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特許7394141炭酸飲料、その製造方法及び炭酸飲料の清涼感向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】炭酸飲料、その製造方法及び炭酸飲料の清涼感向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20231130BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20231130BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20231130BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A23L2/00 T
A23L2/54
A23L2/68
A23L2/52
A23L2/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021545108
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2020015376
(87)【国際公開番号】W WO2021049074
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2019167505
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝彰
(72)【発明者】
【氏名】秦 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】中原 光一
(72)【発明者】
【氏名】植村 真秀
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-093341(JP,A)
【文献】特開2005-130710(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107149059(CN,A)
【文献】特開2016-054694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
C12G 1/00 - 3/08
C12H 1/00 - 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを含み、
エチルグリコシドは、エチルグルコシド、エチルフルクトシド、エチルガラクトシド、エチルマンノシド及びエチルキシロシドからなる群より選択される少なくとも1種であり、
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50~8000ppmであり、
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200であり、
エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料。
【請求項2】
エチルグリコシドの濃度が2.5~10000ppmである請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
エチルグリコシドがエチルグルコシドである請求項1又は2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料の製造方法であって、飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50~8000ppm、かつ、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200となるように、飲料にエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを配合する工程を含み、
エチルグリコシドは、エチルグルコシド、エチルフルクトシド、エチルガラクトシド、エチルマンノシド及びエチルキシロシドからなる群より選択される少なくとも1種である、炭酸飲料の製造方法。
【請求項5】
エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料の清涼感を向上させる方法であって、飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50~8000ppm、かつ、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200となるように、飲料にエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを配合する工程を含み、
エチルグリコシドは、エチルグルコシド、エチルフルクトシド、エチルガラクトシド、エチルマンノシド及びエチルキシロシドからなる群より選択される少なくとも1種である、炭酸飲料の清涼感向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料及びその製造方法に関する。また、本発明は炭酸飲料の清涼感向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、飲用時に他の清涼飲料にはない特有の炭酸感が得られる飲料である。炭酸飲料の炭酸感は、飲料に溶存している炭酸ガスが口腔内、喉で発泡することで得られる刺激等によって生じ、このような刺激によって、清涼感が得られる。
【0003】
炭酸飲料においては、その特有の清涼感をもたらす炭酸ガスによる刺激を増強するために、炭酸ガス圧を高める、刺激を増強する物質を添加する等の方法が検討されている。例えば特許文献1には、感覚刺激物質と乳化剤と水と必要に応じて油性物質を含有し、乳化粒子の平均粒子径が500nm以下である乳化組成物を炭酸飲料に添加すると、飲用時の炭酸ガスによるのどへの刺激が強く感じられるようになると記載されている。特許文献1に記載される感覚刺激物質は、舌や口腔粘膜に作用し温度感覚、疼痛感覚を刺激する物質であり、辛味成分であるスピラントール、ジンジャー抽出物などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2015/156244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸飲料を飲用時の炭酸ガスによる刺激は、上記のように辛味成分によって増強される。また、炭酸飲料の飲用時に炭酸ガスの泡が大きく感じられる場合にも、炭酸ガスによる刺激が強く感じられる傾向がある。一方炭酸飲料の刺激に対する嗜好は様々であり、炭酸ガスの刺激が強いと口腔内や喉においてやや痛みを感じることから、飲みづらいと感じる人も多い。炭酸飲料の清涼感は、上記のように炭酸ガスが口腔内などで発泡することで得られる刺激等によって生じるが、例えば飲用時に炭酸ガスの泡が細かく感じられると、良好な清涼感が得られる。
