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特許7394117組織又はアーチファクトを検出し又は識別するために使用される刺激を与えるシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】組織又はアーチファクトを検出し又は識別するために使用される刺激を与えるシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20231130BHJP
   A61B 5/053 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B5/053
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021509859
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019047076
(87)【国際公開番号】W WO2020041203
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】62/786,666
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/719,792
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514226350
【氏名又は名称】ブライトシード・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】BRITESEED,LLC
【住所又は居所原語表記】4660 N Ravenswood Ave.,Chicago,IL 60640 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ル・ローランド
(72)【発明者】
【氏名】アマル・チャターベディ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507047(JP,A)
【文献】特表2015-513988(JP,A)
【文献】国際公開第2017/139642(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 5/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術システムであって、
刺激発生器と、
外科手術器具の作業端部に配置されている少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサに連結されている制御器とを含み、
前記制御器は、
前記外科手術器具の前記作業端部に近接した領域内の組織又はアーチファクトに前記刺激発生器によって与えられた刺激の解析を始めるための入力に応答して前記少なくとも1つのセンサから経時的にデータを取得し、
前記少なくとも1つのセンサから経時的に取得された前記データを解析して、センサデータ解析結果を生成し、
前記センサデータ解析結果に対して信号処理方法及び/又はパターン照合を行い、且つ、
前記信号処理方法又は前記パターン照合から前記刺激発生器によって与えられた刺激に応答した変化の有無に基づいて前記組織又は前記アーチファクトが前記外科手術器具の前記作業端部に近接した前記領域内に存在するかを示す、
ように構成され、
前記少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの発光素子及び少なくとも1つの光センサを含み、該少なくとも1つの発光素子及び該少なくとも1つの光センサは前記外科手術器具の前記作業端部に配置され、
前記制御器は、前記少なくとも1つの光センサからの信号から脈動成分と非脈動成分とを分離するスプリッタと、前記脈動成分及び/又は前記非脈動成分を解析して前記センサデータ解析結果を生成し、前記センサデータ解析結果に対して信号処理方法及び/又はパターン照合を行うアナライザとを備える、外科手術システム。
【請求項2】
前記制御器は、ウェーブレット方法、短時間フーリエ変換方法、及びWigner-Ville解析方法の少なくとも1つを含む時間周波数解析方法を用い前記少なくとも1つのセンサから取得された前記データを解析するように構成されている、請求項1に記載の外科手術システム。
【請求項3】
前記信号処理方法は、しきい値に対する前記センサデータ解析結果の比較を含む、請求項1又は2に記載の外科手術システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのセンサはセンサアレイを含み、且つ前記信号処理方法は前記センサアレイに沿った各センサのタイムデータを含むテンソルに対して実行される平均二乗誤差処理を含む、請求項1又は2に記載の外科手術システム。
【請求項5】
二次元テンソルは、一次元センサアレイに使用され、且つ三次元テンソルは、二次元センサアレイに使用される、請求項4に記載の外科手術システム。
【請求項6】
前記刺激発生器は、電気刺激発生器を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の外科手術システム。
【請求項7】
前記外科手術器具は第1のジョー及び第2のジョーを含み、前記少なくとも1つの光センサは前記第1のジョーに配置され、且つ前記少なくとも1つの発光素子は前記第2のジョーに配置されている、請求項に記載の外科手術システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの発光素子及び前記少なくとも1つの光センサは、共通の方向を向き、それらの間に固定又は可変の間隔を有する、請求項1に記載の外科手術システム。
【請求項9】
力装置を更に含み、前記制御器は、前記出力装置に接続され、且つオペレータに前記外科手術器具の前記作業端部に近接した領域内の前記組織又は前記アーチファクトの存在を知らせるための前記出力装置を作動するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の外科手術システム。
【請求項10】
外科手術システムであって、
刺激発生器と、
少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサに接続されている制御器とを含み、
前記制御器は、前記少なくとも1つのセンサに近接した組織又はアーチファクトは前記刺激発生器によって与えられた刺激に応答して変化するかを決定し、且つ前記組織又はアーチファクトは前記刺激発生器によって与えられた刺激に応答した変化の有無に基づいて外科手術器具の作業端部に近接した領域内に存在するかを示すように構成され、
前記少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの発光素子及び少なくとも1つの光センサを含み、該少なくとも1つの発光素子及び該少なくとも1つの光センサは前記外科手術器具の前記作業端部に配置され、
