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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】磁気バルブリターンデバイス
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/12 20060101AFI20231130BHJP
   F02B 19/16 20060101ALI20231130BHJP
   F02B 19/18 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F02B19/12 E
F02B19/16 F
F02B19/16 H
F02B19/18 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021512640
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 FR2019052006
(87)【国際公開番号】W WO2020053501
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】1858111
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501211925
【氏名又は名称】ラビー,ヴィアニー
【氏名又は名称原語表記】RABHI Vianney
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラビー,ヴィアニー
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/130772(WO,A1)
【文献】特開平06-146890(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009049755(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 19/00~19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン(2)用のバルブ型点火プレチャンバ(1)用の磁気バルブリターンデバイス(42)であって、前記内燃エンジンが、ピストン(31)と共に、一次チャージ(30)が導入され得る燃焼チャンバ(5)を形成するために、シリンダ(4)上に位置するシリンダヘッド(3)を含み、前記シリンダヘッド(3)が、成層キャビティ(6)を受容し、該成層キャビティ(6)には、一方では、イニシエータチャージ(9)を注入することができる成層インジェクタ(8)方では、点火手段(11)がつながるものであり
前記成層キャビティ(6)、成層管(7)によって前記燃焼チャンバ(5)に接続されている一方で、成層バルブ(13)が、前記成層管(7)を閉鎖して、前記成層キャビティ(6)を燃焼チャンバ(5)から隔離し、次いで前記成層バルブ(13)のキャビティ側表面(14)を、キャビティ側バルブ座面(19)を用いてバルブ閉塞シート(18)上に静置させること、またはトーチ点火プレチャンバ(23)であって、該トーチ点火プレチャンバ(23)が含む少なくとも1つのガス排出オリフィス(24)を用いて記成層キャビティ(6)を前記燃焼チャンバ(5)と連通させる前記トーチ点火プレチャンバ(23)を前記成層管(7)と共に形成して、この場合に前記成層バルブ(13)のチャンバ側表面(15)を、ャンバ側バルブ座面(21)を用いてバルブ開放シート(20)上に載せることができるものである、内燃エンジン(2)用のバルブ型点火プレチャンバ(1)用の磁気バルブリターンデバイス(42)において
前記磁気バルブリターンデバイスが、
・前記成層バルブ(13)および前記成層管(7)の全部または一部を構成する少なくとも1つの磁性材料(43)と、
少なくとも1つの磁場源(44)であって、その磁束(54)が前記成層バルブ(13)および前記成層管(7)を通過することにより前記成層バルブ(13)および前記成層管(7)を磁化させる、少なくとも1つの磁源(44)と、を含むことを特徴とする、磁気バルブリターンデバイス。
【請求項2】
前記磁場源(44)が、永久磁石(53)であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気バルブリターンデバイス。
【請求項3】
前記磁場源(44)が、電流が流れることができる導線(51)のコイルであることを特徴とする、請求項1に記載の磁気バルブリターンデバイス。
【請求項4】
前記導線(51)のコイルを流れる前記電流のアンペア数が、コンピュータ(52)によって制御されることを特徴とする、請求項3に記載の磁気バルブリターンデバイス。
【請求項5】
前記バルブ開放シート(20)を受容する前記成層管(7)の端部が、前記成層管(7)に追加され、非磁性材料(50)からなる部分(49)であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気バルブリターンデバイス。
【請求項6】
前記キャビティ側表面(14)が、環状分配チャンバ(46)を形成する円環状の周辺凹部(45)を含み、前記キャビティ側バルブ座面(19)の外径が、前記環状分配チャンバ(46)の内径以下であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気バルブリターンデバイス。
【請求項7】
前記燃焼チャンバ(5)につながる前記成層管(7)の部の直径が、ガス絞りオリフィス(47)を形成するように局所的に大幅に低減され、したがって、前記端部が、前記チャンバ側表面(15)と共に、前記キャビティ側バルブ座面(19)が、それが協働するバルブ閉塞シート(18)と接触したときに、最大体積を有するバルブ減衰チャンバ(48)を形成することを特徴とする、請求項1に記載の磁気バルブリターンデバイス。
