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特許7394123磁気パルスで金属部品を変形させる組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】磁気パルスで金属部品を変形させる組立体
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/06 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B23K20/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021514430
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019075149
(87)【国際公開番号】W WO2020058391
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】1858507
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517100174
【氏名又は名称】エイディエム28・エスアーエルエル
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】リヴォー,トマ
(72)【発明者】
【氏名】トゥエ,ピエール
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-507159(JP,A)
【文献】特開2016-140897(JP,A)
【文献】特表2001-511071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えば磁気パルス成形および/または磁気パルス溶接などの磁気パルスで金属部品を変形させる組立体(10)であって、コイル(20)を含み、前記コイルが、
-電源に接続するよう意図された第1の分岐部および第2の分岐部(21、22)であって、前記第1の分岐部および第2の分岐部(21、22)は、スロット(23)を画定するように互いに隣接して延在する、第1の分岐部および第2の分岐部と、
-前記第1の分岐部および第2の分岐部(21、22)に接続している有効部分であって、前記有効部分の表面は、「有効表面(27)」と称され、変形対象部品と相対して配置されるように意図される、有効部分と
を含む、組立体であって、
前記組立体(10)は、
前記コイル(20)の全体または一部と脱着可能な形で協働するように構成された一体型マスク(30)をさらに含み、前記マスク(30)は、前記マスク(30)が動作位置にあるときに、前記マスク(30)が第1の部分(31)を介して前記スロット(23)に挿入され、第2の部分(32)を介して前記コイル(20)の前記有効表面(27)を覆うように、前記コイル(20)の形状と少なくとも部分的に嵌合するような形状であり、前記マスク(30)は、電気絶縁材料で作製される
ことを特徴とする、組立体(10)。
【請求項2】
前記コイル(20)は貫通孔(25)を有し、前記貫通孔からスロット(23)が開口し、前記マスク(30)は、動作位置にあるときに前記孔(25)の内周面(26)を覆う第3の部分(33)を有する、請求項1に記載の組立体(10)。
【請求項3】
第1の分岐部および第2の分岐部(21、22)の各々は、前記組立体(10)の使用中に前記変形対象部品側に配置されるように意図された長手面(213、223)を有し、前記第1の分岐部および第2の分岐部(21、22)は、接合領域(24)を介して互いに接続され、前記マスク(30)は、前記マスク(30)が動作位置にあるときに、前記長手面(213、223)および前記接合領域(24)の面(240)を少なくとも部分的に覆う第4の部分(34)を有する、請求項1または2に記載の組立体(10)。
【請求項4】
前記マスク(30)は、可撓性材料で作製される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組立体(10)。
【請求項5】
前記マスク(30)は、弾性材料で作製される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組立体(10)。
【請求項6】
