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特許7394124ニコチンの優先的な蒸発を提供するエアロゾル発生システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ニコチンの優先的な蒸発を提供するエアロゾル発生システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/57 20200101AFI20231130BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20231130BHJP
【FI】
A24F40/57
A24F40/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021514562
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019075936
(87)【国際公開番号】W WO2020064876
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】18197788.5
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】タウリノ イレーヌ
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/029077(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/177177(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/019485(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/191176(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/015918(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066088(WO,A1)
【文献】特表2015-507477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-40/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置であって、
少なくとも一つの発熱体を備えるヒーター組立品と、
前記ヒーター組立品に近接するエアロゾル形成基体であって、前記エアロゾル形成基体が、ニコチンおよび第一のエアロゾル形成体を含む液体混合物を含み、前記第一のエアロゾル形成体がニコチンよりも高い沸騰温度を有する、エアロゾル形成基体と、
前記エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生するために前記ヒーター組立品に電力を供給するための電源と、
前記エアロゾル発生装置からエアロゾルを引き出すためにユーザーが吸煙するマウスピースと、
前記ヒーター組立品への前記電力の供給を制御するように構成された制御回路であって、ユーザーによる吸煙と吸煙の間に、前記ヒーター組立品の少なくとも一つの発熱体に第一の電力を供給するように、または前記ヒーター組立品の少なくとも一つの発熱体を第一の温度に、もしくは第一の温度範囲に維持するのに十分な電力を供給するように構成されていて、かつユーザーによる吸煙中に前記第一のエアロゾル形成体よりも優先的にニコチンを気化させるために、前記ヒーター組立品の少なくとも一つの発熱体に第二の電力を供給するように構成されていて、前記第二の電力が前記第一の電力よりも高い、または前記ヒーター組立品の少なくとも一つの発熱体の前記温度を前記第一の温度もしくは第一の温度範囲を上回るように上げるのに十分である、制御回路と、を備える、エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記第一の温度または第一の温度範囲が、前記第一のエアロゾル形成体の前記沸点を下回る、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記第一のエアロゾル形成体がグリセロールである、請求項1または請求項2に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記エアロゾル形成基体が第二のエアロゾル形成体を含み、前記第二のエアロゾル形成体が第一のエアロゾル形成体よりも低い沸騰温度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記第二のエアロゾル形成体がプロピレングリコールである、請求項4に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記制御回路が、前記第一の温度または前記第一の電力を選択するために前記ユーザーによって構成可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記制御回路が、前記第一の電力または第一の温度または第一の温度範囲に依存して前記第二の電力を計算するように構成されている、請求項6に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記ヒーター組立品が複数の発熱体を備え、かつ前記制御回路がユーザーによる吸煙と吸煙の間に前記複数の発熱体の一部分にのみ電力を供給するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記ヒーター組立品が、発熱体のメッシュまたは穿孔された加熱プレートを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
