(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】化粧料塗布具
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
A45D34/04 525A
(21)【出願番号】P 2022192722
(22)【出願日】2022-12-01
(62)【分割の表示】P 2019048441の分割
【原出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】仲田 隼
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-061967(JP,U)
【文献】特開平11-240289(JP,A)
【文献】特開2005-118398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方内部の収容部に塗布液が収容される軸筒と、該軸筒の先端内部に配置される塗布部とを有し、上記軸筒内の収容部に収容した塗布液を上記塗布部に供給する化粧料塗布具であって、
先軸と軸筒のそれぞれに本嵌合部及び仮嵌合部が形成されており、
前記軸筒に仮篏合時に先軸を径方向に内側から支えるガタ防止部が
、前側の本嵌合部と後側の本嵌合部の間に形成されていることを特徴とする化粧料塗布具。
【請求項2】
先軸の内周において本嵌合部の前側には係合段部が形成され、前記係合段部よりも前部には、段差の前後が三角形状の溝が形成された段状の係止部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の化粧料塗布具。
【請求項3】
前記軸筒に(a)ハイドロフルオロエーテル5~40重量%と、(b)低沸点シリコーンオイル20~60重量%と、(c)シリコン樹脂2~10重量%と、(d)架橋型メチルポリシロキサン、ステアリン酸イヌリン、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の増粘剤2~10重量%と、(e)粉体10~40重量%とを少なくとも含有し、かつ、25℃、ずり速度191.5/sにおける粘度が400mPa・s未満である
アイライナー用の液状油性化粧料を収容したことを特徴とする請求項
2に記載の化粧料塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクやアイライナー等液体化粧料を塗布するための化粧料塗布具、より詳しくは、保管時や販売時等の使用開始前に状態において、塗布部への流動体の供給をストップしておき、ユーザが使用する場合に塗布部へ流動性の化粧料を導通させるようにした化粧料塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に化粧料を保蔵した軸筒先端の先軸に塗布部を設けた塗布具が種々に提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の塗布具では、未使用時はリング状に形成されたストッパーによって塗布液が塗布部と連通しないように保持(仮嵌合)している。これの使用時には、ユーザがストッパーを取り外し、その後、先軸を軸筒に圧入することで軸体内に収容された塗布液が塗布部に連通させて、塗布可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の塗布具では、ユーザが先軸を圧入するために、ストッパーを外して先軸を軸筒から外さずに圧入すれば先軸の位置決めは不要である。しかし、誤って先軸を軸筒から一度外してストッパーを軸筒から外した後に、先軸を軸筒に取り付けようとすると、先軸の位置が適正でないと先軸と軸筒との圧入不足が原因で液漏れが生じる恐れが有り、ユーザでは、先軸を軸筒に液漏れしないように位置決めして嵌入するのが困難である。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ストッパーリングを用いた先軸と軸筒とを仮嵌合する塗布具において、嵌合時に容易に位置決めが可能な化粧料塗布具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、後方内部の収容部に塗布液が収容される軸筒と、該軸筒の先端内部に配置される塗布部とを有し、上記軸筒内の収容部に収容した塗布液を上記塗布部に供給する化粧料塗布具であって、
先軸と軸筒のそれぞれに本嵌合部及び仮嵌合部が形成されており、
前記先軸及び軸筒がそれぞれ回り止めリブを有し、