【0006】
本発明は、飲用時に良好な清涼感が得られる炭酸飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、炭酸飲料の清涼感向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、炭酸飲料に、エチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを含有させると、炭酸飲料の清涼感が向上する(改善される)ことを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法及び炭酸飲料の清涼感向上方法に関する。
〔1〕エチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを含み、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50ppm以上であり、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200であり、エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料。
〔2〕クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が、50~8000ppmである上記〔1〕に記載の炭酸飲料。
〔3〕エチルグリコシドの濃度が2.5~10000ppmである上記〔1〕又は〔2〕に記載の炭酸飲料。
〔4〕エチルグリコシドがエチルグルコシドである上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の炭酸飲料。
〔5〕エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料の製造方法であって、飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50ppm以上、かつ、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200となるように、飲料にエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを配合する工程を含む炭酸飲料の製造方法。
〔6〕エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料の清涼感を向上させる方法であって、飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50ppm以上、かつ、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200となるように、飲料にエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを配合する工程を含む炭酸飲料の清涼感向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飲用時に良好な清涼感が得られる炭酸飲料及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、炭酸飲料の清涼感向上方法を提供することができる。本発明によれば、炭酸飲料の清涼感を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<炭酸飲料>
本発明の炭酸飲料は、エチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを含み、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50ppm以上であり、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200であり、エタノール濃度が0.5v/v%未満である。
エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50ppm以上であり、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が上記の範囲であると、飲用時に炭酸ガスの泡の大きさが細かく感じられる。また、飲用時に炭酸ガスの泡粒子の量が多く感じられる。炭酸飲料を飲用時にこのような感覚が得られる結果、良好な清涼感が得られる。また、飲用時に炭酸ガスの泡が細かく感じられると、炭酸飲料が飲みやすいものになる。清涼感とは、炭酸飲料を飲用したときに、口腔内などで感じる炭酸ガスが発泡する感覚(シュワシュワ感などと表現されることがある)により得られる爽快な刺激感をいう。
【0011】
本発明の炭酸飲料は、エタノール濃度が0.0v/v%以上で0.5v/v%未満である。
本発明の炭酸飲料のエタノール濃度は、好ましくは0.4v/v%以下であり、より好ましくは0.3v/v%以下である。エタノール濃度は、ガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0012】
炭酸飲料は、炭酸ガスを含有する飲料である。本発明の炭酸飲料は、炭酸ガスを含有し、さらに、エチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを含むものである。炭酸飲料は、好ましくは炭酸ガスが圧入された飲料である。炭酸飲料は特に限定されず、例えば、炭酸水、果汁入り炭酸飲料、無果汁炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料、エナジードリンク等が挙げられる。炭酸飲料は、アルコールテイストの飲料(ノンアルコール飲料)であってもよい。
【0013】
