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特許7394116改質Y型分子篩、それを含む接触分解触媒、及びそれらの作製と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】改質Y型分子篩、それを含む接触分解触媒、及びそれらの作製と応用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/24 20060101AFI20231130BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20231130BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231130BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231130BHJP
   B01J 37/28 20060101ALI20231130BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C01B39/24
B01J29/08 M
B01J35/10 301A
B01J37/08
B01J37/28
C10G11/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021509150
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2019101513
(87)【国際公開番号】W WO2020038347
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】201810948782.X
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810949445.2
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】沙昊
(72)【発明者】
【氏名】周靈萍
(72)【発明者】
【氏名】袁帥
(72)【発明者】
【氏名】張蔚琳
(72)【発明者】
【氏名】陳振宇
(72)【発明者】
【氏名】許明徳
(72)【発明者】
【氏名】田輝平
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102744092(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101745418(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107973314(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1597850(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107971011(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107971017(CN,A)
【文献】特表2007-509833(JP,A)
【文献】特表2008-531263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00-39/54
B01J 29/00-29/90
B01J 35/10
B01J 37/08
B01J 37/28
C10G 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質Y型分子篩であって、
該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される希土類含量が4~11wt%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウム含量が0.7wt%以下であり、酸化亜鉛に基づいて算出される亜鉛含量が0.5~5wt%であり、Pに基づいて算出されるリン含量が0.05~10wt%であり、
SiO/Alモル比に基づく骨格シリカ・アルミナ比が7~14であり、
アルミニウム総含量に対する非骨格アルミニウム含量の百分率が13~19%であり、
全細孔体積に対する、孔径2~100nmの二次孔の細孔体積の百分率が15~30%である、改質Y型分子篩。
【請求項2】
前記改質Y型分子篩は、
前記改質Y型分子篩の全細孔体積が0.33~0.39mL/gである特性と、
前記改質Y型分子篩の格子定数が2.440~2.455nmである特性と
記改質Y型分子篩において、全細孔体積に対する、孔径2~100nmの二次孔の細孔体積の百分率が20~30%である特性と、
ピリジン吸着赤外分光法により350℃で測定した前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率が3.50以上である特性と、
前記改質Y型分子篩の格子崩壊温度が1050℃以上である特性と、
前記改質Y型分子篩の相対結晶化度が60%以上である特性と、
800℃、常圧、100体積%水蒸気雰囲気下で17時間エージングした後の前記改質Y型分子篩の相対結晶化度維持率が35%以上である特性と、
のうち1つ以上の特性を有する、請求項1に記載の改質Y型分子篩。
【請求項3】
前記改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、前記改質Y型分子篩の希土類含量が4.5~10wt%、ナトリウム含量が0.4~0.6wt%、リン含量が0.1~6wt%であり、
格子定数が2.440~2.453nmであり、
骨格シリカ・アルミナ比が8.5~12.6である、請求項1又は2に記載の改質Y型分子篩。
【請求項4】
改質Y型分子篩を作製する方法であって、
NaY分子篩を希土類塩溶液と接触させてイオン交換反応を行い、イオン交換後の分子篩を得るステップ(1)と、
前記イオン交換後の分子篩に水熱超安定改質処理を施し、水熱超安定改質分子篩を得るステップであって、前記水熱超安定改質処理は、350~480℃の温度、及び30~90体積%の水蒸気雰囲気下で4.5~7h焼結することにより行われる、ステップ(2)と、
前記水熱超安定改質分子篩をリン化合物と接触させてリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記リン改質分子篩をガス状態のSiClと接触させて反応させることで気相超安定改質を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(4)と、
前記気相超安定改質分子篩を亜鉛塩溶液に浸漬し、前記改質Y型分子篩を得るステップ(5)と、を含む、方法。
【請求項5】
前記ステップ(1)は、水溶液中でNaY分子篩を希土類塩と接触させることでイオン交換反応を行うステップをさらに含み、
前記イオン交換反応の条件は
5~95℃の交換温度と
0~120分間の交換時間と
:(0.01~0.18):(5~15)である、ドライベースに基づいて算出される前記NaY分子篩の質量と、希土類酸化物に基づいて算出される希土類塩の質量と、水の質量との質量比と、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(3)において、リン改質処理の温度が15~100℃、時間が10~100分間である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記リン改質処理に用いる前記リン化合物が、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、およびリン酸水素二アンモニウムからなる群より選ばれる1つ又は複数である、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(4)において、反応温度が200~650℃、反応時間が10分間~5時間、SiClの質量と、ドライベースに基づいて算出される前記リン改質分子篩の質量との質量比が(0.1~0.7):1である、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(5)は、10~60℃の浸漬温度で浸漬した後の分子篩を、350~600℃の焼結温度、1~4時間の焼結時間で焼結するステップをさらに含む、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
接触分解触媒であって、
当該触媒のドライベース重量に対し、10~50wt%の改質Y型分子篩、バインダ及び粘土を含み、
前記改質Y型分子篩は、請求項1~3のいずれか1項に記載の改質Y型分子篩である、接触分解触媒。
【請求項11】
ドライベースに基づいて算出するとき、当該触媒の重量に対し、10~50wt%の前記改質Y型分子篩、10~40wt%のバインダ、及び10~80wt%の粘土を含む、請求項10に記載の接触分解触媒。
【請求項12】
前記粘土は、カオリン、含水ハロイサイト、モンモリロナイト、硅藻土、ハロイサイト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト、ベントナイト、及びそれらによる任意の組み合わせからなる群より選ばれる、請求項10又は11に記載の接触分解触媒。
【請求項13】
前記バインダは、アルミナ、水和アルミナ、アルミナゾル、及びそれらによる任意の組み合わせからなる群より選ばれるアルミナバインダであり、且つバインダ含量がアルミナに基づいて算出される含量である、請求項10~12のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項14】
原料炭化水素の接触分解反応における、請求項1~3のいずれか1項に記載の改質Y型分子篩の応用であって、
接触分解の条件下で前記原料炭化水素を、前記改質Y型分子篩を含む接触分解触媒と接触させる処理を含む、応用。
【請求項15】
前記原料炭化水素は、水添軽質循環油であり、
前記接触分解の条件は、500~610℃の反応温度と、2~16h-1である単位時間あたりの重量空間速度と、3~10のオイルに対する触媒の重量比とを含む、請求項14に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互援用】
