(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】抗ILT4抗体および抗原結合性フラグメント
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231130BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20231130BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231130BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231130BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231130BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231130BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231130BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231130BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231130BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022043279
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2019554645の分割
【原出願日】2018-04-05
【審査請求日】2022-03-18
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(73)【特許権者】
【識別番号】515124598
【氏名又は名称】アジェナス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】スニガ,ルイス・エー
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス-シャイフ,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】ブラヌサ,ミラン
(72)【発明者】
【氏名】シュスター,アンドレア・クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ,コルネリア
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/164519(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/144728(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/028672(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/179633(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/111947(WO,A2)
【文献】Breous-Nystrom E,et al.,Retrocyte Display technology: generation and screening of a high diversity cellular antibody library,Methods,65(1),2014年01月01日,pp.57-67
【文献】DENG M; ET AL,A MOTIF IN LILRB2 CRITICAL FOR ANGPTL2 BINDING AND ACTIVATION,BLOOD,2014年08月07日,VOL:124, NR:6,PAGE(S):924 - 935,http://dx.doi.org/10.1182/blood-2014-01-549162
【文献】WU CHING-LIEN; ET AL,MULTIPLEX BEAD-BASED IMMUNOASSAY FOR THE FREE SOLUBLE FORMS OF THE HLA-G RECEPTORS, ILT2 AND ILT4,HUMAN IMMUNOLOGY,米国,2016年02月10日,VOL:77, NR:9,PAGE(S):720 - 726,http://dx.doi.org/10.1016/j.humimm.2016.01.017
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/18
C12N 15/63
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12P 21/08
A61P 43/00
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトILT4に結合する、抗体またはその抗原結合性フラグメントのVH、VL、VHとVLとの両方、重鎖免疫グロブリン、軽鎖免疫グロブリン、または重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンとの両方をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、
該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、
GYYWS(配列番号16)のアミノ酸配列を有するCDR-H1:
EINHSGSTNYNPSLKS(配列番号47)またはEINHAGSTNYNPSLKS(配列番号48)のアミノ酸配列を有するCDR-H2:および
LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)のアミノ酸配列を有するCDR-H3、を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)のアミノ酸配列を有するCDR-L1:
GNSNRPS(配列番号49)、GQSNRPS(配列番号50)、GESNRPS(配列番号51)、GDSNRPS(配列番号52)、GNANRPS(配列番号53)、GQANRPS(配列番号54)、GEANRPS(配列番号55)またはGDANRPS(配列番号56)のアミノ酸配列を有するCDR-L2:および
QSFDNSLSAYV(配列番号21)のアミノ酸配列を有するCDR-L3、を含む軽鎖可変ドメインを含む、
ポリヌクレオチド。
【請求項2】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58、70、71、72、73もしくは77に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57、63もしくは69に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58、70、71、72、73もしくは77に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57、63もしくは69に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号3、4、5、6、7もしくは45に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号1、2、79、80もしくは81に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号3、4、5、6、7もしくは45に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号1、2、79、80もしくは81に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
ヒトILT4に結合する、抗体またはその抗原結合性フラグメントのVH、VL、VHとVLとの両方、重鎖免疫グロブリン、軽鎖免疫グロブリン、または重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンとの両方をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、
該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、
GYYWS(配列番号16)のアミノ酸配列を有するCDR-H1:
EINHAGSTNYNPSLKS(配列番号48)のアミノ酸配列を有するCDR-H2:および
LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)のアミノ酸配列を有するCDR-H3、を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)のアミノ酸配列を有するCDR-L1:
GDSNRPS(配列番号52)のアミノ酸配列を有するCDR-L2:および
QSFDNSLSAYV(配列番号21)のアミノ酸配列を有するCDR-L3、を含む軽鎖可変ドメインを含む、
ポリヌクレオチド。
【請求項7】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号7に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号2に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
ヌクレオチド配列が、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖をコードする、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
ヌクレオチド配列が、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖をコードする、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
ヌクレオチド配列が、配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖をコードする、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列番号87に記載されているヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号88に記載されているヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項6記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項18】
請求項17記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
ヒトILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントの製造方法であって、
(1)請求項18に記載の宿主細胞を培養して、抗体またはその抗原結合性フラグメントを発現させ、そして、
(2)その抗体またはその抗原結合性フラグメントを回収する、ことを含む方法。
【請求項20】
宿主細胞が、第1のベクター及び第2のベクターを含み、
ここで、第1のベクターが、配列番号87に記載されているヌクレオチド配列を含む第1のポリヌクレオチドを含み、そして、ここで、第2のベクターが、配列番号88に記載されているヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチドを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
宿主細胞が、配列番号87に記載されているヌクレオチド配列を含む第1のポリヌクレオチドおよび配列番号88に記載されているヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチドを含むベクターを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ヒトILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量を含む、それを要するヒト対象における癌の治療用の医薬組成物であって、
該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、
GYYWS(配列番号16)のアミノ酸配列を有するCDR-H1:
EINHSGSTNYNPSLKS(配列番号47)またはEINHAGSTNYNPSLKS(配列番号48)のアミノ酸配列を有するCDR-H2:および
LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)のアミノ酸配列を有するCDR-H3、を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)のアミノ酸配列を有するCDR-L1:
GNSNRPS(配列番号49)、GQSNRPS(配列番号50)、GESNRPS(配列番号51)、GDSNRPS(配列番号52)、GNANRPS(配列番号53)、GQANRPS(配列番号54)、GEANRPS(配列番号55)またはGDANRPS(配列番号56)のアミノ酸配列を有するCDR-L2:および
QSFDNSLSAYV(配列番号21)のアミノ酸配列を有するCDR-L3、を含む軽鎖可変ドメインを含む、医薬組成物。
【請求項23】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58、70、71、72、73もしくは77に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57、63もしくは69に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58、70、71、72、73もしくは77に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57、63もしくは69に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号3、4、5、6、7もしくは45に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号1、2、79、80もしくは81に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号3、4、5、6、7もしくは45に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号1、2、79、80もしくは81に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項27】
ヒトILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量を含む、それを要するヒト対象における癌の治療用の医薬組成物であって、
該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、
GYYWS(配列番号16)のアミノ酸配列を有するCDR-H1:
EINHAGSTNYNPSLKS(配列番号48)のアミノ酸配列を有するCDR-H2:および
LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)のアミノ酸配列を有するCDR-H3、を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)のアミノ酸配列を有するCDR-L1:
GDSNRPS(配列番号52)のアミノ酸配列を有するCDR-L2:および
QSFDNSLSAYV(配列番号21)のアミノ酸配列を有するCDR-L3、を含む軽鎖可変ドメインを含む、医薬組成物。
【請求項28】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号7に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号2に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項32】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項33】
治療用物質をヒト対象に更に投与することを含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項34】
治療用物質が抗PD-1抗体である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
抗PD-1抗体がペンブロリズマブである請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
抗PD-1抗体がニボルマブである請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項37】
癌が、
未分化星状細胞腫、星状細胞腫、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、カルチノイド癌、子宮頸癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、胃癌、膠芽腫、頭頸部癌、肝芽腫、肝細胞癌、特発性骨髄線維症、腎癌、白血病、肝癌、肺癌、非小細胞肺癌、リンパ腫、髄芽腫、メラノーマ、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乏突起膠腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真性多血症、原発神経外胚葉腫瘍、前立腺癌、腎細胞癌、腎移行細胞癌、網膜芽細胞腫、腎ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、滑膜肉腫、血小板血症、甲状腺癌、子宮癌、前庭神経鞘腫またはウィルムス腫瘍である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項38】
ヒトILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量を含む、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための医薬組成物であって、
該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、
GYYWS(配列番号16)のアミノ酸配列を有するCDR-H1:
EINHSGSTNYNPSLKS(配列番号47)またはEINHAGSTNYNPSLKS(配列番号48)のアミノ酸配列を有するCDR-H2:および
LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)のアミノ酸配列を有するCDR-H3、を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)のアミノ酸配列を有するCDR-L1:
GNSNRPS(配列番号49)、GQSNRPS(配列番号50)、GESNRPS(配列番号51)、GDSNRPS(配列番号52)、GNANRPS(配列番号53)、GQANRPS(配列番号54)、GEANRPS(配列番号55)またはGDANRPS(配列番号56)のアミノ酸配列を有するCDR-L2:および
QSFDNSLSAYV(配列番号21)のアミノ酸配列を有するCDR-L3、を含む軽鎖可変ドメインを含む、医薬組成物。
【請求項39】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、
GYYWS(配列番号16)のアミノ酸配列を有するCDR-H1:
EINHAGSTNYNPSLKS(配列番号48)のアミノ酸配列を有するCDR-H2:および
LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)のアミノ酸配列を有するCDR-H3、を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)のアミノ酸配列を有するCDR-L1:
GDSNRPS(配列番号52)のアミノ酸配列を有するCDR-L2:および
QSFDNSLSAYV(配列番号21)のアミノ酸配列を有するCDR-L3、を含む軽鎖可変ドメインを含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、および、配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項42】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖、および、配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2017年4月7日付け出願の米国仮特許出願第62/483,019号(
その開示の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に基づく利益を主張する
ものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、免疫グロブリン様転写産物4(ILT4)に結合する抗体およびその抗原結
合性フラグメント、ならびにそのような抗体および抗原結合性フラグメントの製造方法、
ならびに例えば、がんのような疾患を治療するためのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自然免疫および適応免疫応答を回避するために腫瘍細胞が用いる一般的な戦略はヒト白
血球抗原(HLA)-Gの異常発現に関連している(Curiglianoら,Clin
Cancer Res.2013およびGonzalezら,Crit Rev Cl
in Lab Sci.2012)。HLA-Gは、受容体結合により、ならびに/また
はトロゴサイトーシスおよび走化性の阻害により、免疫細胞機能を直接的に抑制しうる(
Morandiら,Cytokine Growth Factor Review.2
014およびLinら,Mol Med.2015)。例えば結腸直腸、膵臓、子宮内膜
、肺、乳房、卵巣および胃癌を含む複数の腫瘍型におけるその高い発現は、進行した病期
、腫瘍浸潤、転移能および予後不良に関連している(Linら,Mol Med. 20
15およびLoumangeら,Int J Cancer.2014)。トランスジェ
ニックマウスモデルにおけるHLA-G機能の抗体媒介性遮断は腫瘍発生を抑制し、骨髄
由来サプレッサー細胞(MDSC)の増殖を阻害することが示されている(Louman
geら,Int J Cancer.2014、Linら,Hum Immunol.2
013およびAgaugueら,Blood.2011)。ILT4へのHLA-Gの結
合は単球、樹状細胞および好中球の機能を直接的に抑制して、自然免疫抗腫瘍応答を阻害
しうる。ILT4によるHLA-Gと単球との間の相互作用はヒト単球由来抗原提示細胞
(APC)の成熟を抑制して、Stat3活性化によるMHCクラスII抗原および共刺
激分子の発現の低減をもたらす(Colonnaら,J Immunol.1998;A
llanら,J Exp Med.1999およびLiangら,Proc Natl
Sci USA.2008)。ヒト単球由来樹状細胞(DC)およびILT4トランスジ
ェニックマウスを使用して、HLA-Gは、骨髄性DCの成熟/活性化の停止を伴う免疫
寛容原性APCの発生を誘導することが示され、HLA-Gによる免疫寛容原性DCの誘
導はMHCクラスII提示経路の破壊によるものであった(Ristichら,Eur
J Immunol.2005)。
【0004】
T細胞療法には応答しないが、組織関連マクロファージ/MDSC媒介性腫瘍耐性(例
えば、骨髄「に富む(rich)」腫瘍)の軽減から利益を受けうる患者には、満たされ
ていない医学的要求性が存在する。ILT4遮断は、腫瘍微小環境における免疫寛容原性
骨髄細胞の抑制を軽減することにより、この要求性を満たし、現在のT細胞標的抗体(例
えば、抗PD1、抗TIGIT)から区別するであろう。
【発明の概要】
【0005】
発明の概略
本発明は、ヒトILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する
。ある実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、LYREKK
SASW(配列番号59)、TRIRPEL(配列番号60)、NGQF(配列番号61
)およびHTGRYGCQ(配列番号62)からなる群から選択されるヒト1LT4エピ
トープの、1以上のアミノ酸残基に結合する。ある実施形態においては、該抗体または抗
原結合性フラグメントはD2Oのような重水素源との重水素交換からエピトープを保護す
る。1つの実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、エピトー
プLYREKKSASW(配列番号59)の、1以上のアミノ酸残基に結合する。もう1
つの実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、エピトープTR
IRPEL(配列番号60)の、1以上のアミノ酸残基に結合する。更にもう1つの実施
形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、エピトープNGQF(配
列番号61)の、1以上のアミノ酸残基に結合する。更にもう1つの実施形態においては
、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、エピトープHTGRYGCQ(配列番号
62)の、1以上のアミノ酸残基に結合する。更にもう1つの実施形態においては、該抗
体またはその抗原結合性フラグメントは、LYREKKSASW(配列番号59)、TR
IRPEL(配列番号60)、NGQF(配列番号61)およびHTGRYGCQ(配列
番号62)からなる群から選択される2、3または4個のILT4エピトープにおける1
以上のアミノ酸残基に結合する。1つの実施形態においては、該抗体またはその抗原結合
性フラグメントはエピトープLYREKKSASW(配列番号59)における1以上のア
ミノ酸残基に結合し、D2Oのような重水素源との重水素交換からエピトープを保護する
。もう1つの実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントはエピトー
プTRIRPEL(配列番号60)における1以上のアミノ酸残基に結合し、D2Oのよ
うな重水素源との重水素交換からエピトープを保護する。更にもう1つの実施形態におい
ては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントはエピトープNGQF(配列番号61)
における1以上のアミノ酸残基に結合し、D2Oのような重水素源との重水素交換からエ
ピトープを保護する。更にもう1つの実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性
フラグメントはエピトープHTGRYGCQ(配列番号62)における1以上のアミノ酸
残基に結合し、D2Oのような重水素源との重水素交換からエピトープを保護する。更に
もう1つの実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、LYRE
KKSASW(配列番号59)、TRIRPEL(配列番号60)、NGQF(配列番号
61)およびHTGRYGCQ(配列番号62)からなる群から選択される2、3または
4個のILT4エピトープにおける1以上のアミノ酸残基に結合し、D2Oのような重水
素源との重水素交換からエピトープを保護する。
【0006】
本発明は、本明細書に開示されているいずれかの抗体または抗原結合性フラグメントと
同じヒトILT4のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供
する。ある実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、それぞれ
配列番号1および3、2および4、2および5、2および6、2および7、2および3、
8および11、9および11、10および11、12および13、14および15、79
および3、80および4、80および5、80および6、80および7、80および3、
82および11、83および11、84および11、85および13ならびに86および
15に記載されている重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合性フラ
グメントと同じ、ヒトILT4のエピトープに結合する。幾つかの実施形態においては、
該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、それぞれ配列番号63および70、57お
よび71、57および72、57および73、57および58、57および70、64お
よび74、65および74、66および74、67および75、68および76に記載さ
れている重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体またはその抗
原結合性フラグメントと同じ、ヒトILT4のエピトープに結合する。
【0007】
本発明は更に、ヒトILT4への結合に関して、本明細書に開示されている抗体または
抗原結合性フラグメントと競合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。
ある実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、それぞれ配列番
号1および3、2および4、2および5、2および6、2および7、2および3、8およ
び11、9および11、10および11、12および13、14および15、79および
3、80および4、80および5、80および6、80および7、80および3、82お
よび11、83および11、84および11、85および13ならびに86および15に
記載されている重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む抗体またはフラグメントと、ヒトIL
T4への結合に関して競合する。幾つかの実施形態においては、該抗体またはその抗原結
合性フラグメントは、それぞれ配列番号63および70、57および71、57および7
2、57および73、57および58、57および70、64および74、65および7
4、66および74、67および75、68および76に記載されている重鎖可変ドメイ
ンおよび軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体またはフラグメントと、ヒトILT4
への結合に関して競合する。
【0008】
また、本発明は、(a)配列番号3~7、11、13、15もしくは45に記載されて
いるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン鎖の軽鎖可変(VL)ドメインの相補性決定領域
-L1(CDR-L1)、相補性決定領域-L2(CDR-L2)および相補性決定領域
-L3(CDR-L3)、および/または、(b)配列番号1、2、8~10、12、1
4、44もしくは79~86に記載されているアミノ酸配列を含む免疫グロブリン鎖の重
鎖可変(VH)ドメインの相補性決定領域-H1(CDR-H1)、相補性決定領域-H
2(CDR-H2)および相補性決定領域-H3(CDR-H3)を含む、ヒトILT4
に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。
【0009】
本発明の1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、(1
)CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHXGSTNYN
PSLKS(ここで、XはSまたはAである)(配列番号17)およびCDR-H3:L
PTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVHドメイン、および/または、CD
R-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)、CDR-L2:GX1X2
NRPS(ここで、X1はSまたはAであり、X2はN、Q、EまたはDである)(配列
番号20)およびCDR-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLド
メイン;(2)CDR-H1:SYAIS(配列番号22)、CDR-H2:GIIPI
FGTANYAQKFQG(配列番号23)およびCDR-H3:YFX1X2SGWY
KGGAFDI(ここで、X1はDまたはSであり、X2はSまたはAである)(配列番
号24)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TLRSGINVDTY
RIH(配列番号25)、CDR-L2:YKSDSDKHQGS(配列番号26)およ
びCDR-L3:AIWYSSTWV(配列番号27)を含むVLドメイン;(3)CD
R-H1:SYAMH(配列番号28)、CDR-H2:VISYDGSNKYYADS
VKG(配列番号29)およびCDR-H3:VGEWIQLWSPFDY(配列番号3
0)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:RASQGISSWLA(配
列番号31)、CDR-L2:AASSLQS(配列番号32)およびCDR-L3:Q
QYNSYPPT(配列番号33)を含むVLドメイン、ならびに/または、(4)CD
R-H1:ELSMH(配列番号34)、CDR-H2:GFDPEDGETIYAQK
FQG(配列番号35)およびCDR-H3:AGPLYTIFGVVIIPDNWFD
P(配列番号36)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSN
IGAGYDVH(配列番号37)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号38)お
よびCDR-L3:QSYDSSLSGSGVV(配列番号39)を含むVLドメインを
含む。
【0010】
1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1:G
YYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS(配列番
号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVH
ドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号1
9)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号49)およびCDR-L3:QSFDN
SLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0011】
もう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS(配
列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番
号19)、CDR-L2:GQSNRPS(配列番号50)およびCDR-L3:QSF
DNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0012】
更にもう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSL
KS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GESNRPS(配列番号51)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0013】
更にもう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSL
KS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GDSNRPS(配列番号52)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0014】
1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS(配
列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番
号19)、CDR-L2:GNANRPS(配列番号53)およびCDR-L3:QSF
DNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0015】
もう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS
(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配
列番号19)、CDR-L2:GQANRPS(配列番号54)およびCDR-L3:Q
SFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0016】
更にもう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSL
KS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GEANRPS(配列番号55)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0017】
更にもう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSL
KS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GDANRPS(配列番号56)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0018】
1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS(配
列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番
号19)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号49)およびCDR-L3:QSF
DNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0019】
もう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS
(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配
列番号19)、CDR-L2:GQSNRPS(配列番号50)およびCDR-L3:Q
SFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0020】
更にもう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSL
KS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GESNRPS(配列番号51)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0021】
