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特許7394144電極埋設セラミックス構造体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電極埋設セラミックス構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/88 20060101AFI20231130BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20231130BHJP
   G01F 23/263 20220101ALI20231130BHJP
   H05H 1/00 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C04B41/88 A
B32B18/00 B
G01F23/263
H05H1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021551306
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036887
(87)【国際公開番号】W WO2021065901
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019183510
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝生
(72)【発明者】
【氏名】田邊 大始
(72)【発明者】
【氏名】森下 瑛文
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-088113(JP,A)
【文献】特開2006-179741(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073207(WO,A1)
【文献】特開2005-135716(JP,A)
【文献】特開2004-241148(JP,A)
【文献】特開2001-351763(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057595(WO,A1)
【文献】特開2016-212010(JP,A)
【文献】特開2005-123578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84,41/00-41/91
G01F 23/26
B32B 18/00
G01F 23/263
H05B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化を利用した静電容量式センサである電極埋設セラミックス構造体であって、前記静電容量式センサは前記静電容量式センサの外部に露出された検知面を有しており、前記静電容量の変化は前記検知面上の液体の存在に応じて生じるものであり、前記電極埋設セラミックス構造体は、
第1セラミックス層と、
前記第1セラミックス層の表面に設けられている電極層と、
を備え、前記電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでおり、前記電極層内において前記セラミックス粒子が占める割合が4%以上50%以下であり、前記電極埋設セラミックス構造体はさらに、
前記第1セラミックス層及び前記電極層を被覆しているとともに、前記第1セラミックス層より薄い、1μm以上10μm以下の厚みを有する、前記電極層と前記検知面との間の単一の層としての第2セラミックス層、を備えており、
前記第1セラミックス層と前記電極層と前記第2セラミックス層の積層方向に沿った断面において、前記第2セラミックス層における最小厚みをT1とし、平均厚みをT2としたときに、最小厚みT1は平均厚みT2の85%以上である、電極埋設セラミックス構造体
【請求項2】
表面電位の変化を利用した表面電位センサである電極埋設セラミックス構造体であって、前記表面電位は、前記表面電位センサの外部に露出された検知面の電位であり、前記電極埋設セラミックス構造体は、
第1セラミックス層と、
前記第1セラミックス層の表面に設けられている電極層と、
を備え、前記電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでおり、前記電極層内において前記セラミックス粒子が占める割合が4%以上50%以下であり、前記電極埋設セラミックス構造体はさらに、
前記第1セラミックス層及び前記電極層を被覆しているとともに、前記第1セラミックス層より薄い、1μm以上10μm以下の厚みを有する、前記電極層と前記検知面との間の単一の層としての第2セラミックス層と、を備えており、
前記第1セラミックス層と前記電極層と前記第2セラミックス層の積層方向に沿った断面において、前記第2セラミックス層における最小厚みをT1とし、平均厚みをT2としたときに、最小厚みT1は平均厚みT2の85%以上である、電極埋設セラミックス構造体
【請求項3】
前記第2セラミックス層はジルコニアまたはアルミナからなる請求項1または2に記載の電極埋設セラミックス構造体。
【請求項4】
前記断面において、前記第1セラミックス層側の前記電極層の長さをL1とし、前記第2セラミックス層側の前記電極層の長さをL2とし、前記積層方向に直交する方向の前記電極層の長さをL3としたときに、下記式を満足する請求項1から3のいずれか一項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
(L1+L2)/L3≧2.
【請求項5】
長さL1が長さL2より長い請求項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
【請求項6】
前記第2セラミックス層は焼結体からなる、請求項1からのいずれか一項に記載の電極埋設セラミックス構造体。
【請求項7】
静電容量の変化を利用した静電容量式センサである電極埋設セラミックス構造体の製造方法であって、前記静電容量式センサは前記静電容量式センサの外部に露出された検知面を有しており、前記静電容量の変化は前記検知面上の液体の存在に応じて生じるものであり、
