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特許7394207新規な中間体製造による持続型薬物結合体の製造方法
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  • 特許-新規な中間体製造による持続型薬物結合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】新規な中間体製造による持続型薬物結合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20231130BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231130BHJP
   C07K 1/08 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231130BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20231130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231130BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20231130BHJP
   C07K 14/575 20060101ALN20231130BHJP
   C07K 14/52 20060101ALN20231130BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20231130BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K19/00
C07K1/08
A61K47/68
A61K38/26
A61P43/00 107
A61P3/08
A61K38/17
C07K14/575
C07K14/52
C07K14/475
C07K14/605
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022503522
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 KR2019008912
(87)【国際公開番号】W WO2021010532
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年7月19日 ウェブサイト「https://www.who.int/medicines/publications/druginformation/issues/DrugInformation2018_Vol32-2/en/」(公開時のアドレス)における公開
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】シン チョンビョル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ドゥソ
(72)【発明者】
【氏名】ムン ジ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジ ウン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-515972(JP,A)
【文献】特表2010-528993(JP,A)
【文献】特表2009-538273(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147641(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/066609(WO,A1)
【文献】米国特許第09394546(US,B2)
【文献】特表2016-520529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/18
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(2)の構造を有する、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩。
・・(2)
前記化学式(2)において、nは200~250である。
【請求項2】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM由来である、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である、請求項2に記載の化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
前記免疫グロブリンFc領域は、N-末端に、配列番号9(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むヒンジ配列を含む、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
前記免疫グロブリンFc領域は、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、持続型薬物結合体製造用組成物であって、
前記薬物は生理活性ポリペプチドである組成物。
【請求項7】
前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンパ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、インクレチン、胃抑制ポリペプチド(GIP(Gastric inhibitory polypeptide))、GLP-1/GIP二重活性体、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の化合物のマレイミドは、薬物のシステインと結合する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、持続型薬物結合体の製造において限外/透析濾過を行わずに持続型薬物結合体を製造できるようにする、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
配列番号9(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域のN-末端に下記化学式(4)のリンカーを連結して製造された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を生理活性ポリペプチドと連結して結合体を製造する段階を含む、持続型生理活性ポリペプチド結合体の製造方法:
・・・(4)
前記化学式(4)において、nは200~250である。
【請求項12】
前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域は、還元剤の存在下にpH4.0~8.0で免疫グロブリンFc領域のN-末端に前記化学式(4)のリンカーを連結して製造されたものである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記結合体は、pH5.5~8.0で単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドとを連結して製造されたものである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記結合体を製造する段階は、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域及び生理活性ポリペプチドを1:1~1:3のモル比で反応させるものである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
前記製造方法は、免疫グロブリンFc領域のN-末端に前記化学式(4)のリンカーを連結して単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を製造する段階;及び前記段階で製造された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドとを連結して結合体を製造する段階を含むものである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項16】
前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーは、生理活性ポリペプチドのシステイン残基と連結されるものである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記製造方法は、免疫グロブリンFc領域のN-末端に化学式(4)のリンカーを連結して単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を製造する段階;前記段階で製造した単一ペグ化免疫グロブリンFc領域をpH6.0~8.5の緩衝溶液中で陰イオン交換クロマトグラフィーで精製する段階;及び前記段階で精製された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドとを連結して結合体を製造する段階を含むものである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の製造段階後に、限外/透析濾過を行わないことを特徴とする、請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
前記結合体を疎水性相互作用クロマトグラフィーで精製する段階をさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項20】
前記生理活性ポリペプチドが、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンパ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、インクレチン、GLP-1/GIP二重活性体、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択されるものである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項21】
前記生理活性ポリペプチドは、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、グルカゴン、またはその類似体である、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記生理活性ポリペプチドは、配列番号1~6のいずれか一つのアミノ酸配列を含むものである、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項24】
持続型生理活性ポリペプチド結合体の製造方法であって、下記化学式(2)の構造を有する化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩を、生理活性ポリペプチドと連結することで結合体を製造する工程を含む、前記製造方法。
・・(2)
前記化学式(2)において、nは200~250である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続型薬物結合体の製造のための新規な中間体、それを含む組成物及びそれを用いた持続型薬物結合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理活性ポリペプチドは、安定性が低く、容易に変性され、血液中のタンパク質加水分解酵素により分解され、腎臓や肝臓を通じて容易に除去されるため、薬理成分として生理活性ポリペプチドを含むタンパク質医薬品の血中濃度及び力価を維持するためには、タンパク質薬物を患者に頻繁に投与する必要がある。しかし、主に注射剤の形態で患者に投与されるタンパク質医薬品の場合、生理活性ポリペプチドの血中濃度を維持するために頻繁に注射を打つことは、患者に多大な痛みを引き起こし、高治療費用の原因となる。このような問題を解決するために、タンパク質薬物の血中安定性を高め、血中薬物濃度を長くかつ高く持続させて薬効を最大化する努力が続けられてきた。このようなタンパク質薬物の持続的製剤は、タンパク質薬物の安定性を高めるとともに、薬物自体の力価が十分に高く維持されなければならず、患者に免疫反応を誘発してはならない。
【0003】
タンパク質を安定化させ、タンパク質加水分解酵素との接触及び伸長消失を抑制するための方法として、従来は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:以下「PEG」と略す)のように溶解度の高いポリマーをタンパク質薬物の表面に化学的に付加させる方法が使用されてきた。しかしながら、PEGを用いる方法は、PEG分子量を増加させ、ペプチド薬物の生体内持続時間を延長できる一方で、分子量が増加するほどペプチド薬物の力価が顕著に低くなり、またペプチドとの反応性が低くなって収率が減少する問題がある。
【0004】
これに対し、血中半減期の増大のための方法として、免疫グロブリン断片と生理活性ポリペプチドの結合体が用いられており、その製造方法の改善のために多角度の研究が続けられてきた(韓国公開特許第10-2014-0109342号(特許文献1))。
【0005】
特に、製造工程の短縮による効率的な持続型薬物結合体の製造工程の開発の必要性は、引き続き台頭してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0109342号
【文献】国際特許公開第97/34631号
【文献】国際特許公開第96/32478号
【非特許文献】
【0007】
【文献】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins、Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は、持続型薬物結合体の製造のための新規な中間体を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記中間体を含む持続型薬物結合体製造用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、前記中間体を利用する持続型薬物結合体の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、前記の製造方法で製造された持続型薬物結合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、新規な中間体である。