前記液体エアロゾル形成基体を保持する液体貯蔵部と、前記貯蔵部から前記発熱体に液体エアロゾル形成基体を送達するように構成された液体送達機構とをさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項11】
前記第一の温度が摂氏150~200度である、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項12】
使用時にユーザーが吸煙するエアロゾル発生システム中のエアロゾル形成基体からニコチン含有エアロゾルを発生する方法であって、前記エアロゾル形成基体が、ニコチンおよび第一のエアロゾル形成体を含む液体混合物を含み、前記第一のエアロゾル形成体がニコチンよりも高い沸騰温度を有する、方法であって、
ユーザーによる吸煙と吸煙の間に前記エアロゾル形成基体を第一の温度範囲内に維持することと、
ユーザーによる吸煙中に前記第一の温度範囲を上回る第二の温度に前記エアロゾル形成基体を加熱し、これによって前記第一のエアロゾル形成体よりも優先的にニコチンを気化させることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記第二の温度が第一のエアロゾル形成体の前記沸騰温度を下回る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エアロゾル形成基体が第二のエアロゾル形成体を含み、前記第二のエアロゾル形成体が、第一のエアロゾル形成体よりも低い沸騰温度を有する、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第一の温度範囲が、ニコチンおよび前記第二のエアロゾル形成体の前記沸騰温度を下回る、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル発生システムに関し、特にエアロゾル形成基体を加熱することによって、ニコチンを含有するエアロゾルを発生するエアロゾル発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンを含有するエアロゾルを発生する加熱式エアロゾル発生システムの一つのタイプは、eシガレットである。eシガレットは典型的に、ニコチンを含有する液体およびエアロゾル形成体を加熱してエアロゾルを発生する。
【0003】
eシガレットなどのエアロゾル発生装置で消費者が使用するためのニコチン含有液体は典型的に、比較的に低い濃度のニコチンを含有する。高い濃度のニコチンは皮膚を刺激する可能性があり、摂取した場合、有害である可能性がある。ニコチン含有液体のニコチン濃度は、例えば20mg/ml以下とするように、一部の法域によって規制されている。
【0004】
しかしながら、従来の紙巻たばこを以前に喫煙したことがあるユーザーをeシガレットが満足させるために、eシガレットはユーザーによる各吸煙において、ユーザーが喫煙のために使用した紙巻たばこに匹敵する量のニコチンを送達する必要がある。このレベルのニコチンの送達がなければ、ユーザーは従来の紙巻たばこの喫煙に戻る可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアロゾルを発生するための基体として、20mg/ml以下などの比較的に低い濃度のニコチンを有するニコチン含有液体を使用することは、常習的な喫煙者を満足させるために、ユーザーによる各吸煙に十分なニコチンを送達することは困難である。この問題を解決するための以前の試みには、エアロゾル発生装置内に固体形態の予備ニコチン供与源を提供することが含まれ、そこからニコチンは、加熱することによって、またはこれを通して、もしくはこれを過ぎて蒸気を引き出すことによって放出される。しかしながら、これはeシガレットの複雑さおよびコストを著しく増大させる。また、そのタイプのシステムで一貫したニコチン送達を得ることは困難である。
【0006】
追加的なニコチン供与源を必要とすることなく、所与のニコチン濃度を有するニコチン含有液体を使用して、ユーザーによる各吸煙中に、より高い量のニコチンを送達することができるエアロゾル発生システムを提供することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様において、
少なくとも一つの発熱体を備えるヒーター組立品と、
ヒーター組立品に近接するエアロゾル形成基体であって、エアロゾル形成基体が、ニコチンおよび第一のエアロゾル形成体を含む液体混合物を含み、第一のエアロゾル形成体がニコチンよりも高い沸騰温度を有する、エアロゾル形成基体と、
エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生するためにヒーター組立品に電力を供給するための電源と、
エアロゾル発生装置からエアロゾルを引き出すためにユーザーが吸煙するマウスピースと、
ヒーター組立品への電力の供給を制御するように構成された制御回路であって、ユーザーによる吸煙と吸煙の間に、ヒーター組立品の少なくとも一つの発熱体に第一の電力を供給するように、またはヒーター組立品の少なくとも一つの発熱体を第一の温度に、もしくは第一の温度範囲内に維持するのに十分な電力を供給するように構成されていて、かつユーザーによる吸煙中に第一のエアロゾル形成体よりも優先的にニコチンを気化させるために、第二の電力をヒーター組立品の少なくとも一つの発熱体に供給するように構成されていて、第二の電力が第一の電力よりも高い、またはヒーター組立品の少なくとも一つの発熱体の温度を第一の温度もしくは第一の温度範囲を上回るように上げるために十分である、制御回路と、を備えるエアロゾル発生装置が提供されている。
【0008】