前記電極埋設セラミックス構造体は、第1セラミックス層と、前記第1セラミックス層の表面に設けられている電極層とを備え、前記電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでおり、前記電極層内において前記セラミックス粒子が占める割合が4%以上50%以下であり、前記電極埋設セラミックス構造体はさらに、前記第1セラミックス層及び前記電極層を被覆しているとともに、前記第1セラミックス層より薄い、1μm以上10μm以下の厚みを有する、前記電極層と前記検知面との間の単一の層としての第2セラミックス層と、を備え、
前記製造方法は、
a)焼成されることによって前記第1セラミックス層となる未焼成基板を形成する工程と、
b)焼成されることによって前記第2セラミックス層となるグリーンシートを、シート成形法によって形成する工程と、
c)焼成されることによって前記電極層となる未焼成電極層を間に配置しつつ前記未焼成基板上に前記グリーンシートを加圧積層することによって、未焼成積層体を形成する工程と、
d)前記未焼成積層体を焼成する工程と、
を備える電極埋設セラミックス構造体の製造方法。
【請求項8】
表面電位の変化を利用した表面電位センサである電極埋設セラミックス構造体の製造方法であって、前記表面電位は、前記表面電位センサの外部に露出された検知面の電位であり、
前記電極埋設セラミックス構造体は、第1セラミックス層と、前記第1セラミックス層の表面に設けられている電極層とを備え、前記電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでおり、前記電極層内において前記セラミックス粒子が占める割合が4%以上50%以下であり、前記電極埋設セラミックス構造体はさらに、前記第1セラミックス層及び前記電極層を被覆しているとともに、前記第1セラミックス層より薄い、1μm以上10μm以下の厚みを有する、前記電極層と前記検知面との間の単一の層としての第2セラミックス層と、を備え、
前記製造方法は、
a)焼成されることによって前記第1セラミックス層となる未焼成基板を形成する工程と、
b)焼成されることによって前記第2セラミックス層となるグリーンシートを、シート成形法によって形成する工程と、
c)焼成されることによって前記電極層となる未焼成電極層を間に配置しつつ前記未焼成基板上に前記グリーンシートを加圧積層することによって、未焼成積層体を形成する工程と、
d)前記未焼成積層体を焼成する工程と、
を備える電極埋設セラミックス構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電極埋設セラミックス構造体に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
内部に電極が埋設されたセラミックス構造体が知られている。このようなセラミックス構造体は、例えば、ヒータ、センサ、圧電素子、放電素子等の機器として利用することができる。特許文献1には、上記したセラミックス構造体を用いた放電素子が開示されている。特許文献1のセラミックス構造体は、第1セラミックス層(セラミックスシート)の表面に電極層(放電電極)が印刷されており、第1セラミックス層の表面に、第1セラミックス層及び電極層を被覆する第2セラミックス層(保護層)が設けられている。特許文献1では、第2セラミックス層の表面粗さRaを10μm以下とし、放電素子の耐久性(寿命)を向上させている。また、特許文献1では、第2セラミックス層の厚みを10μm以上とし、さらに第2セラミックス層の表面を非結晶化ガラス,ポリイミド等で被覆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-135716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部に電極が埋設されたセラミックス構造体(電極埋設セラミックス構造体)において、第2セラミックス層は、絶縁層、あるいは、断熱層として機能する。そのため、電極埋設セラミックス構造体が用いられる機器では、良好な特性を得るために第2セラミックス層の厚みを薄くすることが好ましい。しかしながら、第2セラミックス層の厚みを薄くすると、機器の耐久性(寿命)が低下する。上記したように、特許文献1では、第2セラミックス層の厚みを10μm以上とし、機器の耐久性低下を抑制している。このように、従来の電極埋設セラミックス構造体は、特性と耐久性がトレードオフの関係を有している。そのため、従来の設計思想では、電極埋設セラミックス構造体の特性と耐久性を両立させることが困難であり、新たな設計思想に基づいた電極埋設セラミックス構造体を実現することが望まれている。本明細書は、従来とは異なる新たな設計思想に基づく新規な電極埋設セラミックス構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様の電極埋設セラミックス構造体は、静電容量の変化を利用した静電容量式センサである電極埋設セラミックス構造体であって、前記静電容量式センサは前記静電容量式センサの外部に露出された検知面を有しており、前記静電容量の変化は前記検知面上の液体の存在に応じて生じるものである。前記電極埋設セラミックス構造体は、第1セラミックス層と、前記第1セラミックス層の表面に設けられている電極層と、前記第1セラミックス層及び前記電極層を被覆しているとともに、前記第1セラミックス層より薄い、1μm以上10μm以下の厚みを有する、前記電極層と前記検知面との間の単一の層としての第2セラミックス層と、を備えている。前記電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでおり、前記電極層内において前記セラミックス粒子が占める割合が4%以上50%以下である。前記第1セラミックス層と前記電極層と前記第2セラミックス層の積層方向に沿った断面において、前記第2セラミックス層における最小厚みをT1とし、平均厚みをT2としたときに、最小厚みT1は平均厚みT2の85%以上である。