【0013】
一具体例において、下記化学式(1)の構造を有する化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0014】
X-L1-(OCH2CH2)nO-L2-R・・・(1)
【0015】
前記化学式(1)において、
Xは免疫グロブリンFc領域であり;
L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;
L2は-a1-CONH-、-a1-NHCO-、-a1-NHCO-a2-、-COO-、-b1-COO-、-COO-b2-、または-b1-COO-b2-であり、a1、a2、b1及びb2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;
nは10~2400であり;
Rは2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-C20アリールジスルフィド、C5-C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、チオエステル及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか一つである。
【0016】
前述の具体例による化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記化学式(1)において、L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり、L2は-a1-NHCO-または-a1-NHCO-a2-であり、a1及びa2はそれぞれ独立にC1-C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり、nは200~250であり、Rはマレイミドである化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0017】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記Xは、N-末端にヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域である、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0018】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記Xは、以下のアミノ酸配列においてアミノ酸配列が一部欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異したヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域である、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0019】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号7)。
【0020】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記ヒンジ配列は配列番号8(Ser-Cys-Pro)または配列番号9(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含む、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0021】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記L1は、Xの末端に位置するアミンまたはチオール反応基に結合する、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0022】
前述の具体例のいずれか 一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記化合物は、下記化学式(2)の構造を有する化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する:
【0023】
・・・(2)
【0024】
前記化学式(2)において、nは200~250である。
【0025】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記Xは、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM由来の免疫グロブリンFc領域である、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0026】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記Xは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来の免疫グロブリンFc領域である、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0027】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記Xは、二量体の免疫グロブリンFc領域である、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0028】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記Xは、配列番号10のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンFc領域である、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0029】
前述の具体例のいずれか一つによる化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩であって、前記化合物は、40~250kDaのサイズを有する、化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0030】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記化合物、その立体異性体、溶媒和物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む持続型薬物結合体製造用組成物である。
【0031】
一具体例として、下記化学式(1)の構造を有する化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩を含み、前記薬物は生理活性ポリペプチドである組成物に関する:
【0032】
X-L1-(OCH2CH2)nO-L2-R・・・(1)
【0033】
前記化学式(1)において、
Xは免疫グロブリンFc領域であり;
L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;
L2は-a1-CONH-、-a1-NHCO-、-a1-NHCO-a2-、-COO-、-b1-COO-、-COO-b2-、または-b1-COO-b2-であり、a1、a2、b1及びb2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;
nは10~2400であり;
Rは2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-C20アリールジスルフィド、C5-C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、チオエステル及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか一つである。
【0034】
前述の具体例による組成物であって、前記化学式(1)において、
L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;
L2は-a1-NHCO-または-a1-NHCO-a2-であり;
a1及びa2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;
nは200~250であり;
Rはマレイミドである、組成物に関する。
【0035】
前述の具体例のいずれか一つによる組成物であって、前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンパ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、インクレチン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、GLP-1/GIP二重活性体、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択される、組成物に関する。
【0036】
前述の具体例による組成物であって、前記組成物の化合物のRは薬物のシステインと結合する、組成物に関する。
【0037】
前述の具体例による組成物であって、前記Xは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来の免疫グロブリンFc領域である、組成物に関する。
【0038】
前述の具体例による組成物であって、前記Xは、以下のアミノ酸配列においてアミノ酸配列が一部欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異したヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域である、組成物に関する。
【0039】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号7)。
【0040】
本発明を実施する他の一態様は、持続型生理活性ポリペプチド結合体の製造方法に関する。
【0041】
一具体例として、ヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域のN-末端に下記化学式(3)のリンカーを連結して製造された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を生理活性ポリペプチドと連結して結合体を製造する段階を含む、持続型生理活性ポリペプチド結合体の製造方法に関する。
【0042】
[化学式(3)]
CHO-L1-(OCH2CH2)nO-L2-R・・・(3)
【0043】
前記式(3)において、
L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;
L2は-a1-CONH-、-a1-NHCO-、-a1-NHCO-a2-、-COO-、-b1-COO-、-COO-b2-、または-b1-COO-b2-であり、a1、a2、b1及びb2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;
nは10~2400であり;
Rは2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-C20アリールジスルフィド、C5-C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、チオエステル及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか一つである。
【0044】
前述の具体例による製造方法であって、前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域は、還元剤の存在下でpH4.0~8.0で免疫グロブリンFc領域のN-末端に前記化学式(3)のリンカーを連結して製造されたものである、製造方法に関する。
【0045】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記結合体は、pH5.5~8.0で単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドとを連結して製造されたものである、製造方法に関する。
【0046】
前述の具体例のいずれかに記載の製造方法であって、前記結合体を製造する段階は、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域及び生理活性ポリペプチドを1:1~1:3のモル比で反応させるものである、製造方法に関する。
【0047】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記製造方法は、免疫グロブリンFc領域のN-末端に前記化学式(3)のリンカーを連結して、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を製造する段階;及び前記段階で製造された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドと連結して結合体を製造する段階を含むものである、製造方法に関する。
【0048】
前述の具体例のいずれかによる製造方法であって、前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーは、生理活性ポリペプチドのシステインと連結されるものである、製造方法に関する。
【0049】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記製造方法は、免疫グロブリンFc領域のN-末端に化学式(3)のリンカーを連結して単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を製造する段階;前記段階で製造した単一ペグ化免疫グロブリンFc領域をpH6.0~8.5の緩衝溶液中で陰イオン交換クロマトグラフィーで精製する段階;及び前記段階で精製された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドとを連結して結合体を製造する段階を含む、製造方法に関する。