前記軸筒及び先軸の仮嵌合部同士が係合する初期嵌合状態時に前記互いの回り止めリブ同士が係合しない状態となり、一方、本嵌合部同士が嵌合する本嵌合状態時に前記互いの回り止めリブ同士が係合する状態となることを特徴とする化粧料塗布具である。
【0008】
本発明において、前記軸筒における本嵌合部の塗布部側に、仮嵌合部が形成されていることが好適である。
【0009】
本発明において、前記軸筒には仮嵌合時に先軸を径方向に内側から支えるためのガタ防止部が形成されていることが好適である。
【0010】
本発明において、前記本嵌合部の前側と後側で外径が異なることが好適である。
【0011】
本発明において、前記軸筒に液状油性化粧料を収容し、前記軸筒の材質をPBTとしたことが好適である。
【0012】
本発明にて、前記軸筒の前端部には、シールボールが継手を介して嵌め込まれ、本嵌合状態時には前記シールボールが前記軸筒の収容部に収容され、前記シールボールが嵌入する継手には、後端開口から突出した突出部が形成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗布具によれば、軸筒及び先軸の仮嵌合部同士が係合する初期嵌合状態時に前記互いの回り止めリブ同士が係合しない状態となり、一方、本嵌合部同士が嵌合する本嵌合状態時に前記互いの回り止めリブ同士が係合する状態となるので、初期嵌合時に回り止めリブが影響し合わないのでフリーな位置を許容でき、仮嵌合時には回り止めリブ同士が入り込み適切な位置決めができ、さらに本嵌合状態時には回り止めリブ同士が入り込むので先軸が軸筒に対して回転方向に位置決めができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る塗布具において、塗布具からストッパーリングが外され(使用準備状態)でかつ初期嵌合状態の説明図であって、(a)が全体側面図、(b)が(a)の全体縦断面図、(c)が(b)のC-C線に沿う横断面図、(d)が(b)のD部分の拡大説明図である。
【
図2】
図1の塗布具において構成部材のシールボール受けの部品図であり、(a)が前方からの斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が(a)のC方向から見た側面図、(d)が(c)から周方向に90度回転させた状態の側面図,(e)が(b)のE-E線に沿う縦断面図、(f)が後方からの斜視図、(g)が後方からの視図である。
【
図3】
図1の塗布具において構成部材の軸筒の部品図であり、(a)が前方からの斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が前部の拡大図、(d)が側面図、(e)が(b)のE-E線に沿う縦断面図、(f)が(d)から周方向に90度回転させた状態の側面図,(g)が(b)のG-G線に沿う縦断面図である。
【
図4】
図1の塗布具において構成部材の先軸の部品図であり、(a)が前方からの視図、(b)が前方からの斜視図、(c)が側面図、(d)が(a)のD-D線に沿う縦断面図、(e)が後方からの視図、(f)が後方からの斜視図である。
【
図5】
図1の塗布具において、キャップが装着され、ストッパーリングが装着された(未使用状態の)先軸と軸筒との初期嵌合状態の説明図であり、(a)が全体側面図、(b)が全体縦断面図、(c)が(b)のC部分の拡大説明図である。
【
図6】
図1の塗布具において、キャップとストッパーリングが外されて先軸が軸筒に本嵌合状態となった説明図であり、(a)が全体側面図、(b)が全休縦断面図、(c)が(b)のC-C線に沿う断面図、(d)が(b)のD部分の拡大説明図である。
【
図7】
図1の塗布具において、キャップとストッパーリングが外されて先軸が軸筒に仮嵌合状態となった説明図であり、(a)が全体側面図、(b)が全休縦断面図、(c)が(b)のC-C線に沿う断面図、(d)が(b)のD部分の拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に係る塗布具を図に示す実施形態に基づいて説明する。
図1~
図7は、実施形態に係るノック式繰出容器を用いた塗布具の説明図である。
図1は、実施形態に係るノック式繰出容器を用いた塗布具からストッパーリングが外されかつ初期嵌合状態の説明図である。
図2は、シールボール受けの部品図、
図3は、軸筒の部品図、
図4は、先軸の部品図である。
図5は、キャップが装着され、ストッパーリングが装着された先軸と軸筒との初期嵌合状態の説明図、
図6で先軸が軸筒と嵌合した本嵌合状態の説明図、
