(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】周波数可変型超音波探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20231130BHJP
G01N 29/28 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/28
(21)【出願番号】P 2022536834
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2020018399
(87)【国際公開番号】W WO2021125767
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0169360
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イム,チュン‐ス
(72)【発明者】
【氏名】フォ,ヒョン‐ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン‐ジン
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-536164(JP,A)
【文献】特開2004-271351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
H04R 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向かって媒質を噴射して媒質柱を形成するノズル、及び
前記ノズルに配置されて超音波を発振する複数の探触子を含
み、
前記複数の探触子は、互いに異なる周波数を有する超音波を発振し、前記ノズルの側壁において互いに離隔して固定して設置されたことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
前記ノズルの内径dと探触子の探触面の幅w又は直径との間には、
[式1] d/2<w<d
の関係を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項3】
前記複数の探触子のうち選定された探触子の超音波が前記対象物に伝達されるように、前記ノズルにおいて前記複数の探触子の間に回転可能に設置された超音波反射板をさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の超音波探傷装置。
【請求項4】
前記超音波反射板は、超音波を反射することができ、媒質によって腐食しない材料で作製されたことを特徴とする請求項
3に記載の超音波探傷装置。
【請求項5】
前記超音波反射板は、前記ノズルの内部を横切って設置された回転軸に固定され、前記回転軸の一端には、前記ノズルの外部に設置されたモータが連結されたことを特徴とする請求項
3に記載の超音波探傷装置。
【請求項6】
前記対象物の厚さ情報を受信するメイン制御器、
前記メイン制御器から伝達された前記対象物の厚さ情報に基づいて前記複数の探触子のうち一つを選択する探触子用オン-オフ制御器、
前記第探触子用オン-オフ制御器の命令に従って選択的に当該探触子の超音波を発振させる第1パルサーレシーバと第2パルサーレシーバ、及び
前記メイン制御器から伝達された前記対象物の厚さ情報に応じて前記モータを作動させて前記超音波反射板の回転角度を制御する超音波反射板用の方向制御器をさらに含むことを特徴とする請求項
5に記載の超音波探傷装置。
【請求項7】
前記ノズルは一つの出側導波管で形成され、
前記出側導波管から分岐され、前記複数の探触子がそれぞれに分配された複数の入側導波管をさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の超音波探傷装置。
【請求項8】
前記複数の探触子は、それぞれ当該入側導波管の内部に設置され、
前記入側導波管に供給された媒質は、前記出側導波管を経て噴射されることを特徴とする請求項
7に記載の超音波探傷装置。
【請求項9】
導波管内の媒質における超音波速度V
1は、導波管の内壁における超音波速度V
2より小さく、
複数の入側導波管が一つの出側導波管と結合する部分において、前記入側導波管から前記出側導波管に進行する超音波の伝播方向と、前記出側導波管の内壁に垂直な方向との間の角度θが臨界角θcより大きく、
前記臨界角θcは
[式2]
で定義されることを特徴とする請求項
7に記載の超音波探傷装置。
【請求項10】
前記対象物の厚さ情報を受信するメイン制御器、
前記メイン制御器から伝達された前記対象物の厚さ情報に基づいて前記複数の探触子のうち一つを選択する探触子用オン-オフ制御器、及び
前記探触子用オン-オフ制御器の命令に従って選択的に当該探触子の超音波を発振させる第1パルサーレシーバと第2パルサーレシーバをさらに含むことを特徴とする請求項
7に記載の超音波探傷装置。