有利なことに、エアロゾル形成基体は、吸煙中と、ユーザーによる吸煙と吸煙の間との両方で発熱体によって加熱される。エアロゾル形成基体は、装置の動作全体にわたって、発熱体と接触または近接したままであることが好ましい。エアロゾル形成基体は、発熱体と接触または近接する保持材料または毛細管の中に保持された液体を含んでもよい。ユーザーによる吸煙と吸煙の間にエアロゾル形成基体を加熱することによって、ニコチンの優先的な蒸発が促進される。
【0009】
この温度制御戦略は、第一のエアロゾル形成体よりも優先的なニコチン蒸発を促進する。言い換えれば、生成された蒸気は、第一のエアロゾル形成体に対して、液体に対してよりも高いニコチンの比率を有する。これは、蒸気から形成された発生したエアロゾルが、ユーザーによる吸煙中に単に液体を加熱することによって提供するよりも多くの量のニコチンを、ユーザーによる吸煙ごとに提供することを意味する。液体をニコチンの沸点に近い温度に連続的に維持することによって、熱力学的平衡が維持される。これは、第一のエアロゾル形成体と比較して、ニコチンの著しい優先的な蒸発があることを確実にする。発熱体の温度、またはヒーター組立品に供給される電力は、ユーザーによる吸煙中に上げられ、各吸煙中に十分なエアロゾル密度と十分な量のニコチンがユーザーに送達されることを確実にする。このようにして、比較的に低い濃度のニコチンを有する液体を、満足のいくユーザー体験を提供するために依然として使用することができる。
【0010】
有利なことに、第一の温度または第一の温度範囲は、第一のエアロゾル形成体の沸点を下回る。第一の温度または第一の温度範囲は、ニコチンの沸点を下回ることがより好ましい。これは、ニコチンと第一のエアロゾル形成体との間の蒸発速度のより大きい格差をもたらす。
【0011】
本明細書で使用されるエアロゾル形成体は、使用時に、高密度の安定したエアロゾルの形成を容易にする、かつシステムの動作温度にて熱分解に対して実質的に抵抗性である任意の適切な周知の化合物または化合物の混合物を指す。適切なエアロゾル形成体は当業界で周知であり、これには多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテート、またはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
液体の沸点は、液体の蒸気圧が液体を包囲する外部圧力と等しい温度である。本明細書で使用される沸点は、通常の沸点または大気圧沸点を指し、これは、液体の蒸気圧が海水位(1気圧)での圧力と等しい温度である。
【0013】
第一のエアロゾル形成体はグリセリンとも呼ばれるグリセロールであってもよい。グリセロールはニコチンよりも高い沸点を有する。グリセロールは、ヒトによって吸入されるエアロゾル用のエアロゾル形成体として一般に使用されている。
【0014】
エアロゾル形成基体は第二のエアロゾル形成体を含んでもよく、第二のエアロゾル形成体は第一のエアロゾル形成体よりも低い沸騰温度を有する。第二のエアロゾル形成体はプロピレングリコールである。より低い沸点を有する第二のエアロゾル形成体を提供することは、生成されたエアロゾル中に含有されたニコチンの比率に対するより細かい制御を可能にする。第二のエアロゾル形成体は、ニコチンよりも低い沸点を有してもよい。第一の温度または第一の温度範囲は、第二のエアロゾル形成体の沸点よりも高くてもよい。
【0015】
制御回路は、第一の温度または第一の温度範囲または第一の電力を選択するためにユーザーによって構成可能であってもよい。これは、エアロゾル中のニコチンおよびエアロゾル形成体の相対量をユーザーが選択することを可能にする場合がある。第一の温度または第一の温度範囲は、使用を通して一定であってもよく、または使用セッションの経過中に変化してもよい。
【0016】
制御回路は、第一の電力または第一の温度もしくは第一の温度範囲に依存して第二の電力を計算するために構成されてもよい。例えば、第二の温度は、選択された第一の温度よりも所定の度数だけ高くてもよい。または、第二の電力は、第一の電力よりも所定のワット数だけ大きくてもよい。第一の電力は、所定の電力であってもよく、または発熱体またはエアロゾル形成基体の所定の第一の温度を維持するために必要とされる電力であってもよい。
【0017】
ヒーター組立品は複数の発熱体を備えてもよい。制御回路は、ユーザーによる吸煙と吸煙の間、複数の発熱体のうちの一部分にのみ電力を供給するように構成されてもよい。制御回路は、ヒーター吸煙中に、発熱体のより多くの部分またはすべてに電力を供給するように構成されてもよい。このようにして、液体エアロゾル形成基体の温度は、ユーザーによる吸煙と吸煙の間に維持されてもよく、ユーザーによる吸煙中に、望む通りに上昇されてもよい。
【0018】
第一の電力は、発熱体またはエアロゾル形成基体の温度を摂氏およそ200度に維持するために十分な電力であってもよい。一実施形態において、発熱体は0.7~0.8オームの電気抵抗を有し、かつ第一の電力は約2ワットである抵抗発熱体である。第一の電力は1~3ワットであってもよく、1.4~2ワットであることがより好ましい。
【0019】
第一の温度は摂氏150~200度であってもよい。これはニコチンの沸点よりも低いが、ニコチンの著しい蒸発をもたらすのに十分に高い温度である。
【0020】
第一の温度範囲は摂氏150~200度であってもよい。
【0021】
第二の電力は、吸煙当たりの送達されるニコチンの望ましい総量を提供するように、かつ吸煙当たりのエアロゾル凝縮物(ACM)の望ましい総量を提供するように選ばれてもよい。また、第二の電力の印加の持続時間はまた、吸煙当たりの送達されるニコチンの総量と、吸煙当たりの送達されるエアロゾル凝縮物の総量とに影響を与える。
【0022】
第二の電力は2~6ワットであってもよく、2.4~3ワットであることがより好ましい。第二の電力は第一の電力よりも1~4ワット大きくてもよい。一実施形態において、第二の電力は3ワットであり、また第一の電力は2ワットである。
【0023】