本発明の炭酸飲料は、クエン酸及び/又はその塩を含み、好ましくはクエン酸を含む。クエン酸の塩は、飲料に使用可能なものを使用すればよく、特に限定されない。そのような塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。
【0014】
本発明の炭酸飲料において、クエン酸及び/又はその塩の濃度は、クエン酸換算の総濃度(クエン酸及びその塩の合計のクエン酸換算濃度)が、50ppm以上であり、100ppm以上が好ましく、200ppm以上がより好ましく、500ppm以上がさらに好ましく、また、8000ppm以下が好ましく、6000ppm以下がより好ましく、5500ppm以下がさらに好ましい。クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が上記範囲であると、エチルグリコシドを含むことによって炭酸飲料の清涼感が向上する。一態様において、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度は、50~8000ppmであることが好ましく、100~8000ppmであることがより好ましく、200~8000ppmがさらに好ましく、500~6000ppmがさらにより好ましく、500~5500ppmが特に好ましい。一態様において、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度は、100~1000ppmであることも好ましい。別の一態様においては、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度は、500~8000ppm、3000~8000ppm、又は、5000~8000ppmであってよい。
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度は、炭酸飲料に含まれるクエン酸及びクエン酸塩の合計のクエン酸換算濃度である。例えば、炭酸飲料に含まれるクエン酸及び/又はその塩がクエン酸である場合は、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)はクエン酸濃度である。
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度は、高速液体クロマトグラフィーにより公知の方法で測定することができる。測定条件等は、例えば、実施例に記載の条件等を採用することができる。
【0015】
本発明において、クエン酸及び/又はその塩の由来は特に限定されない。クエン酸及び/又はその塩は、果汁等の天然物由来であってよく、合成品であってもよい。一態様において、クエン酸及び/又はその塩を含む果汁等の原料を使用して、炭酸飲料にクエン酸及び/又はその塩を含有させてもよい。
クエン酸及び/又はその塩を含む果汁は、飲料に使用可能なものであればよく、特に限定されない。例えば、柑橘類(例えば、レモン、オレンジ、みかん、ライム、グレープフルーツ等)、ブドウ(巨峰など)、ウメ、カシス、イチゴ、ブルーベリー、パイナップル、キウイフルーツ、モモ、アンズ、リンゴ等の果汁が挙げられる。果汁は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0016】
本発明の炭酸飲料は、エチルグリコシドを含む。本発明の炭酸飲料において、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))は、0.0003~200である。炭酸飲料においてクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)が50ppm以上であり、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が上記範囲であると、炭酸飲料を飲用時に良好な清涼感が得られる。
一態様において、炭酸飲料におけるクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))は、例えば、0.0006~200であってよく、0.0013~200であってよく、0.00625~200であってよく、0.0125~200であってよく、0.125~200であってよい。上記比率((B)/(A))は、例えば0.0003~20であってもよい。
また、炭酸飲料における上記の比率((B)/(A))は、例えば、0.0003~100であってよく、0.0006~100であってよく、0.0013~100であってよく、0.00625~100であってよく、0.0125~100であってよい。
別の一態様において、炭酸飲料における上記の比率((B)/(A))は、例えば、0.0003~2であってよく、0.0003~1であってよく、0.0003~0.4であってよく、0.0003~0.2であってよく、0.0006~0.2であってよく、0.0006~0.1であってよい。上記の比率((B)/(A))は、0.0003~0.1であってもよい。
【0017】
エチルグリコシドは、還元糖の1位の炭素のヒドロキシ基がエトキシ基で置換された構造の化合物である。エチルグリコシドを構成する還元糖としては単糖が好ましく、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース等が挙げられる。還元糖は、D体、L体及びDL体のいずれであってもよい。好ましくはD体である。
エチルグリコシドとして、例えば、エチルグルコシド、エチルフルクトシド、エチルガラクトシド、エチルマンノシド、エチルキシロシドが挙げられる。エチルグリコシドは、これらの1種であってもよく、2種以上の組合せであってもよい。中でも、エチルグリコシドとして、エチルグルコシドが好ましい。エチルグルコシドとしては、エチル-α-グルコシド、エチル-β-グルコシドのいずれであってもよく、エチル-α-グルコシド及びエチル-β-グルコシドの組合せであってもよい。エチルグリコシドは、好ましくはエチル-α-グルコシドであり、より好ましくはエチル-α-D-グルコシドである。
【0018】
