(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】水の電気分解によって高純度水素及び/又は酸素を調製するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20231130BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20231130BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20231130BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20231130BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/67
C02F1/20 A
(21)【出願番号】P 2022538303
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2020137965
(87)【国際公開番号】W WO2021129566
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】201911355604.7
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ブリグリア、アラン
(72)【発明者】
【氏名】デイ、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ワキム、マイケル
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106283101(CN,A)
【文献】特開平05-287570(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174281(WO,A1)
【文献】特開平02-222763(JP,A)
【文献】特開2013-173995(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049265(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 9/67
C02F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の電気分解によって高純度水素及び/又は酸素を調製するための装置において、順次接続されている、脱塩水処理システムと、任意選択的に脱塩水貯蔵タンクと、脱ガス器給水ポンプと、脱塩脱ガス水熱交換器と、脱塩水を脱ガスするための脱ガス器と、電気分解器給水ポンプと、電気分解器と
、を含
み、
前記電気分解器は、アルカリ電気分解器であり、且つ電解セルと、アノードアルカリ液分離器と、カソードアルカリ液分離器と、アルカリ液熱交換器と、アルカリ液冷却器と、を含み、
前記アルカリ液熱交換器を通して流れる熱アルカリ液再循環ストリームは、熱を前記脱ガス器に供給し、
前記脱ガス器から排出された熱脱塩脱ガス水は、熱媒体として脱塩脱ガス水熱交換器に入り、熱交換を介して冷却された後、冷脱塩脱ガス水になり、
前記冷脱塩脱ガス水は、電気分解器給水ポンプによって加圧されて、前記アノードアルカリ液分離器及び前記カソードアルカリ液分離器に個別に送入されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記脱塩水は、前記脱ガス器によって脱ガスされた後、重量割合で10ppb未満のアルゴン含有率を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
生成された前記高純度水素及び/又は酸素は、重量割合で5ppb未満のアルゴン含有率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記電気分解器で生成された前記
高純度水素及び/又は酸素のさらなる精製のための機器をさらに含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置を用いて、水の電気分解によって
前記高純度水素及び/又は酸素を調製するための方法において
、
a)
前記脱ガス器給水ポンプで前記脱塩水を加圧し、加圧された前記脱塩水を、冷脱塩
入力水として前記脱塩脱ガス水熱交換器に送入し、熱脱塩出力水を得る工程と、
b)
前記熱脱塩出力水を前記脱ガス器で脱ガスし、前記熱脱塩脱ガス水を得る工程であって、前記熱脱塩脱ガス水は、熱媒体として前記脱塩脱ガス水熱交換器に入り、熱交換を介して冷却された後、前記冷脱塩脱ガス水になる、工程と、
c)電気分解器給水ポンプで前記
冷脱塩脱ガス水を加圧して、電気分解器給水を得るとともに、
電気分解器給水を