前記マスク(30)は、シリコン材料で作製される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組立体(10)。
【請求項7】
前記マスク(30)を作製する前記材料は、少なくとも200°Cの温度に耐え、少なくとも20kV/mmの絶縁耐力を有するように選定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組立体(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気パルスで金属部品を加工するための技術の分野に属する。さらに詳細には、本発明は、磁気パルス成形、磁気パルス溶接または磁気パルスクリンプなどの磁気パルスで金属部品を変形させる分野に属する。本発明は、磁気パルスで金属部品を変形させるためのコイルを含む組立体に関し、磁気パルスは、前記コイルの一体型電気絶縁部品とつながっている。
【背景技術】
【0002】
磁気パルスによる金属部品の変形は、コイルによって発生する電磁力の作用で行われる。この変形により、母材の形状に従って金属部品を形状加工するために形成作業を実施するか、あるいは2つの部品を互いに恒久的に合わせるために溶接および/またはクリンプ作業を実施することが可能になる。
【0003】
コイルは一般に、コンデンサによって放出される電流が入る第1の分岐部と、電流が通り第1の分岐部と接続している第2の分岐部とからなる。2つの分岐部は、互いに対して実質的に同一方向に延びて数十ミリメートルの規則的な厚みのスロットができるように配置される。
【0004】
先行技術で公知の方法では、磁気パルスで金属部品を変形させる装置は、短く強力な磁場を生成するためにコイルに接続した1つ以上のコンデンサを備えている。
【0005】
1つ以上のコンデンサは、ある特定量の電気エネルギーを貯蔵するために使用される。生成された強力な磁場は、この電気エネルギーを極めて高強度の可変電流の形で極めて短時間に極めて急速にコイルに放出することによって生じるものである。例として、一部の装置は、数マイクロ秒で数十万アンペアに達することがある。
【0006】
電流は、コイルと予め近くに配置された部品との間に可変磁場を発生させ、その部品に渦電流を誘導する。周囲の磁場に起因するこの渦電流は、部品内に力を発生させ、この力によって前記部品が別の部品の方向に急激に加速する。
【0007】
部品は、特に発生した電流の強度レベル、衝突角度および衝突速度に応じて別の部品に形成されるか溶接される。
【0008】
使用するコイルと変形対象部品との間に電流が通らないようにするため、前記コイルは、前記部品との境界に電気絶縁材を必要とする。
【0009】
実際、部品に極めて高強度の電流が流れると、部品が破損するか劣化するおそれがある。さらに、この電流の流れにより安全性の問題を引き起こすおそれがある。
【0010】
電気絶縁材料の層を、コイルの表面の少なくとも一部、および特に「有効部分」と呼ばれる変形対象部品と向かい合うように意図された領域に接着することが一般に知られており、独国特許第102004016414号、独国特許第10207655号および特願2011161512に記載されているとおりである。
【0011】
有効部分は、コイルと変形対象部品との間の誘導領域に相当する。
【0012】
実際には、電気絶縁材料の層は、ポリイミド高分子材料で作製されたシートを重ね合わせて作製される。シートは、機械抵抗が低い。したがって、変形対象部品をコイルに配置する過程で起こる衝撃または摩擦から保護する膜を形成するために、前記シートには粘着テープの層が全体に塗布される。
【0013】
また、このようなシートは、特定の剛性に欠点があるため、シートをコイルに塗布するのは困難で、コイルの有効部分は、複雑な立体形状で、例えば多くの角および/または短い半径の凸部および/または凹部を含む立体形状である。実際シートは、皺ができないように慎重に塗布される。皺のある領域は、破損や裂けがより起こりやすい領域になるという意味で、機械的負荷をより受けやすい。さらに、皺がコイルの有効部分に対面した位置にある場合、皺によって局所に余分な厚みができるため、この有効部分の領域で効率の低下が起こる。
【0014】
コイルの2つの分岐部を互いに電気的に絶縁することも必要であり、したがって、特に短絡の発生を避けるため、それに伴い電気アークを避けるために、第1の分岐部および第2の分岐部の向かい合う部分でスロットにポリイミド高分子材料製のシートを塗布する必要がある。したがって、この作業を実施するのは、スロットの厚みが薄くなるほどいっそう複雑になることが理解される。