本発明の一態様において、炭酸飲料中のエチルグリコシドの濃度は、2.5ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましく、50ppm以上が好ましく、100ppm以上がより好ましく、1000ppm以上がさらに好ましく、また、10000ppm以下であることが好ましい。本発明の炭酸飲料が、上記濃度のエチルグリコシドを含むと、炭酸飲料の清涼感がより向上する。一態様において、清涼感向上の観点から、炭酸飲料におけるエチルグリコシドの濃度は、2.5~10000ppmであることが好ましく、5~10000ppmであることがより好ましく、50~10000ppmであることが好ましく、100~10000ppmであることがより好ましく、1000~10000ppmであることがさらに好ましい。
別の一態様において、炭酸飲料中のエチルグリコシドの濃度は、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましい。本発明の炭酸飲料においてエチルグリコシドの濃度が100ppm以下であると、エチルグリコシドにより飲料の香味への影響を与えることなく、炭酸飲料の清涼感を向上することができるため好ましい。一態様において、炭酸飲料の香味に影響を与えずに清涼感を向上させる観点からは、炭酸飲料中のエチルグリコシドの濃度は、2.5~100ppmが好ましく、2.5~20ppmがより好ましく、2.5~10ppmがさらに好ましく、5~10ppmが特に好ましい。
エチルグリコシドの濃度は、エチルグリコシドの合計の濃度を指す。
本明細書中、ppmは、重量/容量(w/v)のppmを意味する。
炭酸飲料中のエチルグリコシドの濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により公知の方法で測定することができる。
【0019】
エチルグリコシドの製造方法は特に限定されない。例えば、還元糖と、エタノールとを反応させることによりエチルグリコシドを得ることができる。エチルグルコシドは、例えば、グルコースとエタノールとを反応させることにより得ることができる。
【0020】
一態様において、清涼感向上の観点から、炭酸飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度と、エチルグリコシドの濃度の好ましい範囲として以下の範囲が挙げられる。
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50ppm以上、100ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が2.5~10000ppm(好ましくは100~10000ppm、より好ましくは1000~10000ppm)
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が100ppm以上、500ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が2.5~10000ppm(好ましくは5~10000ppm、より好ましくは100~10000ppm、さらに好ましくは1000~10000ppm)
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が500ppm以上、1000ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が2.5~10000ppm(好ましくは10~10000ppm、より好ましくは100~10000ppm、さらに好ましくは1000~10000ppm)
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が1000ppm以上、5000ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が2.5~10000ppm(好ましくは5~10000ppm、より好ましくは100~10000ppm、さらに好ましくは1000~10000ppm)
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が5000~8000ppmの場合に、エチルグリコシド濃度が2.5~10000ppm(好ましくは100~10000ppm、より好ましくは1000~10000ppm、さらに好ましくは5000~10000ppm)
上記のような範囲であると、クエン酸及び/又はその塩、並びに、エチルグリコシドを含有することによって、炭酸飲料の清涼感がより向上する。
【0021】
別の一態様においては、炭酸飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50~8000ppmであり、エチルグリコシドの濃度が2.5~100ppmであることが好ましい。この場合、炭酸飲料中のエチルグリコシドの濃度が2.5~20ppmであることがより好ましく、2.5~10ppmであることがさらに好ましく、5~10ppmであることが特に好ましい。炭酸飲料中のエチルグリコシドの濃度が上記の範囲であると、エチルグリコシドにより炭酸飲料の香味に影響を与えずに、当該飲料の清涼感を向上することができるため好ましい。
【0022】
本発明の炭酸飲料は、25℃でのガス圧が1.0~5.0kgf/cmであることが好ましく、より好ましくは3.0~4.5kgf/cm、さらに好ましくは3.5~4.2kgf/cmである。炭酸ガス圧が上記範囲であると、本発明の効果をより充分に得ることができる。炭酸飲料の炭酸ガス圧は、市販のガス圧測定装置(例えば、京都電子工業(株)製ガスボリューム測定装置 GVA-500A)を用いて測定することができる。測定は、液温25℃で行うことができる。
【0023】
本発明の炭酸飲料は、本発明の効果を妨げない限り、エチルグリコシド並びにクエン酸及び/又はその塩以外の成分として、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、酸味料、甘味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤の1種又は2種以上を含んでいてもよい。本発明の炭酸飲料は、上述した果汁等を含んでいてもよい。本発明の炭酸飲料は、水を含む。本発明の炭酸飲料は、通常、水をベースとする液体の組成物であり、好ましくは90重量%以上、より好ましくは90~99.99重量%、さらに好ましくは95~99.9重量%の水を含む。
【0024】
本発明において、炭酸飲料の形態は特に限定されないが、容器詰めの飲料とすることができる。一態様において、飲料は、好ましくは容器詰め飲料である。容器の形態は特に限定されず、瓶(例えば、ガラス瓶)、缶、樹脂ボトル(例えば、ペットボトル)、アルミパウチ、ビニールパウチ等の密封容器に充填して、容器詰め飲料等とすることができる。本発明においては、容器としてガラス瓶、ペットボトルが好ましく用いられ、ガラス瓶詰炭酸飲料、ペットボトル詰炭酸飲料とすることができる。
