(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/231 20110101AFI20231130BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/207
(21)【出願番号】P 2022528514
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018553
(87)【国際公開番号】W WO2021246140
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2020096041
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】桜井 努
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-321327(JP,A)
【文献】特開2010-184595(JP,A)
【文献】特開2010-221737(JP,A)
【文献】特開2006-076392(JP,A)
【文献】特開2013-086731(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016120368(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0316263(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0132188(KR,A)
【文献】特開2015-157529(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072291(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006296(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/231
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータから噴出されるインフレータガスによって展開膨張される車両用エアバッグクッションを有する車両用エアバッグ装置であって、
上記エアバッグクッションは、
折り返しまたは重ね合わせにより、互いに向かい合わされる一対のパネル部と、
該一対のパネル部に、これらパネル部それぞれから外向きに突出する形態で一体的に設けられる一対の拡張部と、
上記一方のパネル部の上記拡張部を、上記他方のパネル部に重ね、かつ該他方のパネル部の上記拡張部を、該一方のパネル部に重ね、これら拡張部の縁部に沿う縫製部で、各拡張部を各パネル部それぞれに接合して形成される重合部と、
向かい合わされた上記一対のパネル部の外周縁部を接合し、中空のバッグ体に成形する外周縫製部と、
上記重合部を貫通して設けられ、スタッドボルトを有する上記インフレータを上記バッグ体内部に挿入するためのインフレータ挿通穴と、
上記重合部を貫通して設けられ、上記インフレータのスタッドボルトを挿通して上記バッグ体外部へ突出させるボルト挿通穴とを備えて構成されることを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記外周縫製部は、前記重合部に達する一対の縫製端部分を有し、これら縫製端部分は、前記縫製部と交差して設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記外周縫製部は、前記重合部に達する一対の縫製端部分を有し、これら縫製端部分は、前記縫製部を避けて設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記インフレータ挿通穴と前記ボルト挿通穴とが、前記重合部を通って前記外周縫製部の前記一対の縫製端部分同士をつなぐ仮想直線上に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記重合部を形成する前記拡張部の縁部に沿う前記縫製部は、環状に閉じていることを特徴とする請求項1~4いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記一対の拡張部にはそれぞれ、前記インフレータ挿通穴及び前記ボルト挿通穴が形成され、該一対の拡張部の該インフレータ挿通穴及び該ボルト挿通穴同士が、前記重合部で重なり合い連通されることを特徴とする請求項1~5いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項7】
前記外周縫製部は、前記各拡張部の前記縁部に達するように形成されることを特徴とする請求項1~6いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項8】
前記重合部には、前記インフレータ挿通穴及び前記ボルト挿通穴の少なくともいずれかを包囲して、互いに重ねられた前記パネル部と前記拡張部とを接合する包囲縫製部が形成されることを特徴とする請求項1~7いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項9】