前記アノードアルカリ液分離器及び
前記カソードアルカリ液分離器に個別に送入する工程であって、前記分離器中のアルカリ液の
一部は、
前記熱アルカリ液再循環ストリームとして
排出され、前記アルカリ液熱交換器を通して前記脱ガス器に熱を供給し、その後、前記アルカリ液冷却器で冷却され、且つ次いでDC電源と導通する
前記電解セルに送入される、工程と、
d)前記アノードアルカリ液分離器で分離除去されたO
2
及び前記カソードアルカリ液分離器で分離除去されたH
2
をさらに精製して、生成物を得る工程と
、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度ガスの調製、特に高純度水素及び/又は酸素の調製の分野に属し、且つ水の電気分解によって高純度水素及び酸素を製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
業界には、水蒸気メタン改質及びメタノール改質を含む化学的水素製造方法及び水の電気分解によって水素を製造するための電気的方法など、水素を調製するための多くの方法が存在する。水素及び酸素を製造するための水の電気分解の基本原理は、直流電力によって水をガス状水素及び酸素に変換することである。操作温度に基づいて、電気分解器は、主に低温電気分解器及び高温電気分解器に分けられ、低温電気分解器は、アルカリ電気分解器及びプロトン交換膜電気分解器をさらに含む。これらは、商業的に使用される成熟技術になっている。
【0003】
半導体産業では、大量の高純度ガスが必要とされる。この場合、高純度とは、必要とされるガスの不純物含有率が数ppb未満であることを意味する。不純物を単離して生成物ガスを精製するための従来の方法は、様々な温度及び圧力条件下での吸着及び極低温精留分離を含む。しかしながら、上記の方法は、水素及び酸素生成物中のアルゴンの単離にあまり有効でない。
【0004】
半導体工場で高純度酸素及び高純度水素の両方が必要とされる場合、水素及び酸素を製造するための水の電気分解は、特に好適な方法になる。先行技術で注目されてきた不純物は、主に各種の有機物質、塩イオン、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、炭化水素及び水蒸気である。米国特許第5,484,512号明細書は、電気分解器に純水を提供することと、発生した酸素及び水素をそれぞれの精製器に通すことと、冷却、吸収、吸着などによってそれらをさらに精製することとを含む、高純度酸素及び高純度水素を提供するための方法及び装置を開示している。純水は、脱塩水を用いることによって又は脱塩水を脱ガス膜に通して窒素を除去することによって調製される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
先行技術では、水の電気分解によって生成された水素及び酸素中の不純物としてアルゴンの存在が注目されていないため、アルゴンの含有率を低減するための明確な方法又は概念が提供されていない。先行技術の方法によって調製された水素及び酸素は、一般に、70~100ppbの重量比でアルゴンを含有する。ガス生成物中のアルゴンの含有率を数ppb未満まで低減するために、本発明は、水の電気分解によって高純度水素及び/又は酸素を調製するための装置であって、電気分解器と、電気分解器の上流に位置する、脱塩水を脱ガスするための脱ガス器とを含む装置を開示する。
【0006】
さらに、本発明は、脱ガス器の上流に位置する脱塩水処理システムを含む。本発明の電気分解器は、アルカリ電気分解器を含み、及び脱ガス器は、アルカリ液熱交換器を通過する熱アルカリ液再循環ストリームによって加熱される。
【0007】
他の態様では、本発明は、水の電気分解によって高純度水素及び/又は酸素を調製するための装置であって、順次接続されている、脱塩水処理システムと、任意選択的に脱塩水貯蔵タンクと、脱ガス器給水ポンプと、脱塩脱ガス水熱交換器と、脱塩水を脱ガスするための脱ガス器と、電気分解器給水ポンプと、電気分解器とを含む装置を開示する。電気分解器は、アルカリ電気分解器であり、且つ電解セルと、アノードアルカリ液分離器と、カソードアルカリ液分離器と、アルカリ液冷却器とを含む。電気分解器は、アルカリ液熱交換器をさらに含み得、及びそれを通して流れる熱アルカリ液再循環ストリームは、必要とされる熱を脱ガス器に供給する。
【0008】
本発明では、脱塩水は、脱ガス器によって脱ガスされた後、10ppb未満(重量割合で)のアルゴン含有率を有し、生成された高純度水素及び/又は酸素は、5ppb未満(重量割合で)のアルゴン含有率を有する。
【0009】
本発明では、電気分解器のアノードによって発生されたO2及びカソードによって発生されたH2は、さらに精製され得る。
【0010】
他の態様では、本発明は、水の電気分解によって高純度水素及び/又は酸素を調製するための方法であって、脱ガス器で脱塩水を脱ガスして、10ppb未満のアルゴン含有率を有する電気分解器給水を得る工程を含む方法を開示する。