更にもう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSL
KS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GDSNRPS(配列番号52)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0022】
1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS(配
列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番
号19)、CDR-L2:GNANRPS(配列番号53)およびCDR-L3:QSF
DNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0023】
もう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS
(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配
列番号19)、CDR-L2:GQANRPS(配列番号54)およびCDR-L3:Q
SFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0024】
更にもう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSL
KS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GEANRPS(配列番号55)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0025】
更にもう1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSL
KS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GDANRPS(配列番号56)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0026】
ある実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは軽鎖免疫グロブリ
ン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリンとの両方を含み
、ここで、軽鎖免疫グロブリンは、配列番号3、4、5、6、7、11、13、15もし
くは45に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性
を有し、および/または、重鎖免疫グロブリンは、配列番号1、2、8、9、10、12
、14、44、79、80、81、82、83、84、85もしくは86に記載されてい
るアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0027】
幾つかの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、軽鎖免疫グ
ロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリンとの両方
を含み、ここで、軽鎖免疫グロブリンは、配列番号70、71、72、73、58、74
、75、76もしくは77に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%のア
ミノ酸配列同一性を有し、および/または、重鎖免疫グロブリンは、配列番号63、57
、64、65、66、67、68もしくは69に記載されているアミノ酸配列に対して少
なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0028】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、軽鎖免疫グ
ロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリンとの両方
を含み、ここで、軽鎖免疫グロブリンは、配列番号3、4、5、6、7、11、13、1
5もしくは45に記載されているアミノ酸配列を含み、および/または、重鎖免疫グロブ
リンは、配列番号1、2、8、9、10、12、14、44、79、80、81、82、
83、84、85もしくは86に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0029】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、軽鎖免疫グ
ロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリンとの両方
を含み、ここで、軽鎖可変ドメインは、配列番号70、71、72、73、58、74、
75、76もしくは77に記載されているアミノ酸配列を含み、および/または、重鎖可
変ドメインは、配列番号63、57、64、65、66、67、68もしくは69に記載
されているアミノ酸配列を含む。
【0030】
更に、重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンとの以下の組合せのいずれかを含む抗
体またはその抗原結合性フラグメントを提供する:(1)配列番号1に記載されているア
ミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む
軽鎖免疫グロブリン、(2)配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グ
ロブリン、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(3)
配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号5に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(4)配列番号2に記載されている
アミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号6に記載されているアミノ酸配列を含
む軽鎖免疫グロブリン、(5)配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫
グロブリン、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(6
)配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号3に記
載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(7)配列番号8に記載されてい
るアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列
を含む軽鎖免疫グロブリン、(8)配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖
免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン
、(9)配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番
号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(10)配列番号12
に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号13に記載されてい
るアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(11)配列番号14に記載されているアミ
ノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号15に記載されているアミノ酸配列を含む
軽鎖免疫グロブリン、(12)配列番号79に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免
疫グロブリン、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(
13)配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号
4に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(14)配列番号80に記
載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号5に記載されているアミ
ノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(15)配列番号80に記載されているアミノ酸配
列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号6に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫
グロブリン、(16)配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブ
リン、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(17)配
列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号3に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(18)配列番号82に記載されて
いるアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配
列を含む軽鎖免疫グロブリン、(19)配列番号83に記載されているアミノ酸配列を含
む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロ
ブリン、(20)配列番号84に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン
、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(21)配列
番号85に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号13に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、または(22)配列番号86に記載
されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号15に記載されているアミ
ノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン。
【0031】
また、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの以下の組合せのいずれかを含む抗体ま
たはその抗原結合性フラグメントを提供する:(1)配列番号63に記載されているアミ
ノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号70に記載されているアミノ酸配列を
含む軽鎖可変ドメイン、(2)配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可
変ドメイン、および配列番号71に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
、(3)配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配
列番号72に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(4)配列番号57
に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号73に記載され
ているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(5)配列番号57に記載されているアミ
ノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号58に記載されているアミノ酸配列を
含む軽鎖可変ドメイン、(6)配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可
変ドメイン、および配列番号70に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
、(7)配列番号64に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配
列番号74に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(8)配列番号65
に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号74に記載され
ているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(9)配列番号66に記載されているアミ
ノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号74に記載されているアミノ酸配列を
含む軽鎖可変ドメイン、(10)配列番号67に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖
可変ドメイン、および配列番号75に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイ
ン、または(11)配列番号68に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン
、および配列番号76に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン。
【0032】
1つの好ましい実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列
番号57に記載されているアミノ酸配列を含むVHドメイン、および配列番号58に記載
されているアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0033】
もう1つの好ましい実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、
配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および配列番号7
に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0034】
更にもう1つの好ましい実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメント
は、配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および配列
番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0035】
1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで、各
軽鎖は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含み、そして、各重鎖は、配列番
号57に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0036】
もう1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで
、各軽鎖は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含み、そして、各重鎖は、配
列番号57に記載されているアミノ酸配列を含み、ここで、軽鎖は更に、配列番号90に
記載されているアミノ酸配列を含む。
【0037】
更にもう1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、こ
こで、各軽鎖は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含み、そして、各重鎖は
、配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含み、ここで、重鎖は更に、配列番号8
9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0038】
更にもう1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、こ
こで、各軽鎖は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含み、そして、各重鎖は
、配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含み、ここで、軽鎖は更に、配列番号9
0に記載されているアミノ酸配列を含み、そして、重鎖は更に配列番号89に記載されて
いるアミノ酸配列を含む。
【0039】
1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで、各
軽鎖は、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含み、そして、各重鎖は、配列番号
2に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0040】
もう1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで
、各軽鎖は、配列番号7に記載されているアミノ酸配列からなり、そして、各重鎖は、配
列番号2に記載されているアミノ酸配列からなる。
【0041】
本発明の1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、例え
ば操作された酵母N-結合グリカンまたはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞N
-結合グリカンでグリコシル化されている。本発明の1つの実施形態においては、抗体ま
たはその抗原結合性フラグメントは抗体である。
【0042】
本発明はまた、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントを含
む医薬組成物を提供する。ある実施形態においては、該組成物は更に、治療用物質(例え
ば、ペンブロリズマブ)を含む。幾つかの実施形態においては、該組成物は更に、薬学的
に許容される担体を含む。他の実施形態においては、該組成物は更に、治療用物質(例え
ば、ペンブロリズマブ)および薬学的に許容される担体を含む。
【0043】
1つの実施形態において、医薬組成物は、(i)2つの重鎖および2つの軽鎖からなる
抗体であって、ここで、各軽鎖が配列番号7に記載されているアミノ酸配列からなり、そ
して、各重鎖が配列番号2に記載されているアミノ酸配列からなる、抗体、および、(i
i)ペンブロリズマブ、を含む。
【0044】
本発明は更に、本明細書に開示されている任意の抗体またはその抗原結合性フラグメン
トの免疫グロブリン軽鎖および/または免疫グロブリン重鎖またはそれらの可変ドメイン
を含むポリペプチド(例えば、単離されたポリペプチド)を提供する。例えば、本発明の
1つの実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号1~39、44、45、47~5
8、63~77および79~86からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。また、
本発明は、本明細書に開示されている任意のポリペプチドをコードする任意のポリヌクレ
オチド(例えば、DNAまたはRNA)を提供する。もう1つの態様においては、本明細
書に開示されているポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。本発明はまた、本明細
書に開示されているポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞(例えば、CHO細
胞)を提供する。
【0045】
本発明は、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量
を対象に投与することを含む、HLA-G、HLA-A、HLA-Bおよび/またはHL
A-FへのILT4の結合を遮断するための方法であって、例えば、インビトロまたはイ
ンビボにおける、例えば、それを要する対象(例えば、ヒト対象)の体内における方法を
提供する。ある実施形態においては、HLA-G、HLA-A、HLA-Bおよび/また
はHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は更に、対象に対して治療手技(
例えば、抗がん放射線療法または外科的腫瘍摘出)を行うことを含む。幾つかの実施形態
において、HLA-G、HLA-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4
の結合を遮断するための方法は更に、治療用物質(例えば、ペンブロリズマブ)を対象に
投与することを含む。他の実施形態において、HLA-G、HLA-A、HLA-Bおよ
び/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は更に、対象に対して治
療手技(例えば、抗がん放射線療法または外科的腫瘍摘出)を行い、そして、治療用物質
(例えば、ペンブロリズマブ)を投与することを含む。
【0046】
本発明はまた、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントの有
効量を対象に投与することを含む、対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療方法を
提供する。ある実施形態において、がんの治療方法は更に、対象に対して治療手技(例え
ば、抗がん放射線療法または外科的腫瘍摘出)を行うことを含む。幾つかの実施形態にお
いて、がんの治療方法は更に、治療用物質(例えば、ペンブロリズマブ)を対象に投与す
ることを含む。他の実施形態において、がんの治療方法は更に、対象に対して治療手技(
例えば、抗がん放射線療法または外科的腫瘍摘出)を行い、そして、治療用物質(例えば
、ペンブロリズマブ)を投与することを含む。
【0047】
本発明はまた、抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその免疫グロブリン鎖を
コードするポリヌクレオチド(例えば、ここで、該ポリヌクレオチドはベクター内に存在
し、および/または、宿主細胞の、1以上の染色体内に組み込まれている)を含む宿主細
胞(例えば、CHO細胞)を培養して、抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはそ
の免疫グロブリン鎖を発現させることを含む、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグ
メントまたはその免疫グロブリン鎖(例えば、そのVHおよび/またはVL)の製造方法
を提供する。
【0048】
また、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその免疫グロブリン鎖を
コードするポリヌクレオチドを発現させることを含む、本発明の抗体またはその抗原結合
性フラグメントまたはその免疫グロブリン鎖(例えば、そのVHおよび/またはVL)の
製造方法を提供する。
【0049】
前記製造方法の産物である、ヒトILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグ
メントまたはその免疫グロブリン鎖も、本発明の一部である。
【0050】
サンプルにおけるILT4ペプチドまたはその断片の存在を検出するための方法も本発
明の一部を構成する。該方法は、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントとサンプル
を接触させ、抗体または抗原結合性フラグメントとILT4ペプチドまたはその断片との
複合体の存在を検出することを含み、ここで、該複合体の検出は、ILT4ペプチドまた
はその断片の存在を示す。本発明の1つの実施形態においては、該方法は、インビトロで
、例えば生物学的サンプル、例えば対象の外科摘出片または血液サンプルにおいて行われ
る。もう1つの実施形態においては、該方法はインビボで、例えば対象の体内で行われる
。更にもう1つの実施形態においては、対象はヒトである。
【0051】
発明の詳細な説明
本発明がより容易に理解されうるように、幾つかの科学技術用語を以下に具体的に定義
する。本明細書中の他の箇所で特に定義されていない限り、本明細書中で用いる他の全て
の科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味を有する。
【0052】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書において用いる、“a”、“an”、“the”
のような単数形の語は、文脈に明らかに矛盾しない限り、その対応複数対象物を含む。
【0053】
「アフィニティ」は分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合相手(例えば、抗
原)との間の非共有結合性相互作用の総計の強度を意味する。特に示されていない限り、
本明細書中で用いる「結合アフィニティ」は、結合ペア(例えば、抗体および抗原)のメ
ンバー間の1:1の相互作用を表す固有の結合アフィニティを意味する。分子Xの、その
相手Yに対するアフィニティは、一般に、解離定数(KD)により表されうる。アフィニ
ティは、KinExAおよびBiacoreを含む当技術分野で公知の一般的方法で測定
されうる。
【0054】
本明細書中で用いる「抗体」なる語には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、
多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、完全ヒト抗体およびキメラ抗体が含まれる
が、これらに限定されるものではない。
【0055】
本明細書中で用いる「抗原結合性フラグメント」は、特に示されていない限り、抗体の
抗原結合性フラグメント、すなわち全長抗体により結合される抗原に結合する能力を保有
する抗体フラグメント、例えば1以上のCDR領域を保有するフラグメントを意味する。
抗体結合性フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメン
ト、および個々の抗体重鎖または軽鎖、および個々の重鎖または軽鎖可変領域が含まれる
が、これらに限定されるものではない。
【0056】
「Fabフラグメント」は、1個の軽鎖、ならびに1個の重鎖のCH1および可変領域
から構成される。Fab分子の重鎖は別の重鎖分子とはジスルフィド結合を形成し得ない
。「Fabフラグメント」は抗体のパパイン切断の産物でありうる。
【0057】
「Fc」領域は、抗体のCH1およびCH2ドメインを含む2個の重鎖フラグメントを
含有する。それらの2個の重鎖フラグメントは、2以上のジスルフィド結合により、およ
びCH3ドメインの疎水性相互作用により結合している。
【0058】
「Fab’フラグメント」は、1個の軽鎖、ならびにVHドメインおよびCH1ドメイ
ンを含有する1個の重鎖の部分または断片、そしてまた、CH1およびCH2ドメイン間
の領域を含有し、その結果、2個のFab’フラグメントの2個の重鎖間で鎖間ジスルフ
ィド結合が形成されてF(ab’)2分子を形成しうる。
【0059】
「F(ab’)2フラグメント」は、2個の軽鎖、ならびにCH1およびCH2ドメイ
ン間の定常領域の部分を含有する2個の重鎖を含有し、その結果、それらの2個の重鎖の
間で鎖間ジスルフィド結合が形成される。したがって、F(ab’)2フラグメントは、
それらの2個の重鎖の間のジスルフィド結合により連結された2個のFab’フラグメン
トから構成される。「F(ab’)2フラグメント」は、抗体のペプシン切断の産物であ
りうる。
【0060】
「Fv領域」は重鎖および軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域を欠いている
。
【0061】
「単離された抗体」は精製状態に関するものであり、そのような文脈においては、分子
が、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物のような他の生物学的分子、または細胞残渣およ
び増殖培地のような他の物質を実質的に含有しないことを意味する。一般に、「単離(さ
れた)」なる語は、そのような物質の完全な非存在、または水、バッファーもしくは塩の
非存在を意味するものではなく、ただし、それらは、本明細書に記載されている結合性化
合物の実験的または治療的使用を実質的に妨げる量で存在しないことを要する。
【0062】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」なる語は実質的に均一な抗体の集団を意味
し、すなわち、該集団を構成する抗体分子は、僅かな量で存在しうる考えられうる自然突
然変異以外はアミノ酸配列において同一である。これとは対照的に、通常の(ポリクロー
ナル)抗体調製物は、典型的には異なるエピトープに対して特異的であることが多い可変
ドメイン内に異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含む。修飾語「モノクロー
ナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特性を示しており、いずれ
かの特定の方法による抗体の製造を要すると解釈されるべきではない。例えば、本発明に
従い使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 25
6,495により最初に記載されたハイブリドーマ法により製造可能であり、あるいは組
換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により製造可
能である。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら(1991)
Nature 352:624-628およびMarksら(1991)J.Mol.B
iol 222:581-597に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラ
リーから単離されうる。Presta(2005)J.Allergy Clin.Im
munol.116:731も参照されたい。
【0063】
「完全ヒト抗体」なる語は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味
する。完全ヒト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞において、またはマウス細胞に由来
するハイブリドーマにおいて産生された場合には、マウス炭水化物鎖を含有しうる。同様
に、「マウス抗体」は、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体を意味する。あるいは
、完全ヒト抗体は、ラットにおいて、ラット細胞において、またはラット細胞に由来する
ハイブリドーマにおいて産生された場合には、ラット炭水化物鎖を含有しうる。同様に、
「ラット抗体」は、ラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を意味する。
【0064】
一般に、基本的な「抗体」構造単位は四量体を含む。単一特異性抗体においては、各四
量体は、ポリペプチド鎖の、2つの同一ペアを含み、各ペアは1つの「軽」鎖(約25k
Da)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は
、主に抗原認識をもたらす約100~110個またはそれ以上のアミノ酸の「可変領域」
または「可変ドメイン」を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に
もたらす定常領域を定めうる。
【0065】
典型的には、ヒト軽鎖はカッパおよびラムダ軽鎖として分類される。更に、ヒト定常重
鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され
、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとしての、抗体のアイソタイプ
を定める。これらのIgGのサブタイプには、例えば、IgG1およびIgG4が含まれ
る。本発明は、これらの軽および/または重定常鎖のいずれかを含む抗ILT4抗体およ
び抗原結合性フラグメントを含む。
【0066】
本明細書中で用いる「可変領域」、「可変ドメイン」、「V領域」または「V鎖」は、
異なる抗体間で配列において可変性であるIgG鎖のセグメントを意味する。抗体の「可
変領域」は、単独又は組合されて、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を意味
する。重鎖の可変領域は「VH」と称されうる。軽鎖の可変領域は「VL」と称されうる
。典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変領域は、比較的保存されたフレームワーク領
域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも称される3つの超可変領域を含
む。CDRは、通常、特定のエピトープへの結合が可能になるように、フレームワーク領
域により整列されている。一般に、N末端からC末端方向に、軽鎖および重鎖可変ドメイ
ンの両方は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含
む。各ドメインへのアミノ酸の帰属は、一般に、Sequences of Prote
ins of Immunological Interest,Kabatら;Nat
ional Institutes of Health,Bethesda,Md.;
5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(
1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら(1977)J
.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothiaら(1987)J
Mol.Biol.196:901-917またはChothiaら(1989)Na
ture 342:878-883の定義に基づいている。
【0067】
「CDR」は、抗体V
Hβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超
可変領域(H1、H2またはH3)の1つ、または抗体V
Lβシートフレームワークの非
フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)の1つを意味する。
したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CD
R領域は当業者によく知られており、例えば、抗体可変ドメイン内の最も超可変性の領域
として、Kabat(カバット)によって定義されている。また、保存されたβシートフ
レームワークの一部ではなく、したがって、異なるコンホメーションに適応可能である残
基として、CDR領域配列は、Chothia(チョチア)によって構造的に定義されて
いる。どちらの用語も当技術分野で十分に認識されている。CDR領域配列は、AbM、
ContactおよびIMGTによっても定義されている。標準(カノニカル)抗体可変
領域内のCDRの位置は多数の構造の比較により決定されている(Al-Lazikan
iら,1997,J.Mol.Biol.273:927-48;Moreaら,200
0,Methods 20:267-79)。超可変領域内の残基数は抗体によって異な
るため、標準位置に対する追加的残基には、通常、標準可変領域番号付け法における残基
番号の隣にa、b、cなどの符号が付けられる(Al-Lazikaniら,前掲)。そ
のような命名法も同様に当業者によく知られている。例えば、Kabat番号付けおよび
IMGT固有番号付け系を含む番号付け系の間の対応は当業者によく知られており、以下
の表1に示されている。幾つかの実施形態においては、CDRは、Kabat番号付け系
により定義されているとおりである。他の実施形態においては、CDRは、IMGT番号
付け系により定義されているとおりである。更に他の実施形態においては、CDRは、A
bM番号付け系により定義されているとおりである。更に他の実施形態においては、CD
Rは、Chothia番号付け系により定義されているとおりである。更に他の実施形態
においては、CDRは、Contact番号付け系により定義されているとおりである。
【表1】
【0068】
配列同一性は、2つの配列が最適に整列された場合に同等位置で2つのポリペプチドの
アミノ酸が同一である度合を意味する。
【0069】
配列類似性は、同一残基、および非同一の生化学的に関連したアミノ酸を含む。類似特
性を共有し、互換可能でありうる生化学的に関連したアミノ酸は前記に記載されている。
【0070】
「保存的に修飾された変異体」または「保存的置換」は、タンパク質におけるアミノ酸
が、類似特性(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、バックボーンコンホメーシ
ョンおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換されて、変化が、しばしばタンパク質
の生物活性を変化させることなく行われうることを意味する。一般に、ポリペプチドの非
必須領域における単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変化させない、と当業者は認識
している(例えば、Watsonら(1987)Molecular Biology
of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co
.,p.224(4th Ed.)を参照されたい)。また、構造的または機能的に類似
したアミノ酸の置換は、生物活性を損なう可能性が低い。典型的な保存的置換を表2に示
す。
【0071】
【0072】
本明細書中で用いる「エピトープ」なる語は、抗体または抗原結合性フラグメントが結
合する、抗原上の領域または範囲を意味する。本明細書に開示されている抗体またはその
抗原結合性フラグメントのエピトープへの結合は、抗体またはその抗原結合性フラグメン
トがエピトープ内の1以上のアミノ酸残基に結合することを意味する。
【0073】
「単離された」核酸分子またはポリヌクレオチドは、単離ポリヌクレオチドが天然で見
出される場合のポリヌクレオチドの全部または一部を伴っておらず、あるいはそれが天然
で連結していないポリヌクレオチドに連結している、DNAまたはRNA(例えば、ゲノ
ム、mRNA、cDNAもしくは合成由来またはそれらの何らかの組合せ)を意味する。