前記制御器は、前記少なくとも1つの光センサからの信号から脈動成分と非脈動成分とを分離するスプリッタと、前記脈動成分及び/又は前記非脈動成分を解析して前記刺激発生器によって与えられた前記刺激に応答する、前記少なくとも1つのセンサに近接した前記組織又は前記アーチファクトが変化するかを決定するアナライザとを備える、外科手術システム。
【請求項11】
前記刺激発生器は、電気刺激発生器を含む、請求項10に記載の外科手術システム。
【請求項12】
前記電気刺激発生器は、少なくとも1つ以上の表面電極、少なくとも1つ以上の挿入電極、又は少なくとも1つ以上の手術用プローブ若しくはニードルと電気的に接続され又は連結されている、請求項11に記載の外科手術システム。
【請求項13】
前記外科手術器具は、第1のジョー及び第2のジョーを含み、前記少なくとも1つの光センサは前記第1のジョーに配置され、且つ前記少なくとも1つの発光素子は、前記第2のジョーに配置されている、請求項10に記載の外科手術システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの発光素子及び前記少なくとも1つの光センサは、共通の方向を向き、それらの間に固定又は可変の間隔を有する、請求項10に記載の外科手術システム。
【請求項15】
前記外科手術器具は、第1のジョー及び第2のジョーを含み、前記電気刺激発生器は、2つの電極を含み、各ジョーが前記電極の1つを含み、かつ前記少なくとも1つのセンサは、刺激前後に、前記電気刺激発生器の前記2つの電極間のインピーダンスを測定するように構成されている、請求項11に記載の外科手術システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本特許は、例えば脈管等のような組織又はアーチファクトを検出し又は識別するために使用されるシステムに関し、より詳細には、刺激を組織又はアーチファクトに与える場合、組織又はアーチファクトを検出し又は識別するために使用されるシステムに関する。
【0002】
外科処置中の術野内において、脈管等の組織又はアーチファクトを検出し又は識別するシステム及び方法は、外科医又は外科チームに有益な情報を与える。米国病院は、手術中の不注意による脈管の損傷のせいで立て替え不可能な経費で年間数十億ドルを失う。加えて、関与する患者は、最大32%という死亡率に直面することとなり、そして、是正処置を要し且つ、追加で最大9日間入院する可能性が高いであろう。結果として、数十万ドルとはいかないまでも、治療のために数万ドルの追加経費がかかることとなる。したがって、術野内において例えば脈管等のような組織又はアーチファクトの正確に検出又は識別することを可能にする方法及びシステムから得ることに重要な価値があり、その結果、かかる経費を削減又は回避することができる。
【0003】
かかる情報を与えるシステム及び方法は、最小限の侵襲的外科処置中において、特に重要である。伝統的に、外科医は、外科処置中、触覚を頼りに、血管を特定し、且つ、例えばこれらの脈管に対して意図しない損傷を回避していた。腹腔鏡手術及びロボット手術を含む、最小限の侵襲的処置への移行のせいで、外科医は、術野内における組織又はアーチファクトの存在に関して決定し且つ脈管の組織間又はアーチファクトを識別するための直接的な視覚化や触覚を用いる能力が失われていた。したがって、外科医は、主に慣習及び経験に基づいて、術野内において特定の組織又はアーチファクトの存在の有無を決定しなければならない。残念ながら、解剖学的変異は、頻繁に起こり、その原因としては、先天性の異常、前回の手術の傷跡、及び体質(例えば、肥満)が挙げられる。外科医がかかる条件下、(潜在的にリアルタイム又は準リアルタイムで)手術中の術野において組織及びアーチファクトの存在及び/又は特徴を決定することを可能にするシステム及び方法は、大きな利益をもたらすであろう。
【0004】
一方、術野についてかかる情報を与えるシステム及び方法を含むことが有益であるが、システム及び方法が手術処置をより複雑にさせることになる場合、これらのシステム及び方法の導入が妨げられるであろう。したがって、脈管等の組織或いはアーチファクトを検出し或いは識別するためのシステム若しくは方法を使用する際に、外科医或いは外科チーム側にそのシステム及び方法は重要な思考を必要とせず、又はシステム若しくは方法を使用するための術野或いは患者の重要な準備を必要としないことが有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以降で詳述するが、本開示は既存のシステム及び方法に対する有利な代替手段を実現するシステム及び方法が説明され、これらのシステム及び方法は、手術器具又は手術処置を過度に複雑化せずに脈管等の組織又はアーチファクトの回避又はアイソレーションのための検出及び/又は判別を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面によれば、手術システムは刺激発生器と、少なくとも1つのセンサと、該少なくとも1つのセンサに連結されている制御器とを含む。少なくとも1つのセンサに近接した制御器は、組織又はアーチファクトが刺激発生器によって与えられた刺激に応じて変化するかを決定し、且つ刺激発生器によって与えられた刺激に応じて変化の有無に基づいて組織又はアーチファクトが外科手術器具の作業端部に近接した領域内に存在するかを示すように構成されている。
【0007】
本開示の別の態様によれば、組織又はアーチファクトが術野内にあるかを決定するための外科手術システムを操作するための方法を提供する。該方法は、少なくとも1つのセンサから第1の一連のセンサデータを取得した後、術野に刺激を与え、刺激を術野に与えた後、少なくとも1つのセンサから第2の一連のセンサデータを取得し、第1の一連のセンサデータを第2の一連のセンサデータと比較して、組織又はアーチファクトが術野内に存在するかを決定することを含む。
【0008】
本開示の態様によれば、外科手術システムは刺激発生器と、外科手術器具の作業端部に配置された少なくとも1つのセンサと、前記少なくとも1つのセンサと連結されている制御器とを含む。制御器は、刺激発生器によって与えられた刺激に応じて少なくとも1つのセンサから経時的にデータを取得して、少なくとも1つのセンサから経時的に取得されたデータを解析してセンサデータ解析結果を生成し、センサデータ解析結果に対して信号処理方法及び/又はパターン照合を行い、且つ信号処理方法又はパターン照合に基づいて組織又はアーチファクトが外科手術器具の作業端部に近接した領域内に存在するかを示すように構成されている。
【0009】
本開示の別の態様によれば、方法は外科手術システムを操作し、組織又はアーチファクトが術野内に存在するかを決定するために提供される。該方法は、刺激を術野に与えるステップと、外科手術器具の作業端部に配置された少なくとも1つのセンサから経時的にデータを取得するステップと、少なくとも1つのセンサデータから経時的に取得されるデータを解析してセンサデータ解析結果を生成するステップと、センサデータ解析結果に対して信号処理方法及び/又はパターン照合を行うステップと、信号処理方法又はパターン照合に基づいて外科手術器具の作業端部に組織又はアーチファクトが近接した領域内に存在するかを示すステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の内容については、以降の説明及び添付した図面から、更に完全な形で理解できるであろう。他の要素を明示する目的から、幾つかの図面においては、選択された要素を省略して簡略化している場合がある。幾つかの図面におけるこうした要素の省略は、例示的な実施形態において、必ずしも特定の要素の存在の有無を示すわけではない(例外として、対応する記載された説明において明記しない限り)。どの図も、必ずしも実スケールとは限らない。