図7は先軸が軸筒と嵌合する過程の仮嵌合状態の説明図である。
【0016】
実施形態に係る塗布具は、後方内部の収容部に塗布液が収容される軸筒(軸本体)10と、該軸筒10の先端内部に配置される塗布部22とを有し、上記軸筒10の収容部24に収容した塗布液を上記塗布部22に供給する化粧料塗布具である。
【0017】
先軸20と軸筒10のそれぞれに本嵌合部32及び仮嵌合部34が形成されており、先軸20及び軸筒10がそれぞれ回り止めリブ36(
図3参照)及び、回り止めリブ38(
図4参照)を有する。
【0018】
前記軸筒10及び先軸20の仮嵌合部34、34同士が係合する初期嵌合状態時(
図1、
図5参照)に前記互いの回り止めリブ36、38同士が影響し合わない状態であり、一方、本嵌合部32同士が嵌合する本嵌合状態時(
図6参照)に前記互いの回り止めリブ同士36、38が入り込むものである。なお、初期嵌合状態から先軸20が移動して軸筒10と嵌合する(本嵌合状態となる)過程で回り止めリブ36、38同士が係合しあって互いの回転が規制される仮嵌合状態(
図7参照)となる。
【0019】
ここで、前記塗布具は、内部に流動体の収容部24を設けて、使用開始前はその流動体の吐出口を栓でシールした状態を維持する軸筒10と、塗布部22を保持して使用開始前はストッパーリング26cを介して軸筒10に嵌合した初期嵌合の状態を維持し(
図5参照)、次に、
図1に示すように、使用開始時にストッパーリング26cを外し、
図7に示すようにストッパーリング26cが外れることによって、そのストッパーリング26cの長さ分、軸方向に移動して
図6に示すような軸筒10に嵌合する本嵌合の状態になる先軸20と、該先軸20の内部に配設されて先軸20が軸筒10に本嵌合する際の移動によりパイプ継手16の後端が上記軸筒10のシールボール(栓)24bに当接して、その栓抜きを行なうことにより、収容部24から塗布部22への流動体の供給を可能とする継手14、パイプ継手16、パイプ18等の流動体導通管とを備えてなる流動体の塗布具に係るものである。
【0020】
軸筒10の前端部10aには、概略筒状のシールボール24bが嵌め込まれてその受け部の機能を有する継手14が嵌入している。継手14には、塗布具使用前にシールボール24bが嵌め込まれ軸筒10の収容部24を封止している。
【0021】
実施形態に係る塗布具は、ノック式の繰出容器であり、
図6に示す本嵌合状態として、軸筒10の後端部に配設された天冠12を軸筒10に対して軸方向前方に押圧することにより収容部24内の流動体内容物を繰出すことが可能な容器である。
【0022】
上記塗布具は、ユーザのノック操作により発生する天冠12の押圧の力を回転の力に変換する繰出機構28を備え、軸筒10に固定した駆動筒40と、駆動筒40に螺合させたネジ棒30とを有し、その繰出機構28が直進運動から変換した回転運動の力でネジ棒30を回転させることによって駆動筒40を介して該ネジ棒30と連結されたピストン体44を前進させて収容部24内から内容物を繰出す構造になっている。駆動筒40とネジ体42との間にはスプリングが介装されている。
【0023】
〔軸筒10〕
軸筒10について説明する。
図3に示すように、軸筒10は概略筒状であり、前端部10aが収容部24の有る本体よりも縮径されて形成されている。前端部10aには、本嵌合部32として、間隔をおいた2条のリブ(前側の本嵌合部32F、後側の本嵌合部32R)が外周に環状に形成されている。
【0024】
本嵌合部32において塗布部側、つまり前側の本嵌合部32Fのリブは、前側が段状の仮嵌合部34となっている。具体的には、軸筒10の前端部10aにおいて、本嵌合部32Fを境に前方の外径が後方の外径よりも小径に形成されて直角に近い段部になっており、本嵌合部32Fの前側の段部が仮嵌合部34の段部となっている。
【0025】
前記軸筒10の前端部10aの外周面には、仮嵌合時に先軸を径方向に内側から支えるガタ防止部が形成されている。前側の本嵌合部32Fと後側の本嵌合部32R同士の間には、軸方向に沿って仮嵌合時のリブからなるガタ防止部50が形成されている。
【0026】
また、前側の本嵌合部32Fと後側の本嵌合部32Rでは外径が異なる。仮嵌合部34の前には先軸20の軸筒10に対する回転を阻止する回り止めリブ36が形成されている。
【0027】
シールボール24bが嵌入する継手14には、後端開口から突出した突出部14dが形成されている。
【0028】
軸筒10は、