【請求項11】
前記ノズルから媒質を噴射して媒質柱を形成し、媒質柱から落下した媒質を回収して再び前記ノズルに循環させる媒質循環ユニットをさらに含むことを特徴とする請求項1から
10のいずれか一項に記載の超音波探傷装置。
【請求項12】
前記媒質循環ユニットは、
前記ノズルの外郭に設置され、媒質柱から落下した媒質を受けるようにした媒質受け、
前記媒質受けに連結された回収配管、
前記回収配管の媒質を前記ノズルに供給する供給配管、及び
前記回収配管と前記供給配管との間に設置されて前記ノズルに噴射圧を提供する循環ポンプを含むことを特徴とする請求項
11に記載の超音波探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数可変型超音波探傷装置に係り、より詳しくは、厚さに応じて周波数を自動的に変化させることにより、様々な厚さの対象物に対して内部欠陥を検出することができる周波数可変型超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄所の厚板工場では、生産済み製品の品質保証のために、製品の出荷前に訂正ラインにおいて超音波探傷を行っている。超音波探傷は、製品に超音波を送信して製品から反射された超音波を受信し、分析することにより、製品にクラック、介在物、偏析などの欠陥があるか否かを診断するものである。
このような超音波探傷時には、製品の表面と探触子(probe)間のギャップを水で満たして超音波を伝達する。探触子から発振された超音波エネルギーを製品に伝達するためには媒質物質が必要であり、水は超音波伝送効率に優れた代表的な媒質である。
【0003】
一方、製鉄所の厚板工場では、様々な厚さの厚板が製品として生産されている。超音波は、金属の内部を伝播しながら散乱又は吸収され、そのエネルギーが減少する。このようなエネルギーの減少の程度は、超音波の周波数と金属の種類及び組織に応じて異なる。
この超音波減衰を考慮し、超音波探傷の規格が定められており、例えば、板厚が80mm以下の製品に対しては、5MHzの周波数を有する超音波を発振し、板厚が80mmを超える製品に対しては、2MHzの周波数を有する超音波を発振する。
【0004】
このため、様々な厚さの全製品を探傷するためには、5MHzの超音波探傷器と2MHzの超音波探傷器を別々に備えて、厚さに応じて選択的に使用しなければならないという問題点がある。通常、製品の全幅探傷のための超音波探傷器は、数百個の超音波センサ及び信号処理アレイと欠陥判定のソフトウェアから構成され、非常に高価であるため、2台の探傷器を設置することは高いコストと多くの人材を必要とし、装置台数の増加に伴いメンテナンスのコストも増加する。関連する先行技術としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、厚さに応じて周波数を自動的に可変することにより、様々な厚さの対象物に対して内部欠陥を検出することができる周波数可変型超音波探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による超音波探傷装置は、対象物に向かって媒質を噴射して媒質柱を形成するノズル、及び上記ノズルに配置されて超音波を発振する複数の探触子を含むことを特徴とする。
【0008】
上記複数の探触子のうち選定された探触子の超音波が対象物に伝達されるように、上記ノズルにおいて上記複数の探触子の間に回転可能に設置された超音波反射板をさらに含むことを特徴とする。
上記ノズルは一つの出側導波管(waveguide)で形成され、上記出側導波管から分岐され、複数の探触子がそれぞれに分配された複数の入側導波管をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、一つの超音波探傷装置によって様々な厚さを有する全製品に対する内部欠陥の検出が可能となり、超音波探傷装置の設置及び運営コストと人材が大幅に削減することができる。
さらに、本発明によると、一つの超音波探傷装置により全製品を探傷可能になることにより、複数の超音波探傷器で運営する場合に比べて製品の内部欠陥をより効率的に統合管理することができ、製品の品質及び生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施例による超音波探傷装置を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第1実施例による超音波探傷装置の要部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施例による超音波探傷装置の制御プロセスを説明するための図である。
【