【0025】
<炭酸飲料の製造方法>
本発明は、以下の炭酸飲料の製造方法も包含する。
エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料の製造方法であって、飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50ppm以上、かつ、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200となるように、飲料にエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを配合する工程を含む炭酸飲料の製造方法。
【0026】
<炭酸飲料の清涼感向上方法>
以下の炭酸飲料の清涼感向上方法も、本発明の一つである。
エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料の清涼感を向上させる方法であって、飲料中のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が50ppm以上、かつ、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシドの濃度(B)の比率((B)/(A))が0.0003~200となるように、飲料にエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを配合する工程を含む炭酸飲料の清涼感向上方法。
【0027】
エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料にエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを上記の濃度及び比率で含有させることによって、これらを含有させない場合と比較して、炭酸飲料の清涼感を向上させることができる。エチルグリコシド、並びに、クエン酸及び/又はその塩は、エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料の清涼感を向上させるために使用することができる。本発明の製造方法によれば、飲用時に良好な清涼感が得られる炭酸飲料を製造することができる。
【0028】
上記の炭酸飲料の製造方法及び清涼感向上方法において、エチルグリコシド、クエン酸及び/又はその塩、これらの濃度などや、それらの好ましい態様は、上記の炭酸飲料と同じである。炭酸飲料の好ましい態様は、上記の炭酸飲料と同じである。
エチルグリコシド、並びに、クエン酸及び/又はクエン酸塩を配合する方法や順序は特に限定されない。炭酸飲料の製造方法及び清涼感向上方法においては、得られるエタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料がエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを上記の濃度及び比率で含んでいればよい。飲料へのエチルグリコシド、並びに、クエン酸及び/又はその塩の配合は、例えば、これらの必要量を水又は炭酸水と混合することにより行うことができる。上記の製造方法及び清涼感向上方法は、飲料に炭酸ガスを含有させる工程を含んでいてもよい。飲料にエチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを配合する工程と、飲料に炭酸ガスを含有させる工程とは別々に行う必要はなく、同時に行ってもよい。エチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを配合する工程は、飲料に炭酸ガスを含有させる工程の前に行ってもよく、後に行ってもよく、又は、同時に行ってもよい。炭酸ガスは、公知の方法で飲料に含有させることができる。炭酸飲料の製造方法及び清涼感向上方法は、炭酸飲料を容器に充填する工程を含んでもよい。
【0029】
本発明の第二の炭酸飲料は、エチルグリコシドと、クエン酸及び/又はその塩とを含み、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度が10ppm以上、50ppm未満であり、エチルグリコシドの濃度が100ppm以上であり、エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料である。
エタノール濃度が0.5v/v%未満である炭酸飲料において、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)が50ppm未満である場合に、エチルグリコシドの濃度を100ppm以上とすると、当該飲料の飲用時の清涼感が向上する。
本発明の第二の炭酸飲料において、エチルグリコシド、クエン酸及び/又はその塩並びにこれらの好ましい態様は、上述した炭酸飲料の場合と同じである。本発明の第二の炭酸飲料は、清涼感向上の観点から、エチルグリコシドの濃度が100~10000ppmであることが好ましく、1000~10000ppmであることがより好ましい。
【実施例
【0030】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
実施例では、エチルグリコシドとしてエチル-α-D-グルコシド(以下EGと表示)を用いた。
【0032】
(実施例1)
市販の炭酸水(25℃におけるガス圧3.8~4.0kgf/cm、エタノール濃度0v/v%)に、クエン酸及びEGを溶解させて試料(炭酸飲料)を調製した。以下では、試験に用いた市販の炭酸水を、炭酸水Aという。炭酸水Aは、無糖炭酸水である。炭酸水Aは、エチルグリコシド並びにクエン酸及びその塩の濃度が0ppmであった。
炭酸水Aに添加するクエン酸の濃度を0ppm、10ppm、50ppm、100ppm、500ppm、1000ppm、5000ppm、8000ppmの9段階で変化させ、EGの濃度を0ppm、2.5ppm、5ppm、10ppm、100ppm、1000ppm、5000ppm、10000ppmの8段階で変化させた試料を作製した。
【0033】