【0001】
本願は、出願人が2018年8月20日に中国特許庁に提出した、出願番号201810949445.2、発明の名称「改質Y型分子篩及びその作製方法」の特許出願の優先権、及び、出願人が2018年8月20日に中国特許庁に提出した、出願番号201810948782.X、発明の名称「水添LCO処理用の接触分解触媒及びその作製方法」の特許出願の優先権を主張するとともに、これらの特許出願の全ては参照により本願に組み込まれるものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、分子篩及び接触分解の技術分野に関し、より具体的には改質Y型分子篩、それを含む接触分解触媒、それらの作製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0003】
ベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)などの軽質芳香族炭化水素は、有機化学における重要な基礎的原料として、ポリエステル、合成繊維などの生産に幅広く利用され、その需要が近年増している。ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの軽質芳香族炭化水素は主に、原料ナフサを触媒作用下でリフォームする工法、及び蒸気下クラッキング工法により、生成される。しかし原料ナフサが欠乏しているため、市場への軽質芳香族炭化水素の供給は不足している。
【0004】
接触分解で得た軽質循環油(LCO)は、接触分解による重要な副生成物であり、その量が多く、芳香族炭化水素、特に低品質ディーゼルの留分である多環式芳香族炭化水素を豊富に含む。市場の需要及び環境保護の要求が変化していく中、LCOはディーゼルの調合組成として厳しく制限されている。LCOは、その炭化水素成分としてパラフィン、ナフテン(オレフィンを少量に含む)及び芳香族炭化水素を含む。LCOの炭化水素成分は、接触分解へ供される原料油の種類及び処理工程の苛烈度に応じて大きく変動するが、共に芳香族炭化水素を主要成分としており、当該芳香族炭化水素の重量部は一般的に70%を超え、場合には90%程度に達し、残部はパラフィン及びナフテンである。
【0005】
LCOは、その典型的成分である二環式芳香族炭化水素の含量が最も高い。二環式芳香族炭化水素は、接触分解による軽質芳香族炭化水素の生産に影響する要因的成分でもある。多環式芳香族炭化水素は、接触分解の反応条件下では、軽質芳香族炭化水素へと開環分解し難いが、水素添加処理の条件下では、飽和したアルキルベンゼン及びシクロアルキルベンゼン(インダン系、テトラヒドロナフタレン系及びインデン系)などの重質単環式芳香族炭化水素になりやすい。このような重質単環式芳香族炭化水素は、接触分解で芳香族炭化水素を生産するための潜在的成分であり、接触分解の条件下で軽質芳香族炭化水素へと分解可能である。したがって、LCOは、軽質芳香族炭化水素の生産における潜在的且つ安価な資源であり、水素添加処理、接触分解という順の工法に基づく軽質芳香族炭化水素の生産において、重要な研究価値がある。
【0006】
中国特許出願公開CN103923698A、CN104560185A及びCN104560187Aには、LCOを適度に水素添加することによって、大部分の多環式芳香族炭化水素を、シクロアルキル環及び1つの芳香族環を含む飽和状態の水素化芳香族炭化水素に変化させた後、接触分解触媒の存在下でクラッキング反応によりBTX系軽質芳香族炭化水素を生産する従来技術が開示されている。しかし、LCOへの水素添加で得られた水素化芳香族炭化水素に関しては、その可分解性は接触分解に供する通常の原料に劣るほか、水素転移性も接触分解に供する通常の原料を遥かに上回る。したがって、従来技術として用いられる通常の接触分解触媒は、水添LCOの接触分解要件を満たすことができない。
【0007】
Y型分子篩は、1960年代に初めて使用されて以来、流動接触分解(FCC)触媒の主要な活性成分とされてきた。しかし、原油の重質化につれ、FCCへ供される原料中の多環式化合物の含量が著しく増加している一方、当該多環式化合物がゼオライトチャネル内へ拡散する能力が著しく低下している。主要活性成分であるY型分子篩は、孔径がわずか0.74nmであるため、残油などの重質留分の処理に直接に用いてしまうと、触媒活性中心への到達能が、残油中の多環式化合物の分解における主な障害となる。分子篩の孔構造は、触媒の分解能力に密接に関係している。そして、特に残油用接触分解触媒の場合、その分子篩の二次孔によれば、触媒活性中心への、残油中の巨大分子の到達能が向上し、さらに残油に対する接触分解能力が向上し得る。
【0008】
二次孔を有する超安定分子篩の作製において、水熱脱アルミニウム法は、産業上、最も広く採用されている方法の一つである。当該方法は、まず、アンモニウムイオン含有水溶液を用いてNaY分子篩のイオン交換を行うことで、分子篩中のナトリウムイオンの含量を減らす。その後、水蒸気雰囲気下でアンモニウムイオン交換後の分子篩を600~825℃で焼結することにより、当該分子篩を超安定化する。この方法は、コストが低く、工業的量産が容易であり、得られた超安定Y型分子篩が二次孔を比較的豊富に含むが、当該超安定Y分子篩の結晶化度が大きく劣化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、超安定Y型分子篩の工業的生産では、上記水熱焼結工法の改良、すなわち、2回のイオン交換及び2回の焼結を行う方法が一般的に用いられている。この方法は、比較的温和な焼結条件のステップを複数採用し、苛烈な焼結条件下で発生する重度な結晶化度劣化問題の解決を目的としている。これによって作製された超安定Y型分子篩は、一定量の二次孔を有し得るものの、全二次孔に対する、孔径が比較的大きい二次孔の割合が低く、超安定分子篩の比表面積及び結晶化度についても向上の余地がある。
【0010】
水添LCOの接触分解でBTX系軽質芳香族炭化水素を多く生産するという需要をより好適に満たすために、本発明は、強い分解能力及び弱い水素転移性を兼備する高安定性の改質分子篩を新規な活性成分として用い、水添LCOの接触分解に適し且つ多くのBTX系軽質芳香族炭化水素を生産可能な接触分解触媒を開発するとともに、その分解能力の強化、水素転移反応の抑制、水添LCOの転化効率の更なる向上、ならびに、ベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)を豊富に含む接触分解生成物であるガソリンの産生能の最大化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの目的は、改質Y型分子篩、それを含む接触分解触媒、それらの作製方法と応用を提供することにある。当該改質Y型分子篩を活性成分として作製した接触分解触媒は、水添軽質循環油(LCO)接触分解に用いる場合、高い水添LCO転化効率、低いコークス選択性、より高いガソリン収率、ならびに、より高いエチレン及びプロピレンの総収率を示す。
【0012】
一態様として、本発明は、改質Y型分子篩であって、該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される希土類含量が約4~11wt%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウム含量が約0.7wt%以下であり、酸化亜鉛に基づいて算出される亜鉛含量が約0.5~5wt%であり、Pに基づいて算出されるリン含量が約0.05~10wt%であり、SiO/Alモル比に基づく骨格シリカ・アルミナ比が約7~14であり、アルミニウム総含量に対する非骨格アルミニウム含量の百分率が約20%以下であり、全細孔体積に対する、孔径2~100nmの二次孔の細孔体積の百分率が約15~30%である、改質Y型分子篩を提供する。
【0013】
別の態様として、本発明は、改質Y型分子篩を作製する方法であって、
NaY分子篩を希土類塩溶液と接触させてイオン交換反応を行い、イオン交換後の分子篩を得るステップ(1)と、
前記イオン交換後の分子篩に水熱超安定改質処理を施し、水熱超安定改質分子篩を得るステップ(2)と、
前記水熱超安定改質分子篩をリン化合物と接触させてリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記リン改質分子篩をガス状態のSiClと接触させて反応させることで気相超安定改質を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(4)と、
前記気相超安定改質分子篩を亜鉛塩溶液に浸漬し、前記改質Y型分子篩を得るステップ(5)と、を含む方法を提供する。
【0014】
好ましくは、前記ステップ(2)における水熱超安定改質処理は、約350~480℃の温度、及び約30~90体積%の水蒸気雰囲気下で約4.5~7h焼結することにより行われる。
【0015】
さらに別の態様として、本発明は、接触分解触媒であって、該触媒のドライベース重量に対し、約10~50wt%の改質Y型分子篩、バインダ及び粘土を含み、前記改質Y型分子篩は、本発明の改質Y型分子篩、又は本発明の方法により作製された改質Y型分子篩である、接触分解触媒を提供する。
【0016】
さらに別の態様として、本発明は、原料炭化水素、特に水添軽質循環油の接触分解反応における、本発明の改質Y型分子篩の応用であって、接触分解の条件下で前記原料炭化水素を、前記改質Y型分子篩を含む接触分解触媒と接触させる処理を含む、応用を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明で提供される改質Y型分子篩は、改質成分としてリン、希土類及び亜鉛を含み、高い結晶化度及び二次孔構造、高い熱安定性及び水熱安定性を有する。
【0018】
本発明の改質Y型分子篩は、接触分解触媒の活性成分として使用し、水添LCOの接触分解に用いることができる。当該分子篩を活性成分として含む接触分解触媒を水添LCOの処理に用いる場合、水添LCO転化効率が向上するだけではなく、低いコークス選択性、BTX軽質芳香族炭化水素をリッチに含むガソリンのより高い収率、ならびに、エチレン及びプロピレンのより高い総収率も得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。但し、記載される当該具体的な実施形態は、単に本発明の説明及び解釈に供するものであり、本発明を限定するものでもないと理解するべきである。
