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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06G 7/60 20060101AFI20231130BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20231130BHJP
   G06G 7/16 20060101ALI20231130BHJP
   G06G 7/14 20060101ALI20231130BHJP
   G06G 7/184 20060101ALI20231130BHJP
   G06V 30/144 20220101ALI20231130BHJP
   G06N 3/065 20230101ALI20231130BHJP
【FI】
G06G7/60
G09G5/00 550C
G06G7/16 510
G06G7/14
G06G7/184
G06V30/144
G06N3/065
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022183317
(22)【出願日】2022-11-16
(62)【分割の表示】P 2019503813の分割
【原出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2023029840
(43)【公開日】2023-03-07
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2017045618
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017045685
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017123951
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】原田 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒川 義元
(72)【発明者】
【氏名】青木 健
(72)【発明者】
【氏名】岡本 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 広樹
(72)【発明者】
【氏名】楠 紘慈
(72)【発明者】
【氏名】塚本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】柳川 勝喜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-163684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0052566(US,A1)
【文献】特開2016-219011(JP,A)
【文献】特開2016-224935(JP,A)
【文献】特開2015-097083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06G 7/60
G09G 5/00
G06G 7/16
G06G 7/14
G06G 7/184
G06V 30/144
G06N 3/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路と、表示部と、タッチセンサと、を含む電子機器であって、
前記第1の回路は、ニューラルネットワークを有し、
前記表示部は、フレキシブルディスプレイを有し、
前記タッチセンサは、入力された手書き文字を画像情報として、前記第1の回路に出力する機能を有し、
前記第1の回路は、前記画像情報を解析し、文字情報に変換する機能と、前記文字情報を含む画像を前記表示部に表示させる機能とを有し、
前記画像情報の解析は、前記ニューラルネットワークを用いた推論により行われ、
前記第1の回路は、アナログ積和演算回路を有し、
前記アナログ積和演算回路は、メモリセルアレイと、電流源回路と、カレントシンク回路と、カレントミラー回路と、高電源電位と、低電源電位と、を有し、
前記メモリセルアレイは、アナログデータを保持することが可能なメモリセルMCと、メモリセルMC_Rを有し、
前記メモリセルMCおよび前記メモリセルMC_Rは、それぞれ、トランジスタM01と、トランジスタM02と、容量素子C0と、を有し、
前記トランジスタM01のゲートは、前記トランジスタM02のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM01のゲートは、前記容量素子C0の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM01のソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記メモリセルMCの前記トランジスタM02のソースおよびドレインの他方は、配線BWと電気的に接続され、
前記メモリセルMCの前記トランジスタM01のソースおよびドレインの他方は、配線BLと電気的に接続され、
前記メモリセルMC_Rの前記トランジスタM02のソースおよびドレインの他方は、配線BW_Rと電気的に接続され、
前記メモリセルMC_Rの前記トランジスタM01のソースおよびドレインの他方は、配線BL_Rと電気的に接続され、
前記電流源回路は、電流源回路CSCと、電流源回路CSC_Rと、を有し、
電流源回路CSCおよび電流源回路CSC_Rは、それぞれ、トランジスタM11と、トランジスタM12と、容量素子C1と、を有し、
前記トランジスタM12のソースおよびドレインの一方は、前記トランジスタM11のゲートと電気的に接続され、
前記トランジスタM12のソースおよびドレインの一方は、前記容量素子C1の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM11のソースおよびドレインの一方は、前記高電源電位と電気的に接続され、
前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記容量素子C1の他方の電極と電気的に接続され、
前記電流源回路CSCの前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記電流源回路CSCの前記トランジスタM12のソースおよびドレインの他方に、信号BCSCが与えられ、前記信号BCSCは、前記トランジスタM12を介して、前記トランジスタM11のゲートおよび前記容量素子C1の一方の電極に書き込まれ、
前記電流源回路CSCは、配線BLに電流ICSCを与える機能を有し、
前記電流源回路CSC_Rの前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
前記電流源回路CSC_Rの前記トランジスタM12のソースおよびドレインの他方に、信号BCSC_Rが与えられ、前記信号BCSC_Rは、前記トランジスタM12を介して、前記トランジスタM11のゲートおよび前記容量素子C1の一方の電極に書き込まれ、
前記電流源回路CSC_Rは、配線BL_Rに電流ICSC_Rを与える機能を有し、
前記カレントシンク回路は、トランジスタM21と、トランジスタM22と、トランジスタM23と、容量素子C2と、を有し、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM22のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM21のゲートと電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記容量素子C2の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM22のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM21のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM22のソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記トランジスタM21のソースおよびドレインの他方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記容量素子C2の他方の電極は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記カレントシンク回路は、前記配線BLに与えられた電流を、前記トランジスタM21を介して、前記低電源電位に与える機能を有し、
カレントミラー回路は、2つのトランジスタを有し、
前記2つのトランジスタのゲートは、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのうち、一方のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのうち、他方のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
カレントミラー回路は、前記配線BL_Rに流れる電流を、前記配線BLにコピーする機能を有する、電子機器。
【請求項2】
第1の筐体、第2の筐体、第3の筐体、複数のヒンジ、第1の回路、表示部、タッチセンサを含み、
前記第1の回路は、ニューラルネットワークを有し、
前記表示部は、フレキシブルディスプレイを有し、
前記フレキシブルディスプレイは、前記第1の筐体、前記第2の筐体、及び前記第3の筐体のそれぞれに保持される部分を有し、
前記タッチセンサは、入力された手書き文字を画像情報として、前記第1の回路に出力する機能を有し、
前記第1の回路は、前記画像情報を解析し、文字情報に変換する機能と、前記文字情報を含む画像を前記表示部に表示させる機能とを有し、
前記画像情報の解析は、前記ニューラルネットワークを用いた推論により行われ、
前記第1の筐体、前記第2の筐体、及び前記第3の筐体は、前記フレキシブルディスプレイが開いた状態と、3つに折り畳まれた状態との間で可逆的に変形するように、前記複数のヒンジによって連結され、
前記第1の回路は、前記画像情報を解析し、文字情報に変換する機能と、前記文字情報を含む画像を前記表示部に表示させる機能とを有し、
前記画像情報の解析は、前記ニューラルネットワークを用いた推論により行われ、
前記第1の回路は、アナログ積和演算回路を有し、
前記アナログ積和演算回路は、メモリセルアレイと、電流源回路と、カレントシンク回路と、カレントミラー回路と、高電源電位と、低電源電位と、を有し、
前記メモリセルアレイは、アナログデータを保持することが可能なメモリセルMCと、メモリセルMC_Rを有し、
前記メモリセルMCおよび前記メモリセルMC_Rは、それぞれ、トランジスタM01と、トランジスタM02と、容量素子C0と、を有し、
前記トランジスタM01のゲートは、前記トランジスタM02のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM01のゲートは、前記容量素子C0の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM01のソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記メモリセルMCの前記トランジスタM02のソースおよびドレインの他方は、配線BWと電気的に接続され、
前記メモリセルMCの前記トランジスタM01のソースおよびドレインの他方は、配線BLと電気的に接続され、
前記メモリセルMC_Rの前記トランジスタM02のソースおよびドレインの他方は、配線BW_Rと電気的に接続され、
前記メモリセルMC_Rの前記トランジスタM01のソースおよびドレインの他方は、配線BL_Rと電気的に接続され、
前記電流源回路は、電流源回路CSCと、電流源回路CSC_Rと、を有し、
電流源回路CSCおよび電流源回路CSC_Rは、それぞれ、トランジスタM11と、トランジスタM12と、容量素子C1と、を有し、
前記トランジスタM12のソースおよびドレインの一方は、前記トランジスタM11のゲートと電気的に接続され、
前記トランジスタM12のソースおよびドレインの一方は、前記容量素子C1の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM11のソースおよびドレインの一方は、前記高電源電位と電気的に接続され、
前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記容量素子C1の他方の電極と電気的に接続され、
前記電流源回路CSCの前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記電流源回路CSCの前記トランジスタM12のソースおよびドレインの他方に、信号BCSCが与えられ、前記信号BCSCは、前記トランジスタM12を介して、前記トランジスタM11のゲートおよび前記容量素子C1の一方の電極に書き込まれ、
前記電流源回路CSCは、配線BLに電流ICSCを与える機能を有し、
前記電流源回路CSC_Rの前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
前記電流源回路CSC_Rの前記トランジスタM12のソースおよびドレインの他方に、信号BCSC_Rが与えられ、前記信号BCSC_Rは、前記トランジスタM12を介して、前記トランジスタM11のゲートおよび前記容量素子C1の一方の電極に書き込まれ、
前記電流源回路CSC_Rは、配線BL_Rに電流ICSC_Rを与える機能を有し、
前記カレントシンク回路は、トランジスタM21と、トランジスタM22と、トランジスタM23と、容量素子C2と、を有し、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM22のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM21のゲートと電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記容量素子C2の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM22のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM21のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM22のソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記トランジスタM21のソースおよびドレインの他方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記容量素子C2の他方の電極は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記カレントシンク回路は、前記配線BLに与えられた電流を、前記トランジスタM21を介して、前記低電源電位に与える機能を有し、
カレントミラー回路は、2つのトランジスタを有し、
前記2つのトランジスタのゲートは、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのうち、一方のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのうち、他方のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
カレントミラー回路は、前記配線BL_Rに流れる電流を、前記配線BLにコピーする機能を有する、電子機器。
【請求項3】
メモリセルアレイと、電流源回路と、カレントシンク回路と、カレントミラー回路と、高電源電位と、低電源電位と、を有し、
前記メモリセルアレイは、アナログデータを保持することが可能なメモリセルMCと、メモリセルMC_Rを有し、
前記メモリセルMCおよび前記メモリセルMC_Rは、それぞれ、トランジスタM01と、トランジスタM02と、容量素子C0と、を有し、