【請求項8】
前記チャンバ側バルブ座面(21)および前記バルブ開放シート(20)の外径が、前記成層バルブ(13)の外径に近く、一方で、前記チャンバ側バルブ座面(21)がもつ内側の径および前記バルブ開放シート(20)の内径が、ガス絞りオリフィス(47)の直径に近いことを特徴とする、請求項7に記載の磁気バルブリターンデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、バルブ型点火プレチャンバ、または第2に、シャトル電極を備えたスパークプラグに対して意図された磁気バルブリターンデバイスであり、上述のプレチャンバおよび上述のスパークプラグは、スパークによって点火されたイニシエータ装入物によって、内燃エンジンの燃焼チャンバに導入された一次装入物を点火することが意図されている。
【0002】
2018年6月14日に公開されたバルブ型点火プレチャンバに言及した特許出願第FR1750264号、および2018年7月13日に公開されたシャトル電極式スパークプラグに言及した特許出願第FR1662254号が知られている。これらの2つの特許出願は、出願人に帰属する。
【0003】
特許出願第FR1750264号および第FR1662254号の発明は、種類を問わず、一次装入物が新鮮な空気、または再循環および予冷された排気ガスで高度に希釈される、スパーク点火を備えたいずれかのレシプロエンジンに適用される。一次装入物を新鮮な空気または冷却された排気ガスで希釈することにより、上述のモータの平均および/または最大の熱力学的効率を高めることが可能であり、したがって、同じ生成仕事量に対して上述のモータの燃料消費を低減することができる。
【0004】
上述の発明の目的は、高度に希釈された一次装入物の信頼性の高い点火および迅速な燃焼を達成することであり、所望の効率向上は、そのような点火およびそのような燃焼によってのみ可能である。
【0005】
特許出願第FR1750264号および第FR1662254号に記載されているデバイスは、異なる結果を各々生じるが、同様の基本原理に基づいている。便宜上、ここでは、特許出願第FR1750264号で言及されているバルブ型点火プレチャンバに焦点を当てる。
【0006】
特許出願第FR 1750264号によれば、本発明が適用されるスパーク点火式レシプロエンジンの燃焼チャンバが、成層管を通して上述のモータのシリンダヘッド内に形成された成層キャビティに接続されていることに留意されたい。
【0007】
成層インジェクタは、上述の成層キャビティ内で終端し、そこに、容易に引火する酸化剤および圧縮手段によって事前に加圧されたガス燃料混合物からなるイニシエータ装入物を注入することができる。上述のイニシエータ装入物は、一次装入物が少なくとも1つの吸気バルブによってスパーク点火レシプロエンジンの燃焼チャンバに導入され、次いで圧縮された後、一次装入物の燃焼を誘発するために使用される。
【0008】
一次装入物の燃焼の誘発は、点火手段によってイニシエータ装入物を点火することによって行われ、これは、既知のスパークプラグ自体の形態であり得るが、電気アークは、前述のスパークプラグの2つの電極間に形成され得る。
【0009】
一次装入物の燃焼を誘発するためにイニシエータ装入物の燃焼によって放出されるエネルギーに可能な限り多くの効率を与えるために、特許出願第FR1750264号の発明は、成層バルブを求めている。
【0010】
上記バルブは、成層管を閉鎖して成層キャビティを燃焼チャンバから封鎖するために上記管内に作製されたバルブ閉鎖シートと接触してもよく、また成層管内に作製されたバルブ開放シートと接触して、成層キャビティが燃焼チャンバにつながるガス排出オリフィスを用いて上記燃焼チャンバと連通するように作製されたトーチ点火プレチャンバを形成してもよい。
【0011】
特許出願第1750264号明細書を読むと、バルブをバルブ閉鎖シートまたはバルブ開放シート上に静置させるのは、成層キャビティと燃焼チャンバとの間の圧力差であることに気付く。
【0012】
実際、燃焼チャンバ内の圧力が成層キャビティ内の圧力よりも高い場合、バルブは、燃焼チャンバ内のガスが成層キャビティに入るのを防ぐために、それが協働するバルブ閉鎖シートに押し付けられる。
【0013】
逆に、燃焼チャンバ内の圧力が成層キャビティ内の圧力よりも低い場合には、上記バルブは、トーチ点火プレチャンバを形成するように、かつ上記成層キャビティが、上記プレチャンバがその外周に有するガス排出オリフィスを用いて燃焼チャンバと連通するように、上記バルブが協働するバルブ開放シートに押し付けられる。
【0014】
また、特許出願第FR1750264号を読むと、成層キャビティと成層管の組み合わせによって形成される体積が、火花点火エンジンの燃焼チャンバの体積に対して非常に小さいことが有利であることが理解される。実際、上記特許出願で求められる圧縮手段によるイニシエータ装入物の事前圧縮は、エネルギーの点でコストが高く、スパーク点火エンジンの全体的な効率を低減させる。結果として、上記イニシエータ装入物の質量および圧力は最小化されなければならない。
【0015】
しかしながら、成層キャビティと成層管によって形成される小さな体積は、一次チャンバに含まれるガスがエンジンピストンによって圧縮され始めるときに、バルブを作動させるために利用可能な空気の流れが少ないことを意味していることに留意されたい。
【0016】
しかし、ちょうどこの時、上記バルブは、燃焼チャンバ内に含まれるガスが成層管内に入ることを防ぐために、バルブをそれが協働するバルブ閉鎖シートに可能な限り迅速に押し付けることが必須である。
【0017】