本開示の目的において、特定のヌクレオチド配列を「含むポリヌクレオチド」(など)は
無傷染色体を含まない、と理解されるべきである。特定されている核酸配列を「含む」単
離されたポリヌクレオチドは、特定されている配列に加えて、10個まで又は更には20
個まで又はそれ以上の他のタンパク質またはその一部もしくは断片のコード配列を含むこ
とが可能であり、あるいは、挙げられている核酸配列のコード領域の発現を制御する機能
的に連結された調節配列を含むことが可能であり、および/または、ベクター配列を含む
ことが可能である。
【0074】
「制御配列」なる語は、特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の発現
に必要な又は有用なポリヌクレオチド配列を意味する。原核生物に適した制御配列には、
例えば、プロモーター、所望によりオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含ま
れる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを用いる
ことが公知である。本発明の1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモータ
ー、例えばウイルスプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーターまたは非
ウイルスプロモーターまたは伸長因子(EF)-1プロモーター、および/またはイント
ロンに機能的に連結されている。
【0075】
核酸が「機能的に連結」されていると言えるのは、それが別のポリヌクレオチドに対し
て機能的な関係で配置されている場合である。例えば、プレ配列または分泌リーダーのD
NAがポリペプチドのDNAに機能的に連結されていると言えるのは、それがポリペプチ
ドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合であり;プロモーターまたはエ
ンハンサーがコード配列に機能的に連結されていると言えるのは、それが配列の転写に影
響を及ぼす場合であり;あるいは、リボソーム結合部位がコード配列に機能的に連結され
ていると言えるのは、翻訳を促進するようにそれが位置している場合である。一般に(し
かし常にそうである必要はないが)、「機能的に連結(されている)」は、連結されてい
るそれらのポリヌクレオチド配列が連続的であり、分泌リーダーの場合には、連続的であ
り、かつ、リーディングフェーズにおけるものであることを意味する。しかし、エンハン
サーは連続的である必要はない。連結は簡便な制限部位における連結により達成される。
そのような部位が存在しない場合には、通常の慣例に従って合成オリゴヌクレオチドアダ
プターまたはリンカーが使用される。
【0076】
本明細書中で用いる「細胞」、「細胞系」および「細胞培養」なる表現は互換的に用い
られ、全てのそのような表示は後代を含む。したがって、「形質転換体」および「形質転
換細胞」なる語は、導入(トランスファー)の数には無関係に、初代対象細胞、およびそ
れに由来する培養を含む。また、意図的な又は故意でない突然変異ゆえに、全ての後代が
厳密に同一のDNA含量を有するわけではないと理解される。元の形質転換細胞において
スクリーニングされたものと同じ機能または生物活性を有する突然変異体後代も含まれる
。異なる名称が意図される場合、それは文脈から明らかであろう。
【0077】
宿主細胞には、哺乳類細胞を含む真核宿主細胞および原核宿主細胞が含まれる。宿主細
胞は、抗ILT-4抗体およびその抗原結合性フラグメントの発現のための宿主として使
用されうる。宿主細胞には、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、N
SO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(C
OS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞および
HEK-293細胞が含まれる。哺乳類宿主細胞には、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サ
ル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマおよびハムスター細胞が含まれる。使用されうる他の細胞系
としては、昆虫細胞系[例えば、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera
frugiperda)またはトリコプルシア・ニー(Trichoplusia ni
)]、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞および真菌細胞である。真菌細胞には、例えば以
下のものを含む酵母および糸状菌細胞が含まれる:ピチア・パストリス(Pichia
pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica
)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コ
クラメ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラネファシエンス(Pic
hia membranaefaciens)、ピチア・ミヌタ(Pichia min
uta)[オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ
(Pichia lindneri)]、ピチア・オプンチエ(Pichia opun
tiae)、ピチア・テルモトレランス(Pichia thermotolerans
)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルク
ウム(Pichia guercuum)、ピチア・ピエペリ(Pichia pijp
eri)、ピチア・スチプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリ
カ(Pichia methanolica)、ピチア属種(Pichia sp.)、
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、
サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルフ
ァ(Hansenula polymorpha)、クライベロミセス属種(Kluyv
eromyces sp.)、クライベロミセス・ラクチス(Kluyveromyce
s lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、
アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペ
ルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(
Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・レーゼイ(Trichode
rma reesei)、クリソスポリウム・ルックノウエンス(Chrysospor
ium lucknowense)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、フ
ザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネ
ナツム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Ph
yscomitrella patens)およびニューロスポラ・クラッサ(Neur
ospora crassa)、ピチア属種(Pichia sp.)、任意のサッカロ
ミセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Ha
nsenula polymorpha)、任意のクライベロミセス属種(Kluyve
romyces sp.)、カンジダ・アルビカンス(Candida albican
s)、任意のアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、トリコデルマ・
レーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ルックノウエ
ンス(Chrysosporium lucknowense)、任意のフザリウム属種
(Fusarium sp.)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lip
olytica)、およびニューロスポラ・クラッサ(Neurospora cras
sa)。本発明は、抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメントを含有する、ある
いはそのような抗体またはフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含有する、ある
いは該ポリヌクレオチドを含有するベクターを含有する任意の宿主細胞[例えば、CHO
細胞、またはピチア(Pichia)細胞、例えばピチア・パストリス(Pichia
pastoris)]を含む。
【0078】
「治療する」または「治療」は、本発明の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグ
メントを、抗ILT4抗体および抗原結合性フラグメントが有効である疾患の症状の1以
上を有する対象に、例えば、物質が治療活性を示す癌もしくは感染症を有する又は有する
疑いのある対象の治療において投与することを意味する。典型的には、抗体またはフラグ
メントは、いずれかの臨床的に測定可能な度合によるそのような症状の退縮もしくは消失
の誘導またはそのような症状(例えば、癌の症状、例えば、腫瘍の成長または転移)の進
行の抑制により、治療対象または集団における1以上の症状(例えば、癌または感染症)
を軽減する「有効量」または「有効用量」で投与される。抗体またはフラグメントの有効
量は、患者の病期、年齢および体重、ならびに対象において所望の応答を惹起する薬物の
能力のような要因によって変動しうる。
【0079】
本明細書中で用いる「抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント」は、ヒトI
LT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを意味する。
【0080】
本発明は、ILT4に特異的に結合する、本明細書に記載されている抗体およびその抗
原結合性フラグメントを含む。抗体または抗原結合性フラグメントが所定配列(例えば、
ヒトILT4)を含むポリペプチドに「特異的」に結合すると言えるのは、それが約20
nMまたはそれ以上(例えば、約17nM、10nM、5nM、1nM、100pMまた
は1pM)のアフィニティのKDで該配列を含むポリペプチドには結合するが、該配列を
欠くタンパク質には結合しない場合である。例えば、ヒトILT4を含むポリペプチドに
特異的に結合する抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトILT4のFLAG(登録
商標)タグ付き形態には結合しうるが、ILT4配列を欠く他のFLAG(登録商標)タ
グ付きタンパク質には結合しない。
【0081】
ILT4
本発明の1つの実施形態においては、ヒトILT4のアミノ酸配列は以下のアミノ酸配
列を含む。
【化1】
【0082】
本発明のもう1つの実施形態においては、ヒトILT4のアミノ酸配列は、シグナル配
列を含有しない以下のアミノ酸配列を含む。
【化2】
【0083】
本発明のもう1つの実施形態においては、カニクイザルILT4のアミノ酸配列は以下
のアミノ酸配列を含む。
【化3】
【0084】
本発明のもう1つの実施形態においては、ILT4または本明細書に記載されている任
意の他のポリペプチドの発現のためのシグナル配列は、MTPILMVLICLGLSL
GPRTHV(配列番号40のアミノ酸1~21)、または、MTPIVTVLICLG
LSLGPRTHV(配列番号43のアミノ酸1~21)、または、MPLLLLLPL
LWAGALA(配列番号46)である。
【0085】
本発明の1つの実施形態においては、本発明の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フ
ラグメントはILT4の細胞外ドメイン:
QTGTIPKPTLWAEPDSVITQGSPVTLSCQGSLEAQEYRLY
REKKSASWITRIRPELVKNGQFHIPSITWEHTGRYGCQYY
SRARWSELSDPLVLVMTGAYPKPTLSAQPSPVVTSGGRVT
LQCESQVAFGGFILCKEGEEEHPQCLNSQPHARGSSRAIF
SVGPVSPNRRWSHRCYGYDLNSPYVWSSPSDLLELLVPGV
SKKPSLSVQPGPVVAPGESLTLQCVSDVGYDRFVLYKEGE
RDLRQLPGRQPQAGLSQANFTLGPVSRSYGGQYRCYGAHN
LSSECSAPSDPLDILITGQIRGTPFISVQPGPTVASGENV
TLLCQSWRQFHTFLLTKAGAADAPLRLRSIHEYPKYQAEF
PMSPVTSAHAGTYRCYGSLNSDPYLLSHPSEPLELVVSGP
SMGSSPPPTGPISTPAGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRHLGV
(配列番号40のアミノ酸22~461)、またはその免疫グロブリン融合体(例えば、
IgG1またはIgG4)、または細胞の表面上で発現される細胞表面膜貫通(TM)形
態:
QTGTIPKPTLWAEPDSVITQGSPVTLSCQGSLEAQEYRLY
REKKSASWITRIRPELVKNGQFHIPSITWEHTGRYGCQYY
SRARWSELSDPLVLVMTGAYPKPTLSAQPSPVVTSGGRVT
LQCESQVAFGGFILCKEGEEEHPQCLNSQPHARGSSRAIF
SVGPVSPNRRWSHRCYGYDLNSPYVWSSPSDLLELLVPGV
SKKPSLSVQPGPVVAPGESLTLQCVSDVGYDRFVLYKEGE
RDLRQLPGRQPQAGLSQANFTLGPVSRSYGGQYRCYGAHN
LSSECSAPSDPLDILITGQIRGTPFISVQPGPTVASGENV
TLLCQSWRQFHTFLLTKAGAADAPLRLRSIHEYPKYQAEF
PMSPVTSAHAGTYRCYGSLNSDPYLLSHPSEPLELVVSGP
SMGSSPPPTGPISTPAGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRHLGV
VIGILVAVVLLLLLLLLLFLILRHRRQGKH(配列番号40のアミ
ノ酸22~491)に結合する。
【0086】
抗体および抗原結合性フラグメント
本発明は、ILT4に結合する抗体およびその抗原結合性フラグメント(例えば、完全
ヒト抗体)(本明細書においては「抗ILT4」と称される)、ならびに疾患の治療また
は予防における抗体またはその抗原結合性フラグメントの使用方法を提供する。1つの実
施形態においては、本発明は、アンタゴニスト性抗ILT4抗体、および疾患の治療また
は予防における該抗体またはその抗原結合性フラグメントの使用方法を提供する。
【0087】
1つの態様において、本出願は、以下に記載されている特性の1以上を有する本明細書
に記載されている抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。
【0088】
・LYREKKSASW(配列番号59)、TRIRPEL(配列番号60)、NGQ
F(配列番号61)および/またはHTGRYGCQ(配列番号62)における1以上の
アミノ酸残基においてヒトILT4に結合し、および/または、例えば水素-重水素交換
質量分析により測定された場合に、LYREKKSASW(配列番号59)、TRIRP
EL(配列番号60)、NGQF(配列番号61)および/またはHTGRYGCQ(配
列番号62)を重水素(例えば、D
2O)交換から保護し、および/または、本質的には
図1に示されているとおりのヒートマップでILT4に結合する。
【0089】
・ドメイン1においてヒトILT4に結合する(Wilcoxら,BMC Struc
tural Biology 2:6(2002)を参照されたい)。
【0090】
・細胞表面、例えばプレB細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、U937細胞また
はJurkat(ジャーカット)JE6細胞において発現されたILT4のヒトILT4
細胞外ドメインまたはTM形態に結合する。
【0091】
・計算pI約7.29(例えば、7.29または7.30)。
【0092】
・実験的に決定されたpI約7.2。
【0093】
・Tm開始>60℃、Tm1約65.2℃およびTm2約78.8℃を有するサーモグ
ラムにより特徴づけられる。
【0094】
・約1.7×10-8M(例えば、表面プラズモン共鳴、例えば、ポリヒスチジンタグ
付きヒトILT4への抗ILT4の結合により測定されたもの)のKDでヒトILT4に
結合する。
【0095】
・Ka=5.5×105M-1s-1(例えば、表面プラズモン共鳴、例えば、ポリヒ
スチジンタグ付きヒトILT4への抗ILT4の結合により測定されたもの)。
【0096】
・Kd=9×10-3s-1(例えば、表面プラズモン共鳴、例えば、ポリヒスチジン
タグ付きヒトILT4への抗ILT4の結合により測定されたもの)。
【0097】
・HLA-G(例えば、Fc融合HLA-G)の、ヒトILT4(例えば、ILT4で
トランスフェクトされたILT4発現マウス3A9 T細胞上のILT4)への結合を、
例えば約0.25マイクログラム/ml(±0.06マイクログラム/ml)(例えば、
表面プラズモン共鳴により測定された場合)のIC50で遮断する。
【0098】
・HLA-A、HLA-B(例えば、HLA-A、例えばHLA*A2:01またはH
LA-B、例えばHLA*B7:02の蛍光色素標識デキサマー)および/またはHLA
-F(例えば、HLA-Fの蛍光色素標識四量体)の、ILT4(例えば、ILT4でト
ランスフェクトされたILT4発現マウス3A9 T細胞上のILT4)への結合を、例
えば表面プラズモン共鳴により測定された場合に遮断する。
【0099】
・ILT4(例えば、ILT4でトランスフェクトされたILT4発現マウス3A9
T細胞上のILT4)の、ANGPTL1、ANGPTL4および/またはANGPTL
7(例えば、ビオチン化ANGPTLタンパク質)への結合を、例えば表面プラズモン共
鳴により測定された場合に遮断する。
【0100】
・ILT2、ILT3、ILT5、LILRB5、LILRA1、ILILRA2、I
LT7、ILT8および/またはILT11に結合しない。
【0101】
・ILT4トランスフェクト化3A9細胞におけるIL2のILT4媒介性抑制を、例
えば、0.43マイクログラム/ml(±0.14マイクログラム/ml)のEC50で
逆転させる。
【0102】
・マスト細胞脱顆粒のILT4:HLA-G誘導性抑制(例えば、プレート結合HLA
-G四量体の存在下)をレスキューし、例えば、この場合、マスト細胞はILT4および
CD200RLaを発現し、例えば、CD200RLaの抗体媒介性架橋で刺激される。
【0103】
・末梢血単核細胞(PBMC)からの、GM-CSFおよび/またはTNFアルファの
ような炎症誘発性骨髄性サイトカインのリポ多糖(LPS)誘導性発現を増強する。
【0104】
・末梢血単核細胞(PBMC)からの、GM-CSFおよび/またはTNFアルファの
ような炎症誘発性骨髄性サイトカインの抗CD3誘導性発現を増強する。
【0105】
・ヒト、または例えばマウス(例えば免疫不全NSGマウス)のような他の哺乳動物で
あって、ヒト造血幹細胞で再構成されたもの、例えば、ヒト末梢血CD45+ 免疫細胞
を含むもの、例えば、細胞系SKMEL5由来のようなヒト皮膚メラノーマ腫瘍である腫
瘍を有するものにおける、腫瘍成長を抑制する。
【0106】
・腫瘍を有する対象(例えば、ヒト対象)の身体における、マクロファージ/骨髄由来
抑制細胞(MDSC)媒介性腫瘍耐性を軽減する。
【0107】
・カニクイザルILT4および/またはマウスpirBに結合しない。および/または
・CD14+ ヒト単球および/またはCD11B+ ヒト顆粒球を染色する。
【0108】
・表7に記載されているヒトILT4ハプロタイプの1以上(例えば、1、2、3、4
、5、6、7、8、9または10個全て)に結合する。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
1E1重鎖および軽鎖CDRまたは1E1 V
HおよびV
Lまたは1E1重鎖および軽
鎖(またはその変異体、例えば、本明細書に記載されているもの)を含む抗体およびその
抗原結合性フラグメントは、「1E1」と称されうる。
【化5】
【0117】
【0118】
本発明は、配列番号8、9、10、64、65または66の残基1がEではなくQであ
る、抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。
【化6】
【0119】
本発明は、配列番号11または74の残基1がQではなくEである、抗体およびその抗
原結合性フラグメントを含む。
【0120】
2A6軽鎖CDR
CDR-L1:TLRSGINVDTYRIH(配列番号25)
CDR-L2:YKSDSDKHQGS(配列番号26)
CDR-L3:AIWYSSTWV(配列番号27)。
【0121】
2A6重鎖および軽鎖CDR、または、2A6 V
HおよびV
L、または、2A6重鎖
および軽鎖(またはその変異体、例えば、本明細書に記載されているもの)を含む抗体お
よびその抗原結合性フラグメントは、「2A6」と称されうる。
【化7】
【0122】
本発明は、配列番号12または67の残基1がEではなくQである、抗体およびその抗
原結合性フラグメントを含む。
【0123】
3G7重鎖CDR
CDR-H1:SYAMH(配列番号28)
CDR-H2:VISYDGSNKYYADSVKG(配列番号29)
CDR-H3:VGEWIQLWSPFDY(配列番号30)
【化8】
【0124】
3G7軽鎖CDR
CDR-L1:RASQGISSWLA(配列番号31)
CDR-L2:AASSLQS(配列番号32)
CDR-L3:QQYNSYPPT(配列番号33)。
【0125】
3G7重鎖および軽鎖CDR、または、3G7 V
HおよびV
L、または、3G7重鎖
および軽鎖(またはその変異体、例えば、本明細書に記載されているもの)を含む抗体お
よびその抗原結合性フラグメントは、「3G7」と称されうる。
【化9】
【0126】
本発明は、配列番号14または68の残基1がEではなくQである、抗体およびその抗
原結合性フラグメントを含む。
【0127】
2C1重鎖CDR
CDR-H1:ELSMH(配列番号34)
CDR-H2:GFDPEDGETIYAQKFQG(配列番号35)
CDR-H3:AGPLYTIFGVVIIPDNWFDP(配列番号36)
【化10】
【0128】
本発明は、配列番号15または76の残基1がEではなくQである、抗体およびその抗
原結合性フラグメントを含む。
【0129】
2C1軽鎖CDR
CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号37)
CDR-L2:GNSNRPS(配列番号38)
CDR-L3:QSYDSSLSGSGVV(配列番号39)。
【0130】
2C1重鎖および軽鎖CDR、または、2C1 VHおよびVL、または、2C1重鎖
および軽鎖(またはその変異体、例えば、本明細書に記載されているもの)を含む抗体お
よびその抗原結合性フラグメントは、「2C1」と称されうる。
【0131】
抗体またはその抗原結合性フラグメントの種々の実施形態においては、重鎖免疫グロブ
リンのC末端リジンが存在しない。
【0132】
したがって、幾つかの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは
、軽鎖免疫グロブリン、重鎖免疫グロブリンもしくは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロ
ブリンとの両方を含み、ここで、軽鎖免疫グロブリンは、配列番号3、4、5、6、7、
11、13、15もしくは45に記載されているアミノ酸配列を含み、および/または、
重鎖免疫グロブリンは、配列番号1、2、8、9、10、12、14、44、79、80
、81、82、83、84、85もしくは86に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0133】
ある実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1また
は79に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番号3に
記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0134】
幾つかの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号2
または80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番号
4に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0135】
他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号2また
は80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番号5に
記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0136】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号2
または80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番号
6に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0137】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号2
または80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番号
7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0138】
ある実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号2また
は80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番号3に
記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0139】
幾つかの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号8
または82に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番号
11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0140】
他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号9また
は83に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番号11
に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0141】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1
0または84に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番
号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0142】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1
2または85に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番
号13に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0143】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1
4または86に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、および、配列番
号15に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0144】
ある他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、軽鎖免疫グ
ロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリンとの両方
を含み、ここで、軽鎖可変ドメインは、配列番号70、71、72、73、58、74、
75、76もしくは77に記載されているアミノ酸配列を含み、および/または、重鎖可
変ドメインは、配列番号63、57、64、65、66、67、68もしくは69に記載
されているアミノ酸配列を含む。
【0145】
ある実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号63に
記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号70に記載され
ているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0146】
幾つかの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号5
7に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号71に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0147】
他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号57に
記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号72に記載され
ているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0148】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号5
7に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号73に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0149】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号5
7に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号58に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0150】
ある実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号57に
記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号70に記載され
ているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0151】
幾つかの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号6
4に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号74に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0152】
他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号65に
記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号74に記載され
ているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0153】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号6
6に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号74に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0154】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号6
7に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号75に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0155】
更に他の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号6
8に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および、配列番号76に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0156】
もう1つの実施形態においては、ILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグ
メントは、1E1のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、配列番号
19~21)を含む免疫グロブリン軽鎖可変(VL)ドメイン、ならびに、1E1のCD
R-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、配列番号16~18)を含む免疫
グロブリン重鎖可変(VH)ドメインを含む。
【0157】
もう1つの実施形態においては、ILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグ
メントは、2A6のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、配列番号
25~27)を含む免疫グロブリン軽鎖可変(VL)ドメイン、ならびに、2A6のCD
R-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、配列番号22~24)を含む免疫
グロブリン重鎖可変(VH)ドメインを含む。
【0158】
もう1つの実施形態においては、ILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグ
メントは、3G7のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、配列番号
31~33)を含む免疫グロブリン軽鎖可変(VL)ドメイン、ならびに、3G7のCD
R-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、配列番号28~30)を含む免疫
グロブリン重鎖可変(VH)ドメインを含む。
【0159】
もう1つの実施形態においては、ILT4に結合する抗体またはその抗原結合性フラグ
メントは、2C1のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、配列番号
37~39)を含む免疫グロブリン軽鎖可変(VL)ドメイン、ならびに、2C1のCD
R-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、配列番号34~36)を含む免疫
グロブリン重鎖可変(VH)ドメインを含む。
【0160】
1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1:G
YYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS(配列番
号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVH
ドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号49)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0161】
もう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS(配
列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列
番号19)、CDR-L2:GQSNRPS(配列番号50)およびCDR-L3:QS
FDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0162】
更にもう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS
(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(
配列番号19)、CDR-L2:GESNRPS(配列番号51)およびCDR-L3:
QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0163】
更にもう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS
(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(
配列番号19)、CDR-L2:GDSNRPS(配列番号52)およびCDR-L3:
QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0164】
1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1:G
YYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS(配列番
号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVH
ドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GNANRPS(配列番号53)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0165】
もう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS(配
列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列
番号19)、CDR-L2:GQANRPS(配列番号54)およびCDR-L3:QS
FDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0166】
更にもう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS
(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(
配列番号19)、CDR-L2:GEANRPS(配列番号55)およびCDR-L3:
QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0167】
更にもう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS
(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(
配列番号19)、CDR-L2:GDANRPS(配列番号56)およびCDR-L3:
QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0168】
1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1:G
YYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS(配列番
号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVH
ドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号49)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0169】
もう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS(配
列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列
番号19)、CDR-L2:GQSNRPS(配列番号50)およびCDR-L3:QS
FDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0170】
更にもう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS
(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(
配列番号19)、CDR-L2:GESNRPS(配列番号51)およびCDR-L3:
QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0171】
更にもう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-
H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS
(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を
含むVHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(
配列番号19)、CDR-L2:GDSNRPS(配列番号52)およびCDR-L3:
QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0172】
1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1:G
YYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS(配列番
号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVH
ドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GNANRPS(配列番号53)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0173】
1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1:G
YYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS(配列番
号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVH
ドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GQANRPS(配列番号54)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0174】
更に1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS(配
列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列
番号19)、CDR-L2:GEANRPS(配列番号55)およびCDR-L3:QS
FDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0175】
更に1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、CDR-H1
:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSLKS(配
列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含む
VHドメイン、ならびに/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列
番号19)、CDR-L2:GDANRPS(配列番号56)およびCDR-L3:QS
FDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0176】
本発明は更に、ILT4に結合し、抗体1E1のVLドメイン(例えば、配列番号70
、71、72、73、58または77)および/または抗体1E1のVHドメイン(例え
ば、配列番号63、57または69)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提
供する。
【0177】
本発明は更に、ILT4に結合し、抗体2A6のVLドメイン(例えば、配列番号74
)および/または抗体2A6のVHドメイン(例えば、配列番号64、65または66)
を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。
【0178】
本発明は更に、ILT4に結合し、抗体3G7のVLドメイン(例えば、配列番号75
)および/または抗体3G7のVHドメイン(例えば、配列番号67)を含む抗体または
その抗原結合性フラグメントを提供する。
【0179】
本発明は更に、ILT4に結合し、抗体2C1のVLドメイン(例えば、配列番号76
)および/または抗体2C1のVHドメイン(例えば、配列番号68)を含む抗体または
その抗原結合性フラグメントを提供する。
【0180】
本発明は更に、ILT4に結合し、抗体1E1の軽鎖免疫グロブリン(例えば、配列番
号3、4、5、6、7または45)および/または抗体1E1の重鎖免疫グロブリン(例
えば、配列番号1、2、44、79、80または81)を含む抗体またはその抗原結合性
フラグメントを提供する。
【0181】
本発明は更に、ILT4に結合し、抗体2A6の軽鎖免疫グロブリン(例えば、配列番
号11)および/または抗体2A6の重鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号8、9、1
0、82、83または84)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。
【0182】
本発明は更に、ILT4に結合し、抗体3G7の軽鎖免疫グロブリン(例えば、配列番
号13)および/または抗体3G7の重鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号12または
85)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。
【0183】
本発明は更に、ILT4に結合し、抗体2C1の軽鎖免疫グロブリン(例えば、配列番
号15)および/または抗体2C1の重鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号14または
86)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。
【0184】
本発明は更に、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる抗体を提供し、ここで、各軽鎖は
抗体1E1、2A6、3G7または2C1のVLまたは軽鎖免疫グロブリンを含み、各重
鎖は抗体1E1、2A6、3G7または2C1のVHまたは重鎖免疫グロブリンを含む。
【0185】
1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで、各
軽鎖は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含み、各重鎖は、配列番号57に
記載されているアミノ酸配列を含む。
【0186】
もう1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで
、各軽鎖は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含み、各重鎖は、配列番号5
7に記載されているアミノ酸配列を含み、ここで、軽鎖は更に、配列番号90に記載され
ているアミノ酸配列を含む。
【0187】
更にもう1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、こ
こで、各軽鎖は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含み、各重鎖は、配列番
号57に記載されているアミノ酸配列を含み、ここで、重鎖は更に、配列番号89に記載
されているアミノ酸配列を含む。
【0188】
更にもう1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、こ
こで、各軽鎖は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を含み、各重鎖は、配列番
号57に記載されているアミノ酸配列を含み、ここで、軽鎖は更に、配列番号90に記載
されているアミノ酸配列を含み、重鎖は更に、配列番号89に記載されているアミノ酸配
列を含む。
【0189】
1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで、各
軽鎖は、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含み、各重鎖は、配列番号2に記載
されているアミノ酸配列を含む。
【0190】
もう1つの実施形態においては、抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで
、各軽鎖は、配列番号7に記載されているアミノ酸配列からなり、各重鎖は、配列番号2
に記載されているアミノ酸配列からなる。
【0191】
本発明の1つの実施形態においては、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、
ILT4に尚も結合する一方で、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個
またはそれ以上の保存的または非保存的アミノ酸置換を有するVL(シグナル配列を含有
する又は含有しない)、例えば、配列番号58または70~77のいずれかにおけるVL
を含み、および/または、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または
それ以上の保存的または非保存的アミノ酸置換を有するVH(シグナル配列を含有する又
は含有しない)、例えば、配列番号57または63~69のいずれかにおけるVHを含む
。
【0192】
本発明はまた、本明細書に開示されているアミノ酸配列、例えば配列番号1~39、4
4、45、47~58、63~77または79~86を含むポリペプチド、ならびにそれ
らにおける多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20個ま
たはそれ以上の保存的または非保存的アミノ酸置換までのアミノ酸配列を有するそのよう
なアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0193】
ある実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、軽鎖免疫グロブ
リン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリンとの両方を含
み、ここで、軽鎖免疫グロブリンは、配列番号3、4、5、6、7、11、13、15も
しくは45に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一
性を有し、および/または、重鎖免疫グロブリンは、配列番号1、2、8、9、10、1
2、14、44、79、80、81、82、83、84、85もしくは86に記載されて
いるアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0194】
幾つかの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、軽鎖免疫グ
ロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリンとの両方
を含み、ここで、軽鎖免疫グロブリンは、配列番号70、71、72、73、58、74
、75、76もしくは77に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%のア
ミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含み、および/または、重鎖免疫グロブリ
ンは、配列番号63、57、64、65、66、67、68もしくは69に記載されてい
るアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変ドメイ
ンを含む。
【0195】
本発明の1つの実施形態においては、本発明の抗ILT4抗体または抗原結合性フラグ
メントの免疫グロブリン重鎖は、例えばアミノ酸配列MEWSWVFLFFLSVTTG
VHS(配列番号41)を含むシグナル配列に機能的に連結されており、および/または
、本発明の抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメントの免疫グロブリン軽鎖は、例え
ばアミノ酸配列MSVPTQVLGLLLLWLTDARC(配列番号42)を含むシグ
ナル配列に機能的に連結されている。
【0196】
本発明の1つの実施形態においては、本明細書に記載されている免疫グロブリン鎖(例
えば、重鎖および/または軽鎖)のN末端グルタミン(Q)は、ピログルタミン酸により
置換されている。1つの実施形態においては、重鎖免疫グロブリンのN末端Qは、ピログ
ルタミン酸により置換されている。もう1つの実施形態においては、軽鎖免疫グロブリン
のN末端Qは、ピログルタミン酸により置換されている。更にもう1つの実施形態におい
ては、重鎖免疫グロブリンのN末端Qおよび重鎖免疫グロブリンのN末端Qは、ピログル
タミン酸により置換されている。
【0197】
本明細書は更に、本明細書で開示されている任意の抗ILT4抗体またはその抗原結合
性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7または2C1)と同じ、ILT4(例
えば、ヒトILT4)のエピトープに結合する抗体または抗原結合性フラグメントを提供
する。1つの実施形態においては、該エピトープはLYREKKSASW(配列番号59
)である。もう1つの実施形態においては、該エピトープはTRIRPEL(配列番号6
0)である。更にもう1つの実施形態においては、該エピトープはNGQF(配列番号6
1)である。更にもう1つの実施形態においては、該エピトープはHTGRYGCQ(配
列番号62)である。ある実施形態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメン
トは、それぞれ配列番号1および3、2および4、2および5、2および6、2および7
、2および3、8および11、9および11、10および11、12および13、14お
よび15、79および3、80および4、80および5、80および6、80および7、
80および3、82および11、83および11、84および11、85および13なら
びに86および15に記載されている重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む抗体またはその
抗原結合性フラグメントと同じ、ヒトILT4のエピトープに結合する。幾つかの実施形
態においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、それぞれ配列番号63およ
び70、57および71、57および72、57および73、57および58、57およ
び70、64および74、65および74、66および74、67および75、68およ
び76に記載されている重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗
体またはその抗原結合性フラグメントと同じヒトILT4のエピトープに結合する。
【0198】
本発明は、本明細書に開示されている任意の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラ
グメント(例えば、1E1、2A6、3G7または2C1)の、ILT4(例えば、ヒト
ILT4)への結合を交差遮断する、あるいは本明細書に開示されている任意の抗ILT
4抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7または2C
1)と、ILT4(例えば、ヒトILT4)に関して競合する抗体および抗原結合性フラ
グメントを含む。本明細書に記載されている交差遮断性抗体およびその抗原結合性フラグ
メントは、結合アッセイ(例えば、バイオレイヤーインターフェロメトリー(BLI;例
えば、FORTEBIO OCTET結合アッセイ;Pall ForteBio Co
rp;Menlo Park,CA)、表面プラズモン共鳴(SPR)、BIACore
、ELISA、フローサイトメトリー)において、本明細書に具体的に記載されている抗
体またはフラグメントのいずれかがILT4に結合するのを遮断するそれらの能力に基づ
いて特定されうる。例えば、本発明の1つの実施形態においては、BLIを使用する場合
、光ファイバープローブの先端をリガンド(例えば、ILT4)でコーティングし、バイ
オセンサーとして作用させ、この場合、抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメン
トの、ILT4への結合は、ILT4に結合したプローブ層および内部基準層から反射し
た白色光の干渉パターンを変化させる。このシフト(変化)はILT4/抗ILT4結合
を示す。本発明の1つの実施形態においては、ILT4でコーティングされた先端を、例
えば96ウェルまたは384ウェルプレートのウェル内で、抗体または抗原結合性フラグ
メントを含有するアナライトの溶液に浸漬する。本発明の1つの実施形態においては、プ
レートを読取り中に振とうしてオービタル・フロー(orbital flow)を生成
させる。アッセイを読取るために、白色光をファイバーの長さの方向に下に向ける。前記
のとおり、先端のILT4を含有する固定化表面および基準層で反射する光の間の干渉は
、ファイバーを通って上へ戻ってくる光の特徴的パターンを生成する。分子が固定化セン
サー表面に結合するにつれて、そのパターンは結合の度合に比例して変化する。例えば、
BLIプローブまたはプレート上にILT4(例えば、ヒトILT4)タンパク質を固定
化し、基準抗ILT4抗体またはフラグメントを(例えば、飽和濃度で)ILT4に結合
させ、試験抗ILT4抗体またはフラグメントを加えるアッセイが用いられうる。ついで
、ILT4結合に関して試験抗体が基準抗体と競合する能力を測定する。BLI方式にお
いては、ILT4複合体の光干渉をモニターして、試験抗体が基準抗体と有効に競合する
かどうかを決定する。例えば、経時的な数ナノメートルの光波長シフトをモニターし、こ
こで、シフトは試験抗体の追加的結合および交差遮断の欠如を示す。本発明の1つの実施
形態においては、BLI方式において、試験抗体の追加的結合が観察されないならば、抗
体間で交差遮断が生じたと定性的にみなされる。本発明の1つの実施形態においては、対
照として、基準抗体のそれ自体との交差遮断を確認する。この場合、基準抗体がそれ自体
をILT4結合から交差遮断しうるならば、アッセイは適切に機能していると判断される
。試験抗体がILT4(例えば、ヒトILT4)への例えば抗ILT4抗体またはフラグ
メント1E1、2A6、3G7または2C1の結合を抑制しうることは、試験抗体がIL
T4(例えば、ヒトILT4)への結合に関して抗体またはフラグメントを交差遮断する
ことが可能であり、したがって、幾つかの場合には、1E1、2A6、3G7および/ま
たは2C1と同じ、ILT4(例えば、ヒトILT4)上のエピトープに結合しうること
を証明している。前記のとおり、本発明の抗ILT4抗体またはフラグメントのいずれか
と同じエピトープに結合する抗体およびフラグメントも本発明の一部を構成する。本発明
の1つの実施形態においては、BL1をサンドイッチ方式で行い、この場合、基準抗IL
T4抗体または抗原結合性フラグメントをプローブに固定化し、ついでILT4に結合さ
せる。ついで試験抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメントを、該基準抗体またはフ
ラグメントの結合を遮断する能力に関して試験する。
【0199】
ある実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、それぞれ配列番
号1および3、2および4、2および5、2および6、2および7、2および3、8およ
び11、9および11、10および11、12および13、14および15、79および
3、80および4、80および5、80および6、80および7、80および3、82お
よび11、83および11、84および11、85および13ならびに86および15に
記載されている重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む抗体またはフラグメントと、ヒトIL
T4への結合に関して競合する。幾つかの実施形態においては、抗体またはその抗原結合
性フラグメントは、それぞれ配列番号63および70、57および71、57および72
、57および73、57および58、57および70、64および74、65および74
、66および74、67および75、68および76に記載されている重鎖可変ドメイン
および軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体またはフラグメントと、ヒトILT4へ
の結合に関して競合する。
【0200】
本発明は、チャイニーズハムスター卵巣細胞において産生される免疫グロブリン(CH
O N結合グリカン)に又は操作された酵母細胞(操作された酵母N結合グリカン)、例
えばピチア・パストリス(Pichia pastoris)に典型的に付加されるN結
合グリカンを含む抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。例えば、本
発明の1つの実施形態においては、抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメントは
、
図16に記載されている「操作された酵母N結合グリカン」または「CHO N結合グ
リカン」(例えば、G0および/またはG0-Fおよび/またはG1および/またはG1
-Fおよび/またはG2-Fおよび/またはMan5)の1以上を含む。本発明の1つの
実施形態においては、抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメントは、操作された
N結合グリカン、すなわち、G0および/またはG1および/またはG2を含み、所望に
より、Man5を更に含みうる。本発明の1つの実施形態においては、抗ILT4抗体お
よびその抗原結合性フラグメントは、CHO N結合グリカン、すなわち、G0-F、G
1-FおよびG2-Fを含み、所望により、G0および/またはG1および/またはG2
および/またはMan5を更に含みうる。本発明の1つの実施形態においては、抗ILT
4抗体およびその抗原結合性フラグメント免疫グロブリン鎖上の全てのN結合グリカンの
約80%~約95%(例えば、約80~90%、約85%、約90%または約95%)が
、操作された酵母N結合グリカンまたはCHO N結合グリカンである。Nettら,Y
east.28(3):237-252(2011);Hamiltonら,Scien
ce.313(5792):1441-1443(2006);Hamiltonら,C
urr Opin Biotechnol.18(5):387-392(2007)を
参照されたい。例えば、本発明の1つの実施形態においては、操作された酵母細胞は、G
FI5.0またはYGLY8316、または米国特許第7,795,002号またはZh
aら,Methods Mol Biol.988:31-43(2013)に記載され
ている株である。国際特許出願公開番号WO2013/066765も参照されたい。
【0201】
ポリヌクレオチド
本発明は、本明細書に開示されている抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメン
トの免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNAまたはRNA)を
含む。例えば、本発明は、本明細書に記載されている抗体1E1、2A6、3G7および
2C1(例えば、配列番号1~15、44および45またはそれらの可変ドメイン)の免
疫グロブリン重鎖および/または軽鎖をコードする核酸ならびにそれらにハイブリダイズ
する核酸を含む。
【0202】
本発明は、1E1のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、配列番
号19~21に記載されているアミノ酸を含む)を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメイン、
および/または、1E1のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、配
列番号16~18に記載されているアミノ酸を含む)を含む抗体重鎖可変(VH)ドメイ
ン、をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0203】
本発明は、2A6のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、配列番
号25~27に記載されているアミノ酸を含む)を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメイン、
および/または、2A6のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、配
列番号22~24に記載されているアミノ酸を含む)を含む抗体重鎖可変(VH)ドメイ
ン、をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0204】
本発明は、3G7のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、配列番
号31~33に記載されているアミノ酸を含む)を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメイン、
および/または、3G7のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、配
列番号28~30に記載されているアミノ酸を含む)を含む抗体重鎖可変(VH)ドメイ
ン、をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0205】
本発明は、2C1のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3(例えば、配列番
号37~39に記載されているアミノ酸を含む)を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメイン、
および/または、2C1のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3(例えば、配
列番号34~36に記載されているアミノ酸を含む)を含む抗体重鎖可変(VH)ドメイ
ン、をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0206】
本発明は、抗体1E1のVLドメイン(例えば、配列番号70、71、72、73、5
8または77)、および/または、抗体1E1のVHドメイン(例えば、配列番号63、
57または69)、をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0207】
本発明は、抗体2A6のVLドメイン(例えば、配列番号74)、および/または、抗
体2A6のVHドメイン(例えば、配列番号64、65または66)、をコードするポリ
ヌクレオチドを含む。
【0208】
本発明は、抗体3G7のVLドメイン(例えば、配列番号75)、および/または、抗
体3G7のVHドメイン(例えば、配列番号67)、をコードするポリヌクレオチドを含
む。
【0209】
本発明は、抗体2C1のVLドメイン(例えば、配列番号76)、および/または、抗
体2C1のVHドメイン(例えば、配列番号68)、をコードするポリヌクレオチドを含
む。
【0210】
本発明は、抗体1E1の軽鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号3、4、5、6、7ま
たは45)、および/または、抗体1E1の重鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号1、
2または44)、をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0211】
本発明は、抗体2A6の軽鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号11)、および/また
は、抗体2A6の重鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号8、9または10、)をコード
するポリヌクレオチドを含む。
【0212】
本発明は、抗体3G7の軽鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号13)、および/また
は、抗体3G7の重鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号12)、をコードするポリヌク
レオチドを含む。
【0213】
本発明は、抗体2C1の軽鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号15)、および/また
は、抗体2C1の重鎖免疫グロブリン(例えば、配列番号14)、をコードするポリヌク
レオチドを含む。
【0214】
1つの特定の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、配列番号87に記載されてい
るヌクレオチド配列を含む。もう1つの特定の実施形態においては、該ポリヌクレオチド
は、配列番号88に記載されているヌクレオチド配列を含む。更にもう1つの実施形態に
おいては、該ポリヌクレオチドは、配列番号87に記載されているヌクレオチド配列およ
び配列番号88に記載されているヌクレオチド配列を含む。
【0215】
本発明はまた、本発明の単離された核酸を含む発現ベクターを提供し、ここで、該核酸
は1以上の制御配列に機能的に連結されており、例えば、該ベクターで宿主細胞がトラン
スフェクトされた場合に宿主細胞により認識される1以上の制御配列に機能的に連結され
ている。本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。ある実施形態においては、宿
主細胞はCHO細胞である。
【0216】
抗体およびその抗原結合性フラグメントの製造方法
本明細書に開示されている抗ILT4抗体および抗原結合性フラグメント(例えば、1
E1、2A6、3G7および/または2C1)は、組換え的に製造されうる。この実施形
態においては、本発明の抗体および抗原結合性フラグメントの免疫グロブリン鎖(例えば
、配列番号1~15、44、45または79~86のいずれか、あるいは配列番号57、
58、63~77のいずれかに記載されている1E1、2A6、3G7または2C1のV
HまたはVLを含むもの)の1以上をコードする核酸をベクターおよび/または宿主細胞
染色体内に挿入し、組換え宿主細胞において発現させ得る。組換え抗体を製造するための
幾つかの方法が当技術分野で公知である。
【0217】
抗体(例えば、1E1、2A6、3G7または2C1)は、標準的なタンパク質精製方
法を用いて培地から回収されうる。更に、生産細胞系からの本発明の免疫グロブリン鎖の
発現は、幾つかの公知技術により増強されうる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子
発現系(GS系)は、一定条件下で発現を増強するための一般的アプローチである。本発
明は、免疫グロブリン鎖およびグルタミンシンテターゼ(GS)遺伝子の1以上をコード
する1以上のポリヌクレオチドを含むベクターを含む。本発明の1つの実施形態において
は、該ベクターは、機能的グルタミンシンテターゼを欠く宿主細胞内に存在する。本発明
の1つの実施形態においては、宿主細胞は、グルタミンを実質的に欠く培地内に存在する
。グルタミンを実質的に欠く培地においてそのような宿主細胞を培養することを含む、そ
のような免疫グロブリン鎖または抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメントの1
以上の製造方法は、そのような方法により製造されたそのような鎖、抗体およびフラグメ
ントと同様に、本発明の範囲内である。
【0218】
一般に、特定の細胞系またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質
は、該細胞系またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質に特徴的な
グリコシル化パターンを有する。したがって、免疫グロブリン鎖または抗体または抗原結
合性フラグメント(免疫グロブリン鎖を含有するもの)の特定のグリコシル化パターンは
、該抗体を製造するために使用される特定の細胞系またはトランスジェニック動物に依存
する。非フコシル化N-グリカンのみを含むグリコシル化パターンを有する抗体および抗
原結合性フラグメントが有利であり、なぜなら、これらの抗体および抗原結合性フラグメ
ントは、インビトロおよびインビボの両方において、それらのフコシル化対応物より高い
効力を典型的に示すことが示されているからである(例えば、Shinkawaら,J.
Biol.Chem.278:3466-3473(2003);米国特許第6,946
,292号および第7,214,775号を参照されたい)。非フコシル化N-グリカン
を有するこれらの抗ILT4抗体および抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A
6、3G7または2C1)は本発明の一部である。
【0219】
本発明は更に、本明細書に開示されている抗ILT4抗体(例えば、1E1、2A6、
3G7または2C1)の抗体フラグメントを含む。該抗体フラグメントにはF(ab)2
フラグメントが含まれ、これは例えばペプシンによるIgGの酵素的切断により製造され
うる。Fabフラグメントは、例えば、ジチオトレイトールまたはメルカプトエチルアミ
ンでのF(ab)2の還元により製造されうる。Fabフラグメントは、ジスルフィド架
橋によりVH-CH1鎖に連結されたVL-CL鎖である。F(ab)2フラグメントは
、今度は2つのジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントである。F
(ab)2分子のFab部分は、ジスルフィド架橋が間に位置しているFc領域の部分を
含む。FVフラグメントはVLまたはVH領域である。
【0220】
本発明は、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMのものである抗ILT4抗体
およびその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7または2C1)を
含む。1つの実施形態においては、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメントは、本
明細書に記載されているVH、および、重鎖定常領域、例えばヒト定常領域、例えばγ1
、γ2、γ3もしくはγ4ヒト重鎖定常領域またはそれらの変異体を含む。本発明の1つ
の実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、本明細書に記載されて
いるVH、および、軽鎖定常領域、例えばヒト軽鎖定常領域、例えばラムダもしくはカッ
パヒト軽鎖領域またはそれらの変異体を含む。例えば、限定的なものではないが、ヒト重
鎖定常領域はγ1またはγ4であることが可能であり、ヒト軽鎖定常領域はカッパである
ことが可能である。例えば、限定的なものではないが、ヒト重鎖定常領域はγ1またはγ
4であることが可能であり、ヒト軽鎖定常領域はラムダであることが可能である。本発明
の1つの実施形態においては、該抗体のFc領域は、Ser228Pro突然変異を有す
るγ4である(Schuurman,Jら,Mol.Immunol.38:1-8,2
001)。
【0221】
本発明の幾つかの実施形態においては、異なる定常ドメインが、本発明で提供されるC
DRに由来するVLおよびVH領域に連結されうる。例えば、本発明の抗体または抗原結
合性フラグメントの特定の意図される使用がエフェクター機能の改変を求めるものである
場合には、ヒトIgG1以外の重鎖定常ドメインが使用可能であり、あるいはハイブリッ
ドIgG1/IgG4が使用可能である。IgG1およびIgG4定常ドメインを含むそ
のような抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、
3G7または2C1)およびそれらのハイブリッドは、本発明の一部である。
【0222】
1つの実施形態においては、IgG4定常ドメインはEU系における228位およびK
ABAT系における241位に対応する位置において天然ヒトIgG4定常ドメイン(S
wiss-Protアクセッション番号P01861.1)とは異なることが可能であり
、この場合、適切な鎖内ジスルフィド結合形成を妨げうるCys106およびCys10
