(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】再グループ化が迅速なピクセルマトリクス
(51)【国際特許分類】
H04N 25/46 20230101AFI20231130BHJP
H04N 25/78 20230101ALI20231130BHJP
【FI】
H04N25/46
H04N25/78
(21)【出願番号】P 2021527162
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085522
(87)【国際公開番号】W WO2020127180
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512092519
【氏名又は名称】トリクセル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッセ,ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ファーブル,グザビエ
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-078049(JP,A)
【文献】特開2007-274591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクスアレイ検出器であって、
●物理的効果に感応し、且つ、マトリクスアレイ内の少なくとも1つの行及び複数の列に配列されたピクセル(P)であって、前記物理的効果に依存する信号をそれぞれが生成するピクセル(P)のセットと、
●同一の列のうちの1つ又は複数の前記ピクセルをそれぞれが接続し、前記ピクセル(P)によって生成された前記信号を運ぶことを意図したQ個の列導体(Col)であって、前記列(Col)及び関連付けされた導体が、その物理的な分布に従って順序付けられ、qが現在の列を表すQ個の列導体(Col)と、
●N個のマルチプレクサ(A、B、C、D)であって、各マルチプレクサが1~Kまで順序付けられ、kが現在の入力の階数を表すK個の入力であって、それぞれが、前記列導体(Col)のうちの1つからの信号を受信する入力を含み、Kが2以上であり、Qが少なくともK
2に等しく、1~Q/Kまで順序付けられ、nが現在のマルチプレクサの階数を表し、各マルチプレクサ(A、B、C、D)が出力(SA、SB、SC、SD)を含む前記N個マルチプレクサ(A、B、C、D)であり、受信した前記信号をその入力順序でそれらの出力に順次送達する前記N個のマルチプレクサ(A、B、C、D)であり、同じ前記階数kの入力から受信した前記信号を同時に送達するように構成された前記N個のマルチプレクサ(A、B、C、D)と、
●別個の列に属するすぐ隣にあるピクセルからの前記信号を再グループ化するように、前記マルチプレクサ(A、B、C、D)の前記出力(SA、SB、SC、SD)に存在する信号の混合を可能にするスイッチのネットワーク(38)と、
を含み、
●qが1~K
2の間にある前記階数qの列が、階数n=Kを法としてqの前記マルチプレクサに接続され、
●qが1~K
2の間にある前記階数qの列が、デフォルトの整数部分(q-1)/Kに1を加算したものに等しい、すなわち、
【数1】
で表示される階数kの前記入力に接続される、マトリクスアレイ検出器。
【請求項2】
QがK
2よりも大きく、第1のK
2個の前記列導体の、K個のマルチプレクサへの前記接続及び対応する前記スイッチのネットワーク(38)への前記接続が、K
2個の列導体及びK個のマルチプレクサのサブセットによって複製される、請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
前記スイッチのネットワーク(38)が、Kの約数個からなるグループ化、又はK個からなるグループ化を生成するように構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の検出器。
【請求項4】