成層キャビティと成層管によって形成される体積が小さいにもかかわらず、バルブが十分に短い時間内にバルブ閉鎖シートを効果的に押圧するためには、非常に小さなガス排出オリフィスを設ける必要がある。実際、上記オリフィスは、十分に小さく、燃焼チャンバから成層キャビティへのガスの通過に対して十分に効果的な障壁を構成しなければならず、これにより、上記燃焼チャンバと上記成層キャビティとの間の圧力差を最大化して、バルブを作動させることが許容される。
【0018】
このため、特許出願第FR1750264号の発明の動作の説明で、1200分の1ミリメートルのガス排出オリフィスの直径に言及しているが、成層バルブがバルブ閉鎖シートとバルブ開放シートとの間で移動し得る最大の総移動量は1500分の1ミリメートルである。
【0019】
もちろん、そのような小さな直径は、非限定的な例として与えられている。それでも、一方では成層キャビティ内のガスの圧力を受けるバルブキャビティ側と、他方では燃焼チャンバ内のガスの圧力を受ける上記バルブのチャンバ側との間に十分な圧力差を発生させる必要があることを明らかにしている。
【0020】
実際、特許出願第FR1750264号における本発明の動作の説明は、一例として、イニシエータ装入物が、一次装入物に含まれる燃料の1.6パーセントのみを含み得ることが記載されている。これにより、成層キャビティと成層管によって形成される総体積が非常に小さくなる。上記の小さな体積は、一次チャンバに含まれるガスが圧縮されるときに、一次チャンバと成層キャビティとの間に小さなガス流が確立されることを意味している。このため、バルブを作動させるのに十分な力を生成するには、非常に小さな直径のガス排出オリフィスが必要である。
【0021】
実際、大直径のガス排出オリフィスは、一次チャンバからの過剰のガスを、上記オリフィスを用いて直接成層キャビティに入ることを許容する結果となる。バルブを動かすのに必要な流れと並行して確立されたこの過剰な流れは、バルブのキャビティ側に印加された圧力と上記バルブのチャンバ側に印加された圧力との間の差に弊害をもたらし得る。ガス排出オリフィスの特定の直径を超えると、上記バルブは、もはや作動することができない。
【0022】
しかしながら、直径が非常に小さいガス排出オリフィスには、大きな欠点がある。実際、イニシエータ装入物が成層キャビティ内で点火されると、結果として生じる燃焼により、上記キャビティ内の圧力が急激に上昇する。これは、バルブを押圧して、それが協働するバルブ開放シートに押し付ける効果がある。
【0023】
上記バルブは、上記シートと密閉接触して保持されると、成層管と共にトーチ点火プレチャンバを形成し、これにより、イニシエータ装入物の高温ガスが、ガス排出オリフィスを用いて高温に上昇したトーチの形で逃げ出し、その後、上記トーチはモータの燃焼チャンバの体積に浸透して、そこにある一次装入物に点火する。
【0024】
上記一次装入物の急速燃焼を確実にし、スパーク点火エンジンの効率を最大化するために、高温ガスからなる上記トーチが、燃焼チャンバの周辺限界に達するのに十分な一次装入物に浸透する必要がある。しかしながら、上記トーチによる同じ量の浸透については、トーチごとに点火プレチャンバで生成される圧力は、ガス排出オリフィスの直径が小さくなるにつれて大きくなる。
【0025】
ガス排出オリフィスが非常に小さい場合、十分に浸透する燃焼ガストーチを生成するために、トーチごとに点火プレチャンバで非常に高い圧力を生成する必要がある。そのために、成層インジェクタは、最初に非常に高い圧力でイニシエータ装入物を成層キャビティに導入する必要があり、これは、圧縮手段が大量のエネルギーを消費することを意味している。結果として、非常に小さなガス排出オリフィスは、特許出願第FR1750264号の発明が使用されるスパーク点火エンジンの効率を向上させる可能性を低減させる。
【0026】
さらに、効率の低下は、非常に小さいガス排出オリフィスの唯一の欠点ではないが、これらはそれでも、バルブの適切な作動に不可欠である。実際、スパークプラグによるイニシエータ装入物の点火後に突然発生する高圧は、バルブをそれが協働するバルブ開放シートに対して激しく押し付ける効果を有する。結果として生じる衝撃は、バルブとシートの両方の寿命を損ない、さらには、上記バルブと上記シートの早期破壊につながる可能性がある。
【0027】
これは、スパーク点火エンジンにおいて圧縮が開始されるときに、圧力がバルブを可能な限り効果的に作動させるためには、バルブのチャンバ側が燃焼チャンバ内のガスの圧力に曝される自由表面積を最大にするように、バルブ開放シートの表面積を最小にすることが好ましいことを考慮すると、特に当てはまる。実際、上記バルブを上記記シートから引き離すために、上記ガスの圧力は、上記自由表面領域にのみ与えられる。
【0028】
しかし、バルブ開放シートの表面積を最小化すると、バルブと上記シートとの間に発生する衝撃の表面上の比出力が増加し、上記出力は、例えば、ミリジュール/平方ミリメートルで表される。
【0029】
加えて、実際には、バルブとバルブ開放シートとの間の衝撃を和らげるものは何もなく、これは、上記バルブと上記シートとの両方にとって上記衝撃の破壊的な結果をさらに悪化させることになることにも気付く。
【0030】
結果として、特許出願第FR1750264号によるバルブ型点火プレチャンバの設計は、一方では、ガス排出オリフィスの直径とバルブを作動させるのに必要なバルブ開放シートの表面積、他方では、スパーク点火エンジンの効率とバルブの寿命との間の妥協の結果でしかない。
【0031】
上記妥協を回避し、したがって、バルブの作動または寿命のいずれも妥協することなく、特許出願第FR1750264号によるバルブ型点火プレチャンバを備えたいずれかのスパーク点火エンジンの効率を最大化することを目的として、本発明および特定の実施形態による磁気バルブリターンデバイスは、以下のことを可能にする。
・エンジンピストンが一次チャンバに含まれるガスを圧縮し始めるときに、そして上記バルブを作動させるための空気流が少ない場合でも、バルブを、それが協働するバルブ閉鎖シートに必ず再び接触させる。