9(EU系におけるCys226およびCys229位ならびにKABAT系におけるC
ys239およびCys242位に対応する)間の潜在的鎖間ジスルフィド結合を妨げる
ために、天然Ser108はProにより置換される。Angalら(1993)Mol
.Imunol.30:105を参照されたい。他の場合においては、半減期を増加させ
るために又はエフェクター機能を低減するために、修飾された修飾IgG1定常ドメイン
が使用されうる。修飾されたIgG4定常ドメインを含むそのような抗ILT4抗体およ
びその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7または2C1)は本発
明の一部である。
【0223】
本発明は、本発明の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E
1、2A6、3G7または2C1)またはその免疫グロブリン鎖の組換え製造方法を含み
、該製造方法は、(i)該抗体またはフラグメントの免疫グロブリン鎖(例えば、配列番
号1~15、44および/45に記載されている配列の任意の1以上を含むアミノ酸配列
を含むもの)の1以上をコードするポリヌクレオチドを導入し、ここで、該ポリヌクレオ
チドはベクター中に存在し、および/または、プロモーター(例えば、ウイルスプロモー
ター、CMVプロモーターまたはSV40プロモーター)に機能的に連結されており、(
ii)ポリヌクレオチドの発現に好ましい条件下、宿主細胞[例えば、哺乳類宿主細胞、
真菌宿主細胞、細菌宿主細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO細胞
、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS
)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、HEK-
293細胞、ピチア(Pichia)細胞またはピチア・パストリス(Pichia p
astoris)細胞]を培養し、そして、(iii)所望により、該宿主細胞から、お
よび/または該宿主細胞を増殖させた培地から、該抗体またはフラグメントまたは鎖を単
離する、ことを含む。2以上の免疫グロブリン鎖を含む抗体または抗原結合性フラグメン
ト、例えば、2個の免疫グロブリン重鎖と2個の免疫グロブリン軽鎖とを含む抗体を製造
する場合、単一の宿主細胞における鎖の共発現は、例えば細胞内または細胞表面上または
細胞の外部(そのような鎖が分泌される場合)において、鎖の会合をもたらして、該抗体
または抗原結合性フラグメント分子を形成する。本発明の方法は、免疫グロブリン重鎖の
み又は免疫グロブリン軽鎖(例えば、成熟フラグメントおよび/またはその可変ドメイン
を含む本明細書に記載されているもののいずれか)のみを発現させる方法を含む。そのよ
うな鎖は、例えば、そのような鎖を含む抗体または抗原結合性フラグメントの発現におけ
る中間体として有用である。
【0224】
Fc領域の抗体操作
本発明の抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6
、3G7および/または2C1)はまた、Fc領域内の修飾を含むように、典型的には、
抗体の機能特性、例えば血清半減期、補体固定、Fc受容体結合および/またはエフェク
ター機能(例えば、抗原依存性細胞傷害性)の1以上を変化させるために操作されうる。
更に、本明細書に開示されている抗体およびフラグメントは化学的に修飾可能であり(例
えば、1以上の化学的部分が抗体に結合可能である)、あるいは、再び抗体またはフラグ
メントの機能特性の1以上を変化させるために、そのグリコシル化を改変するように修飾
されうる。これらの実施形態のそれぞれは後記に更に詳細に記載されている。Fc領域内
の残基の番号付けはKabatのEUインデックスのものである。
【0225】
本明細書に開示されている抗体およびその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、
2A6、3G7および/または2C1)は、改変されたエフェクター機能をもたらすため
の、修飾(または遮断)されたFc領域を有する抗体をも含む。例えば、米国特許第5,
624,821号;WO2003/086310;WO2005/120571;WO2
006/0057702を参照されたい。そのような修飾は、診断および療法における可
能な有益な効果を伴って、免疫系の種々の反応を増強または抑制するために用いられうる
。Fc領域の改変には、アミノ酸変化(置換、欠失および挿入)、グリコシル化または脱
グリコシル化および複数のFcの付加が含まれる。Fcに対する変化はまた、治療用抗体
における抗体の半減期を改変することが可能であり、それほど頻繁でない投与ならびにそ
れによる便利さの向上および物質の使用の減少を可能にする。Presta(2005)
J.Allergy Clin.Immunol.116:731,p.734-35を
参照されたい。
【0226】
1つの実施形態においては、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、
1E1、2A6、3G7および/または2C1)は、重鎖定常領域のヒンジ領域内の22
8位に対応する位置におけるセリンからプロリンへの突然変異(S228P;EUインデ
ックス)を含むIgG4アイソタイプ抗体またはフラグメントである。この突然変異は、
ヒンジ領域内の重鎖間ジスルフィド架橋の不均一性を排除することが報告されている(A
ngalら,前掲;241位はKabat番号付け系に基づく)。
【0227】
本発明の1つの実施形態においては、本発明の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フ
ラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)のCH1のヒンジ
領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が増加または減少(例えば、±1、2または
3)するように修飾される。このアプローチは米国特許第5,677,425号に更に詳
細に記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖およ
び重鎖の集合を促進させるために、または抗体の安定性を増強もしくは低減するために改
変される。
【0228】
もう1つの実施形態においては、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例え
ば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)のFcヒンジ領域は、抗体またはフ
ラグメントの生物学的半減期を減少させるために突然変異される。より詳細には、抗体が
、天然FcヒンジドメインSpA結合と比べて低減したスタヒロコッカスプロテインA(
SpA)結合を示すように、Fc-ヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン境界領
域内に1以上のアミノ酸突然変異が導入される。このアプローチは米国特許第6,165
,745号に更に詳細に記載されている。
【0229】
もう1つの実施形態においては、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例え
ば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)は、その生物学的半減期を増加させ
るために修飾される。種々のアプローチが可能である。例えば、米国特許6,277,3
75号に記載されているとおり、以下の突然変異の1以上が導入されうる:T252L、
T254S、T256F。あるいは、米国特許第5,869,046号および第6,12
1,022号に記載されているとおり、生物学的半減期を増加させるために、抗体は、I
gGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取られたサルベージ(salvag
e)受容体結合性エピトープを含有するようにCH1またはCL領域内で改変されうる。
【0230】
更に他の実施形態においては、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例えば
、1E1、2A6、3G7および/または2C1)のエフェクター機能を改変するために
、少なくとも1つのアミノ酸残基を別のアミノ酸残基により置換することにより、Fc領
域を改変する。例えば、抗体がエフェクターリガンドに対する改変されたアフィニティを
有するが、親抗体の抗原結合能を保有するように、アミノ酸残基234、235、236
、237、297、318、320および322から選択される1以上のアミノ酸が、別
のアミノ酸残基により置換されうる。アフィニティが改変されるエフェクターリガンドは
、例えば、Fc受容体または補体のC1成分でありうる。このアプローチは米国特許第5
,624,821号および第5,648,260号に更に詳細に記載されている。
【0231】
もう1つの例においては、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、1
E1、2A6、3G7および/または2C1)がC1q結合の変化および/または補体依
存性細胞傷害性(CDC)の低減もしくは消失を示すように、アミノ酸残基329、33
1および322から選択される1以上のアミノ酸が、別のアミノ酸残基により置換されう
る。このアプローチは米国特許第6,194,551号に詳細に記載されている。
【0232】
もう1つの例においては、アミノ酸231位および239位における1以上のアミノ酸
残基を改変して、それにより、補体を固定する抗体の能力を改変する。このアプローチは
PCT公開WO94/29351に更に詳細に記載されている。
【0233】
更にもう1つの例においては、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例えば
、1E1、2A6、3G7および/または2C1)が抗体依存性細胞傷害性(ADCC)
をもたらす能力を増強または低減するために、および/またはFcγ受容体に対する抗体
またはフラグメントのアフィニティを増強または低減するために、以下の位置:238、
239、243、248、249、252、254、255、256、258、264、
265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、
285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、
301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、
326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、
340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、
416、419、430、434、435、437、438または439位における1以
上のアミノ酸を修飾することにより、Fc領域を修飾する。このアプローチはPCT公開
WO 00/42072に更に詳細に記載されている。更に、FcγRI、FcγRII
、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位が位置決定されてお
り、改善した結合を示す変異体が記載されている(Shieldsら(2001)J.B
iol.Chem.276:6591-6604を参照されたい)。256、290、2
98、333、334および339位における特異的突然変異は、FcγRIIIへの結
合を改善することが示された。また、以下の組合せ突然変異体が、FcγRIII結合を
改善することが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298
A/K224AおよびS298A/E333A/K334A。
【0234】
1つの実施形態においては、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、
1E1、2A6、3G7および/または2C1)がエフェクター機能をもたらす能力を低
減するために、および/または抗炎症特性を増強するために、残基243および264を
修飾することによりFc領域を修飾する。1つの実施形態においては、243位および2
64位における残基をアラニンへと変化させることにより、抗体のFc領域を修飾する。
1つの実施形態においては、エフェクター機能を抗体がもたらす能力を低減するために、
および/または抗炎症特性を増強するために、残基243、264、267および328
を修飾することにより、Fc領域を修飾する。
【0235】
翻訳後修飾
更にもう1つの実施形態においては、抗体は特定のグリコシル化パターンを含む。例え
ば、グリコシル化を欠く非グリコシル化(aglycosylated)抗ILT4抗体
またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7および/または2
C1)は本発明の一部である。抗体またはフラグメントのグリコシル化パターンは、例え
ば、抗原に対する抗体のアフィニティまたはアビディティを増強するために改変されうる
。そのような修飾は、例えば、抗体またはフラグメント配列内のグリコシル化部位の1以
上を改変することにより達成されうる。例えば、可変領域フレームワークグリコシル化部
位の1以上の除去をもたらし、それによりその部位におけるグリコシル化を排除する1以
上のアミノ酸置換が施されうる。そのような非グリコシル化は、抗原に対する抗体または
フラグメントのアフィニティまたはアビディティを増強しうる。例えば、米国特許第5,
714,350号および第6,350,861号を参照されたい。
【0236】
グリコシル化パターンが低フコシル化(hypofucosylated)または非フ
コシル化グリカンを含む、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、1E
1、2A6、3G7および/または2C1)も製造され、例えば、低フコシル化抗体およ
び抗原結合性フラグメントまたは非フコシル化抗体およびフラグメントは、低減した量の
フコシル化残基をグリカン上に有する。抗体または抗原結合性フラグメントは、増加した
量の二分岐GlcNac構造を有するグリカンをも含みうる。そのような改変されたグリ
コシル化パターンは、抗体のADCC能を増強することが実証されている。そのような修
飾は、例えば、特定のグリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生するようにグリ
コシル化経路が遺伝的に操作された宿主細胞において抗体またはフラグメントを発現させ
ることにより達成されうる。これらの細胞は当技術分野において記載されており、本発明
の組換え抗体を発現させて、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生させるための宿
主細胞として使用されうる。例えば、細胞系Ms704、Ms705およびMs709は
、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラ
ーゼ)を欠いており、その結果、Ms704、Ms705およびMs709細胞系におい
て発現される抗体は、それらの炭水化物上のフコースを欠いている。本発明は、フコース
を欠くかまたはFUT8を欠く宿主細胞により産生された抗ILT4抗体および抗原結合
性フラグメントを含む。Ms704、Ms705およびMs709 FUT8-/-細胞
系は、2つの置換ベクターを使用するCHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標
的化破壊により作製された(米国特許公開第20040110704号およびYaman
e-Ohnukiら(2004)Biotechnol Bioeng 87:614-
22を参照されたい)。もう1つの例として、EP 1176195は、フコシルトラン
スフェラーゼをコードする機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞系を記載して
おり、そのような細胞系において発現される抗体は、α-1,6結合関連酵素を低減また
は除去することにより低フコシル化を示す。EP 1,176,195はまた、抗体のF
c領域に結合するN-アセチルグルコサミンにフコースを付加するための低い酵素活性を
有するかまたは酵素活性有さない細胞系、例えば、ラット骨髄腫細胞系YB2/0(AT
CC CRL 1662)を記載している。PCT公開WO 03/035835は、変
異体CHO細胞系、Lec13細胞を記載しており、これは、Asn(297)結合炭水
化物へフコースを結合させる能力の低減を示し、また、その宿主細胞において発現される
抗体の低フコシル化をもたらした(Shieldsら(2002)J.Biol.Che
m.277:26733-26740も参照されたい)。修飾されたグリコシル化プロフ
ァイルを有する抗体は、PCT公開WO 06/089231に記載されているとおり、
鶏卵内でも製造されうる。あるいは、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体
は、植物細胞、例えばアオウキクサ(Lemna)において製造されうる(米国特許第7
,632,983号)。植物系における抗体の製造方法は、米国特許第6,998,26
7号および第7,388,081号に開示されている。PCT公開WO 99/5434
2は、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-ア
セチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操
作された細胞系を記載しており、操作細胞系において発現される抗体は、抗体のADCC
活性の増強をもたらす増加した二分岐GlcNac構造を示す(Umanaら(1999
)Nat.Biotech.17:176-180も参照されたい)。そのような宿主細
胞により産生される抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメントは、本発明の一部
である。
【0237】
あるいは、抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、
3G7および/または2C1)のフコース残基は、フコシダーゼ酵素を使用して切断除去
され、例えば、フコシダーゼであるα-L-フコシダーゼはフコシル残基を抗体から除去
する(Tarentinoら(1975)Biochem.14:5516-23)。本
発明は、フコシダーゼ酵素で処理された抗体およびフラグメントを含む。
【0238】
本明細書に開示されている抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、1
E1、2A6、3G7および/または2C1)は更に、下等真核宿主細胞において産生さ
れるものを含み、特に、酵母および糸状菌のような真菌宿主細胞は、哺乳類またはヒト様
グリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作されている(
例えば、Choiら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100:50
22-5027;Hamiltonら(2003)Science 301:1244-
1246;Hamiltonら(2006)Science 313:1441-144
3を参照されたい)。現在使用されている哺乳類細胞系と比較した場合の、これらの遺伝
的に修飾された宿主細胞の格別の利点は、細胞内で産生される糖タンパク質のグリコシル
化プロファイルの制御が可能なことであり、その結果、特定のN-グリカン構造が優勢な
糖タンパク質の組成物が製造されうる(例えば、米国特許第7,029,872号および
米国特許第7,449,308号を参照されたい)。これらの遺伝的に修飾された宿主細
胞は、特定のN-グリカン構造を主に有する抗原結合性フラグメントを製造するために使
用されている(例えば、Liら(2006)Nat.Biotechnol.24:21
0-215を参照されたい)。
【0239】
抗体コンジュゲート
本明細書に開示されている抗ILT4抗体および抗原結合性フラグメント(例えば、1
E1、2A6、3G7および/または2C1)は、ペプチドまたは化学的部分にコンジュ
ゲート化(結合)されることも可能である。化学的部分は、とりわけ、重合体(ポリマー
)、放射性核種または治療用物質または細胞毒性薬剤でありうる。本発明の特定の実施形
態においては、化学的部分は、対象の体内の抗体分子の半減期を増加させる重合体である
。重合体には、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10
kDa、12kDa、20kDa、30kDaまたは40kDaの分子量を有するPEG
)、デキストランおよびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)(これらに限
定されるものではない)を包含する親水性重合体が含まれるが、これらに限定されるもの
ではない。Leeら(1999)(Bioconj.Chem.10:973-981)
は、PEGコンジュゲート化一本鎖抗体を開示している。Wenら,(2001)(Bi
oconj.Chem.12:545-553)は、放射性金属キレーター(ジエチレン
トリアミン五酢酸(DTPA))に結合したPEGに対して抗体をコンジュゲート化する
ことを開示している。
【0240】
本明細書に開示されている抗体および抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A
6、3G7および/または2C1)は、標識、例えば放射能標識ともコンジュゲート化さ
れうる。標識には、99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、3H、
131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra
、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、2
12Pb、47Sc、109Pd、234Thおよび40K、157Gd、55Mn、5
2Trおよび56Feが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0241】
本明細書に開示されている抗ILT4抗体および抗原結合性フラグメント(例えば、1
E1、2A6、3G7および/または2C1)は、例えば、その生物学的(例えば、血清
)半減期を増加させるために、ペグ化(PEGylate)されることも可能である。抗
体またはその抗原結合性フラグメントをペグ化するためには、典型的には、1以上のPE
G基が抗体または抗体結合性フラグメントに結合する条件下、抗体またはフラグメントを
、反応性形態のポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEGの反応性エステルま
たはアルデヒド誘導体と反応させる。特定の実施形態においては、ペグ化は、反応性PE
G分子(または類似反応性水溶性重合体)とのアルキル化反応またはアシル化反応により
行われる。本明細書中で用いる「ポリエチレングリコール」なる語は、他のタンパク質を
誘導体化するために使用されているPEGの形態のいずれか、例えばモノ(C1-C10
)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリ
コール-マレイミドを含むことが意図される。ある実施形態においては、ペグ化されるべ
き抗体は非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野で
公知であり、本発明の抗体に適用されうる。例えば、EP 0 154 316およびE
P 0 401 384を参照されたい。
【0242】
本明細書に開示されている抗ILT4抗体および抗原結合性フラグメント(例えば、1
E1、2A6、3G7および/または2C1)は、標識、例えば蛍光標識または化学発光
標識、例えば発蛍光団、例えば希土類キレート、フルオレセインおよびその誘導体、ロー
ダミンおよびその誘導体、イソチオシアナート、フィコエリトリン、フィコシアニン、ア
ロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、
ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリ
ジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジミウム塩標識、シュウ酸エステル標
識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン
標識および安定フリーラジカル、とコンジュゲート化されることも可能である。
【0243】
本明細書に開示されている抗ILT4抗体および抗原結合性フラグメント(例えば、1
E1、2A6、3G7および/または2C1)は、細胞毒性因子、例えばジフテリア毒素
、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)外
毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、アレウリテ
ス・フォルディ(Aleurites fordii)タンパク質および化合物(例えば
、脂肪酸)、ジアンシン(dianthin)タンパク質、フィトイアッカ・アメリカナ
(Phytoiacca americana)タンパク質PAPI、PAPIIおよび
PAP-S、モモルディカ・カランチア(momordica charantia)イ
ンヒビター、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス(saponaria
officinalis)インヒビター、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシ
ンおよびエノマイシンにコンジュゲート化されることも可能である。
【0244】
抗体および抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7および/または
2C1)を種々の部分にコンジュゲート化するための当技術分野で公知のいずれかの方法
が利用可能であり、該方法は、Hunterら(1962)Nature 144:94
5;Davidら(1974)Biochemistry 13:1014;Painら
(1981)J.Immunol.Meth.40:219;およびNygren,J.
(1982)Histochem.and Cytochem.30:407に記載され
ている方法を包含する。抗体をコンジュゲート化するための方法は常套手段であり、当技
術分野において非常によく知られている。
【0245】
医薬組成物および投与
抗ILT4抗体(例えば、完全ヒト抗体、例えば、アンタゴニスト完全ヒト抗体)(例
えば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)およびその抗原結合性フラグメン
トを含む医薬組成物は、所望の純度を有する抗体またはその抗原結合性フラグメントを、
所望により生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより、水溶液
の形態または凍結乾燥もしくは他の乾燥形態で、貯蔵用に製造されうる(例えば、Rem
ington,Remington’s Pharmaceutical Scienc
es(第18版,1980)を参照されたい)。
【0246】
1つの実施形態においては、医薬組成物は、2つの重鎖と2つの軽鎖とからなる抗体を
含み、ここで、各軽鎖は、配列番号7に記載されているアミノ酸配列からなり、各重鎖は
、配列番号2に記載されているアミノ酸配列からなる。
【0247】
もう1つの実施形態においては、医薬組成物は、(i)2つの重鎖と2つの軽鎖とから
なる抗体(ここで、各軽鎖は、配列番号7に記載されているアミノ酸配列からなり、各重
鎖は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列からなる)、および、(ii)ペンブロ
リズマブを含む。
【0248】
治療用および診断用物質の製剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水性溶液または懸
濁液の形態で、許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより製造されうる
(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s
The Pharmacological Basis of Therapeutic
s,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)R
emington:The Science and Practice of Pha
rmacy,Lippincott,WilliamsおよびWilkins,New
York,NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dos
age Forms:Parenteral Medications,Marcel
Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceuti
cal Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,N
Y;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosa
ge Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,
NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Tox
icity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New
York,NYを参照されたい)。
【0249】
単独で又は別の治療剤と組合せて投与される抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメ
ント(例えば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)組成物の毒性および治療
効力は、例えばLD50(集団の50%に致死的である用量)およびED50(集団の5
0%において有効である用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準
的な薬学的手法により決定されうる。毒性効果と治療効果との用量比は、治療係数(LD
50/ED50)である。特定の態様においては、高い治療係数を示す抗体が望ましい。
これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のた
めの投与量の範囲の決定において使用されうる。そのような化合物の投与量は、好ましく
は、毒性をほとんど又は全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は
、使用される剤形および投与経路に依存して、この範囲内で変動しうる。
【0250】
もう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗ILT4抗体(例えば、
完全ヒト抗体、例えば、アンタゴニスト完全ヒト抗体)またはその抗原結合性フラグメン
ト(例えば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)と組合せて対象に投与され
るもう1つの治療剤は、Physicians’Desk Reference 200
3(Thomson Healthcare;57th edition(2002年1
1月1日))に従い、対象に投与される。
【0251】
投与様式は変動し得る。投与経路には、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口;筋肉内、皮
下、皮内、髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、吹送、局所
、皮膚、経皮または動脈内が含まれる。
【0252】
本発明は、抗体またはフラグメントを対象に体内に導入することを含む、抗ILT4抗
体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7および/または
2C1)を投与するための方法を提供する。例えば、該方法は、対象の体をシリンジの針
で穿刺し、抗体またはフラグメントを対象の体内に、例えば対象の静脈、動脈、腫瘍、筋
肉組織または皮下に注射することを含む。
【0253】
本発明は、本明細書に記載されている抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント(
例えば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)のいずれか、または、医薬上許
容される担体を含むその医薬組成物を含む容器(例えば、プラスチックまたはガラスバイ
アル、例えば、キャップまたはクロマトグラフィーカラム、中空穿孔針またはシリンジシ
リンダーを有するもの)を提供する。
【0254】
本発明はまた、本明細書に記載されている抗ILT4抗体もしくは抗原結合性フラグメ
ント(例えば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)またはその医薬組成物の
いずれかを含む注射装置を提供する。注射装置は、非経口経路、例えば筋肉内、皮下また
は静脈内経路により患者の体内に物質を導入する装置である。例えば、注射装置はシリン
ジ(例えば、医薬組成物が予め充填されたもの、例えば、自動注入装置)であることが可
能であり、これは、例えば、シリンダーまたは注射すべき流体を保持するための筒状物(
例えば、抗体もしくはフラグメントまたはその医薬組成物を含むもの)、流体の注射のた
めに皮膚および/または血管を穿刺するための針、ならびにシリンダーから及び針穿孔を
介して該流体を押出すプランジャーを含む。本発明の1つの実施形態においては、本発明
の抗体もしくはその抗原結合性フラグメントまたはその医薬組成物を含む注射装置は、静
脈内(IV)注射装置である。そのような装置は、カニューレまたはトロカール/針を介
して患者の体内に導入される流体(例えば、生理食塩水;またはNaCl、乳酸ナトリウ
ム、KCl、CaCl2、及び、所望によりグルコースを含む乳酸リンゲル液)を保持す
るためのバッグ(袋)またはリザーバ(貯蔵容器)に接続されうるチューブに接続されう
るカニューレまたはトロカール/針の中に抗体もしくはフラグメントまたはその医薬組成
物を含む。
【0255】
本明細書に開示されている医薬組成物は、例えば米国特許第6,620,135号、第
6,096,002号、第5,399,163号、第5,383,851号、第5,31
2,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,82
4号または第4,596,556号に開示されている装置のような無針(needlel
ess)皮下注射装置によっても投与されうる。該医薬組成物を含むそのような無針装置
も本発明の一部である。本明細書に開示されている医薬組成物は、注入によっても投与さ
れうる。医薬組成物を投与するための良く知られたインプラントおよびモジュールの例に
は、米国特許第4,487,603号(これは、制御された速度で医薬を分注するための
移植可能な微量注入ポンプを開示している)、米国特許第4,447,233号(これは
、正確な注入速度で医薬を運搬するための医薬注入ポンプを開示している)、米国特許第
4,447,224号(これは、連続的薬物運搬のための可変流量移植可能注入装置を開
示している)、米国特許第4,439,196号(これは、マルチチャンバ・コンパート
メントを有する浸透性薬物運搬系を開示している)に開示されているものが含まれる。多
数の他のそのようなインプラント、運搬系およびモジュールは当業者によく知られており
、本発明の医薬組成物を含むものは本発明の範囲内である。
【0256】
本明細書に開示されている抗体(例えば、完全ヒト抗体、例えば、アンタゴニスト完全
ヒト抗体)またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7および
/または2C1)は連続的注入により投与可能であり、あるいは、例えば、毎日、週1~
7回、毎週、隔週、毎月、隔月、年4回、年2回、毎年などで投与される用量で投与され
うる。投与は、例えば、静脈内、皮下、局所、経口、鼻腔内、直腸、筋肉内、脳内、脊髄
内に、または吸入により行われうる。本発明の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラ
グメントの有効量は、例えば癌または感染症の治療または予防には、約0.05mg/k
g(体重)~約30mg/kg(体重)である。
【0257】
適当な用量の決定は、例えば、治療に影響を及ぼすことが当技術分野で知られている又
は疑われているパラメータまたは因子を用いて、臨床家によりなされる。一般に、用量を
決定する場合、用量は、最適用量より幾分少ない量から開始し、ついで、負の副作用と比
較して所望または最適効果が得られるまで少しずつ増量する。重要な診断尺度には、例え
ば炎症の症状の尺度、または産生される炎症性サイトカインのレベルが含まれる。一般に
、使用される生物学的物質は、治療のために標的化される動物と同じ種に由来し、それに
より、薬剤に対する免疫応答を最小化することが望ましい。ヒト対象の場合には、例えば
、キメラおよび完全ヒト抗体が望ましいかもしれない。抗ILT4抗体またはフラグメン
トの適当な用量を選択する際の指針が利用可能である(例えば、Wawrzynczak
(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific P
ub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(編)(1991)Mo
noclonal Antibodies,Cytokines and Arthri
tis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(編)(19
93)Monoclonal Antibodies and Peptide The
rapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekke
r,New York,NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med
.348:601-608;Milgromら(1999)New Engl.J.Me
d.341:1966-1973;Slamonら(2001)New Engl.J.
Med.344:783-792;Beniaminovitzら(2000)New
Engl.J.Med.342:613-619;Ghoshら(2003)New E
ngl.J.Med.348:24-32;Lipskyら(2000)New Eng
l.J.Med.343:1594-1602を参照されたい)。
【0258】
疾患症状が軽減したかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価するために医
師または他の熟練医療提供者により典型的に用いられるいずれかの臨床的測定により評価
されうる。本発明の或る実施形態(例えば、治療方法または製造品)は全ての対象におけ