【0050】
前述の具体例のいずれかによる製造方法であって、前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の製造段階後に限外/透析濾過を行わないことを特徴とする、製造方法に関する。
【0051】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記結合体を疎水性相互作用クロマトグラフィーで精製する段階をさらに含む、製造方法に関する。
【0052】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記化学式(3)おけるL1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;L2は-a1-NHCO-または-a1-NHCO-a2-であり;a1及びa2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;nは200~250であり;Rはマレイミドである、製造方法に関する。
【0053】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記リンカーは、下記化学式(4)の構造を有する、製造方法に関する。
【0054】
・・・(4)
【0055】
前記化学式(4)において、nは200~250である。
【0056】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記リンカーは、1~100kDaのサイズを有するものである、製造方法に関する。
【0057】
前述の具体例のいずれかによる製造方法であって、前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンパ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、インクレチン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、GLP-1/GIP二重活性体、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択される、製造方法に関する。
【0058】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記生理活性ポリペプチドは、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、グルカゴン、またはその類似体であるものである、製造方法に関する。
【0059】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記生理活性ポリペプチドは、配列番号1~6のいずれか一つのアミノ酸配列を含むものである製造方法に関する。
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記ヒンジ配列は、以下のアミノ酸配列を有するヒンジ配列の一部が欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異したものである、製造方法に関する。
【0060】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号7)。
【0061】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記ヒンジ配列は、配列番号8(Ser-Cys-Pro)または配列番号9(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものである、製造方法に関する。
【0062】
前述の具体例のいずれか一つによる製造方法であって、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である、製造方法に関する。
【0063】
本発明を実施する他の一態様は、前記組成物または製造方法で製造された持続型薬物結合体である。
【発明の効果】
【0064】
本発明に係る新規な中間体を用いた持続型薬物結合体の製造方法は、既存の精製工程の一部の省略にもかかわらず、高収率で持続型薬物結合体を製造することができるため、持続型薬物結合体の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の構造をMALDI-TOF分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明を実施するための具体的な内容を説明すれば、以下の通りである。
【0067】
一方、本願で開示されるそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用することができる。すなわち、本願で開示される様々な要素の全ての組み合わせが本発明の範囲に属する。なお、以下に説明する具体的な記述により本発明の範疇が制限されるとは言えない。
【0068】
また、当技術分野における通常の知識を有する者は、通常の実験のみを使用し、本出願に記載された本発明の特定の態様に対する多数の等価物を認識または確認することができる。また、そのような等価物は、本発明に含まれることが意図される。
【0069】
本明細書の全体を通して、天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードを使用するだけでなく、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Sar(N-メチルグリシン)、α-メチルグルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)などのような他のアミノ酸に対して一般に許容される三文字コードが使用される。また、本明細書において略語に言及されたアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従って記載されている。
【0070】
アラニン Ala,A アルギニン Arg,R
アスパラギン Asn、Nアスパラギン酸 Asp、D
システイン Cys、C グルタミン酸 Glu、E
グルタミン Gln、Q グリシン Gly、G
ヒスチジン His、H イソロイシン Ile、I
ロイシン Leu、L リシン Lys、K
メチオニン Met,M フェニルアラニン Phe,F
プロリン Pro、P セリン Ser、S
スレオニン Thr、T トリプトファン Trp、W
チロシン Tyr、Y バリン Val、V
【0071】
本発明の一態様は、下記化学式(1)の構造を有する化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0072】
X-L1-(OCH2CH2)nO-L2-R・・・(1)
【0073】
前記化学式(1)において、
Xは免疫グロブリンFc領域であり;
L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;
L2は-a1-CONH-、-a1-NHCO-、-a1-NHCO-a2-、-COO-、-b1-COO-、-COO-b2-、または-b1-COO-b2-であり、a1、a2、b1及びb2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;
nは10~2400であり;
Rは2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-C20アリールジスルフィド、C5-C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、チオエステル及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか一つである。
【0074】
本発明において、前記化学式(1)の構造を有する化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩は、持続型結合体製造のために製造される新規な物質であり、本願では「中間体(intermediate)」または「中間体物質(intermediate material)」と通用され得る。
【0075】
本発明の中間体を用いた持続型薬物結合体の製造方法では、限外/透析濾過及び疎水性相互作用クロマトグラフィーで精製する段階を省略することができ、前記精製段階の省略にもかかわらず、高収率で持続型薬物結合体を製造できる効果を有する。
【0076】
具体的には、前記中間体は、免疫グロブリンFc領域及びリンカーが連結された形態であり、前記化学式(1)の中間体において、Xは免疫グロブリンFc領域であり、L1-(OCH2CH2)nO-L2-Rはリンカーに該当し得る。具体的には、前記化学式(1)において、L1は、直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;L2は-a1-NHCO-または-a1-NHCO-a2-であり;a1及びa2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;nは200~250であり;Rはマレイミドであってもよいが、これに限定されない。
【0077】
前記L1は、免疫グロブリンFc領域と結合する部位であり、直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであってもよいが、これに限定されない。L1は、Xの末端またはリジン残基に位置するアミンまたはチオール反応基に結合するものであってもよいが、これに限定されない。前記Rは、中間体と生理活性ポリペプチドと連結する部位であり、具体的には、生理活性ポリペプチドのシステインまたはN-末端、リジン残基のようなアミングループに連結され得る反応基(例えば、チオール、マレイミド、アルデヒド及びスクシンイミジル)を有してもよいが、これに限定されない。
【0078】
本発明において、前記中間体は、下記化学式(2)の構造を有してもよいが、これに限定されない。
【0079】
・・(2)
【0080】
前記化学式(2)において、nは1~3000、10~2000、50~1000、100~700、150~300、または200~250である。
【0081】
具体的には、前記中間体は、40~250kDa、80~200kDa、100~150kDaのサイズを有するものであってもよいが、これに限定されない。
【0082】
本発明において、前記Xは、N-末端にヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域であってもよく、具体的には、前記ヒンジ配列は、下記のアミノ酸においてアミノ酸配列が一部欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異したものであってもよいが、これに限定されない。
【0083】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号7)。
【0084】
本発明の用語、「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖可変領域を除いた、重鎖定常領域2(CH2)及び/または重鎖定常領域3(CH3)の部分を含む部位を意味することができ、免疫グロブリンFc領域は、持続型薬物結合体の一部を構成する一構成であってもよい。
【0085】
具体的には、前記Xは、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM由来の免疫グロブリンFc領域であってもよく、より具体的には、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来の免疫グロブリンFc領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0086】
本発明において、免疫グロブリンFc領域は、N-末端に特定のヒンジ配列を含んでもよい。
【0087】
本発明の用語「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置し、ジスルフィド結合(inter disulfide bond)を通じて免疫グロブリンFc領域の二量体を形成する部位を意味する。
【0088】
本発明の用語、「N-末端」とは、タンパク質またはポリペプチドのアミノ末端を意味することであり、アミノ末端の最末端、または最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個以上のアミノ酸まで含むものであってもよい。本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列をN-末端に含むことができるが、これに限定されない。
【0089】
本発明の目的上、ヒンジ配列は、配列番号7のヒンジ配列中の8番目または11番目のシステイン残基が欠失して一つのシステイン残基のみを含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、一つのシステイン残基のみを含む3~12個のアミノ酸で構成されたものであってもよいが、これに限定されない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は、以下の配列を有することができる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro -Pro-Ser-Cys-Pro 、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser -Pro、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser、Glu-Ser- Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro、Pro-Ser-Cys-Pro、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro、Glu-Pro-Ser-Cys。より具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号8(Ser-Cys-Pro)または配列番号9(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0090】