【0011】
他の態様では、本発明に開示される方法は、具体的には、以下の工程:
a)脱ガス器で脱塩水を脱ガスして、脱塩脱ガス水を得る工程と、
b)電気分解器給水ポンプで脱塩脱ガス水を加圧して、電気分解器給水を得るとともに、これをアノードアルカリ液分離器及びカソードアルカリ液分離器に送入する工程であって、分離器中のアルカリ液の部分は、熱アルカリ液再循環ストリームとしてアルカリ液冷却器で冷却され、且つ次いでDC電源と導通する電解セルに送入される、工程と、
c)アノードアルカリ液分離器で分離除去されたO2及びカソードアルカリ液分離器で分離除去されたH2をさらに精製して、生成物を得る工程と
を含む。
【0012】
先行技術と比較して、本発明で提供される技術的解決策は、以下の利点を有する:単純で低コストの脱ガス器を用いて、電気分解器給水中のアルゴンなどの各種のガスの含有率を低減することにより、電解から生じるO2及びH2生成物中のこれらの不純物の含有率が低減される。
【0013】
アルカリ液熱交換器を通過する熱アルカリ液再循環ストリームは、脱ガス器を加熱するために使用されるため、さらなるエネルギー節約をもたらす。
【0014】
電気分解器の給水中のガス不純物は、事前に除去されているため、電解後に2つの電極で得られるガスは、より少ないタイプの不純物を含有し、したがって、後続の精製プロセスは、より単純であり、精製機器は、より安価である。
【0015】
以下の本発明の詳細な説明及び添付の図面により、本発明の利点及び趣旨のさらなる理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明によって提供される、水の電気分解によって高純度水素及び/又は酸素を調製するための装置の構造の概略図であり、点A及び点Bが直接接続され、且つ点C及び点Dが直接接続されると、先行技術の構成が記載される。
【
図2】本発明のある実施形態の概略構造図であり、この場合、電気分解器給水を加熱及び脱ガスするための脱ガス器は、点Aと点Bとの間に配置される。
【
図3】本発明の他の一実施形態の概略構造図であり、この場合、アルカリ液熱交換器は、熱アルカリ液再循環ストリームの熱を脱ガス器に移動するために点Cと点Dとの間に配置される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図では、100 - 電気分解器、1 - アルカリ電解セル、2 - アノードアルカリ液分離器、3 - カソードアルカリ液分離器、4 - アルカリ液冷却器、5 - アルカリ液ポンプ、6 - 脱塩水処理システム、7 - 脱塩水貯蔵タンク、8 - 電気分解器給水ポンプ、10 - 熱アルカリ液再循環ストリーム、11 - 冷アルカリ液再循環ストリーム、12 - アルカリ液酸素混合ストリーム、13 - アルカリ液水素混合ストリーム、14 - 水素、15 - 酸素、20 - 原水、21 - 脱塩水、22 - 電気分解器給水、30 - 冷却水、50 - 脱ガス器給水ポンプ、51 - 脱塩脱ガス水熱交換器、52 - 脱ガス器、53 - 加熱器、60 - 冷脱塩入力水、61 - 熱脱塩出力水、62 - ガス排出パイプライン、63 - 熱脱塩脱ガス水、64 - 冷脱塩脱ガス水、70 - アルカリ液熱交換器、71 - 真空ポンプである。
【0018】
本発明の具体的な実施形態は、添付の図面と関連して以下に詳細に説明される。しかしながら、本発明は、以下に記載のものなどの実施形態に限定されないことが理解されるべきであり、本発明の技術的概念は、他の周知の技術又はそうした周知の技術と同一の機能を有する他の技術との組合せで実現され得る。
【0019】
以下の特定の実施形態の説明では、本発明の構造及び操作方式を明確に実証するために、多くの方向語が説明に使用されるが、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「外側」、「内側」、「外向き」、「内向き」、「軸方向」、「半径方向」などの語は、規定語というよりもむしろ便宜的な用語であると理解されるべきである。
【0020】
以下の特定の実施形態の説明では、「長さ」、「幅」、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「内側」、「外側」などの用語によって指示される配向又は位置の関係は、図面に示される配向又は位置の関係に基づくものであり、参照される装置又は要素が具体的な配向を有しなければならないか、又は具体的な配向で構築若しくは操作されなければならないことを示唆することも暗示することもなく、本発明の説明を単に容易且つ単純にすることを意図されるにすぎないと理解されなければならず、したがって本発明を限定するものと理解されるべきではない。
【0021】