前記トランジスタM01のゲートは、前記トランジスタM02のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM01のゲートは、前記容量素子C0の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM01のソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記メモリセルMCの前記トランジスタM02のソースおよびドレインの他方は、配線BWと電気的に接続され、
前記メモリセルMCの前記トランジスタM01のソースおよびドレインの他方は、配線BLと電気的に接続され、
前記メモリセルMC_Rの前記トランジスタM02のソースおよびドレインの他方は、配線BW_Rと電気的に接続され、
前記メモリセルMC_Rの前記トランジスタM01のソースおよびドレインの他方は、配線BL_Rと電気的に接続され、
前記電流源回路は、電流源回路CSCと、電流源回路CSC_Rと、を有し、
電流源回路CSCおよび電流源回路CSC_Rは、それぞれ、トランジスタM11と、トランジスタM12と、容量素子C1と、を有し、
前記トランジスタM12のソースおよびドレインの一方は、前記トランジスタM11のゲートと電気的に接続され、
前記トランジスタM12のソースおよびドレインの一方は、前記容量素子C1の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM11のソースおよびドレインの一方は、前記高電源電位と電気的に接続され、
前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記容量素子C1の他方の電極と電気的に接続され、
前記電流源回路CSCの前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記電流源回路CSCの前記トランジスタM12のソースおよびドレインの他方に、信号BCSCが与えられ、前記信号BCSCは、前記トランジスタM12を介して、前記トランジスタM11のゲートおよび前記容量素子C1の一方の電極に書き込まれ、
前記電流源回路CSCは、配線BLに電流ICSCを与える機能を有し、
前記電流源回路CSC_Rの前記トランジスタM11のソースおよびドレインの他方は、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
前記電流源回路CSC_Rの前記トランジスタM12のソースおよびドレインの他方に、信号BCSC_Rが与えられ、前記信号BCSC_Rは、前記トランジスタM12を介して、前記トランジスタM11のゲートおよび前記容量素子C1の一方の電極に書き込まれ、
前記電流源回路CSC_Rは、配線BL_Rに電流ICSC_Rを与える機能を有し、
前記カレントシンク回路は、トランジスタM21と、トランジスタM22と、トランジスタM23と、容量素子C2と、を有し、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM22のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM21のゲートと電気的に接続され、
前記トランジスタM23のソースおよびドレインの他方は、前記容量素子C2の一方の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタM22のソースおよびドレインの他方は、前記トランジスタM21のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタM22のソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記トランジスタM21のソースおよびドレインの他方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記容量素子C2の他方の電極は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記カレントシンク回路は、前記配線BLに与えられた電流を、前記トランジスタM21を介して、前記低電源電位に与える機能を有し、
カレントミラー回路は、2つのトランジスタを有し、
前記2つのトランジスタのゲートは、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記低電源電位と電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのうち、一方のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記配線BLと電気的に接続され、
前記2つのトランジスタのうち、他方のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記配線BL_Rと電気的に接続され、
カレントミラー回路は、前記配線BL_Rに流れる電流を、前記配線BLにコピーする機能を有する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、タッチパネルシステムおよびそれを用いた電子機器に関する。
【0002】
また、本発明の一形態は半導体装置に関する。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。表示装置、発光装置、記憶装置、電気光学装置、蓄電装置、半導体回路及び電子機器は、半導体装置を有する場合がある。
【0004】
なお、本発明の一形態は上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一形態は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0005】
近年、人工ニューラルネットワーク(以下、ニューラルネットワークと呼ぶ)などの機械学習技術の開発が盛んに行われ、主に画像認識の分野で成功例が報告されている。
【0006】
特許文献1には、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを用いてニューラルネットワークによる機械学習を行い、手書き文字の認識を行う例が開示されている。
【0007】
また、近年、チャネル形成領域に酸化物半導体または金属酸化物を用いたトランジスタ(Oxide Semiconductorトランジスタ、以下、OSトランジスタと呼ぶ)が注目されている。OSトランジスタはオフ電流が極めて小さい。そのことを利用して、OSトランジスタを用いたアプリケーションが提案されている。例えば、特許文献2では、ニューラルネットワークの学習に、OSトランジスタを用いた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-182785号公報
【文献】特開2016-219011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ニューラルネットワークによる機械学習は、膨大な計算量を必要とする。そのため、CPUやGPUなどのデジタル回路を用いて、ニューラルネットワークを構築する場合、必要となるトランジスタ数が膨大になり、非効率的で消費電力が高い。
【0010】
本発明の一形態は、効率的に手書き文字を認識することが可能なタッチパネルシステムを提供することを課題の一とする。また、本発明の一形態は、効率的にニューラルネットワークを構築することが可能な半導体装置を提供することを課題の一とする。また、本発明の一形態は、効率的に積和演算を実行することが可能な半導体装置を提供することを課題の一とする。また、本発明の一形態は、高い精度で積和演算を実行することが可能な半導体装置を提供することを課題の一とする。また、本発明の一形態は、新規な半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、効率的に手書き文字を認識することのできる電子機器を提供することを課題の一とする。または、手書き文字を認識可能で、可撓性を有する表示部を有する電子機器を提供することを課題の一とする。または、手書き文字を認識可能で、可搬性と優れた一覧性を両立可能な電子機器を提供することを課題の一とする。
【0012】
なお、複数の課題の記載は、互いの課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一形態は、これらの課題の全て解決する必要はない。また、列記した以外の課題が、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、これらの課題も、本発明の一形態の課題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、第1の回路と、表示部と、タッチセンサと、を有する電子機器である。第1の回路は、ニューラルネットワークを有する。表示部は、フレキシブルディスプレイを有する。タッチセンサは、入力された手書き文字を画像情報として、第1の回路に出力する機能を有する。また、第1の回路は、画像情報を解析し、文字情報に変換する機能と、文字情報を含む画像を表示部に表示させる機能とを有し、解析は、ニューラルネットワークを用いた推論により行われる。
【0014】
また、上記において、電子機器は、第1の筐体、第2の筐体、第3の筐体、及び複数のヒンジを有することが好ましい。ここで、フレキシブルディスプレイは、第1の筐体、第2の筐体、及び第3の筐体のそれぞれに保持される部分を有することが好ましい。また、第1の筐体、第2の筐体、及び第3の筐体は、フレキシブルディスプレイが開いた状態と、3つに折り畳まれた状態との間で可逆的に変形するように、ヒンジによって連結されていることが好ましい。
【0015】
また、上記において、第1の回路は、アナログデータを保持することが可能なメモリを有することが好ましい。
【0016】
また、上記において、第1の回路は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一形態により、効率的に手書き文字を認識することが可能なタッチパネルシステムを提供することができる。本発明の一形態により、効率的にニューラルネットワークを構築することが可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一形態により、効率的に積和演算を実行することが可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一形態により、高い精度で積和演算を実行することが可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一形態により、新規な半導体装置を提供することができる。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、効率的に手書き文字を認識することのできる電子機器を提供できる。または、手書き文字を認識可能で、可撓性を有する表示部を有する電子機器を提供できる。または、手書き文字を認識可能で、可搬性と優れた一覧性を両立可能な電子機器を提供できる。
【0019】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一形態は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】タッチパネルシステムを用いた情報端末の例。
図2】タッチパネルシステムを用いた情報端末の例。
図3】タッチパネルシステムの構成例を示すブロック図。
図4】タッチパネルシステムのデータの流れを示すフローチャート。
図5】ニューラルネットワークにおけるデータの流れを示す概念図。
図6】情報端末のモジュール分解例。
図7】情報端末とサーバーの外観図。
図8】タッチパネルシステムを用いた受像装置の例。
図9】タッチパネルシステムの構成例を示すブロック図。
図10】ニューラルネットワークの概略図。
図11】ニューラルネットワークの構成例。
図12】積和演算回路の一例を示す回路図。
図13】積和演算回路の動作例を示すタイミングチャート。
図14】積和演算回路の他の一例の構成を示す図。
図15】積和演算回路のメモリセルアレイの例を示す回路図。
図16】積和演算回路の電流源回路の例を示す回路図。
図17】積和演算回路の電流源回路の他の例を示す回路図。
図18】積和演算回路の動作例を示すタイミングチャート。
図19】画素の構成例を示す回路図。
図20】表示パネルの構成例を示す断面図。
図21】表示パネルの構成例を示す断面図。
図22】実施例1で試作したOS-APSチップの光学顕微鏡写真。
図23】実施例1で試作したOS-APSチップの乗算特性。
図24】実施例1で試作したOS-APSチップの乗算特性。
図25】実施例1で試作したOS-APSでニューラルネットワークを構成した場合のシミュレーション結果。
図26】実施例2で試作した表示装置の写真。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。
【0023】
また、本明細書は、以下の実施の形態を適宜組み合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0024】
なお、本明細書においてニューラルネットワークとは、生物の神経回路網を模し、学習によってニューロンどうしの結合強度を決定し、問題解決能力を持たせるモデル全般を指す。ニューラルネットワークは入力層、中間層(隠れ層ともいう)、出力層を有する。
【0025】
また、本明細書において、ニューラルネットワークについて述べる際に、既にある情報からニューロンとニューロンの結合強度(重み係数とも言う)を決定することを「学習」と呼ぶ場合がある。
【0026】
また、本明細書において、学習によって得られた結合強度を用いてニューラルネットワークを構成し、そこから新たな結論を導くことを「推論」と呼ぶ場合がある。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態は、本発明の一形態であるタッチパネルシステムとそれを用いた電子機器について説明を行う。なお、本実施の形態では電子機器の例として情報端末について説明を行う。
【0028】
図1は、情報端末1の使用例を示す外観図である。情報端末1は表示部2を備えている。表示部2は入力部としての機能も備えている。
【0029】
情報端末1は表示部2に入力された文字を認識し、認識結果を表示することができる。図1は、使用者が指でアルファベットの「a」を入力し、情報端末1が入力された文字を認識し、表示部2の左上に認識結果を表示する例(例えばNeuraのa)を示している。なお、表示部2における文字の入力は、指だけでなく、スタイラス等を用いて行うこともできる。
【0030】
また、情報端末に設けられる表示部として、フレキシブルディスプレイを用いることもできる。図2(A)、(B)、(C)には、フレキシブルディスプレイを用いた情報端末1aを示している。
【0031】
情報端末1aは、3つの筐体(筐体3a、筐体3b、筐体3c)と、表示部2aを有する。表示部2aは、フレキシブルディスプレイを有し、3つの筐体それぞれに保持された部分を有する。また、筐体3aと筐体3b、筐体3bと筐体3cは、それぞれヒンジ4により回転可能に連結されている。
【0032】
情報端末1aは、図2(A)に示すように表示部2aを開いた状態から、図2(C)に示すように表示部2aを3つに折り畳んだ状態に、可逆的に変形することができる。図2(B)には、これら2つの状態の間の状態を示している。
【0033】
情報端末1aは、表示部2aが開いた状態では、継ぎ目のない広い表示領域に手書きの文字(図ではFlexible Displaのa)を入力したり、表示を行うことができ、一覧性に優れる。また表示部2aが3つに折り畳まれた状態では、情報端末を小型化することができ、可搬性に優れる。
【0034】
図2(B)では、湾曲した表示部1aに手書きの文字(Flexible Displaのa)を入力している場合を示している。このとき、湾曲部を超えて文字を入力した場合、文字が歪んでしまう場合がある。しかしながら、後述するタッチパネルシステムを用いることで、このように歪んだ文字入力を行った場合であっても、効率的に認識することができる。