【0015】
上記の点から、コイルを電気的に絶縁する先行技術の技術解決策は、実施するのが厄介で、重大なノウハウを必要とする。例として、この技術解決策は、コイルの立体形状の複雑さに応じて最大1日の作業が必要になることがある。
【0016】
したがって、この解決策は、特に前述したように専門家が準備時間を必要とするため、費用がかかる。さらに、電気絶縁材料製の層が損傷すると、損傷した層を除去するためにその層が貼り付けられているコイル全体を交換するか、少なくとも解体することになる可能性がある。
【0017】
また、前記層の塗布は再現するのが困難で、再現すると、別々のコイルで実施した2つの同じ作業それぞれで異なる結果になるおそれがある。その結果は重大な品質問題となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】独国特許第102004016414号
【文献】独国特許第10207655号
【文献】特願2011161512
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の1つの目的は、例えば磁気パルス成形および/または磁気パルス溶接などの磁気パルスで金属部品を変形させる組立体であって、誘導コイルを含み、誘導コイルは、
-電源に接続するよう意図された第1の分岐部および第2の分岐部であって、前記第1の分岐部および第2の分岐部は、スロットを画定するように互いに隣接して延在する、第1の分岐部および第2の分岐部と、
-第1の分岐部および第2の分岐部に接続している有効部分であって、有効部分の表面は、「有効表面」と称され、変形対象部品と相対して配置されるように意図される、有効部分と
を含む、組立体を提供することで上記の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
組立体は、コイルの全部または一部と脱着可能な形で協働するように構成された一体側マスクを含む。マスクは、前記マスクが動作位置にあるときに、マスクが第1の部分を介してスロットに挿入され、第2の部分を介してコイルの有効表面を覆うように、コイルの形状と少なくとも部分的に嵌合するような形状であり、前記マスクは、電気絶縁材料で作製される。
【0021】
これらの特徴により、組立体は、迅速かつ簡易に実現され得る。実際、オペレータは、組立体を形成するために単にマスクをコイル上の動作位置に当てるだけである。これを実現するために特別な資格は必要ない。
【0022】
マスクは、コイルと脱着可能な形で協働し、単体の部品で作製されているため、前記コイルから容易かつ迅速に取り外して、例えば品質検査を受けることが可能である。このような検査は、絶縁性試験からなるものであってよい。
【0023】
さらに、これらの特徴により、マスクの寿命はコイルの寿命とは無関係のため、メンテナンスに係るコストは著しく削減される。実際、マスクを取り換える際にコイルの取り換えは必要ない。そのため、ある特定の組立体に対して、使用しているコイルを含むマスクが劣化した場合に、複数のスペアマスクを検討することが可能である。
【0024】
特定の実施形態では、本発明はさらに以下の特徴を満たし、これらの特徴は、単独で実装されるか技術的に組み合わせた作業の各々で実装される。
【0025】
本発明の特定の実施形態では、コイルは貫通孔を有し、そこからスロットが開口する。マスクは、動作位置にあるときに孔の内周面を覆う第3の部分を有する。
【0026】
これらの特徴は、マスクの位置を動作位置に位置付け、かつ/または保持することを確実にする効果を有する。
【0027】
本発明の特定の実施形態では、第1の分岐部および第2の分岐部の各々は、組立体の使用中に変形対象部品側に配置されるように意図された長手面を有し、第1の分岐部および第2の分岐部は、接合領域を介して互いに接続されている。マスクは、前記マスクが動作位置にあるときに、長手面および接合領域の面を少なくとも部分的に覆う第4の部分を有する。
【0028】
この第4の部分は、マスクの剛性および機械耐性をさらに高める作用を有する。さらに、第4の部分により、マスクの取り扱いを容易にすることが可能になる。第4の部分により、コイルに当接するマスクの支持面が大きくなり、それにより、動作位置にあるマスクの安定性を高めることが可能になる。
【0029】
本発明の実施形態では、マスクは、可撓性材料で作製される。
【0030】