・上記バルブの作動を損なうことなく、バルブと、それが協働するバルブ開放シートとの間の衝撃を和らげる。
【0032】
前述のことを念頭に置いて、本発明および特別な実施例による磁気バルブリターンデバイスは、以下を可能にする。
・ガス排出オリフィスの直径、成層キャビティと成層管によって形成される総体積、および上記キャビティ内のイニシエータ装入物の噴射圧力を、スパーク点火エンジンのより良い効率という基準のみに基づいて、かつバルブの作動と耐久性という二重の要件なしに決定する。
・スパーク点火エンジンの効率とバルブの寿命を最大化する。
【0033】
特許出願第FR1750264号のバルブ型点火プレチャンバ、またはそれが参照する特許出願第FR1662254号のシャトル電極スパークプラグと同様に、磁気バルブリターンデバイスは、自動車を含む、それが対象とするほとんどの用途の経済的制約に適合するように、安価で大量生産できるように設計されている。
【0034】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、種類を問わず、それが消費する燃料が気体、液体、または固体であるかどうかにかかわらず、また、その一次装入物が冷却EGRで、いずれかの種類の中性ガスで、または酸素を豊富に含むガスまたはいずれかの他の酸化剤を含むガスで希釈されているかどうかにかかわらず、いずれかの回転式または往復式の内燃スパーク点火エンジンに適用され得ることが理解される。
【0035】
本発明による電磁バルブリターンデバイスを備えたいずれかのスパーク点火エンジンの一次装入物を点火するためのイニシエータ装入物は、上記一次装入物を構成する燃料および/または酸化剤以外の燃料および/または酸化剤を含み得ることも理解される。
【0036】
本発明の他の特徴は、明細書および主請求項に直接または間接的に依存する二次請求項に記載されている。
【0037】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、内燃エンジン用のバルブ型点火プレチャンバを対象としており、上記エンジンは、ピストンと共に、一次装入物を導入することができる燃焼チャンバを形成するためにシリンダの上にシリンダヘッドを含み、上記シリンダヘッドは、一方では、イニシエータ装入物を注入することができる成層インジェクタ、および他方では、点火手段がつながる成層キャビティを受容し、上記キャビティは、成層管によって燃焼チャンバに接続されており、成層バルブは、上記管を閉鎖して、上記バルブのキャビティ側の表面を燃焼チャンバから隔離し、次いでキャビティ側のバルブ座面を用いてバルブ閉塞シート上に静置させるか、または上記管と共に、上記プレチャンバ内の少なくとも1つのガス排出オリフィスを用いて、上記成層キャビティを燃焼チャンバと連通するトーチ点火プレチャンバを作成し、上記バルブが有するチャンバ側表面を、この場合、チャンバ側のバルブ座面を用いてバルブ開放シート上に静置させることができ、上記デバイスは、
・成層バルブおよび成層管の全部または一部を構成する少なくとも1つの磁性材料と、
・上記バルブおよび上記管を磁化するように、磁束が成層バルブおよび成層管を通過する少なくとも1つの磁界源と、を含む。
【0038】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、永久磁石である磁場源を含む。
【0039】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、電流が流れることができる導線のコイルである磁場源を含む。
【0040】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、コンピュータによって制御される導線のコイルを通って流れる電流のアンペア数を有する。
【0041】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、上記管に追加され、非磁性材料で作製された部分からなるバルブ開放シートを受容する成層管の端部を含む。
【0042】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、環状分配チャンバを形成する円形の周辺凹部からなるキャビティ側表面を含み、キャビティ側バルブ座面の外径は上記環状チャンバの内径以下である。
【0043】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、燃焼チャンバにつながる成層管の端部の直径を有し、これは、ガス絞りオリフィスを形成するように局所的に大幅に低減され、したがって、上記端部は、チャンバ側の表面と共に、キャビティ側のバルブ座面が、協働するバルブ閉塞シートと接触したときに、最大体積を有するバルブ減衰チャンバを形成する。
【0044】
本発明による磁気バルブリターンデバイスは、成層バルブの外径に近いチャンバ側バルブ座面およびバルブ開放シートの外径を含み、一方で、上記座面および上記シートの内径は、ガス絞りオリフィスの直径に近い。
【0045】
非限定的な例として与えられた添付図面に関連して続く説明は、本発明、本発明の特徴、および本発明が提供し得る利点のより良い理解を提供するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】内燃エンジンのシリンダヘッド内に取り付けることができる、本発明による電磁バルブリターンデバイスの概略断面図である。
図2】磁場源が永久磁石からなる、本発明による磁気バルブリターンデバイスの概略断面図である。
図3】磁場源が、電流が流れる導線のコイルからなる、本発明の磁気バルブリターンデバイスの概略断面図である。