【0020】
本明細書中に開示のいかなる具体的数値(数値範囲の端点を含む)も当該数値の厳密な値に限定されず、当該厳密な値に近い値、例えば当該厳密な値±5%の範囲内のあらゆる採用可能な値を含むと解釈すべきである。また、開示される数値範囲については、当該範囲の端点値同士を組み合わせ、端点値と当該範囲内の特定数値とを組み合わせ、又は、特定数値同士を任意に組み合わせることで、1つ又は複数の数値範囲を新たに得ることができる。当該新たな数値範囲も、本明細書に具体的に開示されているものと見做すべきである。
【0021】
特段に説明する場合を除き、本明細書中に使用される用語は、当業者が一般に理解している意味を持つ。但し、当業者の理解と異なる意味の用語が本明細書において定義されている場合、本明細書中の定義に準ずる。
【0022】
本発明は、明細書中に明確に説明された内容以外の未記載事項又は内容としては、当該分野における既知のものがそのまま変更せずに適用される。本明細書中に記載の任意の実施形態を他の1つ又は複数の実施形態と自由に組み合わせることができる。これによって形成される全ての技術的構成又は技術思想は、当該組み合わせが明らかに非合理的と当業者が解釈しない限り、本明細書のオリジナル開示又はオリジナル記載の一部と見做すべきであり、本明細書に開示又は予期されていない新規事項と見做すべきではない。
【0023】
本発明で言及されるRIPP試験法は、具体的に『石油化学分析法(RIPP試験法)』(Cuiding YANGら,科学出版社,1990年9月第1版,ISBN:7-03-001894-X,第263~268、第412~415、424~426頁)を参照することができ、その全部は参照により本明細書中に組み込まれるものとする。
【0024】
本明細書で言及される全ての特許文献及び非特許文献は、教科書及び刊行物の記事を含み(ただしこれらに限定されない)、いずれも参照によりその全部が本明細書中に組み込まれるものとする。
【0025】
本明細書において、「Y型分子篩」及び「Y型ゼオライト」という用語は、入れ替えて使用可能である。また、「NaY分子篩」及び「NaYゼオライト」という用語も、入れ替えて使用可能である。
【0026】
本明細書において、「二次孔」という用語は分子篩における、孔径(すなわち、孔直径)が2~100nmの孔を指す。
【0027】
本明細書において、「希土類溶液」及び「希土類塩溶液」という用語は、入れ替えて使用可能である。好ましくは希土類塩の水溶液である。
【0028】
本明細書において、「通常単位胞サイズを示すY型分子篩」という表現は、当該Y型分子篩の格子定数が、通常のNaY分子篩の格子定数の範囲内、好ましくは約2.465nm~約2.472nmの範囲内にあることを指す。
【0029】
本明細書において、「大気圧」という用語は、圧力が約1atmであることを指す。
【0030】
本明細書において、物質のドライベース重量とは、当該物質を800℃で1時間焼結して得られた固体生成物の重量を指す。
【0031】
本発明において、相反する記載がない限り、関連する様々な分子篩の質量は、いずれもドライベース重量に基づいて算出される。希土類塩、希土類の質量(含量)は、いずれも希土類酸化物の質量(含量)に基づいて算出され、本明細書では希土類酸化物質量(含量)と略称されることがある。ナトリウムの質量(含量)は、いずれも酸化ナトリウムの質量(含量)に基づいて算出され、本明細書では酸化ナトリウム質量(含量)と略称されることがある。亜鉛、亜鉛塩の質量(含量)は、いずれも酸化亜鉛の質量(含量)に基づいて算出され、本明細書では酸化亜鉛質量(含量)と略称されることがある。リンの質量(含量)は、いずれもPの質量(含量)に基づいて算出され、本明細書ではP質量(含量)と略称されることがある。
【0032】
第1態様として、本発明は、改質Y型分子篩であって、該改質Y型分子篩のドライベース重量に対し、希土類酸化物に基づいて算出される希土類含量が約4~11wt%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウム含量が約0.7wt%以下であり、酸化亜鉛に基づいて算出される亜鉛含量が約0.5~5wt%であり、Pに基づいて算出されるリン含量が約0.05~10wt%であり、SiO/Alモル比に基づく骨格シリカ・アルミナ比が約7~14であり、アルミニウム総含量に対する非骨格アルミニウム含量の百分率が約20%以下であり、全細孔体積に対する、孔径2~100nmの二次孔の細孔体積の百分率が約15~30%である、改質Y型分子篩を提供する。
【0033】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の骨格シリカ・アルミナ比(SiO/Alモル比)は、約7.3~14であってもよく、さらに約8.5~12.6、例えば約8.79、10.87、11.95などであってもよい。
【0034】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の希土類含量(希土類酸化物に基づいて算出される含量)は、約4.5~10wt%、例えば約5.6wt%、6.3wt%、8.4wt%などであってもよい。
【0035】
本発明によれば、前記希土類の種類及び成分は特に制限されない。好ましくは、前記希土類として、La、Ce、Pr、Nd、又はそれらのうち2つ、3つもしくは4つからなる組み合わせを含んでもよい。任意に、前記希土類として、La、Ce、Pr及びNd以外の別の希土類元素を含んでもよい。
【0036】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩のナトリウム含量(酸化ナトリウムに基づいて算出される含量)は、約0.1~0.7wt%、さらに約0.3~0.7wt%、さらに約0.35~0.6wt%、さらには約0.4~0.55wt%、例えば約0.44wt%、0.49wt%、0.57wt%などであってもよい。
【0037】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の亜鉛含量(酸化亜鉛に基づいて算出される含量)は、約1~4wt%、例えば約1wt%、2wt%、4wt%などであってもよい。
【0038】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩のリン含量(Pに基づいて算出されるリン含量)は、約0.1~6wt%、さらに約0.1~5wt%、例えば約0.95wt%、2.21wt%、3.68wt%などであってもよい。
【0039】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の、アルミニウム総含量に対する非骨格アルミニウム含量の百分率は、約13~19%、例えば約13.2%、16.5%、18.5%などであってもよい。
【0040】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の格子定数は、約2.440~2.455nm、好ましくは約2.440~2.453nm、さらに好ましくは約2.442~2.453nm、例えば約2.443nm、2.445nm、2.45nmなどであってもよい。
【0041】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の全細孔体積は、約0.33~0.39mL/g、好ましくは約0.35~0.39mL/g、さらに好ましくは約0.36~0.375mL/g、例えば約0.355mL/g、0.364mL/g、0.373mL/gなどであってもよい。
【0042】
本発明によれば、前記改質Y型分子篩の孔構造は、より好適な接触分解反応性が得られるよう、更に最適化されてもよい。好ましい実施形態において、全細孔体積に対する、孔径(直径)2.0~100nmの二次孔の細孔体積の百分率は、約20%~30%、好ましくは約17%~21%、例えば約17.96%、19.78%、20.85%などであってもよい。
【0043】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の比表面積は、約600~670m/g、好ましくは約610~660m/g、例えば約633m/g、640m/g、652m/gなどであってもよい。
【0044】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の格子崩壊温度は、約1050℃以上、約1055℃~1080℃であってもよく、好ましくは約1056~1075℃、例えば約1055℃、1061℃、1068℃などであってもよい。
【0045】
本発明によれば、表面の酸中心のタイプ及び強度を好適に有する改質Y型分子篩を確保するために、好ましい実施形態において、ピリジン吸着赤外分光法を用いて350℃で測定した前記改質Y型分子篩の強酸酸価のうち、L酸価に対するB酸価の比率は、約3.50以上、例えば約3.6~5.0、好ましくは約3.7~4.3、具体的には約3.76、4.21、4.95などであってもよい。
【0046】
好ましい実施形態において、800℃、大気圧下、100体積%水蒸気雰囲気下で17時間エージングした後の前記改質Y型分子篩の相対結晶化度維持率は、約35%以上、例えば約38~48%又は約35~45%、さらに例えば約38.95%、40.55%、43.45%などであってもよい。
【0047】
好ましい実施形態において、前記改質Y型分子篩の相対結晶化度は、約60%以上、例えば約60~70%、好ましくは約60~66%、具体的には約60.4%、62.7%、65.3%などであってもよい。
【0048】
本発明で提供される改質Y型分子篩は、強い分解能力及び比較的弱い水素転移性を兼備するため、接触分解触媒の活性成分として使用し、水添LCOの接触分解に用いることができる。当該分子篩を活性成分とする接触分解触媒を水添LCOの処理に用いる場合、高いLCO転化効率、低いコークス選択性、BTXを豊富に含むガソリンのより高い収率が示され、且つ、エチレン及びプロピレンを比較的多く含むガス生成物が得られる。
【0049】
第2態様として、本発明は、改質Y型分子篩を作製する方法であって、
NaY分子篩を希土類塩溶液と接触させてイオン交換反応を行い、イオン交換後の分子篩を得るステップ(1)と、