前記インフレータは、長さ方向に間隔を隔てて複数のスタッドボルトを有するシリンダ形式であり、これらスタッドボルトが、前記インフレータ挿通穴に挿入されることを特徴とする請求項1~8いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項10】
前記一対のパネル部は、外形形態が同じであることを特徴とする請求項1~9いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項11】
前記バッグ体には、前記重合部と隣接する位置に、該重合部の位置よりも迫り出す形態でオーバーハング部が形成され、
該オーバーハング部は、前記一対のパネル部それぞれから前記各拡張部の突出方向に向けて迫り出す一対の迫り出し部を向かい合わせて前記外周縫製部で接合して設けられることを特徴とする請求項1~10いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項12】
前記バッグ体の内部には、前記重合部に、前記ボルト挿通穴からスタッドボルトが突出する前記インフレータが設けられ、上記バッグ体は、上記スタッドボルトを介して、車体に取付固定されることを特徴とする請求項1~11いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項13】
請求項1~12いずれかに記載の車両用エアバッグ装置の製造方法であって、
前記エアバッグクッションの製作に際し、
折り返しまたは重ね合わせにより、互いに向かい合わされる前記一対のパネル部それぞれに、前記一対の拡張部をそれぞれ設け、該各拡張部それぞれに、前記インフレータ挿通穴及び前記ボルト挿通穴を形成するパネル部成形工程と、
これらパネル部を重ね、上記各拡張部の上記インフレータ挿通穴及び上記ボルト挿通穴同士が重なり合い連通するようにして、該一方のパネル部の該拡張部を該他方のパネル部に重ね、かつ該他方のパネル部の該拡張部を該一方のパネル部に重ねる縫製前工程と、
これら拡張部の前記縁部に沿う前記縫製部で、各拡張部を各パネル部それぞれに接合して前記重合部を形成する縫製工程と、
向かい合わせた上記一対のパネル部の前記外周縁部を、前記外周縫製部で接合し、前記バッグ体に成形するバッグ体成形工程とを備えたことを特徴とする車両用エアバッグ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体への取付固定を行うスタッドボルトを、縫製部を避けて挿通することが可能であり、また、展開膨張する際にパネル部に不均衡な応力が生じることもない車両用エアバッグ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフレータを車体に取り付けるスタッドボルトが、バッグ体の縫製部の位置を貫通する車両用エアバッグクッションを示している文献として、特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1の「側突用エアバッグ装置」は、エアバッグは、布、樹脂シート等のシート状材料を袋形状にしたものであり、内部がシームによって下側の下室と上側の上室とに区画されている。上室にベントホールが設けられている。このシームの後端はエアバッグの後縁から若干離隔しており、このシームとエアバッグの後縁との離間部分に、逆止弁が設けられている。逆止弁は筒状であり、その中に棒状のガス発生器が配置されている。このガス発生器は、その長手方向が上下方向となるように配置されている。逆止弁は2枚のシートを重ね合わせ、両側辺をシームによって縫合したものであり、下室から上室へのガス流出を阻止するようになっている。
【0004】
特許文献1では、
図2や
図4に見受けられるように、ガス発生器をケース(車体)に取り付けるためのスタッドボルトが、左右一対のパネル部で接合する、エアバッグの後縁のシーム位置を貫通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術では、左右一対のパネル部を有するエアバッグクッション(エアバッグ)の縫製部位置(シーム位置)に、エアバッグクッションを貫通する貫通孔を形成している。そして、この貫通孔に、エアバッグクッションの内部から外部へ向けて、インフレータ(ガス発生器)のスタッドボルトを貫通させ、縫製部位置から突出するスタッドボルトで、インフレータの車体への取り付けを行うようにしている。
【0007】
縫製部位置は、エアバッグクッションを構成するバッグ基材が縫製のために重ね合わされる上に、縫製部を構成する縫製糸が縫い込まれる錯綜部位であって、厚みと硬さがある。この厚みと硬さのある縫製部位置でインフレータを車体に取り付けようとして、スタッドボルトを強固に締め付けようとしても、錯綜部位がこの締め付けに対して反発し、このため、スタッドボルトの締め付けを的確かつ十分には行うことができないと考えられる。
【0008】