この特徴により、マスクをコイル上の動作位置に配置すること、およびマスクを前記コイルから取り外すことを容易にすることが可能になる。
【0031】
本発明の実施形態では、マスクは、弾性材料で作製される。
【0032】
この特徴により、マスクをコイル上の動作位置に配置すること、およびマスクを前記コイルから取り外すことを容易にしやすくなる。
【0033】
本発明の実施形態では、マスクは、シリコン材料で作製される。
【0034】
したがって、マスクは、上乗せ成形または圧縮成形または射出によって製造されてよく、それによって製造コストを削減しやすくなり、同一形状で同様の特徴を有するマスクを多数製作できるようにすることが可能になる。
【0035】
本発明の実施形態では、マスクを作製する材料は、組立体の使用中にマスクが受ける応力に耐えるために、少なくとも200°Cの温度に耐え、少なくとも20kV/mmの絶縁耐力を有するように選定される。
【0036】
本発明は、非限定的な例として挙げた以下の説明を読み、図面を参照することでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態の第1の例による、磁気パルスで金属部品を変形させる組立体の斜視図であり、前記組立体がコイルおよびマスクを含む図である。
図2図1のコイルのみの斜視図である。
図3図1のマスクのみの斜視図である。
図4】本発明の実施形態の第2の例による、磁気パルスで金属部品を変形させる組立体の斜視図であり、前記組立体がコイルおよびマスクを含む図である。
図5図4のコイルの斜視図である。
図6図4のマスクのみの下部斜視図である。
図7】本発明の実施形態の第3の例による、磁気パルスで金属部品を変形させる組立体の斜視図であり、前記組立体がコイルおよびマスクを含む図である。
図8図7のコイルのみの斜視図である。
図9図7のマスクのみの斜視図である。
【0038】
これらの図では、図面どうしで同一の符号は同一または同類の要素を指す。このほか、明瞭にするために、図面は別途明記しないかぎり原寸大ではない。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、磁気パルス成形、磁気パルス溶接または磁気パルスクリンプなどの磁気パルスで金属部品を変形させる組立体10に関する。組立体10は、電力供給源を備えるシステムの一部を形成する。通常そのような電力供給源は、1つ以上のコンデンサと、この1つ以上のコンデンサに貯蔵されている電流を極めて短い時間間隔で放出するスイッチとを備えている発電器で形成されてよい。
【0040】
組立体10は、誘導コイル20および電気絶縁材料製のマスク30を含む。
【0041】
マスク30は、前記コイル20と協働するように構成される。
【0042】
本文では、「協働する」という用語は、マスク30とコイル20が、当接して接触し合っているとときに互いに噛み合っていることを意味する。
【0043】
以下の文では、組立体10の実施形態の3つの例を説明する。図1図3図4図6は、それぞれが本発明の実施形態の第1の例と第2の例を示しており、コイル20は、「フラットコイル」と呼ばれる種類のもので、とりわけ平坦な部品を変形させる作業を実施するのに適している。図7図9は、本発明の実施形態の第3の例を示し、コイル20は、「シリンダコイル」と呼ばれる種類のもので、とりわけ管状部品を変形させる作業を実施するのに適している。
【0044】
コイルは、コイルの特定領域の電流密度が形状加工および/または溶接の条件を満たすのに十分であるように設計される。この領域を以下「有効部分」と称する。
【0045】
図1図3に示した実施形態の第1の例では、図3に示したマスク30は、図1に示したような組立体10を形成するように、マスクが「動作位置」と称する位置にあるときに図2に示したコイル20と協働するように構成される。
【0046】
有利には、マスク30とコイル20は、脱着可能な形で協働することが可能で、それによってマスク30を必要に応じてコイル20から取り外すことが可能である。
【0047】
図2に示したように、コイル20は、互いに接続している少なくとも2つの分岐部を含む。一方の分岐部は、「第1の分岐部」21と称し、電力供給源に接続することが意図されている。
【0048】
第1の分岐部21は、本明細書で「第2の分岐部」22と称する別の分岐部に接続している。図2に示したように、前記第1の分岐部および第2の分岐部21および22は、実質的に平行な長手軸に沿って、「第1の端部」210、220と称する自由端と、分岐部どうしを互いに間接的に接続している「第2の端部」211、221と称する端部との間にそれぞれが延在する。
