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特許7394236水中モノスタティックレーザイメージング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】水中モノスタティックレーザイメージング
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20231130BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20231130BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/89
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022552434
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021020791
(87)【国際公開番号】W WO2021178615
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】62/986,162
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】トーレン,マシュー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】パイパー,アンドリュー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ラッドゼロヴェイジ,ウィリアム シー.
(72)【発明者】
【氏名】レガン,リチャード エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ディマーレ,ジョセフ シー.
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-215390(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192805(WO,A1)
【文献】特開2002-131430(JP,A)
【文献】特表2016-521360(JP,A)
【文献】特開平07-072250(JP,A)
【文献】米国特許第04434364(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野(FOV)を持つ三次元レーザラインスキャン撮像システムであって、
前記FOVを照らすパルスレーザ送信器と、
回転式光スキャナであり、
送信されたレーザパルスを前記FOV内のターゲットへと反射させるとともに、前記FOV内の前記ターゲットからの、入射するリターン光線束の形態の信号リターンを反射する、1つの4面の角錐形ミラー、
角錐の前記面ごとに1つの4つの光ポートを備える回転ハウジングであり、当該回転ハウジング内に前記角錐形ミラーがあり、前記面及び前記光ポートの各々が、出射する送信ビーム及び前記入射するリターン光線束の両方に対する別々の重なり合わない光パスをサポートする、回転ハウジング、及び
各ミラーファセット焦点面に1つの4つの延長されたピンホールを持つアパーチャスリットプレート、
を有し、前記角錐形ミラー、前記回転ハウジング、及び前記アパーチャスリットプレートの全てが一緒に回転する、
回転式光スキャナと、
前記信号リターンを検出してPMT出力を生成する光増倍管(PMTベースの検出器と、
前記PMT出力を処理するように構成されたプロセッサ及びメモリと、
を有するシステム。
【請求項2】
当該システムは、無人/自律型潜水機に含められている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記無人/自律型潜水機は、12.75インチ(32.39cm)以上の外形を持つ、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記PMT出力からレンジ及び振幅ピクセルデータを抽出して、前記ターゲットの3D画像を形成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ターゲットは海底を有する、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記3D画像は、各レーザパルスからの前記信号リターンに対応する前記PMT出力の時系列デジタル化サンプルから形成される、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記FOVは、70度までの走査幅を持つ、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
レーザパルス繰り返し周波数(PRF)、前記光スキャナの回転速度、及び/又は前記レーザの発散率が、前記信号リターンの所望の特性に対して選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記送信パルスのパルス継続時間、パルス間均一性、及び/又はパルスエネルギーが、前記信号リターンの所望の特性に対して選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記パルスレーザ送信器は青緑色レーザを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
無人/自律型潜水機用の三次元レーザラインスキャン撮像システムについて視野(FOV)を選択し、
パルスレーザ送信器で前記FOVを照らし、
転式光スキャナを使用して、送信されたレーザパルスを前記FOV内のターゲットへと反射させるとともに、前記FOV内の前記ターゲットからの、入射するリターン光線束の形態の信号リターンを反射し、前記回転式光スキャナは、
前記送信されたレーザパルスを前記FOV内の前記ターゲットへと反射させるとともに、前記FOV内の前記ターゲットからの前記信号リターンを反射する、1つの4面の角錐形ミラーと、