【0011】
図1図1は、本開示の実施態様に従った外科手術システムの概略図である。
【0012】
図2図2は、図1の外科手術システムに用いられることが可能な電気刺激発生器の回路図である。
【0013】
図3図3は、固定された間隔の発光素子及び光センサを備える、図1の外科手術器具の透過率ベースの実施形態の拡大部分図であり、脈管の断面が発光素子及び光センサの間に配置されたように示される。
【0014】
図4図4は、図1の外科手術システムに用いられることが可能な外科手術器具のジョーの拡大側面図であり、電気刺激発生器と連結された電極の形態が示される。
【0015】
図5図5は、固定の間隔の発光素子及び光センサを備え、反射率ベースのシステムに適合された、図1の外科手術器具の実施形態の拡大部分図であり、脈管の断面が発光素子及び光センサに近接したように示される。
【0016】
図6図6は、互いに相対的に調整可能な間隔の発光素子及び光センサを備え、反射率ベースのシステムに適合された外科手術器具の別の実施形態の拡大部分図であり、脈管の断面が発光素子及び光センサに近接したように示される。
【0017】
図7図7は、一連の光センサから受信した信号内に1つ以上の対象領域を検出し又は識別するためのいずれかの上述のシステムによって用いられる方法のフローチャートであり、1つ以上の対象領域の検出又は識別は組織又は1以上のアーチファクトの検出又は識別につながる。
【0018】
図8図8は、一連の光センサから受信した信号内に1つ以上の対象領域を検出し又は識別するためのいずれかの上述のシステムによって用いられる分析方法のフローチャートであり、1つ以上の対象領域の検出又は識別は組織又は1以上のアーチファクトの検出又は識別につながる。
【0019】
図9図9は、本開示の実施形態に従う、外科手術システムの概略図であり、ビデオシステムの実施形態と組み合わせてビデオシステムと共に使用される外科手術システムが示される。
【0020】
図10図10は、本開示の実施形態に伴う、外科手術システムの概略図であり、ビデオシステムの別の実施形態と組み合わせてビデオシステムと共に使用される外科手術システムが示される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に開示された実施形態は、例えば脈管等のような組織及び/又はアーチファクトを検出し又は識別するためのシステム及び方法を提供する。かかるシステムは刺激発生器及び少なくとも1つのセンサを含んでよく、又は刺激発生器及び少なくとも1つのセンサを使用してよく、該少なくとも1つのセンサは制御器に連結され、該制御器は該少なくとも1つのセンサに近接した組織又はアーチファクトが刺激発生器によって与えられた刺激に応答して変化を受けたかを決定し、且つ組織又はアーチファクトが刺激発生器によって与えられた刺激に応答して変化の有無に基づいて外科手術器具の作業端部に近接した領域内に存在するかを示すように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、刺激発生器は電気刺激発生器でよい。また、電気刺激発生器は組織又はアーチファクトに電場又は電流を与えることができ、電場又は電流が組織又はアーチファクトの応答の特性を変化するために変更され得る。電気刺激発生器は例えば、1つ以上の表面電極、1つ以上の挿入電極、又は1つ以上の術中プローブ若しくはニードルを含んでよく、又はそれらに電気的に接続若しくは連結されてよい。代替として、刺激発生器は、組織又はアーチファクトの変化を取得するために組織又はアーチファクトに圧力又は熱を与えてよい。尿管を検出及び識別するための有益な実施形態において、刺激発生器は電気刺激発生器である。
【0023】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つ以上のセンサは少なくとも1つの発光素子(又は単に発光素子)と、少なくとも1つの光センサ又は検出器(又は単に光センサ)とを含んでよい。発光素子及び光センサは外科手術器具の作業端部に配置され得る。光センサが、発光素子の反対に配置され、例えば外科手術器具の反対のジョー上の発光素子を向くように、発光素子及び光センサは透過率ベースのアプローチに従って作動できる。代わりに、発光素子及び光センサは共通の方向を向き、該発光素子と該光センサとの間に固定又は可変の間隔を有するように、発光素子及び光センサは反射率ベースのアプローチに従って作動できる。
【0024】
他の実施形態では、少なくとも1つのセンサは刺激前後での刺激発生器の電極間インピーダンスの測定を含んでよい。少なくとも1つのセンサの更なる実施形態は、刺激の前後での刺激発生器の電極間において組織の電位の変化の測定、又は抵抗の変化を含んでよい。
【0025】
まず図1によれば、外科手術システム100の実施形態は以下に説明され、このシステム100は例えば外科手術器具106の作業端部104に近接した組織Tの領域102内の脈管Vの特性(例えば、存在、直径等)を決定するために使用され得る。脈管Vは組織Tの領域102の他の脈管に連結されてよく、且つ加えて脈管Vは領域102外に伸びることができ、その結果、脈管Vが患者の体内にもある他の器官(例えば、心臓)と流体連通すると理解されるであろう。さらに、組織Tは図1において特定の深さまで(周回り及び長さの点で)脈管Vを完全に取り囲んでいるように見えるが、システム100が使用されるすべての場合においてそうである必要はない。例えば、組織Tは、脈管Vの長さの周囲を部分的に取り囲み、且つ/又は該長さの一部を取り囲むに過ぎないものであってもよく、又は組織Tは非常に薄い層に脈管Vを覆ってよい。更なる非限定的な例として、脈管Vは尿管であってよく、組織Tは結合組織、脂肪組織及び/又は肝臓組織であってよい。
【0026】
示された実施形態によれば、外科手術器具106の作業端部104はシャフト108の遠位端部でもある。したがって、作業端部及び遠位端部は、作業端部104又は遠位端部104とみなされるであろう。シャフト108は近位端部110を有することもあり、グリップ又はハンドル112(本明細書でグリップ112と区別なく呼ばれる)は、シャフト108の近位端部110に配置される。グリップ112は、器具106の特性に応じて設計されており、図1に示された熱結紮装置に関して、グリップ112は、トリガー114を含むピストル型グリップでよい。代替として、一般的なハサミ型グリップに配置されたフィンガーリングが使用され得る。
【0027】
作業端部又は遠位端部104とグリップ112を有する近位端部110とがシャフト108の対向した最端部に配置されるように示されているが、特定の外科手術器具はシャフトの対向した最端部に配置された作業端部(例えばツールの先端に取り付けられる場所)と、対向した作業端部の中間に配置されたグリップ領域とを有することが理解されるであろう。本明細書で使用される用語「遠位」及び「近位」に従い、かかる器具の作業端部は本明細書において遠位端部と呼ばれ、グリップ領域は近位端部と呼ばれる。しかしながら、示された実施形態と相対的に、遠位端部及び近位端部は、シャフト108の対向した(又は単に反対の)最端部に配置されている。