【0035】
また、手書きの文字を入力する際、指やスタイラスをスライドする速度には、ユーザの個人差が生じる。また、この個人差は、手書きの文字を入力する場合に限らず、タッチ操作を行う際も同様である。しかしながら、後述するタッチパネルシステムを用いることで、スライドの速度に個人差が生じた場合であっても、効率的に認識することができる。
【0036】
図3は、情報端末1及び情報端末1aに用いられるタッチパネルシステム10の構成例を示すブロック図である。タッチパネルシステム10は、表示パネル20と、タッチセンサ15と、ホスト25を有する。
【0037】
表示パネル20は、画素部11と、ゲートドライバ12と、ソースドライバ13と、ゲート線21と、ソース線22と、I/F(インターフェース)18と、NN(ニューラルネットワーク)回路19と、を有する。画素部11は、ゲート線21およびソース線22に接続された複数の画素14を有する。
【0038】
タッチセンサ15は、センシング回路16と、I/F17と、を有する。
【0039】
ホスト25はCPU(Central Processing Unit)を有し、I/F18を介して、ソースドライバ13に画像データを供給する機能を有する。なお、ホスト25は、GPU(Graphics Processing Unit)を有していてもよい。
【0040】
NN回路19は、ニューラルネットワークを用いた学習または推論を行うことができる。より具体的には、深層ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、自己符号化器、深層ボルツマンマシン、または深層信念ネットワークを用いた学習または推論を行うことができる。
【0041】
次に、図4に示すフローチャートを用いて、タッチパネルシステム10の処理の流れを説明する。
【0042】
まず、使用者がタッチセンサ15に手書き文字を入力する(Input by handwriting, ステップS1)。
【0043】
センシング回路16は、タッチセンサ15へ入力された手書き文字(画像情報)を検知し、NN回路19に送信する。また、センシング回路16は、タッチが行われたことを、I/F17を介して、ホスト25に知らせる(Touch sensing, ステップS2)。
【0044】
NN回路19は、上記画像情報(Image information)のパターンを解析し、上記画像情報を文字情報に変換する(Character recognition, ステップS3)。上記解析はニューラルネットワークを用いた推論によって行われる。
【0045】
NN回路19は、上記文字情報(Character information)をソースドライバ13に出力する。ソースドライバ13は、ホスト25から受信した画像データとNN回路19から受信した文字情報を合成し、画素部11に表示する(Display of input characters, ステップS4)。
【0046】
図5は、NN回路19におけるデータフローを表す概念図である。図5はニューラルネットワークを構築している。図5に示すニューラルネットワークは、入力層31と、中間層32と、出力層33を有する。入力層31はニューロン41_1乃至41_3を有し、中間層32はニューロン42_1乃至42_3有し、出力層33はニューロン43_1乃至43_3を有する。なお、図5は便宜的に中間層の数を1とし、それぞれの層におけるニューロンの数を3としているが、これに限定されず、NN回路19は、扱う課題に応じて、必要な数の中間層とニューロンを設けることができる。
【0047】
それぞれの層における演算処理は、前層が有するニューロンの出力と重み係数との積和演算により実行される。例えば、入力層の第iニューロンの出力をxとし、出力xと中間層の第jニューロンとの結合強度(重み係数)をwjiとすると、中間層の第jニューロンの出力はy=f(Σwji・x)である。なお、i、jは1以上の整数とする。ここで、f(x)は活性化関数でシグモイド関数、閾値関数などを用いることができる。以下、同様に、各層のニューロンの出力は、前段層のニューロンの出力と重み係数の積和演算結果に活性化関数を演算した値となる。また、層と層との結合は、全てのニューロン同士が結合する全結合としてもよいし、一部のニューロン同士が結合する部分結合としてもよい。
【0048】
図5は、入力層31に数字の「2」を表す画像情報が入力され、出力層33から、「2」を表す分類結果が出力される例を示している。
【0049】
NN回路19は、TFT(Thin Film Transinstor)などの技術を用いて、画素部11と同じ基板上に形成することが好ましい。そうすることで、NN回路19の製造コストを低減させることができる。なお、表示パネル20に用いることができる基板の詳細は、後述する実施の形態5で説明を行う。
【0050】
また、NN回路19をICチップで形成し、COG(Chip On Glass)、COF(Chip On Film)またはTAB(Tape Automated Bonding)などの実装技術を用いて、表示パネル20に設けてもよい。なお、上記ICチップにソースドライバ13を含めてもよい。
【0051】
NN回路19を表示パネル20の外部にあるホスト25に含めてもよいが、その場合、表示パネル20とホスト25との間に遅延が生じ、タッチセンサ15が入力を受け付けてから、ホスト25を経由して画素部11に入力結果を表示させるまでにタイムラグが生じてしまう。
【0052】
NN回路19を表示パネル20に形成することで、配線抵抗による遅延が改善され、入力から表示までの即応性が改善される。また、配線数も削減されるため、タッチパネルシステム10の消費電力も低減される。
【0053】
図6に情報端末1のモジュール分解例を示す。情報端末1は、上部カバー81と下部カバー92との間に、タッチセンサ15、表示パネル20、バックライトユニット87、フレーム89、プリント基板90、バッテリー91を有する。
【0054】
上部カバー81及び下部カバー92は、タッチセンサ15及び表示パネル20のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0055】
バックライトユニット87は、光源88を有する。光源88をバックライトユニット87の端部に設け、光拡散板を用いる構成としてもよい。なお、LED(Light Emitting Diode)や有機EL(エレクトロルミネッセンス)など、表示パネル20が自発光性の表示素子を用いる場合、バックライトユニット87は省略してもよい。
【0056】
フレーム89は、表示パネル20の保護機能の他、プリント基板90の動作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム89は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0057】
また、情報端末1は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
【0058】
プリント基板90は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。図3に示すホスト25はプリント基板90に設けられている。また、電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、バッテリー91による電源であってもよい。バッテリー91は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0059】
タッチセンサ15は、表示パネル20に重畳して用いることができる。タッチセンサ15としては例えば、抵抗膜方式、静電容量方式または光学式のタッチパネルを用いることができる。
【0060】
また、表示パネル20にタッチセンサの機能を持たせることで、図6に示すタッチセンサ15を表示パネル20に含めることができる。例えば、表示パネル20の対向基板(封止基板)に、タッチパネル機能を持たせることで、タッチセンサ15を表示パネル20に含めることができる。例えば、表示パネル20の各画素内にタッチセンサ用電極を設けることで、タッチセンサ15を表示パネル20に含めることができる。例えば、表示パネル20の各画素内に光センサを設けることで、タッチセンサ15を表示パネル20に含めることができる。
【0061】
また、情報端末1は、表示パネル20の周囲に、発光部、導光部および受光部からなる光学式タッチセンサを備えてもよい。その場合、導光部を通る光が指で遮られることで、情報端末1はタッチを検出する。
【0062】
図6において、タッチセンサ15はFPC(Flexible Printed Circuit)82およびFPC83が接続され、表示パネル20はFPC82およびFPC84が接続されている。また、FPC83およびFPC84はプリント基板90に接続される。FPC82はタッチセンサ15と表示パネル20との電気的接続を可能にし、FPC83はタッチセンサ15とプリント基板90との電気的接続を可能にし、FPC84は表示パネル20とプリント基板90との電気的接続を可能にする。なお、タッチセンサ15が表示パネル20に含まれる場合、FPC82は不要である。
【0063】
図5に示すようなニューラルネットワークは、膨大な数の積和演算によって実行される。これらの演算処理をデジタル回路で行う場合、必要となるトランジスタ数が膨大になり、非効率的で消費電力が高い。そのため、上述の積和演算はアナログ積和演算回路(以下、APS(Analog Product-Sum circuit)と呼ぶ)で行うことが好ましい。また、APSはアナログメモリを有することが好ましい。学習で得られた重み係数を上記アナログメモリに格納することで、APSは、アナログデータのまま積和演算を実行することができる。その結果、APSは少ないトランジスタで効率的にニューラルネットワークを構築することができる。
【0064】
なお、本明細書においてアナログメモリはアナログデータを格納することが可能な記憶装置のことを指す。また、本明細書においてアナログデータとは、3ビット(8値)以上の分解能を有するデータのことを指す。多値データのことをアナログデータと呼ぶ場合もある。
【0065】
上記アナログメモリとして、多値のフラッシュメモリ、ReRAM(Resistive Random Access Memory)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)またはOSトランジスタを用いたメモリ(以下、OSメモリ)を用いることができる。
【0066】
上記アナログメモリとして、特に、OSメモリを用いることが好ましい。OSメモリは、フラッシュメモリ、ReRAMまたはMRAMなどの他の不揮発性メモリと比べて、データを書き込む際の消費電力が小さい。また、フラッシュメモリやReRAMのように、データを書き込む際に素子が劣化することもなく、データの書き込み可能回数に制限が無い。
【0067】
本明細書において、OSメモリを有するアナログ積和演算回路をOS-APSと呼ぶ。なお、OS-APSの詳細は後述の実施の形態3および実施の形態4で説明を行う。
【0068】
ニューラルネットワークによる学習は、情報端末1で行ってもよいし、専用サーバーのような大型計算機で行ってもよいし、クラウドのようにネットワークでつながった計算機群で並列に行ってもよい。特に、ニューラルネットワークによる学習は、計算規模が大きいため、大型計算機で行うことが好ましい。図7は、サーバー5で学習を行う例を示している。情報端末1からサーバー5にリクエストを送ると、サーバー5は、学習によって決定された重み係数を、情報端末1に送信することができる。情報端末1は、サーバー5から受け取った重み係数を使って、推論を実行し、例えばNeuraのaを表示することができる。
【0069】
サーバー5は、NN回路19と同じニューラルネットワークを構成することができるソフトウェアを実装することが好ましい。また、演算処理能力の優れたプロセッサを有することが好ましい。そうすることで、情報端末1は、より効率的にサーバー5の学習結果を受け取ることができる。
【0070】
以上、本実施の形態に示すタッチパネルシステムを用いることで、効率的に手書き文字を認識することが可能なタッチパネルシステムを提供することができる。また、効率的に手書き文字を認識することが可能な情報端末を提供することができる。
【0071】
(実施の形態2)
本実施の形態は、本発明の一形態であるタッチパネルシステムとそれを用いた電子機器について説明を行う。なお、本実施の形態では電子機器の例として受像装置について説明を行う。
【0072】
図8は、受像装置60の仕様例を示す外観図である。受像装置60は、テレビであり、アンテナ64が受信した放送信号から画像データを生成し、画像を表示する機能を有する。また、受像装置60はインターネット回線65を経由して、放送局のサーバー66と通信することができる。
【0073】
アンテナ64として、例えば、UHF(Ultra High Frequency)アンテナ、BS・110°CSアンテナ、CSアンテナなどが挙げられる。
【0074】
また、インターネット回線の代わりに電話回線等を用いて、サーバー66と通信してもよい。
【0075】
受像装置60が表示部61を備え、表示部61の全部または一部が入力部として機能する。使用者は、表示部61にタッチすることで、受像装置60に情報を入力することができる。
【0076】
図8は、受像装置60が放送中のクイズ番組を表示しているようすを表している。表示部61の左側には問題が表示され、表示部61の右側には制限時間と入力領域62が表示される。使用者は、制限時間内に入力領域62に手書きで回答を入力することが要求される。図8では、花の画像からflowerの前に入る単語を答えている。受像装置60は、使用者が入力した手書き文字(ここではsun)を認識し、領域63に認識結果(ここではsun)を表示する。制限時間が終了すると、回答はインターネット回線65を通じて放送局のサーバー66へ送信される。
【0077】
図9は受像装置60に用いられるタッチパネルシステム70の構成例を示すブロック図である。タッチパネルシステム70は表示パネル20と、タッチセンサ15と、受信回路76と、ネットワークI/F71と、アンテナ64を有する。
【0078】
受信回路76は、エンコーダ72と、画像処理回路73と、デコーダ74と、アナログフロントエンド75を有する。
【0079】
アナログフロントエンド75は、アンテナ64から入力された放送信号を受信する機能を有する。
【0080】
デコーダ74は、上記放送信号を放送規格の仕様に従って伸長し、画像データを生成する機能を有する。上記規格として、例えば、H.264、H.265などが挙げられる。
【0081】
画像処理回路73は、上記伸長された画像データに画像処理を施す機能を有する。例えば、ノイズ除去、画面を分割した際のつなぎ目の補正、画像の色彩、精細さの補正、ダイナミックレンジの補正、画像の先鋭化、フィルタ処理などの画像処理を施す。また、これら画像処理はニューラルネットワークを用いて行われることが好ましい。受像装置60は、ニューラルネットワークを用いた画像処理によって、使用者がより自然な印象を受ける画像を表示することができる。
【0082】
エンコーダ72は上記画像処理を施された画像データから特徴抽出を行い、画像データを圧縮する機能を有する。
【0083】
表示パネル20はデコーダ77を有する。デコーダ77はエンコーダ72に対応したデコーダであり、エンコーダ72によって圧縮された画像データを復元する機能を有する。
【0084】
エンコーダ72とデコーダ77はオートエンコーダを構成することが好ましい。エンコーダ72はニューラルネットワークを用いて画像データから特徴抽出を行い、画像データを圧縮する機能を有する。デコーダ77はニューラルネットワークを用いて圧縮されたデータから画像データを復元する機能を有する。
【0085】
デコーダ77によって復元された画像データはソースドライバ13に入力される。
【0086】