スタッドボルトの締め付けが十分でないと、エアバッグクッションを車体に取付固定した後の経年変化で、スタッドボルトに弛みが生じ、エアバッグ装置が作動するときに、設計通りの安定した乗員保護性能を確保できないおそれがあった。
【0009】
このような事態を防ぐために、スタッドボルトの貫通孔の位置を、エアバッグクッションの縫製部位置を避けて設定することが考えられる。すなわち、エアバッグクッションの、例えば左右一対のパネル部のうち、いずれか一方のパネル部に貫通孔を形成するようにし、これにより、厚さや硬さが抑えられてスタッドボルトの締め付けに対し反発が少ない当該一方のパネル部で、スタッドボルトによる車体への取り付けを行うことが考えられる。
【0010】
しかしながら、縫製部位置を避けること、言い換えれば、一対のパネル部の一方を、スタッドボルトで車体に取り付けると、エアバッグクッションの展開膨張時、一対のパネル部の一方に作用する力と、他方のパネル部に作用する力とが、等しくならず大きく異なることとなり、一対のパネル部同士で異なった応力が発生して、耐え切れない一方のパネル部に亀裂が生じるなどして、エアバッグクッションがバーストしてしまうことが懸念される。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、車体への取付固定を行うスタッドボルトを、縫製部を避けて挿通することが可能であり、また、展開膨張する際にパネル部に不均衡な応力が生じることもない車両用エアバッグ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置は、インフレータから噴出されるインフレータガスによって展開膨張される車両用エアバッグクッションを有する車両用エアバッグ装置であって、上記エアバッグクッションは、折り返しまたは重ね合わせにより、互いに向かい合わされる一対のパネル部と、該一対のパネル部に、これらパネル部それぞれから外向きに突出する形態で一体的に設けられる一対の拡張部と、上記一方のパネル部の上記拡張部を、上記他方のパネル部に重ね、かつ該他方のパネル部の上記拡張部を、該一方のパネル部に重ね、これら拡張部の縁部に沿う縫製部で、各拡張部を各パネル部それぞれに接合して形成される重合部と、向かい合わされた上記一対のパネル部の外周縁部を接合し、中空のバッグ体に成形する外周縫製部と、上記重合部を貫通して設けられ、スタッドボルトを有する上記インフレータを上記バッグ体内部に挿入するためのインフレータ挿通穴と、上記重合部を貫通して設けられ、上記インフレータのスタッドボルトを挿通して上記バッグ体外部へ突出させるボルト挿通穴とを備えて構成されることを特徴とする。
【0013】
前記外周縫製部は、前記重合部に達する一対の縫製端部分を有し、これら縫製端部分は、前記縫製部と交差して設けられることが望ましい。あるいは、これら縫製端部分は、前記縫製部を避けて設けられることが好ましい。
【0014】
前記インフレータ挿通穴と前記ボルト挿通穴とが、前記重合部を通って前記外周縫製部の前記一対の縫製端部分同士をつなぐ仮想直線上に設けられていることが望ましい。
【0015】
前記重合部を形成する前記拡張部の縁部に沿う前記縫製部は、環状に閉じていることが好ましい。
【0016】
前記一対の拡張部にはそれぞれ、前記インフレータ挿通穴及び前記ボルト挿通穴が形成され、該一対の拡張部の該インフレータ挿通穴及び該ボルト挿通穴同士が、前記重合部で重なり合い連通されることが望ましい。
【0017】
前記外周縫製部は、前記各拡張部の前記縁部に達するように形成されることが好ましい。
【0018】
前記重合部には、前記インフレータ挿通穴及び前記ボルト挿通穴の少なくともいずれかを包囲して、互いに重ねられた前記パネル部と前記拡張部とを接合する包囲縫製部が形成されることが望ましい。
【0019】
前記インフレータは、長さ方向に間隔を隔てて複数のスタッドボルトを有するシリンダ形式であり、これらスタッドボルトが、前記インフレータ挿通穴に挿入されることが好ましい。
【0020】
前記一対のパネル部は、外形形態が同じであることが望ましい。
【0021】
前記バッグ体には、前記重合部と隣接する位置に、該重合部の位置よりも迫り出す形態でオーバーハング部が形成され、該オーバーハング部は、前記一対のパネル部それぞれから前記各拡張部の突出方向に向けて迫り出す一対の迫り出し部を向かい合わせて前記外周縫製部で接合して設けられることが望ましい。
【0022】
前記バッグ体の内部には、前記重合部に、前記ボルト挿通穴からスタッドボルトが突出する前記インフレータが設けられ、上記バッグ体は、上記スタッドボルトを介して、車体に取付固定されることが好ましい。