それぞれが前記マルチプレクサ(A、B、C、D)のうちの1つに関連付けされたN個のコンバータ回路(32A、32B、32C、32D)をさらに含み、各マルチプレクサ(A、B、C、D)が、前記関連付けされたコンバータ回路(32A、32B、32C、32D)に多重化された信号を送達することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項5】
前記スイッチのネットワーク(38)が、前記コンバータ回路(32A、32B、32C、32D)の下流に配列されることを特徴とする、請求項4に記載の検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクスアレイ検出器に関する。本発明は、検出器における画像取り込みのために用いることができる。この種のデバイスは、概してマトリクスアレイ又は線形アレイに配列されたピクセルと呼ばれる多数の感応点を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、可視画像の生成において使用することができるが、この分野に限定されない。例えば、圧力マップ若しくは温度マップ、又は化学ポテンシャル若しくは電位の二次元表現を生成することが可能である。これらのマップ又は表現は、物理量の画像を形成する。
【0003】
検出器において、ピクセルは、検出器の基本的な感応素子を表す。各ピクセルは、各ピクセルが受ける物理的効果を電気信号に変換する。画像を形成するために処理及び格納することができるように、様々なピクセルからの電気信号がマトリクスアレイ読み取りフェーズで収集され、その後、デジタル化される。ピクセルは、物理的効果に感応するゾーンによって形成され、例えば、電荷電流を送達する。物理的効果は、光子のストリームを送達する電磁放射である場合があり、それゆえ、本発明は、この種の放射によって説明され、電荷電流は、感応ゾーンが受け取る光子のストリームに依存する。任意のマトリクスアレイ検出器に一般化することは簡単明瞭である。
【0004】
画像検出器では、各ピクセルは、概して、感光素子又は光検出器を含み、これらは、例えば、フォトダイオード、フォトレジスタ又はフォトトランジスタとすることができる。数百万のピクセルが列及び行に配列されている場合がある、大型サイズの感光性マトリクスがある。各ピクセルは、例えば、スイッチ、キャパシタ、及び抵抗器で構成された電子回路をさらに含み、その下流側には、アクチュエータがある。感光素子及び電子回路で構成されたアセンブリにより、電荷を生成及び収集することが可能になっている。電子回路により、概して、各ピクセルで収集された電荷を電荷移動の後にリセットすることが可能になっている。アクチュエータの役割は、回路によって収集された電荷を列導体に転送又はコピーすることである。この転送は、アクチュエータが、これを行う命令を行導体から受けたときに実行される。アクチュエータの出力は、ピクセルの出力に対応する。「行導体」及び「列導体」という用語は、完全に恣意的なものである。当然ながら、これらの用語を入れ替えることが可能である。
【0005】
この種の検出器では、ピクセルは、2つのフェーズ、すなわち、ピクセルの電子回路が感光素子によって生成された電荷を蓄積する、画像取り込みフェーズ、及び収集された電荷がアクチュエータによって列導体に転送又はコピーされる読み取りフェーズで動作する。
【0006】
マトリクスアレイ画像検出器は、同一の行のピクセルをそれぞれ接続している行導体と、同一の列のピクセルをそれぞれ接続している列導体と、を含む。列導体は、マトリクスアレイの縁端部に概して配列されたコンバータ回路に接続されており、「列の末端(foot of the column)」と呼ばれる場合がある。線形アレイ検出器は、ピクセルの行が1つしかない、したがって、ピクセルと同じ数の列を含んでいるマトリクスアレイ検出器であると見なすことができる。
【0007】
読み取りフェーズでは、読み取り命令が、マトリクスアレイの同一の行のアクチュエータのすべてに伝送され、この行内のピクセルはそれぞれ、関連付けされた列導体にその電気的情報、電荷、電圧、電流、周波数、等々を転送することによって、読み取られる。
【0008】