各試料の清涼感について、官能評価に熟練したパネラー2名(パネラーA及びB)が官能評価を行った。官能評価では、試料10mLを口に含み10秒間味わった後、吐き出し、清涼感(爽快な刺激感)を評価した。異なる試料を評価する際には、口の中の味がなくなるまで口を水でゆすいだ。各試料について、炭酸を含まない水の清涼感を1点、炭酸水Aの清涼感を2点として、下記の基準で1~4点で、0.5点刻みの7段階で清涼感を評価し、その後パネラーの評点の平均値を求めた。クエン酸及びEGが0ppmの試料(クエン酸及びEGを添加しない炭酸水A)に対して、0.5点以上評点の平均が高い場合に、清涼感が向上したと判定した。
【0034】
清涼感の評価基準
1:爽快な刺激感を感じない
2:爽快な刺激感を少し感じる
3:爽快な刺激感を感じる
4:爽快な刺激感を非常に感じる
【0035】
表1には各試料中のクエン酸に対するエチルグリコシド(EG)の重量割合(EG/クエン酸)を示した。
表2~3に各試料の官能評価の結果を示した。表2には、各パネラーの試料の官能評価の結果(清涼感の評点)を、表3には、清涼感の評点の平均を示した。
表4に、表3に示す結果から算出したEG及びクエン酸添加による清涼感の向上度を示した。表4に示す向上度は、表3に示すクエン酸及び/又はEGを添加した試料の評点(X1)から、クエン酸及びEGが0ppmの試料(クエン酸及びEGを添加しない炭酸水A)の評点(2.00点)を引いた値(X1-2.00)である。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
炭酸飲料のクエン酸濃度が50ppm以上であり、クエン酸濃度に対するエチルグリコシド濃度の比(エチルグリコシド/クエン酸)が0.0003~200であると、エチルグリコシド及びクエン酸を含まない炭酸飲料(炭酸飲料A)並びにエチルグリコシドを含まない炭酸飲料と比較して、口に含んだ際に、炭酸ガスの泡粒子の大きさが細かく感じられた。また、炭酸ガスの泡粒子の量が多くなったように感じられた。その結果、試料の清涼感(爽快な刺激感)が向上した。
【0041】
(果汁の調製)
レモン、オレンジ及びブドウ(巨峰)の果実を搾り果汁を調製した。得られた果汁のクエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、下記の方法で測定した。
【0042】
(クエン酸及び/又はその塩の測定)
高速液体クロマトグラフィー分析の装置は、(株)島津製作所のHPLC一式を用いた。
HPLC分析条件
カラム:SHIM-PACK SCR-102H(8mmL ID、300mL)((株)島津ジーエルシー)
検出器:電気伝導度検出器CDD-6A
溶離液:
A液:p-トルエンスルホン酸水溶液(p-トルエンスルホン0.951g/水1L)
B液:p-トルエンスルホン酸を含むTrisバッファー
流速:0.8mL/min(A液及びB液共に)
分析時間:38min
カラムオーブンの温度:40℃
絶対検量線で定量した。
A液(p-トルエンスルホン酸水溶液)は、p-トルエンスルホン0.951gを水1Lに溶解させて調製した。
B液(p-トルエンスルホン酸を含むTrisバッファー)は、p-トルエンスルホン酸0.951g、Bis-Tris4.185g及びEDTA0.029gを水1Lに溶解させて調製した。
【0043】
クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度は、レモン果汁が62607ppm、オレンジ果汁が35549ppm、ブドウ果汁が5656ppmであった。これらの果汁を後記の実施例で使用した。
【0044】
(実施例2)
炭酸水A(199mL)にレモン果汁(1mL)を配合して、レモン果汁含有炭酸飲料(クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度:313ppm)を調製した。このレモン果汁含有炭酸飲料50mLに対して、EGを500μg配合して、EG濃度が10ppmの試料を調製した。この試料は、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するエチルグリコシド(EG)濃度(B)の比率((B)/(A))が0.032である。
上記の試料と、EGを配合していないレモン果汁含有炭酸飲料(EG濃度:0ppm)とについて、実施例1と同じ方法で清涼感の評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
(実施例3)
炭酸水A(198mL)にオレンジ果汁(2mL)を配合して、オレンジ果汁含有炭酸飲料(クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度:355ppm)を調製した。このオレンジ果汁含有炭酸飲料50mLに対して、EGを500μg配合して、EG濃度が10ppmの試料を調製した。この試料は、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するEG濃度(B)の比率((B)/(A))が0.028である。
上記の試料と、EGを配合していないオレンジ果汁含有炭酸飲料(EG濃度:0ppm)とについて、実施例1と同じ方法で清涼感の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
(実施例4)
炭酸水A190mLにブドウ果汁10mLを添加して、ブドウ果汁含有炭酸飲料(クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度:283ppm)を調製した。このブドウ果汁含有炭酸飲料50mLに対して、EGを500μg配合して、EG濃度が10ppmの試料を調製した。この試料は、クエン酸及び/又はその塩のクエン酸換算の総濃度(A)に対するEG濃度(B)の比率((B)/(A))が0.035である。
上記の試料と、EGを配合していないブドウ果汁含有炭酸飲料(EG濃度:0ppm)とについて、実施例1と同じ方法で清涼感の評価を行った。評価結果を表7に示す。
【0049】
【表7】
【0050】
実施例2~4のいずれにおいても、上記の炭酸飲料にエチルグリコシドを含有させると、エチルグリコシドを含有しない炭酸飲料と比較して、口に含んだ際に、炭酸ガスの泡粒子の大きさが細かく感じられた。また、エチルグリコシドを含有させた炭酸飲料では、炭酸ガスの泡粒子の量が多くなったように感じられ、清涼感(爽快な刺激感)が向上した。実施例2~4においては、エチルグリコシドによって、清涼感は向上したが、清涼感以外の香味への影響はなかった。