図3に示すように、前端部10aが縮径されているが、後端部の内周面には凹凸段状の嵌合部10bが形成される。また、中央部のやや後方よりには、縦リブ10cが内方に突出して軸方向に延在して形成されている。軸筒10にネジ体42を装着するときには、軸筒10の開口した後端部から前記ネジ体42を前方向きに挿入し、前記縦リブ10cにネジ体42外周の溝部を装着しながら前進させて嵌め込んで行く。
【0029】
天冠12は、
図6に示すように、後端に蓋が嵌入することによって閉じられた筒状を呈する操作部が軸筒10後端部に回動可能に嵌め込まれ(嵌合部10b内に嵌着され)かつ露出しているものである。駆動筒40が天冠12内に嵌入して回転方向に固定されており、この、駆動筒40内に回転方向固定かつ軸方向への相対移動可能にネジ体42が装着されている。
【0030】
前記回転式繰出容器において、
図1、
図5~
図7に示すように、軸筒10前端部10aには、継手14、パイプ継手16、パイプ18、先軸20、塗布部22が取り付けられる。軸筒10の収容部24には、内容物の流動体(実施形態では、流動性化粧料等塗布液)が収容され、その収容部24から繰出された流動体はパイプ18を通り塗布部22先端に吐出されて、塗布部22によって塗布可能になる。また、使用後にキャップ26(
図5参照)を塗布部22及び先軸20を覆うように先軸20に装着(嵌着)できるよう形成されている。
【0031】
なお、
図5において符号24aは収容部24内の内容物を往復動によって攪拌する攪拌ボール、符号24bは使用開始前おける軸筒内の塗布液の流出を防止するシールボールである。
【0032】
また、符号26aはキャップ26内のインナーキャップ、符号26bはインナーキャップ後方付勢用のスプリングである。
【0033】
また、符号26cは、ストッパーリングであり、未使用時における内容物のパイプ18から塗布部22に向かう塗布液の流通路を閉鎖する位置に継手14、パイプ継手16、パイプ18、先軸20、塗布部22を位置させるため、前記先軸20後端と軸筒10前端部10aの段状箇所前面との間にリング状部が装着されるものである。このストッパーリング26cは、リング状部の一部が切り離され、その切り離された箇所の反対側に摘み片が一体形成され、摘み片を引くことによって、リング状部が切り離し箇所から拡径して前記先軸20後端と軸筒10の前端部10aとの間から取り外せるものになっている。
【0034】
図5に示すように、未使用時ではシールボール24bが継手14の内径部に嵌入して密封しておりパイプ18内に内容物が流れ込まないようになっている。
【0035】
一方、
図7に示すように使用時は、ユーザがストッパーリング26cを軸筒10から引き抜き、先軸20を後端側に押し込む。これにより、
図6に示すように、パイプ継手16の後端細径部がシールボール24bに突き当たってシールボール24bが継手14の内径部から外されて前記収容部24内に入り込み、当該収容部24内の内容物の流動体が継手14、パイプ継手16の内径部からパイプ18内に流入して、流動体が塗布部22にその内部から供給されて塗布可能となる。
【0036】
なお、本発明において継手を密封するのにシールボールの使用に限定されない。例えば、密封部材として薄膜を継手14に一体的に設けてシールボール24bの代わりにすることができる。
【0037】
また、
図3に示すように、軸筒10は、軸方向に見て前端部10aが収容部24形成箇所よりも段状に小径になっていて、前端部10a内に筒状の継手14及びパイプ継手16が先軸20後部で覆われた状態で嵌入している。その先軸20前部内でパイプ継手16先方に塗布部(塗布体)22として、多数の繊維が束ねられた、又は、連続気泡体からなる筆先状の塗布部22が挟持されている。なお、塗布部22はこの種の穂首以外の適宜の構成を採用できる。
【0038】
実施形態では、収容部24に液状油性化粧料を収容して用いることができる。この度の実施形態における液状油性化粧料として好適なのは、(a)ハイドロフルオロエーテル5~40重量%と、(b)低沸点シリコーンオイル20~60重量%と、(c)シリコン樹脂2~10重量%と、(d)架橋型メチルポリシロキサン、ステアリン酸イヌリン、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の増粘剤2~10重量%と、(e)粉体10~40重量%とを少なくとも含有し、かつ、25℃、ずり速度191.5/sにおける粘度が400mPa・s未満である。
【0039】
収容部24に前記液状油性化粧料を収容する場合に、軸筒10の材質には、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)を用いることが好ましい。