以下に、電気的情報が、ピクセル内においてアナログ方式で、同じ値のキャパシタに蓄積された電荷の量の形で利用可能な場合について説明することにする。当然ながら、本発明は、ピクセルのそれぞれで生み出された任意の形態の電気的情報、例えば、デジタル情報などに対して用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複数のピクセルをまとめて読み取るために、それらを再グループ化することが望ましい場合がある。英語文献において名称「ビニング(binning)」で知られているこの再グループ化は、読み取られた各素子の信号対雑音比を向上させることを可能にする。ピクセルを再グループ化する別の理由は、検出器の感度を向上させるためである。ピクセルを読み取るときに、それらを再グループ化すると、検出器の読み取り速度を向上させることもまた可能になり、したがって、検出器によって生成される画像の頻度を高めることが可能になる。ただし、再グループ化は、空間分解能を犠牲にして実行される。
【0010】
各ピクセルからの情報が電荷である場合、ピクセルは、例えば、列の末端にあるコンバータ回路に配列された共通のキャパシタに、再グループ化されるピクセルの電荷を再分配することによって、再グループ化することができる。
【0011】
それに加え、同一のコンバータ回路に複数の列を接続することによって、列の末端にあるコンバータ回路の数を減らすことが可能である。同一のコンバータ回路に複数の列導体を接続するために、マルチプレクサを用いることが可能である。複数の隣接する列導体は、同一のマルチプレクサの様々な入力にそれぞれ接続されている。マルチプレクサの出力は、コンバータ回路に接続されており、したがって、それはピクセルの複数の隣接する列に共通である。同一のマルチプレクサに接続されたピクセルの様々な列は、コンバータ回路によって連続して読み取られる。マルチプレクサを用いると、コンバータ回路の数をマルチプレクサの入力の数に等しい係数Kで等分することができるが、読み取り動作がシリアルに実行されるため、同じ係数Kの分だけ読み取り速度が遅くなる。
【0012】
別個の列に属する同一の行の隣接するピクセルからの情報は、コンバータ回路の出力で再グループ化される。コンバータ回路がピクセルの複数の列に共通である場合、同一の行からグループ化されるピクセルからの情報が同時に到達しないため、情報の再グループ化が実行しにくい。時間又は表面積を無駄にせずに、それを列の末端にある共通のキャパシタに再分配することは非常に複雑になる。
【0013】
本発明は、コンバータ回路の数を減らすことを可能にするマルチプレクサの使用の枠組みの範囲内にある。本発明は、別個の列に属するすぐ隣にあるピクセルからの情報を再グループ化するピクセルマトリクスの読み取り速度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明の主題は、マトリクスアレイ検出器であって、
●物理的効果に感応し、且つ、マトリクスアレイ内の少なくとも1つの行及び複数の列に配列されたピクセルであって、物理的効果に依存ずる信号をそれぞれが生成するピクセルのセットと、
●同一の列のうちの1つ又は複数のピクセルをそれぞれが接続し、ピクセルによって生成された信号を運ぶことを意図したQ個の列導体であって、列及び関連付けされた導体が、その物理的な分布に従って順序付けられ、qが現在の列を表すQ個の列導体と、
●N個のマルチプレクサであって、各マルチプレクサが1~Kまで順序付けられ、kが現在の入力の階数(rank)を表すK個の入力であって、それぞれが、列導体のうちの1つからの信号を受信する入力を含み、Kが2以上であり、Qが少なくともK
2に等しく、1~Q/Kまで順序付けられ、nが現在のマルチプレクサの階数を表し、各マルチプレクサが出力を含むマルチプレクサであり、受信した信号をその入力順序でそれらの出力に順次送達するN個のマルチプレクサであり、同じ階数kの入力から受信した信号を同時に送達するように構成されたN個のマルチプレクサと、
●別個の列に属するすぐ隣にあるピクセルからの信号を再グループ化するように、マルチプレクサの出力に存在する信号の混合を可能にするスイッチのネットワークと、
を含み、
●qが1~K
2の間にある階数qの列が、階数n=Kを法としてqのマルチプレクサに接続され、
●qが1~K
2の間にある階数qの列が、階数
【数1】