【0028】
先述したように、刺激発生器116を提供でき、この刺激発生器116は1つ以上の電極118に接続又は連結されてよく、この電極118は、外科手術器具106の作業端部104に配置されてよい。図示されているように、外科手術器具106の作業端部104に配置された2つの電極118が存在する。これらの電極118は、外科手術器具106のシャフト108に沿って1つ以上のワイヤ又はリードを介して刺激発生器116に連結されてよい。図1において刺激発生器116が外科手術器具106から離れているように示されているが、別の実施態様によれば、刺激発生器116は外科手術器具106上又はその外科手術器具106内に配置されてよい。
【0029】
作動において、刺激発生器116は外科手術器具106の作業端部104と、特に電極118とに例えばパルス電流等の電流を流す。電極118が特定の筋組織上又は近くに配置される場合、例えば電流、特にパルス電流の供給は筋組織に応答(例えば、収縮)を引き起こす。具体的には、患者が腹腔内手術のために全身麻酔下である場合、患者の骨格筋組織は電気刺激に応答しないが、平滑筋は応答することが知られている。このように、例えば尿管等のアーチファクトに与えられた電気刺激は、尿管の長さを変動させるように尿管筋を収縮させ、その結果、尿管の動きを生じさせ、この動きは、仮に他の組織(例えば、結合組織又は脂肪組織)が尿管の直接的な視覚化を制限し又は妨げている場合であっても、感知され得る。
【0030】
かかる動きが直接的な視覚化を介して又は遠隔視覚化(例えば、腹腔鏡又はロボット処置に一般的に使用されているビデオモニタ上)によって検出され得るが、術野内の任意の特定位置の視覚化は最高の状態でも困難なことがある。組織及び体液が領域を不明りょうにすることがあるので、視覚的な手がかりを探すだけでは動きを検出することは難しいかもしれない。したがって、拡張及び/又は自動化された感知技術は、尿管の検出及び/又は識別において支援するために尿管の刺激を使用する場合、役立つことがある。
【0031】
例えば、図3~6に示された実施形態によれば、外科手術システム100は、少なくとも1つの発光素子120(若しくは単に発光素子120)と、少なくとも1つの光センサ又は検出器122(若しくは単に光センサ122)とを有する少なくともセンサを含む。図3、5、6に示されるように、発光素子120は外科手術器具106の作業端部104に配置され、且つ光センサ122は外科手術器具106の作業端部104にも配置される。制御器124は、発光素子120及び光センサ122に連結され、この制御器124は、後述されるスプリッタ126及びアナライザ128を含んでよい(図1参照)。
【0032】
光センサ122が発光素子120の反対に配置され、例えば図3に示されるように外科手術器具106の反対のジョー130、132上の発光素子120を向くように、少なくとも1つのセンサは透過率ベースのアプローチに従って作動できる。更なる別の方法では、発光素子120及び光センサ122は共通の方向(例えば、図示される先端部に又はジョー130、132の側面に)を向き、例えば2つのジョー装置(図5参照)の単一のジョー132上の該発光素子120と該光センサ122との間に固定の間隔を有するように、システム100は反射率ベースのシステム(進行方向の脈管及び/又は組織検出用)を含んでよい。代わりに、反射率ベースのシステムの発光素子120及び光センサ122は、発光素子120と光センサ122との間隔を調整するように構成されてよく、例えば、2つのジョー装置の1つのジョー130の端部又は先端部(又は先端側)に発光器120を配置し、2つのジョー装置の残りのジョー132の端部又は先端部(又は先端側)に光センサ122を配置するように構成されてよい(図6参照)。かかる反射率ベースのシステムの操作については、国際公開第2017/139624号に開示されており、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0033】
実施形態では、外科手術器具106がジョー130、132を有することが示されているが、そのシステムがジョーを有しない又は鈍端である外科手術器具又はツールで使用され得ることが理解されるであろう。電極及びセンサの配置は、センサが、単一のジョー、例えば、鈍端の器具若しくはツールの端部、又は鈍端の器具若しくはツールの側面に配置される実施形態と同様であってよいことが更に理解されるであろう。
【0034】
発光素子120は、少なくとも1つの波長の光を放出するように構成されてよい。例えば、発光素子120は、660nm波長の光を放出してよい。これは、単一の素子又は複数の素子(詳細は後述するが例えば素子はアレイに配列され又は構成されている)を有することで達成され得る。同様に、光センサ122は少なくとも1つの波長(例えば660nm)で光を検出するように構成されている。本明細書で説明された実施形態によれば、光センサ122は、複数の素子を含み、それらの素子はアレイに配列され又は構成されている。
【0035】
特定の実施形態によれば、発光素子120は、少なくとも2つの異なる波長の光を放出するように構成されてよく、且つ光センサ122は、少なくとも2つの異なる波長での光を検出するように構成されている。一例として、発光素子120は可視領域の光及び近赤外又は赤外領域の光を放出でき、且つ光センサ122は可視領域内の光及び近赤外又は赤外領域の光を検出できる。具体的に、発光素子120及び光センサ122は660nm及び910nmの光を放出及び検出することができる。かかる実施形態では例えば、生体内の条件下、血管V及び周辺組織Tが最適に貫通することを確保するために使用され得る。
【0036】
更なる波長の光を放出及び検知してもよい。例えば、もし検出の方法では対象脈管における血流の変化速度を感度良くわかるならば、810nm(すなわち、等吸収点)の光を放出及び検知して、結果の正規化は血流量の変化の影響を制限又は排除することができる。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、個別の光センサ122は、第1の脈動成分及び第2の非脈動成分を含む信号を生成するように構成されている。第1の脈動成分は信号の交流電流(AC)成分でよい一方で、第2の非脈動成分は直流電流(DC)成分でよいことが理解されるであろう。光センサ122はアレイの形態で存在する場合、脈動情報及び非脈動情報を、アレイの各素子、又は少なくとも一列のアレイを画定する少なくともアレイの各素子について生成できる。
【0038】
脈動成分について、血管が1分あたり約60パルス(又は脈拍)の特徴的な脈動を有するものであると説明できることが理解されるであろう。脈動が患者の年齢及び状態で変化し得るが、脈動の範囲は、典型的に1分あたり60~100パルス(又は脈拍)の間である。光センサ122は脈管を通る血の動きに相当する特定のAC波形を有する信号(制御器124に通される)を生成することになる。特に、AC波形は脈動内の脈動血液流によって吸収又は反射した光に相当する。一方、DC成分は主に皮下組織によって吸収、反射及び/又は散乱した光に相当する。