る標的疾患症状の軽減において有効であるとは限らないかもしれないが、それは、当技術
分野で公知のいずれかの統計的検定、例えばスチューデントt検定、カイ2検定、マン(
Mann)およびホイットニー(Whitney)によるU検定、クルスカル-ワリス(
Kruskal-Wallis)検定(H検定)、ヨンケーレ-テルプストラ(Jonc
kheere-Terpstra)検定およびウィルコクソン(Wilcoxon)検定
により決定されるように、統計的に有意な対象数において標的疾患症状を軽減するべきで
ある。
【0259】
抗ILT4抗体の治療用途
本発明はまた、癌の治療または予防に有効でありうる本明細書に開示されている本発明
の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7
および/または2C1)の有効量を投与することによる、癌の治療または予防を要する対
象(例えば、ヒト対象)における癌の治療または予防方法を提供する。
【0260】
ある実施形態においては、癌は固形腫瘍である。他の実施形態においては、癌は血液癌
である。ある実施形態においては、癌は転移性である。幾つかの実施形態においては、癌
は再発性である。他の実施形態では、癌は難治性である。更に他の実施形態においては、
癌は再発性かつ難治性である。
【0261】
幾つかの実施形態においては、癌は未分化星状細胞腫、星状細胞腫、膀胱癌、骨癌、脳
癌、乳癌(例えば、BRCA1および/またはBRCA2における突然変異により特徴づ
けられる)、カルチノイド癌、子宮頸癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫、結腸直腸癌、子宮内
膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、胃癌、膠芽腫、頭頸部癌、肝芽腫、肝
細胞癌、特発性骨髄線維症、腎癌、白血病、肝癌、肺癌(例、非小細胞肺癌)、リンパ腫
、髄芽腫、メラノーマ、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫
、乏突起膠腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真性多血症、原発神経外胚葉腫瘍、前立腺癌、
腎細胞癌、腎移行細胞癌、網膜芽細胞腫、腎ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉
腫、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌(例えば、皮膚扁平上皮癌)、滑膜肉腫、血小板
血症、甲状腺癌、子宮癌、前庭神経鞘腫またはウィルムス腫瘍である。本発明の1つの実
施形態においては、癌は、例えば前記の種類の転移癌である。
【0262】
本発明の1つの実施形態においては、癌は、骨髄に富む(骨髄リッチ)腫瘍(例えば、
中皮腫、腎臓癌、リンパ腫、肉腫、黒色腫、頭頸部癌、乳癌、膀胱癌、胃癌、卵巣癌また
は甲状腺癌である;例えば、Burtら,Cancer.117(22):5234-4
4(2011);Dannenmannら,Oncoimmunology 2(3):
e23562(2013);Steidlら,N.Engl.J.Med.362:87
5-885(2010);Fujiwaraら,Am.J.Pathol..179(3
):1157-70(2011);Bronkhorstら,Invest.Ophth
almol.Vis.Sci.52(2):643-50(2011);Balermp
asら,Br.J.Cancer 111(8):1509-18(2014);および
Zhangら,PLoS One 7(12):e50946(2012)を参照された
い)。ILT4は主に骨髄細胞および顆粒球により発現されるため、腫瘍内への骨髄細胞
浸潤は一般に、T細胞による抗腫瘍応答に拮抗しうるこれらの細胞の免疫抑制効果ゆえに
、予後不良に関連しているため、本発明の抗ILT4抗体または抗原結合性フラグメント
での治療は、高い骨髄性または免疫抑制性骨髄細胞浸潤を有する対象に利益をもたらすで
あろう。
【0263】
したがって、本発明は、(a)配列番号3~7、11、13、15もしくは45に記載
されているアミノ酸配列を含む免疫グロブリン鎖の軽鎖可変(VL)ドメインのCDR-
L1、CDR-L2およびCDR-L3、および/または、(b)配列番号1、2、8~
10、12、14、44もしくは79~86に記載されているアミノ酸配列を含む免疫グ
ロブリン鎖の重鎖可変(VH)ドメインのCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H
3、を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを
含む、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法を提供する。
【0264】
本発明の1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、(1)相補性決定領域-H1(CDR-H1):GYYWS(配列番号16)、相補
性決定領域-H2(CDR-H2):EINHXGSTNYNPSLKS(ここで、Xは
SまたはAである)(配列番号17)および相補性決定領域-H3(CDR-H3):L
PTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVHドメイン、および/または、相補
性決定領域-L1(CDR-L1):TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)、
相補性決定領域-L2(CDR-L2):GX1X2NRPS(ここで、X1はSまたは
Aであり、X2はN、Q、EまたはDである)(配列番号20)および相補性決定領域-
L3(CDR-L3):QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメイン;
(2)CDR-H1:SYAIS(配列番号22)、CDR-H2:GIIPIFGTA
NYAQKFQG(配列番号23)およびCDR-H3:YFX1X2SGWYKGGA
FDI(ここで、X1はDまたはSであり、X2はSまたはAである)(配列番号24)
を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TLRSGINVDTYRIH(
配列番号25)、CDR-L2:YKSDSDKHQGS(配列番号26)およびCDR
-L3:AIWYSSTWV(配列番号27)を含むVLドメイン;(3)CDR-H1
:SYAMH(配列番号28)、CDR-H2:VISYDGSNKYYADSVKG(
配列番号29)およびCDR-H3:VGEWIQLWSPFDY(配列番号30)を含
むVHドメイン、および/または、CDR-L1:RASQGISSWLA(配列番号3
1)、CDR-L2:AASSLQS(配列番号32)およびCDR-L3:QQYNS
YPPT(配列番号33)を含むVLドメイン、および/または、(4)CDR-H1:
ELSMH(配列番号34)、CDR-H2:GFDPEDGETIYAQKFQG(配
列番号35)およびCDR-H3:AGPLYTIFGVVIIPDNWFDP(配列番
号36)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGY
DVH(配列番号37)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号38)およびCDR
-L3:QSYDSSLSGSGVV(配列番号39)を含むVLドメイン、を含む抗体
またはその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0265】
1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSL
KS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)、
CDR-L2:GNSNRPS(配列番号49)およびCDR-L3:QSFDNSLS
AYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラグメン
トの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0266】
もう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、
CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNP
SLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号
18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19
)、CDR-L2:GQSNRPS(配列番号50)およびCDR-L3:QSFDNS
LSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラグ
メントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0267】
更にもう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSLKS(
配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18)、お
よび/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)、CDR
-L2:GESNRPS(配列番号51)およびCDR-L3:QSFDNSLSAYV
(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラグメントの有
効量をヒト対象に投与することを含む。
【0268】
更にもう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNY
NPSLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GDSNRPS(配列番号52)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フ
ラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0269】
1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSL
KS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)、
CDR-L2:GNANRPS(配列番号53)およびCDR-L3:QSFDNSLS
AYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0270】
もう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、
CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNP
SLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号
18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19
)、CDR-L2:GQANRPS(配列番号54)およびCDR-L3:QSFDNS
LSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラグ
メントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0271】
更にもう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNY
NPSLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GEANRPS(配列番号55)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フ
ラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0272】
更にもう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNY
NPSLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GDANRPS(配列番号56)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フ
ラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0273】
1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSL
KS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)、
CDR-L2:GNSNRPS(配列番号49)およびCDR-L3:QSFDNSLS
AYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラグメン
トの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0274】
もう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、
CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNP
SLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号
18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19
)、CDR-L2:GQSNRPS(配列番号50)およびCDR-L3:QSFDNS
LSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラグ
メントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0275】
更にもう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNY
NPSLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GESNRPS(配列番号51)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フ
ラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0276】
更にもう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNY
NPSLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GDSNRPS(配列番号52)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フ
ラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0277】
1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSL
KS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)、
CDR-L2:GNANRPS(配列番号53)およびCDR-L3:QSFDNSLS
AYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラグメン
トの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0278】
もう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、
CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNP
SLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号
18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19
)、CDR-L2:GQANRPS(配列番号54)およびCDR-L3:QSFDNS
LSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラグ
メントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0279】
更にもう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNY
NPSLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GEANRPS(配列番号55)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フ
ラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0280】
更にもう1つの実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNY
NPSLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号
19)、CDR-L2:GDANRPS(配列番号56)およびCDR-L3:QSFD
NSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フ
ラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0281】
更に他の実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、軽
鎖免疫グロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリン
との両方(ここで、軽鎖免疫グロブリンは、配列番号3、4、5、6、7、11、13、
15もしくは45に記載されているアミノ酸配列を含み、および/または、重鎖免疫グロ
ブリンは、配列番号1、2、8、9、10、12、14、44、79、80、81、82
、83、84、85もしくは86に記載されているアミノ酸配列を含む)を含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0282】
更に他の実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、軽
鎖免疫グロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリン
との両方(ここで、軽鎖可変ドメインは、配列番号70、71、72、73、58、74
、75、76もしくは77に記載されているアミノ酸配列を含み、および/または、重鎖
可変ドメインは、配列番号63、57、64、65、66、67、68もしくは69に記
載されているアミノ酸配列を含む)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効
量をヒト対象に投与することを含む。
【0283】
より詳細な実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法は、
重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンとの以下の組合せのいずれかを含む抗体または
その抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む:(1)配列番号
1に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号3に記載されてい
るアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(2)配列番号2に記載されているアミノ酸
配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免
疫グロブリン、(3)配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリ
ン、配列番号5に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(4)配列番
号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号6に記載されて
いるアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(5)配列番号2に記載されているアミノ
酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖
免疫グロブリン、(6)配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブ
リン、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(7)配列
番号8に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載さ
れているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(8)配列番号9に記載されているア
ミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含
む軽鎖免疫グロブリン、(9)配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免
疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、
(10)配列番号12に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番
号13に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(11)配列番号14
に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号15に記載されてい
るアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(12)配列番号79に記載されているアミ
ノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む軽
鎖免疫グロブリン、(13)配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫
グロブリン、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(1
4)配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号5
に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(15)配列番号80に記載
されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号6に記載されているアミノ
酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(16)配列番号80に記載されているアミノ酸配列
を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グ
ロブリン、(17)配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリ
ン、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(18)配列
番号82に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(19)配列番号83に記載されて
いるアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配
列を含む軽鎖免疫グロブリン、(20)配列番号84に記載されているアミノ酸配列を含
む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロ
ブリン、(21)配列番号85に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン
、配列番号13に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、または(22
)配列番号86に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号15
に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン。
【0284】
より一層詳細な実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの以下の組合せのいずれかを含む抗体または
その抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む:(1)配列番号
63に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号70に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(2)配列番号57に記載されている
アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号71に記載されているアミノ酸配
列を含む軽鎖可変ドメイン、(3)配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重
鎖可変ドメイン、および配列番号72に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメ
イン、(4)配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、およ
び配列番号73に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(5)配列番号
57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号58に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(6)配列番号57に記載されている
アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号70に記載されているアミノ酸配
列を含む軽鎖可変ドメイン、(7)配列番号64に記載されているアミノ酸配列を含む重
鎖可変ドメイン、および配列番号74に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメ
イン、(8)配列番号65に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、およ
び配列番号74に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(9)配列番号
66に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号74に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(10)配列番号67に記載されてい
るアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号75に記載されているアミノ酸
配列を含む軽鎖可変ドメイン、または(11)配列番号68に記載されているアミノ酸配
列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号76に記載されているアミノ酸配列を含む軽
鎖可変ドメイン。
【0285】
1つの好ましい実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療方法
は、配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含むVHドメインおよび配列番号58
に記載されているアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラ
グメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0286】
もう1つの好ましい実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の治療
方法は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンおよび配列
番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む抗体またはその抗
原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0287】
更にもう1つの好ましい実施形態においては、癌の治療を要するヒト対象における癌の
治療方法は、配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、お
よび配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0288】
本発明は、(a)配列番号3~7、11、13、15もしくは45に記載されているア
ミノ酸配列を含む免疫グロブリン鎖の軽鎖可変(VL)ドメインのCDR-L1、CDR
-L2およびCDR-L3、および/または、(b)配列番号1、2、8~10、12、
14、44もしくは79~86に記載されているアミノ酸配列を含む免疫グロブリン鎖の
重鎖可変(VH)ドメインのCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む抗体
またはその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む、HLA-
G、HLA-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するた
めの、それを要するヒト対象における方法を提供する。
【0289】
本発明の1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、(1)相補性決定領域-H1(CDR-H1):GYYWS(配列番号16)、相補
性決定領域-H2(CDR-H2):EINHXGSTNYNPSLKS(ここで、Xは
SまたはAである)(配列番号17)および相補性決定領域-H3(CDR-H3):L
PTRWVTTRYFDL(配列番号18)を含むVHドメイン、および/または、相補
性決定領域-L1(CDR-L1):TGSSSNIGAGYDVH(配列番号19)、
相補性決定領域-L2(CDR-L2):GX1X2NRPS(ここで、X1はSまたは
Aであり、X2はN、Q、EまたはDである)(配列番号20)および相補性決定領域-
L3(CDR-L3):QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメイン;
(2)CDR-H1:SYAIS(配列番号22)、CDR-H2:GIIPIFGTA
NYAQKFQG(配列番号23)およびCDR-H3:YFX1X2SGWYKGGA
FDI(ここで、X1はDまたはSであり、X2はSまたはAである)(配列番号24)
を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TLRSGINVDTYRIH(
配列番号25)、CDR-L2:YKSDSDKHQGS(配列番号26)およびCDR
-L3:AIWYSSTWV(配列番号27)を含むVLドメイン;(3)CDR-H1
:SYAMH(配列番号28)、CDR-H2:VISYDGSNKYYADSVKG(
配列番号29)およびCDR-H3:VGEWIQLWSPFDY(配列番号30)を含
むVHドメイン、および/または、CDR-L1:RASQGISSWLA(配列番号3
1)、CDR-L2:AASSLQS(配列番号32)およびCDR-L3:QQYNS
YPPT(配列番号33)を含むVLドメイン、ならびに/または、(4)CDR-H1
:ELSMH(配列番号34)、CDR-H2:GFDPEDGETIYAQKFQG(
配列番号35)およびCDR-H3:AGPLYTIFGVVIIPDNWFDP(配列
番号36)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号37)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号38)およびCD
R-L3:QSYDSSLSGSGVV(配列番号39)を含むVLドメインを含む抗体
またはその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0290】
1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-A、
HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSL
KS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号49)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗
原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0291】
もう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-
A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、
CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNP
SLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号
18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYD
VH(配列番号19)、CDR-L2:GQSNRPS(配列番号50)およびCDR-
L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはそ
の抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0292】
更にもう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNY
NPSLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号19)、CDR-L2:GESNRPS(配列番号51)およびCD
R-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0293】
更にもう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNY
NPSLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号19)、CDR-L2:GDSNRPS(配列番号52)およびCD
R-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0294】
1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-A、
HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNPSL
KS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GNANRPS(配列番号53)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む。
【0295】
もう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-
A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、
CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNYNP
SLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号
18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYD
VH(配列番号19)、CDR-L2:GQANRPS(配列番号54)およびCDR-
L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはそ
の抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0296】
更にもう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNY
NPSLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号19)、CDR-L2:GEANRPS(配列番号55)およびCD
R-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0297】
更にもう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHSGSTNY
NPSLKS(配列番号47)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号19)、CDR-L2:GDANRPS(配列番号56)およびCD
R-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0298】
1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-A、
HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSL
KS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、ならびに/またはCDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GNSNRPS(配列番号49)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗
原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0299】
もう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-
A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、
CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNP
SLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号
18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYD
VH(配列番号19)、CDR-L2:GQSNRPS(配列番号50)およびCDR-
L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはそ
の抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0300】
更にもう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNY
NPSLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号19)、CDR-L2:GESNRPS(配列番号51)およびCD
R-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0301】
更にもう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNY
NPSLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号19)、CDR-L2:GDSNRPS(配列番号52)およびCD
R-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0302】
1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-A、
HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、CD
R-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNPSL
KS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号18
)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYDVH
(配列番号19)、CDR-L2:GNANRPS(配列番号53)およびCDR-L3
:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはその抗
原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0303】
もう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-
A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、
CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNYNP
SLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列番号
18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAGYD
VH(配列番号19)、CDR-L2:GQANRPS(配列番号54)およびCDR-
L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体またはそ
の抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0304】
更にもう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNY
NPSLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号19)、CDR-L2:GEANRPS(配列番号55)およびCD
R-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0305】
更にもう1つの実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、CDR-H1:GYYWS(配列番号16)、CDR-H2:EINHAGSTNY
NPSLKS(配列番号48)およびCDR-H3:LPTRWVTTRYFDL(配列
番号18)を含むVHドメイン、および/または、CDR-L1:TGSSSNIGAG
YDVH(配列番号19)、CDR-L2:GDANRPS(配列番号56)およびCD
R-L3:QSFDNSLSAYV(配列番号21)を含むVLドメインを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0306】
更に他の実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-A
、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、軽
鎖免疫グロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリン
との両方(ここで、軽鎖免疫グロブリンは、配列番号3、4、5、6、7、11、13、
15もしくは45に記載されているアミノ酸配列を含み、および/または、重鎖免疫グロ
ブリンは、配列番号1、2、8、9、10、12、14、44、79、80、81、82
、83、84、85もしくは86に記載されているアミノ酸配列を含む)を含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0307】
更に他の実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-A
、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、軽
鎖免疫グロブリン、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンと重鎖免疫グロブリン
との両方(ここで、軽鎖可変ドメインは、配列番号70、71、72、73、58、74
、75、76もしくは77に記載されているアミノ酸配列を含み、および/または、重鎖
可変ドメインは、配列番号63、57、64、65、66、67、68もしくは69に記
載されているアミノ酸配列を含む)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効
量をヒト対象に投与することを含む。
【0308】
より詳細な実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HLA-
A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法は、
重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンとの以下の組合せのいずれかを含む抗体または
その抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む:(1)配列番号
1に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号3に記載されてい
るアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(2)配列番号2に記載されているアミノ酸
配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免
疫グロブリン、(3)配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリ
ン、配列番号5に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(4)配列番
号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号6に記載されて
いるアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(5)配列番号2に記載されているアミノ
酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖
免疫グロブリン、(6)配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブ
リン、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(7)配列
番号8に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載さ
れているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(8)配列番号9に記載されているア
ミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含
む軽鎖免疫グロブリン、(9)配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免
疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、
(10)配列番号12に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番
号13に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(11)配列番号14
に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号15に記載されてい
るアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(12)配列番号79に記載されているアミ
ノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む軽
鎖免疫グロブリン、(13)配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫
グロブリン、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(1
4)配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号5
に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(15)配列番号80に記載
されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号6に記載されているアミノ
酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(16)配列番号80に記載されているアミノ酸配列
を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グ
ロブリン、(17)配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリ
ン、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(18)配列
番号82に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、(19)配列番号83に記載されて
いるアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配
列を含む軽鎖免疫グロブリン、(20)配列番号84に記載されているアミノ酸配列を含
む重鎖免疫グロブリン、配列番号11に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロ
ブリン、(21)配列番号85に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン
、配列番号13に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン、または(22
)配列番号86に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、配列番号15
に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリン。
【0309】
より一層詳細な実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの以下の組合せのいずれかを含む抗体または
その抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む:(1)配列番号
63に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号70に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(2)配列番号57に記載されている
アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号71に記載されているアミノ酸配
列を含む軽鎖可変ドメイン、(3)配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重
鎖可変ドメイン、および配列番号72に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメ
イン、(4)配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、およ
び配列番号73に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(5)配列番号
57に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号58に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(6)配列番号57に記載されている
アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号70に記載されているアミノ酸配
列を含む軽鎖可変ドメイン、(7)配列番号64に記載されているアミノ酸配列を含む重
鎖可変ドメイン、および配列番号74に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメ
イン、(8)配列番号65に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、およ
び配列番号74に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(9)配列番号
66に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号74に記載
されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(10)配列番号67に記載されてい
るアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号75に記載されているアミノ酸
配列を含む軽鎖可変ドメイン、または、(11)配列番号68に記載されているアミノ酸
配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号76に記載されているアミノ酸配列を含む
軽鎖可変ドメイン。
【0310】
1つの好ましい実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、HL
A-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための方法
は、配列番号57に記載されているアミノ酸配列を含むVHドメインおよび配列番号58
に記載されているアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体またはその抗原結合性フラ
グメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0311】
もう1つの好ましい実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-G、
HLA-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するための
方法は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンおよび配列
番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む抗体またはその抗
原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0312】
更にもう1つの好ましい実施形態において、それを要するヒト対象における、HLA-
G、HLA-A、HLA-Bおよび/またはHLA-FへのILT4の結合を遮断するた
めの方法は、配列番号80に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリン、お
よび配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンを含む抗体また
はその抗原結合性フラグメントの有効量をヒト対象に投与することを含む。
【0313】
本発明はまた、感染症の治療または予防に有効でありうる本明細書に開示されている抗
ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7およ
び/または2C1)の有効量を対象に投与することによる、対象における感染症の治療ま
たは予防方法を提供する。本発明の1つの実施形態においては、感染症はウイルス感染症
である。本発明の1つの実施形態においては、感染症は細菌感染症である。本発明の1つ
の実施形態においては、感染症は寄生生物(寄生虫)感染症である。本発明の1つの実施
形態においては、感染症は真菌感染症である。
【0314】
本発明は、所望により本明細書に記載されている他の化学療法剤または治療方法と組合
された抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3
G7および/または2C1)の治療的有効量を投与することによる、本明細書に記載され
ている癌または感染症のいずれかの治療方法を含み、また、そのような他の化学療法剤と
組合されたそのような抗体またはフラグメント(例えば、共配合された抗体またはフラグ
メントおよび他の化学療法剤)を含む組成物を含む。
【0315】
「対象」は、哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、サル
[例えば、カニクイザル、例えば、マカカ・ファシクラリス(Macaca fasci
cularis)またはマカカ・ムラッタ(Macaca mulatta)]またはウ
サギである。
【0316】
本発明の1つの実施形態においては、本発明の抗ILT4抗体(例えば、完全ヒト抗体
、例えば、アンタゴニスト完全ヒト抗体)またはその抗原結合性フラグメント(例えば、
1E1、2A6、3G7および/または2C1)は、他の化学療法剤、例えば抗体または
その抗原結合性フラグメントと組合される。本発明の1つの実施形態においては、他の化
学療法剤としては、制吐薬、エリスロポエチン、GM-CSF、ワクチン、抗PD-L1
抗体またはその抗原結合性フラグメント、抗PD-L2抗体またはその抗原結合性フラグ
メント、抗PD1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブま
たはニボルマブ)、5-フルオロウラシル(5-FU)、白金化合物、ベバシズマブ、ダ
ウノルビシン、ドキソルビシン、テモゾロミドトポテカン、イリノテカン、パクリタキセ
ル、ドセタキセル、イマチニブまたはリツキシマブである。
【0317】
「組合される(組合された)」なる語は、成分、本発明の抗ILT4抗体(例えば、完
全ヒト抗体、例えば、アンタゴニスト完全ヒト抗体)またはその抗原結合性フラグメント
(例えば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)、および例えばペンブロリズ
マブまたはニボルマブのような別の物質が、例えば同時運搬のために単一組成物へと製剤
化(処方)されることが可能であり、あるいは2以上の組成物(例えば、キット)に別々
に製剤化されることが可能であることを示す。各成分は、その他の成分が投与される時点
とは異なる時点で対象に投与され、例えば、各投与は、ある時間にわたって、間隔をあけ
て非同時(例えば、別々または連続的)に行われうる。更に、そのような別々の成分は、
同じ経路または異なる経路[例えば、この場合、抗ILT4抗体(例えば、完全ヒト抗体
、例えば、アンタゴニスト完全ヒト抗体)またはその抗原結合性フラグメント(例えば、
1E1、2A6、3G7および/または2C1)は非経口投与され、パクリタキセルは経
口投与される]によって対象に投与されうる。
【0318】
アッセイならびに実験的および診断的用途
本発明は、本発明の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメントとILT4また
はその断片との複合体を形成させるための任意の方法を含み、該方法は、結合および複合
体形成に適した条件下、ILT4ポリペプチドまたは断片を抗ILT4抗体またはフラグ
メントと接触させることを含む。
【0319】
本明細書に開示されている抗ILT4抗体(例えば、完全ヒト抗体、例えば、アンタゴ
ニスト完全ヒト抗体)およびその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3
G7および/または2C1)は、アフィニティ精製剤として使用されうる。このプロセス
においては、当技術分野でよく知られた方法を用いて、抗ILT4抗体およびその抗原結
合性フラグメントを、固相、例えばセファデックス、ガラスもしくはアガロース樹脂また
は濾紙上に固定化する。固定化抗体またはフラグメントを、精製すべきILT4タンパク
質(またはその断片)を含有するサンプルと接触させ、ついで、固定化抗体またはフラグ
メントに結合したILT4タンパク質以外のサンプル中の物質を除去する適切な溶媒で支
持体を洗浄する。最後に、結合ILT4(例えば、プロテインA)を溶出する溶媒で支持
体を洗浄する。そのような固定化抗体およびフラグメントは、本発明の一部を構成する。
【0320】
本発明は、本発明の抗ILT4抗体およびその抗原結合性フラグメント(例えば、1E
1、2A6、3G7および/または2C1)を使用する、細胞に基づくELISA法を含
む。本発明の1つの実施形態においては、該方法は、細胞がILT4を含有するかどうか
を決定するためのものであり、該方法は、以下の:(i)ILT4の存在に関して試験さ
れる、固体表面(例えば、マイクロプレート)に固定化された細胞を、本発明の抗ILT
4抗体またはその抗原結合性フラグメントと接触させ、(ii)所望により、混合物を洗
浄して、未結合抗ILT4抗体またはフラグメントを除去し、(iii)抗ILT4抗体
またはフラグメントを、抗ILT4抗体またはフラグメントに結合する標識二次抗体また
はその抗原結合性フラグメントと接触させ、(iv)所望により、複合体を洗浄して未結
合抗体またはフラグメントを除去し、そして、(v)二次抗体またはフラグメント上の標
識の存在を検出する工程を含み、ここで、標識の検出は、ILT4を含有する細胞が固体
表面に固定化されていることを示す。
【0321】
本発明は、本明細書に開示されている抗ILT4抗体(例えば、完全ヒト抗体、例えば
、アンタゴニスト完全ヒト抗体)またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、
2A6、3G7および/または2C1)の使用を組み込んでいるELISAアッセイ(酵
素結合イムノソルベントアッセイ)を含む。例えば、サンプルがILT4またはそのフラ
グメントを含有するかどうかを決定するためのそのような方法は、以下の工程を含む:
(a)抗ILT4抗体(例えば、完全ヒト抗体、例えば、アンタゴニスト完全ヒト抗体
)またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7および/または
2C1)で基体(例えば、マイクロタイタープレートウェル、例えばプラスチックプレー
ト)をコーティングし;
(b)ILT4の存在に関して試験されるべきサンプルを基体に適用し;
(c)基体を洗浄して、サンプル中の未結合物質を除去し;
(d)ILT4抗原に同様に特異的である検出可能な様態で標識された抗体(例えば、
酵素結合抗体)を適用し;
(e)基体を洗浄して、未結合標識抗体を除去し;
(f)抗体上の標識を検出する;標識抗体が酵素結合体である場合には、酵素により検
出可能な例えば蛍光シグナルに変換される化学物質を適用する。
【0322】
標識、例えば基体に結合した標識の検出は、ILT4タンパク質の存在を示す。
【0323】
本発明の1つの実施形態においては、標識抗体またはその抗原結合性フラグメントはペ
ルオキシダーゼで標識され、これはABTS(例えば、2,2’-アジノ-ビス(3-エ
チルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))または3,3’,5,5’-テトラメチルベ
ンジジンと反応して、検出可能な変色をもたらす。あるいは、標識抗体またはフラグメン
トは、検出可能な放射性同位体(例えば、3H)で標識され、これは、シンチラントの存
在下、シンチレーションカウンターにより検出されうる。
【0324】
本発明の抗ILT4抗体(例えば、完全ヒト抗体、例えば、アンタゴニスト完全ヒト抗
体)またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7および/また
は2C1)は、ウエスタンブロットまたは免疫-タンパク質ブロット法において使用され
うる。そのような方法は本発明の一部を構成し、例えば、
(1)ILT4またはその断片の存在に関して試験すべきサンプルを含む膜または他の固
体基体を準備し[所望により、方法は、当技術分野で公知の方法(例えば、半乾燥ブロッ
ティングまたはタンクブロッティング)を用いて、(例えば、サンプル中のタンパク質の
PAGEまたはSDS-PAGE電気泳動分離からの)ILT4の存在に関して試験すべ
きサンプルから膜または他の固体基体上へタンパク質をトランスファー(転移)する工程
を含み]、そして、結合ILT4またはその断片の存在に関して試験すべき膜または他の
固体基体を、本発明の抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、1E
1、2A6、3G7および/または2C1)と接触させ;
(2)膜を1回以上洗浄して、未結合抗ILT4抗体またはフラグメントおよび他の未結
合物質を除去し;そして
(3)結合した抗ILT4抗体またはフラグメントを検出する、ことを含む。
【0325】
そのような膜は、例えば、非変性PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲルま
たはSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲル
においてILT4の存在に関して試験すべきタンパク質が(例えば、ゲルにおける電気泳
動分離の後で)トランスファー(転移)された、ニトロセルロースまたはビニル系(例え
ば、ポリビニリデンフルオリド(PVDF))膜の形態をとりうる。膜を抗ILT4抗体
またはフラグメントと接触させる前に、所望により、膜上の非特異的タンパク質結合部位
に結合するように、膜を例えば脱脂乾燥乳などでブロッキングしてもよい。
【0326】
結合した抗ILT4抗体またはフラグメントの検出は、膜または基体上およびサンプル
中にILT4タンパク質が存在することを示す。結合抗体またはフラグメントの検出は、
検出可能な様態で標識された二次抗体(抗免疫グロブリン抗体)に抗体またはフラグメン
トを結合させ、ついで二次抗体標識の存在を検出することによるものでありうる。
【0327】
本明細書に開示されている抗ILT4抗体(例えば、完全ヒト抗体、例えば、アンタゴ
ニスト完全ヒト抗体)およびその抗原結合性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3
G7および/または2C1)は、免疫組織化学的方法にも使用されうる。そのような方法
は本発明の一部を構成し、例えば、
(1)ILT4タンパク質の存在に関して試験すべき細胞(例えば、骨髄系細胞、例えば
、単球、マクロファージまたは樹状細胞)を本発明の抗ILT4抗体またはその抗原結合
性フラグメント(例えば、1E1、2A6、3G7および/または2C1)と接触させ、
そして
(2)細胞の表面上または内部の抗体またはフラグメントを検出する、ことを含む。
【0328】
抗体またはフラグメント自体が検出可能な様態で標識されている場合、それは直接的に
検出されうる。あるいは、抗体またはフラグメントは、検出可能な様態で標識された二次
抗体に結合されることが可能であり、この場合、ついで標識を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0329】
【
図1】1LT4-Hisに結合するp1E1(G1)の重水素標識ヒートマップである。
【
図2A】
図2Aおよび2Bは、ヒトILT4の結晶構造を示す。
図2Aは、ヒトILT4の構造上で位置決定された重水素標識レベルを示す。
図2Bは、HLA-Gと複合体形成したヒト1LT4のドメイン1および2の結晶構造を示す。ILT4、HLA-G重鎖およびベータ-2-ミクログロビンが示されている。残基LYREKKSASW(配列番号59)、TRIRPEL(配列番号60)、NGQF(配列番号61)およびHTGRYGCQ(配列番号62)を有するヒトILT4エピトープが示されている。
【
図2B】
図2Aおよび2Bは、ヒトILT4の結晶構造を示す。
図2Aは、ヒトILT4の構造上で位置決定された重水素標識レベルを示す。
図2Bは、HLA-Gと複合体形成したヒト1LT4のドメイン1および2の結晶構造を示す。ILT4、HLA-G重鎖およびベータ-2-ミクログロビンが示されている。残基LYREKKSASW(配列番号59)、TRIRPEL(配列番号60)、NGQF(配列番号61)およびHTGRYGCQ(配列番号62)を有するヒトILT4エピトープが示されている。
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、ILT4 HLA-G結合および1E1(G4)遮断を示す。ヒトILT4でトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞をFcブロックでブロッキングし、ついで滴定濃度の1E1(G4)(27μg/mLから開始、1:3希釈)またはhIgG4アイソタイプ対照(27μg/mL)と共にインキュベートした。
図3A.1E1(G4)またはhIgG4を蛍光色素標識ヤギ抗ヒトF(ab’)
2で検出し、フローサイトメトリーで検出した。
図3B.1E1(G4)前処理後、細胞を2μg/mL ビオチン化HLA-Fcまたは対照Fc(mVISTA-Fc)と共にインキュベートした。Fc結合をPE結合ストレプトアビジンで検出し、フローサイトメトリーで検出した。示されているプロットは3つの独立した実験の代表例である。示されているIC50およびEC50値はこれらの実験の平均+/-標準偏差である。
【
図3B】
図3Aおよび3Bは、ILT4 HLA-G結合および1E1(G4)遮断を示す。ヒトILT4でトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞をFcブロックでブロッキングし、ついで滴定濃度の1E1(G4)(27μg/mLから開始、1:3希釈)またはhIgG4アイソタイプ対照(27μg/mL)と共にインキュベートした。
図3A.1E1(G4)またはhIgG4を蛍光色素標識ヤギ抗ヒトF(ab’)
2で検出し、フローサイトメトリーで検出した。
図3B.1E1(G4)前処理後、細胞を2μg/mL ビオチン化HLA-Fcまたは対照Fc(mVISTA-Fc)と共にインキュベートした。Fc結合をPE結合ストレプトアビジンで検出し、フローサイトメトリーで検出した。示されているプロットは3つの独立した実験の代表例である。示されているIC50およびEC50値はこれらの実験の平均+/-標準偏差である。
【
図4】ILT4への非HLA-G MHCクラスIリガンドの結合およびp1E1(G1)遮断である。ヒトILT4でトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞を滴定濃度のp1E1(G1)(10μg/mLから開始、1:3希釈)またはhIgG1アイソタイプ対照(10μg/mL)で前処理した後、HLA-FもしくはCDIdの蛍光色素標識四量体またはHLA
*A2:01もしくはHLA
*B7:02の蛍光色素標識デキサマーと共にインキュベートした。四量体/デキサマーの結合をフローサイトメトリーで測定し、それぞれの平均蛍光強度をプロットした。各デキサマー/四量体に用いた希釈度/濃度は以下のとおりである:HLA
*A2:01-dexPE:1:25;HLA
*B7:02-dexFITC:1:25;CD1d-tetPE:1:50;HLA-F-tetPE:1μg/mL。
【
図5】
図5A~5Cは、ILT4へのANGPTLの結合およびp1E1(G1)遮断を示す。
図5A.ビオチン化ANGPTLタンパク質を、p1E1(G1)またはヒトIgG1と共に20分間プレインキュベートし、それぞれの最終濃度は20μg/mLであった。ついで溶液を、ヒトILT4でトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞に加え、更に30分間インキュベートした。ANGPTL結合をPE結合ストレプトアビジンで検出し、フローサイトメトリーにより分析した。また、PE標識HLA-G四量体を、陽性ILT4結合/ブロッキング対照として加えた。ANGPTLタンパク質はR&D SYSTEMSから購入し、ビオチン化した。
図5B.ヒトILT4でトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞をFcブロックでブロッキングし、ついで20μg/mLのp1E1(G1)またはhIgG1アイソタイプ対照と共にインキュベートした。インキュベーション後、p1E1(G1)またはhIgG1を蛍光色素標識ヤギ抗ヒトF(ab’)2で検出し、フローサイトメトリーにより分析した。
図5C.ベクター対照3A9 T細胞をANGPTL結合の陰性対照として使用した。抗体での処理を行わなかったこと以外は(A)に記載されているとおりに、細胞を処理した。
【
図6A】
図6Aおよび6Bは、ILTファミリー1E1(G4)結合特異性を示す。Uniprotデータベースに公開されているコンセンサス配列に由来するヒトILTファミリーメンバーでトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞を使用して、10μg/mLの一定量のhIgG4アイソタイプ対照抗体または1E1(G4)の結合を試験した。ベクター対照3A9 T細胞を、追加的な陰性対照として使用した。また、ILTファミリーメンバーの発現を示すために、商業的に入手可能なILT反応性抗体の結合が、それらのそれぞれのアイソタイプ対照と比較して示されている。示されているデータは、類似した結果を示す2つの実験の代表例である。図に埋め込まれた凡例を参照されたい。
【
図6B】
図6Aおよび6Bは、ILTファミリー1E1(G4)結合特異性を示す。Uniprotデータベースに公開されているコンセンサス配列に由来するヒトILTファミリーメンバーでトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞を使用して、10μg/mLの一定量のhIgG4アイソタイプ対照抗体または1E1(G4)の結合を試験した。ベクター対照3A9 T細胞を、追加的な陰性対照として使用した。また、ILTファミリーメンバーの発現を示すために、商業的に入手可能なILT反応性抗体の結合が、それらのそれぞれのアイソタイプ対照と比較して示されている。示されているデータは、類似した結果を示す2つの実験の代表例である。図に埋め込まれた凡例を参照されたい。
【
図7】1E1(G4)を使用する1LT4 3A9 T細胞トランスフェクタントからのIL-2放出のレスキューである。ヒトILT4でトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞を、可溶性1E1(G4)またはアイソタイプ対照(huIgG4)(27μg/mLから開始;0.3μg/mLまで3倍系列希釈)の存在下、プレート結合抗CD3抗体で処理した。24時間のインキュベーションの後、上清を除去し、マウスIL-2をELISAにより測定する。示されているプロットは5つの独立した実験の代表例である。示されているEC50値は、これらの実験の平均+/-標準偏差である。
【
図8】p1E1(G4)および1E1(G4)はマスト細胞脱顆粒のILT4:HLA-G誘導性抑制をレスキューした。マウスWTMCマスト細胞をヒト1LT4でトランスフェクトし、滴定濃度の1E1(G4)、p1E1(G4)またはhIgG4アイソタイプ対照(10μg/mLから開始、1:3希釈)で前処理した後、プレート結合抗CD200RIa(Clone DX89;1μg/mL)およびプレート結合HLA-G四量体(0.625μg/mL)で刺激した。1時間の刺激の後、マスト細胞から上清を回収して、比色定量酵素アッセイを用いてβ-ヘキソサミニダーゼの放出を測定することにより脱顆粒を評価した。示されているデータは、データポイント当たり3回の技術的反復を伴う2つの独立した実験の代表例である。
【
図9】
図9Aおよび9B。1E1(G4)は、炎症性骨髄サイトカインのLPS誘導性発現を増強した。健常患者からの全PBMCを白血球除去チャンバーから単離し、hIgG4(30μg/mL;白丸)または1E1(G4)(図には「1E1」と表示されている)(30μg/mL~3pg/mL;黒丸)の存在下、0.25μg/mL LPSで3日間処理した。刺激後、メソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery)マルチサイトカインアッセイキットを使用して、サイトカイン発現((
図9A)GM-CSFおよび(
図9B)TNFa)に関して上清をアッセイした。各色は個々の患者からのデータを表す。いずれの刺激も伴わない状態も示されている(閉じた三角形)。
【
図10】
図10Aおよび10B。1E1(G4)は炎症性骨髄サイトカインの抗CD3誘導性発現を増強した。(A~B)健常患者からの全PBMCを白血球除去チャンバーから単離し、hIgG4(30μg/mL;白丸)または1E1(G4)(図には「1E1」と表示されている)(30μg/mL~3pg/mL、黒丸)の存在下、0.01μg/mL 抗CD3(HIT3a)で3日間処理した。刺激後、メソスケールディスカバリーマルチサイトカインアッセイキットを使用して、サイトカイン発現(GM-CSF((
図10A)およびTNFa(
図10B))に関して上清をアッセイした。各色は個々の患者からのデータを表す。いずれの刺激も伴わない状態も示されている(閉じた三角形)。
【
図11A】
図11A~11E。p1E1(G4)治療は、ヒト化マウスSKMEL5腫瘍モデルにおいて腫瘍成長抑制をもたらす。2名の異なる臍帯血ドナーからのCD34+ 臍帯血移植ヒト化NSGマウスの左脇腹に1×10
6個のSKMEL5腫瘍細胞を皮下接種した。接種後、腫瘍を成長させ、150mm