図4】本発明の第2実施例による超音波探傷装置の要部を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2実施例による超音波探傷装置の制御プロセスを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。各図面の構成要素に符号を付記するにあたり、同一の構成要素については、別の図面上に示されていても可能な限り同一の符号を付した。また、本発明の説明において、関連する公知の構成又は機能に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明は省略した。
【0012】
図1は、本発明の第1実施例による超音波探傷装置を概略的に示す図であり、
図2は、本発明の第1実施例による超音波探傷装置の要部を示す斜視図であり、
図3は、本発明の第1実施例による超音波探傷装置の制御プロセスを説明するための図である。これらの図面に示したとおり、本発明の第1実施例による超音波探傷装置は、ノズル10と複数の探触子20、21、22とを含む。
ノズル10は、移送手段、例えば、ガイドロール3によって移送される厚い鋼板などのような対象物1の下側に設置され、この対象物に向かって媒質2(例えば、水)を噴射して媒質柱4(例えば、水柱)を形成することができる。このようなノズル10は、対象物1の下面に密着した安定した媒質柱4を形成させる必要があり、そのためにノズルの内径が制限される。
【0013】
ノズル10の内径が増加すると、媒質柱4の体積と質量が増加し、媒質柱の高さが急激に減少する。また、媒質柱の内部に脈動が形成されるため、安定的な超音波の伝達が難しくなる。これに対し、ノズル10の内径が小さすぎる場合には、探傷面積が小さくなり、流速が増加するとともに、媒質2の流れが不安定になるため、これも安定的な超音波の伝達が不可能である。
したがって、ノズル10の内径dと探触面の幅w又は直径の間には、以下の式1の関係を満たす必要があり、このときに最も安定的な超音波探傷が可能となる。ここで、探触面とは、探触子20において実質的に超音波が発振される表面を意味する。
[式1]
d/2<w<d
【0014】
本発明の第1実施例による超音波探傷装置では、探触面の幅w又は直径に対して式(1)の相関関係の内径dを有する一つのノズル10を用いて周波数の切り替えが可能となったことを特徴とする。
媒質柱4は、ノズル10の出口から数十ミリメートル(mm)の高さに形成されることがよく、このような媒質柱を介して超音波の送受信が可能となる。超音波伝送効率に優れた媒質として水が使用されるため、媒質柱は水柱からなる。
【0015】
本発明の第1実施例による超音波探傷装置は、ノズル10で媒質2を噴射して媒質柱4を形成するとともに、媒質柱から落下した媒質を回収し、これを再びノズルに循環させるための媒質循環ユニット30をさらに含む。このような媒質循環ユニット30は、媒質受け31、回収配管32、及び供給配管33を含む。媒質受け31は、ノズル10の外郭に設置され、媒質柱4から落下した媒質2を受けるように構成される。この媒質受けは、ノズルを囲む筒状又は箱状に形成されることがよい。
回収配管32は、媒質受け31に連結され、媒質受け内の媒質2を回収するように構成される。媒質柱4から落下して媒質受けに集まった媒質は回収配管に供給される。回収配管32には、媒質受け31から排出された媒質2を濾過するためのフィルタ34が設置され、これにより不純物が除去された媒質をノズル10に再供給するようになる。
【0016】
供給配管33は、回収配管32の媒質2をノズル10に供給するためのものであって、ノズル10と回収配管32とにそれぞれ連通することができる。回収配管32と供給配管33との間には、ノズル10に噴射圧を提供する循環ポンプ35が設置される。この循環ポンプによって提供される圧力に応じて、ノズルが一定の圧力で媒質2を噴射し、媒質柱4が形成される。循環ポンプを制御することにより、ノズルの噴射圧を制御することができる。
複数の探触子20はノズル10に配置されて超音波を発振する。具体的に、複数の探触子20は、ノズル10の側壁において互いに離隔してそれぞれ固定され設置され、媒質柱4を介して対象物1の内部欠陥を検出するための超音波を送受信する。
図1~
図3には、2つの探触子21、22がノズルに対して互いに対称に装着された例を示した。
【0017】
複数の探触子20は、互いに異なる周波数を有する超音波を発振する。例えば、一側探触子21は、5MHzの周波数を有する超音波を発振し、他側探触子22は、2MHzの周波数を有する超音波を発振する。それぞれの探触子20は、対象物1から返信された超音波信号を処理及び演算して対象物の内部欠陥の有無を分析する欠陥検出部(図示せず)に有線又は無線通信を介して連結することができる。
さらに、本発明の第1実施例による超音波探傷装置は、複数の探触子20のうち選定された探触子の超音波が対象物1に伝達されるように、ノズルにおいて複数の探触子の間に回転可能に設置された超音波反射板11を含む。このような超音波反射板11は、例えば、ステンレス鋼、黄銅などのような金属材料で作製することができ、これにより、超音波を円滑に反射させることができ、また、水のような媒質2によって腐食されない。