の入力に接続されている、マトリクスアレイ検出器である。
【0015】
有利には、QがK2よりも大きく、第1のK2個の列導体の、K個のマルチプレクサへの接続及び対応するスイッチのネットワークへの接続が、K2個の列導体及びK個のマルチプレクサのサブセットによって複製される。
【0016】
スイッチのネットワークは、Kの約数個からなるグループ化、又はK個からなるグループ化を生成するように有利に構成されている。
【0017】
有利には、検出器は、それぞれがマルチプレクサのうちの1つに関連付けされたN個のコンバータ回路をさらに含み、各マルチプレクサが、関連付けされたコンバータ回路に多重化された信号を送達する。
【0018】
スイッチのネットワークは、コンバータ回路の下流に有利に配列されている。
【0019】
例として与えられる一実施形態の詳細な説明を読むことで、本発明がより良く理解されるとともに、さらなる利点が明らかになり、添付図面によってその説明を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を用いることが可能なピクセルマトリクスの一例を示す。
【
図2】本発明を用いることが可能なピクセルマトリクスの別の例を示す。
【
図3】
図1のマトリクスに関連付けされた読み取り回路の一例を示す。
【
図4】
図3の読み取り回路で用いることが可能なコンバータ回路の一例を示す。
【
図5】
図3の読み取り回路で用いることが可能なスイッチのネットワークの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
わかり易くするために、同じ要素は様々な図面において同じ参照符号を有するものとする。
【0022】
以下の説明は、物理量に感応する素子をそれぞれ含む、ピクセルと呼ばれる複数の基本的な電子回路によって形成されたマトリクスアレイ検出器に関して提供される。基本的な電子回路は、記載の例では、光の放射に感応するピクセルである。当然ながら、本発明は、例えば、圧力マップ又は温度マップの生成を可能にする、任意の形式の物理量に感応する他の検出器に用いることができる。
【0023】
図1は、理解し易くするために2つの行及び2つの列を含むマトリクスを概略的に示す。4つのピクセルPはそれぞれ、行と列との交点に形成されている。当然ながら、実際のマトリクスアレイは概して、これよりもはるかに大きく、多数の行及び列を有する。マトリクスアレイは、デジタル化された画像の生成を可能にするマトリクスアレイ検出器10の一部である。
【0024】
各ピクセルPは、ここではフォトダイオードDによって表された感光ゾーンと、
図1の例では、単一のトランジスタTによって形成された電子処理回路と、を含む。構成要素D及びTの参照符号の後に、2つの座標(i,j)が続き、これらはiを行の階数とし、jを列の階数とすることができる。このピクセルは、1つのトランジスタを有するため、1T型ピクセルとも呼ばれ、その機能については後述する。
【0025】
概して、英語文献においてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)の略語で知られる相補型結晶シリコン半導体を用いるトランジスタを含むピクセルマトリクスを製造することが、既知の慣行である。本発明は、この種のトランジスタに限定されず、例えば、英語文献においてTFT(thin-film transistor:薄膜トランジスタ)という名称で知られている薄膜電界効果トランジスタを含むマトリクスアレイに用いてもよい。TFT型トランジスタは、金属酸化膜ベースの、例えば、英語の略語IGZOで知られている、アモルファス又は結晶インジウム、ガリウム及び亜鉛酸化物ベースのトランジスタなどとすることができる。例えば、有機TFT、アモルファスシリコンTFT、多結晶シリコンTFT、等々といったような、他の族のTFT型のトランジスタを用いることができる。
【0026】
同一の列のピクセルPは、列導体Colに接続されている。この導体により、導体に接続されたピクセルからの情報の収集が可能になっている。同一の行のピクセルPは、ピクセルの行をそれぞれ制御可能にする信号Phi_ligneを伝達する行導体に接続されている。