前記Xは、ヒンジ配列の存在により免疫グロブリンFc鎖の2分子が二量体を形成した形態であってもよく、また、本発明の中間体は、リンカーの一末端が二量体の免疫グロブリンFc領域の一鎖に連結された形態であってもよいが、これに限定されない。本発明において、前記Xは二量体の免疫グロブリンFc領域であってもよいが、これに限定されない。
【0091】
また、本発明のXは、配列番号10のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンFc領域であってもよいが、これに限定されない。
【0092】
一方、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等または向上した効果を有する限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除いて、一部または全重鎖定常領域1(CH1)及び/または軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張Fc領域であってもよい。また、CH2及び/またはCH3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。
【0093】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインのうちの1個または2個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であってもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0094】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的または保存的置換、またはそれらの組み合わせにより異なる配列を有することを意味する。
【0095】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322、または327~331番のアミノ酸残基が変形のために適切な部位として使用される。
【0096】
また、ジスルフィド結合を形成することができる部位が除去されたり、天然型FcからN-末端のいくつかのアミノ酸が除去されたり、または天然型FcのN-末端にメチオニン残基が付加され得るなど、様々な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えば、C1q結合部位が除去され、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去される。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第97/34631号(特許文献2)、国際特許公開第96/32478号(特許文献3)などに開示されている。
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当技術分野において公知となっている(H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press、New York, 1979(非特許文献1))。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/ Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などで修飾(modification)されてもよい。
【0097】
前記の免疫グロブリンFc領域の配列誘導体は、本発明のFc領域と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させたものであってもよい。
【0098】
また、このようなFc領域は、ヒト、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラビット、ハムスター、ラットまたはモルモットなどの動物のin vivoから分離された天然型からも得られ、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組換え型またはその誘導体であってもよい。ここで、天然型から獲得する方法は、全免疫グロブリンをヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して獲得する方法であってもよい。パパインを処理する場合はFab及びFcで切断し、ペプシンを処理する場合はpF’c及びF(ab)2で切断する。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFcまたはpF’cを分離することができる。より具体的な実施形態では、ヒト由来のFc領域を微生物から得た組換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0099】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖または糖鎖が除去された形態であってもよい。そのような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を用いた遺伝子工学的方法のような常法を使用することができる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害または補体依存性細胞傷害が減少または除去されるので、生体内で不要な免疫応答を誘発しない。このような点で、薬物のキャリアとしての本来の目的に、より符合する形態は、糖鎖が除去されたり非糖鎖化された免疫グロブリンFc領域であると言える。
【0100】
本発明において「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域を言い、非糖鎖化(Aglycosylation)とは、原核動物、より具体的な実施形態では大腸菌で産生されて糖鎖化されていないFc領域を意味する。
【0101】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒトまたはウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラビット、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、より具体的な実施形態ではヒト起源である。
【0102】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはそれらの組み合わせ(combination)、またはそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。より具体的な実施形態では、ヒトの血液に最も豊富なIgGまたはIgM由来であり、より具体的な実施形態では、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが公知となったIgG由来である。さらに具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はヒトIgG4由来の非糖鎖化Fc領域であるが、これに限定されるものではない。
【0103】
一方、本発明において「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなる群から選択される2個以上の断片から二量体または多量体の製造が可能である。
【0104】
本発明において「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリン定常領域内に、2個以上の異なる起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、種々の形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から1~4個のドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含むことができる。
【0105】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明では、それらの組み合わせまたはそれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、最も具体的には補体依存傷害(CDC,Complement dependent cytotoxicity)のようなエフェクター機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc領域である。
【0106】
本発明の用語「リンカー」は、持続型薬物結合体における薬物(例えば、生理活性ポリペプチド)及び免疫グロブリンFc領域を連結する一部であり、前記リンカーは、ペプチド性リンカーまたは非ペプチド性リンカーであってもよい。具体的には、前記リンカーは、下記化学式(3)で表されるものであってもよいが、これに限定されない。
【0107】
CHO-L1-(OCH2CH2)nO-L2-R・・・(3)
【0108】
前記式(3)において、
L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;
L2は-a1-CONH-、-a1-NHCO-、-a1-NHCO-a2-、-COO-、-b1-COO-、-COO-b2-、または-b1-COO-b2-であり、a1、a2、b1及びb2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;
nは1~3000、10~2000、50~1000、100~700、150~300、又は200~250であり;
Rは2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-C20アリールジスルフィド、C5-C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、チオエステル及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか一つである。
【0109】
前記リンカーは、ポリエチレングリコールを含み、ポリエチレングリコールの両末端に特定の化学構造を有するものであってもよいが、これに限定されない。
【0110】
具体的には、前記化学式(3)におけるL1は、直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;L2は-a1-NHCO-または-a1-NHCO-a2-であり;a1及びa2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;nは200~250であり;Rはマレイミドであってもよく、前記リンカーは、1~200kDa、1~150kDa、1~100kDa、1~50kDa、または1~10kDaのサイズを有するものであってもよいが、これに限定されない。
【0111】
また、前記リンカーは、下記化学式(4)の構造を有してもよいが、これに限定されない。
【0112】
・・・(4)
【0113】
前記化学式(4)において、nは1~3000、10~2000、50~1000、100~700、150~300、または200~250であってもよい。
【0114】
前記リンカーの一末端は、免疫グロブリンFc領域、具体的には免疫グロブリンFc領域のN-末端、より具体的には免疫グロブリンFc領域のN-末端に位置するヒンジ配列、具体的には、ヒンジ配列のプロリン残基と連結して中間体を形成するものであってもよいが、これに限定されない。
【0115】
本発明において、用語「薬学的に許容される」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、またはアレルギー反応などを引き起こすことなく、所望の用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0116】
本発明において、用語「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、または塩基から誘導された塩を含む。適切な酸の例は、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。適切な塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含んでもよい。
【0117】
本発明は、前記化学物またはその薬学的に許容可能な塩だけでなく、それから製造され得る可能な溶媒和物を含む。
【0118】
また、前記化合物は、その置換基に非対称炭素中心(不斉炭素)を有する場合、鏡像異性体(RまたはS異性体)、ラセミ体、またはジアステレオマー、またはそれらの任意の混合物の形態で存在してもよい。また、化学物質は、架橋環(bridged ring)を含む場合、エキソまたはエンド異性体として存在することができるが、これに限定されない。
【0119】
本発明の他の一つの態様は、下記化学式(1)の構造を有する化合物、その立体異性体、溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩を含み、前記薬物は生理活性ポリペプチドである組成物を提供する:
【0120】
X-L1-(OCH2CH2)nO-L2-R・・・(1)
【0121】
前記化学式(1)において、
Xは免疫グロブリンFc領域であり;
L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;
L2は-a1-CONH-、-a1-NHCO-、-a1-NHCO-a2-、-COO-、-b1-COO-、-COO-b2-、または-b1-COO-b2-であり、a1、a2、b1及びb2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;
nは1~3000、10~2000、50~1000、100~700、150~300、又は200~250であり;