表示パネル20と受信回路76との間は、FPCなどのケーブルを用いて電気的に接続されている場合が多い。例えば、8K(7680×4320)放送など、受像装置60が大量のデータを扱う場合、高速伝送が可能なFPCが求められているが、FPCの伝送速度には限界がある。また、表示パネルのサイズが大型化するにつれて、受信回路76と表示パネル20を繋ぐケーブルの物理距離が長くなり、画像データの伝送損失が大きくなる。
【0087】
受像装置60はエンコーダ72およびデコーダ77を有することで、圧縮された状態で(データサイズが小さい状態で)画像データを受信回路76から表示パネル20へ伝送することができる。そのため、8Kなど、解像度が大きい画像データでも、受像装置60は効率的に画像データを表示パネル20へ伝送することができる。また、データサイズが小さいと、伝送に要する電力も小さくて済むため、受像装置60は消費電力を低減することができる。
【0088】
ネットワークI/F71は、受像装置60とインターネット回線とを繋ぐI/Fとしての機能を有する。
【0089】
実施の形態1で示したタッチパネルシステム10と同様に、図9のNN回路19はニューラルネットワークを用いた学習または推論を行うことができる。使用者が手描きで入力した画像情報のパターンを解析し、上記画像情報を文字情報に変換する。上記解析はニューラルネットワークを用いた推論によって行われる。
【0090】
上記文字情報(図8におけるクイズの回答)は、ソースドライバ13を介して画素部11で表示され、また、ネットワークI/Fを介して放送局のサーバーへ送信される。
【0091】
実施の形態1で示したタッチパネルシステム10と同様に、図9のNN回路19はアナログ積和演算回路(APS)を有することが好ましい。特にOSメモリを有するアナログ積和演算回路(OS-APS)を有することが好ましい。OS-APSは少ないトランジスタで効率的に積和演算処理を実行することができる。また、少ない消費電力で積和演算処理を実行することができる。
【0092】
また、デコーダ77、エンコーダ72および画像処理回路73も、OS-APSを用いてニューラルネットワークを構築することができる。
【0093】
また、デコーダ74は、画像データを伸長する際に、離散コサイン変換などの積和演算処理を行うが、その積和演算処理にOS-APSを用いてもよい。
【0094】
タッチパネルシステム70のその他の構成要素の詳細は、実施の形態1に示すタッチパネルシステム10の記載を参照すればよい。
【0095】
以上、本実施の形態に示すタッチパネルシステムを用いることで、効率的に手書き文字を認識することが可能なタッチパネルシステムを提供することができる。また、効率的に手書き文字を認識することが可能な受像装置を提供することができる。
【0096】
(実施の形態3)
本実施の形態では、ニューラルネットワークの演算に用いることが可能な、アナログ積和演算回路について説明する。
【0097】
前述の通り、ニューラルネットワークの演算には、ニューロンの出力と、シナプスに格納された重み係数の積和演算が含まれる。図10は、ニューラルネットワークの概略図である。
【0098】
図10に示すニューラルネットワークNNは、複数のニューロンによって構成されるニューロン群N1、N2と、ニューロン間の重み係数が格納されたシナプスSNPを有する。ニューロン群N1は入力層又は中間層に対応し、ニューロン群N2は中間層又は出力層に対応する。ニューロン群N1から出力された信号は、シナプスSNPを介してニューロン群N2に入力される。
【0099】
図11に、ニューラルネットワークNNの具体的な構成例を示す。ニューロン群N1が有する複数のニューロンNの出力はそれぞれ、シナプスSNPを介して、ニューロン群N2が有する複数のニューロンNに入力される。図11において、ニューロン間の白丸はシナプスSNPを表す。ニューロン群N1とニューロン群N2の間のシナプスSNPは、ニューロンNの出力と、重み係数との乗算を行い、ニューロンNに出力する機能を有する。
【0100】
図10に示すように、ニューロン群N1から出力された信号には、シナプスSNPによって重み係数が乗じられる。すなわち、シナプスSNPは乗算(MUL)を行う機能を有する。なお、重み係数はあらかじめシナプスSNPに格納されている。そして、複数のシナプスSNPから出力された信号は、ニューロン群N2に入力される。
【0101】
ニューロン群N2に含まれるニューロンはそれぞれ、複数のシナプスSNPから入力された信号の総和を算出する機能を有する。すなわち、ニューロンは加算(ADD)を行う機能を有する。このように、シナプスとニューロンによって積和演算(MAD)が行われる。そして、積和演算によって得られた信号は、活性化関数に基づいて変換された後、他のニューロンに出力される。
【0102】
上記のように、シナプスSNPは、ニューロンの出力と重み係数との乗算を行う演算回路(arithmetic circuit)としての機能と、重み係数を格納するメモリ(memory)としての機能を有する。そのため、ニューラルネットワークNNをハードウェアによって構成する場合は、演算回路とメモリを用いることによってシナプスを構成することができる。しかしながら、演算回路とメモリを個別に形成すると、回路規模が増大する。また、乗算を行うごとにメモリへのアクセスが必要となり、消費電力が増大する。
【0103】
ここで、本発明の一態様においては、シナプスを、チャネル形成領域にシリコン(例えば、単結晶シリコンなど)を用いたトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼ぶ)と、OSトランジスタと、を組み合わせた回路によって構成する。具体的には、図10に示すように、Siトランジスタを有する層(図中、「Si」の符号を付す)の上方に、OSとランジスタを有する層(図中、「OS」の符号を付す)を設ける。そして、Siトランジスタ及びOSトランジスタを用いて、乗算を行う機能と、重み係数を格納する機能と、が一体化した回路を構成することができる。これにより、回路規模の縮小、又は消費電力の低減を図ることができる。
【0104】
以下、演算回路としての機能と、メモリとしての機能を有する、アナログ積和演算回路(OS-APS)の具体例について説明を行う。
【0105】
図12に示すAPS(アナログ積和演算回路)50は、メモリセルアレイ51、回路52、回路53および回路54を有する。なお、図12において、VDDは高電源電位、VSSは低電源電位表す。
【0106】
メモリセルアレイ51は、i行j列(i、jは1以上の整数)のマトリクス状に配置されたメモリセルMC[1、1]乃至MC[i、j]と、1列に配置されたメモリセルMC_R[1]乃至MC_R[i]を有する。メモリセルMCおよびメモリセルMC_Rはアナログデータを保持する機能を有する。また、メモリセルMC_R[1]乃至MC_R[i]は参照用メモリセルとしての機能を有する。
【0107】
なお、本明細書において、配列を表す符号の括弧が省略されて記載されている場合、その符号は配列要素のうち、不特定の1つを表す。例えば、メモリセルMCは、メモリセルMC[1、1]乃至MC[i、j]のうち、不特定の1つのメモリセルを表す。
【0108】
なお、後述の通り、メモリセルMCは、乗算を行う機能と、重み係数を格納する機能と、を有する。すなわち、メモリセルMCはシナプスとしての機能を有する。
【0109】
メモリセルMCおよびメモリセルMC_Rは、トランジスタM01と、トランジスタM02と、容量素子C0を有する。また、メモリセルMCにおいて、トランジスタM01のゲートをノードNMと呼ぶ。また、メモリセルMC_Rにおいて、トランジスタM01のゲートをノードNM_Rと呼ぶ。
【0110】
メモリセルMC[i、j]において、トランジスタM02のオン・オフは信号WW[i]によって制御される。信号BW[j]は、トランジスタM02を介して、ノードNM[i、j]に書き込まれ、信号VX[i]は、容量素子C0を介して、ノードNM[i、j]に書き込まれる。トランジスタM01はノードNM[i、j]の電位に応じて、電流IM[i、j]を流す。
【0111】
メモリセルMC_R[i]において、トランジスタM02のオン・オフは信号WW[i]によって制御される。信号BW_Rは、トランジスタM02を介して、ノードNM_R[i]に書き込まれ、信号VX[i]は、容量素子C0を介して、ノードNM_R[i]に書き込まれる。トランジスタM01はノードNM_R[i]の電位に応じて、電流IM_R[i]を流す。
【0112】
メモリセルMCにおいて、トランジスタM02はOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタのオフ電流は極めて低いため、トランジスタM02をオフにすることで、メモリセルMCはノードNMの電位(アナログデータ)を保持することができる。
【0113】
同様に、メモリセルMC_Rにおいて、トランジスタM02はOSトランジスタを用いることが好ましい。トランジスタM02をオフにすることで、メモリセルMC_RはノードNM_Rの電位(アナログデータ)を保持することができる。
【0114】
なお、トランジスタM01として用いることができるトランジスタは、特に限定されない。例えば、トランジスタM01としてSiトランジスタを用いることができる。この場合、トランジスタM01の上方にトランジスタM02を積層することができ、図10に示すようなシナプスを構成することができる。
【0115】
回路54は回路CSC[1]乃至CSC[j]および回路CSC_Rを有する。回路CSCおよびCSC_Rは、トランジスタM11、トランジスタM12および容量素子C1を有する。
【0116】
回路CSCにおいて、トランジスタM12のオン・オフは信号CSCSによって制御される。信号BCSCはトランジスタM12を介して、トランジスタM11のゲートおよび容量素子C1の一方の端子に書き込まれる。回路CSC[j]はメモリセルMC[1、j]乃至MC[i、j]の電流源として機能し、電流ICSC[j]を流す。
【0117】
回路CSC_Rにおいて、トランジスタM12のオン・オフは信号CSCSによって制御される。信号BCSC_RはトランジスタM12を介して、トランジスタM11のゲートおよび容量素子C1の一方の端子に書き込まれる。回路CSC_RはメモリセルMC_R[1]乃至MC_R[i]の電流源として機能し、電流ICSC_Rを流す。
【0118】
回路CSCにおいて、トランジスタM12はOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタのオフ電流は極めて低いため、トランジスタM12をオフにすることで、回路CSCはトランジスタM11のゲートの電位(アナログデータ)を保持することができる。
【0119】
同様に、回路CSC_Rにおいて、トランジスタM12はOSトランジスタを用いることが好ましい。トランジスタM12をオフにすることで、回路CSC_RはトランジスタM11のゲートの電位(アナログデータ)を保持することができる。
【0120】
回路52は回路CSK[1]乃至CSK[j]を有する。回路CSKはカレントシンク回路としての機能を有する。回路CSKはトランジスタM21、トランジスタM22、トランジスタM23および容量素子C2を有する。トランジスタM22のオン・オフは信号CSKSによって制御され、トランジスタM23のオン・オフは信号CSKRによって制御される。
【0121】
回路CSKにおいて、トランジスタM22およびトランジスタM23はOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタのオフ電流は極めて低いため、トランジスタM22およびトランジスタM23をオフにすることで、回路CSKはトランジスタM21のゲートの電位(アナログデータ)を保持することができる。
【0122】
配線BL_Rは、メモリセルMC_R[1]乃至MC_R[i]および回路CSC_Rに、電気的に接続される。配線BL[j]は、メモリセルMC[1、j]乃至MC[i、j]、回路CSC[j]および回路CSK[j]に電気的に接続される。
【0123】
回路53は、カレントミラー回路としての機能を有し、配線BL_Rに流れる電流を、配線BL[1]乃至BL[j]にコピーする機能を有する。
【0124】
メモリセルMCは、重み係数(W)に対応した電位を保持する機能を有する。信号線VX[i]に被乗数(X)に対応した電位を与えることで、トランジスタM01は、WとXの積に対応した電流IMを流す。APS50は、電流IMの和(電流IWX)を検出することで、アナログ積和演算を実行する。
【0125】
なお、メモリセルMCは、図12に示すように少ない素子数で構成することができる。そのため、乗算回路及びメモリを比較的単純な構成で実現することができ、ニューラルネットワークNNの回路規模の縮小を図ることができる。
【0126】
図13に示すタイミングチャートは、APS50の動作の一例を表す。図13は動作のタイミングを表すために期間P1乃至P4に分割されている。
【0127】
期間P1において、回路CSCに電荷が書き込まれる。期間P2において、メモリセルMCに重み係数に相当するデータが書き込まれる。期間P3において、回路CSKにオフセット電流を流し得る電荷が書き込まれる。期間P4以降、信号VX[i]の電位に応じて、アナログ積和演算の結果が電流IWX[j]として出力される。
【0128】
APS50に用いられるトランジスタは全てnチャネル型トランジスタである。そのため、APS50は、nチャネル型とpチャネル型の作り分けが不要になり、製造コストを大幅に下げることができる。また、APS50は、OSトランジスタだけで構成することができる。例えば、図3および図9における、画素部11をOSトランジスタで構成した場合、NN回路19と画素部11と同じ製造工程で作製することができる。すなわち、同一基板上に画素部11とNN回路19を同時に作製することができる。その結果、表示パネルの製造コストを大幅に低減することができる。また、OSトランジスタは、大型のガラス基板に作製することができるため、大規模な積和演算回路を作製することができる。
【0129】
以上、本実施の形態に示すアナログ積和演算回路を用いることで、効率的に積和演算を実行することが可能な半導体装置を提供することができる。また、効率的にニューラルネットワークを構築することが可能な半導体装置を提供することができる。
【0130】
(実施の形態4)
本実施の形態は、上記実施の形態に示すOSメモリを用いたアナログ積和演算回路(OS-APS)の具体例について、図14乃至図18を用いて説明する。本実施の形態は実施の形態3に示すアナログ積和演算回路とは異なる例について説明を行う。なお、本実施の形態において、ゲートは特に断りの無い場合はフロントゲートを指すものとする。
【0131】
<積和演算回路の構成>
図14は、APS(アナログ積和演算回路)100の構成の例を示す図である。APS100は、電流源回路130、メモリセルアレイ120およびオフセット回路110を有する。
【0132】
電流源回路130は行方向にn個の列出力回路OUTと、参照列出力回路CREFを有する。メモリセルアレイ120は列方向にm個および行方向にn個のマトリクス状に配置されたm×n個のメモリセルMEMと、列方向にm個の参照メモリセルREFを有する。オフセット回路110は行方向にn個の列入力回路OMを有する。ここで、nは1よりも大きい整数であり、mは1よりも大きい整数である。またiは1以上m-1以下の整数であり、jは1以上n-1以下の整数である。たとえばi行目j列目に配置されているメモリセルは、MEM[i,j]と記載することとする。
【0133】
列出力回路OUTの一部は定電流回路131aとして機能することができ、参照列出力回路の一部は定電流回路131bとして機能することができる。また各列出力回路OUTの他の一部と参照列出力回路CREFの他の一部はカレントミラーとして機能することができる。
【0134】
列出力回路OUTの定電流回路131aと電気的に接続される信号線B[j]および信号線B[j+1]は、それぞれ[j]列のメモリセルMEMおよび[j+1]列のメモリセルMEMと電気的に接続される。また、参照列出力回路CREFの定電流回路131bと電気的に接続される信号線BREFは、参照メモリセルREFと電気的に接続される。
【0135】