【0023】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置の製造方法は、上記車両用エアバッグ装置の製造方法であって、前記エアバッグクッションの製作に際し、折り返しまたは重ね合わせにより、互いに向かい合わされる前記一対のパネル部それぞれに、前記一対の拡張部をそれぞれ設け、該各拡張部それぞれに、前記インフレータ挿通穴及び前記ボルト挿通穴を形成するパネル部成形工程と、これらパネル部を重ね、上記各拡張部の上記インフレータ挿通穴及び上記ボルト挿通穴同士が重なり合い連通するようにして、該一方のパネル部の該拡張部を該他方のパネル部に重ね、かつ該他方のパネル部の該拡張部を該一方のパネル部に重ねる縫製前工程と、これら拡張部の前記縁部に沿う前記縫製部で、各拡張部を各パネル部それぞれに接合して前記重合部を形成する縫製工程と、向かい合わせた上記一対のパネル部の前記外周縁部を、前記外周縫製部で接合し、前記バッグ体に成形するバッグ体成形工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置及びその製造方法にあっては、車体への取付固定を行うスタッドボルトを、縫製部を避けて挿通することができ、また、展開膨張する際にパネル部に不均衡な応力が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の好適な一実施形態を説明する、車両用エアバッグ装置の製造方法におけるパネル部成形工程の説明図である。
【
図2】本発明の好適な一実施形態を説明する、車両用エアバッグ装置の製造方法における縫製工程の説明図である。
【
図3】本発明の好適な一実施形態を説明する、車両用エアバッグ装置の製造方法におけるバッグ体成形工程の説明図である。
【
図5】本発明の好適な一実施形態を説明する車両用エアバッグ装置の側面図である。
【
図6】
図5に示した車両用エアバッグ装置の要部拡大斜視図である。
【
図7】本発明にかかる車両用エアバッグ装置の搭載状態の一例を示す、リアサイドエアバッグ装置である場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる車両用エアバッグ装置及びその製造方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
車両用エアバッグ装置の車両用エアバッグクッションは、衝突などの危急時に、乗員や歩行者などを保護するために、インフレータから噴出されるインフレータガスによって展開膨張される。
【0028】
本実施形態では、本発明に係る車両用エアバッグ装置のエアバッグクッションとして、リアサイドエアバッグ装置に適用されるクッションを例示して説明する。
【0029】
リアサイドエアバッグ装置のエアバッグクッションは、後輪のホイールハウスなどの車体部位にスタッドボルトで固定して設置される。
【0030】
このエアバッグクッションは、ホイールハウスから、リアシートのシートクッションとリアドアとの間の隙間を経て、斜め上向きにリアドアのトリム面に沿って展開膨張される。
【0031】
しかしながら、本発明は、車体に備えられるすべてのエアバッグ装置、例えば、ボンネットとフロントウインドシールドの間で展開膨張する歩行者保護用エアバッグ装置や、いわゆるカーテンエアバッグ装置、運転者用のドライバーズエアバッグ装置、助手席乗員用のサイドエアバッグ装置、運転席と助手席の間で展開膨張するファーサイドエアバッグ装置などに適用することができる。
【0032】
以下、製造方法の手順を説明しながら、車両用エアバッグ装置の車両用エアバッグクッションの構成について述べる。
【0033】
車両用エアバッグクッションは周知のように、布製や樹脂シート製の1枚のシート状のバッグ基材を折り返したり、あるいは、2枚のシート状のバッグ基材1,1を重ね合わせ、縫製によって中空の袋形態とされる。
【0034】
車両用エアバッグクッションは、この折り返しや重ね合わせで互いに向かい合わせで重ねられる一対のパネル部2a,2bを備える。
【0035】
本実施形態を示す
図1には、2枚のシート状バッグ基材1,1を用いる場合が示されている。
【0036】
これらバッグ基材1,1の重ね合わせによって、一対のパネル部2a,2bが互いに重なり合って向かい合わされて形成される車両用エアバッグクッションが製造される。
【0037】
まず、
図1を参照して、パネル部成形工程を説明する。
【0038】
製造に用いる2枚のバッグ基材1,1はそれぞれ、それらのパネル部2a,2bが、最終品の車両用エアバッグクッションの外形形態に合わせた外形輪郭で形成される。
【0039】
各バッグ基材1,1それぞれには、パネル部2a,2bそれぞれから外向きに突出する形態で、拡張部3a,3bが一体的に設けられる。
【0040】
本実施形態は、バッグ基材1,1それぞれにおいて、各パネル部2a,2bに拡張部3a,3bがそれぞれひとつながりに一体で形成される場合を示している。
【0041】
もちろん、バッグ基材1,1に形成されるパネル部2a,2bに対し、別パーツで拡張部3a,3bを用意し、拡張部3a,3bを各パネル部2a,2bに一体的に接合するようにしてもよい。
【0042】
各バッグ基材1,1に形成される拡張部3a,3bは、一対のパネル部2a,2bが外形輪郭を合わせて互いに重なり合って向かい合わされるときに、互いに向かい合う位置関係とされる。
【0043】
このような位置関係は、これら一対の拡張部3a,3bが、パネル部2a,2bの外形輪郭に関して、同一位置に形成されることを意味する。
【0044】