Rは2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-C20アリールジスルフィド、C5-C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、チオエステル及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか一つである。
【0122】
具体的には、前記化学式(1)において、L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;L2は-a1-NHCO-または-a1-NHCO-a2-であり;a1及びa2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;nは200~250であり;Rはマレイミドであってもよいが、これに限定されない。
【0123】
本発明の組成物は、中間体を含む組成物であり、持続型薬物結合体を製造する用途を有する。
【0124】
具体的には、本発明の組成物は、リンカー及び免疫グロブリンFc領域が連結された中間体を含むため、本発明の組成物と生理活性ポリペプチドとを反応させ、前記中間体のリンカーと生理活性ポリペプチドが連結して持続型薬物結合体が製造され得る。より具体的には、リンカーの一末端に該当する前記化学式(1)のRが生理活性ポリペプチドのシステインまたはN-末端、リジン残基のようなアミン基に結合されて持続型薬物結合体が製造されてもよいが、これに限定されない。
【0125】
本発明において、前記組成物で製造することができる持続型薬物結合体の生理活性ポリペプチドは、疾患に対する薬理学的効果を示す限り、種類、サイズ、由来などに関係なく本発明の範囲に含まれ得る。前記生理活性ポリペプチドの例としては、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンパ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、インクレチン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、GLP-1/GIP二重活性体、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または抗体断片であってもよいが、これに限定されない。
【0126】
より具体的には、生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン、インスリン、酵素、インクレチン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、GLP-1/GIP二重活性体、またはGLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体であってもよいが、これに限定されない。
【0127】
本発明の中間体、またはそれを含む組成物を用いて持続型薬物結合体を製造する方法は、リンカー及び免疫グロブリンFc領域が最初に連結された中間体を生理活性ポリペプチドと連結するものであるため、生理活性ポリペプチドの具体的な種類に拘らず中間体と連結することができるアミノ酸残基または反応基を有する生理活性ポリペプチドであれば、本発明の中間体、またはそれを含む組成物を用いて持続型薬物結合体を制限なく製造することができる。
【0128】
本発明において、前記Xは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来の免疫グロブリンFc領域であってもよいが、これに限定されない。
【0129】
また、前記Xは、以下のアミノ酸においてアミノ酸配列が一部欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異したヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域であってもよいが、これに限定されない。
【0130】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号7)。
【0131】
本発明の組成物を用いて持続型薬物結合体を製造する場合、限外/透析濾過を行わずに持続型薬物結合体を製造することができ、任意に、1回の疎水性相互作用クロマトグラフィー工程を省略することができる。
【0132】
具体的には、本発明の中間体またはそれを含む組成物と薬物を反応させて持続型薬物結合体を製造するとき、製造される持続型薬物結合体の純度は70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上であってもよいが、これに限定されない。前記純度の測定は、当業界において公知となった方法で行うことができ、具体的には、SE-HPLC、RP-HPLC、及びIE-HPLCによる測定であってもよいが、当業界で用いられる任意の方法で測定されたものであってもよい。より具体的には、本発明の組成物で製造される持続型薬物結合体の純度は、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では80%以上、及びIE-HPLC測定では85%以上であってもよいが、これに限定されない。
【0133】
また、本発明の組成物は、中間体を安定化し、持続型薬物結合体を製造するのに必要な緩衝液、安定化剤、保存剤、塩などをさらに含むことができるが、これに限定されない。
【0134】
本発明のまた他の一態様は、前記組成物を含む持続型薬物結合体製造用キットを提供する。前記キットは、持続型薬物結合体を製造するための試薬、説明書などを含むことができるが、これに限定されない。
【0135】
本発明のまた他の一態様は、持続型薬物結合体の製造方法を提供する。
【0136】
本発明の製造方法は、リンカーを通じて薬物及び免疫グロブリンFc領域が連結された持続型薬物結合体を製造する方法であり、具体的には、前記中間体を薬物と連結して持続型薬物結合体を製造する方法であってもよいが、それに限定されない。
【0137】
具体的には、i)ポリエチレングリコール(PEG)を含むリンカー及び免疫グロブリンFc領域を連結した後、ii)前記免疫グロブリンFc領域に連結されたリンカーを薬物(例えば、生理活性ポリペプチドまたはタンパク質)と連結する順からなることを特徴とする。すなわち、PEGを含むリンカー及び免疫グロブリンFc領域を連結して中間体を製造する1段階後、中間体に薬物を連結する2段階で行われる、特定の順序の持続型薬物結合体を製造することを特徴とする。または本発明の製造方法は、1段階を省略し、前記中間体またはそれを含む持続型薬物結合体製造用組成物を薬物と反応させて持続型薬物結合体を製造する2段階のみを行うものであってもよいが、これに限定されない。前記製造方法は、本出願において、「逆順製法」として通用され得る。
【0138】
本発明では、中間体をまず製造し、それを薬物と結合する持続型薬物結合体の製造方法の場合、限外/透析濾過及び疎水性相互作用クロマトグラフィーで精製する段階を省略することができ、前記精製段階の省略にもかかわらず、高収率で持続型薬物結合体を製造できることを確認した。
【0139】
中間体の形成なしにリンカーと生理活性ポリペプチドを先に連結し、その後に免疫グロブリンFc領域を連結する既存の製法では、生理活性ポリペプチドが連結されたリンカー(例えば、ポリエチレングリコール)と免疫グロブリンFc領域を連結するとき、生理活性ポリペプチドと連結したリンカーの精製に用いられる平衡緩衝液及び溶出緩衝液の低いpH条件(pH3.0内外)により発生可能な凝集(aggregation)の危険性の低減及び反応のための適切なバッファーを用いたpH条件を合わせなければならなかったため、リンカーと生理活性ポリペプチドを連結した後、免疫グロブリンFc領域と連結する工程の前に限外/透析濾過が別途の工程として要求された。一方、リンカーと免疫グロブリンFc領域を先ず連結して中間体を製造する本発明の製造方法では、免疫グロブリンFc領域とリンカーが連結された形態を精製する際に使用されるバッファーのpHが相対的に高く、限外/透析濾過工程を省略し、生理活性ポリペプチドと連結させる工程を行うことを特徴とする。
【0140】
したがって、本発明の製造方法は、前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の製造段階後に限外/透析濾過を行わないものであってもよいが、これに限定されるものではない。本発明による持続型薬物結合体の製造方法では、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の精製液のpHが後続反応液のpHと大きな差がなくなるため、限外/透析濾過を行わずに薬物の連結を行うことができる。限外/透析濾過工程の省略により、濃縮段階で発生し得る凝集体不純物の生成リスクを低減させ、製造工程を簡素化して技術の商業化時のコストの低減効果も期待することができる。
【0141】
また、本発明の製造方法は、前記結合体を疎水性相互作用クロマトグラフィーで精製することをさらに含んでもよいが、これに限定されない。
【0142】
具体的には、前記疎水性相互作用クロマトグラフィーは1回だけ行うものであってもよく、または持続型薬物結合体の薬物の性質及びリンカーの種類、サイズに応じて1回以上行うものであってもよい。
【0143】
本発明による製造方法は、高価な薬物の使用量を減少させるだけでなく、反応しない免疫グロブリンFc領域の量も減少させることにより、疎水性相互作用クロマトグラフィーの精製工程を全部または一部省略させることができるため、既存の方法に比べて持続型薬物結合体の製造に必要な原料及びコストを低減できる効果を有する。
【0144】
一方、本発明による製造方法は、既存の持続型薬物結合体の製造過程中で行われる限外/透析濾過及び疎水性相互作用クロマトグラフィー工程が省略され、最終の精製工程のみが実施(例えば、1回の疎水性相互作用クロマトグラフィー)されるにもかかわらず、既存のプロセスと比較して最終結合体の純度が維持されるという利点がある。すなわち、本発明による製造方法は、一部の精製工程の省略にもかかわらず、最終純度を維持することができ、これにより持続型薬物結合体の製造の生産性を向上させることができる。
【0145】
本発明における持続型薬物結合体の純度は、当業界における公知となった方法で測定することができ、その方法の例としては、SE-HPLC、RP-HPLC、またはIE-HPLC測定であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0146】
本発明の製造方法による場合、持続型薬物結合体の最終純度は90%以上、具体的には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上であってもよいが、これに限定されない。
【0147】
一方、本発明の製造方法は、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を先ず製造した後、生理活性ポリペプチドと連結する手順を経て製造することにより、生理活性ポリペプチドはもちろん、免疫グロブリンFc領域の基準でも、既存の方法に比べて高収率で持続型薬物結合体を製造することができる。
【0148】
本発明の一実施例では、既存の方法で持続型薬物結合体を製造する場合に比べて、本発明の製造方法で持続型薬物結合体を製造する際の収率が2倍以上向上したことを確認した。
【0149】
具体的には、本発明の製造方法は、ヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域のN-末端に下記化学式(3)のリンカーを連結して製造された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を薬物(生理活性ポリペプチド)と連結して結合体を製造する段階を含む、持続型薬物結合体の製造方法に関する。
【0150】
CHO-L1-(OCH2CH2)nO-L2-R・・・(3)
【0151】
前記化学式(3)において、
L1は直鎖または分岐鎖C1~C6のアルキレンであり;
L2は-a1-CONH-、-a1-NHCO-、-a1-NHCO-a2-、-COO-、-b1-COO-、-COO-b2-、または-b1-COO-b2-であり、a1、a2、b1及びb2はそれぞれ独立にC1~C6直鎖または分枝鎖アルキレンであり;
nは10~2400であり;
Rは2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-C20アリールジスルフィド、C5-C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、チオエステル及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか一つであってもよいが、これに限定されない。
【0152】
より具体的には、前記製造方法は、免疫グロブリンFc領域のN-末端に前記化学式(3)のリンカーを連結して単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を製造する段階;及び前記段階で製造された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドを連結して結合体を製造する段階を含むものであってもよく、又は前記製造方法は、免疫グロブリンFc領域のN-末端に化学式(3)のリンカーを連結して単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を製造する段階;前記段階で製造された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域をpH6.0~8.5、pH6.0~8.0、pH6.0~7.5、pH6.0~7.0、pH6.1~6.9、pH6.2~6.8、またはpH6.3~6.7の緩衝液中で陰イオン交換クロマトグラフィーで精製する段階;及び前記段階で精製された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドとを連結して結合体を製造する段階を含むことであってもよいが、これに限定されない。
【0153】
また、本発明の製造方法において、
(i)前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域は、還元剤の存在下でpH4.0~8.0、pH4.5~7.5、pH5.5~7.5、pH5.6~7.4、pH5.7~7.3またはpH5.8~7.2で免疫グロブリンFc領域のN-末端に前記化学式(3)のリンカーを連結して製造されたもの;及び/または