第二の電力は、エアロゾル形成基体の発熱体を第二の温度または温度の第二の範囲内に維持するために十分な電力であってもよい。第二の温度または温度の第二の範囲は200~250度であってもよい。一実施形態において、第二の温度は摂氏220度である。
【0024】
装置は、液体エアロゾル形成基体を保持する液体貯蔵部と、液体エアロゾル形成基体を貯蔵部から発熱体に送達するように構成された液体送達機構とをさらに備えてもよい。液体送達機構は、ポンプなどの能動機構であってもよく、または以下でより詳細に説明する毛細管材料などの受動機構であってもよい。
【0025】
ヒーター組立品は、数多くの異なるやり方のうちの一つで加熱される発熱体を備えてもよい。例えば、発熱体は、発熱体に電流を通過させることによって抵抗加熱されてもよく、電流は電源によって提供される。別の方法として、または追加的に、発熱体は、時間変動する磁界によって誘導加熱されるサセプタであってもよい。
【0026】
ヒーター組立品はまた、数多くの異なる形態を有してもよい。一部の実施形態において、ヒーター組立品は、発熱体のメッシュまたは穿孔された加熱プレートを備える。ヒーター組立品は、単純な製造を可能にするために実質的に平坦な発熱体を備えてもよい。発熱体は、例えば蛇行する形状の平坦な加熱トラックを備えてもよい。
【0027】
発熱体は、例えば互いに対して平行に配設されたフィラメントのアレイを備えてもよい。フィラメントはメッシュを形成しうることが好ましい。メッシュは織られていてもよく、または不織であってもよい。メッシュは、異なるタイプの織り構造または格子構造を使用して形成されてもよい。別の方法として、導電性発熱体は、フィラメントのアレイまたはフィラメントの織物から成る。
【0028】
好ましい実施形態において、実質的に平坦な発熱体は、ワイヤメッシュへと形成されたワイヤで構築されてもよい。メッシュは平織の設計を有することが好ましい。発熱体は、メッシュ細片から作製されたワイヤグリルであってもよい。
【0029】
フィラメントはフィラメント間の隙間を画定してもよく、また隙間は10マイクロメートル~100マイクロメートルの幅を有してもよい。使用時に気化されることになる液体が隙間の中に引き出されるように、フィラメントは隙間の中で毛細管作用を生じさせることが好ましく、発熱体と液体エアロゾル形成基体との間の接触面積を増大する。
【0030】
導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物の面積は小さくてもよく、例えば50平方ミリメートル以下であってもよく、25平方ミリメートル以下であることが好ましく、およそ15平方ミリメートルであることがより好ましい。サイズは、発熱体を手持ち式システムの中に組み込むように選ばれる。導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物のサイズ設定を50平方ミリメートル以下にすることは、導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物を加熱するのに必要な総電力量を低減する一方で、導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物が液体エアロゾル形成基体に十分に接触していることを依然として確保する。導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物は、例えば長方形であってもよく、また2ミリメートル~10ミリメートルの長さ、および2ミリメートル~10ミリメートルの幅を有してもよい。メッシュは、およそ5ミリメートル×3ミリメートルの寸法を有することが好ましい。
【0031】
発熱体のフィラメントは、適切な電気特性を有する任意の材料で形成されてもよい。適切な材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、およびセラミック材料と金属材料とで作製された複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。
【0032】
適切な合金の例としては、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル含有、コバルト含有、クロム含有、アルミニウム含有、チタン含有、ジルコニウム含有、ハフニウム含有、ニオビウム含有、モリブデン含有、タンタル含有、タングステン含有、スズ含有、ガリウム含有、マンガン含有、および鉄含有合金、ならびにニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、鉄-アルミニウム系合金、鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals Corporationの登録商標である。フィラメントは一つ以上の絶縁体で被覆されていてもよい。導電性フィラメント用の好ましい材料はステンレス鋼および黒鉛であり、AISI 304、316、304L、316Lなどの300シリーズのステンレス鋼であることがより好ましい。追加的に、導電性発熱体は上記の材料の組み合わせを含んでもよい。実質的に平坦な発熱体の抵抗の制御を改善するために、材料の組み合わせが使用されてもよい。例えば、固有抵抗が高い材料を、固有抵抗が低い材料と組み合わせてもよい。これは、材料のうちの一つが他の観点、例えば価格、機械加工性、またはその他の物理的および化学的パラメータの観点から、より有益である場合に、有利である場合がある。有利なことに、増加した抵抗を有する実質的に平坦なフィラメント配設は、寄生損失を低減する。有利なことに、抵抗が高いヒーターは、電池エネルギーのより効率的な使用を可能にする。
【0033】
フィラメントはワイヤで作製されていることが好ましい。ワイヤは金属で作製されることがより好ましく、ステンレス鋼で作製されることが最も好ましい。
【0034】