【0039】
かかる実施形態によれば、制御器124は光センサ122に連結され、且つ光センサアレイ122の各素子の第2の非脈動成分から第1の脈動成分を分離するためにスプリッタ126を含んでよい。制御器124は脈動成分(少なくとも一部分)に基づく外科手術器具106の作業端部104に近接した領域102内の脈管Vの存在及び/又は特徴を決定するためにアナライザ128を含んでもよい。
【0040】
図7では、システム100の操作方法170が例えば尿管等の組織又はアーチファクトが、術野内に存在するかを決定することを示される。示された実施形態によれば、刺激発生器116が制御器124によって制御される場合、その方法170は、制御器124と、刺激発生器116の作動を調整する制御器124と、少なくとも1つのセンサとによって実施され得る。かかるものとして、それらの実施形態について、制御器124がプロセッサ及びメモリを含む場合、その方法170は、メモリ内に一連の命令として格納でき、その一連の命令は、プロセッサによって実行されるとき、方法170のステップを実行させる。
【0041】
方法170は、ブロック172から始まり、制御器124は開始信号を待つ。示された実施形態によれば、開始信号は刺激発生器116及びセンサを調整するために使用される。かかる整合は示された実施形態において必要であり、なぜなら尿管が存在するか否かについての決定は、組織(例えば、尿管)への刺激の付与前後の、センサデータの比較に依るからである。したがって、時系列的での意味における刺激発生器116及びセンサの調整は示された方法170の一部であるが、それは、システム100のすべての操作方法によって要求される必要がない。もし、開始信号が受信されない場合、方法170はブロック172にあるままである。
【0042】
開始信号が受信されたという決定がブロック172で行われると、制御器124はブロック174で少なくとも1つのセンサから、例えば発光素子120に関連する光センサ122から、センサデータ(第1の一連のセンサデータ)を取得する。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのセンサを、方法170の実施中、常に操作可能にしてよい。他の実施形態によれば、少なくとも1つのセンサを、組織又はアーチファクトへの刺激発生器116の作動及び刺激の付与前後間、作動可能にしてよい。加えて、ブロック174の作動は2以上のセンサからセンサデータを取得する制御器124を備えてよく、すなわち、例えば制御器124は発光素子120及び光センサ122を含む光ベースセンサから及びインピーダンスベースセンサからセンサデータを取得し得ることが理解されるであろう。制御器124は、同時にこれらのセンサからセンサデータを取得可能であり、又は一方のセンサから取得した後もう一方のセンサからデータを取得可能である。
【0043】
制御器124はブロック174においてセンサデータを取得した後、制御器124は刺激発生器116を作動して、刺激を対象組織、例えば尿管に与える。制御器124は、スイッチの開閉によってこれを実施してよく、例えば、電極118間に電流を流す。ブロック174での作動とブロック176での作動との間で経過する時間量は、センサデータが刺激発生器116の作動によって影響されることになる可能性を制限するために選択され得る。制御器124がブロック176で刺激を与えるために刺激発生器116を作動した後、方法170はブロック178に進む。
【0044】
ブロック178において、組織への刺激の付与後、制御器124は少なくとも1つのセンサからセンサデータ(例えば、第2の一連センサデータ)を取得する。ブロック174でセンサデータを取得する制御器124を基準にして行われたコメントは、ブロック178での作動にも同様に与えられる。ブロック176での作動と、再びブロック178での作動との間に経過する時間量は、センサデータが刺激発生器116の作動によって影響を受ける可能性を制限するように選択されてよい。
【0045】
ブロック180において、組織への刺激付与前に取得されたセンサデータは、組織への刺激付与後に取得されたセンサデータと比較される。比較に基づいて、尿管が術野内に存在するかをブロック182で決定する。もし尿管が存在すると決定した場合、その後方法はブロック184に進み、制御器は以下に参照されるように、対向出力装置を作動して、術野内における尿管の存在を作業者(例えば外科医)に知らせるために作業者に指示(例えば、視覚的、聴覚的、又は触覚的)を与える。もし尿管が存在しないと決定した場合、その後方法は、制御器がスタート信号を再び待つブロック172に戻って、方法170のステップを繰り返す。
【0046】
システム100に含まれるセンサによれば、方法170で取得及び比較されるセンサデータは可変である。同様に、本明細書では、光ベースセンサのシステム及び作動方法を説明する他の出願を参照し、システム及び方法のおかげで、組織及び/又はアーチファクトの存在及び特性(例えば、直径)に関して決定することを可能にするが、本明細書で有用であるために、そこに記載されている方法全体に従ってセンサを作動する必要はない。例えば、光ベースのセンサ(素子120/センサ122)はセンサデータを与えることを可能にし、そのセンサデータのおかげで制御器124が刺激を与える前後間の術野における脈管のサイズ及び場所を決定することを可能であるが、制御器124は尿管が存在することを決定するために脈管のサイズ及び場所を決定するのに作動することを必要としない。仮に尿管のサイズ及び場所を決定したとしても、センサデータの変化又はセンサデータの特定部分のおかげで、有益な比較及び決定が行われることを可能としてよい。他の実施形態によれば、尿管の存在、サイズ及び場所は方法170の一部として決定され得る。
【0047】
光ベースのセンサについて、図8に示される方法190を、図7に示される方法170の一部として含み又は該方法170に組み込んでよく、又は図7の方法170の代替として使用されてよい。方法190は入力が解析を始めるために受信されるかを決定する場合、方法190はブロック192から始めることができる。例えば、方法190への入力は刺激発生器118を作動し得るか、又は刺激を与えるために刺激発生器118によって受信される信号であってよい。入力(又はトリガー)が受信されるまで、方法190はブロック192においてループすることが可能である。
【0048】
入力がブロック192で受信されると、方法190はブロック194に進み、センサデータがブロック194で経時的に取得及び収集される。例えば、センサ122からのデータが数秒等の期間にわたって取得され得る。したがって、特定の実施形態によれば、センサデータが5秒間取得され得る一方で、他の実施形態によれば、センサデータが3秒間取得され得る。更なる代替としても可能である。いくつかの実施形態において、期間の始まりは刺激発生器を作動する前に延長されることが可能であり、したがって、得られたデータは刺激発生器を作動する前の少なくとも1つのセット及び刺激発生器を作動した後の少なくとも1つのセットを含み得る。他の実施形態によれば、期間は、刺激発生器を作動した直後からある時点までに延長され得る。
