(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】熱作動式表示又は切替装置
(51)【国際特許分類】
H01H 37/36 20060101AFI20231130BHJP
H01H 37/74 20060101ALI20231130BHJP
H01H 37/76 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01H37/36
H01H37/74 B
H01H37/76 B
(21)【出願番号】P 2021533553
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2019081159
(87)【国際公開番号】W WO2020120057
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】102018131975.4
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522067846
【氏名又は名称】デーン エスエー
【氏名又は名称原語表記】DEHN SE
【住所又は居所原語表記】Hans-Dehn-Strasse 1 92318 Neumarkt i.d.OPf. Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒールル、シュテファン
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-048325(JP,A)
【文献】特開平08-111154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/159321(US,A1)
【文献】特表2020-510296(JP,A)
【文献】特表2009-527072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/36
H01H 37/74
H01H 37/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱作動式の表示又は切替装置であって、
当該表示又は切替装置(5;6;7)を直接的又は間接的に作動又は動作させる可動の機械的にプリロードされたスライド(3)と、熱の影響下で自身の凝集の状態を変化させるプレフォーム部品(12)とを有しており、前記プレフォーム部品(12)は、機能可能状態において、前記可動のスライド(3)の移動を阻止するように配置されるように構成されており、
初期状態において、前記プレフォーム部品(12)は、収容空間(11)内に緩く位置しており、前記スライド(3)が、前記スライド(3)とスライドストッパ(2)との間にギャップ空間(15)が開くように、前記プレフォーム部品(12)を前記機能可能状態へと移行させるための位置に動かされ、前記プレフォーム部品が、前記スライド(3)に接続された弾性又は可撓性アーム(10)によって支持されて、前記ギャップ空間(15)に進入し、前記スライド(3)がプリロードされ、前記弾性又は可撓性アーム(10)が、前記プレフォーム部品(12)を前記ギャップ空間(15)内に確保する、ことを特徴とする熱作動式の表示又は切替装置。
【請求項2】
前記アーム(10)は、前記表示又は切替装置(5;6;7)を有効にするための前記プレフォーム部品(12)の前記移動を支援するための摺動傾斜面(100)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の熱作動式の表示又は切替装置。
【請求項3】
少なくとも1つの案内要素(13)が、前記ギャップ空間(15)への前記プレフォーム部品(12)の前記移動を確実にするために前記アーム(10)に隣接して形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱作動式の表示又は切替装置。
【請求項4】
前記スライド(3)は、表示領域及び/又はスイッチ操作部材を有する突起(4)を含んでいる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱作動式の表示又は切替装置。
【請求項5】
前記プレフォーム部品(12)は、例えば隣接する電子部品の損失熱に起因して前記プレフォーム部品(12)が加熱されるときに溶融し、該溶融の結果として、前記ギャップ空間(15)が、前記プリロードされたスライド(3)によって支援されて狭くなり、前記表示又は切替装置(5;6;7)の位置又は状態の変化をもたらす、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の熱作動式の表示又は切替装置。