【0040】
〔継手14〕
図5、
図6、
図7に示すように、シールボール24bが嵌入する継手14には、後端開口から突出した突出部14dが形成されている。
【0041】
詳しくは、継手14は、
図2に示すように、前部14aがフランジ状に拡径し、内部通路14bのほぼ中央に狭くなる少孔の挟持部14cが形成されている。シールボール24bが嵌入する継手には、内部通路14bの後端開口から突出した突出部14dが形成されている。この突出部14dは、
図5、
図6、
図7に示すように、収容部24内の攪拌ボール24aや収容部24内に突き落とされたシールボール24bが自重により継手14の内部通路14bを再び塞いでしまうのを防ぐためのものである。
【0042】
継手14はフランジ状に外周が拡径した前部14aが有る概略筒状を呈して軸筒10の前端部10aに嵌入し、前部14aによって位置決めして軸筒10の前端部10aへのもぐりこみを防止している。継手14の先方開口内に先方からパイプ継手16が挿入されこのパイプ継手16に、収容部24内から塗布部22に向けて液体誘導用のパイプ18が挿入・支持されている。そして塗布部22、先軸20を覆って、前端部10aにキャップ26を嵌着するようになっている。
【0043】
〔繰出機構28〕
繰出機構28においては、
図6に示すように、ネジ棒30は、前記駆動筒40の内周の異形断面孔に合う断面形状で外周部に雄ネジ30aを形成した棒状長尺体である。その前端部には、フランジ状に径方向突出する嵌合部を形成しており、その嵌合部にピストン体44が嵌入している。
【0044】
このピストン体44は、収容部24内壁に摺接する本体と、本体から後方に延びる中空筒状部内の凹凸の嵌合部を備えている。このピストン体44の嵌合部は、ネジ棒30先端の嵌合部を嵌合(嵌入)させて、相対回転可能に前後方向移動を規制しており、この状態でピストン体44は軸筒10の収容部24内で進退動可能に配設される。
【0045】
図6に示すように、前記天冠12の駆動筒40に小判型等の異形断面孔40aを設け、内周に雌ネジが形成されたネジ体42を軸筒10に固定し、前記駆動筒40の異形断面孔に合う断面形状で外周部に雄ネジ30aを形成したネジ棒30を前記ネジ体42のネジ部に螺合させ、かつ、前記駆動筒40の異形断面孔に通過させた状態で前記駆動筒40の回転によりネジ棒30を回転させる。この回転によってピストン体44が収容部24内で前進して化粧料などの流動体の内容物を先軸20内の塗布部22に供給するようになっている。
【0046】
〔先軸20〕
先軸20は、
図4に示すように、後部よりも先部が先細になった概略コーン状を呈し、内周には、軸筒10の前端部10aの仮嵌合部34と仮嵌合するための仮嵌合部34と、前端部10aの本嵌合部32(32F、32R)と本嵌合する前側リブ46と後側リブ48が略全周に渡り形成されている。略全周に渡り形成されていることで初期嵌合状態での先軸20と軸筒10との仮引き抜き力を向上させ、輸送中等での先軸20の軸筒10からの脱落を防ぐことができる。
【0047】
前側リブ46及び後側リブ48は、軸方向に沿う断面の形状が略台形である。なお、前側リブ46、後側リブ48の断面の形状は、角がエッジになった台形形状に限られず、角部を面取り加工したものや円弧形状としたものでもよい。
【0048】
先軸20では、先方部内周が塗布部22を収容する円筒内周形状に形成され、中央部内周に前記パイプ継手16嵌入用の係合段部20aが形成される。また、先軸20の外周面には、キャップ26を嵌着固定するための、環状の凹凸部20bが形成されている。
【0049】
先軸20の係合段部20aよりも前側は後部内周であって、凹凸部20bの内側には回転阻止用の縦溝の回り止めリブ38が複数形成されている。
【0050】
先軸20の内周において、係合段部20aよりも前部には、塗布部22のフランジ22aが当接する段状の係止部20cが形成される。係止部20cには段差の前後が三角形状の溝20c1,20c2が形成されている。溝20c1,20c2によって塗布部22の装着に際して穂首の毛を誘導するので穂首のひっくり返り(逆向きになる)ことを防止できるものである。
【0051】
実施形態の塗布具では、塗布部22を保持して使用開始前はストッパーリング26cを介して軸筒10に仮に嵌合した初期嵌合状態を維持し(
図1参照)する。
【0052】
実施形態の塗布具では、
図5に示すように未使用時にストッパーリング26cを嵌めた状態では、
図5(c)に示すように、先軸20の前側リブ46が軸筒10の仮嵌合部34