【0027】
リセット動作後に行われる画像取り込みフェーズでは、フォトダイオードDによって受光される照明は、そのカソードの電位を低下させる。この画像取り込みフェーズの後に、読み取りフェーズが続き、フォトダイオードDの電位が読み取られる。これを行うために、トランジスタTは、そのゲートに印加された制御信号Phi_ligneによってオンになり、したがって、スイッチとして作用する。
【0028】
列導体Colは、信号Phi_ligneによって選択されたときに、対応する列のピクセルから情報を収集するために使用される。本発明は、様々な列導体Colからの情報を形にすることに関する。
【0029】
本発明は、特に、トランジスタTを、信号Phi_ligneによってオンになる単純なダイオードに置き換えることによって、ピクセルがより単純な検出器において実装することもまた可能である。
【0030】
図2は、同じく本発明による画像検出器に加えることが可能な、符号Qが付されたピクセルのマトリクスの別の例を概略的に示す。各ピクセルQには、フォトダイオードDと、ここでは3つのトランジスタT1、T2、及びT3によって形成された電子処理回路と、が含まれている。前述のように、フォトダイオードD、及び3つのトランジスタの参照符号の後に、2つの座標(i,j)が続き、これらは、iを行の階数とし、jを列の階数とすることができる。実際には、この種のピクセルは、他の構成要素、特に、他のトランジスタを含むことができる。このピクセルは、少なくとも3つのトランジスタを有しており、これが3T型ピクセルとも呼ばれる所以である。
【0031】
同一の列のピクセルPは、列導体Colの端部にあるトランジスタT5を共有している。同一の行のピクセルPは、信号Phi_ligne、Vdd、V_ran、及びPhi_ranを伝達する4つの行導体に接続され、ピクセルの各行の制御を可能にしている。
【0032】
トランジスタT1は、制御信号Phi_ranがアクティブであるリセット動作の間に、フォトダイオードDのカソードの電圧を電圧V_ranにリセットすることができる。
【0033】
リセット動作後に行われる画像取り込みフェーズでは、フォトダイオードDによって受光される照明は、そのカソードの電位を低下させる。この画像取り込みフェーズの後に、読み取りフェーズが続き、フォトダイオードDの電位が読み取られる。これを行うために、トランジスタT3は、そのゲートに印加された制御信号Phi_ligneによってオンになり、したがって、スイッチとして作用する。3T型のピクセルのトランジスタT3は、
図1を参照して説明した1T型のピクセルのトランジスタTと同じ機能的な役割を実行する。
【0034】
トランジスタT2は、フォロワとして動作し、トランジスタT5は、電流源として動作する。次に、トランジスタT2及びT5は、フォトダイオードDのカソードに存在する電圧をコピーし、あるシフト内で、それを列導体Colで再現する電圧フォロワステージを形成する。そのコピーを実行するためには、トランジスタT2は、そのドレイン及びそのソースに流れるバイアス電流を必要とする。この電流は、トランジスタT5により形成された電流発生器によって課され、それは、複数のピクセルに共通であっても、共通でなくてもよい。示されている例では、トランジスタT5は、ピクセルの列に共通である。様々な列の読み取りと並行して、これらの同じ列に連続的に切り替える条件で、単一の電流源トランジスタT5だけをマトリクスアレイ全体に対して使用することもまた可能である。列導体Colは、トランジスタT2にバイアスをかけること、及び、対応する列のピクセルから、前記ピクセルが信号Phi_ligneによって選択されたときに情報を収集することの両方のために使用される。或いは、その2つの機能を分離するために、列導体Colを分けることが可能である。
【0035】
本発明は、動作の仕方が異なるピクセルに用いることができる。例として、本発明は、4T型のピクセルに用いることができる。トランジスタT1、T2、及びT3に加えて、4Tピクセルは、フォトダイオードDのカソードと、ピクセルのノードを形成するトランジスタT2のゲートとの間に配列された追加のトランジスタを含む。この追加のトランジスタにより、フォトダイオードDに蓄積された電荷をある選ばれた瞬間にピクセルのノードに転送することが可能になっている。