好ましくは、2枚のバッグ基材1,1は、それらの一対のパネル部2a,2b同士及びそれらの一対の拡張部3a,3b同士が同じ形状で形成される。拡張部3a,3b同士については、同じ形状でなくてもよい。
【0045】
各拡張部3a,3bそれぞれには、インフレータを挿通できる穴径で、インフレータ挿通穴4が貫通形成される。
【0046】
また、各拡張部3a,3bそれぞれには、インフレータを車体に取り付けるスタッドボルトを挿通できる穴径で、ボルト挿通穴5が貫通形成される。
【0047】
本実施形態に係る車両用エアバッグ装置には、インフレータとして、周知のシリンダ形式のインフレータが組み込まれる。
【0048】
このインフレータ6は、長さ方向に間隔を隔てて複数のスタッドボルト7を有する(
図5及び
図6参照)。
【0049】
エアバッグクッション(後述するバッグ体8に相当)にインフレータ7が装着されることにより、車両用エアバッグ装置が構成される。
【0050】
インフレータ6としては、シリンダ形式に限らず、スタッドボルト7が環状に配列されるディスク形式のインフレータであってもよい。
【0051】
一方の拡張部3aのインフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5と、他方の拡張部3bのインフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5とは、後述する縫製前工程や縫製工程の縫製部で接合を行う際、互いに一連に連通する配置で形成される。
【0052】
具体的には、各拡張部3a,3bに形成されるこれらインフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5は、パネル部2a,2bの外形輪郭を基準として、同一位置に形成される。
【0053】
次に、縫製前工程を説明する。
【0054】
縫製前工程では、
図1に例示するように、2枚のバッグ基材1,1を、一対の拡張部3a,3b同士が向かい合うように配置する。
【0055】
次に、一方のパネル部2aの拡張部3aを、他方のパネル部2bに重ね、かつ他方のパネル部2bの拡張部3bを、一方のパネル部2aに重ねる。
【0056】
詳細には、
図2に示すように、一方のパネル部2aの一方の拡張部3aを、他方のパネル部2bの表裏面のいずれか一方に重ね、同時に、他方のパネル部2bの他方の拡張部3bを、一方のパネル部2aの表裏面のいずれか他方に重ねる。
【0057】
このとき、一対の拡張部3a,3bのインフレータ挿通穴4同士及びボルト挿通穴5同士が重なり合い連通するようにする。
【0058】
例えば、一方の拡張部3a(以下、第1拡張部ということがある。)を、他方のパネル部2b(以下、第2パネル部ということがある。)の裏面に重ね、他方の拡張部3b(以下、第2拡張部ということがある。)を、一方のパネル部2a(第1パネル部ということがある。)の表面に重ねる。
【0059】
上述したように、パネル部2a,2bの外形輪郭に関して同一位置に形成された一対の第1及び第2拡張部3a,3bは、各パネル部2a,2bにそれぞれ重ねられることで、第1パネル部2aと第2パネル部2b相互間に亘って、隣り合って並ぶ配列とされる。
【0060】
縫製前工程では、拡張部3a,3bがパネル部2a,2bに重なるように、2枚のバッグ基材1,1を重ねるだけである。
【0061】
図1の2枚のバッグ基材1,1の配置は、説明のためであって、必ずしも、このように拡張部3a,3b同士を向かい合わせる必要はない。上述のようにして、拡張部3a,3bをパネル部2a,2bに重ねればよい。
【0062】
1枚のバッグ基材1の折り返しで一対のパネル部2a,2bを形成する場合には、この段階では、当該折り返し部位とは反対側に、各拡張部3a,3bが各パネル部2a,2bの裏面及び表面それぞれに沿わされて重なる折り返しが現れる。
【0063】
【0064】
縫製工程では、縫製前工程で重ねた拡張部3a,3bとパネル部2a,2bとを接合する縫製が行われる。
【0065】
縫製は、第2パネル部2bに第1拡張部3aを接合し、第1パネル部2aに第2拡張部3bを接合するものである。
【0066】
第1拡張部3aと第2拡張部3bとは上述したように、隣り合って横並びに並ぶ配列である。
【0067】
第1拡張部3aを第2パネル部2bに接合する縫製ラインと、第2拡張部3bを第1パネル部2aに接合する縫製ラインとは、一連の連なりが確保される。
【0068】
これら縫製ラインは本実施形態では、インフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5双方を取り囲む縫製部S1として設定される。
【0069】
縫製部S1は、第1拡張部3a及び第2拡張部3b相互間に亘ってこれら拡張部3a,3bの縁部9に沿うように環状に閉じている形態をなす。
【0070】
要するに、これら拡張部3a,3bの縁部9に沿う当該縫製部S1で、各拡張部3a,3bが各パネル部2a,2bそれぞれに接合される。
【0071】
縫製部S1は、インフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5双方の両側方など、これら拡張部3a,3bの縁部9に沿うように形成されていれば、環状形態でなくてもよい。