オフセット回路110が有する列入力回路OM[j]および列入力回路OM[j+1]はそれぞれ、トランジスタ111、トランジスタ112、トランジスタ113、容量素子114、抵抗素子115、および保持ノードO[j]または保持ノードO[j+1]を有する。
【0136】
またオフセット回路110は、信号線ORP、信号線OR、信号線OB、信号線OREF、出力端子となる信号線VOを有する。また列入力回路OM[j]および列入力回路OM[j+1]は、それぞれ信号線B[j]および信号線B[j+1]を介して、列[j]のメモリセルMEMおよび列[j+1]のメモリセルMEMと電気的に接続される。
【0137】
列入力回路OM[j]では、トランジスタ111の第1端子はOPR[j]と電気的に接続され、トランジスタ111のゲートは信号線ORと電気的に接続され、トランジスタ111の第2端子はトランジスタ112のゲートおよび容量素子114の第1端子と電気的に接続される。またトランジスタ112の第1端子にはVDD(高電源電位、電源の第1電位等といってもよい)が与えられ、トランジスタ112の第2端子は、トランジスタ113の第1端子および出力端子となる信号線VO[j]と電気的に接続される。またトランジスタ113のゲートは信号線OBと電気的に接続され、トランジスタ113の第2端子にはVSS(低電源電位、電源の第2電位等といってもよい)が与えられる。容量素子114の第2端子は信号線B[j]および抵抗素子115の第1端子と電気的に接続される。抵抗素子115の第2端子は、信号線OREFと電気的に接続される。
【0138】
また、図14に示すように、トランジスタ111の第2端子、トランジスタ112のゲートおよび容量素子114の第1端子と電気的に接続されているノードを、保持ノードO[j]という場合がある。
【0139】
同様に、列入力回路OM[j+1]では、トランジスタ111の第1端子はOPR[j+1]と電気的に接続され、トランジスタ111のゲートは信号線ORと電気的に接続され、トランジスタ111の第2端子はトランジスタ112のゲートおよび容量素子114の第1端子と電気的に接続される。またトランジスタ112の第1端子にはVDD(高電源電位、電源の第1電位等といってもよい)が与えられ、トランジスタ112の第2端子は、トランジスタ113の第1端子および出力端子となる信号線VO[j+1]と電気的に接続される。またトランジスタ113のゲートは信号線OBと電気的に接続され、トランジスタ113の第2端子にはVSS(低電源電位、電源の第2電位等といってもよい)が与えられる。容量素子114の第2端子は信号線B[j+1]および抵抗素子115の第1端子と電気的に接続される。抵抗素子115の第2端子は、信号線OREFと電気的に接続される。
【0140】
また、トランジスタ111の第2端子、トランジスタ112のゲートおよび容量素子114の第1端子と電気的に接続されているノードを、保持ノードO[j+1]という場合がある。
【0141】
信号線ORから制御信号を供給することができる。また信号線OPR[j]および信号線OPR[j+1]からそれぞれ、保持ノードO[j]および保持ノードO[j+1]のプリセット電位を供給することができる。また信号線OBからトランジスタ113を定電流源として動作させるためのバイアス電位を供給することができる。また信号線OREFから抵抗素子115で電流電圧変換を行うためのリファレンス電位を供給することができる。また信号線VO[j]および信号線VO[j+1]からそれぞれ、列[j]、列[j+1]の積和演算の結果を表す電位を出力することができる。
【0142】
<メモリセルアレイの例>
次に、図15を用いて、APS100が有するメモリセルアレイ120の構成の例を示す。メモリセルアレイ120はアナログメモリとして機能することができる。ただしメモリセルアレイ120は図15の構成に限らない。アナログメモリとして機能できる回路構成であれば、その他の構成であってもよい。
【0143】
図15に示すメモリセルアレイ120は、上述したようにメモリセルMEM[i,j]、メモリセルMEM[i,j+1]、メモリセルMEM[i+1,j]、メモリセルMEM[i+1,j+1]を有する。またメモリセルアレイ120は参照メモリセルREF[i]、参照メモリセルREF[i+1]を有する。
【0144】
さらに、メモリセルMEM[i,j]乃至MEM[i+1,j+1]はそれぞれ、電源線VR、信号線WD[j]または信号線WD[j+1]、信号線RW[i]または信号線RW[i+1]、信号線WW[i]または信号線WW[i+1]を有する。また、信号線B[j]および信号線B[j+1]と電気的に接続される。また、参照メモリセルREF[i]およびREF[i+1]はそれぞれ、電源線VR、参照信号線WDREF、信号線RW[i]または信号線RW[i+1]、信号線WW[i]または信号線WW[i+1]を有する。また信号線BREFと電気的に接続される。
【0145】
メモリセルMEM[i,j]乃至MEM[i+1,j+1]、ならびに参照メモリセルREF[i]およびREF[i+1]は、それぞれトランジスタ123、トランジスタ124、容量素子125を有する。
【0146】
メモリセルMEM[i,j]では、トランジスタ123の第1端子は、信号線WD[j]と電気的に接続され、トランジスタ123のゲートは信号線WW[j]と電気的に接続され、トランジスタ123の第2端子は容量素子125の第1端子およびトランジスタ124のゲートと電気的に接続される。トランジスタ124の第1端子は電源線VRと電気的に接続され、トランジスタ124の第2端子は信号線B[j]と電気的に接続される。容量素子125の第2端子は信号線RW[i]と電気的に接続される。
【0147】
また、図15に示すように、トランジスタ123の第2端子、容量素子125の第1端子およびトランジスタ124のゲートと電気的に接続されているノードを、電荷保持ノードN[i,j]という場合がある。
【0148】
電源線VRから電位(ここでは低電位とする)を供給することができる。また信号線WW[i]、信号線WW[i+1]、信号線RW[i]および信号線RW[i+1]からそれぞれ制御信号を供給することができる。また信号線WD[j]および信号線WD[j+1]からそれぞれデータ信号を供給することができる。また信号線B[j]および信号線B[j+1]に各列のメモリセルのデータに対応した電流を出力することができる。また信号線BREFに参照メモリセルのデータに対応した電流を出力することができる。
【0149】
また、電荷保持ノードN[i,j]、電荷保持ノードN[i,j+1]、電荷保持ノードN[i+1,j]、電荷保持ノードN[i+1,j+1]、電荷保持ノードNREF[i]、電荷保持ノードNREF[i+1]には、データに対応する電荷を蓄積することができる。
【0150】
なお、メモリセルMEM[i,j]が有するトランジスタ124に流れる電流(吸い込む電流)をI[i,j]ということとする。同様に、メモリセルMEM[i,j+1]が有するトランジスタ124に流れる電流をI[i,j+1]、メモリセルMEM[i+1,j]が有するトランジスタ124に流れる電流をI[i+1,j]、メモリセルMEM[i+1,j+1]が有するトランジスタ124に流れる電流をI[i+1,j+1]とする。また参照メモリセルREF[i]が有するトランジスタ124に流れる電流をIREF[i]、参照メモリセルREF[i+1]が有するトランジスタ124に流れる電流をIREF[i+1]とする。
【0151】
他のメモリセルにおける電気的な接続、機能等は、図15およびメモリセルMEM[i,j]の記載を参酌することができる。
【0152】
<電流源回路の例1>
次に、図16を用いて、APS100が有する電流源回路130の構成の例を示す。
【0153】
電流源回路130は、上述したように列出力回路OUT[j]、列出力回路OUT[j+1]、および参照列出力回路CREFを有する。また電流源回路130は定電流回路131a、定電流回路131bおよびカレントミラーを有する。
【0154】
列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]は、それぞれトランジスタ132、トランジスタ133、トランジスタ134、容量素子135およびノードNG[j]またはノードNG[j+1]を有する。なおトランジスタ132はデュアルゲート構造のトランジスタである。デュアルゲート構造のトランジスタの場合、一方のゲートを第1ゲート、フロントゲート、又は単にゲートとよぶことがあり、他方のゲートを第2ゲート、又はバックゲートとよぶことがある。
【0155】
また参照列出力回路CREFは、トランジスタ136、トランジスタ137、トランジスタ138および容量素子139を有する。トランジスタ136はデュアルゲート構造のトランジスタである。
【0156】
また列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]は、信号線GW、信号線FG[j]および信号線FG[j+1]および信号線B[j]および信号線B[j+1]を有する。
【0157】
また参照列出力回路CREFは、信号線GW、信号線FGREFおよび信号線BREFを有する。
【0158】
列出力回路OUT[j]では、トランジスタ132のフロントゲートはトランジスタ133の第1端子および容量素子135の第1端子と電気的に接続される。トランジスタ132のバックゲートはトランジスタ132の第1端子、容量素子135の第2端子、トランジスタ134の第1端子、および信号線B[j]と電気的に接続される。トランジスタ132の第2端子にはVDDが与えられる。トランジスタ133のゲートは信号線GWと電気的に接続され、トランジスタ133の第2端子は信号線FG[j]と電気的に接続される。トランジスタ134のゲートは、列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ134のゲート、参照列出力回路CREFのトランジスタ138のゲート、信号線BREF、トランジスタ138の第1端子、トランジスタ136のバックゲート、トランジスタ136の第2端子、容量素子139の第2端子と電気的に接続される。トランジスタ134の第2端子にはVSSが与えられる。
【0159】
また図16に示すように、トランジスタ132のフロントゲート、トランジスタ133の第1端子、容量素子135の第1端子と電気的に接続されているノードを、ノードNG[j]という場合がある。
【0160】
同様に列出力回路OUT[j+1]では、トランジスタ132のフロントゲートはトランジスタ133の第1端子および容量素子135の第1端子と電気的に接続される。トランジスタ132のバックゲートはトランジスタ132の第1端子、容量素子135の第2端子、トランジスタ134の第1端子、および信号線B[j+1]と電気的に接続される。トランジスタ132の第2端子にはVDDが与えられる。トランジスタ133のゲートは信号線GWと電気的に接続され、トランジスタ133の第2端子は信号線FG[j+1]と電気的に接続される。トランジスタ134の第2端子にはVSSが与えられる。
【0161】
またトランジスタ132のフロントゲート、トランジスタ133の第1端子、容量素子135の第1端子と電気的に接続されているノードを、ノードNG[j+1]という場合がある。
【0162】
参照列出力回路CREFでは、トランジスタ136のフロントゲートはトランジスタ137の第1端子および容量素子139の第1端子と電気的に接続される。トランジスタ136のバックゲートは、上述したようにトランジスタ136の第1端子、容量素子139の第2端子、トランジスタ138のゲート、トランジスタ138の第1端子、列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ134のゲート、信号線BREFと電気的に接続される。トランジスタ136の第2端子にはVDDが与えられる。トランジスタ137のゲートは信号線GWと電気的に接続され、トランジスタ137の第2端子は信号線FGREFと電気的に接続される。トランジスタ138の第2端子にはVSSが与えられる。
【0163】
また図16に示すように、トランジスタ136のフロントゲート、トランジスタ137の第1端子、容量素子139の第1端子と電気的に接続されているノードを、NGREFという場合がある。
【0164】
信号線GWから制御信号を供給することができる。信号線GWの信号線を“H”にすると、列出力回路OUT[j]のトランジスタ133、列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ133、参照列出力回路CREFのトランジスタ137がオンになる。このとき信号線FG[j]、信号線FG[j+1]、信号線FGREFから、それぞれ列出力回路OUT[j]のトランジスタ132のフロントゲート(つまりノードNG[j])、列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ132のフロントゲート(つまりノードNG[j+1])、参照列出力回路CREFのトランジスタ136のフロントゲート(つまりノードNGREF)に任意の電圧を書き込むことができる。そのため、トランジスタ132およびトランジスタ136をノーマリオンとすることができる。
【0165】
なお、信号線B[j]および信号線B[j+1]には、電流IREF’[j]およびIREF’[j+1]を流すことができる。これは、列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ134に流れる電流(吸い込む電流)ICMと、トランジスタ132に流れる電流(吐き出す電流)IC[j]およびIC[j+1]と、の和に相当する。
【0166】
同様に信号線BREFには、トランジスタ138に流れる電流(吸い込む電流)ICMと、トランジスタ136に流れる電流(吐き出す電流)ICREFと、の和に相当する電流IREFを流すことができる。
【0167】
ここで、当該電流IREFは、参照メモリセルREFが有するトランジスタ124に流れる電流(吸い込む電流)IREF[i]、IREF[i+1]の和に等しくなるように、トランジスタ136のソース電位が決定される。また、トランジスタ134のトランジスタサイズ(チャネル長及びチャネル幅)をトランジスタ138のトランジスタサイズと等しくすることで、トランジスタ134に流れる電流(吸い込む電流)をICMとすることができる。
【0168】
すなわち、列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ134および参照列出力回路CREFのトランジスタ138がカレントミラーを構成するため、信号線B[j]および信号線B[j+1]および信号線FGREFに同じ値の電流を流すことができる。
【0169】
これまでに示したAPS100に用いられるトランジスタは全てnチャネル型トランジスタである。そのため、APS100は、nチャネル型とpチャネル型の作り分けが不要になり、製造コストを大幅に下げることができる。また、APS100は、OSトランジスタだけで構成することができる。例えば、図3および図9における、画素部11をOSトランジスタで構成した場合、NN回路19と画素部11と同じ製造工程で作製することができる。すなわち、同一基板上に画素部11とNN回路19を同時に作製することができる。その結果、表示パネルの製造コストを大幅に低減することができる。また、OSトランジスタは、大型のガラス基板に作製することができるため、大規模な積和演算回路を作製することができる。
【0170】
<電流源回路の例2>
APS100が有する電流源回路130は、図16の構成に限られない。たとえばpチャネルトランジスタを用いて電流源回路130を構成してもよい。図17に、pチャネルトランジスタを用いた電流源回路130の構成例を示す。
【0171】
列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]は、それぞれpチャネル型トランジスタ140を有する。参照列出力回路CREFはpチャネル型トランジスタ141を有する。
【0172】
また列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]は、信号線B[j]および信号線B[j+1]を有する。参照列出力回路CREFは、信号線BREFを有する。
【0173】