前記イオン交換後の分子篩に水熱超安定改質処理を施し、水熱超安定改質分子篩を得るステップ(2)と、
前記水熱超安定改質分子篩をリン化合物と接触させてリン改質処理を行い、リン改質分子篩を得るステップ(3)と、
前記リン改質分子篩をガス状態のSiClと接触させて反応させることで気相超安定改質を行い、気相超安定改質分子篩を得るステップ(4)と、
前記気相超安定改質分子篩を亜鉛塩溶液に浸漬し、前記改質Y型分子篩を得るステップ(5)と、を含む方法を提供する。
【0050】
具体的な一実施形態において、本発明の方法は下記のステップを含む。
【0051】
(1)NaY分子篩を希土類塩溶液と接触させてイオン交換反応を行い、酸化ナトリウム含量が低減し通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得る。
【0052】
(2)ステップ(1)で得られた、酸化ナトリウム含量が低減し通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩に対し、好ましくは約350~480℃の温度及び約30~90体積%の水蒸気雰囲気下で約4.5~7h焼結する水熱焼結処理を行い、格子定数が低減したY型分子篩を得る。
【0053】
(3)ステップ(2)で得られた格子定数が低減したY型分子篩をリン化合物と接触させてリン改質処理を行うことにより、分子篩にリンを導入し、リン改質分子篩を得る。
【0054】
(4)ステップ(3)で得られたリン改質分子篩をガス状態のSiClと接触させて反応させることでSi-Al同形置換を行い、気相超安定改質Y型分子篩を得る。
【0055】
(5)ステップ(4)で得られた気相超安定改質Y型分子篩を亜鉛塩溶液に浸漬し、焼結を経て、前記改質Y型分子篩を得る。
【0056】
好ましい実施形態において、前記ステップ(1)は、NaY分子篩を希土類塩溶液と接触させてイオン交換反応を行い、ろ過、洗浄、乾燥を経て、酸化ナトリウム含量が低減した希土類含有Y型分子篩を得るステップを含む。
【0057】
好ましい実施形態において、ステップ(1)で用いられるNaY分子篩は、格子定数が約2.465~2.472nmであり、骨格シリカ・アルミナ比(SiO/Alモル比)が約4.5~5.2であり、相対結晶化度が約85%以上、例えば約85~95%であり、酸化ナトリウム含量が約13.0~13.8wt%である。
【0058】
好ましい実施形態において、ステップ(1)で得られた、酸化ナトリウム含量が低減した希土類含有Y型分子篩は、格子定数が約2.465~2.472nmであり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウム含量が約9.5wt%以下であり、RE(希土類酸化物)に基づいて算出される希土類含量が約4.5~13wt%である。
【0059】
好ましい実施形態において、ステップ(1)で得られた、酸化ナトリウム含量が低減した希土類含有Y型分子篩は、酸化ナトリウム含量が約5.5~9.5wt%、好ましくは約5.5~8.5wt%、例えば約7.5%であってもよく、希土類酸化物含量が約5.5~13wt%、好ましくは約5.5~12wt%又は4.5~11.5wt%であってもよい。
【0060】
好ましい実施形態において、前記ステップ(1)は、水溶液中でNaY分子篩を希土類塩と接触させることでイオン交換反応を行うステップをさらに含む。ここで、NaY分子篩の質量(ドライベースに基づいて算出)と、希土類塩の質量(希土類酸化物に基づいて算出)と、水の質量との質量比は、約1:(0.01~0.18):(5~15)であり、水は脱イオン水であってもよい。
【0061】
好ましい実施形態において、前記希土類塩は、塩化希土類及び/又は硝酸希土類である。前記希土類は任意の希土類であってもよく、その種類及び成分は特に限定されず、例えばLa、Ce、Pr、Nd及び希土類混合物のうち、1つ又は複数であってもよい。好ましくは、前記希土類混合物は、La、Ce、Pr及びNdのうち1つ又は複数を含んでもよく、あるいは、La、Ce、Pr及びNd以外の少なくとも1種類の希土類をさらに含んでもよい。
【0062】
好ましい実施形態において、ステップ(1)におけるイオン交換反応は、交換温度が約15~95℃、好ましくは約65~95℃、例えば約90~95℃であってもよく、交換時間が約30~120分間、好ましくは約45~90分間であってもよい。
【0063】
好ましい実施形態において、前記ステップ(1)では、NaY分子篩、希土類塩及び水を混合物とする場合、NaY分子篩及び水をスラリー化した後に、該スラリーに希土類塩及び/又は希土類塩の水溶液を添加してもよい。
【0064】
好ましい実施形態において、前記ステップ(1)は、NaY分子篩を水と混合し、撹拌下で希土類塩及び/又は希土類塩溶液を添加することで希土類イオンとナトリウムイオンとの交換を行い、ろ過、洗浄するステップをさらに含む。ここで、洗浄の目的は、イオン交換で生じたナトリウムイオンを除去するためである。洗浄は脱イオン水を用いて行ってもよい。
【0065】
好ましい実施形態において、前記ステップ(1)では、NaY分子篩:希土類塩:HOが約1:(0.01~0.18):(5~15)の質量比で、NaY分子篩、希土類塩及び水を混合物とした後、約15~95℃の温度下で約30~120分間撹拌することにより、希土類イオンとナトリウムイオンとの交換を行う。
【0066】
好ましい実施形態において、前記ステップ(2)における水熱超安定改質/水熱焼結処理は、イオン交換後の分子篩を約350~480℃の温度、及び約30~90体積%の水蒸気雰囲気(30~90体積%水蒸気雰囲気、又は30~90%水蒸気とも呼ぶ)下で、約4.5~7時間焼結するステップを含む。好ましくは、イオン交換後の分子篩を約380~460℃の温度、及び約40~80体積%の水蒸気雰囲気下で、約5~6時間焼結する。例えば前記焼結処理は、約390℃、約450℃又は約470℃の温度、及び、約50体積%、約70体積%又は約80体積%の水蒸気雰囲気下で行ってもよい。
【0067】
いくつかの好ましい実施形態において、前記ステップ(2)における水蒸気雰囲気は、他の気体、例えば空気、ヘリウムガス又は窒素ガスのうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0068】
好ましい実施形態において、ステップ(2)の処理を経た分子篩は、格子定数が約2.450~2.462nmまで低減し、含水量が約1wt%未満である。
【0069】
好ましい実施形態において、前記ステップ(3)は、ステップ(2)で得られた分子篩を、当該格子定数が低減したY型分子篩の含水量が約1wt%未満となるように乾燥する処理をさらに含む。前記乾燥としては、気流乾燥、加熱乾燥、フラッシュ乾燥等の方法を採用してもよい。
【0070】
好ましい実施形態において、前記ステップ(3)は、ステップ(2)で得られた格子定数が低減したY型分子篩を、リン化合物を含有する溶液と接触させて反応させる処理をさらに含む。
【0071】
好ましい実施形態において、ステップ(3)で用いられるリン化合物は、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等から選ばれる1つ又は複数であってもよい。
【0072】
好ましい実施形態において、前記ステップ(3)では、溶液中の水の質量と、分子篩(ステップ(2)で得られた分子篩)の質量との質量比が約(2~5):1、好ましくは約(3~4):1である。
【0073】
好ましい実施形態において、前記ステップ(3)では、リンの質量(Pに基づいて算出)と、分子篩の質量との質量比が約(0.0005~0.10):1、好ましくは約(0.001~0.05):1である。
【0074】
好ましい実施形態において、ステップ(3)では、前記リン改質処理の温度が約15~100℃、好ましくは約30~95℃であってもよく、処理時間が約10~100分間であってもよい。
【0075】
好ましい実施形態において、前記ステップ(3)は、分子篩を前記溶液と約15~100℃下で約10~100分間反応させた後、ろ過、洗浄する処理をさらに含む。ここで、分子篩の質量の約5~15倍の水、例えば脱イオン水で洗浄してもよい。
【0076】
好ましい実施形態において、前記ステップ(4)では、用いられる四塩化ケイ素の質量と、リン改質分子篩の質量(ドライベースに基づいて算出)との質量比が約(0.1~0.7):1、好ましくは約(0.3~0.6):1、例えば約0.4:1、0.5:1、0.6:1などであってもよい。
【0077】
好ましい実施形態において、前記ステップ(4)では、分子篩と四塩化ケイ素との反応温度が約200℃~650℃、好ましくは約350℃~500℃、例えば約400℃、480℃、500℃などであってもよい。
【0078】
好ましい実施形態において、ステップ(4)では、分子篩と四塩化ケイ素との反応時間が約10分間~約5時間である。任意に、分子篩中の残留のNa、Cl及びAl3+などの可溶性副生成物を除去するために、反応後に洗浄、ろ過を行ってもよい。
【0079】
さらに好ましい実施形態において、ステップ(4)の洗浄は、用いる水と分子篩との質量比が約(5~20):1、好ましくは約(6~15):1、洗浄温度が約30~60℃、洗浄液のpH値が約2.5~5.0であるという条件下で、脱イオン水を用いて行ってもよい。通常、前記洗浄は、洗浄後の洗浄液中から遊離のNa、Cl及びAl3+などのイオンが検出されなくなるまで行う。
【0080】
好ましい実施形態において、ステップ(5)で用いられる亜鉛塩は、硝酸亜鉛又は塩化亜鉛であってもよい。
【0081】
好ましい実施形態において、前記ステップ(5)は、亜鉛塩を、用いられる亜鉛塩の量(ZnOに基づいて算出)と分子篩の重量との重量比が約(0.5~5.0):100、亜鉛塩濃度が約0.020~0.080g/mlとなるような亜鉛塩溶液とするステップをさらに含んでもよい。
【0082】
好ましい実施形態において、ステップ(5)における浸漬温度が約10~60℃である。任意に、浸漬後の分子篩を約130℃の温度下で約5時間加熱乾燥した後、焼結してもよい。ここで、焼結温度は約350~600℃であってもよく、焼結時間は約1時間~約4時間であってもよい。
【0083】
本発明の具体的な実施形態において、改質Y型分子篩を作製する方法は以下のステップを含む。
【0084】