【請求項6】
前記プレフォーム部品(12)の溶融及び前記スライド(3)の位置の変化により、第1のスイッチ(6)が閉じ、第2のスイッチ(7)が開き、あるいはその反対である、ことを特徴とする請求項5に記載の熱作動式の表示又は切替装置。
【請求項7】
前記装置の有効化は、個別的に、延期された様相で、すなわち使用の場合にのみ実行される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の熱作動式の表示又は切替装置。
【請求項8】
過負荷の場合に発熱を被る少なくとも1つのサージ保護要素と、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱作動式の表示又は切替装置と、を備えるサージアレスタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱作動式の表示又は切替装置であって、機械的にプリロードされるように構成され、表示又は切替装置を直接的又は間接的に作動又は動作させる可動なスライドと、熱の影響下で自身の凝集の状態を変化させるプレフォーム部品とを有しており、プレフォーム部品が、機能可能状態において、可動なスライドの移動を阻止すべく位置するように構成されている請求項1の冒頭部分に記載の熱作動式の表示又は切替装置に基づく。
【背景技術】
【0002】
独国特許第10 2017 105 436号明細書が、熱作動式の機械的な切替装置を開示している。後者は、感熱手段及び機械エネルギ貯蔵装置から構成され、感熱手段は、溶融するプレフォーム部品として形成されている。溶融するプレフォーム部品は、タペットとして形成された切替片の運動経路を遮り、あるいはこの運動経路を開放する。タペットは、機械エネルギ貯蔵装置によってプリロードされている。上述の手段を収容するハウジングが、さらに存在する。タペットは、ハウジングの内部に取り付けられ、端面開口部を通って移動可能である。プリロード下で、タペットは、溶融するプレフォーム部品に対して支持され、溶融するプレフォーム部品は、端面開口部に対向して配置された第2の開口部を覆うように配置されている。溶融するプレフォーム部品の溶融温度に達すると、溶融するプレフォーム部品は、タペットによって変位させられ、タペットは、変化後位置に移動する。このようにして、表示又は切替装置は、直接的又は間接的に作動させられるように構成されている。
【0003】
例えばバリスタなどの少なくとも1つの放電素子と、独国特許第10 2006 037 551号明細書による切断装置とを有するサージアレスタにおいて、少なくとも1つの放電素子は、1つの極又はすべての極において主電源から切断されるべきである。
【0004】
切断装置は、アレスタ内の電気接続経路に一体化されたはんだ付け点を備える。一方では、はんだ付け点が、可動導体部又は可動導電ブリッジを介して放電素子に接続され、他方では、導体部又はブリッジが、アレスタの電気外部接続に接続される。プリロード力を発生させるばねがさらに存在し、対応する力ベクトルは、導体部又はブリッジに間接的又は直接的に切断方向に作用する。
【0005】
熱作動式のロック要素が、切断装置のはんだ付け点が恒久的な力側の応力を被ることがないように、プリロード力ベクトルに対して可動導体部又は可動導電ブリッジの移動を阻止する。
【0006】
独国特許第10 2006 037 551号明細書による解決策は、例えばはんだビーズとして形成される熱作動要素が、対応する製品の製造から始まって耐用年数の全体にわたって機械的応力を被り続けることを、防止することができる。しかしながら、提示された解決策は、設計に関してきわめて複雑であり、したがってコストがきわめて高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許第10 2017 105 436号明細書
【文献】独国特許第10 2006 037 551号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に基づき、本発明の目的は、熱作動式の表示又は切替装置であって、可動の機械的にプリロードされたスライドと、熱の影響下で自身の凝集の状態を変化させるプレフォーム部品とを有しており、簡単なやり方にて低コストで製造することができ、装置を事後に、すなわち実際の取付け及び製造プロセスに関係なく有効化することができる熱作動式の表示又は切替装置を特定することである。したがって、熱トリガ機能を、この機能を備える構成部品又は構成要素の使用が意図され、あるいは開始された場合にのみ、準備完了状態にすることができなければならない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、いわば顧客による表示又は切替装置の解放を可能にし、同時に、使用されるプレフォーム部品が事前に生じる不必要な応力を被ることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴の組合せ及び請求項8に記載のサージアレスタ装置によって達成される。