列出力回路OUT[j]では、トランジスタ140のゲートは、列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ140のゲート、参照列出力回路CREFのトランジスタ141のゲート、トランジスタ141の第1端子、信号線BREFと電気的に接続される。トランジスタ140の第1端子は信号線B[j]と電気的に接続される。トランジスタ140の第2端子には、VDDが与えられる。トランジスタ140は定電流回路として機能することができる。
【0174】
同様に列出力回路OUT[j+1]では、トランジスタ140の第1端子は信号線B[j+1]と電気的に接続される。トランジスタ140の第2端子には、VDDが与えられる。
【0175】
参照列出力回路CREFでは、トランジスタ141のゲートは上述したようにトランジスタ141の第1端子、信号線BREF、列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ140のゲートと電気的に接続される。トランジスタ141の第2端子には、VDDが与えられる。トランジスタ141は、定電流回路として機能することができる。
【0176】
列出力回路OUT[j]および列出力回路OUT[j+1]のトランジスタ140および参照列出力回路CREFのトランジスタ141がカレントミラーを構成し、またそれぞれ定電流回路として機能するため、信号線B[j]および信号線B[j+1]および信号線BREFに同じ値の電流を流すことができる。
【0177】
なお電流源回路130の構成は図16および図17に限られず、定電流回路として機能できる構成であれば、その他の構成であってもよい。
【0178】
<タイミングチャート>
次に、メモリセルアレイ120に図15の構成、電流源回路130に図16の構成を採用した場合の図14に示すAPS100の動作の例を、図18のタイミングチャートを用いて説明する。
【0179】
図18に示す時刻T01乃至時刻T02は、トランジスタ132およびトランジスタ136を電流源として動作させるために、トランジスタ132およびトランジスタ136のゲートと電気的に接続されているノードNG[j]、NG[j+1]、NGREFに電圧を印加する動作に相当する。
【0180】
時刻T03乃至時刻T06は各メモリセルに第1のアナログデータを格納する動作に相当する。
【0181】
時刻T07乃至時刻T08はオフセット回路の列入力回路にプリセット電位を設定する動作に相当する。
【0182】
時刻T09乃至時刻T14は各行のメモリセルに格納した第1のアナログデータと、各行のメモリセルに供給する選択信号に対応する第2のアナログデータと、の積に対応した出力データを取得する動作に相当する。
【0183】
ここで、電源線VRは低電位、電源線VDDは高電位、電源線VSSは低電位とする。また、トランジスタ112、トランジスタ113、トランジスタ124、トランジスタ132、トランジスタ134、トランジスタ136、トランジスタ138は、特に断りのない場合は飽和領域で動作するものとする。すなわち、当該トランジスタのゲート電圧、ソース電圧、ドレイン電圧は、飽和領域で動作する範囲の電圧に適切にバイアスされているものとする。なお、当該トランジスタの動作が、理想的な飽和領域での動作からずれていても、出力データの精度が所望の範囲内で得られる場合であれば、当該トランジスタのゲート電圧、ソース電圧、ドレイン電圧は、適切にバイアスされているものとみなす。
【0184】
なお、その他のトランジスタ、すなわち、トランジスタ111、トランジスタ123、トランジスタ133、トランジスタ137には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタのオフ電流は極めて低いため、これらのトランジスタを理想的なスイッチとして機能させることができる。そのため容量素子114、容量素子125、容量素子135、容量素子139に蓄えた電位を長時間保持することができる。
【0185】
なお、時刻T03乃至T08における電流I、電流IREF、電流ICMを、それぞれ、電流I0、電流IREF0、電流ICM0と表す。また、時刻T03乃至T08における信号線Bに流れる電流を電流IOFと表す。
【0186】
まず時刻T01乃至時刻T02において、信号線GWの電位を“H”、信号線FG[j]の電位をVG[j]、信号線FG[j+1]の電位をVG[j+1]、信号線FGREFの電位をVGREFとすると、ノードNG[j]、NG[j+1]、NGREFの電位がそれぞれVG[j]、VG[j+1]、VGREFになる。ここで、VG[j]、VG[j+1]、VGREFはトランジスタ132、トランジスタ136をノーマリオンで動作させるための電位である。
【0187】
時刻T03乃至時刻T04において、信号線WW[i]を“H”、信号線WW[i+1]を“L”、信号線WD[j]の電位をVPR-VX[i,j]、信号線WD[j+1]の電位をVPR-VX[i,j+1]、信号線WDREFの電位をVPR、信号線RW[i]の電位を基準電位、信号線RW[i+1]の電位を基準電位とする。この時、電荷保持ノードN[i,j]の電位はVPR-VX[i,j]、電荷保持ノードN[i,j+1]の電位はVPR-VX[i,j+1]、電荷保持ノードNREF[i]の電位はVPRに設定される。ここで、VX[i,j]、VX[i,j+1]は複数の第1のアナログデータに各々対応する電位である。
【0188】
時刻T05乃至時刻T06において、信号線WW[i]を“L”、信号線WW[i+1]を“H”、信号線WD[j]の電位をVPR-VX[i+1,j]、信号線WD[j+1]の電位をVPR-VX[i+1,j+1]、信号線WDREFの電位をVPR、信号線RW[i]の電位を基準電位、信号線RW[i+1]の電位を基準電位とする。この時、電荷保持ノードN[i+1,j]の電位はVPR-VX[i+1,j]、電荷保持ノードN[i+1,j+1]の電位はVPR-VX[i+1,j+1]、電荷保持ノードNREF[i+1]の電位はVPRに設定される。ここで、VX[i+1,j]、VX[i+1,j+1]は複数の第1のアナログデータに各々対応する電位である。
【0189】
ここで、メモリセルMEM[i,j]におけるトランジスタ124に流れる電流(吸い込む電流)I0[i,j]は、
I0[i,j]=k(VPR-VX[i,j]-Vth) 式(1)
となる。また、参照メモリセルREF[i]におけるトランジスタ124に流れる電流(吸い込む電流)IREF0[i]は、
IREF0[i]=k(VPR-Vth) 式(2)
となる。ここで、kは係数、Vthはトランジスタ124の閾値電圧である。
【0190】
参照列出力回路CREFにおいて、信号線BREFには参照メモリセルREF[i]が有するトランジスタ124に流れる電流(吸い込む電流)IREF0[i]の和、ΣIREFO[i]=IREF0が流れるが、IREF0とICREF-ICM0とが等しくなるように、つまり、
ICREF-ICM0=ΣIREF0[i] 式(3)
が成り立つようにトランジスタ138のゲート電位が設定される。ここで、トランジスタ134とトランジスタ138とはカレントミラーを構成するため、トランジスタ134にも電流ICM0が流れる。
【0191】
時刻T07乃至時刻T08において、信号線ORを“H”、信号線OPR[j]をVOPR[j]、信号線OPR[j+1]をVOPR[j+1]、信号線OREFをVREFとすると、各々列入力回路OM[j]、列入力回路OM[j+1]の保持ノードO[j]、保持ノードO[j+1]の電位がVOPR[j]、VOPR[j+1]になる。VOPR[j]、VOPR[j+1]は各列で異なる値でも同じ値でも良いが、トランジスタ112がオンになり、かつVDDを超えない値が望ましい。トランジスタ113はゲートに適切なバイアス電位が信号線OBから供給されることで定電流源として動作し、トランジスタ112はソースフォロワとして動作しているため、信号線VO[j]、信号線VO[j+1]から出力電圧VOPR[j]-Vtho、出力電圧VOPR[j+1]-Vthoが出力される。なお、Vthoはトランジスタ112の閾値である。よって、出力電流の初期値IOF[j]の値に関わらず出力電圧の初期値を一定にすることができる。
【0192】
トランジスタ132に電流IC[j]が流れ(吐き出し)、トランジスタ134に電流ICM0が流れ(吸い込み)、メモリセルMEM[i,j]が有するトランジスタ124に電流I0[i,j]が流れ(吸い込み)、メモリセルMEM[i+1,j]が有するトランジスタ124に電流I0[i+1,j]が流れ(吸い込み)るため、信号線RW[i]の電位が基準電位、信号線RW[i+1]の電位が基準電位のとき、
IC[j]-ICM0-ΣI0[i,j]=IOF[j] 式(4)
が成り立つ。
【0193】
さて、時刻T09以降の動作説明に移る前に、信号線RW[i]の電位を基準電位に対してVW[i]だけ高い電位とする(以下、信号線RW[i]の電位をVW[i]とする、と表現する)場合を考える。ここで、VW[i]は第2のアナログデータに対応する電位である。なお、信号線RW[i]の電位は容量素子125を介してトランジスタ124のゲート電位に重畳されるため、信号線RW[i]の電位変化がそのままトランジスタ124のゲート電位の増加分とはならない。より具体的には、容量素子125の容量とトランジスタ124のゲート容量と寄生容量より算出できる容量結合係数を信号線RW[i]の電位変化に乗じた電位変化が、トランジスタ124のゲート電位の増加分となる。ここでは、説明を簡潔にするため、当該容量結合容量係数を乗じた電位をVW[i]とするが、実際に信号線RW[i]に供給する電位は、当該容量結合容量係数を用いることで適宜換算すればよい。
【0194】
このとき、メモリセルMEM[i,j]におけるトランジスタ124に流れる電流(吸い込む電流)I[i,j]は、
I[i,j]=k(VPR-VX[i,j]+VW[i]-Vth) 式(5)
となる。また、参照メモリセルREF[i]におけるトランジスタ124に流れる電流(吸い込む電流)IREF[i]は、
IREF[i]=k(VPR+VW[i]-Vth) 式(6)
となる。
【0195】
参照列出力回路CREFにおいて、信号線BREFには参照メモリセルREF[i]が有するトランジスタ124に流れる電流(吸い込む電流)IREF[i]の和、ΣIREF[i]=IREFが流れるが、IREFとICREF-ICMとが等しくなるように、つまり、
ICREF-ICM=ΣIREF[i] 式(7)
が成り立つように、トランジスタ138のゲート電位が設定される。ここで、トランジスタ134とトランジスタ138とはカレントミラーを構成するため、トランジスタ134にも電流ICMが流れる。
【0196】
ここで、トランジスタ132に電流IC[j]が流れ(吐き出し)、トランジスタ134に電流ICMが流れ(吸い込み)、メモリセルMEM[i,j]に電流I[i,j]が流れ(吸い込み)、メモリセルMEM[i+1,j]に電流I[i+1,j]が流れ(吸い込み)るため、信号線B[j]に流れる電流の初期値IOF[j]との差ΔI[j]は、
ΔI[j]
=(IC[j]-ICM-ΣI[i,j])-(IC[j]-ICM0-ΣI0[i,j])
=ΣIREF[i]-ICREF-ΣI[i,j]+ICREF-ΣIREF0[i]+ΣI0[i,j]
=Σk(VPR+VW[i]-Vth)-Σk(VPR-VX[i,j]+VW[i]-Vth)-Σk(VPR-Vth)+Σk(VPR-VX[i,j]-Vth)
=2kΣ(VW[i]・VX[i,j]) 式(8)
ここで、Σ(VW[i]・VX[i,j])は、第1のアナログデータに対応する電位VX[i,j]と、第2のアナログデータに対応する電位VW[i]と、の積の和に相当する。つまり、第1のアナログデータと第2のアナログデータとの積和値を算出することができることになる。
【0197】
上記導出において、トランジスタ132とトランジスタ136に流れる電流(吐き出す電流)IC[j]とICREFとは、各々一定であれば異なっていても良いことがわかる。すなわち、信号線FG[j]、信号線B[j+1]、信号線FGREFを独立な電圧に設定し、トランジスタ132、トランジスタ136を各々最適な一定電流を流す定電流源として機能させることができる。
【0198】
時刻T09乃至時刻T10において、信号線RW[i]の電位をVW[i]、信号線RW[i+1]の電位を基準電位とすると、配線B[j]には、差分電流ΔI[j]=2kΣ(VW[i]・VX[i,j])=2k・VW[i]・VX[i,j]が出力される。すなわち、列出力回路OUT[j]から、メモリセルMEM[i,j]に格納した第1のアナログデータと、メモリセルMEM[i,j]に印加する選択信号に相当する第2のアナログデータと、の積に対応したデータが出力される。
【0199】
時刻T11乃至時刻T12において、信号線RW[i]の電位を基準電位、信号線RW[i+1]の電位をVW[i+1]とすると、配線B[j]には、差分電流ΔI[j]=2kΣ(VW[i]・VX[i,j])=2k・VW[i+1]・VX[i+1,j]が出力される。すなわち、列出力回路OUT[j]から、メモリセルMEM[i+1,j]に格納した第1のアナログデータと、メモリセルMEM[i+1,j]に印加する選択信号に相当する第2のアナログデータと、の積に対応したデータが出力される。
【0200】
時刻T13乃至時刻T14において、信号線RW[i]の電位をVW[i]、信号線RW[i+1]の電位をVW[i+1]とすると、配線B[j]には、差分電流ΔI[j]=2kΣ(VW[i]・VX[i,j])=2k・(VW[i]・VX[i,j]+VW[i+1]・VX[i+1,j])が出力される。すなわち、列出力回路OUT[j]から、複数のメモリセルMEM[i,j]、MEM[i+1,j]に格納した第1のアナログデータと、当該複数のメモリセルMEM[i,j]、MEM[i+1,j]に各々印加する選択信号に相当する第2のアナログデータと、の積和に対応したデータが出力される。
【0201】
時刻T09乃至時刻T14において、信号線B[j]、信号線B[j+1]の電位は、抵抗素子115の抵抗値をRとするとき、R・ΔI[j]、R・ΔI[j+1]、すなわち式(8)より、2kRΣ(VW[i]・VX[i,j])、kRΣ(VW[i]・VX[i,j+1])、だけ変化する。そのため、容量素子114の容量結合比をCCとすると、出力信号線VO[j]、出力信号線VO[j+1]の電位は、VOPR[j]-Vtho+CC・kRΣ(VW[i]・VX[i,j])、VOPR[j+1]-Vtho+CC・kRΣ(VW[i]・VX[i,j+1])、となり、VOPR[j]-Vtho、VOPR[j+1]-Vthoの値を“0”とした積和演算の結果を出力する。すなわち、保持ノードO[j]、保持ノードO[j+1]、に一定の初期値を書き込んでおくことで、オフセットをほぼ0までキャンセルすることができる。
【0202】
また、VOPR[j]、VOPR[j+1]の値は、トランジスタ112がソースフォロワとして動作する範囲内で調整可能であり、次段の回路の入力信号として直接用いることができる。すなわちオフセットキャンセルと電流電圧変換が同時に可能である。
【0203】
本実施の形態に示すAPS100において、上述したようにメモリセルMEMの出力電流は電圧に変換され、オフセット回路110が有する容量素子114の第1端子に印加される。容量素子114の第2端子(つまりノードO)の電位はある一定の初期値を最初に書込み、その後浮遊ノードとすることで、出力電流の初期値のオフセットをキャンセルすることができる。そのため、出力電流の初期値からの差分のみを電圧に変換して出力することができる。
【0204】
このような構成とすると、オフセット回路のトランジスタが飽和領域においてドレイン電圧の変化によってドレイン電流が変化する場合であっても、各メモリセルに書き込まれた電位によって、オフセット回路のトランジスタのドレイン電位が変わり、出力する電流に差が生じる、といったおそれがない。
【0205】
そのため、入力の電位が“0”を表す値、すなわち基準電位の時は、各メモリセルに書き込まれた重み係数を表す電位にかかわらず、出力をある一定の初期値とすることができる。そのため、精度よく積和演算を行うことができる。
【0206】