(ii)前記結合体は、pH5.5~8.0、pH6.0~7.5、またはpH6.5~7.5で単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のリンカーと生理活性ポリペプチドを連結して作製されたものであってもよいが、これに限定されない。
【0154】
また、本発明の製造方法の前記結合体を製造する段階は、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域に比べて同量以上の生理活性ポリペプチドを反応させるものであってもよく、具体的には、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域:生理活性ポリペプチドを1:1~1:10、1:1~1:7、1:1~1:5、または1:1~1:3のモル比で反応させるものであってもよいが、これに限定されない。
【0155】
本発明の用語「単一ペグ化免疫グロブリンFc領域」とは、一つのポリエチレングリコールを含む一つのリンカーが免疫グロブリンFc領域に連結されている、本発明による持続型薬物結合体の製造過程の途中で生じる中間体物質を意味する。すなわち、本発明において、「単一ペグ化免疫グロブリンFc領域」は、「中間体」または「中間体物質」と相互交換して使用することができる。
【0156】
本発明において、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来の免疫グロブリンFc領域であってもよいが、これに限定されない。
また、前記免疫グロブリンFc領域は、下記のアミノ酸配列においてアミノ酸配列が一部欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異したヒンジ配列を含む免疫グロブリンFc領域であってもよく、具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号8(Ser-Cys-Pro)または配列番号9(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含んでもよいが、これに限定されない。
【0157】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号7)。
【0158】
本発明の「持続型薬物結合体」とは、体内で薬理活性を示す薬物(生理活性ポリペプチド)が免疫グロブリンFc領域とリンカーを通じて連結された構造を有する、半減期が増大した薬物結合体を意味する。本発明の目的上、前記持続型薬物結合体は、中間体または単一ペグ化免疫グロブリンFc領域と薬物が結合したものであってもよいが、これに限定されない。
【0159】
具体的には、前記薬物は、特定の疾患に対する予防、治療、または改善の効果を示す限り、特定の物質に限定されず、天然型または非天然型タンパク質、酵素、抗体、化合物などであってもよい。より具体的には、前記薬物は、生理活性ポリペプチドまたはタンパク質であってもよく、より具体的には、前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンパ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、インクレチン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、GLP-1/GIP二重活性体、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または抗体断片であってもよいが、これに限定されない。より具体的には、生理活性ポリペプチドは、GLP-1/GIP/グルカゴン三重活性体、グルカゴン、またはその類似体であってもよいが、これに限定されない。より具体的には、前記生理活性ポリペプチドは、配列番号1~6のいずれか一つのアミノ酸配列を含むか、必須に構成されていたり、構成されるものであってもよいが、これに限定されない。
【0160】
また、前記生理活性ポリペプチドの変異体、誘導体、及び断片も本発明の範囲に属する。
【0161】
本発明において、「変異体」とは、天然型生理活性ポリペプチドとアミノ酸配列が一つ以上異なるペプチドであり、天然型生理活性ポリペプチドと同一の機能を有するペプチドを意味し、天然型配列において一部アミノ酸が置換(substitution)、追加(addition)、除去(deletion)、及び修飾(modification)のいずれか一つの方法またはそれらの方法の組み合わせにより製造されてもよい。
【0162】
本発明において、用語「誘導体」は、前記天然型生理活性ポリペプチドの一部のアミノ酸を付加、欠失又は置換の形態で変形させ、天然型生理活性ポリペプチドと類似の活性を示すペプチド、ペプチド誘導体又はペプチド模倣体などを含む。
【0163】
本発明において、用語「断片」とは、アミノ末端またはカルボキシ末端に一つまたはそれ以上のアミノ酸が追加または削除された形態を意味し、追加されたアミノ酸は天然に存在しないアミノ酸(例えば、D型アミノ酸)も可能であってもよい。
【0164】
生理活性ポリペプチド変異体、誘導体、及び断片でそれぞれ使用される製造方法は、独立して使用することができ、組み合わせも可能である。例えば、アミノ酸配列が一つ以上異なり、N-末端アミノ酸残基に脱アミノ化(deamination)された生理活性ポリペプチドも含まれる。
【0165】
前記生理活性ポリペプチド誘導体は、バイオシミラーとバイオベターの形態を含むが、バイオシミラーの例を挙げると、公知酵素と発現宿主の違い、糖化の様相と程度の差、特定位置の残基が当該酵素の基準配列に鑑みて100%置換でない場合、その置換程度の差も本発明の持続型薬物結合体で使用できるバイオシミラー酵素に相当する。前記生理活性ポリペプチド、変異体、誘導体及び断片は、遺伝子組換えにより動物細胞、大腸菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞、生きている動物などから生産することができ、生産方法はこれに限定されず、商業的に利用可能な生理活性ポリペプチド、変異体、誘導体及び断片であってもよい。
【0166】
また、前記生理活性ポリペプチド、変異体、誘導体及び断片と80%以上、具体的には90%以上、より具体的には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、前記生理活性ポリペプチド、変異体、誘導体及び断片は、組換え技術により微生物から得たり、または商業的に利用可能なものであってもよいが、これに限定されない。
【0167】
本発明の用語、「相同性(homology)」は、野生型(wild type)タンパク質のアミノ酸配列またはそれをコードする塩基配列との類似度を示すためのものであり、本発明のアミノ酸配列または塩基配列と前記のようなパーセント以上の同じ配列を有する配列を含む。このような相同性は、両配列を肉眼で比較して決定することもできるが、比較対象となる配列を並べて配列して相同性の程度を分析する生物情報アルゴリズム(bioinformatic algorithm)を用いて決定することができる。前記2つのアミノ酸配列間の相同性は百分率で表すことができる。有用な自動化アルゴリズムは、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group、Madison、W、USA)のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTAコンピュータソフトウェアモジュールで利用可能である。前記モジュールで自動化された配列アルゴリズムには、Needleman&WunschとPearson&LipmanとSmith&Waterman配列アルゴリズムを含む。他の有用な配列のアルゴリズムと相同性の決定は、FASTP、BLAST、BLAST2、PSIBLASTとCLUSTAL Wを含むソフトウェアで自動化されている。
【0168】
前記生理活性ポリペプチド、変異体、誘導体及び断片の配列及びそれらをコードする塩基配列の情報は、NCBIなどの公知のデータベースから得ることができる。
【0169】
前記置換または追加されるアミノ酸は、ヒトタンパク質において通常観察される20個のアミノ酸だけでなく、非定型または非自然発生アミノ酸を使用することができる。非定型アミノ酸の商業的出典には、Sigma-Aldrich、ChemPepとGenzyme pharmaceuticalsが含まれる。このようなアミノ酸が含まれたペプチドと定形的なペプチド配列は、商業化されたペプチド合成会社、例えば、米国のAmerican peptide companyやBachem、または韓国のAnygenを通じて合成及び購入可能である。
【0170】
また、本発明による生理活性ポリペプチド、変異体、誘導体及び断片は、生体内のタンパク質切断酵素から保護し、安定性を高めるために、そのN-末端及び/またはC-末端などが化学的に修飾されたり、有機団で保護されたり、ペプチド末端などにアミノ酸が付加されて変形された形態であってもよい。
【0171】
特に、化学的に合成されたペプチドの場合、N-末端及びC-末端が電荷を帯びているため、このような電荷を除去するために、N-末端をアセチル化(acetylation)及び/またはC-末端をアミド化(amidation)することができるが、特にこれに限定されない。
【0172】
また、本発明によるペプチドは、ペプチドそれ自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、またはその溶媒和物の形態を全て含む。また、ペプチドは薬学的に許容される任意の形態であってもよい。
【0173】
前記塩の種類は、特に限定されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全かつ効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0174】
本発明で使用される用語「溶媒和物」とは、本発明によるペプチドまたはその塩が溶媒分子と複合体を形成したものをいう。
【0175】
また、本発明において「特定の配列番号で構成されるペプチド」と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドと同一もしくは相応する活性を有する場合であれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列の追加あるいは自然に発生し得る突然変異、またはその潜在性突然変異(silent mutation)を除外するものではなく、そのような配列の追加または突然変異を有する場合にも、本願の範囲内に属することが自明である。
【0176】
本発明の持続型薬物結合体の製造方法は、生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc領域がリンカーを通じて連結された結合体を製造する方法であってもよいが、これに限定されない。
【0177】
本発明において、リンカーと免疫グロブリンFc領域の連結は、リンカーの一末端と免疫グロブリンFc領域のN-末端が共有または非共有結合によるものであってもよいが、結合位置や方式は特に限定されない。具体的には、免疫グロブリンFc領域のN-末端プロリンとリンカーの-CHO基との連結により単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を製造してもよいが、これに限定されない。
【0178】
本発明において、前記リンカーは、下記化学式(4)の構造を有するものであってもよいが、これに限定されない。
【0179】
・・・(4)
【0180】
前記化学式(4)において、nは200~250である。
【0181】
また、前記リンカーは、1~200kDa、1~150kDa、1~100kDa、1~50kDa、または1~10kDaのサイズを有するものであってもよいが、これに限定されない。
【0182】
前記単一ペグ化免疫グロブリンFc領域は、下記化学式(2)の構造を有してもよいが、これに限定されない。
【0183】
・・・(2)
【0184】
本発明の製造方法は、前記化学式(2)の構造を有する単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の一末端に生理活性ポリペプチドを連結する段階を行うものであってもよいが、これに限定されない。
【0185】
また、前記リンカーの免疫グロブリンFc領域に連結されていない他の一末端は、生理活性ポリペプチドと連結されるものであってもよく、具体的には、生理活性ポリペプチドの-SH基又は-SH基を含むアミノ酸、又はシステインと連結されることであってもよいが、これに限定されない。
【0186】
本発明において、持続型薬物結合体は、下記のような化学式(5)の構造を有してもよいが、これに限定されない。
【0187】
・・(5)
【0188】
前記化学式(5)は、左から生理活性ポリペプチド、リンカー、及び免疫グロブリンFc領域が順次連結された構造を有するものであってもよいが、これに限定されない。
【0189】
本発明の実施例では、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を最初に製造した後、生理活性ポリペプチドと連結する本発明の製造方法で持続型薬物結合体を製造する場合、限外/透析濾過及び疎水性相互作用クロマトグラフィー工程が省略され、最終の精製工程のみ実施(例えば、1回の疎水性相互作用クロマトグラフィー)されるにもかかわらず、既存の工程と比較して最終結合体の純度が維持されながらも収率が向上することを確認した。
【0190】
本発明の他の一態様は、前記方法により製造された持続型薬物結合体を提供する。
本発明の製造方法で製造された持続型薬物結合体は、リンカーまたは免疫グロブリンFc領域が連結されていない、生理活性ポリペプチドと比較して増加した半減期を示すため、薬剤の製造に有利な効果を有する。
【0191】
本発明の製造方法で製造された持続型薬物結合体は、疾患の予防、治療、及び改善の用途を有する薬剤または組成物の製造に利用することができる。
【0192】
以下、下記実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0193】