図4】本発明による磁気バルブリターンデバイスの部分拡大概略断面図であり、上記デバイスの動作の特定の段階を示している。
図5】同上。
図6】同上。
【0047】
発明の説明
図1から図6は、本発明による磁気バルブリターンデバイス42、その構成要素、変形例、および付属品の様々な詳細を示している。
【0048】
磁気バルブリターンデバイス42は、特許出願第FR1750264号に記載されているようなバルブ型点火プレチャンバ1、またはフランス特許出願第FR1662254に記載されているようなシャトル電極スパークプラグ用に特別に設計されている。
【0049】
図1において、磁気バルブリターンデバイス42が、特に、ピストン31と共に、一次装入物30を導入することができる燃焼チャンバ5を形成するようにシリンダ4の上にシリンダヘッド3を含む内燃エンジン2のために設計されており、上記シリンダヘッド3は、一方では、イニシエータ装入物9を注入することができる成層インジェクタ8と、他方では、点火手段11とがつながる成層キャビティ6を受容することが分かる。
【0050】
成層インジェクタ8は、制限なしにいずれの種類のものであってもよく、いかなる手段によっても、イニシエータ装入物9を成層キャビティ6に導入することができるいずれかの装置から、かつ上記イニシエータ9を含む酸化剤燃料混合物AFが、上記成層インジェクタ8の上流または下流で、ガスまたは液体のいずれかの別のインジェクタの可能な助けを借りて、またはそれ自体既知のキャブレタの助けを借りて、形成されるかどうかに関係なく、構成され得ることに留意されたい。
【0051】
図2および図3において、成層キャビティ6は、成層管7によって燃焼チャンバ5に接続され、一方で、成層バルブ13は、上記管7を閉鎖し、成層キャビティ6を燃焼チャンバ5から上記バルブ13のキャビティ側14の表面から隔離し、その後キャビティ側バルブ座面19によってバルブ閉鎖シート18上に静置させるか、または上記管7と共に、上記プレチャンバ23内の少なくとも1つのガス排出オリフィス24によって、成層キャビティ6を燃焼チャンバ5と連通させるトーチ点火プレチャンバ23を形成することができ、上記バルブ13が有するチャンバ側表面15は、この場合、チャンバ側バルブ座面21を用いてバルブ開放シート20上に静置されることに留意されたい。
【0052】
図2~6は、本発明による磁気バルブリターンデバイス42が、成層バルブ13および成層管7の全部または一部を構成する少なくとも1つの磁性材料43を含み、上記材料43が、例えば鋼または軟鉄からなることを示す。
【0053】
図2~6はまた、磁気バルブリターンデバイス42が少なくとも1つの磁場源44を含み、その磁束54は、上記バルブ13および上記管7を磁化するように成層バルブ13および成層管7を通過し、それによって、上記管7および上記バルブ13が互いに引き寄せられ、キャビティ側バルブ座面19を、それが協働するバルブ閉鎖シート18に押し付ける傾向があることを示している。
【0054】
図2に示されるように、磁場源44は、それ自体既知である永久磁石53であり得、例えば、フェライト、ネオジム-鉄-ホウ素、サマリウム-コバルト、またはアルミニウム-ニッケル-コバルトで作製されている。
【0055】
図3に示される代替として、磁場源44は、電流が流れることができる導線51のコイルであってよい。この場合、導線51のコイルを通って流れる電流のアンペア数は、コンピュータ52によって制御されてもよく、これは、成層バルブ13の戻り電力をそのバルブ閉鎖シート18に適応させるか、または上記戻りを全部または無に、かつ例えば、内燃エンジン2の4ストロークが行われる間のクランクシャフトの回転720度の間、および/または上記エンジン2の速度および負荷を念頭に置いて制御することができる。
【0056】
図1~6は、バルブ開放シート20を受容する成層管7の端部が、上記管7に追加され、ステンレス鋼またはインコネル等の非磁性体50からなる部材49であってもよく、それによって、成層バルブ13が、バルブ閉鎖シート18の方向ではなく、それが協働するバルブ開放シート20の方向に引かれることを示している。
【0057】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42の変形例として、キャビティ側表面14は、環状分配チャンバ46を形成する円形の周辺凹部45を含み得る。
【0058】
この場合、キャビティ側バルブ座面19の外径は、上記環状チャンバ46の内径以下であり、一方で、成層キャビティ6から来るガスは、トーチ点火プレチャンバ23およびガス排出オリフィス24を用いて燃焼チャンバ5に注入される前、イニシエータ装入物9が点火手段11によって点火された後に、上記環状分配チャンバ46に分配される。
【0059】
環状分配チャンバ46は、成層キャビティ6からトーチ点火プレチャンバ23に生じる流れを大幅に制限することなく、成層バルブ13の移動を制限することを可能にすることに留意されたい。
【0060】
これにより、一方では、成層バルブ13と成層管7との間に十分な吸引磁力を維持することができ、他方では、バルブ閉鎖シート18において、磁力線が上記シート18の表面に対して垂直ではないという事実のために、成層管7を横断したままになることができないように、上記バルブ13が、後者と平行に上記バルブ閉鎖シート18に常に押し付けられることを確実にする。
【0061】
図1~6において、本発明のバルブ磁気リターンデバイス42の変形例によれば、燃焼チャンバ5につながる成層管7の端部の直径は、ガス絞りオリフィス47を形成するように局所的に大幅に低減され得、そのため、上記端部は、チャンバ側表面15と共に、バルブ減衰チャンバ48を形成し、その体積は、キャビティ側バルブ座面19が、それが協働するバルブ閉鎖シート18と接触するときに最大になることに留意されたい。
【0062】