(1)NaY分子篩を希土類塩溶液と接触させてイオン交換反応を行い、ろ過、洗浄を経て、酸化ナトリウム含量が低減し通常単位胞サイズを示す希土類含有Y型分子篩を得る。ここで、前記イオン交換は、撹拌下、約15~95℃の温度条件下で、約30~120分間行う。
【0085】
(2)酸化ナトリウム含量が低減し通常単位胞サイズを示す前記希土類含有Y型分子篩を、約350~480℃の温度、及び約30~90体積%の水蒸気を含む雰囲気下で、約4.5~7時間焼結し、乾燥を経て、含水量が約1wt%未満、且つ格子定数が約2.450~2.462nmまで低減したY型分子篩を得る。
【0086】
(3)格子定数が低減した前記Y型分子篩を、リン化合物を含有する溶液に添加し、約15~100℃の条件下で約10~100分間反応させ、ろ過、洗浄、乾燥を経て、含水量が約1wt%未満で、且つ格子定数が低減したリン含有Y型分子篩を得る。ここで、当該溶液は、水の質量と分子篩の質量との質量比が約2~5、好ましくは約3~4であり、リンの質量(Pに基づいて算出)と分子篩との質量比が約0.0005~0.10である。
【0087】
(4)含水量が約1wt%未満で、且つ格子定数が低減した前記リン含有Y型分子篩と、加熱気化されたSiClガスとを、SiClの質量と、含水量が約1wt%未満で、且つ格子定数が低減したY型分子篩の質量(ドライベースに基づいて算出)との質量比が約(0.1~0.7):1、温度が約200~650℃である条件下で、約10分間~約5時間接触させて反応させた後、洗浄及びろ過を行う。
【0088】
(5)ステップ(4)で得られた改質Y型分子篩を約10~60℃の浸漬温度で亜鉛塩溶液に浸漬し、浸漬後の分子篩を約130℃で約5時間加熱乾燥した後、約350~600℃で約1~4時間焼結し、前記改質Y分子篩を得る。
【0089】
本発明で提供される改質Y型分子篩の作製方法は、高い結晶化度、高い熱安定性、高い水熱安定性を有し、一定の二次孔構造を備え、リン、希土類及び亜鉛を含む高シリコン含量のY型分子篩を作製することができる。当該分子篩は、アルミニウム分布が均一で、非骨格アルミニウム含量が低い。
【0090】
本発明の方法で作製される改質Y型分子篩を含む接触分解触媒は、水添LCOの接触分解に用いる場合、高いLCO転化効率(すなわち、LCOの有効転化率が高い)、低いコークス選択性、及び、BTXを豊富に含むガソリンのより高い収率が示され、且つ、エチレン及びプロピレンを比較的多く含むガス生成物が得られる。
【0091】
第3態様として、本発明は、接触分解触媒であって、該触媒のドライベース重量に対し、約10~50wt%の改質Y型分子篩、バインダ及び粘土を含み、前記改質Y型分子篩は、本発明の改質Y型分子篩、又は本発明の方法により作製された改質Y型分子篩である、接触分解触媒を提供する。
【0092】
好ましい実施形態において、ドライベースに基づいて算出すると、前記触媒における改質Y型分子篩の含量は、約10~50wt%、好ましくは約15~45wt%、より好ましくは約25~40wt%、具体的に例えば約25wt%、30wt%、40wt%などであってもよい。
【0093】
好ましい実施形態において、前記粘土は、接触分解触媒の成分として使用可能な粘土から選ばれる1つ又は複数であってもよく、例えばカオリン、含水ハロイサイト、モンモリロナイト、硅藻土、ハロイサイト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト、ベントナイト等からなる群より選ばれてもよい。好ましくは、ドライベースに基づいて算出すると、前記触媒における粘土の含量は、約10~80wt%、好ましくは約20~55wt%又は約30~50wt%である。
【0094】
好ましい実施形態において、前記バインダはアルミナバインダである。好ましくは、前記触媒におけるアルミナバインダ含量が約10~40wt%、好ましくは約20~35wt%であってもよい。
【0095】
好ましい実施形態において、前記アルミナバインダは、接触分解触媒に一般に用いられる各種の形態のアルミナ、水和アルミナ及びアルミナゾルから選ばれる1つ又は複数であってもよい。例えば、γ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、χ-アルミナ、擬似ベーマイト(pseudoboemite)、ベーマイト(boehmite)、水礬土(gibbsite)、バイヤーライト(Bayerite)、アルミナゾルなどから選ばれてもよく、好ましくは擬似ベーマイト及びアルミナゾルである。
【0096】
好ましい実施形態において、前記触媒は、アルミナに基づいて算出される約2~15wt%、好ましくは約3~10wt%のアルミナゾルと、アルミナに基づいて算出される約10~30wt%、好ましくは約15~25wt%の擬似ベーマイトとを含む。
【0097】
好ましい実施形態において、前記触媒は、前記改質Y型分子篩以外の別の分子篩を含んでもよい。ドライベースに基づいて算出すると、触媒の質量に対し、当該別の分子篩の含量は、約0~40wt%、好ましくは約0~30wt%、より好ましくは約1~20wt%であってもよい。
【0098】
さらに好ましい実施形態において、前記別の分子篩は、接触分解触媒に一般に用いられる分子篩、例えば、MFI構造を有するゼオライト、βゼオライト、その他のY型ゼオライト、非ゼオライト分子篩のうち1つ又は複数であってもよい。好ましくは、ドライベースに基づいて算出される前記その他のY型ゼオライトの質量は、前記触媒の質量の約40%以下、例えば約0~40wt%、好ましくは約1~20wt%であってもよい。
【0099】
好ましい実施形態において、前記その他のY型ゼオライトは、例えばREY、REHY、DASY、SOY、PSRYのうち1つ又は複数であってもよい。MFI構造を有するゼオライトは、例えばHZSM-5、ZRP、ZSPのうち1つ又は複数であってもよい。βゼオライトは、例えばHβであり、非ゼオライト分子篩は、例えばリン酸アルミニウム分子篩(AlPO分子篩)、シリカ・アルミナ・リン分子篩(SAPO分子篩)のうち1つ又は複数であってもよい。
【0100】
本発明で提供される接触分解触媒は、熱安定性及び水熱安定性の高い改質Y型分子篩を含むため、高い水熱安定性を有する。また、本発明で提供される接触分解触媒は、強い分解能力及び弱い水素転移性を兼備する高安定性の改質分子篩を活性成分としており、接触分解反応が強化され、水素転移反応が抑制されているため、水添LCOの接触分解に用いる場合、従来一般のY型分子篩含有接触分解触媒に比べ、より高いLCO転化効率、低いコークス選択性、及び、BTXを豊富に含むガソリンのより高い収率が示され、且つ、エチレン及びプロピレンを比較的多く含むガス生成物が得られる。
【0101】
第4態様として、本発明は、接触分解触媒を作製する方法であって、改質Y型分子篩を提供するステップと、前記改質Y型分子篩、バインダ、粘土及び水を含むスラリーを調製するステップと、噴霧乾燥後、任意に洗浄や乾燥を行い、前記接触分解触媒を得るステップと、を含む方法を提供する。なお、前記改質Y型分子篩の提供は、本発明の改質Y型分子篩、又は本発明の方法により作製された改質Y型分子篩の提供を含む。
【0102】
改質Y型分子篩の前記提供ステップを除き、本発明の触媒作製方法における他のステップは、従来方法、例えば中国特許出願公開CN1098130A及びCN1362472Aに記載の方法に準じて行ってもよい。
【0103】
本発明で提供される触媒作製方法において、前記噴霧乾燥、洗浄及び乾燥は従来技術を採用してもよく、本発明では特に制限しない。
【0104】
第5態様として、本発明は、原料炭化水素、特に水添軽質循環油の接触分解反応における、本発明の改質Y型分子篩の応用であって、接触分解条件下で前記原料炭化水素を、前記改質Y型分子篩を含む接触分解触媒と接触させる処理を含む、応用を提供する。
【0105】
第6態様として、本発明は、原料炭化水素、特に水添軽質循環油の接触分解反応における、本発明の接触分解触媒の応用であって、接触分解条件下で前記原料炭化水素を前記接触分解触媒と接触させる処理を含む、応用を提供する。
【0106】
第7態様として、本発明は、水添軽質循環油(水添LCO)を処理するための接触分解方法であって、接触分解条件下で前記水添LCOを本発明の接触分解触媒、又は本発明の改質Y型分子篩を含む接触分解触媒と接触させるステップを含む、接触分解方法を提供する。
【0107】
本発明によれば、好ましくは、前記接触分解条件は、約500~610℃の反応温度と、約2~16h-1である単位時間あたりの重量空間速度と、約3~10の触媒・オイル重量比と、を含んでもよい。
【0108】
好ましい実施形態において、前記水添LCOは、密度(20℃)が約0.850~0.920g/cm、H含量が約10.5~12wt%、S含量<50μg/g、N含量<10μg/g、総芳香族炭化水素含量が約70~85wt%、多環式芳香族炭化水素含量≦15wt%、との性質を有する。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は以下の構成を提供する。
【0110】
(A1)希土類酸化物に基づいて算出される希土類含量が約4~11wt%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウム含量が約0.7wt%以下であり、酸化亜鉛に基づいて算出される亜鉛含量が約0.5~5wt%であり、Pに基づいて算出されるリン含量が約0.05~10wt%であり、SiO/Alモル比に基づく骨格シリカ・アルミナ比が約7~14であり、アルミニウム総質量に対する非骨格アルミニウム質量の百分率が約20%以下であり、全細孔体積に対する、孔径2~100nm二次孔の細孔体積の百分率が約15~30%である、改質Y型分子篩。
【0111】
(A2)前記全細孔体積が約0.33~0.39mL/gである、項目A1に記載の分子篩。
【0112】
(A3)前記希土類含量が約4.5~10wt%であり、前記ナトリウム含量が約0.4~0.6wt%であり、前記リン含量が約0.1~6wt%であり、格子定数が約2.440~2.453nmであり、骨格シリカ・アルミナ比が約8.5~12.6である、項目A1又はA2に記載の分子篩。
【0113】
(A4)前記アルミニウム総質量に対する前記非骨格アルミニウム質量の百分率が約13~19%である、項目A3に記載の分子篩。
【0114】
(A5)前記全細孔体積に対する、前記孔径が2~100nmである二次孔の細孔体積の百分率が約20~30%である、項目A3に記載の分子篩。