なお本実施の形態で説明したAPS100は、先の実施の形態3で説明したAPS50と比較すると、抵抗素子が追加されるだけで、ほぼ同じ数の素子で積和演算、及び電流電圧変換が可能である。そのため積和演算回路に必要な基板の面積が増えるおそれが少なく、生産性がよい。
【0207】
以上、本実施の形態に示すアナログ積和演算回路を用いることで、効率的に積和演算を実行することが可能な半導体装置を提供することができる。また、高い精度で積和演算を実行することが可能な半導体装置を提供することができる。
【0208】
(実施の形態5)
本実施の形態は、実施の形態1に示す表示パネル20の詳細について説明を行う。
【0209】
《画素回路》
まず、図3の画素14に用いることができる回路構成について、図19を用いて説明を行う。
【0210】
図19(A)に示す画素14は、トランジスタ3431と、容量素子3233と、液晶素子3432と、を有する。
【0211】
トランジスタ3431のソース電極またはドレイン電極の一方は、ソース線22に電気的に接続され、他方はノード3436に電気的に接続される。トランジスタ3431のゲート電極はゲート線21に電気的に接続される。トランジスタ3431は、ノード3436へのデータ信号の書き込みを制御する機能を有する。
【0212】
容量素子3233の一対の電極の一方は、特定の電位が供給される配線(以下、「容量線CL」ともいう。)に電気的に接続され、他方は、ノード3436に電気的に接続される。容量線CLの電位は、画素14の仕様に応じて適宜設定される。容量素子3233は、ノード3436に書き込まれたデータを保持する機能を有する。
【0213】
液晶素子3432の一対の電極の一方は共通の電位(コモン電位)が与えられ、他方はノード3436に電気的に接続される。液晶素子3432に含まれる液晶は、ノード3436に書き込まれる電位により配向状態が決定される。
【0214】
液晶素子3432のモードとしては、例えば、TNモード、STNモード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、他の例として、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、様々なモードを用いることができる。
【0215】
図19(B)に示す画素14は、トランジスタ3431と、容量素子3233と、トランジスタ3232と、発光素子3125と、を有する。
【0216】
トランジスタ3431のソース電極またはドレイン電極の一方はデータ信号が与えられるソース線22に電気的に接続され、他方はノード3435に電気的に接続される。トランジスタ3431のゲート電極はゲート信号が与えられるゲート線21に電気的に接続される。トランジスタ3431はデータ信号のノード3435への書き込みを制御する機能を有する。
【0217】
容量素子3233の一対の電極の一方はノード3435に電気的に接続され、他方はノード3437に電気的に接続される。容量素子3233はノード3435に書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0218】
トランジスタ3232のソース電極またはドレイン電極の一方は電位供給線VL_aに電気的に接続され、他方はノード3437に電気的に接続される。トランジスタ3232のゲート電極はノード3435に電気的に接続される。トランジスタ3232は、発光素子3125に流れる電流を制御する機能を有する。
【0219】
発光素子3125のアノードまたはカソードの一方は電位供給線VL_bに電気的に接続され、他方はノード3437に電気的に接続される。
【0220】
発光素子3125としては、例えば有機EL素子などを用いることができる。ただし、これに限定されず、例えば無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0221】
例えば、電位供給線VL_aはVDDを供給する機能を有する。また、電位供給線VL_bはVSSを供給する機能を有する。
【0222】
《断面図》
次に、表示パネル20の構成例について、図20および図21の断面図を用いて説明する。
【0223】
図20(A)、(B)に示す表示パネル20は電極4015を有しており、電極4015はFPC4018が有する端子と異方性導電層4019を介して、電気的に接続されている。また、電極4015は、絶縁層4112、絶縁層4111、および絶縁層4110に形成された開口において配線4014と電気的に接続されている。電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電層から形成されている。
【0224】
また第1の基板4001上に設けられた画素14は、トランジスタを有しており、図20(A)では、画素14に含まれるトランジスタ3431を例示し、図20(B)では、画素14に含まれるトランジスタ3232を例示している。
【0225】
また、トランジスタ3431、3232は、絶縁層4102上に設けられている。また、トランジスタ3431、3232は、絶縁層4102上に形成された電極517を有し、電極517上に絶縁層4103が形成されている。絶縁層4103上に半導体層512が形成されている。半導体層512上に電極510及び電極511が形成され、電極510及び電極511上に絶縁層4110及び絶縁層4111が形成され、絶縁層4110及び絶縁層4111上に電極516が形成されている。電極510及び電極511は、配線4014と同じ導電層で形成されている。
【0226】
トランジスタ3431、3232において、電極517はゲート電極としての機能を有し、電極510はソース電極またはドレイン電極の一方としての機能を有し、電極511はソース電極またはドレイン電極の他方としての機能を有し、電極516はバックゲート電極としての機能を有する。
【0227】
トランジスタ3431、3232はボトムゲート構造であり、且つバックゲートを有することで、オン電流を増大させることができる。また、トランジスタの閾値を制御することができる。なお、電極516は、製造工程を簡略化するため、場合によっては省略してもよい。
【0228】
トランジスタ3431、3232において、半導体層512はチャネル形成領域としての機能を有する。半導体層512として、結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、金属酸化物、有機半導体、などを用いればよい。また、必要に応じて、半導体層512の導電率を高めるため、または、トランジスタの閾値を制御するために、半導体層512に不純物を導入してもよい。
【0229】
半導体層512として金属酸化物を用いた場合、半導体層512はインジウム(In)を含むことが好ましい。半導体層512がインジウムを含む金属酸化物の場合、半導体層512はキャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、半導体層512は、元素Mを含む酸化物半導体であると好ましい。元素Mは、好ましくは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)またはスズ(Sn)などとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素(B)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い元素である。また、半導体層512は、亜鉛(Zn)を含む金属酸化物であると好ましい。亜鉛を含む金属酸化物は結晶化しやすくなる場合がある。
【0230】
半導体層512は、インジウムを含む金属酸化物に限定されない。半導体層512は、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物などの、インジウムを含まず、亜鉛を含む金属酸化物、ガリウムを含む金属酸化物、スズを含む金属酸化物などであっても構わない。
【0231】
また、図20(A)、(B)に示す表示パネル20は、容量素子3233を有する。容量素子3233は、電極511と電極4021が絶縁層4103を介して重なる領域を有する。電極4021は、電極517と同じ導電層で形成されている。
【0232】
図20(A)は、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示パネルの一例である。図20(A)において、表示素子である液晶素子3432は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁層4032、絶縁層4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031は液晶層4008を介して重畳する。
【0233】
またスペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の電極層4030と第2の電極層4031との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。
【0234】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0235】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0236】
トランジスタ3431にOSトランジスタを用いた場合、トランジスタ3431は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0237】
また、表示パネルにおいて、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などを適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0238】
図20(B)は、表示素子としてEL素子などの発光素子を用いた表示パネルの一例である。EL素子は有機EL素子と無機EL素子に区別される。
【0239】
有機EL素子は、電圧を印加することにより、一方の電極から電子、他方の電極から正孔がそれぞれEL層に注入される。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。なお、EL層は、発光性の化合物以外に、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)などを有していてもよい。EL層は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法などの方法で形成することができる。
【0240】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー-アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。
【0241】
図20(B)は、発光素子3125として有機EL素子を用いた例を説明する。
【0242】
図20(B)において、発光素子3125は、画素14に設けられたトランジスタ3232と電気的に接続している。なお発光素子3125の構成は、第1の電極層4030、発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、この構成に限定されない。発光素子3125から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子3125の構成は適宜変えることができる。
【0243】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側面が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0244】
発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0245】
発光素子3125に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031および隔壁4510上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、DLC(Diamond Like Carbon)などを形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように、外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0246】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)などを用いることができる。また、充填材4514に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0247】
シール材4005には、ガラスフリットなどのガラス材料や、二液混合型の樹脂などの常温で硬化する硬化樹脂、光硬化性の樹脂、熱硬化性の樹脂などの樹脂材料を用いることができる。また、シール材4005に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0248】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0249】
また、発光素子をマイクロキャビティ構造とすることで、色純度の高い光を取り出すことができる。また、マイクロキャビティ構造とカラーフィルタを組み合わせることで、映り込みが低減し、表示画像の視認性を高めることができる。
【0250】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0251】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)などの金属、またはその合金、もしくはその金属窒化物から一種以上を用いて形成することができる。
【0252】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、もしくは、アニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体またはその誘導体等が挙げられる。
【0253】
発光素子3125が光を外部に取り出すため、少なくとも第1の電極層4030または第2の電極層4031の一方が透明であればよい。表示パネルは、光の取り出し方によって、上面射出(トップエミッション)構造と、下面射出(ボトムエミッション)構造と、両面射出(デュアルエミッション)構造に分類される。上面射出構造は、基板4006から光を取り出す場合をいう。下面射出構造は、基板4001から光を取り出す場合をいう。両面射出構造は、基板4006と基板4001の両方から光を取り出す場合をいう。例えば、上面射出構造の場合、第2の電極層4031を透明にすればよい。例えば、下面射出構造の場合、第1の電極層4030を透明にすればよい。例えば、両面射出構造の場合、第1の電極層4030及び第2の電極層4031を透明にすればよい。
【0254】
〈基板4001〉
作製工程中の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する材料を基板4001等に用いることができる。例えば、厚さ0.7mm以下0.1mm以上の材料を基板4001に用いることができる。具体的には、厚さ0.1mm程度まで研磨した材料を用いることができる。
【0255】
例えば、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の面積が大きなガラス基板を基板4001等に用いることができる。これにより、大型の表示装置を作製することができる。
【0256】
有機材料、無機材料または有機材料と無機材料等の複合材料等を基板4001等に用いることができる。例えば、ガラス、セラミックス、金属等の無機材料を基板4001等に用いることができる。
【0257】