「上流」及び「下流」という用語は、いくつかの工程、装置又はいくつかの装置部間の相対位置関係を示唆する。本発明では、最初に実施される工程又はプロセスフローに従って最初に使用される装置は、後続の工程又は装置の上流に位置する。
【0022】
本発明では、特に特定又は定義が明確になされない限り、「設置される」、「一緒に接続される」、「接続される」、「固定される」などの用語は、広義に理解されるべきであり、例えば固定的に接続されることを意味し得るが、除去可能に接続されるか若しくはシングルピースを形成することも意味し得、機械接続されることを意味し得るが、電気接続されることも意味し得、一緒に直接接続されることを意味し得るが、中間媒体を介して間接接続されることも意味し得、2つの要素間の内部連通又は2つの要素間の相互作用関係を意味し得る。当業者であれば、具体的な状況に応じて本発明での上記の用語の具体的な意味を理解することができる。
【0023】
特に明確な指示がない限り、本明細書に規定される各態様又は実施形態は、いずれかの他の態様又は実施形態と組み合わされ得る。特に、指示されたいずれかの好ましい又は有利な特徴は、指示されたいずれかの他の好ましい又は有利な特徴と組み合わされ得る。
【0024】
電気分解器は、DC電源に接続された装置であり、水を電気分解してO2及びH2を生成する。アルカリ電気分解器、酸電気分解器及びプロトン交換膜電気分解器を含む各種の電気分解器が本発明での使用に好適である。アルカリ電気分解器を例に取ると、10%~30%KOH水性溶液が電解質として使用され、以下の反応:
アノードにおいて:4OH-→O2+2H2O+4e-、
カソードにおいて:4H2O+4e-→4OH-+2H2、
全反応:2H2O→2H2+O2
が発生する。
【0025】
構造的視点から見て、アルカリ電気分解器は、電極が挿入された電解セルを含み、2つの電極の近くで発生したガスは、パイプラインを介してカソードアルカリ液分離器及びアノードアルカリ液分離器に個別に送入される。H2及びO2は、個別に分離器の頂端から出て、次の精製工程に入り、新鮮な電気分解器給水は、個別に2つの分離器に添加され、分離器の底部から出て、アルカリ液冷却器によって冷却され、次いで流動して電解セルに戻る。
【0026】
電気分解器給水は、電気分解器に送入される補充のための水である。先行技術では、脱塩水が一般に使用され、本発明では、脱塩水は、電気分解器給水を得るために脱ガス器でさらに脱ガスされる。
【0027】
脱塩水処理システムは、上水などの原水中の強電解質及び/又はいくらかの弱電解質を除去することができるシステムである。一般に、蒸留、イオン交換、電気透析などの1つが使用されるか、又はかかる方法の2つ以上の組合せが使用される。半導体産業に好適な脱塩水は、好ましくは、18MΩ・cm(25℃)以上の抵抗を有する。
【0028】
脱ガス器の作動原理は、水温が増加して飽和温度に接近するにつれて、水へのガスの溶解性が減少するという事実に基づく。脱ガス器の構造は、多くの形態を取り得、より一般的な形態の1つは、複数のプレートがカラムに含有されたカラム様構造である。脱ガスされるストリームは、カラムの頂部から下方にスプレーされ、洗浄水は、飽和温度に加熱されてその底部からカラムに供給される。スプレー処理及びプレートの配置により、脱ガスされるストリームと洗浄水との間の接触面積を増加させて、脱ガスの効率を増加させることができる。脱ガスされるストリームは、洗浄水との接触及び熱交換を介して飽和温度に達し、それに溶解されたガスは、放出されて、ガス排出ポートを介して脱ガス器から排出され、脱ガスストリームは、カラムの底部に集められて出力される。脱ガス器は、O2、N2、CO2、Arなどを含む、水に溶解されたガスのほとんどを効果的に除去して、数ppbのレベルまでそれらの含有率を低減することができる。
【0029】
本発明の特定の実施形態は、
図1~3と関連して以下に詳細に説明される。
【0030】
図1は、本発明によって提供される、水の電気分解によって高純度水素及び/又は酸素を調製するための装置の構造の概略図であり、それは、電気分解器100と、原水を処理して電気分解器給水を発生させるための上流デバイスとを含む。点A及び点Bが直接接続され、且つ点C及び点Dが直接接続されると、既存の技術が記載される。この既存の技術では、原水20は、脱塩水21を生成するために脱塩水処理システム6によって脱塩される。任意選択的に、脱塩水21は、脱塩水貯蔵タンク7に送入されるか、又は電気分解器給水ポンプ8によって直接加圧されて電気分解器給水22になる。電気分解器給水22は、アノードアルカリ液分離器2及びカソードアルカリ液分離器3に個別に送入される。アノードアルカリ液分離器2及びカソードアルカリ液分離器3は、それぞれ電解セル1からアルカリ液酸素混合ストリーム12及びアルカリ液水素混合ストリーム13を受け取る。各分離器では、アルカリ液とガスとの混合物は、混合物からガスを分離するために加熱される。酸素15は、アノードアルカリ液分離器の頂部から排出され、それに対応して、水素14は、カソードアルカリ液分離器の頂部から排出される。2つの分離器中のアルカリ液の一部は、分離器の底部から排出され、集められて熱アルカリ液再循環ストリーム10を形成し、これは、アルカリ液ポンプ5によって加圧された後、アルカリ液冷却器4中の冷却水30によって冷却されて、ほぼ室温で冷アルカリ液再循環ストリーム11を形成し、これは、次いで、電解セル1に送入される。