【0049】
現状、経時的にセンサデータを収集することで、尿管に近接した別の組織の応答からの尿管の検出及び尿管の応答の分離を許可することとなっている。これらの組織のいくつかは刺激に対し、ほぼ静かなまま、非常に弱く応答することになる。尿管等の平滑筋組織を有する、腸等の他の組織は尿管の応答と異なり、経時的に応答を示すことが可能であり、現在、反応の違いを使用して、例えば腸から尿管を分離できると考えられる。
【0050】
センサデータがブロック194で取得されると、センサデータはブロック196で解析される。特定の実施形態によれば、センサデータの時間応答の導関数は、データを解析するために使用され得る。一例として、光センサ(例えば、カメラ)の二次元センサアレイが使用される場合、経時変化とそれから解析用に使用された時間微分プロットとを特定するために1フレームずつの比較が使用され得る。他の実施形態によれば、ウェーブレット、短時間フーリエ変換(STFT)、及びWigner-Ville等の時間周波数解析方法が使用され得る。時間周波数解析のために、現状、高速サンプリングレート(例えば100Hzのオーダーで)が適切な結果を与えることができるが、他のサンプリングレートが代わりに使用可能となっている。更なる実施形態によれば、時間ベースの解析方法は、時間周波数解析方法と連動して使用され得る。
【0051】
いかなる場合にも、解析がセンサデータ上で実行されていると、方法190はブロック198又はブロック200に進む。図8に示されるように、ブロック198のアクション又はブロック200のアクションのいずれか一方は、ブロック196の解析に従うことが可能である。したがって、方法190はブロック196からブロック198まで又はブロック196からブロック200まで進めることができる。実施形態では、ブロック198のアクション及びブロック200のアクションの両方を更に含んでよく、ブロック198の結果をブロック200又は逆もまた同様の結果の確認として使用できる。
【0052】
ブロック198において、信号処理方法は、ブロック196で生じるセンサデータ解析結果に実施され得る。例えば、ブロック196での解析結果はしきい値と比較されて、尿管の存在の有無を決定することができる。また、平均二乗誤差(MSE)処理はセンサアレイに沿った各センサのタイムデータを含むテンソル(マトリックス)について実行可能であり、二次元テンソルは一列のセンサ(すなわち、一次元アレイ)に使用され且つ三次元テンソルは二次元センサアレイに使用され得る。後者のケースによれば、三次元テンソルは二次元センサアレイの二次元のうち1つの次元で数個のセンサ(又は画素)を超えない実施形態に限定され得る。
【0053】
ブロック200において、パターン照合はブロック196で生じるセンサデータ解析結果に実施され得る。このパターン照合は、制御器124/アナライザ128が、例えば、腸とは対照的に、尿管に関連するセンサデータのパターンを認識するように学習するような、機械学習と組み合わせてよい。
【0054】
いずれにしても、方法190はブロック198、200の後の、ブロック202に進む。ブロック202において、出力を与えることが可能である一方で、出力を尿管の存在の有無に関連付けることができる。方法170において、例えばブロック182で、尿管の存在に関する決定を行うためにこの出力を使用してよく、この決定は、その後、ブロック184での出力装置の起動につながってもよい。特定の実施形態によれば、ブロック202で与えられた出力が尿管の存在有無の出力装置を作動するための信号であるように、方法170のブロック182、184のアクションはブロック202のアクションを含んでよい。
【0055】
一般用語及び方法170におけるシステム100を説明してきたが、次に、刺激発生器116から始め、システム100の詳細を説明する。
【0056】
上述したように、刺激発生器116は外科手術器具106から分離でき、又は外科手術器具106に組み込めせることができる。例えば、刺激発生器116はスプリッタ126及びアナライザ128等の、制御器124の残りの部分と同じ物理的筐体に配置され、収容されてよい。したがって、刺激発生器116は、シャフト108に沿ったワイヤ又はリードを介して電極118に接続され得る。外科手術器具106の筐体内の発生器116の配置により、かかるワイヤ又はリードの必要性を制限し又は排除することになるであろう。また、刺激発生器116が外科手術器具106及び制御器124から完全に分離でき、それによって例えば発生器116は外科手術器具106と一緒に使用される器具又はツールに代わって収容され得る。示された実施形態によれば、発生器116は制御器124と収容され、以下で詳細に説明するように制御器124によって制御でき、制御器124を設けた配置のおかげで、発生器116は、制御器124のように離れて配置でき、それによって発生器116を再使用でき且つ発生器116をシステム100の残り(例えば、外科手術器具106)と同程度に滅菌することを必要としない場合がある。
【0057】
図2では電気刺激発生器116の実施形態が示される。発生器116は作動され電極118間にパルス電流を流す。発生器116は、例えば特性として、25~300msのパルス幅、1~5Hzの周波数、60mV~500Vのパルス振幅、及び5~200mAのパルス密度の、パルス電流を流すように構成されてよい。かかるパルス電流は特に尿管の平滑筋を刺激するのに適しているものとされる。
【0058】
電気刺激発生器116はスイッチ又はトランジスタ140を含み、制御器にスイッチ又はトランジスタ140を接続でき、示された実施形態において、スイッチ/トランジスタ149は制御器124に接続されている。スイッチ140は抵抗器142及びコンデンサ144の間に接続され、コンデンサが固定値の静電容量を有する。スイッチ140及びコンデンサ144の分岐合流点は、第1の抵抗器146及び第2の抵抗器148に接続され、第1の抵抗器146は第1の変圧器150に接続され且つ第2の抵抗器148は第2の変圧器152に接続されている。変圧器150、152は固定比率の昇圧型変圧器であってよい。
【0059】
制御器124はスイッチ/トランジスタ140の開閉を作動して、所望の周波数及びパルス幅を供給する。抵抗器142、146、148は所望のパルス振幅及び電流強度を供給することを選択可能である。実際、抵抗器142、146、148はパルス振幅及び電流強度を変更又は変化することができるように電位差計の形態にしてよい。
【0060】
次に、少なくとも1つのセンサについて説明すると、上記では透過率又は反射率を使用する光ベースのセンサが一般事項で説明されたことが理解されるであろう。次に、図3及び図4を透過率ベースのアプローチについて詳しく説明する。
【0061】
透過率ベースの実施形態は、図3及び図4に示され、発光素子120は上述されるように、1つ以上の素子を含んでよい。図3に模式的に示された実施形態によれば、光センサ122は、第1の発光素子120-1、第2の発光素子120-2、及び第3の発光素子120-3を含んでよい。すべての発光素子は特定の波長(例えば、660nm)で光を放出するように構成されてよく、又は特定の素子は他の素子より異なる波長で光を放出してよい。例えば、各発光素子は発光ダイオードであってよい。