他の態様の電極埋設セラミックス構造体は、表面電位の変化を利用した表面電位センサである電極埋設セラミックス構造体であって、前記表面電位は、前記表面電位センサの外部に露出された検知面の電位である。前記電極埋設セラミックス構造体は、第1セラミックス層と、前記第1セラミックス層の表面に設けられている電極層と、前記第1セラミックス層及び前記電極層を被覆しているとともに、前記第1セラミックス層より薄い、1μm以上10μm以下の厚みを有する、前記電極層と前記検知面との間の単一の層としての第2セラミックス層と、を備えている。前記電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでおり、前記電極層内において前記セラミックス粒子が占める割合が4%以上50%以下である。前記第1セラミックス層と前記電極層と前記第2セラミックス層の積層方向に沿った断面において、前記第2セラミックス層における最小厚みをT1とし、平均厚みをT2としたときに、最小厚みT1は平均厚みT2の85%以上である。
一態様の、電極埋設セラミックス構造体の製造方法は、静電容量の変化を利用した静電容量式センサである電極埋設セラミックス構造体の製造方法であって、前記静電容量式センサは前記静電容量式センサの外部に露出された検知面を有しており、前記静電容量の変化は前記検知面上の液体の存在に応じて生じるものである。前記電極埋設セラミックス構造体は、第1セラミックス層と、前記第1セラミックス層の表面に設けられている電極層と、前記第1セラミックス層及び前記電極層を被覆しているとともに、前記第1セラミックス層より薄い、1μm以上10μm以下の厚みを有する、前記電極層と前記検知面との間の単一の層としての第2セラミックス層と、を備えている。前記電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでおり、前記電極層内において前記セラミックス粒子が占める割合が4%以上50%以下である。前記製造方法は、a)焼成されることによって前記第1セラミックス層となる未焼成基板を形成する工程と、b)焼成されることによって前記第2セラミックス層となるグリーンシートを、シート成形法によって形成する工程と、c)焼成されることによって前記電極層となる未焼成電極層を間に配置しつつ前記未焼成基板上に前記グリーンシートを加圧積層することによって、未焼成積層体を形成する工程と、d)前記未焼成積層体を焼成する工程と、を備える。
他の態様の、電極埋設セラミックス構造体の製造方法は、表面電位の変化を利用した表面電位センサである電極埋設セラミックス構造体の製造方法であって、前記表面電位は、前記表面電位センサの外部に露出された検知面の電位である。前記電極埋設セラミックス構造体は、第1セラミックス層と、前記第1セラミックス層の表面に設けられている電極層と、前記第1セラミックス層及び前記電極層を被覆しているとともに、前記第1セラミックス層より薄い、1μm以上10μm以下の厚みを有する、前記電極層と前記検知面との間の単一の層としての第2セラミックス層と、を備えている。前記電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでおり、前記電極層内において前記セラミックス粒子が占める割合が4%以上50%以下である。前記製造方法は、a)焼成されることによって前記第1セラミックス層となる未焼成基板を形成する工程と、b)焼成されることによって前記第2セラミックス層となるグリーンシートを、シート成形法によって形成する工程と、c)焼成されることによって前記電極層となる未焼成電極層を間に配置しつつ前記未焼成基板上に前記グリーンシートを加圧積層することによって、未焼成積層体を形成する工程と、d)前記未焼成積層体を焼成する工程と、を備える。

【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施の形態1における電極埋設セラミックス構造体の概略図(斜視図)を示す。
図2図1のII-II線に沿った断面図を示す。
図3図2の破線IIIで囲った範囲の拡大図を示す。
図4】第セラミックス層の拡大図(断面図)を示す。
図5】実施の形態2における静電容量式センサを有する検知システムの構成を概略的に示す正面図である。
図6図5の概略的な背面図である。
図7図5及び図6の線VII-VIIに沿う概略的な部分断面図である。
図8図5及び図6の線VIII-VIIIに沿う概略的な部分断面図である。
図9図5及び図6の線IX-IXに沿う概略的な部分断面図である。
図10図9に対応する近似的な等価回路を示す回路図である。
図11】実施の形態3における静電容量式センサの構成を概略的に示す断面図である。
図12図11の線XII-XIIに沿う概略的な部分断面図である。
図13図11の線XIII-XIIIに沿う概略的な部分断面図である。
図14図11の線XIV-XIVに沿う概略的な部分断面図である。
図15】実施の形態4における表面電位センサを有する検知システムの構成を概略的に示す正面図である。
図16】実施の形態5における表面電位センサを有する検知システムの構成を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<実施の形態1>
本明細書で開示する電極埋設セラミックス構造体は、第1セラミックス層と、第1セラミックス層の表面に設けられている電極層と、第1セラミックス層及び電極層を被覆している第2セラミックス層を備えていてよい。第1セラミックス層及び第2セラミックス層の材料の一例として、ジルコニア(ZrO)、安定化剤としてイットリア(Y),カルシア(CaO)等が添加された、部分安定化ジルコニア,安定化ジルコニア等を用いることができる。第1セラミックス層と第2セラミックス層の材料は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1セラミックス層と第2セラミックス層が良好に焼結するために、両者は同一の材料であることが好ましい。第2セラミックス層の厚みは、第1セラミックス層の厚みより薄くてよい。特に限定されないが、第2セラミックス層の厚みは、1μm以上10μm以下であってよい。第2セラミックス層の厚みは、8μm以下であってよく、5μm以下であってよく、3μm以下であってよい。また、第2セラミックス層の厚みは、2μm以上であってよく、4μm以上であってよく、6μm以上であってよい。第2セラミックス層は、電極(電極層)の保護層と捉えることもできる。