【0036】
用いられる場合、制御信号Phi_ligne及びPhi_ranを生成するアドレス指定回路は、一般的にはシフトレジスタであるが、
図1及び
図2には示されていない。アドレス指定回路は行の端部に配列されている。
【0037】
行及び列という用語は、完全に恣意的なものであり、入れ替えることもできる。機能の点では、検出器10及び検出器20は、様々なピクセルの制御信号を伝達する行導体と呼ばれる導体と、様々なピクセルによって集められた情報の収集を可能にする列導体と呼ばれる導体と、を含む。
【0038】
下記の説明は、列導体によって伝達される情報の使用に関する。本発明は、線形アレイの形で実現される検出器、すなわち、ピクセルの行が1つしかなく、このため、列にピクセルが1つしかない検出器でもまた用いることができる。
【0039】
図3は、検出器10の列、又は検出器20の列の末端に配列された読み取り回路30を示す。読み取り回路30は、すべての列導体Colに接続されている。示されている例では、Col1~Col16まで順序付けられた16個の列導体が示されている。当然ながら、本発明は、16個のピクセルの列を有する検出器、したがって、16個の列導体に限定されない。導体の空間的な順序は、マトリクスアレイ内のピクセルの順序に対応する。ピクセルP(i,j)は、ピクセルP(i,j-1)及びピクセルP(i,j+1)をすぐ隣のピクセルとして有する。したがって、列導体Col(j)は、まず列導体Col(j-1)を有し、次に列導体Col(j+1)をすぐ隣のピクセルとして有する。列導体は、その物理的な分布に従って順序付けられている。現在の列の階数は、qで表示される。qは、列導体の物理的な順序で増加する自然な整数である。
【0040】
示されている例では、読み取り回路30は、4つの入力をそれぞれ有する4つのマルチプレクサA、B、C、及びDを含む。様々なマルチプレクサA、B、C、及びDの入力はそれぞれ、列導体Colのうちの1つに接続されている。各マルチプレクサは、その入力のそれぞれにおいて、列導体Colのうちの1つからの信号を受信する。より大まかには、各マルチプレクサは、K個の入力を有する。各マルチプレクサは、K個の列導体Colからの信号を受信するが、信号は1つの入力につき1つであり、Kは2以上である。所与のマルチプレクサでは、現在の入力の階数は、kによって表示され、kは1~Kの間の自然な整数である。検出器がQ個の列導体を含む場合には、
図3の例ではQはK
2に等しくなる。より多くの数の列を有するマトリクスアレイを用いる方法については、後述する。
【0041】
示されている例では、マルチプレクサのそれぞれの入力は、マルチプレクサAの場合、k=1~k=4まで、又はA1~A4まで順序付けられており、その他のマルチプレクサB、C、及びDの場合も同様である。最初の4つの列Col1~Col4は、4つのマルチプレクサのそれぞれの4つの第1の入力にそれぞれ接続されている。言いかえれば、列導体Col1は入力A1に接続され、列導体Col2は入力B1に接続され、列導体Col3は入力C1に接続され、列導体Col4は入力D1に接続されている。次の4つの列導体Col5~Col8は、続いて、4つのマルチプレクサのそれぞれの4つの第2の入力にそれぞれ接続されている。言いかえれば、列導体Col5は入力A2に接続され、列導体Col6は入力B2に接続され、列導体Col7は入力C2に接続され、列導体Col8は入力D2に接続されている。列導体の接続は、導体Col16が入力D4に接続されるまで、同じやり方で続いていく。
【0042】
図3の例について、列導体Colとマルチプレクサとの接続は、下記の表に要約することができる。
【0043】
【0044】
より大まかには、K個の入力をそれぞれ有するN個のマルチプレクサの場合であれば、マルチプレクサは、1~Q/Kまで順序付けられ、nは、現在のマルチプレクサの階数を表している。列導体の階数がqで表示される場合、qが1~K
2の間にある階数qの列は、階数n=Kを法としてqのマルチプレクサに接続されている。それに加え、qが1~K