【0018】
超音波反射板11は、ノズル10の内部を横切って設置された回転軸12に固定され、この回転軸はノズル10の側壁を貫通して外部に露出されることができる。回転軸の一端には、ノズルの外部に設置されたモータ13が連結され、超音波反射板の回転角度が制御される。
このように、モータ13によって回転角度が制御されることにより、超音波反射板11は、両側探触子20から発振された超音波を選択的に対象物1に向かって伝達することが可能となる。
【0019】
図3に示した発明の第1実施例による超音波探傷装置における超音波の周波数を自動的に切り替える制御プロセスについて説明する。例えば、製鉄所の厚板工場の訂正ラインにおいて、超音波探傷の対象物1である製品がガイドロール3によって超音波探傷装置に移送されると、対象物が超音波探傷装置に進入する前に、工場操業システムを構成するメイン制御器40は、対象物の厚さ情報を受信する。
メイン制御器40は、受信された厚さ情報を探触子用オン-オフ制御器41に伝送する。探触子用オン-オフ制御器41は、その内部プログラムに従って超音波探傷が行われる対象物1の厚さ情報に基づいて複数の探触子20のうち一つを選択する。
【0020】
対象物1の厚さが、例えば80mm以下である場合には、5MHzの周波数を有する超音波を発振させる一側探触子21に該当する第1パルサーレシーバ43に命令を伝達して作動させ、他側探触子22の第2パルサーレシーバ44はその作動を中止させる。
逆に、対象物1の厚さが、例えば80mmを超える場合には、2MHzの周波数を有する超音波を発振させる他側探触子22に該当する第2パルサーレシーバ44に命令を伝達して作動させ、第1パルサーレシーバ43の作動を中止させる。また、メイン制御器40は、受信された厚さ情報を超音波反射板用の方向制御器42に伝送する。
【0021】
超音波反射板用の方向制御器42は、伝送された厚さ情報に応じてモータ13を作動させることにより超音波反射板の回転角度を制御し、その傾斜方向を切り替える。言い換えれば、対象物1の厚さが、例えば80mm以下である場合には、一側探触子21から発振された5MHzの周波数を有する超音波がノズル10の出口及び対象物の下面に向かって反射されるように超音波反射板11の傾斜角度を変換させる。
一方、対象物1の厚さが、例えば80mmを超える場合には、他側探触子22から発振された2MHzの周波数を有する超音波がノズル10の出口及び対象物の下面に向かって反射されるように超音波反射板11の傾斜角度を変換させる。
【0022】
本発明の第1実施例による超音波探傷装置は、ノズル10に互いに異なる周波数を有する超音波を発振する複数の探触子20を対称の位置に装着し、対象物1の厚さに応じて選定された周波数の超音波が対象物に伝達されるように、探触子の間に位置する超音波反射板11の回転角度を制御することにより、対象物の厚さに応じて超音波の周波数を自動的に切り替えることができる。したがって、本発明の第1実施例による超音波探傷装置では、超音波の周波数を容易に切り替えるとともに、超音波を安定して送受信できるようになる。
【0023】
図4は、本発明の第2実施例による超音波探傷装置の要部を示す断面図であり、
図5は、本発明の第2実施例による超音波探傷装置の制御プロセスを説明するための図である。
図4及び
図5に示した第2実施例は、超音波反射板及びモータのない点、ノズルの形態と探触子の配置関係のみが異なり、残りの構成要素は上記の
図1~3に示した第1実施例の構成要素と同様である。そこで、本発明の第2実施例による超音波探傷装置を説明するにあたり、第1実施例による超音波探傷装置と同一の構成要素については同一の符号を付し、その構成及び機能の詳細な説明を省略する。
【0024】
本発明の第2実施例による超音波探傷装置は、ノズル10が一つの出側導波管15で形成され、この出側導波管から分岐され、複数の探触子20がそれぞれに分配された複数の入側導波管14をさらに含む。複数の探触子20はそれぞれ当該入側導波管14の内部に設置され、媒質柱4を介して対象物1の内部欠陥を検出するための超音波を送受信する。
上記の第1実施例と同様に、これらの探触子20は、互いに異なる周波数を有する超音波を発振する。例えば、一側探触子21は、5MHzの周波数を有する超音波を発振することができ、他側探触子22は、2MHzの周波数を有する超音波を発振することができる。このようなそれぞれの探触子20は、対象物1から返信された超音波信号を、処理及び演算して対象物の内部欠陥の有無を分析する欠陥検出部(図示せず)に有線又は無線通信を介して連結することができる。
【0025】
各入側導波管14内の探触子20から発振された超音波は出側導波管15を経てノズル10の外に伝播するようになる。媒質2も分岐した供給配管(図示せず)を介して入側導波管14に供給された後、出側導波管15を経て共通の経路を介してノズル10の外に噴射される。好ましくは、入側導波管14に流入した超音波が出側導波管15において損失なく伝播されるように、超音波と導波管の内壁(internal interface)との間において全反射条件を満たす必要がある。すなわち、導波管内での超音波エネルギーの損失が最小化しなければならない。このために、以下の式2のように、導波管内の媒質における超音波速度V1は、導波管の内壁における超音波速度V2より小さい必要がある。