比較例:ペグ化生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc領域との連結による結合体の製造
ペグ化生理活性ポリペプチドを免疫グロブリンFc領域と連結して持続型結合体を製造した。
【0194】
比較例1:ペグ化GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1と免疫グロブリンFc領域との連結による結合体の製造
生理活性ポリペプチド(GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1(配列番号1)のシステイン(-SH基)にペグ化(PEGylation)させるため、GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1:PEG(マレイミド-10kDa-PEG-アルデヒド)を含むリンカー(化学式(4))のモル比を1:1.0~1.3に、GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1の濃度を3g/Lにして約1時間反応させた。具体的には、反応はイソプロパノールを含む50mM Tris(pH 7.5@6±4℃)のバッファーで行われた。単一ペグ化GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1を得るために、前記反応液をクエン酸ナトリウムとエタノールが含まれた平衡緩衝液で合計20倍の体積になるように希釈し精製した。この時、SP High Performance(GE Healthcare、陽イオン交換クロマトグラフィー)カラムを用いてクエン酸ナトリウムとエタノールが含まれた溶液と塩化カリウム濃度勾配で単一ペギル化GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1を精製した。ペギル化GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1の精製液を水で希釈した後、分離膜限外/透析濾過(UF/DF)方法により0.1Mリン酸カリウム溶液で緩衝液交換及び濃縮して最終回収濃度が3g/L以上になるようにした。
【0195】
前記で製造した単一ペグ化GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1を免疫グロブリンFc領域と連結し、持続型結合体を以下のように製造した。
【0196】
このとき、単一ペグ化GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1のPEGのアルデヒド基と免疫グロブリンFc領域のアミノ末端が結合するように、単一ペグ化GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1と免疫グロブリンFc領域のモル比を1:2に、総タンパク質濃度(GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1及び免疫グロブリンFc領域)を30g/Lにして、6±4℃で約12時間反応させた。
【0197】
結合反応後、未反応の免疫グロブリンFc領域を分離、除去するために、Butyl 4 Fast Flow(GE Healthcare、疎水性相互作用クロマトグラフィー)カラムを用いて精製した。このとき、反応液にトリスと塩化ナトリウムを投入し、ビストリスが含まれた溶液と塩化ナトリウム濃度勾配で精製した。
【0198】
その後、Source 15ISO(GE Healthcare)カラムを用いて疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、プロセス副産物を除去し、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1の結合体を得た。このとき、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファーと硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いて精製した。
【0199】
比較例2:ペグ化グルカゴンアナログ1と免疫グロブリンFc領域との連結による結合体の製造
生理活性ポリペプチド(グルカゴンアナログ1;配列番号4)のシステイン(-SH基)にペグ化(PEGylation)させるために、グルカゴンアナログ1:PEG(マレイミド-10kDa-PEG-アルデヒド)を含むリンカー(化学式(1))のモル比を1:1.3に、グルカゴンアナログ1の濃度を3g/Lにして約1時間反応させた。具体的には、反応はイソプロパノールを含む50mM Tris(pH 7.3)バッファーで行われた。単一ペグ化グルカゴンアナログ1を得るために、前記反応液をクエン酸ナトリウムとエタノールが含まれた平衡緩衝液で合計20倍の体積になるように希釈し、精製した。このとき、SP High Performance(GE Healthcare、陽イオン交換クロマトグラフィー)カラムを用いてクエン酸ナトリウムとエタノールが含まれた溶液と塩化カリウム濃度勾配で単一ペグ化したグルカゴンアナログ1を精製した。ペグ化グルカゴンアナログ1の精製液を水で希釈した後、分離膜限外/透析濾過(UF/DF)方法により0.1Mリン酸カリウム溶液で緩衝液交換及び濃縮し、最終の回収濃度が3g/L以上になるようにした。
【0200】
前記で製造した単一ペグ化グルカゴンアナログ1を免疫グロブリンFc領域と連結して持続型結合体を以下のように製造した。
【0201】
このとき、単一ペグ化グルカゴンアナログ1のPEGのアルデヒド基と免疫グロブリンFc領域のアミノ末端が結合するように、単一ペグ化グルカゴンアナログ1と免疫グロブリンFc領域のモル比を1:5に、総タンパク質濃度(グルカゴンアナログ1及び免疫グロブリンFc領域)を20g/Lにして、6±4℃で約12時間反応させた。
結合反応後、未反応の免疫グロブリンFc領域を分離、除去するために、Butyl 4 Fast Flow(GE Healthcare、疎水性相互作用クロマトグラフィー)カラムを用いて精製した。このとき、反応液にトリスと塩化ナトリウムを投入し、ビストリスが含まれた溶液と塩化ナトリウム濃度勾配で精製した。
【0202】
その後、Source 15ISO(GE Healthcare)カラムを用いて疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、工程副産物を除去し、免疫グロブリンFc領域-PEGリンカー-グルカゴンアナログ1の結合体を得た。このとき、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファーと硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いて精製した。
【0203】
本発明者らは、前記比較例1及び2による結合体製造工程において、膜透過工程及び精製工程(疎水性相互作用クロマトグラフィー、Butyl 4 Fast Flow)を省略して効率的な結合体生産が可能であると共に製造される結合体の高純度を維持できる工程を次のように開発した。
【0204】
実施例1:単一ペグ化(mono-PEGylated)免疫グロブリンFc領域の製造
実施例1-1.単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の製造
N-末端にPro-Ser-Cys-Pro配列のヒンジ領域を有する免疫グロブリンFc領域(49.8kDa)のN-末端にペグ化(PEGylation)させるために、免疫グロブリンFc領域:PEGを含むリンカー(化学式(4)の構造、10kDa)のモル比を1:1に、免疫グロブリンFc領域の濃度を50g/Lにして、6±4℃で約4時間反応させた。
【0205】
・・・(4)
【0206】
具体的には、反応は5mMのBis Tris(pH6.5)とリン酸カリウムが含まれた組成で行われ、10mMのNaCNBH3(sodium cyanoborohydride)還元剤を添加して反応させた。単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を得るために、前記反応液をBisTris緩衝液で希釈して精製した。
【0207】
このとき、陽イオン交換クロマトグラフィーで単一ペグ化GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログを精製した比較例の製造方法とは異なり、Capto Q ImpRes(GE Healthcare、陰イオン交換クロマトグラフィー)カラムを用いてBisTrisが含まれたバッファーと塩化ナトリウム濃度勾配で単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を精製した。
【0208】
実施例1-2.単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の構造分析
前記実施例1-1の方法で製造した単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の構造を、MALDI-TOF及びPeptide mappingにより分析した。MALDI-TOFの分析結果、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域の予想分子量と一致し(図1)、ペプチドマッピングの分析結果、免疫グロブリンFc領域のN-末端にPEGが90%以上ペグ化したことを確認した。
【0209】
一方、前記実施例1-1の方法で製造された単一ペグ化(Mono-PEGylated)免疫グロブリンFc領域(化学式(2))をSE-HPLC、RP-HPLCとIE-HPLC分析法を用いて分析した結果、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では80%以上の純度で製造されたことを確認した。
【0210】
・・(2)
【0211】
実施例2:ペグ化免疫グロブリンFc領域と生理活性ポリペプチドとの連結による結合体の製造
前記実施例1-1で製造された単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を様々な生理活性ペプチドと連結して持続型結合体を以下のように製造した。
【0212】
陽イオンクロマトグラフィーでペグ化生理活性ポリペプチドを精製した後、分離膜限外/透析濾過(UF/DF)法によりペグ化生理活性ポリペプチドを緩衝液交換及び濃縮した比較例の製造方法と異なり、限外/透析濾過なしにpeptide conjugationにより、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域を生理活性ポリペプチドと反応させた。このように製造された持続型結合体は、高純度で製造され、比較例の製造方法と異なり、2回の疎水性相互作用クロマトグラフィー中の1回を省略することができる。
【0213】
実施例2-1.GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1結合体の製造
実施例1-1の陰イオンクロマトグラフィーの後、限外/透析濾過なしにGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1(配列番号1)のpeptide conjugation を行い、持続型結合体(免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1を製造した。
【0214】
[配列番号1]
【0215】
このとき、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のPEGの一方の末端のマレイミド反応基とGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1が結合するように、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域とGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1のモル比を1:1に、GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1タンパク質濃度を0.2g/Lにして、6±4℃で約2時間反応させた。この時、反応液はイソプロパノールを含むTris-Cl(6±4℃)バッファーで行われた。前記反応液は、SE-HPLC、RP-HPLC、IE-HPLC分析法で分析し、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では80%以上、及びIE-HPLC測定では70%以上であることを確認した。
【0216】
その後、前記反応物の結果としてSource 15ISO(GE Healthcare)カラムを用いて、一回の疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、反応副産物を除去し、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1の結合体を得た。このとき、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファーと硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いて精製した。投入GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1比収率は、比較例1の収率に比べて2倍以上向上したことを確認した。
【0217】
溶出した免疫グロブリンFc-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ1結合体は、SE-HPLC、RP-HPLC、IE-HPLC、及びSDS-PAGE分析法を用いて分析した。SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では90%以上の高純度で製造されたことを確認した。
【0218】
実施例2-2.GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ2結合体の製造