【0062】
図3に示されるように、発光素子120が1つ以上の発光素子ダイオードを含むアレイの形態であるそれらの実施形態について、ダイオードは、一次元、二次元又は三次元アレイの形態で配置されてよい。一次元アレイの例としては、1つの平面内の線に沿ってダイオードを配置することが挙げられる一方、二次元アレイの例としては、1つの平面内の複数の行及び列にダイオードを配置することが挙げられる。二次元アレイの更なる例としては、曲面上又は内の線に沿ってダイオードを配置することが挙げられる。三次元アレイは、曲面上又は曲面内の複数の行及び列等、2つ以上の平面に配置されたダイオードを含んでよい。
【0063】
光センサ122は、1つ以上の素子を含んでもよい。また、図2に示された実施形態によれば、光センサ122は、第1の光センサ122-1、第2の光センサ122-2、第Nの光センサ122-n等を含んでよい。発光素子120-1、120-2、120-3の場合と同様に、光センサ122-1、122-2、122-3、122-nはアレイに配置されてよく、上記のアレイに関する説明はここでも同様に適用される。
【0064】
実際、光センサ122のアレイが光センサの列を含む場合(例えば図3等)、アレイ122は代替的にリニアアレイと呼ばれることがある。アレイ122の個別の発光素子は、互いに隣合って配置されてよく、又は光センサ同士は互いに間隔を空けてよい。すなわち、光センサの列を規定する個別の光センサが、アレイの異なる行又は列を規定する光センサによって互いに分離されることも可能である。しかしながら、特定の実施形態によれば、アレイは、電荷結合装置(CCD)、特に複数の画素からなるリニアCCD撮像装置で構成されてよい。更なる代替として、CMOSセンサアレイを用いてよい。
【0065】
素子120及びセンサ122が外科手術器具106の作業端部104に配置されると説明されているが、素子120及びセンサ122を規定するすべての構成要素は器具106の作業端部に配置される必要があると限らないことが理解されるであろう。すなわち、素子120は発光ダイオードを含んでよく、且つその構成要素は作業端部104に配置されてよい。代替として、素子120は、長さのある光ファイバ及び光源を含んでよく、光源は作業端部104から離れて配置され且つファイバは光源に光学的に連結された第1の端部と、作業端部104に配置された第2の端部とを有する。本開示によれば、光が器具106の作業端部104で組織に向かって放出されるので、かかる素子120は、作業端部104に配置されていると更に説明されるであろう。同様の配置は、光ファイバが組織に面して配置された第1の端部と、センサ122を集合的に画定する他の構成要素に光学的に連結された第2の端部とを有するセンサ122について説明できる。
【0066】
システム100はハードウェア及びソフトウェア、更に素子120、センサ122、及び制御器124を含んでよい。例えば、2以上の素子120を使用する場合、駆動制御器は、個別の発光素子のスイッチを制御するために提供され得る。同様に、2以上のセンサ122を含む場合、マルチプレクサを提供してよく、マルチプレクサをセンサ122及び増幅器に連結することができる。また、制御器124は必要に応じてフィルタ及びアナログ・デジタル変換を含んでよい。
【0067】
特定の実施形態によれば、スプリッタ126及びアナライザ128は、1つ以上の電気回路部品によって規定され得る。別の実施形態によれば、1つ以上のプロセッサ(又は単にプロセッサ)は、スプリッタ126及びアナライザ128のアクションを実行するようにプログラムされてよい。更に別の実施形態によれば、スプリッタ126及びアナライザ128はスプリッタ126及びアナライザ128のアクションを実行するように、電気回路構成要素及びプログラムされたプロセッサによって部分的に画定されてよい。
【0068】
例えば、スプリッタ126は、第1の拍動成分を第2の非拍動成分から分離するためにプログラムされたプロセッサを含み又はそのプロセッサによって画定され得る。また、アナライザ128はプログラムされたプロセッサを含み又はそのプロセッサによって画定されてよく、拍動及び/又は非拍動成分に基づいて外科手術器具106の作業端部104に近接した領域102内で脈管Vの存在(又は例えばサイズを定量化する)を決定できる。プロセッサがプログラムされた命令は、プロセッサに関連するメモリに格納されてよく、当該メモリは1以上の有形の非一過性コンピュータ可読メモリを含んでよく、該命令はプロセッサによって実行されると、1以上のプロセッサに1以上のアクションを実行させることができる。
【0069】
組織及び/又はアーチファクト(例えば、血管又は尿管等の脈管)特性を決定するためにかかる透過率ベースのシステムの操作について、これらの特性は、例示され且つ限定されるものではなく位置及び次元(例えば、長さ、幅、直径等)を含んでよいが、米国特許出願公開第2015/0066000号及び米国特許出願公開第2017/0181701号と、国際公開第2016/134327号及び国際公開第2016/134330号はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれている。かかるシステムの操作に関連する問題を処理することができる関連する構造及び操作に関して、国際公開第2017/062720号及び国際公開第2018/044722号はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0070】
図4では、電極118及びセンサの部品の両方を含む作業端部104の実施形態が示される。図示されるように、各ジョー130、132は電極118の1つを含んでよい。電極118は中央開口部を含んでよく、中央開口部のおかげで第1のジョー130内の発光素子120から第2のジョー132内の光センサ122への光の通過を可能にする。ジョー130、132(並びに、素子120及びセンサ122)の残りを有する電極120間の相互作用を制限するために、アイソレータ又は絶縁体160は、電極とジョー130、132の残りの部分との間に配置される。
【0071】
上述したように、例えば、上述の光ベースのセンサの代わりに他のセンサを使用し、又はセンサと組み合わせて使用して、刺激が与えられた組織又はアーチファクトの動きを追加的に確定できる。
【0072】
ジョーを有する外科手術器具の使用の一実施形態は、刺激の前後でジョーのインピーダンスの変化を測定することを必要とし、それからインピーダンスの変化をジョー間の組織における動きと関連付けることを必要とする。かかるセンサは、例えば分圧器及びアナログ・デジタル変換器を含むことによって図2の刺激発生器に統合され得る。他の代替は、電位の変化又は抵抗の変化に頼り得る。
【0073】
図9及び図10では、例えば低侵襲手術又は腹腔鏡手術の間に従来から使用され得るようなビデオシステム210の実施形態と組み合わせた外科手術システム100の実施形態が示される。ビデオシステム210は、ビデオカメラ又は別の画像キャプチャ装置212と、ビデオ又は他の関連するプロセッサ214と、表示画面218を有するディスプレイ216とを含む。
【0074】