発熱体の電気抵抗は0.3オーム~4オームであってもよい。電気抵抗は0.5オーム以上であることが好ましい。発熱体の電気抵抗は0.6~2オームであることがより好ましく、約0.7オームであることが最も好ましい。
【0035】
液体貯蔵部は、液体エアロゾル形成基体を保持するための液体保持材料を含んでもよい。液体保持材料は発泡体、および繊維の収集物の海綿体状物であってもよい。液体保持材料はポリマーまたはコポリマーで形成されてもよい。一実施形態において、液体保持材料は紡糸ポリマーである。保持材料は、例えば多孔性セラミックまたはガラス繊維であってもよい。
【0036】
装置は、液体エアロゾル形成基体を発熱体に搬送するために毛細管材料を備えることが好ましい。毛細管材料は発熱体と接触して提供されてもよい。毛細管材料は発熱体と保持材料の間に配設されていることが好ましい。
【0037】
毛細管材料は、発熱体の表面の少なくとも一部分と接触する液体エアロゾル形成基体があることを保証する能力のある材料で作製されうる。毛細管材料は発熱体の隙間の中に延びてもよい。発熱体は、毛細管作用によって液体エアロゾル形成基体を隙間の中に引き出してもよい。
【0038】
毛細管材料は、材料の一方の端から別の端に液体を能動的に運ぶ材料である。毛細管材料は繊維状または海綿体状の構造を有してもよい。毛細管材料は一束の毛細管を含むことが好ましい。例えば、毛細管材料は複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含んでもよい。繊維または糸は、液体エアロゾル形成基体を発熱体に向かって運ぶために概して整列していてもよい。別の方法として、毛細管材料は海綿体様または発泡体様の材料を含んでもよい。毛細管材料の構造は複数の小さい穴または管を形成し、これを通して液体エアロゾル形成基体を毛細管作用によって搬送することができる。毛細管材料は任意の適切な材料または材料の組み合わせを含んでもよい。適切な材料の例は、海綿体もしくは発泡体材料、繊維もしくは焼結粉末の形態のセラミック系またはグラファイト系の材料、発泡性の金属材料もしくはプラスチック材料、繊維質材料、例えば紡糸繊維または押出成形繊維(セルロースアセテート、ポリエステル、または結合されたポリオレフィン、ポリエチレン、テリレンもしくはポリプロピレン繊維、ナイロン繊維またはセラミックなど)で作製された繊維質材料である。毛細管材料は、異なる液体物理特性で使用されるように、任意の適切な毛細管現象および空隙率を有してもよい。液体エアロゾル形成基体は、毛細管作用によって毛細管媒体を通して液体エアロゾル形成基体を搬送することを可能にする粘度、表面張力、密度、熱伝導率、沸点、および蒸気圧を含むが、これらに限定されない物理特性を有する。
【0039】
液体保持材料および毛細管材料は、摂氏250度までの耐熱性であってもよい。液体保持材料および毛細管材料は、ニコチンとの比較的に弱い相互作用を有することが好ましい。
【0040】
エアロゾル形成基体は、ニコチンおよび第一のエアロゾル形成体を含む液体混合物を含む。液体混合物は、4質量%以下のニコチンを含むことが好ましく、2%質量以下のニコチンを含むことがより好ましい。液体混合物は20mg/ml以下であることが好ましい。
【0041】
液体混合物は、最大でおよそ98質量%の第一のエアロゾル形成体を含んでもよい。好ましくは、液体混合物は、75質量%以下の第一のエアロゾル形成体を含む。第一のエアロゾル形成体はグリセロールであってもよい。
【0042】
液体混合物は、25質量%以下の第二のエアロゾル形成体を含有することが好ましい。液体混合物は、第二のエアロゾル形成体よりも質量でおよそ3倍の第一のエアロゾル形成体を含むことが好ましい。
【0043】
液体混合物は水を含有してもよい。液体混合物は風味化合物を含有してもよい。
【0044】
電源は有利なことに、リチウムイオン電池などの電池である。代替として、電源は別の形態の電荷蓄積装置(コンデンサーなど)であってもよい。電源は再充電を必要とする場合がある。例えば、電源は約六分間、または六分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0045】
制御回路はマイクロコントローラを備えてもよい。マイクロコントローラはプログラム可能なマイクロコントローラであることが好ましい。電気回路はさらなる電子構成要素を備えてもよい。電気回路はヒーター組立品への電力の供給を調節するように構成されてもよい。電力は、電流パルスの形態でヒーター組立品に供給されてもよい。
【0046】
制御回路は、システムでのユーザーによる吸煙を検出するように位置付けられた気流センサーを備えてもよい。気流センサーは、マイクロフォンまたは容量センサーを備えてもよい。別の方法として、または追加的に、ユーザーによる吸煙は、ユーザーによる各吸煙の直前、またはユーザーによる各吸煙中に、ユーザーがシステム上のボタンを押すことによって制御回路に示されてもよい。
【0047】
エアロゾル発生装置は手持ち式装置であることが好ましい。エアロゾル発生装置は携帯型であることが好ましい。エアロゾル発生装置は、従来の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを有してもよい。エアロゾル発生装置は、およそ30ミリメートル~およそ150ミリメートルの全長を有してもよい。エアロゾル発生装置は、およそ5ミリメートル~およそ30ミリメートルの外径を有してもよい。
【0048】
装置は、eシガレットなどの電気喫煙装置であってもよい。装置は、電源および制御回路を包含する再使用可能な部分と、エアロゾル形成基体を包含する消耗品部分とを備えてもよい。ヒーター組立品は、再使用可能部分の中、または消耗品部分の中、または部分的に両方の中であってもよい。別の方法として、ヒーター組立品は、別個の構成要素の中に提供されてもよい。液体エアロゾル形成基体は貯蔵部の中に保持されてもよい。貯蔵部は再充填可能であってもよい。
【0049】