【0008】
第2セラミックス層は、局所的に薄い部分、あるいは、局所的に厚い部分を有していないことが好ましく、厚みが均一であることが好ましい。具体的には、第1セラミックス層と電極層と第2セラミックス層の積層方向に沿った断面において、第2セラミックス層における最小厚み(T1)と、平均厚み(T2)が下記式(1)の関係
(T2-T1)/T2≦0.15 ・・・(1)
を満足していてよい。
【0009】
上記式(1)は、第2セラミックス層の平均厚みT2と最小厚みT1の差が、平均厚みT2の15%以下であることを示している。なお、第2セラミックス層の平均厚みT2と最小厚みT1の差(T2-T1)は、平均厚みT2の12%以下であってよいし、8%以下であってよいし、5%以下であってよいし、3%以下であってもよい。
【0010】
電極埋設セラミックス構造体では、第2セラミックス層の厚みが薄くなるに従って、良好な特性が得られる。一方、第2セラミックス層の厚みが薄くなるに従って耐久性が低下する。しかしながら、電極埋設セラミックス構造体(第2セラミックス層)の耐久性に最も大きな影響を与えているのは、最小厚み部分である。すなわち、最小厚み部分を起点として第2セラミックス層が劣化する。そのため、従来は、最小厚み部分において所定の厚みが確保されるように、第2セラミックス層の厚みを厚く形成していた。その結果、第2セラミックス層の平均厚みが厚くなることが避けられず、特性の改善に限界があった。しかしながら、上記式(1)を満足するように第2セラミックス層の厚みを調整すれば、第2セラミックス層の平均厚みを厚くすることなく(特性を低下させることなく)、第2セラミックス層(電極埋設セラミックス構造体)の耐久性を向上させることができる。なお、第2セラミックス層の厚み(T1,T2)は、第2セラミックス層を撮影し(例えば長さ100μm分)、最小厚みT1を測定し、さらに、例えば任意の100箇所の厚みから平均厚みT2を算出することができる。
【0011】
第2セラミックス層内に存在する空隙の割合は0.05%以下であってよい。第2セラミックス層内に空隙が存在すると、その部分では、空隙の分だけマトリックス(セラミックス)の厚みが減少する。第2セラミックス層内の空隙の割合が0.05%以下であれば、マトリックスの厚みが局所的に薄くなることが抑制され、耐久性の低下をより確実に抑制することができる。なお、第2セラミックス層内の空隙の割合は、例えば、第2セラミックス層のSEM画像を、iTEM解析ソフト(西華産業(株)製)を用いて画像処理することによって算出することができる。
【0012】
電極層は、第1セラミックス層の表面の一部に設けられていてよい。具体的には、電極層は、第1セラミックス層の表面において、周囲が第1セラミックス層で囲まれるように設けられていてよい。すなわち、電極層は、第1セラミックス層表面の外周部分以外の部分(中央部分)に設けられていてよい。また、複数の電極層が、第1セラミックス層の表面に設けられていてもよい。上記したように、第2セラミックス層は、第1セラミックス層及び電極層を被覆している。そのため、第1セラミックス層上に電極が設けられている部分では、第1セラミックス層/電極層/第2セラミックス層の積層構造が形成される。一方、第1セラミックス層上に電極が設けられていない部分では、第1セラミックス層と第2セラミックス層が接触している。具体的には、第1セラミックス層と第2セラミックス層が焼結し、一体化している。
【0013】
第1セラミックス層と電極層と第2セラミックス層が積層された部分において、電極層とセラミックス層の界面は平坦でなくてよい。すなわち、電極層の表面及び裏面(第1,第2セラミックス層との接触面)は平坦でなくてよい。具体的には、第1セラミックス層/電極層/第2セラミックス層の積層方向に沿った断面において、第1セラミックス層側の電極層の長さ(L1)と、第2セラミックス層側の電極層の長さ(L2)と、積層方向に直交する方向の電極層の長さ(L3)が下記式(2)
(L1+L2)/L3≧2.2 ・・・(2)
の関係を満足していてよい。なお上記定義から、長さL3は、積層方向に直交する方向に沿った直線的な長さである。一方で、長さL1は、電極層と第1セラミック層との界面に沿った長さであり、長さL2は、電極層と第2セラミック層との界面に沿った長さである。
【0014】
上記式(2)は、電極層の表面及び裏面の長さの合計が、仮に電極層の表面及び裏面が平坦な場合の長さと比較して10%以上長いことを示している。すなわち、電極層の表面及び裏面が、凹凸を有していることを示している。電極層の表裏面に凹凸が設けられていることにより、電極層とセラミックス層が互いに侵入し合い、両者が強固に接合されるアンカー効果を得ることができる。換言すると、電極層がセラミックス層から剥離することを抑制することができる。なお、上記(2)式において、F1=(L1+L2)/L3としたときに、F1は、2.4以上であってよいし、2.6以上であってよいし、2.8以上であってよいし、3.0以上であってもよい。
【0015】
長さL1は、長さL2より長くてよい。すなわち、電極層の第1セラミックス層側は、第2セラミックス層側と比較して凹凸の程度が大きくてよい。電極層がセラミックス層から剥離することを抑制しながら、第2セラミックス層(第1セラミックス層より薄い層)の厚みがばらつくことを抑制することもできる。長さL1は、長さL2の1.1倍以上であってよく、1.2倍以上であってよく、1.3倍以上であってよく、1.4倍以上であってもよい。電極層の表裏面の長さ(長さL1及びL2)は、例えば、電極層のSEM画像を、例えば、上記したiTEM解析ソフトを用いて算出することができる。
【0016】