図示されるように、ビデオカメラ212は2つの外科手術器具106の作業端部104に近接した領域102に向けられる。図にも示されるように、外科手術器具106のいずれも図1に示され且つ上述されたような外科手術システム100の実施形態の一部である。この場合において、器具106はそれぞれ可視的表示器又はユーザインターフェース250を含み、その表示器又はインターフェース250は、シャフト108の固体バンド254によって分離された発光素子成分252を含む一連のバンド252、254を含んでよい。しかしながら、他の実施形態によれば、器具106の1つだけが可視的表示器250を含んでよいことが理解されるであろう。例えば発生器116、スプリッタ126及びアナライザ128等のシステム100の構成要素は、例えばビデオプロセッサ214と同じ物理的ハウジングに収容されてよいことに言及しておくが、他の構成要素は説明を容易にするために省略されている。
【0075】
図9の実施形態において、ビデオカメラ212からの信号がビデオプロセッサ214を通ってディスプレイ216に送られ、外科医又は外科チームの他のメンバーは典型的に患者内にある領域102及び外科手術器具106の作業端部104を見ることができる。作業端部104、すなわち領域102に可視的表示器250が近接しているので、可視的表示器250はディスプレイスクリーン108にも見える。上述したように、このおかげで有益に、外科医は、領域102及び作業端部104と同じディスプレイ216及びディスプレイスクリーン218上を介して、可視的表示器250を介して視覚的合図又はアラームを知ることができる。同様に、このおかげで、外科医は、可視的表示器250を介して伝達された情報の他の場所を見る必要性が制限される。
【0076】
図10では、ビデオシステム210の別の実施形態が示され、そのビデオシステム210は外科手術システム100の実施形態を組み合わせて使用可能である。この実施形態によれば、ビデオプロセッサ214がビデオカメラ212’と別のハウジングに配置されていないが、そのビデオプロセッサ214はビデオカメラ212’と同じハウジングに配置されている。更なる実施形態によれば、ビデオプロセッサ214はディスプレイ218’としてディスプレイ216’の残りと同じハウジングに代わって配置されてよい。別の方法で、図9に示されるビデオシステム210の実施形態に関する上記の説明は、図10に示されるビデオシステム210の実施形態に同様に適用される。
【0077】
ユーザインターフェース250のおかげで、外科医又は外科チームは、制御器124からの出力を有利に見ることができる一方で、図1に示されるように、ユーザインターフェース250を備えた他の出力装置を含むことができる。例えば、手術に使用されるビデオディスプレイ若しくはモニタ300(例えば、図9及び10のディスプレイ216、216’)にアラートを表示でき、或いはモニタ上の画像の色を変更し又は点滅し、サイズ若しくはその他の方法で外観を変更してよい。補助出力は聴覚アラームを出すスピーカ302の形態でもよく、それを含んでもよい。補助出力は器具106の使用を中断する、外科手術器具106に関連する安全ロックアウトの形態もよく、それを組み込んでもよい。例えば、ロックアウトは、外科手術器具106が熱結紮装置である場合には結紮又は焼灼を防止することができるであろう。更に他の例として、補助出力はバイブレータ304等の触覚フィードバックシステムの形態であってもよく、このバイブレータ304が触感呈示又はアラームを与えるために、外科手術器具106のハンドル又はハンドピースに装着され又はそれと一体的に形成されてよい。外科手術器具108の作業端部104に配置された発光素子に加えて、1つ以上の発光素子は、例えばグリップ又はハンドル112の上に配置又はそれに連結等されたシャフト108の近位端部110に配置されて、可視表示又はアラームを与えることができる。補助出力のこれらの特定の形態の様々な組合せを使用することもできる。
【0078】
上述したように、外科手術システム100は、作業端部104を有する外科手術器具106も含み、ユーザインターフェース250及びセンサ(並びに好的な態様において、発光素子120及び光センサ122)は外科手術器具106に取り付けられる(代わりに、取り外し可能/可逆的又は永続的/不可逆的に)。ユーザインターフェース250及びセンサは外科手術器具106と(すなわち、一つのピースとして)一体形成されてよい。また述べたように、ユーザインターフェース250及びセンサは、外科手術器具又はツール106と組み合わせて使用される個別の器具又はツールに取り付けられることが可能である。
【0079】
上記のように、一実施形態において、外科手術器具106は熱結紮装置であってよい。別の実施形態において、外科手術器具106は、対向するジョーを有する把持器又は把持鉗子であってよい。更なる実施形態によれば、外科手術器具は、例えば、洗浄器、外科用ステープラー、クリップアプライヤー、及びロボット手術システム等の他の外科手術器具であってよい。更なる他の実施形態によれば、外科手術器具は、ユーザインターフェース及びセンサに伝え、術野内に該ユーザインターフェース及び該センサを配置するための他の機能を有さなくてよい。単一の実施形態の説明は、他の外科手術器具又はツール106と共にシステム100の使用を排除することを意図するものではない。
【0080】
結論として、上記では本発明の異なる実施形態の詳細な説明を行ってきたが、以下の点を理解されたい:即ち、本発明の法的な範囲は、本件特許の最後に記載した特許請求の範囲に記載した言葉によって規定される。詳細な説明は、例示的なものとしてのみ解釈すべきであり、そして、全ての可能な本発明の実施形態を説明しているわけではない。なぜならば、全ての可能な実施形態を記載することは、不可能ではないにしても、実際的ではないからである。数多くの別の実施形態を実施することが可能であり、現時点での技術、又は、本特許の出願日より後に開発された技術を用いてもよく、これらも、なお、本発明を規定した特許請求の範囲内に入るであろう。
【0081】
また、以下の点を理解されたい:即ち、本件特許において「ここで使用される用語「____」は、「...」を意味するものとして定義する」という文章、又は同様の文章を用いて明示的に用語を規定しない限りは、明瞭な意味又は通常の意味を超えて、明示的又は暗黙的にその用語の意味を限定することを意図するものではない。そして、こうした用語は、本件特許において任意のセクションで行われた任意の記載内容(特許請求の範囲の言葉以外)に基づいて限定解釈されるべきものではない。本件特許において本件特許の最後にある特許請求の範囲に記載された任意の用語が単独の意味と一致する態様で言及される程度に、読み手を混乱させず、簡潔にするためだけに、こうした解釈を行う。そして、また、こうした特許請求の範囲の用語が暗黙的に制限されたり、又は単独の意味に限定されることを意図しない。最後に、特許請求の範囲の構成要件を、単語「手段」及び任意の構造の記載のない機能を記載することで規定しない限りは、特許請求の範囲の任意の構成要件の範囲は米国特許法112条(f)の適用に基づいて解釈されることを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10