この変形例によれば、バルブ減衰チャンバ48は、チャンバ側バルブ座面21が、それが協働するバルブ開放シート20と接触するときの衝撃の力を制限するために有利に提供される。
【0063】
衝撃力は、成層バルブ13がバルブ開放シート20に向かって移動する影響により、減衰チャンバ内に捕捉されたガスの圧力が上昇し、上記ガスがガス絞りオリフィス47を通って逃げる前に、上記成層バルブ13を減速させるという事実によって制限されている。
【0064】
本実施形態の変形例として、チャンバ側バルブ座面21およびバルブ開放シート20の外径を成層バルブ13の外径に近づけ、上記座面21および上記シート20の内径をガス絞りオリフィス47の直径に近づけてもよい。
【0065】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42のこの特定の配置により、チャンバ側バルブ座面21とそれが協働するバルブ開放シート20との間に生じる衝撃を減衰させる際のバルブ減衰チャンバ48の効率を最大化することができることに留意されたい。これは、上記座面21と上記シート20との間で、それらが互いに非常に接近しているときに発生するガスのフラッシング効果の結果である。
【0066】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42の一部である上記の改善および改良は、上記発明がバルブまたはシャトル電極のいずれかを直接組み込んだスパークプラグの形態で生じる場合でさえ、特許出願第FR1750264号および第FR1662254号の発明に適用される。
【0067】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42は、自動車産業で一般的である非磁性アルミニウム合金で作製されたシリンダヘッド3に特によく適していることに留意されたい。実際、そのようなシリンダヘッド3に適用される場合、上記デバイス42の動作は、その環境によってほとんど、またはまったく中断されない。
【0068】
発明の動作
バルブ型点火プレチャンバ1を対象とする、本発明による磁気バルブリターンデバイス42の動作は、図1~6に照らして容易に理解される。
【0069】
図1において、磁気バルブリターンデバイス42の非限定的な実施形態によれば、このデバイスは、特許出願第FR1750264号明細書に記載されているように、バルブ型点火プレチャンバ1を有する内燃エンジン2に実装されてもよいことが分かる。
【0070】
図2および3に示すように、上記プレチャンバ1が、特に、点火手段11および成層インジェクタ8がつながる成層キャビティ6、成層管7、および成層バルブ13を含むことに留意されたい。
【0071】
図6において、成層バルブ13は、成層管7を備えたトーチ点火プレチャンバ23を構成することができ、上記プレチャンバ23は、一方では成層キャビティ6と、他方ではガス排出オリフィス24を用いて内燃エンジン2内に含まれる燃焼チャンバ5と同時に連通していることに留意されたい。
【0072】
上記プレチャンバ1に加えて、図1において、上記エンジン2が、冷却水ジャケット41を含み、一次装入物30を燃焼させ得る燃焼チャンバ5をピストン31と共に形成するようにシリンダ4の上部に位置するシリンダヘッド3を含むことが分かる。
【0073】
図1では、ピストン31はロッド38によってクランクシャフト37に連結されており、上記ピストン31がシリンダ4内の往復並進運動によって駆動されると、上記ピストン31はクランクシャフト37に回転運動を与えることに留意されたい。
【0074】
また、図1から、燃焼チャンバ5は、吸気バルブ34を通して吸気ダクト32と連通することができ、上記燃焼チャンバ5は、排気バルブ35を通して排気管33と連通して配置することも可能であることが分かる。
【0075】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42の動作を例示するための非限定的な例として見なされる図1~6は、点火手段11が、それ自体既知の点火スパークプラグ12からなり、そのうちの接地電極39および中心電極40が成層キャビティ6につながることを示している。また、図1~3において、インジェクタ出口管28を用いて成層キャビティ6にイニシエータ装入物9を注入することができる成層インジェクタ8に留意されたい。
【0076】
図1において、成層コンプレッサ36は、イニシエータ装入物9を形成する、容易に引火する酸化剤燃料混合物AFを加圧するための圧縮手段10を構成しており、上記装入物は、成層インジェクタ8によって成層キャビティ6内に注入されることを意図していることが分かる。
【0077】
特許出願第FR1750264号に記載されたものに対して変更されていないバルブ型点火プレチャンバ1の基本原理を用いて、上記プレチャンバ1の動作において本発明の磁気バルブリターンデバイス42によって提供される特性に焦点を当てる。
【0078】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42の動作を詳細に説明する際に、磁場源44は、図2に示すように永久磁石53からなると仮定する。
【0079】
さらに、図1~6に示された実施例を選択することにし、ここでは、バルブ開放シート20が成層管7に追加された部品49であり、上記部品49は非磁性材料50、ここではステンレス鋼で作製されており、一方で、成層バルブ13のキャビティ側表面14は、環状分配チャンバ46を形成する周辺の円形凹部45を含むことが分かる。
【0080】
図2から図6において、追加された部分49は、シリンダヘッド3と接触して効果的に冷却することを許容する冷却リング55を有利に含み、上記リング55は、上記部分49と上記シリンダヘッド3との間に熱橋を形成することに留意されたい。
【0081】