【0072】
この縫製部S1(以下、環状縫製部S1という)により、一対の拡張部3a,3bは各パネル部2a,2bに接合される。環状縫製部S1によって、一対のパネル部2a,2bが部分的につなげられる。
【0073】
1枚のバッグ基材1の折り返しで一対のパネル部2a,2bを形成する場合、この環状縫製部S1を形成すると、当該バッグ基材1は筒形態となる。
【0074】
環状縫製部S1で各拡張部3a,3bを各パネル部2a,2bに接合することで、パネル部2a,2bには、拡張部3a,3bの重なりにより2枚重ねで厚みが増す部分と、拡張部3a,3bが重ねられない部分とが形成される。
【0075】
2枚重ねすることによって、パネル部2a,2bには部分的に、重合部10が形成される。
【0076】
この重合部10は、後述するようにバッグ体8(エアバッグクッション)が完成したときに、バッグ体8の、その他の部分よりも厚肉な部分になる。
【0077】
インフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5双方は、この重合部10を貫通して設けられる。
【0078】
重合部10には、インフレータ挿通穴4を包囲して、互いに重ねられたパネル部2a,2b及び拡張部3a,3b同士を接合する包囲縫製部S2が形成される。
【0079】
重合部10には、ボルト挿通穴5を包囲して、互いに重ねられたパネル部2a,2bと拡張部3a,3bとを接合する包囲縫製部S3が形成される。
【0080】
これら包囲縫製部S2,S3は、バッグ体8(エアバッグクッション)外方へのインフレータガスのリークを抑制する。
【0081】
インフレータガスは、接合が縫製である環状縫製部S1を通じて、パネル部2a,2bと拡張部3a,3bを重ね合わせた重合部10の隙間へ流れ込む。
【0082】
従って、インフレータガスが、重合部10からインフレータ挿通穴4やボルト挿通穴5を介して、バッグ体8外方へリークするおそれがある。
【0083】
本実施形態では、包囲縫製部S2,S3により、このリークが抑制される。また、包囲縫製部S2,S3は、挿通穴4,5周りの補強にも寄与する。
【0084】
次に、
図3及び
図4を参照して、バッグ体成形工程を説明する。
【0085】
図2中、一点鎖線は、同一形状(同一外形輪郭)で形成された一対のバッグ基材1,1を、一対のパネル部2a,2bが互いに重なり合って向かい合わされるように、重ね合わせる折り線Aを示している。
【0086】
この折り線Aはほぼ、重合部10のインフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5双方を一連に通過する位置となる。
【0087】
図3は、一対のバッグ基材1,1を、折り線Aを介して重ね合わせた状態を示している。このとき、一対のパネル部2a,2bは、向かい合わせで重ね合わされる。
【0088】
これら一対のパネル部2a,2bの外周縁部11には、当該外周縁部11に沿ってパネル部2a,2bを周回するようにして、第1及び第2パネル部2a,2b同士を接合する外周縫製部S4が設けられる。
【0089】
外周縫製部S4は本実施形態では、重合部10を避けて形成される。具体的には、外周縫製部S4は、重合部10の環状縫製部S1と交錯しないように形成される。
【0090】
図示したように、外周縫製部S4は、重合部10に達する縫製端部分S4tを有し、当該縫製端部分S4tは、環状縫製部S1を避けて設けられている。
【0091】
縫製端部分S4tとは、縫製の終端から当該終端を含む所定の長さ範囲の外周縫製部分S4をいう。
【0092】
環状縫製部S1でつなげられている2枚のバッグ基材1,1の場合、そしてまた、折り返しによる1枚のバッグ基材1の場合、いずれであっても、当該外周縫製部S4によって、一対のパネル部2a,2bを備える中空のバッグ体8に成形される。
【0093】
すなわち、これら一対のパネル部2a,2bは、拡張部3a,3bが重なる部分では、環状縫製部S1で接合され、拡張部3a,3bが重ならない部分では、外周縫製部S4により接合され、一体の袋体に形成される。
【0094】
外周縫製部S4は、好ましくは上記のとおり、既に縫製が完了している環状縫製部S1と交錯しないようにして、当該環状縫製部S1よりも外側の拡張部3a,3bの縁部9に達するように形成される。
【0095】
これにより、縫製ラインは、途絶えることなく、一対のパネル部2a,2bの外形輪郭全周に亘って確保される。これにより、インフレータガスのリークがない、密封性の高いバッグ体8が形成される。
【0096】
しかしながら、外周縫製部S4と環状縫製部S1の関係については、外周縫製部S4の、重合部10に達する縫製端部分S4tは、重合部10周辺の強度を増やすなど、種々の必要に応じて、環状縫製部S1と交差して設けられていてもよい。
【0097】
この場合、当該縫製端部分S4tは、重合部10の環状接合部S1を避けることなく、環状接合部S1と交錯する縫製となる。
【0098】