【0031】
図2は、本発明の実施形態を描写し、これは、点Aと点Bとの間に脱ガス関連機器が追加されている点において、
図1に示される既存の技術と異なる。具体的には、脱ガス器給水ポンプ50によって加圧された後、脱塩水21は、冷脱塩入力水60として脱塩脱ガス水熱交換器51に送入され、熱脱塩出力水61が得られるように加熱され、そのストリーム61は、脱ガス器52にその頂部を介して入る。脱ガス器52は、加熱器53を有し、脱ガスから生じた熱脱塩脱ガス水63は、脱ガス器52の底部から排出され、及び放出ガスは、ガス排出パイプライン62を介して頂部から排出される。熱脱塩脱ガス水63は、熱媒体として脱塩脱ガス水熱交換器51に入り、熱交換を介して冷却された後、冷脱塩脱ガス水64になる。ストリーム64は、電気分解器給水ポンプ8によって加圧されて電気分解器給水22になり、後続のプロセスフローを継続する。
【0032】
図2の電気分解器給水22は、脱塩及び脱ガス後、塩を含有せず、且つ極めて少量のガス(重量基準で数ppb未満)を含有するにすぎないため、それに対応して、電解セルで生成されるO2及びH2中の不純物の組成は、単純であり(アルゴンの含有率は、5ppb未満であり、及び二酸化炭素の含有率は、ほぼ0である)、したがってさらなる精製工程が単純化される。例えば、2つの電極で放出されるガス生成物は、それぞれ少量の他のガスを含有し、それは、触媒反応を介して水に変換され得、その場合、ガス生成物中の主な副生成物は、水である。水は、液体窒素を利用して凝縮及び単離され得、最終的にモレキュラーシーブなどの吸着剤を用いて吸着によって残留水を除去することができる。
【0033】
図3は、本発明の他の一実施形態を描写する。
図2に基づいて、すなわち点Aと点Bとの間に脱ガス関連機器が追加されて、点Cと点Dとの間にアルカリ液熱交換器70が接続される。アルカリ液ポンプ5によって加圧された後、2つのアルカリ液分離器から集められて形成された熱アルカリ液再循環ストリーム10は、アルカリ液熱交換器70に送入される。アルカリ液熱交換器70の一端は、脱ガス器52内に延在し、熱アルカリ液再循環ストリーム10からの熱を使用して脱ガス器の底部で洗浄水を加熱し、熱交換を受けた後、熱アルカリ液再循環ストリーム10は、さらなる冷却のためにアルカリ液冷却器4を通過し、次いで流動して電解セル1内に戻る。脱ガス器を加熱するために熱アルカリ液再循環ストリームのエネルギーを使用することにより、外部エネルギーの需要が低減され、エネルギー利用効率が改善される。
【0034】
特に明記されない限り、本明細書に現れる「第1」及び「第2」に類似した限定語は、時系列、量又は重要性の規定を示唆するものではなく、この技術的解決策での1つの技術的特徴を他の技術的特徴から単に区別することが意図されるにすぎない。同様に、本明細書に現れる「1つの(a)」に類似した限定語は、量の規定を示唆するものではなく、先行する文章に現れない技術的特徴を記述する。同様に、本明細書で数字の前に現れる「約」及び「およそ」に類似した修飾語は、一般的に、その数自体を含み、その具体的な意味は、文脈の意味と関連して理解されるべきである。同様に、特に具体的な量の尺度語によって修飾されない限り、本明細書の名詞は、単数形及び複数形の両方を含むものとみなされるべきである。すなわち、技術的解決策は、技術的特徴の1つのみを含み得るが、複数の技術的特徴も含み得る。
【0035】
上記は、単に本発明の好ましい特定の実施形態であるにすぎず、これらは、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的解決策を単に例示することが意図されるにすぎない。論理的分析、推論又は限定的な実験により、本発明の概念に従って当業者が得ることができる技術的解決策は、すべて本発明の範囲内に含まれるべきである。
【0036】
上記の好ましい実施形態によって本発明の内容を詳細に説明してきたが、上記の説明は、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことが理解されるべきである。当業者であれば、上記の内容を熟読した後、本発明に対する各種の補正形態及び置換形態が明らかになるであろう。そのため、本発明の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるべきである。