大部分の多環式芳香族炭化水素を、シクロアルキル環及び1つの芳香族環を含む飽和状態の水素化芳香族炭化水素に変化させた後、接触分解触媒の存在下でクラッキング反応によりBTX系軽質芳香族炭化水素を生産する従来技術が開示されている。LCOへの水素添加によって得られた水素化芳香族炭化水素では、その分解性は接触分解に供する通常の原料に劣るが、水素転移性は接触分解に供する通常の原料を遥かに上回る。したがって、従来技術として用いられている通常の接触分解触媒は、水添LCOの接触分解の要求を満たすことができない。
【0006】
Y型分子篩は、1960年代に初めて使用されて以来、流動接触分解(FCC)触媒の主要な活性成分とされている。しかし、原油の重質化につれ、FCCの原料中の多環式化合物の含量が著しく増加している一方、当該多環式化合物が分子篩の細孔内に拡散する能力が著しく低下している。Y型分子篩の孔径がわずか0.74nmであるため、当該Y型分子篩を主要な活性成分として含む触媒を残油などの重質留分の処理に直接的に用いる場合、触媒の活性中心への到達能が、残油中の多環式化合物の分解に対する主な障害となる。分子篩の孔構造は、触媒の分解能力に密接に関係している。特に残油用接触分解触媒の場合、その分子篩の二次孔は、残油の巨大分子の、触媒活性中心への到達能を高め、それにより残油に対する接触分解能力を高めることができる。
【0007】
水熱脱アルミニウム法は、二次孔を有する超安定分子篩の作製において、産業上、最も広く使用されている方法の一つである。当該方法は、まず、アンモニウムイオン含有水溶液を用いてNaY分子篩のイオン交換を行うことによって、分子篩中のナトリウムイオンの含量を減らす。その後、水蒸気雰囲気下でアンモニウムイオン交換後の分子篩を600℃~825℃において焼結することにより、当該分子篩を超安定化する。この方法は、コストが低く、工業的量産が容易であり、得られた超安定Y型分子篩が二次孔を比較的豊富に含んでいる。しかし一方で、当該超安定Y分子篩の結晶化度が大きく劣化している。
【0008】
現在、超安定Y型分子篩の工業的生産は、通常、上記水熱焼結工法の改良、すなわち、2回のイオン交換工程及び2回の焼結工程を行う方法が用いられている。この方法は、比較的温和な焼結条件のステップを複数採用することにより、苛烈な焼結条件下で生じる重度な結晶化度の劣化という問題を解決することを目的としている。これによって作製された超安定Y型分子篩は、一定量の二次孔を有し得るものの、全二次孔に対する、孔径が比較的大きい二次孔の割合が低く、超安定分子篩の比表面積及び結晶化度の向上についても改善の余地がある。
【0009】
水添LCOの接触分解によって、より多くのBTX系軽質芳香族炭化水素を生産するという需要を満たすために、本発明は、強い分解能力及び弱い水素転移性を兼備する高安定性の改質分子篩を新規な活性成分として用い、水添LCOの接触分解に適合した、より多くのBTX系軽質芳香族炭化水素を生産可能な接触分解触媒を開発するとともに、その分解能力の強化、水素転移反応の抑制、水添LCOの転化効率の更なる向上、ならびに、ベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)を豊富に含む接触分解生成物であるガソリンの生産の最大化を実現することを目的とする。
【0010】
〔発明の概要〕
本発明の一目的は、改質Y型分子篩、それを含む接触分解触媒、それらの作製方法及びそれらの応用を提供することにある。当該改質Y型分子篩を活性成分として作製した接触分解触媒は、より高い水添LCO転化効率、より優れたコークス選択性、及び、BTXを豊富に含むガソリンのより高い収率を有する。
【0011】
上記目的を実現するために、一態様として、本発明は、改質Y型分子篩であって、当該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量は約4重量%~約11重量%であり、P2O5に基づいて算出されるリンの含量は約0.05重量%~約10重量%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウムの含量は約0.5重量%以下であり、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素の含量は、当該活性元素の酸化物に基づいて算出すると、約0.1重量%~約5重量%であり、当該改質Y型分子篩は、全細孔体積が約0.36mL/g~約0.48mL/gであり、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の比率が約20%~約40%であり、格子定数が約2.440nm~約2.455nmであり、格子崩壊温度が約1060℃以上であり、総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率が約10%以下であり、前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率が約3.5以上である、改質Y型分子篩を提供する。
【0012】
別の態様として、本発明は、改質Y型分子篩の作製方法であって、
NaY分子篩を希土類塩溶液に接触させてイオン交換反応を行い、イオン交換後の分子篩を得るステップ(1)と、
前記イオン交換後の分子篩を約350℃~約480℃の温度、及び約30体積%~約90体積%の水蒸気雰囲気下で約4.5時間~約7時間焼結し、緩和水熱超安定改質分子篩を得るステップ(2)と、
前記緩和水熱超安定改質分子篩をガス状態のSiCl4と接触させて反応させることにより気相超安定改質を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させることにより酸処理を行い、酸処理後の分子篩を得るステップ(4)と、
前記酸処理後の分子篩をリン化合物と接触させることによりリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(5)と、
前記リン改質分子篩を、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素を含有する溶液と接触させることにより改質処理を行い、焼結を経て前記改質Y型分子篩を得るステップ(6)と、を含む方法を提供する。
【0013】
別の態様として、本発明は、接触分解触媒であって、当該触媒のドライベース重量に対し、約10重量%~約50重量%の改質Y型分子篩と、アルミナに基づいて算出される約10重量%~約40重量%のアルミナバインダと、粘土ドライベースに基づいて算出される約10重量%~約80重量%の粘土と、を含み、前記改質Y型分子篩は本発明の改質Y型分子篩、又は本発明の方法により作製された改質Y型分子篩である、接触分解触媒を提供する。
【0014】
さらに別の態様として、本発明は、原料炭化水素、特に水素添加軽質循環油の接触分解反応における、本発明の改質Y型分子篩の使用であって、接触分解の条件下で前記原料炭化水素を、前記改質Y型分子篩を含む接触分解触媒と接触させる処理を含む、使用を提供する。
【0015】
本発明において提供される改質Y型分子篩の作製方法は、Y型分子篩に対して希土類イオン交換、水熱超安定処理及び気相超安定処理を行うとともに、酸処理によって、分子篩のチャネルを洗浄し、且つ活性元素及びリン元素を用いて改質することにより、高い結晶化度、高い熱安定性及び高い水熱安定性を有し、二次孔を豊富に含む高いシリカ含量のY型分子篩を作製することができる。当該分子篩は、超安定レベルが大幅に向上するとともに、高い結晶化度を有する。また、作製された分子篩は、アルミニウムの分布が均一で、非骨格アルミニウムの含量が少なく、二次孔のチャネル流通性が良い。
【0016】
本発明の改質Y型分子篩を接触分解触媒の活性成分として用い、水添LCOの接触分解へ供することができる。当該分子篩を活性成分とする接触分解触媒は、水添LCOの処理に用いる場合、高いLCO転化効率及び低いコークス選択性を示し、BTXを豊富に含むガソリンの収率がより高くなる。
【0017】
本発明の更なる特徴及び優れた点は、以下の具体的な実施形態において詳細に説明する。
【0018】
〔発明の詳細な説明〕
以下、具体的な実施形態を通して本発明を更に詳細に説明する。但し、記載される当該具体的な実施形態は、単に本発明の説明及び解釈に供するものであり、何らかの方式で本発明を限定するものでもないと理解するべきである。
【0019】
本明細書中に開示のいかなる具体的数値(数値範囲の端点を含む)も当該数値の厳密な値に限定されず、当該厳密な値に近い値、例えば当該厳密な値±5%の範囲内のあらゆる採用可能な値を含むと解釈すべきである。また、開示される数値範囲については、当該範囲の端点値同士を組み合わせ、端点値と当該範囲内の特定数値とを組み合わせ、又は、特定数値同士を任意に組み合わせることによって、1つ又は複数の数値範囲を新たに得ることができる。当該新たな数値範囲も、本明細書に具体的に開示されているものと見做すべきである。
【0020】
特段に説明する場合を除き、本明細書中に使用される用語は、当業者が一般に理解している意味を持つ。当業者の理解と異なる意味の用語が本明細書において定義されている場合、本明細書中の定義に準ずる。
【0021】
本発明は、明細書中に明確に説明された内容以外の未記載の事項又は内容としては、当該分野における既知のものがそのまま変更せずに適用される。本明細書中に記載の任意の実施形態を他の1つ又は複数の実施形態と自由に組み合わせることができる。これによって形成される全ての技術的構成又は技術思想は、当該組み合わせが明らかに非合理的と当業者が解釈しない限り、本明細書のオリジナル開示又はオリジナル記載の一部と見做すべきであり、本明細書に開示又は予期されていない新規な内容と見做すべきではない。
【0022】
本発明において言及されるRIPP試験法は、具体的に『石油化学分析法(RIPP試験法)』(Cuiding YANGら,科学出版社,1990年9月第1版,ISBN:7-03-001894-X,第412頁~第415頁、第424頁~第426頁)を参照することができ、その全ては参照により本明細書中に組み込まれるものとする。
【0023】
本明細書で言及される全ての特許文献及び非特許文献は、教科書及び刊行物の記事も含め(ただしこれらに限定されない)、いずれも参照によりその全てが本明細書中に組み込まれるものとする。
【0024】
本明細書において、「Y型分子篩」及び「Y型ゼオライト」という用語は、入れ替えて使用可能である。また、「NaY分子篩」及び「NaYゼオライト」という用語も、入れ替えて使用可能である。
【0025】
本明細書において、「二次孔」という用語は、分子篩における孔径(すなわち、孔直径)が2nm~100nmを有する孔を指す。
【0026】
本明細書において、「強度が中程度以上の無機酸」という用語は、酸強度がHNO2(亜硝酸)と同等以上の無機酸を指す。当該無機酸としては、HClO4(過塩素酸)、HI(ヨウ化水素)、HBr(臭化水素酸)、HCl(塩酸)、HNO3(硝酸)、H2SeO4(セレン酸)、H2SO4(硫酸)、HClO3(塩素酸)、H2SO3(亜硫酸)、H3PO3(リン酸)、及びHNO2(亜硝酸)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書において、「希土類溶液」及び「希土類塩溶液」という用語は、入れ替えて使用可能である。好ましくは希土類塩の水溶液である。
【0028】
本明細書において、「通常単位胞サイズを示すY型分子篩」という表現は、当該Y型分子篩の格子定数が、従来のNaY分子篩の格子定数の範囲内、好ましくは約2.465nm~約2.472nmの範囲内にあることを指す。
【0029】
本明細書において、「大気圧」という用語は、圧力が約1atmであることを指す。
【0030】
本明細書において、物質のドライベース重量とは、当該物質を800℃において1時間焼結して得られた固体生成物の重量を指す。
【0031】
第1態様として、本発明は改質Y型分子篩を提供する。前記改質Y型分子篩は、該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量が約4重量%~約11重量%であり、P2O5に基づいて算出されるリンの含量が約0.05重量%~約10重量%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウムの含量が約0.5重量%以下であり、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素の含量が、当該活性元素の酸化物に基づいて算出すると、約0.1重量%~約5重量%である。また、前記改質Y型分子篩は、全細孔体積が約0.36mL/g~約0.48mL/gであり、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の比率が約20%~約40%である。また、前記改質Y型分子篩は、格子定数が約2.440nm~約2.455nmであり、格子崩壊温度が約1060℃以上であり、総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率が約10%以下である。また、前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率が約3.5以上である。
【0032】
本発明の改質Y型分子篩は、超安定レベルが高く、高い結晶化度を有し、アルミニウムの分布が均一で、非骨格アルミニウムの含量が少なく、二次孔のチャネル流通性が良い。当該改質Y型分子篩を水添LCOの処理に用いる場合、高いLCO転化効率、低いコークス選択性を示し、BTXを豊富に含むガソリンの収率がより高くなる。
【0033】
本発明の改質Y型分子篩は希土類を含有する。当該改質Y型分子篩において、改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量は約4重量%~約11重量%、好ましくは約4.5重量%~約10重量%、例えば約5重量%~約9重量%であってもよい。
【0034】
本発明によれば、前記希土類の種類及び成分は特に制限されない。好ましくは、前記希土類として、La、Ce、Pr、Nd、又はそれらのうち2つ、3つ又は4つからなる組み合わせを含んでもよい。任意に、前記希土類として、La、Ce、Pr及びNdを除く別の希土類元素をさらに含んでもよい。
【0035】
本発明の改質Y型分子篩は、活性元素としてガリウム及び/又はホウ素を含有する。活性元素酸化物に基づいて算出される当該活性元素の含量(本明細書では、活性元素酸化物の含量と略称する場合がある)は、該分子篩のドライベース重量に対して約0.1重量%~約5重量%であってもよい。好ましい一実施形態において、前記活性元素はガリウムであり、酸化ガリウムに基づいて算出されるガリウムの含量(本明細書では、酸化ガリウムの含量と略称する場合がある)が約0.1重量%~約3重量%、好ましくは約0.5重量%~約2.5重量%であってもよい。好ましい別の実施形態において、前記活性元素はホウ素であり、酸化ホウ素に基づいて算出されるホウ素の含量(本明細書では、酸化ホウ素の含量と略称する場合がある)は約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約4重量%であってもよい。好ましい更なる実施形態において、前記活性元素はガリウム及びホウ素であり、酸化ガリウム及び酸化ホウ素に基づいて算出される、ガリウム及びホウ素の合計含量は約0.5重量%~約5重量%、好ましくは1重量%~3重量%である。このうち、酸化ガリウムに基づいて算出されるガリウムの含量が約0.1重量%~約2.5重量%であってもよく、酸化ホウ素に基づいて算出されるホウ素の含量が約0.5重量%~約4重量%であってもよい。上述した好ましい含量範囲であれば、改質Y型分子篩の触媒作用によるLCO転化効率がより高くなり、コークス選択性がより低くなり、且つ、BTX系芳香族炭化水素を豊富に含むガソリンを得る上で更に好適である。
【0036】
本発明の改質Y型分子篩は、分子篩のコークス選択性をさらに改良するための改質用元素としてリンを含む。P2O5に基づいて算出されるリンの含量(本明細書では、P2O5の含量と略称する場合がある)は、前記分子篩のドライベース重量に対して、約0.05重量%~約10重量%、例えば約0.1重量%~約6重量%、好ましくは約0.3重量%~約4重量%又は1重量%~4重量%であってもよい。
【0037】
本発明によれば、幾つかの実施形態において、前記改質Y型分子篩は、少量のナトリウムを含有してもよい。酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウムの含量(本明細書では、酸化ナトリウムの含量と略称する場合がある)は、前記分子篩のドライベース重量に対して、約0.05重量%~約0.5重量%、例えば約0.1重量%~約0.4重量%又は約0.05重量%~約0.3重量%であってもよい。
【0038】
本発明によれば、前記改質Y型分子篩中の希土類、ナトリウム及び活性元素の含量は、X線蛍光分光法を用いてそれぞれ測定してもよい。
【0039】
本発明によれば、前記改質Y型分子篩の孔構造は、より好適な接触分解反応性を得るように最適化してもよい。改質Y型分子篩の全細孔体積は、好ましくは約0.36mL/g~約0.48mL/g、より好ましくは約0.38mL/g~約0.42mL/g又は約0.4mL/g~約0.48mL/gであってもよい。全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の比率は、約20%~約40%、好ましくは約28%~約38%、例えば約25%~約35%であってもよい。孔径2.0nm~100nmを有する二次孔の細孔体積は、例えば約0.08mL/g~約0.18mL/g、好ましくは約0.10mL/g~約0.16mL/gであってもよい。本発明では、RIPP 151-90標準法(『石油化学分析法(RIPP試験法)』,Cuiding YANGら,科学出版社,1990年9月出版,第424頁~第426頁)に準じ、吸着等温線に基づいて分子篩の全細孔体積を測定し、Tプロット法(T-plot法)により吸着等温線から分子篩のマイクロ細孔体積を測定した後、当該全細孔体積から当該マイクロ細孔体積を減算することにより、二次孔の細孔体積を得てもよい。
【0040】
本発明において提供される改質Y型分子篩は、二次孔を豊富に含む希土類含有超安定Y分子篩である。当該分子篩は、孔径2nm~100nmを有する二次孔の分布曲線が二段階の推定孔径分布を示し、比較的小さい孔径を有する二次孔は、孔径が約2nm~約5nmである蓋然性が最も高く、比較的大きい孔径を有する二次孔は、孔径が約6nm~約20nm、好ましくは約8nm~約18nmである蓋然性が最も高くてもよい。また、好ましくは、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nm二次孔の細孔体積の比率は、約28%~約38%、又は約25%~約35%であってもよい。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態において、改質Y型分子篩の比表面積は、約600m2/g~約670m2/g、例えば約610m2/g~約670m2/g、約640m2/g~約670m2/g、又は約646m2/g~約667m2/gであってもよい。なお、改質Y型分子篩の比表面積とは、BET比表面積を意味し、ASTM D4222-98標準法に準じて測定することができる。
【0042】
本発明によれば、前記改質Y型分子篩の格子定数は、好ましくは約2.440nm~約2.455nm、例えば約2.442nm~約2.453nm、約2.442nm~約2.451nm、又は約2.441nm~約2.453nmである。
【0043】
本発明によれば、改質Y型分子篩の格子崩壊温度は、好ましくは約1065℃~約1085℃、より好ましくは約1065℃~約1083℃である。
【0044】
本発明によれば、前記改質Y型分子篩の相対結晶化度は、約70%以上、例えば約70%~約80%、好ましくは約70%~約76%であってもよい。本発明の改質Y型分子篩は、水熱エージングへの耐性が高い。800℃、大気圧下、100%水蒸気下で17時間エージングした後の前記改質Y型分子篩について、XRD法によって測定した相対結晶化度維持率は、約38%以上、例えば約38%~約60%、約50%~約60%、又は約46%~約58%である。
【0045】
本発明によれば、改質Y型分子篩の格子崩壊温度は、示差熱分析法(DTA)により測定してもよい。分子篩の格子定数、相対結晶化度は、RIPP 145-90、RIPP 146-90標準法(『石油化学分析法(RIPP試験法)』,Cuiding YANGら,科学出版社,1990年9月出版,第412頁~第415頁)に準じ、X線粉末回析法(XRD)により測定することができる。
【0046】
本発明によれば、前記改質Y型分子篩の骨格におけるアルミナに対するシリカの比は、下記式によって算出される。
【0047】
骨格SiO2/Al2O3モル比=(2.5858-a0)×2/(a0-2.4191)
式中、a0は格子定数であり、その単位はnmである。
【0048】
本発明によれば、前記改質Y型分子篩における総アルミナに対する総シリカの比は、X線蛍光分光法により測定されたケイ素及びアルミニウムの元素の含量に基づいて算出される。XRD法により測定された骨格におけるアルミナに対するシリカの比、及びXRFにより測定された総アルミナに対する総シリカの比に基づいて、骨格アルミニウムの総アルミニウムに対する比率を算出し、これにより、非骨格アルミニウムの総アルミニウムに対する比率も算出することができる。
【0049】
本発明によれば、前記改質Y型分子篩の相対結晶化度維持率は、(エージング後の試料の相対結晶化度/初期の試料の相対結晶化度)×100%となる。
【0050】
本発明の改質Y型分子篩は、非骨格アルミニウムの含量が低く、総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率が約10%以下、より好ましくは約5%~約9.5%、又は約6%~約9.5%である。前記改質Y型分子篩において、n(SiO2)/n(Al2O3)(すなわち、SiO2/Al2O3モル比)に基づいて算出される骨格におけるアルミナに対するケイ素の比は、約7~約14、好ましくは約8.5~約12.6、約9.2~約11.4、又は約7.8~約12.6であってもよい。
【0051】
本発明によれば、表面における酸中心のタイプ及び強度を好適に持つ改質Y型分子篩を確保するために、前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率は、好ましくは約3.5~約6.5である。幾つかの好ましい実施形態において、活性元素がガリウムである場合、前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率は、約3.5以上、好ましくは約3.5~約6.5、例えば約3.5~約5.8、又は約3.5~約4.8である。活性元素がホウ素である場合、前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率は、約3.5以上、好ましくは約3.5~約6.5、又は約3.5~約4.8である。活性元素がガリウム及びホウ素である場合、前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率は、好ましくは約3.5~約5.6、例えば約3.7~約5.4である。前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率、すなわち、強いL酸の酸価に対する、強いB酸の酸価の比率は、ピリジン吸着赤外分光法により350℃において測定してもよい。なお、強酸の酸価とは、分子篩表面における強酸の全量を指す。強酸とは、ピリジン吸着赤外分光法により350℃において検出できた酸を指す。
【0052】
本発明の好ましい一実施形態において、前記改質Y型分子篩は、該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量が約4.5重量%~約10重量%、P2O5に基づいて算出されるリンの含量が約0.1重量%~約6重量%、酸化ナトリウムの含量が約0.05重量%~約3重量%であってもよい。前記改質Y型分子篩の格子定数は約2.442nm~約2.451nmであってもよく、n(SiO2)/n(Al2O3)に基づいて算出される、前記改質Y型分子篩の骨格におけるアルミナに対するシリカの比は約8.5~約12.6であってもよい。前記活性元素がガリウムである場合、酸化ガリウムに基づいて算出されるガリウムの含量は約0.1重量%~約3重量%であってもよい。あるいは、前記活性元素がホウ素である場合、酸化ホウ素に基づいて算出されるホウ素の含量は約0.5重量%~約5重量%であってもよい。あるいは、前記活性元素がガリウム及びホウ素である場合、酸化ガリウム及び酸化ホウ素に基づいて算出される、ガリウム及びホウ素の合計含量は約0.5重量%~約5重量%であってもよい。
【0053】
第2態様として、本発明は、改質Y型分子篩の作製方法であって、
NaY分子篩を希土類塩溶液に接触させてイオン交換反応を行い、イオン交換後の分子篩を得るステップ(1)と、
前記イオン交換後の分子篩を約350℃~約480℃の温度、及び約30体積%~約90体積%の水蒸気雰囲気下で約4.5時間~約7時間焼結し、緩和水熱超安定改質分子篩(温和な条件の水熱処理を経た超安定改質分子篩)を得るステップ(2)と、
前記緩和水熱超安定改質分子篩をガス状態のSiCl4と接触させて反応させることにより気相超安定改質を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させることにより酸処理を行い、酸処理後の分子篩を得るステップ(4)と、
前記酸処理後の分子篩をリン化合物と接触させることによりリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(5)と、
前記リン改質分子篩を、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素を含有する溶液と接触させることにより改質処理を行い、焼結を経て前記改質Y型分子篩を得るステップ(6)と、を含む方法を提供する。
【0054】
具体的な一実施形態において、本発明の方法は、
NaY分子篩を希土類塩と接触させることによりイオン交換反応を行い、ろ過及び第1洗浄を経た後、イオン交換後の分子篩の酸化ナトリウムの含量がイオン交換後の分子篩のドライベース重量に対して約9.5重量%以下である、当該イオン交換後の分子篩を得るステップ(1)と、
約350℃~約480℃の温度、及び約30体積%~約90体積%の水蒸気雰囲気下で、前記イオン交換後の分子篩に対して第1焼結を約4.5時間~約7時間行い、緩和水熱超安定改質分子篩を得るステップ(2)と、
前記緩和水熱超安定改質分子篩をガス状態のSiCl4と接触させて反応させ、任意に第2洗浄及び第2ろ過を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させることにより酸処理を行い、酸処理後の分子篩を得るステップ(4)と、
リン化合物を用いて前記酸処理後の分子篩に対してリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(5)と、
前記リン改質分子篩を、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素を含有する溶液と接触させることにより改質処理を行い、乾燥及び第2焼結を経た後、前記改質Y型分子篩を得るステップ(6)と、を含む。
【0055】
本発明の作製方法によれば、高結晶化度、高熱安定性及び高水熱安定性を有し二次孔を豊富に含む高ケイ素含量のY型分子篩を、作製することができる。当該分子篩は、超安定レベルが大幅に向上するとともに高い結晶化度を有する。また、作製された分子篩は、アルミニウム分布が均一で、非骨格アルミニウムの含量が少なく、二次孔のチャネル流通性が良い。当該改質Y型分子篩を水添LCOの処理に用いる場合、高いLCO転化効率及び低いコークス選択性を示し、芳香族炭化水素を豊富に含むガソリンの収率がより高くなる。
【0056】
本発明において提供される改質Y型分子篩の作製方法では、ステップ(1)において、NaY分子篩と希土類溶液とのイオン交換反応を行うことにより、酸化ナトリウムの含量が低減された、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得る。イオン交換反応の方法は周知技術であってもよい。例えば、イオン交換反応の方法は、NaY分子篩を水と混合し、撹拌下で希土類塩及び/又は希土類塩水溶液を添加してイオン交換反応を行った後、ろ過及び洗浄を行う工程を含んでもよい。
【0057】
好ましい実施形態において、ステップ(1)で用いる水は脱イオン水であり、前記NaY分子篩は市販品、又は従来方法で作製してもよい。好ましい一実施形態において、前記NaY分子篩は、格子定数が約2.465nm~約2.472nm、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比(SiO2/Al2O3モル比)が約4.5~約5.2、相対結晶化度が約85%以上、例えば約85%~約95%、酸化ナトリウムの含量が約13.0重量%~約13.8重量%であってもよい。
【0058】
本発明によれば、前記イオン交換反応の条件は、本分野における一般的な反応条件であってもよい。好ましくは、NaY分子篩と希土類溶液とのイオン交換反応において、イオン交換反応を好適に進行させるために、イオン交換温度が約15℃~約95℃、好ましくは約65℃~約95℃、イオン交換時間が約30分~約120分、好ましくは約45分~約90分、(ドライベースに基づく)NaY分子篩:(RE2O3に基づく)希土類塩:H2Oの重量比が約1:(0.01~0.18):(5~20)、好ましくは約1:(0.5~0.17):(6~14)であってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態において、NaY分子篩:希土類塩:H2Oが約1:(0.01~0.18):(5~20)である重量比で、NaY分子篩、希土類塩及び水を混合物とした後、約15℃~約95℃、例えば約65℃~約95℃において撹拌、好ましくは約30分~約120分撹拌することにより、希土類イオンとナトリウムイオンとの交換を行ってもよい。なお、NaY分子篩、希土類塩及び水の混合物の調製は、NaY分子篩及び水をスラリーとした後、当該スラリーに希土類塩及び/又は希土類塩水溶液を添加する工程を含んでもよい。前記希土類塩としては、塩化希土類及び/又は硝酸希土類が好ましい。当該希土類は任意の希土類であってもよく、その種類及び成分は特に限定されず、例えばLa、Ce、Pr、Nd及び混合希土類のうち、1つ又は複数であってもよい。好ましくは、前記混合希土類は、La、Ce、Pr及びNdのうち1つ又は複数を含んでもよく、La、Ce、Pr及びNdを除く少なくとも1種類の希土類をさらに含んでもよい。
【0060】
本発明によれば、ステップ(1)における洗浄は、イオン交換で生じたナトリウムイオンの除去を目的とし、脱イオン水を用いて洗浄してもよい。ステップ(1)において得られたイオン交換後の分子篩は、RE2O3に基づいて算出される希土類の含量が約4.5重量%~約13重量%、例えば約5.5重量%~約13重量%、又は5.5重量%~12重量%であり、酸化ナトリウムの含量が約9.5重量%以下、例えば約5.5重量%~約9.5重量%であり、格子定数が約2.465nm~約2.472nmであることが好ましい。
【0061】
本発明において提供される改質Y型分子篩の作製方法では、ステップ(2)において、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を、約350℃~約480℃の温度、及び約30体積%~約90体積%の水蒸気雰囲気下で約4.5時間~約7時間焼結処理する。好ましくは、ステップ(2)における焼結の温度は約380℃~約460℃であり、焼結の雰囲気は約40体積%~約80体積%の水蒸気雰囲気であり、焼結の時間は約5時間~約6時間である。任意に選択する構成として、前記水蒸気雰囲気は、他の気体、例えば空気、ヘリウムガス及び窒素ガスのうち1つ又は複数をさらに含んでもよい。好ましくは、ステップ(2)において得られた緩和水熱超安定改質分子篩は、その格子定数が約2.450nm~約2.462nmであってもよい。さらに好ましくは、当該緩和水熱超安定改質分子篩の固形物の含量が約99重量%以上である。
【0062】
本発明によれば、30体積%~90体積%の水蒸気雰囲気とは、当該雰囲気中に、体積で約30%~約90%の含量の水蒸気が含まれ、空気、ヘリウムガス及び窒素ガスからなる群より選択される1つ又は複数が残部として含まれることを意味する。例えば、30体積%の水蒸気雰囲気とは、30体積%の水蒸気及び70体積%の空気を含んだ雰囲気であってもよい。
【0063】
気相超安定改質による効果を確保するために、本発明の一実施形態において、ステップ(3)の際にSiCl4と接触する分子篩の含水量が約1重量%以下となるよう、ステップ(3)の前に分子篩を乾燥処理して分子篩中の含水量を減らしておいてもよい。乾燥処理は、例えば回転式焼結炉又はマッフル炉を用いて焼結乾燥してもよい。
【0064】
本発明において提供される改質Y型分子篩の作製方法において、ステップ(3)における接触の反応条件は幅広い範囲で変更することができる。気相超安定処理による効果をさらに向上させるために、好ましくは、SiCl4重量と、ステップ(2)において得られた前記緩和水熱超安定改質分子篩の重量(ドライベースに基づいて)との重量比が、約(0.1~0.7):1、好ましくは約(0.2~0.6):1であり、前記接触の反応温度が約200℃~約650℃、好ましくは約350℃~約500℃であり、反応時間が約10分~約5時間、好ましくは約0.5時間~約4時間であってもよい。また、ステップ(3)において、第2洗浄及び第2ろ過は任意に行ってもよい。また、第2ろ過の後に乾燥してもよく、乾燥しなくてもよい。第2洗浄の方法は、通常の洗浄方法であってもよく、分子篩中に残留したNa+、Cl-及びAl3+などの可溶性副生成物を除去する目的で脱イオン水を用いて洗浄してもよい。洗浄条件としては、pHが約2.5~約5.0の洗浄液と、約30℃~約60℃の洗浄温度と、約(5~20):1、好ましくは約(6~15):1である、水の使用量と洗浄前の前記気相超安定改質分子篩の重量との重量比と、を含んでもよい。さらに、洗浄後の洗浄液中から遊離のNa+、Cl-及びAl3+などのイオンが検出されなくなるまで、前記洗浄を行ってもよい。
【0065】
本発明において提供される改質Y型分子篩の作製方法では、ステップ(4)において、ステップ(3)において得られた気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させて反応させ、二次孔の流通性を良くする洗浄改質(チャネル洗浄と略称)を行う。本発明の一実施形態において、ステップ(3)において得られた気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させて反応させる工程は、気相超安定改質処理を経た分子篩を酸溶液と混合し、一定時間反応させた後、反応後の分子篩を酸溶液から分離、例えばろ過によって分離し、任意に洗浄及び乾燥を行い、本発明において提供する改質Y型分子篩を得る工程である。前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させる酸処理の温度は、約60℃~約100℃、好ましくは約80℃~約99℃、より好ましくは約88℃~約98℃であり、酸処理の時間は約1時間~約4時間、好ましくは約1時間~約3時間であってもよい。前記酸溶液は有機酸及び/又は無機酸を含んでもよい。また、ドライベースに基づいて算出された、酸溶液のうち酸の重量と、酸溶液のうち水の重量と、前記気相超安定改質分子篩の重量と、の重量比は、約(0.001~0.15):(5~20):1、好ましくは約(0.002~0.1):(8~15):1、又は、(0.01~0.05):(8~15):1であってもよい。任意に選択する構成として、前記ステップ(4)は、得られた酸処理後の分子篩を洗浄することによって、分子篩中に残留したNa+、Cl-及びAl3+などの可溶性副生成物を除去する工程をさらに含んでもよい。洗浄条件はステップ(3)の洗浄条件と同様又は異なってもよく、例えば、pHが約2.5~5.0の洗浄液と、約30℃~約60℃の洗浄温度と、約(5~20):1、好ましくは約(6~15):1である、水の使用量と洗浄前の前記酸処理後の分子篩の重量との重量比と、を含んでもよい。さらに、洗浄後の洗浄液中から遊離のNa+、Cl-及びAl3+などのイオンが検出されなくなるまで、前記洗浄を行ってもよい。
【0066】
好ましい実施形態において、前記酸溶液(酸の水溶液)中の酸は、少なくとも1種類の有機酸、及び、強度が中程度以上の少なくとも1種類の無機酸である。前記有機酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸又はサリチル酸を含んでもよく、それらのうち2つ、3つ又は4つからなる組み合わせであってもよい。前記強度が中程度以上の無機酸は、リン酸、塩酸、硝酸又は硫酸を含んでもよく、それらのうち2つ、3つ又は4つからなる組み合わせであってもよい。前記接触の温度が約80℃~約99℃、例えば約85℃~約98℃であり、接触時間が約60分以上、例えば約60分~約240分、又は90分~180分であることが好ましい。前記有機酸と分子篩との重量比は、好ましくは約(0.02~0.05):1である。前記強度が中程度以上の無機酸と分子篩との重量比は、好ましくは約(0.01~0.06):1、例えば約(0.02~0.05):1である。水と分子篩との重量比は、好ましくは約(5~20):1、例えば約(8~15):1である。
【0067】
幾つかの好ましい実施形態において、ステップ(4)における酸処理は、チャネル洗浄改質とも称され、次の2つのステップからなる。先ず、無機酸、好ましくは強度が中程度以上の無機酸と、前記気相超安定改質分子篩との第1接触を行う。ここで、強度が中程度以上の無機酸と、分子篩とのドライベースに基づく重量比は、約(0.01~0.05):1、例えば約(0.02~0.05):1であってもよく、水と分子篩との重量比は、好ましくは約(5~20):1、例えば約(8~15):1であってもよく、接触の反応温度が約80℃~約99℃、好ましくは90℃~98℃であってもよく、反応時間が約60分~約120分であってもよい。次に、この接触処理後に得られた分子篩と、有機酸との第2接触を行う。ここで、前記有機酸と分子篩とのドライベースに基づく重量比は、約(0.02~0.10):1、例えば約(0.05~0.08):1であってもよく、水と分子篩とのドライベースに基づく重量比は、好ましくは約(5~20):1、例えば約(8~15):1であってもよく、接触の反応温度は、約80℃~約99℃、好ましくは90℃~98℃であってもよく、反応時間は、約60分~約120分であってもよい。
【0068】
本発明において提供される改質Y型分子篩の作製方法は、ステップ(5)においてステップ(4)において得られた酸処理後の分子篩に対してリン改質処理を行う工程を、さらに含む。リン化合物を用いてリン改質処理を行うことにより、分子篩にリンを導入してもよい。通常、前記リン改質処理は、約15℃~約100℃、好ましくは約30℃~約95℃において、酸処理後の分子篩をリン化合物含有溶液と約10分~約100分接触させた後、ろ過及び洗浄する工程を含む。なお、前記溶液のうち、P2O5に基づくリンの重量と、前記溶液のうち水の重量と、前記分子篩の重量との重量比は、約(0.0005~0.10):(2~5):1である。すなわち、前記溶液中の水と分子篩との重量比は、約(2~5):1、好ましくは約(3~4):1であり、リン(重量はP2O5に基づく)と分子篩との重量比は、約(0.0005~0.10):1、好ましくは約(0.001~0.06):1である。前記リン化合物は、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム及びリン酸水素二アンモニウムからなる群より選択される1つ又は複数であってもよい。前記洗浄は、例えば分子篩の重量の約5倍~約15倍の水、例えば脱イオン水を用いて洗浄してもよい。
【0069】
好ましい一実施形態において、前記リン改質処理は、前記酸処理後の分子篩をリン化合物含有溶液中に添加し、約15℃~約100℃の条件下で約10分~約100分反応させた後、ろ過及び洗浄してもよい。ここで、前記溶液中の水と分子篩との重量比は、約(2~5):1、好ましくは約(3~4):1であり、リン(重量はP2O5に基づく)と分子篩との重量比は、約(0.0005~0.10):1、好ましくは約(0.001~0.06):1である。
【0070】
本発明の作製方法によれば、ステップ(6)において、リン改質後の分子篩を活性元素含有溶液と接触させることにより、イオン交換及び/又は含浸処理を行ってもよい。これにより、活性元素を改質Y型分子篩に担持させる。イオン交換及び/又は含浸処理による効果を好適に向上させるために、前記活性元素含有溶液は、ガリウム塩水溶液、ホウ素化合物水溶液、又は、ガリウム塩及びホウ素化合物を含有する水溶液であることが好ましく、それらのうち2つ又は3つからなる組み合わせであってもよい。活性元素含有溶液との前記接触は、必要な量の活性元素を導入するために1回又は複数回行ってもよい。
【0071】
任意に選択される構成として、ステップ(6)における第2焼結の条件は、約350℃~約600℃の焼結温度、約1時間~約5時間の焼結時間を含む。
【0072】
好ましい一実施形態において、ステップ(6)では、活性元素含有溶液がガリウム塩水溶液であり、リン改質後の分子篩をガリウム塩水溶液と接触させる。ここで、この接触は、前記リン改質分子篩をガリウム塩水溶液と均一に混合し、約15℃~約40℃において約24時間~約36時間静置する工程を含んでもよい。例えば、ガリウム成分を含浸させるためにリン改質後の分子篩をGa(NO3)3溶液中に撹拌下で添加して均一に撹拌した後、室温下で約24時間~約36時間静置してもよい。その後、リン改質後の分子篩及びGa(NO3)3を含むスラリーをさらに約20分間撹拌して均一に混合させ、乾燥及び第2焼結を行ってもよい。前記乾燥は、任意の乾燥方法、例えばフラッシュ乾燥、オーブン乾燥、空気乾燥であってもよい。好ましい一実施形態において、乾燥方法としては、例えば、スラリーを回転式蒸発器に移し、水浴下で回転蒸発乾燥を行ってもよい。好ましくは、前記第2焼結は、上記蒸発後の試料を回転式焼結炉に投入し、約450℃~約600℃において約2時間~約5時間焼結する工程、より好ましくは約480℃~約580℃で約2.2時間~約4.5時間焼結する工程を含んでもよい。
【0073】
好ましくは、前記ガリウム塩水溶液は、Ga(NO3)3水溶液、Ga2(SO4)3水溶液、又はGaCl3水溶液であってもよく、Ga(NO3)3水溶液が好ましい。ガリウム塩水溶液のうちガリウムの重量(ガリウム酸化物に基づいて算出)と、ガリウム塩水溶液のうち水の重量と、リン改質後の分子篩の重量(ドライベースに基づいて算出)と、の重量比は、好ましくは約(0.001~0.03):(2~3):1、より好ましくは約(0.005~0.025):(2.2~2.6):1である。
【0074】
好ましい別の実施形態において、ステップ(6)では、活性元素含有溶液がホウ素化合物水溶液であり、リン改質後の分子篩をホウ素化合物水溶液と接触させる。この接触は、前記リン改質後の分子篩を60℃~99℃に加熱した後、水溶液中でホウ素化合物と1時間~2時間接触及び混合させる工程、好ましくはリン改質後の分子篩を85℃~95℃まで加熱した後、水溶液中でホウ素化合物と1時間~1.5時間接触及び混合させる工程を含んでもよい。例えば、リン改質後の分子篩を交換タンクに投入し、水と混合してスラリーとした後、当該分子篩スラリーを85℃~95℃まで加熱し、続いて例えばホウ酸などのホウ素化合物を添加し、1時間撹拌混合した後にろ過し、ろ過後の分子篩に対して乾燥及び第2焼結を行ってもよい。前記乾燥は、任意の乾燥方法、例えばフラッシュ乾燥、オーブン乾燥、空気乾燥であってもよい。好ましい一実施形態において、乾燥方法としては、例えば120℃~140℃において5時間~10時間乾燥してもよい。第2焼結は、約350℃~600℃において約1時間~約4時間焼結することが好ましい。好ましくは、前記ホウ素化合物は、正価のホウ素イオンを含有する化合物、例えばホウ酸、ホウ酸塩、メタホウ酸塩、ポリホウ酸塩からなる群より選択されるいずれか、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせを含む。
【0075】
好ましくは、分子篩スラリーの液体-固形物比、すなわち水と分子篩との重量比は約(2.5~5):1、好ましくは約(2.8~4.5):1である。ホウ素化合物は、B2O3に基づいて算出され、B2O3と分子篩との重量比が約(0.5~4.5):100、好ましくは約(0.8~4.2):100となるような量が好ましく添加される。
【0076】
好ましい更なる実施形態において、ステップ(6)では、活性元素含有溶液がガリウム塩水溶液及びホウ素化合物水溶液であり、リン改質分子篩をガリウム塩水溶液及びホウ素化合物溶液と個別に接触させる。ここで、この接触は、前記リン改質分子篩を85℃~95℃に加熱した後、第1水溶液中でホウ素化合物と1時間~2時間接触及び混合させ、ろ過後に当該試料分子篩を、ガリウム塩を含有する第2水溶液と均一に混合し、15℃~40℃において24時間~36時間静置する工程を含んでもよい。例えば、リン改質分子篩を交換タンクに投入し、水と混合してスラリーとした後、当該分子篩スラリーを85℃~95℃まで加熱し、その後、第1水溶液中で分子篩をホウ素化合物と接触させるようにホウ素化合物を添加して1時間撹拌混合し、ろ過後、ガリウム成分を含浸させように当該ろ過ケークをGa(NO3)3溶液(すなわち第2水溶液)に撹拌下で投入し、Ga(NO3)3を含有した当該スラリーをさらに20分間撹拌し、均一に混合させた後、乾燥及び第2焼結を行ってもよい。前記乾燥は、任意の乾燥方法、例えばフラッシュ乾燥、オーブン乾燥、空気乾燥であってもよい。好ましい一実施形態において、乾燥方法としては、スラリーを回転式蒸発器に移し、水浴加熱下で回転蒸発乾燥を行ってもよい。好ましくは、第2焼結は、上記蒸発後の試料を回転式焼結炉に投入し、約450℃~約600℃において約2時間~5時間焼結、より好ましくは約480℃~約580℃において約2.2時間~約4.5時間焼結してもよい。
【0077】
好ましくは、前記第1水溶液のうちホウ素酸化物に基づいて算出されるホウ素の重量と、前記第1水溶液のうち水の重量と、トライベース重量に基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量と、の重量比は、約(0.005~0.03):(2.5~5):1であってもよい。前記第2水溶液のうちガリウム酸化物に基づいて算出されるガリウムの重量と、前記第2水溶液のうち水の重量と、トライベース重量に基づいて算出される前記試料分子篩の重量と、の重量比は、約(0.001~0.02):(2~3):1であってもよい。
【0078】
本発明の具体的な一実施形態として、改質Y型分子篩を作製する方法は下記のステップを含む。
【0079】
(1)NaY分子篩を希土類溶液と接触させることによってイオン交換反応を行い、ろ過及び洗浄を経て、酸化ナトリウムの含量が低減され、希土類元素を含み、通常単位胞サイズを示すイオン交換後の分子篩を得る。なお、通常、前記イオン交換は、撹拌下、約15℃~約95℃、好ましくは約65℃~約95℃の温度条件下で、約30分~約120分行われる。
【0080】
(2)前記イオン交換後の分子篩を約350℃~約480℃の温度、及び、約30体積%~約90体積%の水蒸気を含有する雰囲気下で約4.5時間~約7時間焼結し、乾燥を経て、格子定数が約2.450nm~約2.462nmまで低減され、含水量が約1重量%未満の緩和水熱超安定改質分子篩を得る。
【0081】
(3)重量比としてSiCl4:前記緩和水熱超安定改質分子篩(ドライベースに基づく)が約(0.1~0.7):1であり、温度が約200℃~約650℃の条件下で、前記緩和水熱超安定改質分子篩を、加熱気化したSiCl4ガスと約10分~約5時間接触させて反応させ、任意に洗浄及びろ過を行い、気相超安定改質分子篩を得る。
【0082】
(4)前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させる酸処理により、改質を行う。具体的には、先ず前記気相超安定改質分子篩を、強度が中程度以上の無機酸及び水と混合し、これらを約80℃~約99℃、好ましくは約90℃~約98℃において少なくとも約30分、例えば約60分~約120分接触させた後、有機酸を添加し、これらを約80℃~約99℃、好ましくは約90℃~約98℃において少なくとも約30分、例えば約60分~約120分接触させ、ろ過し、任意に洗浄及び乾燥を経て、酸処理後の分子篩を得る。ここで、有機酸と、気相超安定改質分子篩(重量はドライベースに基づく)との重量比が約(0.02~0.10):1であり、強度が中程度以上の無機酸と、気相超安定改質分子篩(重量はドライベースに基づく)との重量比が約(0.01~0.05):1であり、水と気相超安定改質分子篩との重量比が約(5~20):1であることが好ましい。
【0083】
(5)前記酸処理後の分子篩をリン化合物含有溶液に添加し、約15℃~約100℃の条件下で約10分~100分反応させた後、ろ過及び洗浄を行い、任意に乾燥し、リン改質後の分子篩を得る。ここで、前記溶液中の水と分子篩との重量比は約2~約5、好ましくは約3~約4であり、リン(重量はP2O5に基づく)と分子篩との重量比は約0.005~約0.10、好ましくは約0.01~約0.05である。
【0084】
(6)ガリウム成分を含浸させるために前記リン改質後の分子篩をGa(NO3)3溶液中に撹拌下で添加し、リン改質分子篩と当該Ga(NO3)3含有溶液とを均一に撹拌した後、室温下で静置する。なお、Ga(NO3)3溶液中に含まれるGa(NO3)3の量(Ga2O3に基づいて算出)と、リン改質分子篩の重量との重量比は約0.1~3:100であり、Ga(NO3)3溶液中の水の量と、リン改質分子篩(ドライベース)の重量との重量比は約(2~3):1であり、含浸時間は約24時間である。続いて、改質Y分子篩とGa(NO3)3とを含有したスラリーをさらに約20分間撹拌して均一に混合させた後、当該試料混合物を回転式蒸発器に移し、均一加熱となるように回転蒸発をゆっくり行い、その後、蒸発後の試料をマッフル炉に投入して約450℃~約600℃において約2時間~約5時間焼結し、本発明の改質Y分子篩を得る。
【0085】
本発明の具体的な別の実施形態として、改質Y型分子篩を作製する方法は下記のステップを含む。
【0086】
(1)NaY分子篩を希土類溶液と接触させることによってイオン交換反応を行い、ろ過及び洗浄を経て、酸化ナトリウムの含量が低減され、希土類元素を含み、通常単位胞サイズを示すイオン交換後の分子篩を得る。なお、通常、前記イオン交換は、撹拌下、約15℃~約95℃、好ましくは約65℃~約95℃の温度条件下で、約30分~約120分行われる。
【0087】
(2)前記イオン交換後の分子篩を約350℃~約480℃の温度、及び、約30体積%~約90体積%の水蒸気を含有する雰囲気下で約4.5時間~約7時間焼結し、乾燥を経て、格子定数が約2.450nm~約2.462nm、含水量が約1重量%未満の緩和水熱超安定改質分子篩を得る。
【0088】
(3)重量比としてSiCl4:前記緩和水熱超安定改質分子篩(ドライベースに基づく)が約(0.1~0.7):1であり、温度が約200℃~約650℃の条件下で、前記緩和水熱超安定改質分子篩を、加熱気化したSiCl4ガスと約10分~約5時間接触させて反応させ、任意に洗浄及びろ過を行い、気相超安定処理後の改質Y型分子篩を得る。
【0089】
(4)前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させる酸処理により、改質を行う。具体的には、先ず前記気相超安定改質分子篩を、強度が中程度以上の無機酸及び水と混合し、これらを約80℃~約99℃、好ましくは約90℃~約98℃において少なくとも約30分、例えば約60分~約120分接触させた後、有機酸を添加し、これらを約80℃~約99℃、好ましくは約90℃~約98℃において約少なくとも30分、例えば約60分~約120分接触させ、ろ過し、任意に洗浄及び乾燥を経て、酸処理後の分子篩を得る。ここで、好ましくは、有機酸と、分子篩とのドライベースに基づく重量比は約(0.02~0.10):1であり、強度が中程度以上の無機酸と、分子篩とのドライベースに基づく重量比は約(0.01~0.05):1であり、水と分子篩との重量比は約(5~20):1である。
【0090】
(5)前記酸処理後の分子篩をリン化合物含有溶液に添加し、約15℃~約100℃の条件下で約10分~約100分反応させた後、ろ過及び洗浄を行い、任意に乾燥し、リン改質後の分子篩を得る。ここで、前記溶液中の水と分子篩との重量比は約2~約5、好ましくは約3~約4であり、リン(重量はP2O5に基づく)と分子篩との重量比は約0.005~約0.10、好ましくは約0.01~約0.05である。
【0091】
(6)前記リン改質後の分子篩を交換タンクに投入し、分子篩スラリーの液体-固形物比、すなわち水と分子篩との重量比が約(2.5~5):1となるように脱イオン水を添加し、当該分子篩スラリーを約85℃~約95℃まで加熱した後、ホウ酸を、B2O3と分子篩との重量比が約(0.5~4.5):100となるホウ酸添加量(B2O3に基づいて算出)で添加し、約1時間撹拌し、ろ過する。ろ過後の分子篩を約130℃において約5時間乾燥してから、約350℃~約600℃において約1時間~約4時間焼結する。
【0092】
本発明の具体的な別の実施形態として、改質Y型分子篩を作製する方法は下記のステップを含む。
【0093】
(1)NaY分子篩を希土類溶液と接触させることによってイオン交換反応を行い、ろ過及び洗浄を経て、酸化ナトリウムの含量が低減され、希土類元素を含み、通常単位胞サイズを示すイオン交換後の分子篩を得る。なお、通常、前記イオン交換は、撹拌下、約15℃~約95℃、好ましくは約65℃~約95℃の温度条件下で、約30分~約120分行われる。
【0094】
(2)前記イオン交換後の分子篩を約350℃~約480℃の温度、及び、約30体積%~約90体積%の水蒸気を含有する雰囲気下で約4.5時間~約7時間焼結し、乾燥を経て、格子定数が約2.450nm~約2.462nm、含水量が約1重量%未満の緩和水熱超安定改質分子篩を得る。
【0095】
(3)重量比としてSiCl4:前記緩和水熱超安定改質分子篩(ドライベースに基づく)が約(0.1~0.7):1であり、温度が約200℃~約650℃の条件下で、前記緩和水熱超安定改質分子篩を、加熱気化したSiCl4ガスと約10分~約5時間接触させて反応させ、任意に洗浄及びろ過を行い、気相超安定処理後の改質Y型分子篩を得る。
【0096】
(4)前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させる酸処理により、改質を行う。具体的には、先ず前記気相超安定改質分子篩を、強度が中程度以上の無機酸及び水と混合し、これらを約80℃~約99℃、好ましくは約90℃~約98℃において少なくとも約30分、例えば約60分~約120分接触させた後、有機酸を添加し、これらを約80℃~約99℃、好ましくは約90℃~約98℃において少なくとも約30分、例えば約60分~約120分接触させ、ろ過し、任意に洗浄及び乾燥を経て、酸処理後の分子篩を得る。ここで、好ましくは、有機酸と、分子篩(重量はドライベースに基づく)との重量比が約(0.02~0.10):1であり、強度が中程度以上の無機酸と、分子篩(重量はドライベースに基づく)との重量比が約(0.01~0.05):1であり、水と分子篩との重量比が約(5~20):1である。
【0097】
(5)前記酸処理後の分子篩をリン化合物含有溶液に添加し、約15℃~約100℃の条件下で約10分~約100分反応させた後、ろ過及び洗浄を行い、任意に乾燥し、リン改質後の分子篩を得る。ここで、前記溶液中の水と分子篩との重量比は約2~約5、好ましくは約3~約4であり、リン(重量はP2O5に基づく)と分子篩との重量比は約0.005~約0.10、好ましくは約0.01~約0.05である。
【0098】
(6)前記リン改質後の分子篩を交換タンクに投入し、分子篩スラリーの液体-固形物比、すなわち水と分子篩との重量比が約(2.5~5):1となるように脱イオン水を添加し、当該分子篩スラリーを約85℃~約95℃まで加熱した後、ホウ酸を、B2O3と気相超安定改質分子篩との重量比が約(0.5~3):100となるホウ酸添加量(B2O3に基づいて算出)で添加し、約1時間撹拌し、ろ過する。続いて、ガリウム成分を含浸させるために当該ろ過ケークをGa(NO3)3溶液中に撹拌下で添加し、当該溶液を均一に撹拌した後、室温下で静置する。なお、Ga(NO3)3溶液中に含まれるGa(NO3)3の量(Ga2O3に基づいて算出)と、分子篩の重量との重量比は約0.1~2:100であり、Ga(NO3)3溶液中の水と分子篩との重量比は、水:分子篩(トライベース)が約(2~3):1であり、含浸時間は約24時間である。続いて、当該スラリーをさらに約20分間撹拌して均一に混合させた後、当該スラリーを回転式蒸発器に移して水浴加熱下で回転蒸発乾燥を行い、その後、蒸発後の試料をマッフル炉に投入して約450℃~約600℃において約2時間~約5時間焼結し、本発明の改質Y分子篩を得る。
【0099】
第3態様として、本発明は、接触分解触媒であって、当該触媒のドライベース重量に対し、約10重量%~約50重量%の改質Y型分子篩と、アルミナに基づいて算出される約10重量%~約40重量%のアルミナバインダと、粘土ドライベースに基づいて算出される約10重量%~約80重量%の粘土と、を含み、前記改質Y型分子篩は、本発明の改質Y型分子篩又は本発明の方法により作製された改質Y型分子篩である、接触分解触媒を提供する。
【0100】
本発明の接触分解触媒を水添LCOの処理に用いる場合、高いLCO転化効率及び低いコークス選択性を示し、BTXを豊富に含むガソリンの収率がより高くなる。
【0101】
本発明において提供される接触分解触媒は、前記改質Y型分子篩以外の別の分子篩をさらに含んでもよい。前記接触分解触媒の重量に対し、当該別の分子篩の含量(ドライベースに基づく)は、約0重量%~約40重量%、例えば約0重量%~約30重量%、又は約1重量%~約20重量%であってもよい。前記別の分子篩としては、接触分解触媒によく用いられる分子篩、例えば、MFI構造を有するゼオライト、βゼオライト、その他のY型ゼオライト、又は非ゼオライト分子篩からなる群より選択されてもよく、それらのうち2つ、3つ又は4つからなる組み合わせを含んでもよい。前記その他のY型ゼオライトとしては、例えばREY、REHY、DASY、SOY若しくはPSRY、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであってもよい。MFI構造を有するゼオライトとしては、例えば、HZSM-5、ZRP若しくはZSP、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであってもよい。βゼオライトとしては例えばHβであってもよく、非ゼオライト分子篩としては例えばリン酸アルミニウム分子篩(AlPO分子篩)、及び/又は、シリコアルミノリン酸塩分子篩(SAPO分子篩)であってもよい。
【0102】
本発明において提供される接触分解触媒において、ドライベースに基づいて算出される前記改質Y型分子篩の含量は、約10重量%~約50重量%、好ましくは約15重量%~約45重量%、例えば約25重量%~約40重量%である。
【0103】
本発明において提供される接触分解触媒において、前記粘土は、接触分解触媒の成分として使用可能な粘土からなる群より選択される1つ又は複数であり、例えば、カオリン、含水ハロイサイト、モンモリロナイト、硅藻土、ハロイサイト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト又はベントナイトからなる群より選択されてもよく、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであってもよい。なお、これらの粘土は当業者に周知のものである。好ましくは、ドライベースに基づいて算出すると、本発明の接触分解触媒中の前記粘土の含量は、約20重量%~約55重量%、又は約30重量%~約50重量%である。
【0104】
本発明において提供される接触分解触媒において、アルミナに基づいて算出される前記アルミナバインダの含量は、約10重量%~約40重量%、例えば約20重量%~約35重量%である。前記アルミナバインダは、接触分解触媒に一般に用いられる各種の形態のアルミナ、水和アルミナ及びアルミナゾルからなる群より選択される1つ又は複数であってもよい。例えば、γ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、χ-アルミナ、擬似ベーマイト、ベーマイト、ギブサイト、バイヤーライト又はアルミナゾルからなる群より選択されてもよく、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであってもよく、擬似ベーマイト及びアルミナゾルが好ましい。一例として、前記接触分解触媒は、アルミナに基づいて算出される、約2重量%~約15重量%、好ましくは約3重量%~約10重量%のアルミニウムと、アルミナに基づいて算出される約10重量%~約30重量%、好ましくは約15重量%~約25重量%の擬似ベーマイトと、を含んでもよい。
【0105】
第4態様として本発明は、接触分解触媒の作製方法であって、改質Y型分子篩を提供するステップと、前記改質Y型分子篩、アルミナバインダ、粘土及び水を含むスラリーを調製するステップと、噴霧乾燥後、任意に洗浄及び乾燥を行い、前記接触分解触媒を得るステップと、を含む方法を提供する。なお、前記改質Y型分子篩の提供は、本発明の改質Y型分子篩、又は本発明の方法により作製された改質Y型分子篩の提供を含む。
【0106】
前記改質Y型分子篩の提供ステップを除き、本発明の触媒作製方法における他のステップは、従来の方法、例えば中国特許出願公開CN1098130A及びCN1362472Aに記載の方法に準じて行ってもよい。
【0107】
本発明において提供される触媒作製方法において、前記噴霧乾燥、洗浄及び乾燥は従来技術を採用してもよく、本発明では特に制限しない。
【0108】
本発明において提供される触媒作製方法において、前記改質Y型分子篩の使用量は本分野における通常の使用量であってもよい。好ましくは、作製された触媒において、ドライベースに基づいて算出される前記改質Y型分子篩の含量は、約10重量%~約50重量%、好ましくは約15重量%~約45重量%、例えば約25重量%~約40重量%であってもよい。
【0109】
本発明において提供される触媒作製方法において、前記粘土は、接触分解触媒の成分として使用可能な粘土からなる群より選択される1つ又は複数であり、例えばカオリン、含水ハロイサイト、モンモリロナイト、硅藻土、ハロイサイト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト及びベントナイトからなる群より選択される1つ又は複数であってもよい。なお、これらの粘土は当業者に周知のものである。前記粘土の使用量は本分野における通常の使用量であってもよい。好ましくは、ドライベースに基づいて算出すると、作製された接触分解触媒中の前記粘土の含量は、約20重量%~約55重量%、又は約30重量%~約50重量%であってもよい。
【0110】
本発明において提供される触媒作製方法において、前記アルミナバインダは、接触分解触媒に一般に用いられる各種の形態のアルミナ、水和アルミナ及びアルミナゾルからなる群より選択される1つ又は複数であってもよい。例えば、γ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、χ-アルミナ、擬似ベーマイト、ベーマイト、ギブサイト、バイヤーライト、アルミナゾルからなる群より選択される1つ又は複数であってもよく、擬似ベーマイト及び/又はアルミナゾルが好ましい。前記アルミナバインダの使用量は本分野における通常の使用量であってもよい。好ましくは、作製された接触分解触媒において、アルミナに基づいて算出される前記アルミナバインダの使用量は、約10重量%~約40重量%、例えば約20重量%~約35重量%であってもよい。一実施形態において、アルミナバインダは、擬似ベーマイト及アルミニウムであり、作製された接触分解触媒は、アルミナに基づいて算出される約2重量%~約15重量%、好ましくは約3重量%~約10重量%のアルミニウムと、アルミナに基づいて算出される約10重量%~約30重量%、好ましくは約15重量%~約25重量%の擬似ベーマイトと、を含む。
【0111】
第5態様として、本発明は、原料炭化水素、特に水素添加軽質循環油の接触分解反応における、本発明の改質Y型分子篩の使用であって、接触分解条件下で前記原料炭化水素を、前記改質Y型分子篩を含む接触分解触媒と接触させる処理を含む、使用を提供する。
【0112】
第6態様として、本発明は、原料炭化水素、特に水素添加軽質循環油の接触分解反応における、本発明の接触分解触媒の使用であって、接触分解条件下で前記原料炭化水素を前記接触分解触媒と接触させる処理を含む、接触分解触媒の使用を提供する。
【0113】
第7態様として、本発明は、水素添加軽質循環油(水添LCO)を処理するための接触分解方法であって、接触分解条件下で前記水添LCOを本発明の接触分解触媒、又は本発明の改質Y型分子篩を含む接触分解触媒と接触させるステップを含む、接触分解方法を提供する。
【0114】
本発明によれば、好ましくは、前記接触分解条件としては、約500℃~約610℃の反応温度と、約2h-1~16h-1である単位時間当たりの重量空間速度と、約3~約10である油に対する触媒の重量比と、を含んでもよい。
【0115】
本発明によれば、好ましくは、前記水添LCOは、密度(20℃)が約0.850g/cm3~約0.920g/cm3、Hの含量が約10.5重量%~約12重量%、Sの含量が50μg/g未満、Nの含量が10μg/g未満、総芳香族炭化水素の含量が約70重量%~約85重量%、多環式芳香族炭化水素の含量が15重量%以下、という性質を有してもよい。
【0116】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明は以下の構成を提供している。
【0117】
(A1)改質Y型分子篩であって、当該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量が約4重量%~約11重量%であり、P2O5に基づいて算出されるリンの含量が約0.05重量%~約10重量%であり、酸化ナトリウムの含量が約0.5重量%以下であり、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素の酸化物の含量が約0.1重量%~約5重量%であり、当該改質Y型分子篩において、全細孔体積が約0.36mL/g~約0.48mL/gであり、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の比率が約20%~約40%であり、当該改質Y型分子篩において、格子定数が約2.440nm~約2.455nmであり、格子崩壊温度が約1060℃以上であり、総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率が約10%以下であり、当該改質Y型分子篩において、強酸酸価のうちL酸価に対するB酸価の比率が約3.5以上であることを特徴とする、改質Y型分子篩。
【0118】
(A2)前記改質Y型分子篩は、全細孔体積に対する、2nm~100nmを有する孔径を有する二次孔の細孔体積の比率が約28%~約38%である、項目A1に記載の改質Y型分子篩。
【0119】
(A3)前記改質Y型分子篩は、総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率が約5%~約9.5%であり、n(SiO2)/n(Al2O3)に基づいて算出される骨格におけるアルミナに対するシリカの比が約7~約14である、項目A1に記載の改質Y型分子篩。
【0120】
(A4)前記改質Y型分子篩の格子崩壊温度は約1065℃~約1085℃である、項目A1に記載の改質Y型分子篩。
【0121】
(A5)前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率は、ピリジン吸着赤外分光法を用いて350℃において測定する場合、約3.5~約6.5である、項目A1に記載の改質Y型分子篩。
【0122】
(A6)前記改質Y型分子篩の相対結晶化度は約70%~約80%である、項目A1に記載の改質Y型分子篩。
【0123】
(A7)800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRDによって測定される前記改質Y型分子篩の相対結晶化度維持率は約38%以上である、項目A1に記載の改質Y型分子篩。
【0124】
(A8)前記改質Y型分子篩は、該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量が約4.5重量%~約10重量%であり、P2O5に基づいて算出されるリンの含量が約0.1重量%~約6重量%であり、酸化ナトリウムの含量が約0.05重量%~約0.3重量%であり、前記改質Y型分子篩の格子定数は約2.442nm~約2.451nmであり、n(SiO2)/n(Al2O3)に基づいて算出される、前記改質Y型分子篩の骨格におけるアルミナに対するシリカの比は約8.5~約12.6であり、前記希土類はLa、Ce、PrもしくはNdを含み、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせを含み、
前記活性元素がガリウムである場合の酸化ガリウムの含量が約0.1重量%~約3重量%であり、又は、前記活性元素がホウ素である場合の酸化ホウ素の含量が約0.5重量%~約5重量%であり、又は、前記活性元素がガリウム及びホウ素である場合の、酸化ガリウム及び酸化ホウ素の合計含量が約0.5重量%~約5重量%である、項目A1~A7のいずれか1項に記載の改質Y型分子篩。
【0125】
(A9)項目A1~A8のいずれか1項に記載の改質Y型分子篩を作製する方法であって、
NaY分子篩を希土類塩と接触させることによりイオン交換反応を行い、ろ過及び第1洗浄を経た後、イオン交換後の分子篩の酸化ナトリウムの含量がイオン交換後の分子篩のドライベース重量に対して約9.0重量%以下である、当該イオン交換後の分子篩を得るステップ(1)と、
約350℃~約480℃の温度、及び約30体積%~約90体積%の水蒸気の存在下で、前記イオン交換後の分子篩に対して第1焼結を約4.5時間~約7時間行い、緩和水熱超安定改質分子篩を得るステップ(2)と、
前記緩和水熱超安定改質分子篩をSiCl4と接触させて反応させ、任意に第2洗浄及び第2ろ過を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させることにより酸処理を行い、酸処理後の分子篩を得るステップ(4)と、
リン化合物を用いて前記酸処理後の分子篩に対してリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(5)と、
前記リン改質分子篩を、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素を含有する溶液と接触させ、乾燥及び第2焼結を経た後、前記改質Y型分子篩を得るステップ(6)と、を含むことを特徴する方法。
【0126】
(A10)前記イオン交換反応は、NaY分子篩を水と混合し、撹拌下で希土類塩及び/又は希土類塩水溶液を添加してイオン交換反応を行った後、ろ過及び洗浄を行う工程を含み、
前記イオン交換反応の条件は、約15℃~約95℃の反応温度と、約30分~約120分の反応時間と、約1:(0.01~0.18):(5~20)である、前記NaY分子篩、希土類塩及び水の重量比と、を含む、項目A9に記載の方法。
【0127】
(A11)前記イオン交換後の分子篩は、格子定数が約2.465nm~約2.472nmであり、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量が約4.5重量%~約13重量%であり、酸化ナトリウムの含量が約4.5重量%~約9.5重量%である、項目A9又はA10に記載の方法。
【0128】
(A12)前記希土類塩は、塩化希土類又は硝酸希土類である、項目A9又はA10に記載の方法。
【0129】
(A13)ステップ(2)は、約380℃~約460℃の温度、及び約40体積%~約80体積%の水蒸気下で、第1焼結を約5時間~約6時間行う処理を含む、項目A9に記載の方法。
【0130】
(A14)前記緩和水熱超安定改質分子篩の格子定数は約2.450nm~約2.462nmであり、前記緩和水熱超安定改質分子篩の含水量は約1重量%以下である、項目A9又はA13に記載の方法。
【0131】
(A15)ステップ(3)において、SiCl4の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記緩和水熱超安定改質分子篩の重量と、の重量比が約(0.1~0.7):1であり、前記接触の反応温度が約200℃~約650℃であり、反応時間が約10分~約5時間であり、前記第2洗浄は、洗浄後の洗浄液中から遊離のNa+、Cl-及びAl3+などのイオンが検出されなくなるまで水洗浄する処理を含み、洗浄条件としては、洗浄液のpHが約2.5~約5.0、洗浄温度が約30℃~約60℃、水の使用量と洗浄前の前記気相超安定改質分子篩の重量との重量比が約(6~15):1であってもよい、項目A9に記載の方法。
【0132】
(A16)ステップ(4)における酸処理の条件としては、約80℃~約99℃の酸処理温度と、約1時間~約4時間の酸処理時間と、有機酸及び/又は無機酸を含む酸溶液と、約(0.001~0.15):(5~20):1である、前記酸溶液のうち酸の重量と前記酸溶液のうち水の重量と前記気相超安定改質分子篩の重量(ドライベース重量に基づいて算出)との重量比と、を含む、項目A10に記載の方法。
【0133】
(A17)ステップ(4)の酸処理は、前記気相超安定改質分子篩と無機酸溶液との第1接触を行ってから、有機酸溶液との第2接触を行う工程を含み、
前記第1接触の条件としては、約60分~約120分の接触時間と、約90℃~約98℃の接触温度と、約(0.01~0.05):(5~20):1である、無機酸溶液のうち無機酸の重量と無機酸溶液のうち水の重量と前記気相超安定改質分子篩の重量(ドライベース重量に基づいて算出)との重量比と、を含み、前記第2接触の条件としては、約60分~約120分の接触時間と、約90℃~約98℃の接触温度と、約(0.02~0.1):(5~20):1である、有機酸溶液のうち有機酸の重量と有機酸溶液のうち水の重量と前記気相超安定改質分子篩の重量(ドライベース重量に基づいて算出)との重量比と、を含む、項目A10に記載の方法。
【0134】
(A18)前記有機酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸又はサリチル酸であり、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであり、前記無機酸は、リン酸、塩酸、硝酸又は硫酸であり、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせである、項目A16又はA17に記載の方法。
【0135】
(A19)前記リン化合物は、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム又はリン酸水素二アンモニウムであり、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであり、前記リン改質処理は、前記酸処理後の分子篩をリン化合物含有溶液と接触させ、約15℃~約100℃の条件下で約10分~約100分反応させた後、ろ過及び洗浄を行う工程を含み、前記溶液のうちリンの重量(P2O5に基づいて算出)と、前記溶液のうち水の重量と、前記酸処理後の分子篩の重量との重量比が約(0.0005~0.10):(2~5):1である、項目A9に記載の方法。
【0136】
(A20)前記活性元素を含有する溶液は、ガリウム塩水溶液及び/又はホウ素化合物水溶液であり、
前記リン改質分子篩と、活性元素を含有する溶液との接触は、
ガリウム酸化物に基づいて算出されるガリウムの重量と、水の重量と、ドライベースに基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が約(0.001~0.03):(2~3):1であるガリウム塩水溶液に、前記リン改質分子篩を均一に混合した後、約15℃~約40℃において24時間~36時間静置する処理を含むか、
前記リン改質分子篩を約60℃~約99℃まで加熱した後、ホウ素酸化物(ホウ酸、ホウ酸塩、メタホウ酸塩及びポリホウ酸塩からなる群より選択され、又はそれらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせを含む)に基づいて算出されるホウ素の重量と、水の重量と、ドライベースに基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が約(0.005~0.045):(2.5~5):1である水溶液中で、当該リン改質分子篩をホウ素化合物と約1時間~約2時間接触及び混合させる処理を含むか、
前記リン改質分子篩を約85℃~約95℃に加熱した後、ホウ素酸化物に基づいて算出されるホウ素の重量と、水の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が約(0.005~0.03):(2.5~5):1である第1水溶液中で、当該リン改質分子篩をホウ素化合物と約1時間~約2時間接触及び混合させ、ろ過した後、ろ過後の試料分子篩を、ガリウム酸化物に基づいて算出されるガリウムの重量と、水の重量と、トライベース重量に基づいて算出される前記試料分子篩の重量との重量比が約(0.001~0.02):(2~3):1である、ガリウム塩を含有する第2水溶液に均一に混合し、約15℃~約40℃において約24時間~約36時間静置する処理を含む、項目A9に記載の方法。
【0137】
(A21)ステップ(6)において、前記第2焼結の条件としては、約350℃~約600℃の焼結温度と、約1時間~約5時間の焼結時間とを含む、項目A9に記載の方法。
【0138】
(B1)接触分解触媒であって、当該触媒のドライベース重量に対し、約10重量%~約50重量%の改質Y型分子篩と、アルミナに基づいて算出される約10重量%~約40重量%のアルミナバインダと、粘土ドライベースに基づいて算出される約10重量%~約80重量%の粘土と、を含み、
前記改質Y型分子篩は、該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量が約4重量%~約11重量%であり、P2O5に基づいて算出されるリンの含量が約0.05重量%~約10重量%であり、酸化ナトリウムの含量が約0.5重量%以下であり、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素の酸化物の含量が約0.1重量%~約5重量%であり、前記改質Y型分子篩において、全細孔体積が約0.36mL/g~約0.48mL/gであり、全細孔体積に対する、孔径2~100nmを有する二次孔の細孔体積の比率が約20%~約40%であり、前記改質Y型分子篩において、格子定数が約2.440nm~約2.455nmであり、格子崩壊温度が約1060℃以上であり、総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率が約10%以下であり、前記改質Y型分子篩において、強酸酸価のうちL酸価に対するB酸価の比率が約3.5以上であることを特徴とする、接触分解触媒。
【0139】
(B2)前記改質Y型分子篩は、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の比率が約28%~約38%である、項目B1に記載の接触分解触媒。
【0140】
(B3)前記改質Y型分子篩は、総アルミニウムの含量に対する非骨格アルミニウムの含量の比率が約5%~約9.5%であり、n(SiO2)/n(Al2O3)に基づいて算出される骨格におけるアルミナに対するシリカの比が約7~約14である、項目B1に記載の接触分解触媒。
【0141】
(B4)前記改質Y型分子篩の格子崩壊温度は約1065℃~約1085℃である、項目B1に記載の接触分解触媒。
【0142】
(B5)前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうちL酸価に対するB酸価の比率は、ピリジン吸着赤外分光法を用いて350℃において測定する場合、約3.5~約6.5である、項目B1に記載の接触分解触媒。
【0143】
(B6)前記改質Y型分子篩の相対結晶化度は約70%~約80%である、項目B1に記載の接触分解触媒。
【0144】
(B7)800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRDによって測定される前記改質Y型分子篩の相対結晶化度維持率は約38%以上である、項目B1に記載の接触分解触媒。
【0145】
(B8)前記改質Y型分子篩は、該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量が約4.5重量%~約10重量%であり、P2O5に基づいて算出されるリンの含量が約0.1重量%~約6重量%であり、酸化ナトリウムの含量が約0.05重量%~約0.3重量%であり、前記改質Y型分子篩の格子定数は約2.442nm~約2.451nmであり、n(SiO2)/n(Al2O3)に基づいて算出される、前記改質Y型分子篩の骨格におけるアルミナに対するシリカの比は約8.5~約12.6であり、前記希土類はLa、Ce、Pr又はNdを含み、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせを含み、
前記活性元素がガリウムである場合の酸化ガリウムの含量が約0.1重量%~約3重量%であり、又は、前記活性元素がホウ素である場合の酸化ホウ素の含量が約0.5重量%~約5重量%であり、又は、前記活性元素がガリウム及びホウ素である場合の、酸化ガリウム及び酸化ホウ素の合計含量が約0.5重量%~約5重量%である、項目B1~B7のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【0146】
(B9)前記粘土は、カオリン、含水ハロイサイト、モンモリロナイト、硅藻土、ハロイサイト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト又はベントナイトであり、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであり、前記アルミナバインダは、アルミナ、水和アルミナ又はアルミナゾルであり、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせである、項目B1に記載の接触分解触媒。
【0147】
(B10)項目B1~B9のいずれか1項に記載の接触分解触媒を作製する方法であって、改質Y型分子篩を作製するステップと、前記改質Y型分子篩、アルミナバインダ、粘土及び水を含むスラリーを調製するステップと、噴霧乾燥を経て前記接触分解触媒を得るステップと、を含み、
前記改質Y型分子篩の作製は、
NaY分子篩を希土類塩と接触させることによりイオン交換反応を行い、ろ過及び第1洗浄を経た後、イオン交換後の分子篩の酸化ナトリウムの含量がイオン交換後の分子篩のドライベース重量に対して約9.0重量%以下である、当該イオン交換後の分子篩を得るステップ(1)と、
約350℃~約480℃の温度、及び約30体積%~約90体積%の水蒸気の存在下で、前記イオン交換後の分子篩に対して第1焼結を約4.5時間~約7時間行い、緩和水熱超安定改質分子篩を得るステップ(2)と、
前記緩和水熱超安定改質分子篩をSiCl4と接触させて反応させ、任意に第2洗浄及び第2ろ過を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記気相超安定改質分子篩を酸溶液と接触させることにより酸処理を行い、酸処理後の分子篩を得るステップ(4)と、
リン化合物を用いて前記酸処理後の分子篩に対してリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(5)と、
前記リン改質分子篩を、ガリウム及び/又はホウ素である活性元素を含有する溶液と接触させ、乾燥及び第2焼結を経た後、前記改質Y型分子篩を得るステップ(6)と、を含むことを特徴する方法。
【0148】
(B11)前記イオン交換反応は、NaY分子篩を水と混合し、撹拌下で希土類塩及び/又は希土類塩水溶液を添加してイオン交換反応を行った後、ろ過及び洗浄を行う工程を含み、
前記イオン交換反応の条件は、約15℃~約95℃の反応温度と、約30分~約120分の反応時間と、約1:(0.01~0.18):(5~20)である、前記NaY分子篩、希土類塩及び水の重量比と、を含む、項目B10に記載の方法。
【0149】
(B12)前記イオン交換後の分子篩は、格子定数が約2.465nm~約2.472nmであり、希土類酸化物に基づいて算出される当該希土類の含量が約4.5重量%~約13重量%であり、酸化ナトリウムの含量が約4.5重量%~約9.5重量%である、項目B10又はB11に記載の方法。
【0150】
(B13)前記希土類塩は、塩化希土類又は硝酸希土類である、項目B10又はB11に記載の方法。
【0151】
(B14)ステップ(2)は、約380℃~約460℃の温度、及び約40体積%~約80体積%の水蒸気下で、第1焼結を約5時間~約6時間行う処理を含む、項目B10に記載の方法。
【0152】
(B15)前記緩和水熱超安定改質分子篩の格子定数は約2.450nm~約2.462nmであり、前記緩和水熱超安定改質分子篩の含水量は約1重量%以下である、項目B10又はB14に記載の方法。
【0153】
(B16)ステップ(3)において、SiCl4の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記緩和水熱超安定改質分子篩の重量と、の重量比が約(0.1~0.7):1であり、前記接触の反応温度が約200℃~約650℃であり、反応時間が約10分~約5時間であり、前記第2洗浄は、洗浄後の洗浄液中から遊離のNa+、Cl-及びAl3+などのイオンが検出されなくなるまで水洗浄する処理を含み、洗浄条件としては、洗浄液のpHが約2.5~約5.0、洗浄温度が約30℃~約60℃、水の使用量と洗浄前の前記気相超安定改質分子篩の重量との重量比が約(6~15):1であってもよい、項目B10に記載の方法。
【0154】
(B17)ステップ(4)における酸処理の条件としては、約80℃~約99℃の酸処理温度と、約1時間~約4時間の酸処理時間と、有機酸及び/又は無機酸を含む酸溶液と、約(0.001~0.15):(5~20):1である、前記酸溶液のうち酸の重量と前記酸溶液のうち水の重量と前記気相超安定改質分子篩の重量(ドライベース重量に基づいて算出)との重量比と、を含む、項目B10に記載の方法。
【0155】
(B18)ステップ(4)の酸処理は、前記気相超安定改質分子篩と無機酸溶液との第1接触を行ってから、有機酸溶液との第2接触を行う工程を含み、
前記第1接触の条件としては、約60分~約120分の接触時間と、約90℃~約98℃の接触温度と、約(0.01~0.05):(5~20):1である、無機酸溶液のうち無機酸の重量と無機酸溶液のうち水の重量と前記気相超安定改質分子篩の重量(ドライベース重量に基づいて算出)との重量比と、を含み、
前記第2接触の条件としては、約60分~約120分の接触時間と、約90℃~約98℃の接触温度と、約(0.02~0.1):(5~20):1である、有機酸溶液のうち有機酸の重量と有機酸溶液のうち水の重量と前記気相超安定改質分子篩の重量(ドライベース重量に基づいて算出)との重量比と、を含む、項目B10に記載の方法。
【0156】
(B19)前記有機酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸又はサリチル酸であり、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであり、前記無機酸は、リン酸、塩酸、硝酸又は硫酸であり、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせである、項目B10又はB18に記載の方法。
【0157】
(B20)前記リン化合物は、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム又はリン酸水素二アンモニウムであり、又は、それらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせであり、前記リン改質処理は、前記酸処理後の分子篩をリン化合物含有溶液と接触させ、約15℃~約100℃の条件下で約10分~約100分反応させた後、ろ過及び洗浄を行う工程を含み、前記溶液のうちリンの重量(P2O5に基づいて算出)と、前記溶液のうち水の重量と、前記酸処理後の分子篩の重量との重量比が約(0.0005~0.10):(2~5):1である、項目B10に記載の方法。
【0158】
(B21)前記活性元素を含有する溶液は、ガリウム塩水溶液及び/又はホウ素化合物水溶液であり、
前記リン改質分子篩と、活性元素を含有する溶液との接触は、
ガリウム酸化物に基づいて算出されるガリウムの重量と、水の重量と、ドライベースに基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が約(0.001~0.03):(2~3):1であるガリウム塩水溶液に、前記リン改質分子篩を均一に混合した後、約15℃~約40℃において24時間~36時間静置する処理を含むか、
前記リン改質分子篩を約60℃~約99℃まで加熱した後、ホウ素酸化物(ホウ酸、ホウ酸塩、メタホウ酸塩及びポリホウ酸塩からなる群より選択され、又はそれらのうち2つ、3つ若しくは4つからなる組み合わせを含む)に基づいて算出されるホウ素の重量と、水の重量と、ドライベースに基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が約(0.005~0.045):(2.5~5):1である水溶液中で、当該リン改質分子篩をホウ素化合物と約1時間~約2時間接触及び混合させる処理を含むか、
前記リン改質分子篩を約85℃~約95℃に加熱した後、ホウ素酸化物に基づいて算出されるホウ素の重量と、水の重量と、ドライベース重量に基づいて算出される前記リン改質分子篩の重量との重量比が約(0.005~0.03):(2.5~5):1である第1水溶液中で、当該リン改質分子篩をホウ素化合物と約1時間~約2時間接触及び混合させ、ろ過した後、ろ過後の試料分子篩を、ガリウム酸化物に基づいて算出されるガリウムの重量と、水の重量と、トライベース重量に基づいて算出される前記試料分子篩の重量との重量比が約(0.001~0.02):(2~3):1である、ガリウム塩を含有する第2水溶液に均一に混合し、約15℃~約40℃において約24時間~約36時間静置する処理を含む、項目B10に記載の方法。
【0159】
(B22)ステップ(6)において、前記第2焼結の条件として、約350℃~約600℃の焼結温度と、約1時間~約5時間の焼結時間とを含む、項目B10に記載の方法。
【0160】
(B23)原料炭化水素の接触分解反応における、項目B1~B9のいずれか1項に記載の接触分解触媒の使用。
【0161】
(B24)水添LCOを処理するための接触分解方法であって、接触分解の条件下で水添LCOを項目B1~B9のいずれか1項に記載の触媒と接触させるステップを含み、前記接触分解の条件は、約500℃~約610℃の反応温度と、約2h-1~約16h-1である単位時間当たりの重量空間速度と、約3~約10である油に対する触媒の重量比と、を含む接触分解方法。
【0162】
〔実施例〕
以下の実施例において本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0163】
なお、以下の実施例及び比較例では、NaY分子篩(NaYゼオライトとも称する)は、中国石化触媒有限公司の斉魯支社から入手した、酸化ナトリウムの含量13.5重量%、骨格におけるアルミナに対するシリカの比(SiO2/Al2O3モル比)4.6、格子定数2.470nm、相対結晶化度90%のものである。塩化希土類、硝酸希土類及び硝酸ガリウムは、北京化学工場製の化学的に純粋な試薬である。擬似ベーマイトは、山東アルミニウム工場製の固形物の含量が61重量%の工業製品である。カオリンは、蘇州中国カオリン公司製の固形物の含量が76重量%の接触分解触媒用カオリンである。アルミナゾルは、中国石化触媒有限公司の斉魯支社から入手したアルミナの含量21重量%のものである。
【0164】
比較例及び実施例で用いた化学試薬は、特段に説明しない限り、化学的純粋という規格の市販品である。
【0165】
(分析方法)
各比較例及び実施例において、分子篩の元素含有量はX線蛍光分光法により測定し、分子篩の格子定数、相対結晶化度はRIPP145-90、RIPP146-90標準法(『石油化学分析法(RIPP試験法)』,Cuiding YANGら,科学出版社,1990年9月出版,第412頁~第415頁を参照)に準じ、X線粉末回析法(XRD)により測定した。
【0166】
分子篩の骨格におけるアルミナに対するシリカの比は下記式に従って算出した。
【0167】
骨格SiO2/Al2O3モル比=(2.5858-a0)×2/(a0-2.4191)
式中、a0は格子定数であり、単位はnmである。
【0168】
分子篩における総アルミナに対する総シリカの比は、X線蛍光分光法によって測定されたケイ素及びアルミニウム元素の含量から算出する。骨格アルミニウムと総アルミニウムとの比率は、XRD法によって測定された骨格におけるアルミナに対するシリカの比、及び、XRF法によって測定された総アルミナに対する総シリカの比から算出する。これにより、非骨格アルミニウムの含量と、総アルミニウムの含量との比率も算出することができる。
【0169】
格子崩壊温度は、示差熱分析法(DTA)により測定した。
【0170】
各比較例及び実施例において、分子篩の酸中心のタイプ及び酸価は、ピリジン吸着赤外線法により測定した。すなわち、実験機器として米国Bruker社製のIFS113V型FT-IR(フーリエ変換赤外)分光計を用い、ピリジン吸着赤外分光法により350℃において酸価を測定した。実験方法は下記の通りである。自立サンプルタブレットを赤外分光計のin-situセルに配置して密封した。試料を400℃まで熱し、10-3Paまで減圧し、温度を2時間維持することにより、試料に吸着したガス分子を除去した。試料を室温まで冷却し、圧力2.67Paのピリジン蒸気を導入し、その条件で試料を30分間維持することにより吸着平衡を得た。その後、試料を350℃まで熱し、10-3Paまで減圧し、30分間脱着した。その後、試料を室温まで冷却し、走査波数の範囲が1400cm-1~1700cm-1の分光分析に供し、350℃での脱着を経た試料のピリジン吸着赤外スペクトルを得た。ピリジン吸着赤外スペクトルの、1540cm-1及び1450cm-1における特徴的吸収ピークの強度に基づき、分子篩における強いブレンステッド酸の酸中心(B酸中心)及びルイス酸中心(L酸中心)の相対量を算出した。
【0171】
各比較例及び実施例において、二次孔の細孔体積の測定方法は下記の通りである。RIPP151-90標準法(『石油化学分析法(RIPP試験法)』,Cuiding YANGら,科学出版社,1990年9月出版,第424頁~第426頁を参照)に準じ、吸着等温線に基づいて分子篩の全細孔体積を測定した。続いて、Tプロット法(T-plot法)により、吸着等温線に基づいて分子篩のマイクロ細孔の体積を測定し、全細孔体積からマイクロ細孔の体積を減算することにより、二次孔の細孔体積を得た。
【0172】
以下の実施例1~8は、本発明の改質Y型分子篩及び接触分解触媒を作製する実施例である。
【0173】
(実施例1)
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の水が入っている一次交換タンクに投入し、25℃において均一に撹拌した。続いて、600LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークを連続的にフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が7.0重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が8.8重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、試料雰囲気温度390℃、50%水蒸気(雰囲気中に50体積%水蒸気を含有)の条件下で6時間焼結することによって改質した。続いて、当該試料分子篩を焼結炉に導入し、試料雰囲気温度500℃、乾燥空気雰囲気(水蒸気の含量が1体積%未満)下で、含水量が1重量%未満となるように2.5時間焼結することによって焼結乾燥処理を行い、格子定数が2.455nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩をそのまま連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.5:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が400℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、濃度10重量%の塩酸0.6m3をゆっくり添加し、90℃まで昇温した後、60分間撹拌した。さらに、140kgのクエン酸を添加し、90℃において60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.04となり且つ水と分子篩との重量比が2.5となるような分子篩添加量で、リン酸アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、50℃の条件下で60分間反応させ、ろ過及び洗浄した。続いて、ガリウム成分を含浸させるために当該ろ過ケークを、71.33kgのGa(NO3)3・9H2Oが溶解された溶液4000Lに撹拌下で添加し、改質Y分子篩と、Ga(NO3)3を含有した溶液とを均一に撹拌した後、室温下で静置して24時間含浸させた。続いて、改質Y分子篩とGa(NO3)3とを含有したスラリーをさらに20分間撹拌することによって、これらを均一に混合させた。続いて、当該混合試料を回転式蒸発器に移し、均一加熱となるように回転蒸発をゆっくり行った後、蒸発後の試料をマッフル炉に投入して550℃において2.5時間焼結し、二次孔を豊富に含む複合改質Y分子篩(SZ1と表記する)を得た。
【0174】
表1-1は、SZ1の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0175】
暴露状態のSZ1を800℃、大気圧下、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ1のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0176】
なお、相対結晶化度維持率=(エージング後の試料の相対結晶化度/初期の試料の相対結晶化度)×100%。
【0177】
アルミナの含量が21重量%のアルミナゾル714.5gを1565.5gの脱イオン水に投入し、撹拌下で、固形物の含量が76重量%のカオリン2763gを添加し、60分間分散させた。アルミナの含量61重量%の擬似ベーマイト2049gを8146gの脱イオン水に投入し、撹拌状態下で、濃度36%の塩酸210mlを添加し、60分間酸性化させた。続いて、これに上記分散後のカオリンスラリーを添加し、微細化されたSZ1分子篩1500g(ドライベース)をさらに添加し、均一に撹拌した後、噴霧乾燥及び洗浄処理を行い、乾燥を経て、触媒(SC1と表記する)を得た。得られたSC1触媒には、SZ1分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0178】
(実施例2)
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の脱イオン水が入っている一次交換タンクに投入し、90℃において均一に撹拌した。続いて、800LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークをフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が5.5重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が11.3重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、温度(雰囲気温度)450℃、80%水蒸気雰囲気の条件下で5.5時間焼結した。続いて、当該試料分子篩を焼結炉に導入し、焼結温度500℃、乾燥空気である焼結雰囲気下で、分子篩含水量が1重量%未満となるように2時間焼結することによって焼結乾燥処理を行い、格子定数が2.461nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩をそのまま連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.25:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が490℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の脱イオン水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、濃度7重量%の硫酸溶液0.9m3をゆっくり添加し、93℃まで昇温した後、80分間撹拌した。続いて、70kgのクエン酸及び50kgの酒石酸を添加し、93℃において70分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.03となり且つ水と分子篩との重量比が3.0となるような分子篩添加量で、リン酸水素二アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、60℃の条件下で50分間反応させ、ろ過及び洗浄した。続いて、ガリウム成分を含浸させるために当該ろ過ケークを、133.74kgのGa(NO3)3・9H2Oが溶解された溶液4500Lに撹拌下で添加し、改質Y分子篩と、Ga(NO3)3を含有した溶液とを均一に撹拌した後、室温下で静置して24時間含浸させた。続いて、改質Y分子篩とGa(NO3)3とを含有したスラリーをさらに20分間撹拌することによって、これらを均一に混合させた。続いて、当該混合試料を回転式蒸発器に移し、均一加熱となるように回転蒸発をゆっくり行った後、蒸発後の試料をマッフル炉に投入して550℃において3時間焼結し、二次孔を豊富に含む複合改質Y分子篩(SZ2と表記する)を得た。
【0179】
表1-1は、SZ2の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0180】
暴露状態のSZ2を800℃、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ2のエージング前後の分子篩結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0181】
実施例1の作製方法に準じ、接触分解触媒を作製した。すなわち、接触分解触媒の通常の作製方法を用い、SZ2分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した。作製した接触分解触媒をSC2と表記する。得られたSC2触媒には、SZ2分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0182】
(実施例3)
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の脱イオン水が入っている一次交換タンクに投入し、95℃において均一に撹拌した。続いて、570LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークを連続的にフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が7.5重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が8.5重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、焙焼温度470℃、70%水蒸気含有雰囲気の水熱改質条件下で5時間焼結することによって水熱改質した。続いて、当該試料分子篩を焼結炉に導入し、焼結温度500℃、乾燥空気である焼結雰囲気下で、分子篩含水量が1重量%未満となるように1.5時間焼結することによって焼結乾燥処理を行い、格子定数が2.458nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩を連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.45:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が400℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の脱イオン水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、硝酸濃度5重量%の硝酸溶液1.2m3をゆっくり添加し、95℃まで昇温した後、90分間撹拌した。続いて、90kgのクエン酸及び40kgのシュウ酸を添加し、93℃において70分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.015となり且つ水と分子篩との重量比が2.8となるような分子篩添加量で、リン酸アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、70℃の条件下で30分間反応させ、ろ過及び洗浄した。続いて、ガリウム成分を含浸させるために当該ろ過ケークを、178.32kgのGa(NO3)3・9H2Oが溶解された溶液4800Lに撹拌下で添加し、改質Y分子篩と、Ga(NO3)3を含有した溶液とを均一に撹拌した後、室温下で静置して24時間含浸させた。続いて、改質Y分子篩とGa(NO3)3とを含有したスラリーをさらに20分間撹拌することによって、これらを均一に混合させた。続いて、当該混合試料を回転式蒸発器に移し、均一加熱となるように回転蒸発をゆっくり行った後、蒸発後の試料をマッフル炉に投入して600℃において2時間焼結し、二次孔を豊富に含む複合改質Y分子篩(SZ3と表記する)を得た。
【0183】
表1-1は、SZ3の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0184】
暴露状態のSZ3を800℃、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ3のエージング前後の分子篩結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0185】
実施例1の作製方法に準じ、接触分解触媒を作製した。すなわち、接触分解触媒の通常の作製方法を用い、SZ3分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した。作製した接触分解触媒をSC3と表記する。得られたSC3触媒には、SZ3分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0186】
(実施例4)
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の水が入っている一次交換タンクに投入し、25℃において均一に撹拌した。続いて、600LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークをフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が7.0重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が8.8重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、温度390℃、50%水蒸気(雰囲気中に50体積%水蒸気を含有)下で6時間焼結し、さらに温度500℃、乾燥空気雰囲気(水蒸気の含量が1体積%未満)下で、含水量が1重量%未満となるように2.5時間焼結した。これにより、格子定数が2.455nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩をそのまま連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.5:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が400℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、濃度10重量%の塩酸0.6m3をゆっくり添加し、90℃まで昇温した後、60分間撹拌し、ろ過及び洗浄した。さらに、140kgのクエン酸を添加し、90℃において60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.004となり且つ水と分子篩との重量比が2.5となるような分子篩添加量で、リン酸アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、50℃の条件下で60分間反応させ、ろ過及び洗浄した。その後、ろ過ケークを交換タンクに投入し、5m3の脱イオン水を添加して当該分子篩スラリーを65℃まで加熱した後、12.46kgのホウ酸を添加して1時間撹拌し、ろ過した。続いて、ガリウム成分を含浸させるために当該ろ過ケークを、42.8kgのGa(NO3)3・9H2Oが溶解された溶液4000Lに撹拌下で添加し、改質Y分子篩と、Ga(NO3)3を含有した溶液とを均一に撹拌した後、室温下で静置して24時間含浸させた。続いて、改質Y分子篩とGa(NO3)3とを含有したスラリーをさらに20分間撹拌することによって、これらを均一に混合させた。続いて、当該スラリーを回転式蒸発器に移し、水浴下で回転蒸発乾燥を行った後、蒸発後の試料をマッフル炉に投入して550℃において2.5時間焼結し、改質Y分子篩(SZ4と表記する)を得た。
【0187】
表1-1は、SZ4の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0188】
暴露状態のSZ4を800℃、大気圧下、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ4のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0189】
実施例1の作製方法に準じ、接触分解触媒を作製した。すなわち、接触分解触媒の通常の作製方法を用い、SZ4分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した。作製した接触分解触媒をSC4と表記する。得られたSC4触媒には、SZ4分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0190】
〔実施例5〕
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の水が入っている一次交換タンクに投入し、25℃において均一に撹拌した。続いて、600LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークを連続的にフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が7.0重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が8.8重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、試料雰囲気温度390℃、50%水蒸気(雰囲気中に50体積%水蒸気を含有)の条件下で6時間焼結することによって改質した。続いて、当該試料分子篩を焼結炉に導入し、試料雰囲気温度500℃、乾燥空気雰囲気(水蒸気の含量が1体積%未満)下で、含水量が1重量%未満となるように2.5時間焼結することによって焼結乾燥処理を行い、格子定数が2.455nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩をそのまま連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.5:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が400℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、濃度10重量%の塩酸0.6m3をゆっくり添加し、90℃まで昇温した後、60分間撹拌した。さらに、140kgのクエン酸を添加し、90℃において60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.04となり且つ水と分子篩との重量比が2.5となるような分子篩添加量で、リン酸アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、50℃の条件下で60分間反応させ、ろ過及び洗浄した。その後、ろ過ケークを交換タンクに投入し、5000Lの脱イオン水を添加して当該分子篩スラリーを65℃まで加熱した後、17.8kgのホウ酸(B2O3:分子篩=1:100)を添加して1時間撹拌し、ろ過した。ろ過後の分子篩を130℃において5時間乾燥してから、400℃の焼結条件下で2.5時間焼結し、複合改質Y分子篩(SZ5と表記する)を得た。
【0191】
表1-1は、SZ5の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0192】
暴露状態のSZ5を800℃、大気圧下、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ5のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。なお、相対結晶化度維持率=(エージング後の試料の相対結晶化度/初期の試料の相対結晶化度)×100%。
【0193】
アルミナの含量21重量%のアルミナゾル714.5gを1565.5gの脱イオン水に投入し、撹拌下で、固形物の含量が76重量%のカオリン2763gを添加し、60分間分散させた。アルミナの含量61重量%の擬似ベーマイト2049gを8146gの脱イオン水に投入し、撹拌状態下で、濃度36%の塩酸210mlを添加し、60分間酸性化させた。続いて、これに上記分散後のカオリンスラリーを添加し、微細化されたSZ5分子篩1500g(ドライベース)をさらに添加し、均一に撹拌した後、噴霧乾燥及び洗浄処理を行い、乾燥を経て、触媒(SC5と表記する)を得た。得られたSC5触媒には、SZ5分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0194】
〔実施例6〕
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の脱イオン水が入っている一次交換タンクに投入し、95℃において均一に撹拌した。続いて、570LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークを連続的にフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が7.5重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が8.5重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、焙焼温度470℃、70%水蒸気含有雰囲気の水熱改質条件下で5時間焼結することによって水熱改質した。続いて、当該試料分子篩を焼結炉に導入し、焼結温度500℃、乾燥空気である焼結雰囲気下で、分子篩含水量が1重量%未満となるように1.5時間焼結することによって焼結乾燥処理を行い、格子定数が2.458nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩を連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.45:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が400℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の脱イオン水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、硝酸濃度5重量%の硝酸溶液1.2m3をゆっくり添加し、95℃まで昇温した後、90分間撹拌した。続いて、90kgのクエン酸及び40kgのシュウ酸を添加し、93℃において70分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.015となり且つ水と分子篩との重量比が2.8となるような分子篩添加量で、リン酸アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、70℃の条件下で30分間反応させ、ろ過及び洗浄した。その後、ろ過ケークを交換タンクに投入し、5000Lの脱イオン水を添加して当該分子篩スラリーを60℃~99℃に加熱した後、71.2kgのホウ酸(B2O3:分子篩=4:100)を添加して1時間撹拌し、ろ過した。ろ過後の分子篩を130℃において5時間乾燥してから、500℃の焼結条件下で2時間焼結し、複合改質超安定Y分子篩(SZ6と表記する)を得た。
【0195】
表1-1は、SZ6の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0196】
暴露状態のSZ6を800℃、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ6のエージング前後の分子篩結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0197】
実施例1の作製方法に準じ、接触分解触媒を作製した。すなわち、接触分解触媒の通常の作製方法を用い、SZ6分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した。作製した接触分解触媒をSC6と表記する。得られたSC6触媒には、SZ6分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0198】
以下の比較例1~6は、本発明ではない改質Y型分子篩及び接触分解触媒を作製する実施例である。
【0199】
〔比較例1〕
2000gのNaY分子篩(ドライベース)を20Lの脱イオン水に投入し、撹拌して均一に混合させた後、1000gの(NH4)2SO4を添加して撹拌し、90℃~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過及び洗浄した。ろ過ケークを120℃において乾燥した後、水熱改質処理(温度650℃、100%水蒸気下で5時間焼結する)を行った。続いて、これを20Lの脱イオン水に投入して撹拌し、均一に混合させた後、1000gの(NH4)2SO4を添加して撹拌し、90℃~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過及び洗浄した。ろ過ケークを120℃において乾燥した後、2回目の水熱改質処理(温度650℃、100%水蒸気下で5時間焼結する)を行った。これにより、2回のイオン交換及び2回の水熱超安定化を経た希土類不含有水熱超安定Y型分子篩(DZ1と表記する)を得た。
【0200】
表1-2は、DZ1の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0201】
暴露状態のDZ1を800℃、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ1のエージング前後の分子篩結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0202】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ1分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1に記載の方法を参照)。作製した接触分解触媒をDC1と表記する。得られたDC1触媒には、DZ1分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0203】
〔比較例2〕
2000gのNaY分子篩(ドライベース)を20Lの脱イオン水に投入し、撹拌して均一に混合させた後、1000gの(NH4)2SO4を添加して撹拌し、90℃~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過及び洗浄した。ろ過ケークを120℃において乾燥した後、温度650℃、100%水蒸気の水熱改質条件下で5時間焼結することによって水熱改質処理を行った。続いて、これを20Lの脱イオン水に投入して撹拌し、均一に混合させた後、200mlのRE(NO3)3溶液(溶液中、RE2O3に基づいて算出される希土類濃度が319g/L)及び900gの(NH4)2SO4を添加して撹拌し、90℃~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過及び洗浄した。ろ過ケークを120℃において乾燥した後、2回目の水熱改質処理(温度650℃、100%水蒸気下で5時間焼結する)を行った。これにより、2回のイオン交換及び2回の水熱超安定化を経た希土類含有水熱超安定Y型分子篩(DZ2と表記する)を得た。
【0204】
表1-2は、DZ2の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0205】
暴露状態のDZ2を800℃、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ2のエージング前後の分子篩結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0206】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ2分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1の作製方法に準じて)。作製した接触分解触媒をDC2と表記する。得られたDC2触媒には、ドライベースで、DZ2分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0207】
〔比較例3〕
2000kgのNaY分子篩(ドライベース)を20m3の水に投入し、撹拌して均一に混合させた後、650LのRE(NO3)3溶液(319g/L)を添加して撹拌し、90℃~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過及び洗浄した。ろ過ケークをフラッシュ乾燥炉及び焼結炉に連続的に送り込み、焼結温度500℃、乾燥空気である焼結雰囲気、焼結時間2時間の条件下で、含水量が1重量%未満となるように焼結乾燥処理を行った。続いて、乾燥後の試料分子篩を連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.4:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が580℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、濃度5重量%の硝酸1.2m3をゆっくり添加し、95℃まで昇温した後、90分間撹拌した。続いて、90kgのクエン酸及び40kgのシュウ酸を添加し、93℃において70分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.015となり且つ水と分子篩との重量比が2.8となるような分子篩添加量で、リン酸アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、70℃の条件下で30分間反応させ、ろ過及び洗浄、ベーキング乾燥を行った。得られた分子篩はDZ3と表記する。
【0208】
表1-2は、DZ3の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0209】
暴露状態のDZ3を800℃、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ3のエージング前後の分子篩結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0210】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ3分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1に記載の方法を参照)。作製した接触分解触媒をDC3と表記する。得られたDC3触媒には、DZ3分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0211】
〔比較例4〕
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の水が入っている一次交換タンクに投入し、25℃において均一に撹拌した。続いて、600LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークを連続的にフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が7.0重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が8.8重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、試料雰囲気温度390℃、50%水蒸気(雰囲気中に50体積%水蒸気を含有)の条件下で6時間焼結することによって改質した。続いて、当該試料分子篩を焼結炉に導入し、試料雰囲気温度500℃、乾燥空気雰囲気(水蒸気の含量が1体積%未満)下で、含水量が1重量%未満となるように2.5時間焼結することによって焼結乾燥処理を行い、格子定数が2.455nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩をそのまま連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.5:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が400℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、濃度10重量%の塩酸0.6m3をゆっくり添加し、90℃まで昇温した後、60分間撹拌した。さらに、140kgのクエン酸を添加し、90℃において60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.04となり且つ水と分子篩との重量比が2.5となるような分子篩添加量で、リン酸アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、50℃の条件下で60分間反応させ、ろ過及び洗浄した。ろ過ケークを120℃において乾燥し、改質Y分子篩(DZ4と表記する)を得た。
【0212】
表1-2は、DZ4の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0213】
暴露状態のDZ4を800℃、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ4のエージング前後の分子篩結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0214】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ4分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1に記載の方法を参照)。作製した接触分解触媒をDC4と表記する。得られたDC4触媒には、DZ4分子篩が30重量%、カオリンが42重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0215】
〔比較例5〕
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の水が入っている一次交換タンクに投入し、25℃において均一に撹拌した。続いて、600LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークを連続的にフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が7.0重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が8.8重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、試料雰囲気温度390℃、50%水蒸気(雰囲気中に50体積%水蒸気を含有)の条件下で6時間焼結することによって改質した。続いて、当該試料分子篩を焼結炉に導入し、試料雰囲気温度500℃、乾燥空気雰囲気(水蒸気の含量が1体積%未満)下で、含水量が1重量%未満となるように2.5時間焼結することによって焼結乾燥処理を行い、格子定数が2.455nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩をそのまま連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.5:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が400℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を気体・固体分離装置に供して分離を行った後、当該試料分子篩2000kg(ドライベース重量)を、予め20m3の水が投入された二次交換タンクに送り込み、均一に撹拌した。続いて、濃度10重量%の塩酸0.6m3をゆっくり添加し、90℃まで昇温した後、60分間撹拌した。さらに、140kgのクエン酸を添加し、90℃において60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄した。続いて、分子篩のろ過ケークを、リン(P2O5に基づいて算出)と分子篩との重量比が0.04となり且つ水と分子篩との重量比が2.5となるような分子篩添加量で、リン酸アンモニウム含有溶液中に直接的に添加し、50℃の条件下で60分間反応させ、ろ過及び洗浄した。続いて、ガリウム成分を含浸させるために当該ろ過ケークを、491kgのGa(NO3)3・9H2Oが溶解された溶液4000Lに撹拌下で添加し、改質Y分子篩と、Ga(NO3)3を含有した溶液とを均一に撹拌した後、室温下で静置し、24時間含浸させた。続いて、改質Y分子篩とGa(NO3)3とを含有したスラリーをさらに20分間撹拌することによって、これらを均一に混合させた。続いて、当該混合試料を回転式蒸発器に移し、均一加熱となるように回転蒸発をゆっくり行った後、蒸発後の試料をマッフル炉に投入して550℃において2.5時間焼結し、二次孔を豊富に含む複合改質Y分子篩(DZ5と表記する)を得た。
【0216】
表1-2は、DZ5の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0217】
暴露状態のDZ5を800℃、大気圧下、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ5のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0218】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ5分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1に記載の方法を参照)。作製した接触分解触媒をDC5と表記する。得られたDC5触媒には、DZ5分子篩が30重量%、カオリン42が重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0219】
〔比較例6〕
骨格SiO2/Al2O3が4.6のNaY型ゼオライト(酸化ナトリウムの含量13.5重量%、中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社から入手)2000kg(ドライベース重量)を、20m3の水が入っている一次交換タンクに投入し、25℃において均一に撹拌した。続いて、600LのRECl3溶液(RE2O3に基づいて算出されるRECl3溶液中の希土類濃度が319g/L)を添加し、60分間撹拌した後、ろ過及び洗浄し、ろ過ケークをフラッシュ乾燥炉に送り込んで乾燥した。これにより、酸化ナトリウムの含量が7.0重量%まで低減し、格子定数が2.471nm、希土類酸化物に基づいて算出される希土類の含量が8.8重量%であり、通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得た。続いて、これを焼結炉に送り込み、温度390℃、50%水蒸気(雰囲気中に50体積%水蒸気を含有)下で6時間焼結し、さらに温度500℃、乾燥空気雰囲気(水蒸気の含量が1体積%未満)下で、含水量が1重量%未満となるように2.5時間焼結した。これにより、格子定数が2.455nmまで低減したY型分子篩を得た。続いて、格子定数が低減した当該Y型試料分子篩をそのまま連続式気相超安定反応器に送り込み、気相超安定反応を行った。なお、分子篩について、連続式気相超安定反応器内における気相超安定反応プロセス、及び、その後工程であるテールガス吸收プロセスは、中国特許出願公報CN103787352Aに開示の実施例1の方法に準じ、SiCl4:Y型ゼオライトの重量比が0.5:1、分子篩投入量が800kg/h、反応温度が400℃の条件下で行った。気相超安定反応後の試料分子篩を20m3の脱イオン水で洗浄し、ろ過した。続いて、ガリウム成分を含浸させるために当該ろ過ケークを、71.33kgのGa(NO3)3・9H2Oが溶解された溶液4000Lに撹拌下で添加し、改質Y分子篩と、Ga(NO3)3を含有した溶液とを均一に撹拌した後、室温下で静置して24時間含浸させた。続いて、改質Y分子篩とGa(NO3)3とを含有したスラリーをさらに20分間撹拌することによって、これらを均一に混合させた。続いて、当該混合試料を回転式蒸発器に移し、均一加熱となるように回転蒸発をゆっくり行った後、蒸発後の試料をマッフル炉に投入して550℃において2.5時間焼結し、製品として改質Y分子篩(DZ6と表記する)を得た。
【0220】
表1-2は、DZ6の組成、格子定数、相対結晶化度、骨格におけるアルミナに対するケイ素の比、格子崩壊温度、比表面積、全細孔体積、二次孔の細孔体積、及び、全細孔体積に対する、孔径2nm~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率を示している。
【0221】
暴露状態のDZ6を800℃、大気圧下、100体積%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ6のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0222】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ6分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリーとし、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1に記載の方法を参照)。作製した接触分解触媒をDC6と表記する。得られたDC6触媒には、DZ6分子篩が30重量%、カオリン42が重量%、擬似ベーマイトが25重量%、アルミナゾルが3重量%含まれていた。
【0223】
〔比較例7〕
本比較例は、中国特許出願公開CN104560187Aの実施例1に記載の従来のFCC触媒を採用した。これを触媒DC7と表記する。
【0224】
〔測定例1~6〕
実施例1~6で得られた接触分解触媒の各々について、接触分解反応の性能を測定した。
【0225】
水添LCOの処理のための分解性能の評価は、SC1~SC6触媒を800℃、100体積%水蒸気下で12時間エージングしてから、小型の固定流動床式反応器(ACE)において評価した。なお、原料油としてはSJZH LCO(水添LCO;性質は表3の通り)を用い、反応温度は500℃とした。評価結果は表4-1に示す。
【0226】
なお、LCO有効転化率(%)=100-ディーゼル油の収率-ドライガス収率-コークス収率-重油収率。
【0227】
〔比較測定例1~7〕
比較例1~6の方法で作製された接触分解触媒DC1~DC6、及び比較例7の従来のFCC触媒DC7の各々について、接触分解反応の性能を測定した。
【0228】
DC1~DC7触媒を800℃、100体積%水蒸気下で12時間エージングしてから、小型の固定流動床式反応器(ACE)において、水添LCOの処理のための接触分解反応の性能を評価した。評価方法は測定例1の通りであり、ACE実験に供する原料の性質は表3の通りである。評価結果は表4-2に示す。
【0229】
なお、LCO有効転化率(%)=100-ディーゼル油の収率-ドライガス収率-コークス収率-重油収率。
【0230】
【0231】
【0232】
表1-1及び表1-2からわかるように、本発明において提供される高安定性の改質Y型分子篩は、酸化ナトリウムの含量が低く、分子篩のアルミナに対するケイ素の比が高い場合の非骨格アルミニウムの含量が少なく、全細孔体積に対する、分子篩中の孔径2.0nm~100nm二次孔の細孔体積の百分率が高く、且つ、B酸/L酸(強いB酸の酸価とL酸の酸価との比)が高く、分子篩の格子定数が小さく希土類の含量が高い場合の結晶化度の測定値が高く、高熱安定性を有するという各優れた点を兼ね備えている。
【0233】
【0234】
表2からわかるように、本発明において提供される改質Y型分子篩を暴露状態で800℃、17時間の苛烈な条件下でエージングした後でも、試料分子篩は高い相対結晶化度維持率を有する。これは、本発明において提供される改質Y型分子篩が高水熱安定性を有することを意味する。
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
表4-1及び表4-2に示した結果からわかるように、本発明において提供される接触分解触媒は、非常に高い水熱安定性、明らかなより低いコークス選択性、明らかなより高いガソリン収率を有し、且つ、ガソリン中のBTX(ベンゼン+トルエン+キシレン)の収率が顕著に向上する。
【0239】
以上、本発明における好ましい実施形態を詳細説明した。但し、本発明は上述した実施形態の具体的な細部に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本発明の技術的構成に対して種々の簡単な変形を施すことができる。これら簡単な変形も全て本発明の保護範囲に含まれる。
【0240】
なお、上述した具体的な実施形態において説明された各々の具体的な技術的特徴は、矛盾が生じない範囲で、任意の好適な方式によって組み合わせることができる。但し、不要な重複を避けるために、本開示では実施可能な各種の組み合わせについて繰り返して説明しない。また、本発明の思想から逸脱しない限り、本開示における様々な異なる実施形態同士を任意に組み合わせることもできる。当該組み合わせも同様に本発明の開示内容と理解されるべきである。