一対のパネル部2a,2bが外周縫製部S4で接合されてバッグ体8が形成されたとき、重合部10のインフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5は、縫製端部分S4t同士をつなぐ、仮想直線X上に位置する(
図4参照)ようにして設けられることになる。
【0099】
すなわち、外周縫製部S4は、各縫製端部分S4tで途切れる。一対の縫製端部分S4t同士は離れている。仮想直線Xとは、重合部10に想定できる、当該重合部10を通って一対の縫製端部分S4t同士をつなぐ直線をいう。この仮想直線X上に、インフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5が設けられる。
【0100】
本実施形態においては、
図1~
図3に示すように、パネル部成形工程で、各バッグ基材1,1それぞれに、対をなす迫り出し部12,12が一体に形成される。
【0101】
これら迫り出し部12,12は、拡張部3a,3bと隣接する位置に、当該拡張部3a,3bの突出方向と同じ方向へ、パネル部2a,2bから迫り出す形態で形成される。
【0102】
これら一対の迫り出し部12,12は同一形状で形成される。
【0103】
そしてこれら迫り出し部12,12は、一対の拡張部3a,3bと同様に、一対のパネル部2a,2b同士が外形輪郭を合わせて互いに重なり合って向かい合わされるときに、互いに向かい合わせで重ね合わされる。
【0104】
これら一対の迫り出し部12,12は、各パネル部2a,2bの一部と言える。これら迫り出し部12,12の縁部は、パネル部2a,2bの外周縁部11であって、外周縫製部S4により接合される。
【0105】
外周縫製部S4で接合された一対の迫り出し部12,12は、バッグ体8の一部をなす。この迫り出し部12,12により、バッグ体8には、オーバーハング部13が形成される。オーバーハング部13は、インフレータガスでバッグ体8が膨張するとき、拡張部3a,3bで形成される重合部1の付近で、外方へ迫り出す膨らみとして現れる。
【0106】
すなわち、オーバーハング部13は、一対のパネル部2a,2bそれぞれから各拡張部3a,3bの突出方向に向けて迫り出す一対の迫り出し部12,12を向かい合わせて外周縫製部S4で接合して設けられる。
【0107】
図5及び
図6には、完成されたエアバッグクッションのバッグ体8内部へインフレータ6を挿入し、これにより、当該インフレータ6のスタッドボルト7で車体への取り付けを可能とした車両用エアバッグ装置が示されている。
【0108】
インフレータ6は、重合部10のインフレータ挿通穴4を通じて、バッグ体8外部からバッグ体8内部へ挿入される。
【0109】
バッグ体8内部のインフレータ6は、そのスタッドボルト7が、重合部10のボルト挿通穴5を通じて、バッグ体8の内部からバッグ体8の外部へ突出される。
【0110】
本実施形態の車両用エアバッグ装置の例は、前述したようにリアサイドエアバッグ装置であって、
図7に示したように、車体の後輪のホイールハウス14に設置される。
【0111】
バッグ体8から突出されるスタッドボルト7は、ホイールハウス14にナットで締結され、バッグ体8は、スタッドボルト7を介して、インフレータ6と共にホイールハウス14に取付固定される。
【0112】
インフレータ6のスタッドボルト7は、
図6に示すように、(1)環状縫製部S1の内方、すなわち縫製部分がなく、かつ(2)少なくともバッグ基材1,1が2枚重ね(拡張部3a,3bとパネル部2a,2bで厚肉であり、さらに、(3)外形輪郭が同一形状である一対のパネル部2a,2bの縫製ライン(外周縫製部S4)に仮想される仮想直線X(
図4参照)上で、バッグ体8(エアバッグクッション)を車体に取付固定するようになっている。
【0113】
図示例では、インフレータ6のスタッドボルト7のいずれかは、インフレータ挿通穴4を通じて、バッグ体8内部から外部へ突出され、ホイールハウス14に締結される。
【0114】
リアサイドエアバッグ装置では、展開膨張するバッグ体8(エアバッグクッション)は、ホイールハウス14部位から車室内部へ向けて斜め上向きに展開膨張する。
【0115】
このバッグ体8は、リアシート15のシートクッション15aとリアドアトリム16との間の隙間Zを経て、展開膨張する。
【0116】
バッグ体8には、インフレータ6が設けられる重合部10と隣接する位置に、重合部10の位置よりもバッグ体8から外方へ、具体的にはインフレータ6と同じ側へ迫り出す形態のオーバーハング部13が備えられている。
【0117】
オーバーハング部13は、バッグ体8の展開膨張時に、膨張するバッグ体8の一部分が、インフレータ6の取り付け部分の長手方向に延びる仮想的な取り付けラインを超えて、取り付け側方向へ入り込んでしまうような部分のことをいう。
【0118】
オーバーハング部13は、バッグ体8の斜め上向きの展開膨張方向とは反対に、インフレータ6側へ下向きに膨らんでリアシートクッション15aとリアドアトリム16との間の隙間Zを塞ぎ、これによって、バッグ体8の支持作用を隙間Z位置で確保する。
【0119】
従って、リアシートクッション15側に支持部位がなくても、バッグ体8の姿勢が安定する。