本発明の第二の態様において、使用時にユーザーが吸煙するエアロゾル発生システムの中でエアロゾル形成基体からニコチン含有エアロゾルを発生する方法が提供されていて、エアロゾル形成基体は、ニコチンおよび第一のエアロゾル形成体を含む液体混合物を含み、第一のエアロゾル形成体はニコチンよりも高い沸騰温度を有し、方法は、
ユーザーによる吸煙と吸煙の間にエアロゾル形成基体を第一の温度範囲内に維持することと、
ユーザーによる吸煙中に第一の温度範囲を上回る第二の温度にエアロゾル形成基体を加熱し、これによって第一のエアロゾル形成体よりも優先的にニコチンを気化させることと、を含む。
【0050】
第二の温度は、第一のエアロゾル形成体の沸騰温度を下回ることが好ましい。エアロゾル形成基体は第二のエアロゾル形成体を含んでもよく、第二のエアロゾル形成体は第一のエアロゾル形成体よりも低い沸騰温度を有する。
【0051】
第一の温度範囲は、ニコチンおよび第二のエアロゾル形成体の沸騰温度を下回ってもよい。
【0052】
本発明の第一の態様に関連して説明した特徴が、本発明の第二の態様に適用可能であることは明確であろう。
【0053】
本発明はニコチンの優先的な蒸発を提供し、液体エアロゾル形成基体中のニコチン濃度よりも高い、発生したエアロゾル中のニコチン濃度につながる。これは、低濃度のニコチンを含む液体を使用する時でさえも、満足のいくユーザー体験を可能にする。これは人々が従来の紙巻たばこをやめるのに役立つ。また、低濃度のニコチンを含む液体の使用を可能にし、これは再充填可能なシステムの場合に輸送中および使用中にも特に取り扱うのがより簡単である。
【0054】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムの単純化された断面図である。
図2図2は、図1のシステムの斜視図である。
図3図3は、図1のシステムを通る気流を図示する。
図4図4は、システムの使用のセッションにわたって印加された電力対時間のプロットである。
【0056】
エアロゾル形成基体を加熱することによってユーザー吸入用のエアロゾルを発生するエアロゾル発生システムにおいて、典型的には二つの異なるタイプの加熱制御がある。液体エアロゾル形成基体のための最も一般的なタイプの加熱制御は、いわゆる「フラッシュ」加熱であり、ここでは、ある量の液体が短い時間の間に急速に加熱されて蒸気を発生する。フラッシュ加熱は、エアロゾルがユーザーによる吸煙中にのみ発生されるように、ユーザーによる吸煙または吸入のタイミングと一致する場合がある。フラッシュ加熱はまた、エアロゾル形成基体の薄膜または被覆を気化させるために使用される。もう一つのタイプの加熱制御は、いわゆる「連続」加熱であり、ここではエアロゾル形成基体は、ユーザーによる吸煙または吸入とは無関係に、持続的な期間の間加熱される。このタイプの加熱制御は、たばこロッドなどのより大きい質量の固体エアロゾル形成基体を加熱する時に、より一般的である。
【0057】
本明細書に記載の実施形態は、連続加熱とフラッシュ加熱の組み合わせを使用して、液体混合物からのニコチンの優先的な蒸発を提供し、一方でユーザーによる吸煙中に、より多くのエアロゾル凝縮物(ACM)を発生する。ニコチンの優先的な蒸発とは、発生された蒸気中のニコチン濃度が液体混合物中のニコチン濃度よりも高いように、ニコチンが液体混合物の少なくとも一つの他の構成成分よりも著しく高い速度で気化することを意味する。ニコチンよりも高い沸騰温度(またはニコチンよりも低い蒸気分圧)を有するエアロゾル形成体を含有する液体混合物と、連続加熱およびフラッシュ加熱のハイブリッドとを使用することによって、蒸気中およびつまり発生されたエアロゾル中のニコチン濃度の著しい増加を達成することが可能である。液体混合物を、吸煙と吸煙の間にエアロゾル形成体の沸点よりもニコチンの沸点に近い温度に維持することは、ニコチンの優先的な蒸発を促進する。ユーザーによる吸煙中に発熱体の温度を上昇させる、または発熱体に供給される電力を増強することは、ユーザーの各吸煙において、ACMおよびニコチンの望ましい総量が送達されることを可能にする。
【0058】
ニコチンを優先的に蒸発させることは、より低いニコチン濃度を有する液体混合物の使用を可能にする。これは、液体中のより低いニコチン濃度は、製造中、輸送中、および使用中に液体の取り扱いをより簡単にするので有利であり、またエンドユーザーがこの液体を用いてエアロゾル発生システムを再充填することを必要とする場合に特に有益である。また、国の規制または国際的な規制に明らかに準拠した液体を使用することを可能にする一方で、満足のいく体験をユーザーに依然として提供する。
【0059】
図1は、本発明の実施形態によるエアロゾル発生システム10の単純化された断面図である。図1のシステムは、連結されて一緒になったカートリッジ20と装置部分40を備える。
【0060】
カートリッジは、液体エアロゾル形成基体の供給およびヒーター組立品を備える。装置部分は、電源および制御回路を備える。装置部分は、液体エアロゾル形成基体を気化するために電力をカートリッジの中のヒーター組立品に供給するように機能する。気化されたエアロゾル形成基体はシステムを通る気流中に同伴され、気流はユーザーがカートリッジのマウスピースで吸煙することでもたらされる。気化されたエアロゾル形成基体はユーザーの口の中に引き出される前に、気流中で冷めてエアロゾルを形成する。
【0061】
図2は、図1に示すシステムの斜視図である。同一のハードウェア構成要素を備えるシステムが、国際特許公開公報第2018/019485号に記載されている。
【0062】
装置部分40は、リチウムイオン電池42および制御回路44を保持するハウジング46を備える。装置部分はまた、カートリッジ中のヒーター組立品上の電気接点パッドに接触するように構成された、ばね式の電気接点要素(図示せず)を備える。制御回路内のスイッチを作動させて装置を起動するボタン41が提供されている。装置が起動されると、制御回路は電池からカートリッジ中のヒーターに電力を供給する。