3の平均サイズに達した腫瘍を6つの群に無作為に分けた(各幹細胞ドナーから3;群全体でn=6)。ついでマウスを5日ごとにhIgG4アイソタイプ対照またはp1E1(G4)(それぞれ20mg/kg)でチャレンジし、研究の終了まで腫瘍および体重を毎週測定した。アイソタイプ対照およびp1E1(G4)処理マウスにおける腫瘍成長を経時的に追跡した。
図11Aは両群の経時的な平均腫瘍体積(mm
3)+/-SDを示し、
図11Bおよび11Cは、それぞれ、アイソタイプ処理体およびp1E1(G4)処理体の経時的な個々のマウス腫瘍体積(mm
3)を示す。
図11Dは、経時的に追跡されたアイソタイプ対照またはp1E1(G4)で処理された個々のマウスの腫瘍重量を示し、
図11Eは、各治療群の体重減少も経時的に測定されたことを示している。研究の終了後、マウスを犠死させ、腫瘍を採取し、体重を測定した。
【
図11B】
図11A~11E。p1E1(G4)治療は、ヒト化マウスSKMEL5腫瘍モデルにおいて腫瘍成長抑制をもたらす。2名の異なる臍帯血ドナーからのCD34+ 臍帯血移植ヒト化NSGマウスの左脇腹に1×10
6個のSKMEL5腫瘍細胞を皮下接種した。接種後、腫瘍を成長させ、150mm
3の平均サイズに達した腫瘍を6つの群に無作為に分けた(各幹細胞ドナーから3;群全体でn=6)。ついでマウスを5日ごとにhIgG4アイソタイプ対照またはp1E1(G4)(それぞれ20mg/kg)でチャレンジし、研究の終了まで腫瘍および体重を毎週測定した。アイソタイプ対照およびp1E1(G4)処理マウスにおける腫瘍成長を経時的に追跡した。
図11Aは両群の経時的な平均腫瘍体積(mm
3)+/-SDを示し、
図11Bおよび11Cは、それぞれ、アイソタイプ処理体およびp1E1(G4)処理体の経時的な個々のマウス腫瘍体積(mm
3)を示す。
図11Dは、経時的に追跡されたアイソタイプ対照またはp1E1(G4)で処理された個々のマウスの腫瘍重量を示し、
図11Eは、各治療群の体重減少も経時的に測定されたことを示している。研究の終了後、マウスを犠死させ、腫瘍を採取し、体重を測定した。
【
図11C】
図11A~11E。p1E1(G4)治療は、ヒト化マウスSKMEL5腫瘍モデルにおいて腫瘍成長抑制をもたらす。2名の異なる臍帯血ドナーからのCD34+ 臍帯血移植ヒト化NSGマウスの左脇腹に1×10
6個のSKMEL5腫瘍細胞を皮下接種した。接種後、腫瘍を成長させ、150mm
3の平均サイズに達した腫瘍を6つの群に無作為に分けた(各幹細胞ドナーから3;群全体でn=6)。ついでマウスを5日ごとにhIgG4アイソタイプ対照またはp1E1(G4)(それぞれ20mg/kg)でチャレンジし、研究の終了まで腫瘍および体重を毎週測定した。アイソタイプ対照およびp1E1(G4)処理マウスにおける腫瘍成長を経時的に追跡した。
図11Aは両群の経時的な平均腫瘍体積(mm
3)+/-SDを示し、
図11Bおよび11Cは、それぞれ、アイソタイプ処理体およびp1E1(G4)処理体の経時的な個々のマウス腫瘍体積(mm
3)を示す。
図11Dは、経時的に追跡されたアイソタイプ対照またはp1E1(G4)で処理された個々のマウスの腫瘍重量を示し、
図11Eは、各治療群の体重減少も経時的に測定されたことを示している。研究の終了後、マウスを犠死させ、腫瘍を採取し、体重を測定した。
【
図11D】
図11A~11E。p1E1(G4)治療は、ヒト化マウスSKMEL5腫瘍モデルにおいて腫瘍成長抑制をもたらす。2名の異なる臍帯血ドナーからのCD34+ 臍帯血移植ヒト化NSGマウスの左脇腹に1×10
6個のSKMEL5腫瘍細胞を皮下接種した。接種後、腫瘍を成長させ、150mm
3の平均サイズに達した腫瘍を6つの群に無作為に分けた(各幹細胞ドナーから3;群全体でn=6)。ついでマウスを5日ごとにhIgG4アイソタイプ対照またはp1E1(G4)(それぞれ20mg/kg)でチャレンジし、研究の終了まで腫瘍および体重を毎週測定した。アイソタイプ対照およびp1E1(G4)処理マウスにおける腫瘍成長を経時的に追跡した。
図11Aは両群の経時的な平均腫瘍体積(mm
3)+/-SDを示し、
図11Bおよび11Cは、それぞれ、アイソタイプ処理体およびp1E1(G4)処理体の経時的な個々のマウス腫瘍体積(mm
3)を示す。
図11Dは、経時的に追跡されたアイソタイプ対照またはp1E1(G4)で処理された個々のマウスの腫瘍重量を示し、
図11Eは、各治療群の体重減少も経時的に測定されたことを示している。研究の終了後、マウスを犠死させ、腫瘍を採取し、体重を測定した。
【
図11E】
図11A~11E。p1E1(G4)治療は、ヒト化マウスSKMEL5腫瘍モデルにおいて腫瘍成長抑制をもたらす。2名の異なる臍帯血ドナーからのCD34+ 臍帯血移植ヒト化NSGマウスの左脇腹に1×10
6個のSKMEL5腫瘍細胞を皮下接種した。接種後、腫瘍を成長させ、150mm
3の平均サイズに達した腫瘍を6つの群に無作為に分けた(各幹細胞ドナーから3;群全体でn=6)。ついでマウスを5日ごとにhIgG4アイソタイプ対照またはp1E1(G4)(それぞれ20mg/kg)でチャレンジし、研究の終了まで腫瘍および体重を毎週測定した。アイソタイプ対照およびp1E1(G4)処理マウスにおける腫瘍成長を経時的に追跡した。
図11Aは両群の経時的な平均腫瘍体積(mm
3)+/-SDを示し、
図11Bおよび11Cは、それぞれ、アイソタイプ処理体およびp1E1(G4)処理体の経時的な個々のマウス腫瘍体積(mm
3)を示す。
図11Dは、経時的に追跡されたアイソタイプ対照またはp1E1(G4)で処理された個々のマウスの腫瘍重量を示し、
図11Eは、各治療群の体重減少も経時的に測定されたことを示している。研究の終了後、マウスを犠死させ、腫瘍を採取し、体重を測定した。
【
図12】
図12A~12Dは、1E1(G4)処理がヒト化マウスSK-MEL-5腫瘍モデルにおいて腫瘍成長抑制をもたらしたことを示す。
図12Aは1E1(G4)処置マウスおよびIgG4アイソタイプ対照処理マウスの両方における経時的な平均腫瘍体積(mm
3)+/-SDを示す。
図12Bは両群の経時的な体重変化を示す。
図12Cは、アイソタイプ対照または1E1(G4)で処理された個々のマウスにおけるエンドポイント腫瘍重量を示す。
図12Dは、アイソタイプ対照または1E1(G4)で処理された個々のマウスにおけるエンドポイント脾臓重量を示す。
【
図13】ILT4ハプロタイプ結合を示す。ヒトILT4対立遺伝子変異体でトランスフェクトされたマウス3A9 T細胞を使用して、10μg/mLの一定量のhIgG4アイソタイプ対照抗体または1E1(G4)の結合を試験した。追加的な陰性対照として、ベクター対照3A9 T細胞を使用した。ハプロタイプは表2に説明されている。示されているデータは、類似した結果を示す2つの実験の代表例である。
【
図14A】
図14Aおよび14B。公開データベースによる種々の腫瘍型または細胞型におけるILT4 RNA発現を示す。
図14AはTCGAデータベースによる種々の腫瘍型におけるILT4 RNA発現を示す。
図14BはBlueprintデータベースによる種々の細胞型におけるILT4 RNA発現を示す。
【
図14B】
図14Aおよび14B。公開データベースによる種々の腫瘍型または細胞型におけるILT4 RNA発現を示す。
図14AはTCGAデータベースによる種々の腫瘍型におけるILT4 RNA発現を示す。
図14BはBlueprintデータベースによる種々の細胞型におけるILT4 RNA発現を示す。
【
図15A】
図15Aおよび15Bは、腎細胞癌(RCC)(
図15A)および結腸直腸癌(CRC)(
図15B)腫瘍組織培養サンプルからの骨髄細胞への1E1(G4)の結合を示す。
【
図15B】
図15Aおよび15Bは、腎細胞癌(RCC)(
図15A)および結腸直腸癌(CRC)(
図15B)腫瘍組織培養サンプルからの骨髄細胞への1E1(G4)の結合を示す。
【
図16】チャイニーズハムスター卵巣細胞において産生されるモノクローナル抗体の主要N-結合グリカン(CHO N-結合グリカン)および操作された酵母細胞において産生されるモノクローナル抗体の主要N-結合グリカン(操作酵母N-結合グリカン):正方形:N-アセチルグルコサミン(GlcNac);丸:マンノース(Man);菱形:ガラクトース(Gal);三角形:フコース(Fuc)。
【
図17】
図17は、ヒト化マウスSK-MEL-5腫瘍モデルにおける種々の高ILT抗体の抗腫瘍効力を示す。
【0330】
実施例
これらの実施例は本発明を例示することを意図したものであり、本発明を限定するもの
ではない。実施例に記載されている組成物および方法は本発明の一部を構成する。
【0331】
本明細書中で用いる「p1E1(G1)」なる語は、ヒトIgG1およびヒトラムダ定
常ドメインを有する生殖細胞系V遺伝子であるそれぞれIGHV4-34
*0およびIG
LV1-40
*01に由来する完全ヒト抗ILT4 1E1 mAbを意味する。
【化11】
【0332】
本明細書中で用いる「p1E1(G4)」は、ヒトIgG4(S228P)およびヒト
ラムダ定常ドメインを有する生殖細胞系V遺伝子であるそれぞれIGHV4-34
*0お
よびIGLV1-40
*01に由来する完全ヒト抗ILT4 1E1(重鎖内の突然変異
Q1Eおよび軽鎖内のQ1Eを有する)mAbを意味する。
【化12】
【0333】
本明細書中で用いる「1E1(G4)」は、ヒトIgG4(S228P)およびヒトラ
ムダ定常ドメインを有する生殖系列V遺伝子であるそれぞれIGHV4-34
*0および
IGLV1-40
*01に由来する完全ヒト抗ILT4 1E1(軽鎖内の突然変異Q1
EおよびN53Dならびに重鎖内のQ1EおよびS54Aを有する)mAbを意味する。
【化13】
【0334】
実施例1:抗ILT4抗体の同定および特徴づけ
抗体の製造および同定
RETROCYTE DISPLAYプラットフォームを使用して、抗ILT4親ヒト
mAb 1E1を同定した(Breous-Nystromaら,Methods 65
(1):57-67(2014))。RETROCYTE DISPLAYプラットフォ
ームは、哺乳動物プレB細胞内へのヒト抗体遺伝子のレトロウイルス遺伝子導入を利用し
て、安定した高多様性抗体ディスプレイライブラリーを作製する。ナイーブB細胞を含有
するヒト臍帯血を抗体の重鎖および軽鎖の原料として使用した。細胞性抗体ライブラリー
は、典型的には、プレB細胞の細胞表面上に108個を超える異なる完全長(hIgG1
~4アイソタイプ)モノクローナルヒト抗体を発現した。
【0335】
3つの別々のRETROCYTE DISPLAYスクリーニングキャンペーンにおい
て特定された抗体ヒットから抗体プレパネルを集めた。B細胞クローンへの組換えヒトI
LT4抗原結合のFACS検出に基づいて、候補体を富化させた。推定B細胞クローンを
選別し、それらの抗体配列を決定した。ついでこれらの配列を使用して抗体候補を得、I
LT4 CHOトランスフェクタント細胞結合アッセイを用いてILT4結合を確認し、
親CHO細胞を陰性対照として使用した。また、候補体を、密接に関連するILTファミ
リーメンバー(ヒトILT2、LILRA1およびLILRA2 CHOトランスフェク
タントFACS)に対して、およびフローサイトメトリー評価によるILTファミリーメ
ンバー(LILRA1、LILRA2、LILRA4、LILRA5、LILRA6、I
LT2、ILT5およびILT3)に対して、ILT4特異性に関してカウンタースクリ
ーニングした。
【0336】
モノクローナル抗体を、カニクイザルILT4(NCBIからの推定配列)CHOトラ
ンスフェクタントに結合するそれらの能力に関してFACSにより更に試験した。また、
候補mAbを、Luminexに基づくアッセイにおいては組換えILT4タンパク質へ
の、そしてFACSに基づくアッセイにおいてはILT4発現CHO細胞への組換えHL
A-G Fcリガンドの結合を遮断するそれらの能力に関してスクリーニングした。候補
抗体機能活性を、以下の3つの方法により評価した:1)ILT4トランスフェクト化マ
ウス3A9 T細胞における自発的IL2抑制のレスキュー;2)マウスWTMC IL
T4トランスフェクタントにおけるCD200RLa刺激マスト細胞脱顆粒のHLA-G
依存的抑制のレスキュー;および3)全PBMC混合リンパ球反応におけるサイトカイン
調節。
【0337】
前記のスクリーニング基準に基づいて、8つの抗ILT4抗体(1E1、1G2、2A
6、2D5、3E6、3G7、2C1および5A6)を、それらの機能的および生物物理
学的特性に基づいて選択した。抗体を更に分析し、一連の生体機能アッセイ、生物物理学
的アッセイおよび物理化学的アッセイにおいて再評価した。機能アッセイは、前記の3A
9細胞のIL-2抑制およびマスト細胞脱顆粒の抗体媒介性用量依存的レスキューを評価
した。Luminexおよび細胞に基づくリガンド遮断アッセイおよびリガンド競合アッ
セイを行い、ILT4標的抗原、オフターゲット抗原およびPBMCサブセットに対する
結合特性およびアフィニティを、それぞれBiacoreおよびフローサイトメトリーに
基づくアッセイを用いて決定した。生物物理学的アッセイは、抗体の安定性(温度、pH
)および分解ならびに凝集挙動を評価した。潜在的な抗体産生リスクを排除するために、
配列ライアビリティ(liability)および潜在的翻訳後修飾モチーフに関する対
処を行った。最後に、SKMEL5メラノーマ・チャレンジ・ヒト化マウスを使用するイ
ンビボ腫瘍退縮試験において候補体を試験した。
【0338】
生物物理学的特性
CHO細胞において一過性に発現されたヒト1E1配列(S228P突然変異を有する
ヒトIgG4バックボーン)に関して研究を行った。1E1は以下の物理化学的特性を示
した:計算された等電点(PI)および実験で決定された等電点(PI)は、それぞれ、
約7.29および約7.2であり、凝集レベル(HMW種)は5%未満であり、Tm開始
は60℃を超え、Tm1は約65.2℃であり、Tm2は約78.8℃であり、少なくと
も5回の凍結/解凍サイクルで安定していた。1E1の配列は元々VH-CDR2におい
てN-グリコシル化部位を有していたが、これは、BIACOREによる結合および機能
アッセイにおいて悪影響を与えることなくS54A突然変異によって成功裏に矯正された
。ストレス研究は、VL-CDR3におけるN53残基の脱アミド化を示した(高pH条
件下で13%超)。N53は、結合および機能アッセイ(1E1を使用するILT4 3
A9 T細胞トランスフェクタントからのIL-2放出のレスキュー)に悪影響を与える
ことなく、成功裏に矯正された(N53D)。脱アミド化による不均一性のリスクを低減
するために、1E1 VHおよびVLにおけるN末端Q残基の両方をEに突然変異させた
(VH-Q1EおよびVL-Q1E)。突然変異1E1配列(1E1 VH Q1E、S
54A/VL Q1E、N53D)IgG4 S228P/ラムダ)に関して行ったスト
レス研究は、AAPH(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩)での6
時間の強制酸化条件下、結合および機能に対する最小の影響を伴って、VH-CDR3に
おけるW102残基の約17%の酸化を示した。AAPHは、TrpおよびMet残基の
酸化を強制するために使用される。同じ条件下、VHフレームワークにおけるW7の約8
%の酸化が検出され、結合および機能に対する影響は認められなかった。ペプチドマッピ
ングにより、約8%のアフコシル化抗体が検出された。この知見は、一過性にトランスフ
ェクトされたCHO細胞において発現された分子に関連している可能性がある。
【0339】
エピトープマッピング
抗体クローンp1E1(G1)のILT4上のエピトープを、水素-重水素交換質量分
析により特定した。抗体p1E1(G1)をILT4の組換えヒスチジンタグ付き細胞外
ドメインと予め混合し、ついで複合体を重水素バッファー中でインキュベートした。重水
素の取り込み量を質量分析により測定した。ILT4残基LYREKKSASW(シグナ
ル配列を伴わないILT4の39~48)(配列番号59)およびTRIRPEL(シグ
ナル配列を伴わないILT4の50~56(配列番号60)、そしてより低い度合であっ
たがNGQF(シグナル配列を伴わないILT4の59~62(配列番号61)およびH
TGRYGCQ(シグナル配列を伴わないILT4の71~78)(配列番号62)は、
抗原のみのサンプルと比較して重水素標識における最大の差異を示すものとして特定され
、このことは、それらがp1E1(G1)と相互作用する残基である可能性が高いことを
示している(
図1)。これらのペプチドは、ILT4のドメイン1上に存在する。より少
ない重水素標識差異を示したドメイン1および2上の他のペプチドは、抗体結合の際のコ
ンホメーション安定性により保護されている可能性がある。ドメイン3および4において
は標識における有意な差異は見られなかった。
【0340】
ヒトILT4の結晶構造上にマッピングされた場合、p1E1(G4)により保護され
た残基は、3つのベータ鎖とループとを含む非線形コンホメーションエピトープを形成す
る(
図2A)。
【0341】
ILT4は以下の2つの結合境界を用いて、そのリガンドであるHLA-Gに嵌合する
(Shiroishiら,2006):ILT4のドメイン2内に位置するベータ-2-
ミクログロブリン結合のための部位1、およびILT4のドメイン1内に位置するHLA
-G重鎖結合のための部位2(
図2B)。部位1は、ILT4残基Trp-67、Asp
-177、Asn-179およびVal-183(Shiroishiらによる番号付け
,2006)を含む。部位2は、ILT4残基Arg-36、Tyr-38、Lys-4
2、Ile-47およびThr-48(Shiroishiらによる番号付け,2006
)を含む。本出願のHDX-MSデータは、Tyr-38、Lys-42およびThr-
48(Shiroishiらによる番号付け,2006)がヒトILT4の残基Tyr-
40、Lys-44およびThr-50としてのILT4ドメイン1上のp1E1(G1
)エピトープの一部であることを示している。(
図2A)。これは、p1E1(G1)に
より結合されたヒトILT4エピトープが、HLA-Gリガンドにより結合された部位2
エピトープと重複することを示している。
【0342】
実施例2:抗ILT4 mAb 1E1のアフィニティ、結合および遮断特性
表面プラズモン共鳴(SPR)により決定されたヒトILT4に対する1E1(G4)お
よびHLA-G1の結合アフィニティ
ILT4-His(可溶性ILT4タンパク質を生成するようにポリヒスチジンタグに
融合したヒトILT4の組換え細胞外ドメイン)への1E1(G4)およびHLA-G1
Fc(可溶性HLA-G1タンパク質を生成するようにヒトIgG1 Fcドメインに
融合したHLA-Gの組換え細胞外ドメイン(アイソフォーム1))の結合を、Biac
oreにより評価した。1E1(G4)またはHLA-G1 Fcのいずれかを、Fc捕
捉によりBiacoreチップ上に捕捉した。ついで単量体ILT4-Hisを結合に関
して試験し、データは、ILA4-HisがHLA-G1 Fcより600倍高いアフィ
ニティで1E1(G4)に結合することを示した(表3)。
【表3】
【0343】
Biacore T200(GE HEALTHCARE)装置での表面プラズモン共
鳴(SPR)アッセイを用いて、ポリヒスチジンタグ付きヒトILT4(ILT4-Hi
s)に対する抗ヒトILT4 IgG4 mAb(1E1(G4))およびHLA-G1
Fc融合(HLA-G1-Fc)の1価アフィニティを決定した。mAbまたはFc融
合タンパク質のいずれかを、ヒトFc捕捉キット(GE HEATHCARE)を使用し
て調製したCM5センサーチップ上に捕捉し、この表面に一連の滴定濃度のILT4-H
isを注入した。Biacore T200評価ソフトウェアを使用して、各滴定系列を
1:1結合モデルにフィットさせた。結合(ka、M-1 s-1)および解離(kd、
s-1)速度定数を滴定の各セットに関して決定し、各滴定に関する解離定数であるKD
(M)=koff/konを計算するために用いた。表1に示されているとおり、ヒトI
LT4-Hisに対する1E1(G4)mAbおよびHLA-G1-Fcの1価アフィニ
ティ(KD)は、それぞれ、17nMおよび11μMであり、630倍の差異がKD比に
より示された。高速のkaおよびkd速度論定数ゆえに、定常状態近似(SSA)も用い
て、ILT4-Hisに対するHLA-G1-Fcの低いアフィニティを確認した。
【0344】
1E1(G4)を使用するILT4 3A9 T細胞トランスフェクタントへのHLA-
G結合の遮断
ILT4 3A9 T細胞トランスフェクタントを1E1(G4)またはアイソタイプ
対照で種々の用量で前処理し、ついで1E1(G4)の二次検出を行い(
図3A)、また
は一定濃度のビオチン化HLA-G1 Fcキメラで処理して、同族(コグネイト)リガ
ンドを1E1(G4)が遮断する能力を評価した(
図3B)。1E1(G4)およびHL
A-G Fcをフローサイトメトリーにより検出した。データは、1E1(G4)がHL
A-G1 Fc結合を用量依存的に遮断したことを示している。
【0345】
Luminex(ルミネックス)および細胞に基づくリガンド遮断および競合アッセイ
抗体1E1、2A6、2C1および3G7を、CHO/ILT4+ 細胞により発現さ
れた又はビーズに結合したILT4抗原との組換え二量体HLA-Gの相互作用を阻害す
るそれらの可能性に関して、Luminexおよび細胞に基づくリガンド遮断アッセイお
よびリガンド競合アッセイにおいて試験した。
【0346】
Luminexに基づくリガンド遮断および競合アッセイは、Luminexビーズに
化学的に結合した組換えヒトILT4抗原を使用した。遮断アッセイにおいては、抗IL
T4抗体1E1、2A6、2C1または3G7の或る用量範囲(1:3系列希釈における
0.5~9,000ng/mL)のhIgG4変異体と共にビーズをプレインキュベート
した。ついでビーズ結合ILT4抗原を50nMの濃度における可溶性ビオチン化HLA
-G/Fc融合タンパク質への結合に関して試験した。Luminexリガンド競合アッ
セイにおいては、抗原結合Luminexビーズを50nMの濃度における可溶性ビオチ
ン化HLA-G/Fc融合タンパク質と共にプレインキュベートした後、抗ILT4抗体
1E1、2A6、2C1または3G7のhIgG4変異体の用量滴定体(1:3系列希釈
における0.5~9,000ng/mL)と共にプレインキュベートした。どちらのアッ
セイ設定においても、ILT4:HLA-G相互作用が抗ストレプトアビジン-PE抗体
で検出され、IC
50値を決定した。全ての試験抗体がLuminex結合ILT4/F
cへのHLA-G結合の用量依存的遮断を示し、IC
50値を表4に要約する。全ての試
験抗体は、Luminexビーズ結合ILT4/Fcへの結合に関して、HLA-Gとの
用量依存的競合も示した(データ非表示)。
【表4】
【0347】
細胞に基づくリガンド遮断およびリガンド競合アッセイは、Luminexに基づくア
ッセイに関して記載されているのと同様の原理に従い、抗原の表面発現のためにCHO/
ILT4細胞系を使用した。遮断アッセイにおいては、1:3系列希釈における1~20
,000ng/mLの用量範囲を用いて、細胞を試験抗体と共にプレインキュベートした
。ついでILT4抗原を、5μg/mlの濃度における可溶性ビオチン化HLA-G/F
c融合タンパク質への結合に関して試験した。競合アッセイは逆の設定を用いた。細胞を
5μg/mlの濃度の可溶性ビオチン化HLA-G/Fc融合タンパク質と共にプレイン
キュベートした後、試験抗体の用量滴定体を1:3系列希釈における1~20,000n
g/mLの範囲で加えた。ILT4:HLA-G相互作用が抗ストレプトアビジン-PE
抗体で検出された。全ての試験抗体はCHO発現ILT4へのHLA-G結合の用量依存
的遮断を示し、IC
50値を表5に要約する。全ての試験抗体は、CHO発現ILT4へ
の結合に関して、HLA-Gとの用量依存的競合も示した(非表示データ)。
【表5】
【0348】
p1E1(G1)を使用するILT4 3A9 T細胞トランスフェクタントへの非HL
A-G MHCクラスIリガンド結合の遮断
ILT4 3A9 T細胞トランスフェクタントを種々の用量のp1E1(G1)また
はhIgG1アイソタイプ対照と共に前処理し、ついで一定濃度の蛍光色素標識HLA-
FもしくはCD1d四量体またはHLA-A02:01もしくはHLA
*B7:02デキ
サマーで処理して、非HLA-G MHCクラスIリガンドをp1E1(G1)が遮断す
る能力を評価した。ILT4へのHLA-A、HLA-BおよびHLA-Fの結合は、用
量滴定可能な様態で、p1E1(G1)により阻害され(
図4)、このことは、p1E1
(G1)が他の報告されているMHCクラスIリガンドを遮断しうることを示している。
【0349】
p1E1(G1)を使用するILT4 3A9 T細胞トランスフェクタントへのANG
PTL結合の遮断
アンジオポエチン様(ANGPTL)タンパク質は、ヒト造血幹細胞により発現された
ILT4に結合することが最近報告された(Zhengら,Nature.2012年5
月30日;485(7400):656-60およびDengら,Blood.2014
年8月7日;124(6):924-35)。ILT4へのANGPTLファミリーメン
バーの結合をp1E1(G1)が遮断しうるかどうかを試験するために、商業的に入手可
能なANGPTLタンパク質またはタンパク質断片を購入し、p1E1(G1)で前処理
されたILT4 3A9 T細胞トランスフェクタントへの結合に関して試験した。結合
データが示すところによると、試験したタンパク質濃度において、ANGPTL1、4お
よび潜在的に7は、ILT4には結合可能であり、ベクター対照細胞には結合できなかっ
た。p1E1(G1)は飽和用量でANGPTLタンパク質の結合を完全に遮断すること
が可能であった(
図5)。
【0350】
ヒトILT 3A9 T細胞トランスフェクタントへの1E1(G4)のILTファミリ
ー特異的結合
ヒトILT4、ILT2、ILT3(2つの変異体)、ILT5、LILRB5、LI
RLA1、LIRLA2、ILT7、ILT8またはILT11を発現するようにトラン
スフェクトされた3A9 T細胞系を使用する細胞に基づくフローサイトメトリーにより
、ヒトILTファミリーメンバーへの1E1(G4)のILTファミリー特異的結合を評
価した。1E1(G4)はヒトILT4に特異的に結合し、試験された他のいずれのIL
Tファミリーメンバーとの交差反応性をも示さなかった(
図6Aおよび6B)。
【0351】
実施例3:操作された細胞および初代細胞における抗ILT4 mAb 1E1の生物活
性
操作されたILT4 3A9細胞に基づくアッセイにおいてインターロイキン2抑制を1
E1(G4)、2A6、2C1および3G7が逆転させる能力
抗CD3抗体を使用して、対照マウス3A9 T細胞を刺激して、IL-2放出を増加
させた。これとは対照的に、ILT4 3A9 T細胞トランスフェクタントは、CD3
刺激の存在下、IL 2を発現させることができず、これはおそらく、マウスMHCクラ
スI分子とILT4との交差反応性または未知の異種リガンドによるものであろう。この
相互作用はILT4受容体の自発的な多量体化/活性化をもたらして、抗CD3媒介IL
-2放出の抑制をもたらすようであった。したがって、ILT4に機能的に結合し、異種
リガンドとのILT4の相互作用を遮断し、および/または受容体多量体化を阻害する抗
体は、IL放出を回復させるはずである。
【0352】
1E1(G4)、2A6、2C1および3G7を、ILT4マウス3A9 T細胞トラ
ンスフェクタントのIL-2放出の媒介に関して試験した。1E1(G4)、2A6、2
C1または3G7をILT4+ マウス3A9 T細胞トランスフェクタントに加え、2
4時間の抗CD3媒介性細胞刺激の後、IL-2放出をELISAにより測光的に測定し
た。1E1(G4)の代表的な用量反応曲線を
図7に示す。試験抗体のEC
50値を用量
反応曲線から決定し、表6に示す。
【表6】
【0353】
WTMC(野生型マスト細胞)マウス細胞脱顆粒アッセイ(定性的のみ)
p1E1(G4)および1E1(G4)を、ILT4:HLA-G依存的マスト細胞脱
顆粒のレスキューに関して試験した。マウスWTMCマスト細胞にヒトILT4でトラン
スフェクトし、CD200RLaに対して産生されたプレート結合抗体で刺激した。CD
200RLaの抗体媒介性架橋は、CD220RLaの細胞内ドメイン内で見出されるI
TAMモチーフの活性化によるマスト細胞脱顆粒を引き起こした。脱顆粒は、アッセイ上
清における顆粒含量放出をアッセイすることにより比色法で測定されうる。プレート結合
HLA-G四量体の存在下、CD200RLa媒介性マスト細胞脱顆粒はILT4トラン
スフェクタントにおいて阻害された。プレート結合抗CD200RLaおよびHLA-G
四量体での刺激の前のp1E1(G4)または1E1(G4)でのILT4 WTMCト
ランスフェクタントの前処理は、用量滴定可能な様態で脱顆粒阻害を逆転させた(
図8)
。
【0354】
初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)による骨髄由来サイトカイン分泌に対する1E1(
G4)の効果
ヒト初代PBMC LPS刺激アッセイにおける1E1(G4)の評価
原型骨髄由来炎症性サイトカインであるTNFαの発現は、LPSで刺激された場合、
低レベルのILT4を発現する単球により発現されることが報告された。高いILT4発
現を示す単球はそれほど多量のTNFαを発現せず、ILT4の発現の欠如は、乾癬性関
節炎患者から単離された単球の特徴であることが判明した(Bergaminiら,PL
oS One.2014年3月27日;9(3):e92018)。単球上のILT4発
現は、炎症性刺激(例えば、LPS)の存在下、骨髄細胞エフェクター活性を阻害し、炎
症性サイトカイン誘導(例えば、TNFα)に拮抗しうる。したがって、健康なヒトドナ
ーから単離された全PBMCをLPSで処理し、炎症性骨髄性サイトカイン発現をILT
4拮抗作用が増強する能力を1E1(G4)で評価した。
図9Aおよび9Bは、それぞれ
3人のドナーによる3つの実験の1つからのデータを示し、1E1(G4)が、用量滴定
可能な様態でGM-CSFおよびTNFαの両方(共に骨髄由来サイトカイン)のLPS
依存的発現を増強したことを示している。
【0355】
ヒト初代PBMC抗CD3刺激アッセイにおける1E1(G4)の評価
最適以下のT細胞刺激の存在下で1E1(G4)処理がT細胞または骨髄性エフェクタ
ーサイトカイン発現を増強しうるかどうかを評価するために、健康なヒトドナーから単離
された全PBMCを抗CD3で処理してT細胞増殖を誘導し、サイトカイン発現をILT
4拮抗作用が修飾する能力を1E1(G4)で評価した。
図10Aおよび10Bは、それ
ぞれ3人のドナーによる3つの実験の1つからのデータを示し、1E1(G4)が、用量
滴定可能な様態でGM-CSFおよびTNFαの抗CD3依存的発現を増強したことを示
している。
【0356】
実施例4:ヒト化マウスSK-MEL-5腫瘍モデルにおける抗ILT4抗体の抗腫瘍効
果
ヒト化マウス腫瘍モデルにおける1E1、2A6、2C1および2D5の抗腫瘍効果
抗体1E1、2A6、2C1および2D5をインビボ腫瘍退縮アッセイにおいて試験し
た。ヒト化マウス(ヒト免疫細胞構成を確立するためにヒト造血幹細胞で再構成されたN
SGマウス)に1×10
6個のSKMEL5メラノーマ細胞(HLAクラスA
*02:0
1)を接種し、約35日後に150mm
3の平均サイズが観察されるまで、腫瘍成長をモ
ニターした。それぞれ6匹の動物を含む7つの無作為群のマウスに、アイソタイプ対照抗
体(hIgG1+hIgG4、それぞれ20mg/kg)または20mg/kgの以下の
抗ILT4抗体のいずれかを皮下投与した:1E1-IgG1、1E1-IgG1(N2
97Q)(Fcヌル突然変異体)、1E1-IgG4、2A6-IgG4、2C1-Ig
G4および2D5-IgG4。マウスに7日ごと(第35日、第42日、第49日、合計
3回投与)に投与し、腫瘍サイズを第63日まで測定した。結果は、アイソタイプ対照が
投与された動物と比較して、1E1(IgG1、IgG1-(N297Q)、IgG4)
、2A6-IgG4および2D5-IgG4で処理されたマウスにおいて腫瘍成長障害を
示した(
図17)。これとは対照的に、アイソタイプ対照または抗ILT4候補2C1の
いずれかで処理されたマウスは、腫瘍成長障害を示さなかった。
【0357】
ヒト化マウス腫瘍モデルにおけるp1E1(G4)の抗腫瘍効果
腫瘍成長阻害に関するp1E1(G4)のインビボ効果を試験するために、ヒト化マウ
ス腫瘍モデルを開発した。免疫不全NSGマウスをヒト造血幹細胞で再構成させた。末梢
ヒトCD45+ 免疫細胞(PBMCの25%以上)をマウスが有することを確認した後
、ヒト皮膚メラノーマ由来腫瘍系であるSK-MEL-5腫瘍細胞をそれらに接種した。
これらの細胞をHLA-Gのそれらの遺伝的発現に関して選択した。接種後、腫瘍を約1
50mm3のサイズまで成長させた。マウスを無作為に幾つかの群に分け、hIgG4ア
イソタイプ対照またはp1E1(G4)でチャレンジした。
【0358】
p1E1(G4)で処理されたマウスは、研究の経過にわたって腫瘍成長阻害を示した
(
図11A)。1つの完全な回帰および1つの部分的な回帰がp1E1(G4)で観察さ
れた(
図11C)。
【0359】
ヒト化マウス腫瘍モデルにおける1E1(G4)の抗腫瘍効果
1E1(G4)の抗腫瘍活性をヒト化マウスSK-MEL-5腫瘍モデルにおいて試験
した。このモデルにおいて、免疫不全NSG(NOD.Cg-Prkdcscid Il
2rgtm1Wjl/SzJ)マウスに照射し、臍帯血から単離されたヒトCD34+
造血幹細胞を注射した。数か月間の生着の後、マウスの血液中にヒト免疫細胞が検出され
うる。ついでヒトメラノーマ由来SK-MEL-5細胞系をマウスに皮下(SC)移植し
た。
【0360】
この研究では、3名の別々のドナーからのヒト臍帯血由来CD34+ 細胞を3~4週
齢で移植したNSGマウスに、約20週齢で1×10
6個のSK-MEL-5細胞をSC
注射した。SK-MEL-5腫瘍を担持するヒト化NSGマウスを、腫瘍接種の21日後
(D0腫瘍無作為化)に平均腫瘍サイズが約100mm
3になった際に、群当たりマウス
6匹(処理群当たり各ヒトCD34+ ドナーコホートからの3匹のマウス)で、2つの
処理群に割り当てた。20mg/kgの1E1(G4)またはhIgG4アイソタイプ対
照mAbの合計4用量を、7日ごとに腫瘍担持マウスにSC注射した。処理開始後7日ご
とに腫瘍体積をモニターした。1E1(G4)処理群における抗腫瘍効果は、アイソタイ
プ対照群より有意に大きかった(第28日~第49日まで、p
<0.001)(
図12A
)。1E1(G4)処理マウスにおけるエンドポイント腫瘍重量は、アイソタイプ処理マ
ウスの場合より低かった(
図12C)。全体として、結果はヒト化マウスSK-MEL-
5腫瘍モデルにおける20mg/kgの1E1(G4)の有意な抗腫瘍効果を示した。1
E1(G4)処理による体重に対する影響(
図12B)および脾臓重量に対する影響(図
12D)は認められなかった。
【0361】
実施例5:ヒトILT 3A9 T細胞トランスフェクタントへの1E1(G4)のIL
T4ハプロタイプ結合
公的に入手可能なデータ源(1Kゲノム・プロジェクト・フェーズ3(Genome
Project Phase 3))からの一塩基多型データを用いて、アフリカ、欧州
、アジアおよび南アジア集団に関するILT4対立遺伝子頻度を決定した。いずれかの集
団における5%以上の保有率で発現されたハプロタイプの配列(表7におけるハプロタイ
プ1、2、5、7、9および10)を決定し、3A9 T細胞において発現させた。1E
1(G4)は、抗体の飽和用量を使用して試験した全てのハプロタイプに結合した(
図1
3)。ハプロタイプ2は、Uniprotにおいて報告されているコンセンサス配列に対
応した。ハプロタイプ5を機能的アッセイおよびリガンドに基づくアッセイにおいて使用
した。ハプロタイプ結合データは、1E1(G4)が、試験した全ての対立遺伝子変異体
に結合することを示している。
【表7】
【0362】
実施例6:TCGAおよびBlueprintデータベースに基づく腫瘍型および細胞型
におけるILT4のRNA発現
Omicsoft(Qiagen,Cary,NC)により、公的に入手可能なRNA
seqデータセットを使用して、腫瘍型および細胞集団にわたるILT4の発現を決定し
た。TCGAデータセット(TCGA
B38
20171002
v4,https:
//gdc-portal.nci.nih.gov/)は、RNA-Seqデータを含
む11,292個のサンプルから構成される。Blueprintデータセット(Blu
eprint
B38
20170216
v2,http://www.bluepr
int-epigenome.eu/)は、RNA-Seqデータを含む55個の細胞型
からの258個の正常血液サンプルから構成される。RNAレベルでILT4の最高発現
を示す腫瘍型はLAML(すなわち、AML)、DLBC(すなわち、DLBCL)、T
GCT、MESO、KIRCを含む(
図14A)。RNAレベルでILT4の最高発現を
示す細胞型は好中球、単球、破骨細胞、好酸球、マクロファージおよび樹状細胞を含む(
図14B)。このデータセットにおいては、リンパ球は、低いILT4発現を示し、また
はILT4発現を全く示さなかった。1のFPKM(または0のLOG2(FPKM+0
.1))は最も広く受け入れられている発見的(ヒューリスティック)固定閾値であるが
、より低いFPKM値はサンプルにおける「低発現」遺伝子を報告しうる。
【0363】
実施例7:腫瘍組織培養サンプル由来の骨髄細胞への1E1(G4)の結合
組織培養を新鮮なヒト腫瘍サンプル(外科切除物)から調製し、20μg/mLの抗R
SV IgG4(アイソタイプ対照)または1E1(G4)で37℃で18~24時間処
理した。処理後、腫瘍薄片を単細胞浮遊液へと消化し、FACSのために染色した。ドッ
トプロットおよび等高線プロットはRCC(
図15A)またはCRC(
図15B)腫瘍組
織培養単細胞浮遊液からのFACSデータを表す。骨髄細胞全体は、CD66bおよび/
またはCD14の発現に基づいて4つのサブセットに細分されうる。これらの4つの骨髄
系サブセットを、非競合的な市販の抗ILT4-PE(BioLegend,カタログ番
号338706,San Diego,CA)を使用してILT4発現に関して、そして
抗IgG4二次抗体を使用して細胞表面結合1E1(G4)に関して同時に分析した。1
E1(G4)処理組織培養においては、ILT4+ 細胞と1E1(G4)+ 細胞との
間に良好な相関関係が認められた。これらのサンプルにおいては、腫瘍浸潤リンパ球はI
LT4-かつ1E1(G4)-であることが観察された。
【0364】
本発明は、本明細書に記載されている特定の実施形態により範囲において限定されるも
のではない。実際、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載されている実施形態、およ
び本明細書に具体的には記載されていない他の実施形態を含む。本明細書に具体的に記載
されている実施形態は必ずしも網羅的であるとは意図されない。本明細書に記載されてい
るものに加えて、本発明の種々の修飾が前記説明から当業者に明らかとなるであろう。そ
のような修飾は特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0365】
特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコルが本出願の全体にわたって引用さ
れており、それらの開示の全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れる
こととする。
【0366】
配列表
本明細書は配列表のコンピューター可読形態(CRF)コピーと共に出願されている。
2018年3月22日付けで作成され128,042バイトのサイズを有する24443
PCT SEQLIST.txtなる名称のCRFの全体を参照により本明細書に組み
入れることとする。
【配列表】