【0049】
第1の分岐部および第2の分岐部21および22は、スロット23を画定するように互いに隣接して延在する。
【0050】
さらに詳細には、第1の分岐部および第2の分岐部21および22は、各々が内側部212、222を有し、内側部はスロット23を画定するように互いに対面して配置される。
【0051】
スロット23の幅は一定である。
【0052】
第1の分岐部および第2の分岐部21および22の各々は、長手面213、223も有する。長手面213および223は、組立体10の使用中に変形対象部品側に配置されることが意図されている。
【0053】
組立体10の実施形態の第1の例では、コイル20の第1の分岐部および第2の分岐部21および22は、接合領域24を介して互いに接続される。
【0054】
接合領域24はプレートの形態で、この領域に、内周面26を有する貫通孔25が形成される。
【0055】
プレートの面240は、変形対象部品と対面することが意図された突起部241を含む。
【0056】
さらに詳細には、組立体10の第1の例では、突起部241は、図2に示したように、孔25の周縁に沿って構成された上部を有する。
【0057】
1つの実施形態では、孔25は、実質的に楕円形の直線区画を有する。
【0058】
非限定的な実施形態では、第1の分岐部および第2の分岐部21および22の各々は、前記分岐部21および22よりも断面が小さい部分214、224を介して接合領域で接合されている。各部分214、224は、図2に示したように、分岐部21、22の第2の端部211、221のいずれか一方に接続している。
【0059】
コイル20の各部分214、224は、分岐部21、22の第2の端部211、221とともに、コイル20の外側を向いた肩部を形成する。
【0060】
スロット23は、分岐部21および22の第1の端部210、220から孔25まで延在する。換言すると、スロット23は、分岐部21および22ならびに部分214、224に沿って延在する。
【0061】
実施形態のこの第1の例で説明したようなフラットコイルの場合、電流は、第1の分岐部21に入り、接合領域24を通って第2の分岐部22に出てコイル20を流れる。電流は有効部分に集中し、有効部分は、接合領域24に位置し、有効表面27を境界とする層上、プレートの面240の突起部241の上部にあり、厚みは表皮の厚みに相当する。電流は、変形対象部品と有効表面27との間を境界とする空間に、集中した磁場を発生させる。
【0062】
ここで、突起部241の立体形状は、特に、変形の終わりに仕上がる部品の立体形状に左右されることが理解される。
【0063】
マスク30は、コイル20の形状と少なくとも部分的に補完する形状となるように構成される。そのために、マスク30は、マスク30がコイル20と協働するときにスロット23に挿入される第1の部分31を有する。
【0064】
第1の部分31は、前記第1の部分31をスロット23に挿入するときに機械的な遊びがあるように決定した厚みを有することが好ましい。そのようにすると、第1の部分の挿入およびスロット23の手動での取り外しが容易になる。このような厚みは、例えば幅1ミリメートルのスロット23であればおよそ10分の8ミリメートルである。
【0065】
この厚みは、マスク30の機械強度および絶縁耐力の理由からも決定される。
【0066】
マスク30は、前記マスク30がコイル20と協働するときにコイル20の有効表面27を覆う第2の部分32を有する。
【0067】
図3に示した好適な形状では、第2の部分32は、実質的に突起部241の表面と同一の立体形状である。
【0068】
第2の部分32は、変形対象部品に対してコイル20の作用の効率が低下するリスクを回避するために、1ミリメートル未満、例えば10分の5ミリメートルの厚みを有することが好ましい。
【0069】
好適な実施形態では、マスク30は、コイル20の孔25の内周面26を覆う第3の部分33を有する。有利には、第3の部分33は、マスク30の剛性および機械耐性をさらに高める。さらに、第3の部分は、コイル20と変形対象部品との間の電気絶縁を確実にすることに寄与する。
【0070】
組立体10の実施形態の第1の例では、第3の部分33は、図3に示したように、孔25の形状と嵌合する形状であり、動作位置にあるときに孔と協働できるようになっている。したがって、第3の部分33は、マスク30が動作位置にあるときに孔25の内周面26を覆う。