実施例1-1の陰イオンクロマトグラフィーの後、限外/透析濾過なしにGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ2(配列番号2)のpeptide conjugation反応を行い、持続型結合体(免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ2)を製造した。
【0219】
[配列番号2]
【0220】
このとき、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のPEGの一方の末端のマレイミド反応基とGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ2のシステインが結合するように、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域とGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ2のモル比を1:1に、三重活性体アナログ2のタンパク質濃度を0.2g/Lにして、6±4℃で約2時間反応させた。この時、反応液はイソプロパノールを含むTris-Cl(6±4℃)バッファーで行われた。反応後の結果物をSE-HPLC、RP-HPLC、及びIE-HPLC分析法で分析した結果、GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ2を含む持続型結合体の純度は、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では80%以上、及びIE-HPLC測定では70%以上であることを確認した。
【0221】
その後、前記反応物の結果物としてSource 15ISO(GE Healthcare)カラムを用いて、1回の疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、反応副産物を除去し、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-三重活性体アナログ2を得た。このとき、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファーと硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いて精製した。投入三重活性体アナログ2比収率は、比較例1の収率に比べて相対的に約2倍以上向上したことを確認した。
【0222】
溶出した免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ2結合体は、SE-HPLC、RP-HPLC、IE-HPLC、及びSDS-PAGE分析法を用いて分析し、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では80%以上の高純度で製造されたことを確認した。
【0223】
実施例2-3.GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ3結合体の製造
実施例1-1の陰イオンクロマトグラフィーの後、限外/透析濾過なしにGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ3(配列番号3)のpeptide conjugation反応を行い、持続型結合体(免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ3)を製造した。
【0224】
[配列番号3]
【0225】
このとき、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のPEGの一末端のマレイミド反応基とGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ3のシステインが結合するように、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域とGLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ3のモル比を1:1に、GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ3タンパク質濃度を0.2g/Lにして、6±4℃で約2時間反応させた。このとき、反応液はイソプロパノールを含むTris-Cl(6±4℃)バッファーで行われた。反応後の結果物をSE-HPLC、RP-HPLC、IE-HPLC分析法で分析した結果、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では80%以上、及びIE-HPLC測定では70%以上であることを確認した。
【0226】
その後、前記反応物の結果物としてSource 15ISO(GE Healthcare)カラムを用いて、1回の疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、反応副産物を除去し、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ3の結合体を得た。このとき、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファーと硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いて精製した。投入三重活性体アナログ3比収率は、比較例1の収率に比べて相対的に約2倍以上向上したことを確認した。
【0227】
溶出した免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-GLP-1/GIP/Glucagon三重活性体アナログ3の結合体は、SE-HPLC、RP-HPLC、及びIE-HPLC分析法を用いて分析し、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では90%以上の高純度で製造されたことを確認した。
【0228】
実施例2-4.グルカゴンアナログ1の結合体の製造
実施例1-1の陰イオンクロマトグラフィーの後、限外/透析濾過なしにグルカゴンアナログ1(配列番号4)のpeptide conjugation反応を行い、持続型結合体(免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ1)を製造した。
【0229】
[配列番号4]
【0230】
このとき、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のPEGの一方の末端のマレイミド反応基とグルカゴンアナログ1が結合するように、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域とグルカゴンアナログ1のモル比を1:1に、グルカゴンアナログ1タンパク質濃度を0.2g/Lにして、6±4℃で約2時間反応させた。この時、反応液はイソプロパノールを含むTris-Cl(6±4℃)バッファーで行われた。反応後の結果物をSE-HPLC、RP-HPLC及びIE-HPLC分析法で分析した結果、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ1の純度は、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では70%以上、及びIE-HPLC測定では70%以上であることが確認された。
【0231】
その後、前記反応物の結果物としてSource 15ISO(GE Healthcare)カラムを用いて、一回の疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、反応副産物を除去し、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ1の結合体を得た。このとき、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファーと硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いて精製した。投入グルカゴンアナログ1比収率は、比較例2の収率に比べて1.5倍以上向上したことを確認した。
【0232】
溶出した免疫グロブリンFc-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ1の結合体はSE-HPLC、RP-HPLC、及びIE-HPLC分析法を用いて分析し、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では90%以上の高純度で製造されたことを確認した。
【0233】
実施例2-5.グルカゴンアナログ2結合体の製造
実施例1-1の陰イオンクロマトグラフィーの後、限外/透析濾過なしにグルカゴンアナログ2(配列番号5)のpeptide conjugation反応を行い、持続型結合体(免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ2)を製造した。
【0234】
[配列番号5]
【0235】
このとき、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のPEGの一方の末端のマレイミド反応基とグルカゴンアナログ2が結合するように、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域とグルカゴンアナログ2のモル比を1:1に、グルカゴンアナログ2タンパク質濃度を0.2g/Lにして、6±4℃で約2時間反応させた。この時、反応液は、イソプロパノールを含むTris-Cl(6±4℃)バッファーで行われた。反応後の結果物をSE-HPLC、RP-HPLC、及びIE-HPLC分析法で分析した結果、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ2結合体の純度は、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では70%以上、及びIE-HPLC測定では70%以上であることが確認された。
【0236】
その後、前記反応物の結果物としてSource 15ISO(GE Healthcare)カラムを用いて、1回の疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、反応副産物を除去し、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ2の結合体を得た。このとき、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファーと硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いて精製した。投入グルカゴンアナログ2比収率は、比較例2の収率に比べて相対的に約1.5倍以上向上したことを確認した。
【0237】
溶出した免疫グロブリンFc-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ2結合体はSE-HPLC、RP-HPLC及びIE-HPLC分析法を用いて分析し、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では90%以上の高純度で製造されたことを確認した。
【0238】
実施例2-6.グルカゴンアナログ3結合体の製造
実施例1-1の陰イオンクロマトグラフィーの後、限外/透析濾過なしにグルカゴンアナログ3(配列番号6)のpeptide conjugation反応を行い、持続型結合体(免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ3)を製造した。
【0239】
[配列番号6]
【0240】
このとき、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域のPEGの一方の末端のマレイミド反応基とグルカゴンアナログ3のシステインが結合するように、単一ペグ化免疫グロブリンFc領域とグルカゴンアナログ3のモル比を1:1に、グルカゴンアナログ3のタンパク質濃度を0.2g/Lにして、6±4℃で約2時間反応させた。この時、反応液はイソプロパノールを含むTris-Cl(6±4℃)バッファーで行われた。反応後の結果物を反応液はSE-HPLC、RP-HPLC、及びIE-HPLC分析法で分析した結果、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ3結合体の純度は、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では70%以上、及びIE-HPLC測定では70%以上であることが確認された。
【0241】
その後、前記反応物の結果物としてSource 15ISO(GE Healthcare)カラムを用いて、1回の疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、反応副産物を除去し、免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ3の結合体を得た。このとき、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファーと硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いて精製した。投入グルカゴンアナログ3比収率は、従来の収率に比べて相対的に約1.5倍以上向上したことを確認した。
【0242】
溶出した免疫グロブリンFc領域-PEGを含むリンカー-グルカゴンアナログ3結合体はSE-HPLC、RP-HPLC、及びIE-HPLC分析法を用いて分析し、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では90%以上の高純度で製造されたことを確認した。
【0243】
下記表1及び2は、本発明の比較例及び実施例の方法を比較した表である。
【0244】
【表1】
【0245】
【表2】
【0246】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
図1
【配列表】
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