【0115】
(A6)ピリジン吸着赤外分光法により350℃で測定するとき、L酸価に対するB酸価の比率が約3.50以上である、項目A1又はA2に記載の分子篩。
【0116】
(A7)改質Y型分子篩を作製する方法であって、
NaY分子篩と希土類塩溶液とのイオン交換反応を行うステップ(1)と、
イオン交換後の分子篩を焼結するステップ(2)と、
焼結後の分子篩のリン改質処理を行うステップ(3)と、
リン改質処理後の分子篩を四塩化ケイ素と反応させるステップ(4)と、
ステップ(4)の反応を経た後の分子篩を亜鉛塩溶液に浸漬するステップ(5)と、を含む、方法。
【0117】
(A8)前記ステップ(1)において、イオン交換の交換温度が約15~95℃であり、交換時間が約30~120分間であり、ドライベースに基づいて算出される前記NaY分子篩の質量と、希土類酸化物に基づいて算出される希土類塩の質量と、水の質量との質量比が約1:(0.01~0.18):(5~15)である、項目A7に記載の方法。
【0118】
(A9)前記ステップ(2)における焼結は、350~480℃、水蒸気含量約30~90体積%の雰囲気下で行われ、焼結時間が約4.5~7時間である、項目A7に記載の方法。
【0119】
(A10)前記ステップ(3)において、リン改質処理の温度が約15~100℃、時間が約10~100分間である、項目A7に記載の方法。
【0120】
(A11)前記ステップ(3)において、リン改質処理に用いるリン化合物は、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、およびリン酸水素二アンモニウムからなる群より選ばれる1つ又は複数である、項目A7に記載の方法。
【0121】
(A12)前記ステップ(4)において、反応温度が約200℃~650℃であり、反応時間が約10分間~約5時間であり、前記四塩化ケイ素と前記リン改質処理後の分子篩との質量比が約(0.1~0.7):1であり、前記焼結後の分子篩の質量はドライベースに基づいて算出される質量である、項目A7に記載の方法。
【0122】
(A13)前記ステップ(5)は、約10~60℃の浸漬温度で浸漬した後の分子篩を、約350~600℃の焼結温度、約1~4時間の焼結時間で焼結するステップを含む、項目A7に記載の方法。
【0123】
(B1)改質Y型分子篩を含み、水添LCOの処理に用いられる接触分解触媒であって、前記改質Y型分子篩において、希土類酸化物に基づいて算出される希土類含量が約4~11wt%であり、酸化ナトリウムに基づいて算出されるナトリウム含量が約0.7wt%以下であり、酸化亜鉛に基づいて算出される亜鉛含量が約0.5~5wt%であり、Pに基づいて算出されるリン含量が約0.05~10wt%であり、SiO/Alモル比に基づく骨格シリカ・アルミナ比が約7~14であり、アルミニウム総質量に対する非骨格アルミニウム質量の百分率が約20%以下であり、前記改質Y型分子篩において、全細孔体積に対する、孔径2~100nm二次孔の細孔体積の百分率が約15~30%である、触媒。
(B2)前記改質Y型分子篩の全細孔体積が約0.33~0.39mL/gである、項目B1に記載の分子篩。
【0124】
(B3)前記改質Y型分子篩において、前記希土類含量が約4.5~10wt%であり、前記ナトリウム含量が約0.4~0.6wt%であり、前記リン含量が約0.1~6wt%であり、格子定数が約2.440~2.453nmであり、骨格シリカ・アルミナ比が約8.5~12.6である、項目B1に記載の触媒。
【0125】
(B4)前記改質Y型分子篩において、前記アルミニウム総質量に対する前記非骨格アルミニウム質量の百分率が約13~19%である、項目B1に記載の触媒。
【0126】
(B5)前記改質Y型分子篩において、前記全細孔体積に対する、前記孔径2~100nm二次孔の細孔体積の百分率が約20~30%である、項目B1に記載の触媒。
【0127】
(B6)前記改質Y型分子篩において、ピリジン吸着赤外分光法により350℃で測定するとき、L酸価に対するB酸価の比率が約3.50以上である、項目B1又はB2に記載の触媒。
【0128】
(B7)約10~50wt%の前記改質Y型分子篩、バインダ及び粘土を含む、項目B1に記載の触媒。
【0129】
(B8)水添LCOの処理に用いられる接触分解触媒を作製する方法であって、活性成分である改質Y型分子篩の作製ステップを含み、前記活性成分である改質Y型分子篩の前記作製ステップは、
NaY分子篩と希土類塩溶液とのイオン交換反応を行うステップ(1)と、
イオン交換後の分子篩を焼結するステップ(2)と、
焼結後の分子篩のリン改質処理を行うステップ(3)と、
リン改質処理後の分子篩を四塩化ケイ素と反応させるステップ(4)と、
ステップ(4)の反応を経た後の分子篩を亜鉛塩溶液に浸漬するステップ(5)と、を含む、方法。
【0130】
(B9)前記ステップ(1)において、イオン交換の交換温度が約15~95℃であり、交換時間が約30~120分間であり、ドライベースに基づいて算出される前記NaY分子篩の質量と、希土類酸化物に基づいて算出される希土類塩の質量と、水の質量との質量比が約1:(0.01~0.18):(5~15)である、項目B8に記載の方法。
【0131】
(B10)前記ステップ(2)における焼結は、350~480℃、水蒸気含量約30~90体積%の雰囲気下で行われ、焼結時間が約4.5~7時間である、項目B8に記載の方法。
【0132】
(B11)前記ステップ(3)において、リン改質処理の温度が約15~100℃、時間が約10~100分間である、項目B8に記載の方法。
【0133】
(B12)前記ステップ(3)において、リン改質処理に用いるリン化合物は、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、およびリン酸水素二アンモニウムからなる群より選ばれる1つ又は複数である、項目B8に記載の方法。
【0134】
(B13)前記ステップ(4)において、反応温度が約200℃~650℃であり、反応時間が約10分間~約5時間であり、前記四塩化ケイ素と前記リン改質処理後の分子篩との質量比が約(0.1~0.7):1であり、前記焼結後の分子篩の質量はドライベースに基づいて算出される質量である、項目B8に記載の方法。
【0135】
(B14)前記ステップ(5)は、約10~60℃の浸漬温度で浸漬した後の分子篩を、約350~600℃の焼結温度、約1~4時間の焼結時間で焼結するステップを含む、項目B8に記載の方法。
【0136】
(B15)約10~50wt%の前記改質Y型分子篩、バインダ、粘土及び水をスラリー化した後、噴霧乾燥を経て、前記触媒を得るステップを含む、項目B8~B14のいずれか1項に記載の方法。
【0137】
(B16)接触分解条件下で水添LCOを項目B1~B7のいずれか1項に記載の触媒と接触させるステップを含み、前記接触分解条件は、約500~610℃である反応温度と、約2~16h-1である単位時間あたりの重量空間速度と、約3~10である触媒・オイル重量比とを含む、水添LCOを処理するための接触分解方法。
【0138】
〔実施例〕
以下の実施例において本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0139】
(原料)
以下に記載の実施例及び比較例において、使用されたNaY分子篩(NaYゼオライトとも称する)は、中国石化触媒有限公司の斉魯支社から入手した、酸化ナトリウム含量13.5wt%、骨格シリカ・アルミナ比(SiO/Alモル比)4.6、格子定数2.470nm、相対結晶化度90%のものである。
【0140】
塩化希土類及び硝酸希土類は、北京化学ファクトリ製の化学的に純粋な試薬である。硝酸亜鉛及び塩化亜鉛は、北京化学ファクトリ製の化学的に純粋な試薬である。擬似ベーマイトは、山東アルミニウムファクトリ製の固形物含量61wt%の工業製品である。カオリンは、蘇州中国カオリン公司製の固形物含量76wt%の接触分解触媒用カオリンである。アルミナゾルは、中国石化触媒有限公司の斉魯支社から入手したアルミナ含量21wt%のものである。
【0141】
比較例及び実施例で用いられた化学試薬は、特段に説明しない限り、化学的純粋という規格の市販品である。
【0142】
(分析方法)
各比較例及び実施例において、分子篩の元素含有量はX線蛍光分光法により測定した。
【0143】
分子篩の格子定数、相対結晶化度はRIPP145-90、RIPP146-90標準法(『石油化学分析法(RIPP試験法)』,Cuiding YANGら,科学出版社,1990年9月出版,第412~415頁を参照)に準じ、X線粉末回析法(XRD)により測定した。
【0144】
分子篩の骨格シリカ・アルミナ比は下記式で算出した。
【0145】
骨格SiO/Alモル比=(2.5858-a)×2/(a-2.4191)
式中、aは格子定数であり、単位はnmである。
【0146】
分子篩の総シリカ・アルミナ比は、X線蛍光分光法で測定されたSi及びAl元素の含量から算出する。骨格Alと総Alとの比率は、XRD法で測定された骨格シリカ・アルミナ比、及び、XRF法で測定された総シリカ・アルミナ比から算出する。これにより非骨格Alと総Alとの比率も算出することもできる。
【0147】
格子崩壊温度は、示差熱分析法(DTA)により測定した。
【0148】
各比較例及び実施例において、分子篩の酸中心のタイプ及び酸価は、ピリジン吸着赤外線法により測定した。すなわち、実験機器として米国Bruker社製のIFS113V型FT-IR(フーリエ変換赤外)分光計を用い、ピリジン吸着赤外分光法により350℃で酸価を測定した。実験方法は下記の通りである。自立タブレット試料を赤外分光計のin-situセルに配置して密封した;試料を400℃まで熱し、10-3Paまで減圧し、温度を2h維持することにより、試料に吸着したガス分子を除去した;試料を室温まで冷却し、圧力2.67Paのピリジン蒸気を導入し、その条件で試料を30分間維持することにより吸着平衡を得た。その後、試料を350℃まで熱し、10-3Paまで減圧し、30分間脱着した;その後、試料を室温まで冷却し、走査波数範囲1400cm-1~1700cm-1の分光分析に供し、350℃の脱着を経た試料のピリジン吸着赤外スペクトルを得た;ピリジン吸着赤外スペクトルのうち、1540cm-1及び1450cm-1における特徴的吸収ピークの強度に基づき、分子篩における強いブレンステッド酸の酸中心(B酸中心)及びルイス酸中心(L酸中心)の相対量を求めた。