【0071】
好ましくは、マスク30は、マスクが動作位置にあるときに、長手面213、223の全体または一部、各部分214および224の面、ならびにプレートの面240を覆う第4の部分34を有する。この第4の部分34は、マスク30の剛性および機械耐性をさらに高める作用も有する。好ましくは、分岐部が単純な立体形状、すなわち鋭利な角度および/または半径の短い凸部および/または凹部のない区画を有する場合、マスクは、長手面213、233の一部のみを覆うような寸法であってよい。その場合、長手面213、233の残りの部分は、先行技術で公知の電気絶縁材料の層で覆われる。この特徴には、本発明の実現コストを削減するという利点がある。
【0072】
さらに、第4の部分33により、マスクが動作位置にあるときに、マスク30の取り扱いを容易にすること、およびコイル上でのマスクの安定性を高めることが可能になる。
【0073】
図4図6に示した実施形態の第2の例では、図6に示したマスク30は、図4に示したような組立体10を形成するように、マスクが動作位置にあるときに図5に示したコイル20と協働するように構成される。
【0074】
組立体10の実施形態の第2の例によるコイル20は、前述したように、第1の分岐部および第2の分岐部21および22、ならびに接合領域24を有する。
【0075】
第1の分岐部および第2の分岐部21および22の各々は、前述したように長手面213、223を有する。長手面213および223は、組立体10の使用中に変形対象部品側に配置することが意図されている。
【0076】
接合領域24は、実施形態の第1の例に関して記載したように、2つの部分214、224を介して接続される。
【0077】
接合領域24が前述のものと異なる点は、第1の分岐部および第2の分岐部21および22の長手軸に対して実質的に垂直に延在する第3の分岐部の形状になっている点である。
【0078】
さらに、部分214、224は、肩部どうしが互いに対向して配置されるように構成される。
【0079】
図5に示したように、孔25の境界は、部分214、224と分岐部21および22の第2の端部211、221とで形成される肩部ならびに接合領域24であり、これらが孔25の内周面26を画定している。図5に示した非限定的な例では、孔25は、実質的に長方形の直線区画を有する。
【0080】
スロット23は、分岐部21および22の第1の端部210、220から孔25まで、すなわち分岐部の第2の端部211、221まで延在する。
【0081】
組立体10の実施形態の第2の例では、コイル20は、有効部分が接合領域24内にあり、第3の分岐部の面240で有効表面27を境界とする層上にあるように設計される。
【0082】
組立体10の実施形態の第2の例では、マスク30は、実施形態の第1の例と同様に、マスク30がコイル20と協働するときにスロット23に挿入される第1の部分31と、コイル20の有効表面27を覆う第2の部分32とを有する。
【0083】
マスク30は、前述したような第3の部分33も有することが好ましい。組立体10の実施形態の第1の例と同様に、実施形態のこの第2の例では、第3の部分33は、マスクが動作位置にあるときにマスクと協働できるように孔25の形状と嵌合する形状である。
【0084】
好ましくは、マスク30は、マスク動作位置にあるときに長手面213、223、各部分214および224の面を少なくとも部分的に覆う第4の部分34を有する。
【0085】
この第4の部分34は、マスク30の剛性および機械耐性をさらに高める作用も有する。さらに、第4の部分34により、マスクが動作位置にあるときに、マスク30の取り扱いを容易にすること、およびコイル上でのマスクの安定性を高めることが可能になる。
【0086】
図7図9に示した実施形態の第3の例では、図9に示したマスク30は、図7に示したような組立体10を形成するように、マスクが動作位置にあるときに図8に示したコイル20と協働するように構成される。
【0087】
組立体10の実施形態の第3の例によるコイル20は、前述した実施形態の例のコイル20と同様に、第1の端部210、220と第2の端部211、221との間に延在する2つの分岐部21および22を有する。
【0088】
さらに、第1の分岐部および第2の分岐部21および22の各々は、長手面213、223を有する。長手面213および223は、組立体10の使用中に変形対象部品側に配置することが意図されている。