電極層の材料は、例えば、Pt(白金)、あるいは、Au(金)を含むAu-Pt合金等が用いられてよい。また、電極層は、内部にセラミックス粒子を含んでいてよい。内部にセラミックス粒子を含むことにより、金属のみの電極層と比較して、電極層の熱膨張係数をセラミックス層(第1セラミックス層及び第2セラミックス層)の熱膨張係数に近づけることができる。また、電極層内のセラミックス粒子がセラミックス層と焼結し、電極の表面に凹凸が形成され易くなるという効果も期待される。電極層内においてセラミックス粒子が占める割合は、4%以上であってよい。電極層内のセラミックス粒子の割合は、5%以上であってよく、7%以上であってよく、10%以上であってもよい。セラミックス粒子の割合が大きくなるに従って、上記した利点が得られやすくなる。また、電極層内のセラミックス粒子の割合は、50%以下であってよく、30%以下であってよく、20%以下であってよい。電極層内のセラミックス粒子の割合が50%以下であれば、電極としての機能を十分に発揮し得る。
【0017】
電極層内のセラミックス粒子の割合は、例えば、第1セラミックス層/電極層/第2セラミックス層の積層方向に沿った断面のSEM画像を撮影し、電極層内における金属とセラミックス粒子の面積から算出することができる。電極層内における金属とセラミックス粒子の面積は、例えば、上記したiTEM解析ソフトを用いて算出することができる。
【0018】
セラミックス粒子の材料として、例えば、ジルコニア(ZrO)、安定化剤としてイットリア(Y),カルシア(CaO)等が添加された、部分安定化ジルコニア,安定化ジルコニア等を用いることができる。すなわち、第1セラミックス層及び第2セラミックス層と同質の材料を用いることができる。また、セラミックス粒子の材料として、第1セラミックス層及び第2セラミックス層と異なる金属酸化物を利用してよい。そのような金属酸化物の一例として、アルミナ(Al)、スピネル(MgAl)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、ムライト(Al13Si)、コージェライト(MgO・Al・SiO)等が挙げられる。
【0019】
(実施例)
図1から図4を参照し、電極埋設セラミックス構造体の一例について説明する。図1は、内部にPt電極4が埋設されたセラミックス構造体10を示している。セラミックス構造体10は、ジルコニア質の基板2と、基板2の表面に設けられたPt電極4と、基板2及びPt電極4を被覆しているジルコニア質の保護層6を備えている。基板2は第1セラミックス層の一例であり、Pt電極4は電極層の一例であり、保護層6は第2セラミックス層の一例である。
【0020】
図1及び図2に示すように、Pt電極4は基板2の表面の中央部分に配置されている。そのため、Pt電極4は、全面がセラミックス層(基板2,保護層6)に囲まれており、セラミックス構造体10の外部に露出していない。Pt電極4が設けられている部分では、基板2/Pt電極4/保護層6の積層構造が形成されている。一方、Pt電極4が設けられていない部分では、基板2と保護層6が接合されている。なお、図1及び2には、基板2と保護層6の接合面8を仮想線で示している。実際には、基板2と保護層6は焼結しているので、接合面8において両者に明確な境界は現れない。そのため、基板2及び保護層6の形状、サイズ等を説明する場合、基板2/Pt電極4/保護層6の積層構造部分の形状、サイズを示す。セラミックス構造体10では、基板2の平均厚みが1mmであり、Pt電極4の平均厚みが3μmであり、保護層6の平均厚み(図2に示す厚みt6)が3μmである。
【0021】
セラミックス構造体10は、表面にPtペーストをスクリーン印刷した基板2を用意し、シート成形法によって基板2とは別に保護層6を用意し、基板2の表面に保護層6を配置し、加圧積層・焼成することによって作製した。具体的には、1mmのジルコニア質基板の表面の所定位置に、平均粒径0.5μmのジルコニア粒子を体積比で25%含むPtペーストをスクリーン印刷し、表面にPt電極4が形成された基板2を作製した。なお、スクリーン印刷の条件は、焼成後の保護層6の厚みが3μmになるように調整した。また、保護層6は、ジルコニア質粒子を含むジルコニアスラリーを用意し、ダイコーター法によって3μmのジルコニア質シートを成形し、ジルコニア質シートを乾燥させることにより作製した。その後、基板2の表面にジルコニア質シートを加圧積層し、大気雰囲気において1500℃で焼成することによってセラミックス構造体10を得た。
【0022】
図3は、基板2/Pt電極4/保護層6の積層構造部分の拡大図(3000倍拡大図)を示している。図3に示すように、Pt電極4の内部に、ジルコニア粒子14が確認された。ジルコニア粒子14は、Pt電極4内に分散して存在していることが確認された。Pt電極4内におけるジルコニア粒子14の割合(面積比)をiTEM解析ソフトを用いて算出した結果、Pt電極4内に5%のジルコニア粒子14が存在することが確認された。
【0023】
また、Pt電極4の表面(保護層6側の面)4a及び裏面(基板2側の面)4bに凹凸が確認された。Pt電極4の長さ(画像(図3)内におけるPt電極4の水平方向の長さ)に対し、表面4aの長さは1.03倍であり、裏面4bの長さは1.21倍であった。Pt電極4の表裏面の長さの合計は、Pt電極4の長さの2.24倍であった。すなわち、Pt電極4の表裏面の平均長さは、Pt電極4の長さより12%長かった(Pt電極4の長さの1.12倍)。また、裏面4bの長さは表面4aの長さより長く、裏面4bの長さは表面4aの1.17倍であった。なお、表面4a及び裏面4bの長さもiTEM解析ソフトを用いて算出した。
【0024】
図4は、Pt電極4と保護層6の接合部分から保護層6の表面までの拡大図(3000倍拡大図)を示している。図4に示すように、Pt電極4と保護層6の接合面は平坦でなく、保護層6の厚みにばらつきが存在することが確認された。保護層6の厚みを測定するため、保護層6の画像を複数撮影(長さ約100μm分)し、最小厚みT1を測定した。また、任意の100箇所の厚みを測定し、保護層6の平均厚みT2を算出した。その結果、最小厚みT1は2.6μmであり、平均厚みT2は3.0μmであった。すなわち、最小厚みT1と平均厚みT2の差が、平均厚みT2の13%であった。
【0025】