2の間にある階数qの列は、デフォルトの整数部分(q-1)/Kに1を加算したものに等しい階数kの入力に接続されている。完全な数学的表記では、次式の通りである。
【数2】
【0045】
列導体をマルチプレクサに接続するこの方法を使用すると、2つの隣接する列導体は、同一のマルチプレクサに接続されない。したがって、すぐ隣にある2つの列からの情報を同時に処理することが可能である。マルチプレクサの下流で実行される再グループ化が容易になるが、その理由は、別個の列に属するすぐ隣にあるピクセルからの情報を同時に処理するためである。上流及び下流は、ピクセルからの信号の転送方向で定義される。
【0046】
検出器10の行の読み取りフェーズでは、すべての列からの信号が、マルチプレクサの様々な入力でほぼ同時に提示される。各マルチプレクサA、B、C、及びDは、それぞれの入力から受信する信号を、その入力順序で、その出力SA、SB、SC、及びSDにそれぞれ順次送達する。例えば、
図3を参照すると、マルチプレクサAは、その入力A1で受信した列Col1からの信号を、次に、その入力A2で受信した列Col5からの信号を、次に、その入力A3で受信した列Col9からの信号を、そして最後に、その入力A4で受信した列Col13からの信号を送達する。同じことは、他のマルチプレクサB、C、及びDに当てはまる。4つのマルチプレクサが同時に、且つ、有利には同期して動作するので、同時に列Col1からの信号がマルチプレクサAの出力で見られ、列Col2からの信号がマルチプレクサBの出力で見られ、列Col3からの信号がマルチプレクサCの出力で見られ、列Col4からの信号がマルチプレクサDの出力で見られる。次の瞬間、列Col5、Col6、Col7、及びCol8からの信号が、各マルチプレクサの出力でそれぞれ見られ、検出器10のすべての列に対してこれが続く。言いかえれば、読み取り回路30は、同じ階数kの入力から受信した信号を同時に送達するように構成されている。
【0047】
検出器10は、各マルチプレクサの下流にコンバータ回路を含むことがある。言いかえれば、各マルチプレクサは、関連付けされたコンバータ回路に多重化された信号を一斉同報する。マルチプレクサと同じ数のコンバータ回路がある。検出器10及び検出器20では、Q/K個のコンバータ回路がある。マルチプレクサが存在することで、コンバータ回路の数をQ/K倍減らすことが可能になっている。
図3の例では、コンバータ回路は参照符号32が付され、それらに関連付けされているマルチプレクサの参照符号が下付き文字として付されている。
【0048】
図4は、積分器33によって形成されたアナログコンバータ回路の一例を示している。マルチプレクサA~Dの各出力は、積分器として接続された増幅器37の反転入力に接続されている。積分キャパシタ35は、増幅器37の反転入力と、コンバータ回路の出力を形成する増幅器37の出力との間に接続されている。増幅器37の非反転入力は基準電位に接続され、基準電位は、示されている例では、電気的接地である。コンバータ回路33は、積分キャパシタ35と並列に接続された電子スイッチ36を含む。電子スイッチ36により、コンバータ回路33をリセットすることが可能になる。コンバータ回路33により、関連付けされた列導体で伝達された電荷を電圧に変換することが可能になる。この代わりに、又はこれに加えて、コンバータ回路は、列導体で伝達される信号をデジタル化することができる。
【0049】
それに加え、読み取り回路30は、すぐ隣にあるピクセルからの信号の再グループ化を可能にするスイッチのネットワーク38を含む。スイッチのネットワーク38の一例が
図5に示されている。スイッチのネットワーク38は、存在する場合には、コンバータ回路の下流に有利に配列されている。