図2~6において、少なくとも成層キャビティ6および成層管7は、磁性材料43で作製された単一の部品からなり得、その外壁は、シリンダヘッド3内に作製された冷却水ジャケット41内を循環する冷却液と完全にまたは部分的に接触していることに留意されたい。
【0082】
磁気バルブリターンデバイス42の動作を説明するために、図1~6に示される特定の構成も選択し、それに従って、燃焼チャンバ5につながる成層管7の端部の直径が、上記管7および成層バルブ13のチャンバ側表面15と共に、バルブ減衰チャンバ48を形成するガス絞りオリフィス47を形成するために、局所的に大幅に低減している。
【0083】
さらに、上記構成の変形を選択し、これは、チャンバ側バルブ座面21およびバルブ開放シート20の外径が成層バルブ13の外径に近く、ならびに、上記座面21および上記シート20の内径がガス絞りオリフィス47の直径に近いことが必要である。
【0084】
図4は、本発明の磁気バルブリターンデバイス42によれば、磁束54ーここでは長い点線で表されるーが、成層バルブ13および成層管7が作られる磁性材料43によって導かれることを示しており、これは、この場合およびこの非限定的な例では、鋼である。
【0085】
このように磁化されると、バルブ13が、それが協働するバルブ閉鎖シート18に押し付けられる自然な傾向を有するように、成層バルブ13と成層管7は互いに引き寄せられる。
【0086】
バルブ開放シート20を受容する成層管7の端部が非磁性材料50で作製された追加部品49である場合、成層バルブ13は、バルブ開放シート20の方向ではなく、それが協働するバルブ閉鎖シート18の方向にのみに引かれる。
【0087】
その結果、特許出願第FR1750264号に記載されているものとは反対に、磁気バルブリターンデバイス42の効果は、燃焼チャンバ11内の圧力が成層キャビティ6内の圧力よりも大きいという理由だけでなく、上記バルブ13が、図4に明確に示されているように、永久磁石53によって曝される磁場によってその方向に引かれているという理由により、成層バルブ13が成層管7を閉鎖することである。
【0088】
前述のことを念頭に置いて、本発明による磁気バルブリターンデバイス42は、一方では成層キャビティ6と成層管7とによって形成された総体積と、他方ではガス排出オリフィス24の直径とを、成層バルブ13の作動の必要性ではなく、内燃エンジン2のより良い効率という基準のみに基づいて決定可能にすることに留意すべきである。
【0089】
その結果、これらの選択は、特に吸気バルブ34を通って燃焼チャンバ5に入った後の一次装入物30の圧縮の開始時において、成層バルブ13が成層管7を閉鎖するのに必要な圧力差が過度に決定要因となることなく行うことができる。
【0090】
内燃エンジン2の効率を最適化する上での大きな自由度とは別に、本発明による磁気バルブリターンデバイス42は、特許出願第FR1750264号によれば、上記バルブ13が成層管7を閉鎖するのに必要な圧力差を得ることは、上記速度に大きく依存するので、上記モータ2の回転速度に対する上記成層バルブ13の動作の感度が低くなるという結果をもたらす。
【0091】
その結果、図4から容易に推測できるように、本発明による磁気バルブリターンデバイス42は、特許出願第FR1750264号に記載された発明によって求められるように、燃焼チャンバ5内の圧力と成層キャビティ6内の圧力との間の圧力差の結果だけでなく、永久磁石53が成層バルブ13に作用する磁気戻り力の結果としても、成層バルブ13によって成層管7を閉塞することを求めるものである。
【0092】
図5に示すように、イニシエータ装入物9がスパークプラグ12によって点火されるとき、磁気戻り力は、成層バルブ13による成層管7の適切な開放に実質的に影響を及ぼさないことに留意されたい。実際、点火後、成層キャビティ6内の燃焼ガスの圧力が上記バルブ13のキャビティ側表面14に掛ける力は、永久磁石53によって上記バルブ13に作用する磁気戻り力よりもかなり高い。
【0093】
成層バルブ13による成層管7の閉鎖が、上記成層バルブ13のキャビティ側表面14に及ぼす圧力とチャンバ側表面15に及ぼす圧力との差に依存することが少ないほど、燃焼チャンバ5につながる成層管7の終端部の直径をより自由に決定することが可能となることにも留意されたい。
【0094】
実際、特許出願第FR1750264号の発明は、特に吸気バルブ34を用いて以前に燃焼チャンバ5内に流入した一次装入物30の圧縮の開始時において、成層管7を閉鎖する必要があるときに、成層バルブ13を適切に作動させることを許容するために、チャンバ側表面15が燃焼チャンバ5内に含まれるガスの圧力に対して可能な限り大きな面積を露出させることを必要としている。それを達成するために、チャンバ側バルブ座面21が協働するバルブ開放シート20の半径方向の長さを可能な限り小さくしなければならない。
【0095】
成層バルブ13による成層管7の閉鎖への戻りが、ガスの圧力にわずかに依存し、永久磁石53によって発生する吸引磁力によって大部分が保証される限り、チャンバ側バルブ座面21が協働するバルブ開放シート20に接触しているときに、チャンバ側表面15上で気体の圧力に曝される面を大幅に低減させることが可能となる。これは、バルブ開放シート20の半径方向の長さを大幅に増加させることによって達成され、図1~6に示すように、燃焼チャンバ5につながる成層管7の端部の残部は、小径ガス絞りオリフィス47だけとなる。
【0096】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42によって可能となるこの特定の構成は、図1~4に示すように、キャビティ側バルブ座面19が協働するバルブ閉鎖シート18と接触しているときに、最大体積を有するバルブ減衰チャンバ48を形成することを可能にする。
【0097】
バルブ減衰チャンバ48は、本発明による磁気バルブリターンデバイス42の有益な結果であり、上記チャンバ48は、成層バルブ13を非常に頑丈で、長い寿命を有するものにする上で決定的であることに留意されたい。