に当接又は前方に位置し、後側リブ48が前後の本嵌合部32(本嵌合部32F、32R)の間に落ち込んで位置している。先軸20の回り止めリブ38に軸筒10の回り止めリブ36が係合していない。したがって、先軸20は軸筒10に対して自由に回転可能である。後側リブ48が前後の本嵌合部32(本嵌合部32F、32R)の間に落ち込んで位置しているが、本嵌合部32F、32Rとの間のガタ防止用のリブからなるガタ防止部50が先軸20の後側リブ48を支えるのでガタ付きを防止できる。
【0053】
使用準備にする際には、初期嵌合状態から、
図7に示す仮嵌合状態になる。この場合も先軸20の前側リブ46が軸筒10の仮嵌合部34に当接して位置決めされている。ガタ防止部50が先軸20の後側リブを支えてガタ防止をしている。この状態にて先軸20の回り止めリブ36が軸筒10の回り止めリブ38に差し込まれ係合し、先軸20と軸筒10とが回り止めされる。
【0054】
そして、
図7の仮嵌合状態から先軸20を押し込むと前側リブ46が仮嵌合部34から前側の本嵌合部32Fを乗り越えて本嵌合部32Fに係合する。また、後側リブ48が本嵌合部32Rを乗り越えて係合する。ストッパーリング26cのほぼ長さ分、先軸20が軸方向に移動して軸筒10に直に嵌合する本嵌合の状態になる。同時に、先軸20の回り止めリブ36に軸筒10の回り止めリブ38に完全に差し込まれ、先軸に対する回り止めがより確実にできる。
【0055】
実施形態の塗布具によれば、軸筒10には、本嵌合部32(32F、32R)及び仮嵌合部34が形成されており、先軸20の内周には、軸筒10の前端部10aの仮嵌合部34と仮嵌合するための前側リブ46と、前端部10aの本嵌合部32(32F、32R)と本嵌合する前側リブ46と後側リブ48が略全周に渡り形成されている。先軸20及び軸筒10がそれぞれ回り止めリブ36,38を有している。
【0056】
軸筒10及び先軸20の仮嵌合前の初期嵌合状態(仮嵌合部34と前側リブ46同士が係合する前)では、互いの回り止めリブ36、38同士が係合しない状態となる。相対回転可能状態である。
【0057】
一方、仮嵌合(仮嵌合部34と前側リブ46同士が係合する)状態では前記互いの回り止めリブ36,38同士が係合し、回り止め状態となる。
【0058】
さらに本嵌合状態(本嵌合部32(32F、32R)と前側リブ46、後側リブ48同士)となることで先軸20と軸筒10が接続され、使用可能状態となる。
【0059】
よって、ユーザが使用開始時にストッパーリング26cに加えて先軸20を外した場合、先軸20を嵌めなおして本嵌合しても、リブ36,38同士が係合する状態となるので、位置ずれなく圧入することができる。したがって、圧入不足が原因による液漏れを防ぐことができる。
【0060】
また、リブ36,38同士が係合して回り止め状態となるため、ユーザが先軸を回したときに筆穂や繊維を束ねた塗布部22が捩じれることを防止できる。
【0061】
また、初期嵌合状態での仮引き抜き力(ストッパーリング26cが有るときの引き抜き力)を強くすることができるので、輸送時等により先軸20が軸筒10からの脱落を防止できる。
【0062】
ここで、表1は、従来製品のサンプルA~F(各n=5)の初期嵌合状態での引き抜き力を示す。
【0063】
【0064】
これに対して、実施形態の塗布具での初期嵌合状態では、引き抜き力(n=5)を平均値(Ave)で17.6(N)、最大値(Max)で20.0(N)、最小値(Min)で14.
3(N)とすることができた。強い力の引き抜き力を要し、輸送中などに振動が生じても先軸の脱落を有効に防止できることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の塗布具は、化粧料製品の化粧料塗布具に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 軸筒
10a 前端部
10b 嵌合部
10c 縦リブ
12 天冠
14 継手
14a 前部
14b 内部通路
14c 挟持部
14d 突出部
16 パイプ継手
18 パイプ
20 先軸
20a 係合段部
20b 凹凸部
20c 係止部
20c1,20c2 溝
22 塗布部
22a フランジ
24 収容部
24a 攪拌ボール
24b シールボール
26 キャップ
26c ストッパーリング
28 繰出機構
30 ネジ棒
32 本嵌合部
32F、32R 前側、後側の本嵌合部
34 仮嵌合部
36、38 回り止めリブ
40 駆動筒
42 ネジ体
44 ピストン体
46 前側リブ
48 後側リブ
50 ガタ防止部