[式2]
V1<V2
式2は、導波管の内部に水のような媒質2が満たされており、入側導波管14及び出側導波管15が金属材料で作製された場合に満たすことができる。
また、複数の入側導波管14が一つの出側導波管15と結合する部分において曲面又は折曲げ面が形成されるため、超音波と導波管の内壁との間の角度に変化が生じる。
【0026】
このように角度が変化する部分、すなわち、複数の入側導波管14が一つの出側導波管15と結合する部分において、入側導波管から出側導波管に進行する超音波の伝播方向と、出側導波管の内壁に垂直な方向との間の角度(入射角)θが臨界角θcよりも大きくなるように、入側導波管及び出側導波管が設計されると、超音波は損失なく出側導波管を介して伝達されることができる。言い換えれば、以下の式3のように、臨界角θcより大きい角度θで超音波が導波管の内壁に入射すると、全反射が起こるようになる。
[式3]
θc<θ
【0027】
ここで、臨界角は、下記の式4のように表すことができる。
「式4]
したがって、本発明の第2実施例による超音波探傷装置は、ノズル10を構成する一つの出側導波管15と複数の入側導波管14とを、上記の式2及び3を満たす条件で設計し、複数の探触子20が互いに異なる周波数を有する超音波を選択的に発振すると、様々な厚さの対象物1に対する超音波探傷が可能となる。
【0028】
図5を参照して第2実施例による超音波探傷装置における超音波の周波数を自動的に切り替える制御プロセスについて説明する。例えば、製鉄所の厚板工場の訂正ラインにおいて、超音波探傷の対象物1である製品がガイドロール3によって超音波探傷装置に移送される。対象物が超音波探傷装置に進入する前に、工場操業システムを構成するメイン制御器40は、対象物の厚さ情報を受信する。メイン制御器40は、受信された厚さ情報を探触子用オン-オフ制御器41に伝送する。
【0029】
探触子用オン-オフ制御器41は、その内部プログラムに従って超音波探傷が行われる対象物1の厚さ情報に基づいて複数の探触子20のうち一つを選択する。対象物1の厚さが、例えば80mm以下である場合には、5MHzの周波数を有する超音波を発振させる一側探触子21に該当する第1パルサーレシーバ43に命令を伝達して作動させ、他側探触子22の第2パルサーレシーバ44はその作動を中止させる。
逆に、対象物1の厚さが、例えば80mmを超える場合には、2MHzの周波数を有する超音波を発振させる他側探触子22に該当する第2パルサーレシーバ44に命令を伝達して作動させ、第1パルサーレシーバ43の作動を中止させる。
【0030】
本発明の第2実施例による超音波探傷装置は、ノズル10の複数の入側導波管14に、互いに異なる周波数を有する超音波を発振する探触子20をそれぞれ装着し、対象物1の厚さに応じて選定された周波数の超音波が出側導波管15を経て対象物に伝達されるように、探触子20の作動を選択的に制御する。これにより、対象物の厚さに応じて超音波の周波数を自動的に切り替えることができる。したがって、本発明の第2実施例による超音波探傷装置では、超音波の周波数を容易に切り替えるとともに、超音波を安定して送受信することができる。
以上のように本発明によると、対象物の厚さに応じて超音波の周波数を自動的に選定した後、当該超音波をノズルを介して対象物の下面に伝達させることにより、一つの超音波探傷装置を介して様々な厚さを有する対象物の内部欠陥を検出することができる。
【0031】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内で様々な修正及び変形が可能である。本明細書及び図面に開示された実施例は、本発明の技術思想を説明するためのものであり、この実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は下記の特許請求の範囲によって決定され、さらに、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のとおり、本発明は、例えば、製鉄所の厚板工場で生産した製品に対して実施する超音波探傷の装置として好ましく利用できる。
【符号の説明】
【0033】
1:対象物
2:媒質(水)
3:ガイドロール
4:媒質柱
10:ノズル
11:超音波反射板
12:回転軸
13:モータ
14:入側導波管
15:出側導波管
20、21、22:探触子
30:媒質循環ユニット
31:媒質受け
32:回収配管
33:供給配管
34:フィルタ
35:循環ポンプ
40:メイン制御器
41:探触子用オン-オフ制御器
42:方向制御器
43:第1パルサーレシーバ
44:第2パルサーレシーバ