具体的には、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、クリスタルガラス、アルミノ珪酸ガラス、強化ガラス、化学強化ガラス、石英またはサファイア等を、基板4001等に用いることができる。具体的には、無機酸化物膜、無機窒化物膜または無機酸窒化物膜等を、基板4001等に用いることができる。例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等を、基板4001等に用いることができる。ステンレス・スチールまたはアルミニウム等を、基板4001等に用いることができる。
【0258】
例えば、シリコンや炭化シリコンからなる単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等を基板4001等に用いることができる。これにより、半導体素子を基板4001等に形成することができる。
【0259】
例えば、樹脂、樹脂フィルムまたはプラスチック等の有機材料を基板4001等に用いることができる。具体的には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリル樹脂等の樹脂フィルムまたは樹脂板を、基板4001等に用いることができる。
【0260】
例えば、金属板、薄板状のガラス板または無機材料等の膜を樹脂フィルム等に貼り合わせた複合材料を基板4001等に用いることができる。例えば、繊維状または粒子状の金属、ガラスもしくは無機材料等を樹脂フィルムに分散した複合材料を、基板4001等に用いることができる。例えば、繊維状または粒子状の樹脂もしくは有機材料等を無機材料に分散した複合材料を、基板4001等に用いることができる。
【0261】
また、単層の材料または複数の層が積層された材料を、基板4001等に用いることができる。例えば、基材と基材に含まれる不純物の拡散を防ぐ絶縁膜等が積層された材料を、基板4001等に用いることができる。具体的には、ガラスとガラスに含まれる不純物の拡散を防ぐ酸化シリコン層、窒化シリコン層または酸化窒化シリコン層等から選ばれた一または複数の膜が積層された材料を、基板4001等に用いることができる。または、樹脂と樹脂を透過する不純物の拡散を防ぐ酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜等が積層された材料を、基板4001等に用いることができる。
【0262】
具体的には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート若しくはアクリル樹脂等の樹脂フィルム、樹脂板または積層材料等を基板4001等に用いることができる。
【0263】
具体的には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂もしくはシリコーン等のシロキサン結合を有する樹脂を含む材料を基板4001等に用いることができる。
【0264】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)またはアクリル樹脂等を基板4001等に用いることができる。または、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等を用いることができる。
【0265】
また、紙または木材などを基板4001等に用いることができる。
【0266】
例えば、可撓性を有する基板を基板4001等に用いることができる。
【0267】
なお、トランジスタまたは容量素子等を基板に直接形成する方法を用いることができる。また、例えば作製工程中に加わる熱に耐熱性を有する工程用の基板にトランジスタまたは容量素子等を形成し、形成されたトランジスタまたは容量素子等を基板4001等に転置する方法を用いることができる。これにより、例えば可撓性を有する基板にトランジスタまたは容量素子等を形成できる。
【0268】
〈基板4006〉
例えば、基板4001に用いることができる材料を基板4006に用いることができる。例えば、基板4001に用いることができる材料から選択された透光性を備える材料を、基板4006に用いることができる。または、片側の表面に、例えば1μm以下の反射防止膜が形成された材料を基板4006に用いることができる。具体的には、誘電体を3層以上、好ましくは5層以上、より好ましくは15層以上積層した材料を基板4006に用いることができる。これにより、反射率を0.5%以下好ましくは0.08%以下に抑制することができる。または、基板4001に用いることができる材料から選択された複屈折が抑制された材料を、基板4006に用いることができる。
【0269】
例えば、アルミノ珪酸ガラス、強化ガラス、化学強化ガラスまたはサファイア等を、表示パネルの使用者に近い側に配置される基板4006に好適に用いることができる。これにより、使用に伴う表示パネルの破損や傷付きを防止することができる。
【0270】
例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、トリアセチルセルロース(TAC)等の樹脂フィルムを、基板4006に好適に用いることができる。これにより、重量を低減することができる。または、例えば、落下に伴う破損等の発生頻度を低減することができる。
【0271】
また、例えば、厚さ0.7mm以下0.1mm以上の材料を基板4006に用いることができる。具体的には、厚さを薄くするために研磨した基板を用いることができる。
【0272】
図21(A)は、図20(A)に示すトランジスタ3431に、トップゲート型のトランジスタを設けた場合の断面図を示している。同様に、図21(B)は、図20(B)に示すトランジスタ3232に、トップゲート型のトランジスタを設けた場合の断面図を示している。
【0273】
図21(A)、(B)のトランジスタ3431、3232において、電極517はゲート電極としての機能を有し、電極510はソース電極またはドレイン電極の一方としての機能を有し、電極511はソース電極またはドレイン電極の他方としての機能を有する。
【0274】
図21(A)、(B)のその他の構成要素の詳細については、図20(A)、(B)の記載を参照すればよい。
【0275】
本明細書において、特に断りがない場合、オン電流とは、トランジスタがオン状態にあるときのドレイン電流をいう。オン状態(オンと略す場合もある)とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧(VG)がしきい値電圧(Vth)以上の状態、pチャネル型トランジスタでは、VGがVth以下の状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオン電流とは、VGがVth以上のときのドレイン電流を言う。また、トランジスタのオン電流は、ドレインとソースの間の電圧(VD)に依存する場合がある。
【0276】
本明細書において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態(オフと略す場合もある)とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、VGがVthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、VGがVthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、VGがVthよりも低いときのドレイン電流を言う。トランジスタのオフ電流は、VGに依存する場合がある。従って、トランジスタのオフ電流が10-21A未満である、とは、トランジスタのオフ電流が10-21A未満となるVGの値が存在することを言う場合がある。
【0277】
また、トランジスタのオフ電流は、VDに依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、VDの絶対値が0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、または20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVDにおけるオフ電流を表す場合がある。
【0278】
本明細書等において、トランジスタの接続関係を説明する際、ソースとドレインとの一方を、「ソースまたはドレインの一方」(又は第1電極、又は第1端子)と表記し、ソースとドレインとの他方を「ソースまたはドレインの他方」(又は第2電極、又は第2端子)と表記している。これは、トランジスタのソースとドレインは、トランジスタの構造又は動作条件等によって変わるためである。なおトランジスタのソースとドレインの呼称については、ソース(ドレイン)端子や、ソース(ドレイン)電極等、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0279】
本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。
【0280】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0281】
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
【0282】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
【実施例1】
【0283】
本実施例では、実施の形態3に示すOS-APSをガラス基板上に試作した。また、実施の形態4に示すOS-APSの乗算特性についてシミュレーションを行った。
【0284】
試作したOS-APSのチップの光学顕微鏡写真を図22に示す。図22(A)は、OS-APS全体の写真であり、図22(B)はメモリセルMC部分の拡大写真である。
【0285】
図22(A)は、図12の回路CSC、回路CSKおよびメモリセルMCに相当する箇所をそれぞれ示している。
【0286】
図22(B)は、メモリセルMCのうち、トランジスタM01、トランジスタM02および容量素子C0に相当する箇所をそれぞれ示している。
【0287】
図23および図24に、実施の形態4で説明したOS-APSのメモリセルMC1つあたりの乗算特性のシミュレーション結果を示す。図23は本発明の一態様の通りオフセット回路を有するときの結果である。図24に比較例としてオフセット回路がないときの結果を示す。
【0288】
乗算特性は、時間に応じて入力電圧を変化させて計算した。図23および図24において、横軸は時間(秒)であり、縦軸は出力電圧(V)を示している。重み係数「W」は、W=“1”として1.3V、W=“0.5”として1.8V、W=“0”として2.3V、W=“-0.5”として2.8V、W=“-1”として3.3Vをそれぞれ与えた。OS-APSの乗算が理想的に行われた場合、各重み係数の乗算結果の直線は、積が“0”に相当する一点で交差する。
【0289】
図23のようにオフセット回路を有する場合は、各重み係数の乗算結果の直線が一点で交差した。それに対して、図24のようにオフセット回路がない場合は、積が“0”に相当する点が各重み係数で異なってしまい、一点で交差しなかった。
【0290】
次に、試作した図22のOS-APSでニューラルネットワークを構築し、学習および推論を行った場合のシミュレーションを行った。
【0291】
まず、図25(A)に示す36pixel(=6×6)の画像データ(「1」、「2」、「3」、「4」)に対して学習を行った。
【0292】
次に、図25(A)の画像データに対して10%のノイズを加えた画像を用意し(図25(B))、これらの画像に対して推論を行った。「1」、「2」、「3」、「4」いずれの場合においても、95%以上の精度で、画像を正しく認識することができた。
【0293】
以上、本発明の一形態であるOS-APSを用いることで、ニューラルネットワークを構築し、機械学習によって画像認識ができるようになることが確認された。
【実施例2】
【0294】
本実施例では、3つに折り畳むことのできるフレキシブルタッチパネルを適用した表示装置を作製し、ニューラルネットワークを用いた文字認識ができることを実証した。
【0295】
フレキシブルタッチパネルは、以下のように作製した。まず、一方の作製基板(ガラス基板)上に剥離層(タングステン膜)を形成し、当該剥離層上に、トランジスタや発光素子を含む被剥離層を形成した。また、他方の作製基板上に剥離層を形成し、当該剥離層上に、導電性酸化物膜を用いたタッチセンサの電極やカラーフィルタを含む被剥離層を形成した。続いて、2枚の作製基板を接着層で貼り合せた後、各作製基板を被剥離層から剥離し、接着剤を用いて可撓性基板を貼り付けることで作製した。
【0296】
発光素子には、トップエミッション型の有機EL素子を用いた。
【0297】
トランジスタのチャネルが形成される半導体層には、In、Ga及びZnを含む結晶性金属酸化物を適用した。
【0298】
作製した表示装置を図26に示す。表示装置はフレキシブルタッチパネル5001を3つの筐体5002で保持した構成となっている。図26では、フレキシブルタッチパネル5001の表示面が凸面である部分と、凹面である部分とが混在するように湾曲した状態を示している。
【0299】
図26では、手書きで入力された文字5003「S」が明示されている。
【0300】
本実施例では、フレキシブルタッチパネルに入力された手書き文字を、ニューラルネットワークを用いて識別できるかどうかを検証した。ここでは、フレキシブルタッチパネルから出力されるタッチ信号をコンピュータに入力し、あらかじめ学習されたニューラルネットワークの学習モデルを用いて、文字認識を行った。その結果、フレキシブルタッチパネルに入力された手書き文字であっても、問題なく文字認識ができることが確認された。
【符号の説明】
【0301】
1 情報端末
1a 情報端末
2 表示部
2a 表示部
3a 筐体
3b 筐体
3c 筐体
4 ヒンジ
5 サーバー
10 タッチパネルシステム
11 画素部
12 ゲートドライバ
13 ソースドライバ
14 画素
15 タッチセンサ
16 センシング回路
19 NN回路
20 表示パネル
21 ゲート線
22 ソース線
25 ホスト
31 入力層
32 中間層
33 出力層
41_1 ニューロン
41_2 ニューロン
41_3 ニューロン
42_1 ニューロン
42_2 ニューロン
42_3 ニューロン
43_1 ニューロン
43_2 ニューロン
43_3 ニューロン
50 APS
51 メモリセルアレイ
52 回路
53 回路
54 回路
60 受像装置
61 表示部
62 入力領域
63 領域
64 アンテナ
65 インターネット回線
66 サーバー
70 タッチパネルシステム
72 エンコーダ
73 画像処理回路
74 デコーダ
75 アナログフロントエンド
76 受信回路
77 デコーダ
81 上部カバー
82 FPC
83 FPC
84 FPC
87 バックライトユニット
88 光源
89 フレーム
90 プリント基板
91 バッテリー
92 下部カバー
100 APS
110 オフセット回路
111 トランジスタ
112 トランジスタ
113 トランジスタ
114 容量素子
115 抵抗素子
120 メモリセルアレイ
123 トランジスタ
124 トランジスタ
125 容量素子
130 電流源回路
131a 定電流回路
131b 定電流回路
132 トランジスタ
133 トランジスタ
134 トランジスタ
135 容量素子
136 トランジスタ
137 トランジスタ
138 トランジスタ
139 容量素子
140 トランジスタ
141 トランジスタ
510 電極
511 電極
512 半導体層
516 電極
517 電極
3125 発光素子
3232 トランジスタ
3233 容量素子
3431 トランジスタ
3432 液晶素子
3435 ノード
3436 ノード
3437 ノード
4001 基板
4005 シール材
4006 基板
4008 液晶層
4014 配線
4015 電極
4018 FPC
4019 異方性導電層
4021 電極
4030 電極層
4031 電極層
4032 絶縁層
4033 絶縁層
4035 スペーサ
4102 絶縁層
4103 絶縁層
4110 絶縁層
4111 絶縁層
4112 絶縁層
4510 隔壁
4511 発光層
4514 充填材
5001 フレキシブルタッチパネル
5002 筐体
5003 手書き文字
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26