また、iTEM解析ソフトを用いて、保護層6内に存在する空隙の割合を算出した。なお、保護層6内の空隙の割合の算出では、保護層6のマトリックスに囲まれた空隙16は保護層6内の空隙として捉え、保護層とPt電極4の間に確認された空隙18は保護層6内の空隙として捉えていない(図4を参照)。空隙の割合は、保護層6の画像を複数撮影(長さ約100μm分)し、複数個所の平均値を算出した。その結果、保護層6内に0.05%の空隙が存在することが確認された。
【0026】
(耐圧試験)
セラミックス構造体10の特性(耐久性)について評価した。具体的には、保護層6の表面(Pt電極4が存在する面の反対側の面)に表面電極を形成し、表面電極とPt電極4間に試験電圧を印加し、絶縁破壊の有無を確認した(耐圧試験)。なお、試験電圧は、10V,20V,30V,40Vとした。試験電圧を30分間印加し、絶縁破壊が起こらなかった場合を合格、30分以内に絶縁破壊が生じた場合を不合格とした。また、比較例として、保護層の平均厚みがセラミックス構造体10と同一(3.0μm)で、厚みばらつきがセラミックス構造体10よりも大きい(保護層における平均厚みと最小厚みの差が、平均厚みの22%)試料についても評価を行った。なお、比較例の試料は、表面にPt電極が形成された基板に、ジルコニアペースト(保護層の材料)をスクリーン印刷して作製した。なお、比較例の試料は、保護層内の空隙の割合が0.7%であった。
【0027】
耐圧試験の結果、比較例の試料は、20Vで絶縁破壊が生じた。一方、セラミックス構造体10は、40Vの電圧を30分間印加しても絶縁破壊が確認されなかった。セラミックス構造体10は、厚みばらつきが小さい(平均厚みT2と最小厚みT1の差が、平均厚みT2の13%)ため、高い耐久性が得られることが確認された。
【0028】
(熱衝撃試験)
また、Pt電極4及び保護層6の厚みがセラミックス構造体10と異なる試料(試料1)を作製し、Pt電極4の特性(Pt電極4と基板2の剥離の有無)について評価した。具体的には、Pt電極4の平均厚みを10μm、保護層6の平均厚みを5μmに変えた試料1を作製し、試料1のPt電極4に印加する電圧を繰り返し変化させ、15秒で600℃に昇温し、15秒で100℃まで冷却する工程を1サイクルとする試験(熱衝撃試験)を行った。なお、熱衝撃試験では、保護層6の厚みが試験結果に影響を及ぼすことを抑制するため、試料1のPt電極4及び保護層6の厚みを、セラミックス構造体10よりも厚くした。また、比較例として、Pt電極内にセラミックス粒子(ジルコニア粒子)を含まないセラミックス構造体(Pt電極の平均厚み10μm、保護層の平均厚み5μm)も作製し、併せて評価を行った(試料2)。なお、比較例(試料2)のセラミックス構造体は、Pt電極の表裏面がほぼ平坦であり、Pt電極の表裏面の長さの合計が、Pt電極の長さの2.04倍であった。すなわち、試料2のセラミックス構造体は、Pt電極の表裏面の平均長さが、Pt電極の長さより2%だけ長かった。
【0029】
熱衝撃試験の結果、試料2のセラミックス構造体は、20サイクル目でPt電極が基板から剥離する結果となった。一方、試料1は、100サイクル試験を行った後も、Pt電極4と基板2の剥離は確認されなかった。セラミックス構造体10は、Pt電極4の表裏面に大きな凹凸が形成されているので(表裏面の長さの合計がPt電極4の長さの2.2倍以上であるため)、Pt電極4が基板2及び保護層6と強固に接合され、剥離が抑制される(高耐久性が得られる)ことが確認された。
【0030】
上記実施例では、電極層内にセラミックス粒子を含む電極埋設セラミックス構造体について説明した。しかしながら、本明細書で開示する技術は、電極層内にセラミックス粒子を含まない電極埋設セラミックス構造体に適用することもできる。重要なことは、基板及び電極層を被覆する保護層(第2セラミックス層)が、平均厚みと最小厚みの差が平均厚みの15%以下に調整されていることである。
【0031】
<実施の形態2>
(構成)
図5及び図6のそれぞれは、本実施の形態における静電容量式センサ101(電極埋設セラミックス構造体)を有する検知システム500の構成を概略的に示す正面図及び背面図である。図7は、図5及び図6の線VII-VIIに沿う概略的な部分断面図である。図8は、図5及び図6の線VIII-VIIIに沿う概略的な部分断面図である。図9は、図5及び図6の線IX-IXに沿う概略的な部分断面図である。検知システム500は、液体を検知するシステムであり、具体的には、液位を検知するシステムである。よって静電容量式センサ101は、液体検知センサであり、具体的には、液位センサである。図5及び図6においては、静電容量式センサ101によって検知されることになる液体LQの液位PLの一例が仮想線によって示されている。また図9においては液体LQが示されている。また、図を見やすくするために、XYZ直交座標系が示されている。本実施の形態においては方向Zが鉛直上方に対応している。またZ方向における原点は、液位PLのゼロ位置に対応している。
【0032】
検知システム500は、静電容量式センサ101と、計測器200とを有している。静電容量式センサ101は、静電容量の変化を利用しての検出を行う静電容量式センサである。静電容量式センサ101は、絶縁層52(本実施の形態における第1セラミック層)と、電極層54と、保護層56(本実施の形態における第2セラミック層)とを含み、本実施の形態におけるこれら第1セラミック層、電極層、及び第2セラミック層に対しても、前述した実施の形態1における、第1セラミック層、電極層、及び第2セラミック層についての説明が該当する。電極層54は、第1の検出電極21と、第2の検出電極22とを有している。さらに、静電容量式センサ101は、第1のパッド電極31と、第2のパッド電極32と、第1のビア電極41と、第2のビア電極42とを含んでよい。
【0033】
絶縁層52は、セラミック絶縁体からなることが好ましく、保護層56と同じ材料からなることがより好ましい。絶縁層52の厚みは、例えば1mm程度である。
【0034】