【0089】
前述した実施形態の例とは異なり、実施形態のこの第3の例では、接合領域24は、図8に示したように、分岐部の第1の端部210、210と第2の端部221、221との間にあるそれぞれの長手面213、223を介して第1の分岐部および第2の分岐部21および22に接続している。
【0090】
さらに、コイル20が実施形態の第1の例および第2の例で前述したものと異なる点は、コイル20には部分214、224がないことから、接合領域24が分岐部21および22に直接接続している点である。
【0091】
接合領域24は、好ましくは長手面213、223に垂直に延在する面240を有する実質的に平行六面体の立体形状の本体で形成される。図8に示したように、接合領域24は貫通孔25を有し、そこからスロット23が開口する。
【0092】
組立体10の実施形態のこの第3の例では、コイル20の孔25は、実質的に環状の直線区画を有する。
【0093】
環状型コイルの場合、電流は、孔25の内周面26の有効表面27を境界とする層に集中する。
【0094】
この場合、変形対象部品は、組立体10の使用中にコイル20の孔25に導入されるように意図される。
【0095】
図9に示したように、マスク30は、実施形態の第1の例および第2の例と同様に、マスク30がコイル20と協働するときにスロット23に挿入されるように構成された第1の部分31と、コイル20の有効表面27を覆うように構成された第2の部分32とを有する。したがって、第2の部分32は、前記孔25の形状に嵌合する形状、すなわち実施形態のこの例では、環状の直線区画の筒形状である。
【0096】
実施形態この例では、図9に示したように、符号「32」および「33」がマスク30の同じ部分を指す限り、第2の部分および第3の部分32および33は一体のものである。
【0097】
好ましくは、マスク30は、マスクが動作位置にあるときに長手面213、223および本体の面240を少なくとも部分的に覆う第4の部分34を有する。
【0098】
第4の部分34は、ここでは肩部の形状である。
【0099】
図4図6図7および図9に示した実施形態の例では、マスクは、変形対象部品とコイル20との間の電気絶縁を確実にするために分岐部21および22の長手面213、223を超えて延在する。
【0100】
組立体10の実施形態の他の例では、孔25は、変形対象部品の種類に応じて、かつ/または実施する変形作業の種類に応じて何らかの立体形状の直線区画を有していてよいことに留意することが重要である。
【0101】
組立体の実施形態の3つの例では、各例が特定種類のコイルを含んでいることを説明してきた。
【0102】
実施形態のこれらの例のいずれでも、非限定的に、マスク30は一体型であり、有利には可撓性材料、すなわち変形可能な材料で作製される。さらに、この材料は、弾性特性、すなわちその特性に従って変形後に元の形状に戻るような特性を有するように選定されることが好ましい。
【0103】
マスク30の材料は、好ましくは絶縁耐力が少なくとも20kV/mmとなるように、かつ少なくとも200°Cの温度に耐えるように選定される。
【0104】
このような材料は、シリコンまたは合成樹脂などのポリマーであってよい。
【0105】
マスク30は、有利には、上乗せ成形または圧縮成形で作製されてよい。
【0106】
マスク30は、実質的にコイル20と等しい寸法になるように構成され、それによってマスクが前記コイル20と協働するとき、マスクは、好ましくは締め付け作用、例えば締りばめによってのみコイルに当てられる。
【0107】
これらの特徴により、コイル20とマスク30との境界で接着剤または粘着剤を使用するのを避け、それによって組立体10の組み立てを簡易にすること、およびそれに伴い組立体のコストを削減することが可能になる。
【0108】
さらに一般的には、上記で検討した組立体10の実装形態および実施形態は、非限定的な例として説明したものであり、よってその他の変形例を構想可能であることに注意すべきである。
【0109】
特に、本発明は、コイルの立体形状を2例検討し、それに伴いマスクの立体形状を2例検討して説明されている。しかしながら、その他の類の実施形態では、コイルおよびマスクの他の立体形状を検討することを何ら除外するものではない。
図1
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