【0120】
本実施形態に係る製造方法によって製造される車両用エアバッグ装置にあっては、(1)一対のパネル部2a,2bそれぞれに一体的に設けられ、これらパネル部2a,2bに重ねられる一対の拡張部3a,3bと、(2)これら拡張部3a,3b及びパネル部2a,2bを、インフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5双方を取り囲むように拡張部3a,3bの縁部9に沿う環状縫製部S1で接合することにより、パネル部2a,2bに部分的に形成される重合部10と、(3)重合部10の環状縫製部S1を避けて、一対のパネル部2a,2bの外周縁部11を接合することにより、中空のバッグ体8を成形する外周縫製部S4とを備えている。
【0121】
これにより、インフレータ6のスタッドボルト7を、縫製部S1,S4を避けて挿通することができる。
【0122】
従って、インフレータ6及びバッグ体8の車体への取り付けに際し、スタッドボルト7を的確かつ強固に締め付けることができる。
【0123】
よって、経年変化によりスタッドボルト7が弛んでしまうことを防止でき、エアバッグ装置に、設計通りの安定した乗員保護性能を発揮させることができる。
【0124】
しかも、スタッドボルト7のボルト挿通穴5は、拡張部3a,3bとパネル部2a,2bが2枚重ねされて、バッグ体8の強度を高めた重合部10に形成されている。
【0125】
この重合部10は、背景技術のような重ね合わせと縫製による錯綜部位ではなく、スタッドボルト7の締め付けに反発することはない。
【0126】
この重合部10は、却って、バッグ体8の車体への取付部位として、当該スタッドボルト7の締め付けやインフレータガスによるバッグ体8の膨張作用に対し、応力を分散することができて、優れた取付固定性を付与することができる。
【0127】
また、重合部10は、一対のパネル部2a,2bに一対の拡張部3a,3bを重ねて形成されるので、バッグ体8が展開膨張するとき、双方のパネル部2a,2bに対し、均等な応力を発生させることができる。これにより、バッグ体8がバーストしてしまうことを防止できる。
【0128】
外周縫製部S4は、各拡張部3a,3bの縁部9に達するように形成されるので、重合部10の環状縫製部S1との接合連続性を確保できる。これにより、バッグ体8に高い強度を確保することができる。
【0129】
重合部10には、インフレータ挿通穴4及びボルト挿通穴5を包囲して、互いに重ねられたパネル部2a,2bと拡張部3a,3bとを接合する包囲縫製部S2,S3が形成される。
【0130】
これにより、2枚重ねの拡張部3a,3bとパネル部2a,2bとの間から挿通穴4,5を通じて、バッグ体8外部へインフレータガスがリークすることを防止できる。
【0131】
バッグ体8には、拡張部3a,3bと隣接する位置に、オーバーハング部13が形成される。
【0132】
オーバーハング部13は、一対のパネル部2a,2bそれぞれから互いに向かい合わせで迫り出す形態で形成された迫り出し部12,12を外周縫製部S4で接合することにより形成される。
【0133】
オーバーハング部13は、インフレータ6側へ膨らんでインフレータ6周辺の隙間、例えばリアシートクッション15aとリアドアトリム16との間の隙間Zを塞ぐ。
【0134】
これによって、バッグ体8の支持作用を隙間Z位置で確保することができ、バッグ体8の姿勢を安定させて乗員保護性能を向上することができる。
【0135】
オーバーハング部13を有するバッグ体8(エアバッグクッション)では、インフレータ6を、パネル部2a,2bを接合する外周縫製部S4が通る位置に設けることは困難である。
【0136】
拡張部3a,3bを設定し、それらを重ね合わせることによって、オーバーハング部13を有する構造であっても、外周縫製部S4を確保でき、かつ、インフレータ6の取り付け部分の強度も十分に確保することができる。
【0137】
本発明は、車体に備えられるすべてのエアバッグ装置、例えば、車体のホイールハウス上のボディパネルに取り付けられるような後席用サイドエアバッグ、車両用シートの側部に設けられ、シートフレームの乗員側方向前方に向いているフレームの上に取り付けられるようなサイドエアバッグ、ウインドシールドの車体前方外側で歩行者保護を目的とする歩行者保護用エアバッグ、車両のルーフサイドレールに取り付けられるようなカーテンエアバッグなど、主に、シリンダ型のインフレータを用いる車両用エアバッグ装置に使用することが可能である。
【0138】
以上に述べた車両用エアバッグ装置及びその製造方法は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0139】
1,1 シート状バッグ基材
2a,2b 一対のパネル部
3a,3b 一対の拡張部
4 インフレータ挿通穴
5 ボルト挿通穴
6 インフレータ
7 スタッドボルト
8 バッグ体
9 拡張部の縁部
10 重合部
11 パネル部の外周縁部
12,12 迫り出し部
13 オーバーハング部
S1 環状縫製部
S2,S3 包囲縫製部
S4 外周縫製部
S4t 外周縫製部の縫製端部分