【0149】
各比較例及び実施例において、二次孔の細孔体積の測定方法は下記の通りである。RIPP151-90標準法(『石油化学分析法(RIPP試験法)』,Cuiding YANGら,科学出版社,1990年9月出版,第424~426頁を参照)に準じ、吸着等温線に基づいて分子篩の全細孔体積を測定した;続いて、Tプロット法(T-plot法)により、吸着等温線に基づいて分子篩のマイクロ細孔の体積を測定し、全細孔体積からマイクロ細孔の体積を減算することにより二次孔の細孔体積を得た。
【0150】
以下の実施例1~3は、本発明の改質Y型分子篩及び接触分解触媒を作製する実施例である。
【0151】
<実施例1>
2000gのNaY分子篩(ドライベースに基づいて算出)を20Lの脱イオン水に投入し、撹拌して均一に混合した後、600mlのRE(NO溶液(REに基づいて算出される当該希土類塩溶液の濃度は319g/L;REはLaとCeとの希土類混合物;希土類酸化物質量に基づいて算出すると、La:Ce=3:2)を添加して撹拌し、90~95℃まで昇温して1時間保持した。続いて、ろ過、洗浄を行い、ろ過ケークを120℃で乾燥し、格子定数が2.471nm、酸化ナトリウム含量が7.0wt%、REに基づいて算出される希土類含量が8.8wt%であるY型分子篩を得た。
【0152】
続いて、当該分子篩を温度390℃、50体積%水蒸気と50体積%空気とを含んだ雰囲気下で6時間焼結し、格子定数2.455nmのY型分子篩を得た。
【0153】
冷却した後、当該格子定数2.455nmのY型分子篩を、35gのリン酸が溶解された水溶液6Lに添加し、90℃まで昇温してリン改質処理を30分間行った。その後、当該分子篩をろ過、洗浄し、得られたろ過ケークを含水量1wt%未満となるように乾燥処理した。
【0154】
続いて、加熱気化されたSiClガスを、SiClの質量:Y型分子篩の質量(ドライベースに基づいて算出)=0.5:1の質量比で、リン改質処理後の分子篩へ導入し、温度400℃の条件下で2時間反応させた。その後、20Lの脱イオン水で洗浄し、ろ過した。
【0155】
得られたろ過ケークに、濃度0.020g/mlのZn(NO溶液2300mlをゆっくり添加し、4時間含浸させた。含浸後の分子篩を130℃で5時間加熱乾燥した後、400℃の焼結条件下で3時間焼結し、改質Y型分子篩(SZ1と表記する)を得た。その物理、化学的性質は表1に示す。
【0156】
暴露状態のSZ1を800℃、大気圧下、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ1のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。なお、
【0157】
【数1】
【0158】
アルミナ含量21wt%のアルミナゾル714.5gを1565.5gの脱イオン水に投入し、撹拌下で、固形質含量76wt%のカオリン2763gを添加して60分間分散させた。アルミナ含量61wt%の擬似ベーマイト2049gを8146gの脱イオン水に投入し、撹拌状態下で、質量濃度36%の塩酸210mlを添加し、60分間酸性化させた。続いて、これに上記分散しておいたカオリンスラリーを添加し、微細化されたSZ1分子篩1500g(ドライベース)をさらに添加し、均一に撹拌した後、噴霧乾燥及び洗浄処理を行い、加熱乾燥を経て、触媒(SC1と表記する)を得た。
【0159】
なお、得られたSC1触媒には、SZ1分子篩が30wt%、カオリンが42wt%、擬似ベーマイトが25wt%、アルミナゾルが3wt%含まれていた。
【0160】
<実施例2>
2000gのNaY分子篩(ドライベースに基づいて算出)を脱イオン水25Lに投入し、撹拌して均一に混合した後、800mlのRECl溶液(REに基づいて算出される当該溶液の濃度は319g/L;REはLaとCeとの希土類混合物;希土類酸化物質量に基づいて算出すると、La:Ce=3:2)を添加して撹拌し、90~95℃まで昇温して1時間保持した。続いて、ろ過、洗浄を行い、ろ過ケークを120℃で乾燥し、格子定数が2.471nm、酸化ナトリウム含量が5.5wt%、REに基づいて算出される希土類含量が11.3wt%であるY型分子篩を得た。
【0161】
続いて、当該分子篩を温度450℃、80%水蒸気下で5.5時間焼結し、格子定数2.461nmのY型分子篩を得た。
【0162】
冷却した後、当該格子定数2.461nmのY型分子篩を、268gのリン酸アンモニウムが溶解された水溶液6Lに添加し、60℃まで昇温してリン改質処理を50分間行った。その後、当該分子篩をろ過、洗浄し、得られたろ過ケークを含水量1wt%未満となるように乾燥処理した。
【0163】
続いて、加熱気化されたSiClガスを、SiCl:Y型分子篩=0.6:1の質量比で、リン改質処理後の分子篩へ導入し、温度480℃の条件下で1.5時間反応させた。その後、20Lの脱イオン水で洗浄し、ろ過した。
【0164】
得られたろ過ケークに、濃度0.030g/mlのZnCl溶液2300mlをゆっくり添加し、4時間含浸させた。含浸後の分子篩を130℃で5時間加熱乾燥した後、380℃の焼結条件下で3.5時間焼結し、改質Y型分子篩(SZ2と表記する)を得た。その物理、化学的性質は表1に示す。
【0165】
暴露状態のSZ2を800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ2のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0166】
アルミナ含量21wt%のアルミナゾル714.5gを1565.5gの脱イオン水に投入し、撹拌下で、固形質含量76wt%のカオリン2763gを添加して60分間分散させた。アルミナ含量61wt%の擬似ベーマイト2049gを8146gの脱イオン水に投入し、撹拌状態下で、化学的に純粋な塩酸210mlを添加し、60分間酸性化させた。続いて、これに上記分散しておいたカオリンスラリーを添加し、微細化されたSZ2分子篩1500g(ドライベース)をさらに添加し、均一に撹拌した後、噴霧乾燥及び洗浄処理を行い、加熱乾燥を経て、触媒(SC2と表記する)を得た。
【0167】
なお、得られたSC2触媒には、SZ2分子篩が30wt%、カオリンが42wt%、擬似ベーマイトが25wt%、アルミナゾルが3wt%含まれていた。
【0168】
<実施例3>
2000gのNaY分子篩(ドライベース)を脱イオン水22Lに投入し、撹拌して均一に混合した後、570mlのRECl溶液(REに基づいて算出される当該希土類塩溶液の濃度は319g/L;REはLaとCeとの希土類混合物;希土類酸化物質量に基づいて算出すると、La:Ce=3:2)を添加して撹拌し、90~95℃まで昇温して1時間保持した。続いて、ろ過、洗浄を行い、ろ過ケークを120℃で乾燥し、格子定数が2.471nm、酸化ナトリウム含量が7.5wt%、REに基づいて算出される希土類含量が8.5wt%であるY型分子篩を得た。
【0169】
続いて、当該分子篩を温度470℃、70%水蒸気下で5時間焼結し、格子定数2.458nmのY型分子篩を得た。
【0170】
冷却した後、当該格子定数2.458nmのY型分子篩を、95gのリン酸水素二アンモニウムが溶解された水溶液6Lに添加し、40℃まで昇温してリン改質処理を80分間行った。その後、当該分子篩をろ過、洗浄し、得られたろ過ケークを含水量1wt%未満となるように乾燥処理した。
【0171】
続いて、加熱気化されたSiClガスを、SiCl:Y型分子篩=0.4:1の質量比で、リン改質処理後の分子篩へ導入し、温度500℃の条件下で1時間反応させた。その後、20Lの脱イオン水で洗浄し、ろ過した。
【0172】
得られたろ過ケークに、濃度0.070g/mlのZn(NO溶液2500mlをゆっくり添加し、4時間含浸させた。含浸後の分子篩を130℃で5時間加熱乾燥した後、500℃の焼結条件下で2時間焼結し、改質Y型分子篩(SZ3と表記する)を得た。その物理、化学的性質は表1に示す。
【0173】
暴露状態のSZ3を800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりSZ3のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0174】
アルミナ含量21wt%のアルミナゾル714.5gを1565.5gの脱イオン水に投入し、撹拌下で、固形質含量76wt%のカオリン2763gを添加して60分間分散させた。アルミナ含量61wt%の擬似ベーマイト2049gを8146gの脱イオン水に投入し、撹拌状態下で、化学的に純粋な塩酸210mlを添加し、60分間酸性化させた。続いて、これに分散しておいた上記カオリンスラリーを添加し、微細化されたSZ3分子篩1500g(ドライベース)をさらに添加し、均一に撹拌した後、噴霧乾燥及び洗浄処理を行い、加熱乾燥を経て、触媒(SC3と表記する)を得た。
【0175】
なお、得られたSC3触媒には、SZ3分子篩が30wt%、カオリンが42wt%、擬似ベーマイトが25wt%、アルミナゾルが3wt%含まれていた。
【0176】
以下の比較例1~3は、本発明ではない改質Y型分子篩及び接触分解触媒の調製に関する。
【0177】
<比較例1>
2000gのNaY分子篩(ドライベース)を脱イオン水20Lに投入し、撹拌して均一に混合させた後、1000gの(NHSOを添加して撹拌し、90~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過、洗浄した。
【0178】
ろ過ケークを120℃で乾燥した後、温度650℃、100%水蒸気下で5時間焼結する水熱改質処理を行った。続いて、これを20Lの脱イオン水に投入して撹拌し、均一に混合させた後、1000gの(NHSOを添加して撹拌し、90~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過、洗浄した。
【0179】
当該ろ過ケークを120℃で乾燥した後、温度650℃、100%水蒸気下で5時間焼結する2回目の水熱改質処理を行った。これにより、2回のイオン交換及び2回の水熱超安定化を経た希土類不含有水熱超安定Y型分子篩(DZ1と表記する)を得た。その物理、化学的性質は表1に示す。
【0180】