【0063】
カートリッジ20は、ユーザーが吸煙することができるマウスピース23を備えるマウスピース端を有する。マウスピース端は装置部分から離れている。カートリッジの装置端は装置部分の近傍にある。
【0064】
カートリッジ20はハウジング22を備える。ハウジング内には液体エアロゾル形成基体26を保持する貯蔵部または貯蔵容器24がある。貯蔵容器は装置端にて開口している。平坦なメッシュ発熱体を備えるヒーター組立品がヒーターキャップ30上に保持されている。ヒーターキャップは貯蔵容器の開放端上に嵌合されている。液体保持32材料がキャップ内に位置付けられている。毛細管材料31は、ヒーター組立品28と保持材料32の間に位置付けられている。保護カバー33はハウジングに嵌合されていて、かつヒーター組立品およびヒーターキャップを貯蔵容器に保ち続ける。保護カバーはまた、発熱体を覆い、損傷から保護する。
【0065】
ヒーターキャップ30は前面に形成された開口を有し、ヒーター組立品は開口を横切って延びる。ヒーター組立品は、ヒーターキャップおよび発熱体に固定された一対の電気接点パッドを備え、これは開口にわたる、かつ開口の反対側にある電気接点に固定された導電性ヒーターフィラメントのメッシュを備える。このタイプのヒーター組立品は国際特許公開広報第2015/117702号に記載されている。
【0066】
図1から分かる通り、保護カバー33はカートリッジ中の適所にある時、ヒーター組立品の周辺に対して押し付けられるが発熱体には接触しない。図3を参照しながらより詳細に説明する通り、発熱体への気流経路および発熱体からの気流経路が、保護カバー33とヒーター組立品28と貯蔵容器24との間に提供されている。
【0067】
保護カバーは、発熱体を通り越す気流経路と電気接点パッドとの間にバリアを提供するように形作られている。保護カバーは、このバリアを提供するために、およびヒーター組立品を貯蔵容器に固定するために、接点パッドの露出した部分と発熱体の中央部分との間でヒーター組立品と接触する。この配設は、漏れた、または凝縮した液体エアロゾル形成基体が電気接点パッドおよび電気接点要素の接触表面を汚染する可能性を低減する。加えて、気流経路の中から漏れた、または凝縮した液体が漏れ出てシステムの他の構成要素を汚染する可能性をさらに低減するために、保護カバーの内部上または貯蔵容器の外部上に液体保持材料の層(いずれの図にも図示せず)を提供して、気流経路内で凝縮した液体を吸収するようにしてもよい。
【0068】
カートリッジ20は、押し嵌めによって装置部分40に連結されている。カートリッジハウジングは、カートリッジ20が二つの向きのみで装置部分40に連結することを可能にするように形作られていて、これは、ばね式の電気接点要素が開口の中に受容され、かつヒーター組立品の接点パッドと接触することを確実にする。装置部分の接続リブ48は、カートリッジハウジング上の陥凹部25と係合して、カートリッジと装置部分を一緒に保持する。
【0069】
カートリッジハウジング22および貯蔵容器24は、ポリプロピレンで一体成型され、かつ形成されている。液体保持材料32はポリプロピレンPETコポリマーで形成されている。毛細管材料31はガラス繊維で形成されている。ヒーターキャップはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で形成されている。発熱体はステンレス鋼で形成されていて、また電気接点パッドはスズで形成されている。保護カバーは液晶ポリマー(LCP)で形成されている。
【0070】
カートリッジを組み立てるために、貯蔵容器はまずエアロゾル形成基体で充填される。次いで液体保持材料32は貯蔵容器の開放端の中に定置され、毛細管材料31は液体保持材料の上に定置される。ヒーター組立品が既に固定されているヒーターキャップは次に、貯蔵容器の開放端の中に定置される。貯蔵容器およびヒーターキャップは、ヒーターキャップが正しい向きで貯蔵容器上に定置されることを確実にするためのキーイング機構を備えてもよい。次いで保護カバー33がハウジング22に嵌合され、カートリッジ構成要素のすべてを適所に保持する。
【0071】
システムは、ユーザーの手の中に快適に適合するようにサイズ設定された手持ち式システムである。動作時に、カートリッジと装置部分が連結されて一緒になった後、ユーザーはボタン41を押して装置を起動する。次いでユーザーはマウスピース23を吸煙して、システムを通して空気を引き出す。以後に説明する通り、制御回路は装置の起動後に、検出されたユーザーによる吸煙に基づいて、ヒーター組立品に電力を連続的に供給する。気化されたエアロゾル形成基体は発熱体を通過し、システムを通過する気流の中に入る。
【0072】
ユーザーによる吸煙は、装置部分内のフローセンサー(図示せず)によって検出されるが、装置を通る気流と流体連通する。しかしながら、別の実施形態において、フローセンサーは省略されてもよく、またユーザーは各吸煙の直前にボタン41を押す必要がある。
【0073】
図3は、ユーザーがマウスピース23を吸煙する時にカートリッジを通る気流を図示する。空気は、装置本体のハウジングとカートリッジ22のハウジングとの間に形成された吸込み口60を通して、システムの中に引き出される。次いで空気は装置部分の接続部分の中に形成された開口部を通過し、装置部分と保護カバー33との間に形成された空洞の中に入る。次いで空気は、保護カバーの前部壁上の空気吸込み穴37と、希釈空気吸込み口50との両方を通ってカートリッジの中に引き出される。空気吸込み穴37を通して引き出された空気は発熱体上に衝突し、気化されたエアロゾル形成基体を同伴する。空気と蒸気の混合物は、保護カバー33と貯蔵容器24の間の気流経路54に沿って発熱体から離れるように引き出される。希釈空気吸込み口50を通して引き出された空気は、ヒーター組立品からの蒸気/空気混合物と混合される。混合物が気流経路54を通って進むにつれて、蒸気は冷えて、エアロゾルが形成される。このエアロゾルはマウスピース23を通してユーザーの口の中に引き出される。