【0011】
したがって、本発明は、可動の機械的にプリロードされたスライドを有する熱作動式の表示又は切替装置から生じる。
【0012】
スライドは、表示又は切替装置を直接的又は間接的に作動又は動作させることができる。
【0013】
スライド自体は、2つの接点間の絶縁分離スライドとして配置されてよく、これらの接点を遮断又は閉鎖することができる。しかしながら、スライドは、それ自体は既知のマイクロキーなどを作動させることもできる。
【0014】
表示装置は、表示窓の下方に配置され、光学的な色の変化を使用する表示領域の形態で設計されてよい。ここで、本発明の基本的な考え方から逸脱することなく、表示及び/又は切替装置の専門的な変形が、当然ながら考えられる。
【0015】
熱の影響下で自身の凝集の状態を変化させるプレフォーム部品が、さらに存在する。プレフォーム部品は、例えば、はんだ、ワックス、又は熱可塑性材料で作られたペレット又は同様の要素であってよい。
【0016】
機能可能状態において、プレフォーム部品は、可動のスライドの移動を阻止するように配置される。
【0017】
本発明によれば、初期状態、すなわち製造側において、プレフォーム部品は、収容空間内に緩く配置される。
【0018】
プレフォーム部品を機能可能状態に移行させるために、スライドが、スライドとスライドストッパとの間にギャップ空間が開くような位置に移動させられる。
【0019】
ここで、これは、スライドと支持体、例えば対応する装置のベースプレートとの間のギャップ空間を含むことができる。
【0020】
ここで、スライドに接続された弾性又は可撓性アームによって支持されて、プレフォーム部品はギャップ空間に進入する。ギャップ空間を形成するための位置にスライドを移動させることにより、スライドが同時にプリロードされる。これを、ばね装置によって実現することができる。
【0021】
プレフォーム部品をギャップ空間に移動させ、スライドにプリロードを加えた後に、ギャップ空間へと向いたスライドの端部が、プレフォーム部品に接触し、プレフォーム部品を固定する。ここで、弾性又は可撓性アームが、ギャップ空間内のプレフォーム部品を押し出されたり、脱落したりすることがないように保護する。
【0022】
ここで、ギャップ空間の領域、すなわちプレフォーム部品が位置する空間において温度が上昇すると、プレフォーム部品は、自身の溶融温度に達するときに自身の凝集の状態を変化させることができる。したがって、スライドのプリロード力がプレフォーム部品に作用する。もはや堅固ではないストッパは、より具体的にはプレフォーム部品の材料を既存のすき間へと変位させることによって、ギャップ空間が徐々にさらに減少するように、スライドの運動経路を長くする。
【0023】
結果として、対応する表示又は切替装置の作動が今や生じる。
【0024】
表示又は切替装置を有効化するためのはんだプレフォーム部品の移動を支持するために、アームは、摺動傾斜面を含む。摺動傾斜面は、プレフォーム部品がディスク、ペレット、又はボールの形状を有する場合にとくに有利である。したがって、いずれの場合も、より具体的には機械的振動及び同様の応力に関係なく、装置の有効化において、プレフォーム部品をギャップ空間へと確実に移動させ、ギャップ空間に留まらせることができることが保証される。
【0025】
本発明の一構成においては、ギャップ空間へのプレフォーム部品の移動を保証及び支援するために、少なくとも1つの案内要素をアームに隣接して形成することができる。
【0026】
本発明のさらなる発展において、スライドは、表示領域へと融合し、あるいはそのような表示領域を含む突起を有する。
【0027】
さらに、突起を、同時にスイッチの操作にも使用することができる。
【0028】
プレフォーム部品が、例えば隣接する電子部品の損失熱に起因して加熱されると、プレフォーム部品は溶融し、あるいは自身の凝集の状態を変化させる。
【0029】
これにより、ギャップ空間が、より具体的にはプリロードされたスライドによって支援されて狭くなり、結果として、表示又は切替装置の位置又は状態が変化する。
【0030】