暴露状態のDZ1を800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ1のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0181】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ1分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリー化し、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1の作製方法に準じて)。作製した接触分解触媒をDC1と表記する。
【0182】
なお、得られたDC1触媒には、DZ1分子篩が30wt%、カオリンが42wt%、擬似ベーマイトが25wt%、アルミナゾルが3wt%含まれていた。
【0183】
<比較例2>
2000gのNaY分子篩(ドライベース)を脱イオン水20Lに投入し、撹拌して均一に混合させた後、1000gの(NHSOを添加して撹拌し、90~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過、洗浄した。
【0184】
ろ過ケークを120℃で乾燥した後、温度650℃、100%水蒸気下で5時間焼結する水熱改質処理を行った。続いて、これを20Lの脱イオン水に投入して撹拌し、均一に混合させた後、200mlのRE(NO溶液(REに基づいて算出される当該希土類塩溶液の濃度は319g/L;REはLaとCeとの希土類混合物;希土類酸化物質量に基づいて算出すると、La:Ce=3:2)、及び900gの(NHSOを添加して撹拌し、90~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過、洗浄した。
【0185】
当該ろ過ケークを120℃で乾燥した後、2回目の水熱改質処理(温度650℃、100%水蒸気下で5時間焼結する)を行った。これにより、2回のイオン交換及び2回の水熱超安定化を経た希土類含有水熱超安定Y型分子篩(DZ2と表記する)を得た。その物理、化学的性質は表1に示す。
【0186】
暴露状態のDZ2を800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ2のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0187】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ2分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリー化し、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1の作製方法に準じて)。作製した接触分解触媒をDC2と表記する。
【0188】
なお、得られたDC2触媒には、DZ2分子篩が30wt%、カオリンが42wt%、擬似ベーマイトが25wt%、アルミナゾルが3wt%含まれていた。
【0189】
<比較例3>
2000gのNaY分子篩(ドライベース)を脱イオン水22Lに投入し、撹拌して均一に混合した後、570mlのRECl溶液(REに基づいて算出される当該希土類塩溶液の濃度は319g/L;REはLaとCeとの希土類混合物;希土類酸化物質量に基づいて算出すると、La:Ce=3:2)を添加して撹拌し、90~95℃まで昇温して1時間保持した後、ろ過、洗浄した。
【0190】
ろ過ケークを120℃で乾燥し、格子定数が2.471nm、酸化ナトリウム含量が7.5wt%、REに基づいて算出される希土類含量が8.5wt%であるY型分子篩を得た。続いて、当該分子篩を、95gのリン酸水素二アンモニウムが溶解された水溶液6Lに添加し、40℃まで昇温してリン改質処理を80分間行った。その後、当該分子篩をろ過、洗浄し、得られたろ過ケークを含水量1wt%未満となるように乾燥処理した。
【0191】
続いて、加熱気化されたSiClガスを、SiCl:Y型分子篩=0.4:1の質量比で導入し、温度580℃の条件下で1.5時間反応させた後、20Lの脱イオン水で洗浄し、ろ過を経て、改質Y型分子篩(DZ3と表記する)を得た。その物理、化学的性質は表1に示す。
【0192】
暴露状態のDZ3を800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、XRD法によりDZ3のエージング前後の分子篩相対結晶化度を分析するとともに、エージング後の相対結晶化度維持率を算出した。結果は表2に示す。
【0193】
接触分解触媒の通常の作製方法を用い、DZ3分子篩、カオリン、水、擬似ベーマイトバインダ及びアルミナゾルをスラリー化し、噴霧乾燥を経て、マイクロボール触媒を作製した(実施例1の作製方法に準じて)。作製した接触分解触媒をDC3と表記する。
【0194】
なお、得られたDC3触媒には、DZ3分子篩が30wt%、カオリンが42wt%、擬似ベーマイトが25wt%、アルミナゾルが3wt%含まれていた。
【0195】
<測定例>
実施例1~3で作製された触媒SC1、SC2及びSC3のそれぞれを、800℃、100%水蒸気雰囲気下で4時間又は17時間エージングした後、その軽油マイクロ活性を評価した。評価結果は表3に示す。なお、触媒SC1、SC2及びSC3のそれぞれに対応する測定例の番号は、測定例1、測定例2、測定例3である。
【0196】
(軽油マイクロ活性の評価方法)
RIPP92-90標準法(『石油化学分析法(RIPP試験法)』、Cuiding YANGら編集、科学出版社、1990年9月出版、第263~268頁を参照)を用い、各触媒の軽油マイクロ活性を評価した。なお、触媒装入量は5.0gであり、反応温度は460℃であり、原料油は、235~337℃の蒸留範囲を持つDagang軽質ディーゼル油であった。生成物の組成はガスクロマトグラフィによって分析した。軽油マイクロ活性は生成物の組成に基づいて下記式で算出した。
【0197】
軽油マイクロ活性(MA)=(生成物のうち、216℃未満のガソリンの収量+ガスの収量+コークスの収量)/原料の合計投入量×100%
<比較測定例>
比較例1~3で作製された接触分解触媒DC1、DC2及びDC3のそれぞれを800℃、100%水蒸気雰囲気下で4時間又は17時間エージングした後、その軽油マイクロ活性を評価した。評価方法は測定例と同様である。評価結果は表3に示す。なお、触媒DC1、DC2及びDC3のそれぞれに対応する比較測定例の番号は、比較測定例1、比較測定例2、比較測定例3である。
【0198】
<応用例>
触媒SC1、SC2、SC3を800℃、100%水蒸気雰囲気下で12時間エージングした後、小型の固定流動床式反応器(ACE)において、水添LCOの処理のための接触分解反応性能を評価した。分解で得られたガスや製品油はそれぞれ収集し、ガスクロマトグラフィによって分析した。なお、触媒装入量は9gであり、反応温度は500℃であり、単位時間あたりの重量空間速度は16h-1であった。オイルに対する触媒の重量比は表5の通りであり、ACE実験における原料の性質は表4の通りである。評価結果は表5に示す。なお、触媒SC1、SC2、SC3のそれぞれに対応する応用例の番号は、応用例1、応用例2、応用例3である。
【0199】
LCO有効転化率(%)=100-ディーゼル油の収率-ドライガスの収率-コークスの収率-重油の収率
<比較応用例>
触媒DC1、DC2、DC3、及び中国特許出願公開CN104560187Aの実施例で用いられたHAC触媒を、800℃、100%水蒸気雰囲気下で12時間エージングした後、小型の固定流動床式反応器(ACE)において、水添LCOの処理のための接触分解反応性能を評価した。評価方法は応用例と同様である。ACE実験における原料の性質は表4の通りである。評価結果は表5に示す。触媒DC1、DC2、DC3及びHAC触媒のそれぞれに対応する比較応用例の番号は、比較応用例1、比較応用例2、比較応用例3、比較応用例4である。
【0200】
LCO有効転化率(%)=100-ディーゼル油の収率-ドライガスの収率-コークスの収率-重油の収率
【0201】
【表1】
【0202】
表1から解るように、本発明で提供される、リン、希土類及び亜鉛を含む改質Y型分子篩は、酸化ナトリウム含量が低く、シリカ・アルミナ比が比較的高いときの非骨格アルミニウム含量が比較的少なく、全細孔体積に対する孔径2.0~100nmを有する二次孔の細孔体積の百分率が比較的高く、且つ、B酸/L酸(強いB酸の酸価とL酸の酸価との比)が比較的高く、分子篩格子定数が比較的小さく希土類含量が比較的高いときの結晶化度測定値が比較的高く、熱安定性が高い、といった優れた点を兼備する。
【0203】
【表2】
【0204】
表2から解るように、本発明で提供される、リン、希土類及び亜鉛を含む改質Y型分子篩を暴露状態で800℃、17時間という苛烈な条件でエージングした後でも、当該試料分子篩は比較的高い相対結晶化度維持率を有する。このことは、本発明で提供される改質Y型分子篩が高い水熱安定性を有することを意味する。
【0205】
【表3】
【0206】
【表4】
【0207】
【表5】
【0208】
表3及び表5の結果から解るように、本発明で提供される触媒は、比較例の触媒に比べ、非常に高い水熱安定性、明らかにより低いコークス選択性、明らかにより高いガソリン収率が示され、且つ、ガソリン中のBTX(ベンゼン+トルエン+キシレン)の収率が顕著に向上し、ガス生成物中のエチレン及びプロピレンの総收率も顕著に向上する。
【0209】
以上、本発明における好ましい実施形態を詳細に説明した。但し、本発明は上述した実施形態の具体的な細部に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本発明の技術的構成に対して種々の簡単な変形を施すことができる。これら簡単な変形も全て本発明の保護範囲に含まれる。
【0210】
なお、上述した具体的な実施形態において説明された各々の具体的な技術的特徴は、矛盾が生じない範囲で、任意の好適な方式で組み合わせることができる。但し、不要な重複を避けるために、本開示では、実施可能な各種の組み合わせについて繰り返して説明することを省略する。また、本発明の思想から逸脱しない限り、本開示における様々な異なる実施形態同士を任意に組み合わせることもできる。当該組み合わせも同様に本発明の開示内容と理解されるべきである。