【0074】
気流経路は90度の曲がりを含み、貯蔵容器の外部をたどる。気流中のいかなる大きい液滴または破片も、曲がりを回って通過せず、保護カバー33にぶつかる。これは望ましいエアロゾルがユーザーに到達することを確実にするのに役立つ。
【0075】
図4は、液体混合物中のグリセリンよりも優先的にニコチンを蒸発させるための、図1に示されるタイプのシステムの動作中の発熱体への電力の送達を図示する。システムは、ユーザーがボタン41を押すことによって、時間t=0にて起動される。制御回路44は、およそ2ワットを発熱体に供給する。これは、発熱体に近接する液体の温度を摂氏180~200度に上げる。フローセンサーによってユーザーによる吸煙が検出されると、制御回路はより高い電力の短いバーストを供給する。この例において、制御回路は3ワットの電力を3秒間にわたり供給する。ユーザーによる吸煙中に発熱体を通り過ぎる気流のため、発熱体の冷却があり、また発熱体に近接する圧力の低減もある。これは、より高い電力が供給される期間中に、発熱体温度において限られた増加のみがあるが、液体気化において著しい増加があることを意味する。この実施例において、発熱体はユーザーによる各吸煙中に、摂氏220度以下の温度に到達する。
【0076】
第一の実施例における液体エアロゾル形成基体26は、74重量%のグリセリンと、24重量%のプロピレングリコールと、2重量%のニコチンとを含む。この混合物は、グリセリンよりも優先的にニコチンが蒸発するように、加熱されることができる。ニコチンは摂氏247度の通常の沸点を有し、グリセリンは摂氏290度の通常の沸点を有し、プロピレングリコールは摂氏188度の通常の沸点を有する。
【0077】
この加熱制御戦略は、使用セッションの最初の8回の吸煙にわたって平均で、送達されたエアロゾル中の4質量%に近いニコチン、および送達されたエアロゾル中の約74質量%未満のグリセリンをもたらすことが見いだされた。
【0078】
吸煙中に印加された追加的な電力は、セッション全体を通して単に2ワットを印加するのと比較して、エアロゾル凝縮物(ACM)および送達される総ニコチンを増加させる。特に、ACMは1.4mg/吸煙から2mg/吸煙に増加し、またニコチンはおよそ20μg/吸煙から50μg/吸煙に増加する。
【0079】
別の実施例において、液体エアロゾル形成基体26は、98%重量の植物グリセリン、24重量%および2重量%のニコチンを含む。図4に図示の通り、同一の電力制御戦略が使用される。結果として得られるエアロゾルは、最初の8回の吸煙にわたって平均で2.8重量%のニコチンを含有し、この場合も液体中のニコチン濃度より大きい。
【0080】
吸煙中に印加された追加的な電力は、セッション全体を通して単に2ワットを印加するのと比較して、エアロゾル凝縮物(ACM)および送達される総ニコチンを増加させる。特に、ACMは1.4mg/吸煙から2.25mg/吸煙に増加し、またニコチンはおよそ32μg/吸煙から40μg/吸煙に増加する。
【0081】
ユーザーによる吸煙中に3Wよりも高い電力を印加することは、送達されるACMおよび総ニコチンをさらに増加させることが見いだされたが、送達されたエアロゾル中の重量基準のニコチンの割合は著しく改善されなかった。
【0082】
上記の実施例において、電力は所定の電力レベルに基づいて供給される。その代わりに、望ましい温度に基づいて制御することが可能である。発熱体の温度は、その抵抗をモニターすることによって、または別個の専用の温度センサーを使用することによって決定されてもよい。例えば、発熱体はユーザーによる吸煙と吸煙の間、例えば摂氏200度などの第一の温度に維持されてもよく、ユーザーによる各吸煙中に電力を1ワットだけ増加してもよく、または温度を摂氏20度だけ増加してもよい。電力または温度に基づいて異なる制御の組み合わせが使用されてもよい。温度制御は、単一の標的温度ではなく温度範囲に基づいてもよい。電力制御は、発熱体(複数可)への供給電流の負荷サイクルの制御に基づいてもよい。
【0083】
また、異なるタイプのヒーターを使用して、同一の制御戦略を使用することも可能である。必要とされる電力のレベルは、発熱体の特性に依存することになり、また発熱体が抵抗ヒーターである場合、特にその電気抵抗に依存することになる。
【0084】
異なるユーザーは、異なるエアロゾル特性を好む場合がある。そのため、第一の電力もしくは第一の温度範囲の第一の温度、または第二の電力もしくは第二の温度、またはこれらのパラメータの任意の組み合わせをユーザーが設定することを可能にすることも可能である。制御回路は、システム上で、または接続されたコンピュータ、タブレット、もしくはスマートフォン上のいずれかで、適切なユーザーインターフェースを使用してユーザーによってプログラム可能であってもよい。
【0085】
また、第一の電力もしくは第一の温度範囲の第一の温度、または第二の電力もしくは第二の温度、またはこれらのパラメータの任意の組み合わせを、エアロゾル形成基体として使用される液体混合物の同一性に基づいて、自動的に設定することも可能である。液体混合物の同一性は、カートリッジ上のバーコードまたはその他のしるしを検出することによって決定されてもよく、あるいはシステム上で、または接続されたコンピュータ、タブレット、もしくはスマートフォン上のいずれかで、適切なユーザーインターフェースを使用してユーザーによって入力されてもよい。異なる液体混合物は、異なる温度に加熱されることから利益を得る場合がある。
【0086】
上述の例示的な実施形態は例示するが限定するものではない。上記で考察した例示的な実施形態に照らすことによって、上記の例示的な実施形態と一貫したその他の実施形態も当業者には明らかとなろう。
図1
図2
図3
図4