図3に示されている例では、マルチプレクサはそれぞれ4つの入力を有しており、スイッチのネットワーク38は、隣接するピクセルからの信号を2つずつ又は4つずつ再グループ化するように構成されている。より正確には、隣接するピクセルを再グループ化するために、スイッチのネットワーク38は、3つの電子スイッチ39、40、及び41と、3つのスイッチ39、40、及び41のための制御モジュール42と、を含む。スイッチ39により、マルチプレクサA及びBの出力を互いに接続することが可能になっている。キャパシタ43は、マルチプレクサAの出力に接続することができ、キャパシタ44は、マルチプレクサBの出力に接続することができる。スイッチ39を閉じることにより、次に、キャパシタ43及び44が並列に接続され、これにより、マルチプレクサA及びBの出力に存在する信号を混合するために、それらを平均することが可能になっている。スイッチ41により、同様に、マルチプレクサC及びDの出力を接続することが可能になっている。キャパシタ45は、マルチプレクサCの出力に接続することができ、キャパシタ46は、マルチプレクサDの出力に接続することができる。このように、第1の瞬間では、まず、列Col1及び列Col2のグループ化が、そして次に、スイッチのネットワーク38の出力において、列Col3及び列Col4のグループ化が見られる。次の瞬間では、まず、列Col5及び列Col6のグループ化が、次に、列Col7及び列Col8のグループ化が、スイッチのネットワーク38の出力で見られ、マルチプレクサがそれぞれの第4の入力に存在する信号を送達する第4の瞬間まで、これが続く。
【0050】
図5の例により、すぐ隣にある列からの信号間で平均値を割り出すことが可能になっている。例えば、信号の加算など、信号の混合を可能にする他の代替的選択肢が可能である。
【0051】
同じように、すぐ隣にあるピクセルを4つずつ再グループ化するために、マルチプレクサA、B、C、及びDの出力はすべて接続されている。この目的のために、スイッチ40により、マルチプレクサB及びCの出力を接続することが可能になっている。スイッチ40は、スイッチ39及び41とともにだけ閉じられている。3つのスイッチ39~41が閉じられると、4つのキャパシタ43~46が並列に接続され、これにより、4つのマルチプレクサA~Dの出力に存在する信号を平均することが可能になっている。このように、第1の瞬間では、列Col1、Col2、Col3、及びCol4のグループ化が、スイッチのネットワーク38の出力で見られ、列Col13、Col14、Col15、及びCol16のグループ化がスイッチのネットワーク38の出力でこのように見られる第4の瞬間まで、これが続く。
【0052】
当然ながら、スイッチのネットワーク38内のいずれのスイッチも閉じないことにより、グループ化を生成しないことが可能である。スイッチのネットワーク38の出力は、画像を形成するために検出器で収集された情報をシリアルに送達するために、例えば、並列入力及び直列出力を有するシフトレジスタによって形成されたマルチプレクサ50に接続することができる。したがって、マルチプレクサ50の出力では、シリアルに送達される基本的な情報は、スイッチのネットワーク38からの制御に従って、分離して得られた各ピクセルからのものである場合もあれば、隣接するピクセルのグループ化からのものである場合もある。
【0053】
図3では、列導体の数Qは、各コンバータの入力の数を2乗したもの、すなわち、K
2に等しい。これは、本発明の礎石を成している。より多数のピクセルの列、したがって、より多数の列導体を用いるために、この礎石を、K
2を超える列に複製することができる。より正確には、第1のK
2個の列導体のK個のマルチプレクサへの接続及び対応するスイッチのネットワーク38への接続は、K
2個の列導体及びK個のマルチプレクサのサブセットによって複製される。
【0054】
図5は、2つ又は4つのグループ化の生成を可能にする4つの入力を有するマルチプレクサを用いる一例を提示している。より大まかには、入力の数が異なる他のマルチプレクサを用いることが可能である。例えば、12個の入力を有する12個のマルチプレクサの場合であれば、すぐ隣にある2個の、3個の、4個の、6個の、及び12個の列からなるグループ化の生成が可能である。より大まかには、K個の入力を有するマルチプレクサを用いることにより、Kのすべての約数個の列からなるグループ化の生成が可能であり、K個の列からなるグループ化もまた可能である。
【0055】
上記で見てきたように、K2よりも大きい列の数Qを有する検出器を製造することが可能である。この場合、検出器は、Kを法として階数nが1~Kの間にあるK個のマルチプレクサからなるグループと同じ数のスイッチのネットワークを有する。