第1の検出電極21は、図7図9に示されているように、絶縁層52の一の面上に設けられている。第2の検出電極22は、絶縁層52上に第1の検出電極21から離れて設けられている。第2の検出電極22は、第1の検出電極21と共に静電容量を形成する。第1の検出電極21及び第2の検出電極22は、図5に示すように、ラインアンドスペースのパターンを構成していてよい。第1の検出電極21及び第2の検出電極22は、酸化しにくい高融点金属からなることが好ましく、例えば、白金、タングステンまたはコバルトからなる。第1の検出電極21及び第2の検出電極22の厚みは、例えば5μm程度である。
【0035】
保護層56は、第1の検出電極21及び第2の検出電極22を覆っている。具体的には、保護層56は、表面SFと、表面SFと反対の、第1の検出電極21及び第2の検出電極22に面する面と、を有している。保護層56は、1μm≦d≦10μmを満たす厚みdを有しており、好ましくは、1μm≦d≦5μmを満たす厚みdを有している。保護層56は、ジルコニアまたはアルミナからなり、好ましくはジルコニアからなる。保護層56は比誘電率εを有しており、好ましくは、ε≧10が満たされている。例えば、ジルコニアを用いることによって30程度のεを得ることができ、また、アルミナを用いることによって10程度のεを得ることができる。好ましくは、ε/d≧1が満たされている。
【0036】
第1のパッド電極31は、絶縁層52の、上記一の面と反対の面上に設けられている。第2のパッド電極32は、絶縁層52の、上記一の面と反対の面上に、第1のパッド電極31から離れて設けられている。第1のビア電極41は、絶縁層52を貫通しており、第1の検出電極21につながれた一方端と、第1のパッド電極31につながれた他方端とを有している。第2のビア電極42は、絶縁層52を貫通しており、第2の検出電極22につながれた一方端と、第2のパッド電極32につながれた他方端とを有している。
【0037】
計測器200は静電容量を計測する機能を有している。計測器200は、第1のパッド電極31及び第2のパッド電極32に電気的に接続されている。これにより計測器200は、第1の検出電極21と第2の検出電極22とが形成する静電容量を計測することができる。
【0038】
静電容量式センサ101を用いた液体検知方法においては、次の複数の工程が行われる。まず、静電容量式センサ101の静電容量を検出する工程が行われる。次に、静電容量を検出する工程によって検出された静電容量に基づいて、液体LQを検知する工程、具体的には、液体LQの液位PLを検知する工程、が行われる。
【0039】
図10は、図9に対応する近似的な等価回路を示す回路図である。図9及び図10を参照して、液体LQと第1の検出電極21とが保護層56を介して対向する構成は、静電容量C1を形成する。同様に、液体LQと第2の検出電極22とが保護層56を介して対向する構成は、静電容量C2を形成する。計測器によって計測される容量Cは、静電容量C1と静電容量C2との直列接続によって構成される静電容量に近似的には対応するので、
C = C1 × C2 / (C1 + C2)
によって算出される。図5に示されているように、第2の検出電極22の構成が第1の検出電極21の構成と同様の時は、C2=C1であり、この場合、上式は、
C = C1 / 2
と書き換えられる。容量Cの計測値は、図10に示されているように、液位PLにおおよそ比例する。よって、液位PLと容量Cの計測値との関係を予め把握しておくことによって、静電容量式センサ101の計測値を用いての液位検知が可能となる。
【0040】
ここで、容量Cは、保護層56を介して形成される容量で近似されることから、保護層56の比誘電率と厚みとの積、すなわちε/dにおおよそ比例する。容量Cの変化割合を高精度で検出するためには、容量Cの大きさが、ある程度大きいことが好ましい。よってε/dが、ある程度大きいことが好ましく、具体的にはε/d≧1が満たされていることが好ましい。
【0041】
(効果のまとめ)
本実施の形態2によっても、前述した実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0042】
さらに、第1に、第1の検出電極21及び第2の検出電極22を覆う保護層56が、ジルコニアまたはアルミナからなる場合、静電容量式センサ101の耐食性及び耐薬品性が高められる。
【0043】
第2に、保護層56の厚みdが1μm≦d≦10μmを満たしている場合、上述した耐食性及び耐薬品性を確保しつつ、保護層56が設けられることに起因しての静電容量式センサ101の感度の大幅な低下が避けられる。
【0044】
以上から、耐食性及び耐薬品性を確保しつつ、高感度での検出を行うことができる。具体的には、液位を高感度で検知することができる。
【0045】
保護層56はジルコニアからなることが好ましい。これにより、保護層56の比誘電率εが30程度の高い値となる。これにより、保護層56が設けられることに起因しての静電容量式センサ101の感度の低下が、より十分に避けられる。
【0046】
ε/d≧1が満たされていることが好ましい。これにより、保護層56を介して形成される単位面積当たりの静電容量が大きくなる。これにより静電容量式センサ101の感度を十分に確保しやすくなる。
【0047】
絶縁層52及び保護層56は、共にセラミック絶縁体からなることが好ましく、同じ材料からなることがより好ましい。これにより、静電容量式センサ101を製造するための焼成工程における収縮率の相違が抑制される。よって、保護層56の厚みdが比較的小さくてもピンホールのない保護層56を得ることができる。よって、保護層56による耐食性及び耐薬品性の向上効果を十分に得つつ、厚みdを小さくすることができる。
【0048】
保護層56となる部分は、グリーンシートの圧着によって形成されることが好ましい。これにより、当該部分がセラミックペーストの塗布によって形成される場合に比して、保護層56の厚みdが比較的小さくてもピンホールのない保護層56を得ることができる。
【0049】
第1の検出電極21及び第2の検出電極22は、高融点金属からなることが好ましく、例えば、白金、タングステンまたはコバルトからなる。これにより、静電容量式センサ101を製造するための焼成工程における電極の揮発・溶融を避けることができる。
【0050】
<実施の形態3>
図11は、本実施の形態における静電容量式センサ102(電極埋設セラミックス構造体)の構成を概略的に示す断面図である。図12図14のそれぞれは、図11の、線XII-XII、線XIII-XIII及び線XIV-XIVに沿う概略的な部分断面図である。