プレフォーム部品の溶融及びスライドの位置の変化により、第1のスイッチを閉じることができ、第2のスイッチを開くことができる。これは、当然ながら、第1のスイッチが開かれ、第2のスイッチが閉じられるという点で、逆のやり方での実現が可能である。切替接点としてのスイッチの構成も可能である。
【0031】
本発明による教示は、装置の個別の延期された有効化を可能にし、すなわち使用の場合に限って有効化することを可能にし、結果として、保管の時間にかかわらず、プレフォーム部品の不必要な機械的応力を防止することができる。
【0032】
さらに、本発明によれば、サージアレスタ装置が、過負荷の場合に発熱を被る少なくとも1つのサージ保護要素を含み、上述の特徴を有する上述の熱作動式の表示又は切替装置を備える。
【0033】
本発明を、例示的な実施形態を参照し、図面を使用して、以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】取付け後の初期状態における本発明による装置の概略図を示しており、プレフォーム部品は緩く挿入されており、ばねはまだ緊張していない。
【
図2】
図1と同様の図であるが、装置を有効化するための移動プロセスの概略を示しており、プレフォーム部品がギャップ空間の方向に移動していると同時に、ばねは緊張しつつある。
【
図3】
図1及び
図2と同様の図を示しているが、プレフォーム部品は端部位置にあり、すなわちギャップ空間内に位置しており、ばねは緊張し、あるいはスイッチが有効化されている。
【
図4】
図3と同様の図を示しているが、表示及び切替装置がプレフォーム部品の凝集の状態を変化させる熱の影響によって作動した状態であり、スライドが、ばねの最終的な張力の下でのばねプリロードによってプレフォーム部品を変位させ、結果として表示の状態が変化し、象徴的に表示されたスイッチの状態が変化している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の例示的な実施形態においてさらに詳細に表される本発明による熱作動式表示又は切替装置は、可動スライド3のための停止及び案内要素2を含む支持体1に基づく。
【0036】
スライド3は、表示領域5に合流する突起4を有する。
【0037】
さらに、突起4の一端は、第1のスイッチ6及び第2のスイッチ7を作動させること、すなわち開閉することが可能であり、これが、スイッチ6及び7のための作動要素8及び9の動作によって象徴的に示されている。
【0038】
スライド3又は突起4に接続された少なくとも部分的に可撓性又は弾性の傾斜アーム10が、スライド3の枝部分と一緒に、例えばはんだプレフォーム部品などのプレフォーム部品12のための収容空間11を定めている。プレフォーム部品12を、収容空間11へと上から挿入することができる。案内要素13が、収容空間11内にさらに配置される。スライド3を、ばね14を使用してプリロードすることができる。図示の例示的な実施形態において、ばね14は、スライド3の空洞内に配置される。ここで、スライド3に対するばね14の配置について、他の可能性も当然ながら可能である。
【0039】
図2によれば、本発明による装置を作動させるために、スライド3は、例えば突起4への力の印加によって方向X1に移動させられる。
【0040】
したがって、はんだプレフォーム部品12は、方向Y1の矢印表示によって象徴されるように、今やわずかに弾力的なアーム10の作用下で、案内要素13によって支持されて、スライドの移動によって生じるギャップ空間15に進入する。さらに、方向X1へのスライドのこの移動は、ばね14の緊張も同時に生じさせる。
【0041】
さらに、スライドの位置の変化は、やはり
図2の図から理解することができるとおり、突起4の位置、ならびにスイッチ6及び7の要素8及び9を含む表示領域5の位置も変化させる。
【0042】
図3によれば、プレフォーム部品12は、今や完全にギャップ空間15内にある。スライド3は、対応する端面にてプレフォーム部品12に当接している。プレフォーム部品12の方向Y2への移動、すなわちギャップ空間15から出ようとする移動は、アーム10の位置によって防止される。
【0043】
プレフォーム部品12への適切な熱の作用後、すなわち例えばプレフォーム部品を形成するはんだの溶融温度への到達後に、プレフォーム部品は、凝集の状態を変化させる。これは、スライド3のいわばパンチ状の作用及びばね14が及ぼす力によって支援される。
【0044】
スライドが方向X2に移動する結果として、やはり表示領域5の位置が変化し、第1のスイッチ6又は第2のスイッチ7の機能状態も変化する。
【0045】
プレフォーム部品12の変形に必要な熱エネルギの供給は、要素2を介して達成可能であり、この場合、要素2は、とくにはヒートシンクを形成する材料で作られる。