【0098】
実際、図5に示すように、スパークプラグ12によるイニシエータ装入物9の点火に続いて成層バルブ13がバルブ開放シート20の方向に移動すると、上記バルブ13は、ガス絞りオリフィス47を用いてバルブ減衰チャンバ48に含まれるガスを燃焼チャンバ5に向かって放出する。
【0099】
そうすることで、上記バルブ13は、チャンバ側バルブ座面21とバルブ開放シート20との間に捕捉されたガスをガス絞りオリフィス47に向かって放出する「フラッシング効果」を引き起こす。上記「フラッシング効果」は、上記バルブ13を減速させる。
【0100】
加えて、ガス絞りオリフィス47は、バルブ減衰チャンバ48から燃焼チャンバ5へのガスの流れを減速させ、これは、成層バルブ13を減速させるのに役立つ。
【0101】
「フラッシング効果」およびガス絞りに起因する成層バルブ13の減速は、チャンバ側バルブ座面21が、それが協働するバルブ開放シート20に近いため、さらに激しくなることに留意されたい。
【0102】
この特殊性により、図5に示された最初の瞬間に、トーチ点火プレチャンバ23を形成するために成層バルブ13をバルブ開放シート20に向かって迅速に移動させ、一次装入物30に点火するように、ガス排出オリフィス24を用いて、イニシエータ装入物9の燃焼によって生じる燃焼ガスを排出することを確実にすることができる。図6に示されるその後の瞬間において、上記特殊性は、成層バルブ13に最大の耐久性を与えるように、チャンバ側バルブ座面21がバルブ開放シート20上にそっと静置させることを確実にする。
【0103】
イニシエータ装入物9の燃焼が終了し、装入物内のガスの大部分がガス排出オリフィス24を用いて高温に上昇したトーチの形で排出されるとすぐに、燃焼チャンバ5内の圧力が成層キャビティ6内の圧力よりも急速に大きくなるので、成層バルブ13は、キャビティ側バルブ座面19によってバルブ閉鎖シート18と接触して戻ってくるのに、多くの時間を有することに留意されたい。
【0104】
その結果、この圧力差と永久磁石53が成層バルブ13に作用する磁気復帰力との複合効果により、後者は、そのキャビティ側バルブ座面19により、クランクシャフト37の数度の回転でバルブ閉鎖シート18と再び接触する。
【0105】
次に、新しいイニシエータ装入物9の点火が発動されない限り、成層バルブ13は、成層管7から燃焼チャンバ5への数立方ミリメートルのガスの通過を許容するためにわずかに開くことができるが、全開にすることはできない。この状況の結果、成層バルブ13は主にバルブ閉鎖シート18と接触したままであり、内燃エンジン2の別の4ストローク熱力学的サイクルを開始する準備ができており、これは吸気バルブ34によって新たな一次装入物30が燃焼チャンバ5内に導入される瞬間に開始されると見なすことができるサイクルである。
【0106】
成層バルブ13を、それが協働するバルブ閉鎖シート18と大部分の時間接触させたままにすることにより、本発明による磁気バルブリターンデバイス42は、上記装入物30の圧縮の開始時において、一次装入物30からの残留燃焼ガスの成層キャビティ6への侵入を制限することに留意されたい。これは、一次装入物30を点火するためのイニシエータ装入物9の最大効力に有利に働く。
【0107】
先で説明されるように、キャビティ側表面14は、環状分配チャンバ46を形成する周辺の円形凹部45を有利に含み得、キャビティ側バルブ座面19の外径は、上記環状チャンバ46の内径以下である。当の環状分配チャンバ46は、特に図4において視認可能である。
【0108】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42のこの特定の構成は、成層キャビティ6からトーチ点火プレチャンバ23へのイニシエータ装入物9の点火後に確立されるガス流を著しく制限することなく、成層バルブ13の移動を制限することを可能にする。
【0109】
成層管7が成層バルブ13に及ぼす磁気引力は、上記バルブ13と上記管7との間の距離の二乗にほぼ反比例するので、上記バルブ13の移動を30%低減させることにより、チャンバ側バルブ座面21がその協働するバルブ開放シート20に接触したときに、永久磁石53の同じ力で上記力を2倍にすることが可能となる。
【0110】
加えて、ガスの適切な流れを損なうことなく環状分配チャンバ46によって与えられる成層バルブ13の移動が低減することにより、バルブ閉鎖シート18において、磁力線が上記シート18の表面に対して垂直ではないという事実のために、成層管7を横断したままになるリスクを冒すことなく、上記バルブ13が、後者と平行に、それが協働するバルブ閉鎖シート18に常に押し付けられることを確実にすることが可能となる。
【0111】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42は、それが有利に適用される特許出願第FR1750264号および第FR1662254号の発明の性能を決して低下させないことに留意されたい。反対に、それはその効率を実質的に改善する。
【0112】
また、本発明による磁気バルブリターンデバイス42は、内燃エンジン以外の分野、例えば、ガスネイラ、火器、または可能な限り効率の良いイニシエータ装入物による一次装入物の点火を必要とするいずれかの他のデバイスにも適用することができることに留意されたい。
【0113】
本発明による磁気バルブリターンデバイス42の可能性は、今説明した用途に限定されるものではなく、上記の説明は例として与えられているに過ぎず、説明した実施形態の詳細をいずれかの等価なものに置き換えることによって超えられないであろう上記発明の分野をいかようにも制限するものではないことがさらに理解されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6