【0051】
検知システム500(図5及び図6)において、静電容量式センサ101に加えて静電容量式センサ102を用いることによっても、保護層56上の結露を検知することができる。よって静電容量式センサ102は、液体検知センサであり、具体的には、結露センサである。静電容量式センサ102のための第1の検出電極21及び第2の検出電極22は、図12に示すように、櫛歯形状を有していることが好ましい。これにより、結露の検出感度が高められる。
【0052】
静電容量式センサ102は、保護層56を加熱するためのヒータ60を有していることが好ましい。ヒータ60に電流を流すことによって発熱が得られる。これにより保護層56を加熱することによって、表面SF上に付着した液体を、蒸発させることによって除去することができる。よって、洗浄または長期使用などに起因して表面SF上に多量の液体が付着している際に、ヒータ60を用いてそれを除去することによって、再度の結露の発生を検出することができる状態を、速やかに得ることができる。
【0053】
ヒータ60は、静電容量式センサ102の内部に埋め込まれていることが好ましく、絶縁層52の内部に埋め込まれていることがより好ましい。その場合、静電容量式センサ102は、ヒータ60への電気的接続を可能とするために、パッド電極71、パッド電極72、ビア電極81及びビア電極82を有していてよい。ビア電極81の一方端(図11における上端)及びビア電極82の一方端(図11における上端)のそれぞれは、ヒータ60の一方端及び他方端に接続されている。ビア電極81の他方端(図11における下端)及びビア電極82の他方端(図11における下端)のそれぞれは、パッド電極71及びパッド電極72に接続されている。この構成により、パッド電極71とパッド電極72との間に電圧を印加することによって、ヒータ60を発熱させることができる。
【0054】
なお、上述したヒータ60及びそれに関連した構成は、静電容量式センサ101(実施の形態2)等、他の静電容量式センサへ適用されてもよい。
【0055】
上記以外の構成については、静電容量式センサ101(実施の形態2)の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0056】
本実施の形態によれば、耐食性及び耐薬品性を確保しつつ、結露を高感度で検知することができる。なお、保護層56の好適な構成は、本実施の形態の場合においても実施の形態2の場合とほぼ同様である。
【0057】
ヒータ60が設けられる場合、保護層56の表面SF上に付着した液体を、加熱によって除去することができる。これにより、液体を新たに検出するための感度を速やかに確保することができる。
【0058】
<実施の形態4>
図15は、本実施の形態4における表面電位センサ103(電極埋設セラミックス構造体)を有する検知システム510の構成を概略的に示す正面図である。検知システム510は、プラズマを利用する装置に設けられるとによって、プラズマ異常を検知するシステムである。具体的には、検知システム510は、プラズマ異常に起因して表面電荷が変化することによって生じる過渡電流を検知するシステムである。よって表面電位センサ103は、プラズマ状態検知センサであり、具体的には、プラズマ異常検知センサである。
【0059】
検知システム510は、表面電位センサ103と、計測器210とを有している。前述した静電容量式センサ101(図5:実施の形態2)は、電極層54として複数の電極(具体的には第1の検出電極21及び第2の検出電極)を有しているが、表面電位センサ103は、電極層54として、少なくとも1つの検出電極を有しており、図15に示された例においては単数の検出電極のみを有している。この単数の電極に計測器210が電気的に接続されている。この接続のために、例えば、第1のパッド電極31及び第1のビア電極41(図8:実施の形態2)と同様のパッド電極及びビア電極が設けられていてよい。また表面電位センサ103は、静電容量式センサ101と同様、絶縁層52及び保護層56(図8参照)を有している。表面電位センサ103は、保護層56の表面電位の変化を利用した表面電位センサである。
【0060】
表面電位センサ103が設けられた箇所でのプラズマ異常は、保護層56上での電荷の過渡的な帯電を引き起こす。これにより、電極層54に反対符号の電荷が誘導される。この誘導による過渡的な電荷が、計測器210によって計測される。例えば、当該電荷によって発生する電圧がしきい値より大きいときに、プラズマ異常が発生していると判断される。よって表面電位センサ103は、プラズマ計測用の電気的プローブである。
【0061】
<実施の形態5>
図16は、本実施の形態5における表面電位センサ104(電極埋設セラミックス構造体)を有する検知システム520の構成を概略的に示す正面図である。検知システム520は、表面電位センサ104と、計測器220と、電圧発生器320とを有している。表面電位センサ104の構成は表面電位センサ103(図15:実施の形態4)と同様であってよい。表面電位センサ104も、表面電位センサ103と同様に、保護層56(図8参照)の表面電位の変化を利用した表面電位センサである。検知システム520は、プラズマを利用する装置に設けられるとによって、プラズマの空間電位の変化を検知するシステムである。具体的には、検知システム520は、表面電位センサ104における電圧-電流特性によって、プラズマの空間電位の変化を検知するシステムである。電圧-電流特性の計測に際して、電圧発生器320によって電圧が制御され、そのときの電流特性が計測器220によって計測される。よって表面電位センサ104は、プラズマ計測用の電気的プローブである。
【0062】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0063】
2,52 :第1セラミックス層
4,54 :電極層
6,56 :第2セラミックス層
10,101~10:電極埋設セラミックス構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16