角錐の前記面ごとに1つの4つの光ポートを備える回転ハウジングであり、当該回転ハウジング内に前記角錐形ミラーがあり、前記面及び前記光ポートの各々が、出射する送信ビーム及び前記入射するリターン光線束の両方に対する別々の重なり合わない光パスをサポートする、回転ハウジングと、
各ミラーファセット焦点面に1つの4つの延長されたピンホールを持つアパーチャスリットプレートと、
を有し、前記角錐形ミラー、前記回転ハウジング、及び前記アパーチャスリットプレートの全てが一緒に回転し、
PMTベースの検出器を使用して、前記信号リターンを検出してPMT出力を生成し、
前記PMT出力を処理する、
ことを有する方法。
【請求項12】
前記PMT出力を処理して、前記ターゲットの3D画像を形成するレンジ及び振幅ピクセルデータを抽出する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記3D画像は、各レーザパルスからの前記信号リターンに対応する前記PMT出力の時系列デジタル化サンプルから形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
レーザパルス繰り返し周波数(PRF)、前記光スキャナの回転速度、及び/又は前記レーザの発散率が、前記信号リターンの所望の特性に対して選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記パルスレーザ送信器は青緑色レーザを有する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
高解像度で長いスタンドオフレンジで水中を撮像することができる能力は、基本的に、撮像されるシーン又は物体と撮像システムとの間での光の散乱及び吸収によって制限される。沿岸の場所では散乱が信号減衰を支配し、外洋では吸収が支配する。散乱が、撮像システムが物体を明瞭に見ることができる能力を制限し、散乱及び吸収の両方からの信号減衰が、物体を明瞭に見ることができる範囲を制限する。混濁した沿岸水と透き通った外洋水との間での減衰の違いは何桁もの大きさであるため、広範で多様な水の透明度にわたってレーザ撮像システムを採用することも難題である。
【0002】
水中のシーンを照らすために、長い間、ストロボ、フラッシュランプ、及びレーザを含む指向性光源が撮像システムに組み込まれてきた。これらの光源は、物体から受ける光子の数を増加させ、それ故に、減衰損失及び散乱された周辺光の悪影響の一部を克服する。しかしながら、これらの光源は、撮像システムの設計において対処されていない場合に、他の全ての信号を圧倒してしまい得る近接場後方散乱信号も生成する。
【0003】
一部の従来の水中レーザイメージングシステムは、青緑色又は緑色のレーザを使用している。レーザベースの水中撮像には多数の基本的アプローチが存在し、各々が、近接場後方散乱、物体から撮像システムに戻る光の前方散乱、及び遭遇する信号減衰のレンジの影響を軽減するための独自の戦略を提供している。
【0004】
1つの既知のアプローチは3Dフラッシュ(Flash)LiDAR(Light Detection and Ranging;光検出・測距)である。データの三次元フレームを作成するために、このアーキテクチャは、一度の広がっていく光のフラッシュで、あるボリュームの水を照らし、リターンを高速カメラでサンプリングする。最も洗練されたバージョンは、二次元リターン信号の全体をサブナノ秒間隔(光は海水中でナノ秒あたり~9インチ(~23cm)進む)でサンプリングし、そして、カメラフレームの時間シーケンス全体に対して信号処理を用いて、シーン内の各撮像ピクセルにおいて物体/海底リターン信号のレンジ及び振幅を見出す。これから、光源のフラッシュレートによって決まるフレームレートで、シーンの二次元(2D)又は三次元(3D)画像を生成することができる。このアプローチは、カメラのフォーカルプレーンアレイ(FPA)出力の各ピクセル位置で、検出されたボトムリターンからのものを除く全てのリターン信号を信号処理が無視するので、時間的手段によって後方散乱及び前方散乱の影響を軽減しようとするものである。この時間的のみであるアプローチの欠点は、アパーチャが二次元に広く開いており、それ故に、抽出される物体/ボトムリターン信号が、散乱されていない(情報を含む)光子に対して、散乱された(信号を混乱させる)光子を高い比率で含むことである。水質が低下するにつれて、この比率は、他の2つのアーキテクチャの場合よりも速く悪化し、結果として、高品質撮像での3DフラッシュLiDARのスタンドオフレンジは、他のアーキテクチャのそれよりも大幅に小さくなる。このアプローチの有用性はまた、それがFPAに頼っていることによっても制限される。高度な電子回路を用いたとしても、FPAがサポートすることができる入力信号の範囲は、撮像システムが遭遇し得る所望の撮像スタンドオフレンジ及び広範囲の水減衰条件をカバーしない。
【0005】
2つめのアーキテクチャはストリーク管イメージング(Streak Tube Imaging)LiDARである。このアーキテクチャでは、フラッシュレーザを使って狭い扇形ビームを送出する。リターンが、FPA内のピクセルのロウ(行)にわたって撮像される。各ロウの出力がリターンの新しいタイムスライスを含むように、ビームはFPAカラム(列)方向に静電的に偏向される。信号処理が各ピクセルのレンジ及び振幅情報を抽出する。各レーザフラッシュが、一行のダウンルッキング(down-looking)ピクセルデータを生み出す。前方プラットフォーム動作と組み合わさって、STILは、滝が流れ落ちるような画像ロウを出力し、それにより、連続的にスクロールする物体/海底の振幅及び/又はレンジ画像をオペレータに提示する。このアプローチは、時間的及び空間的の両方の手段によって、後方散乱及び前方散乱の影響を軽減しようとするものである。その受信器アパーチャは、長くて狭いスリットであり、非散乱光子に対する散乱光子の比率を3DフラッシュLiDARアプローチとの比較で低下させ、結果として、所与の沿岸水条件で、より大きいスタンドオフレンジで明瞭に撮像することができる。3DフラッシュLiDARの場合にそうであるように、STILはFPAベースの受信器に頼っており、それ故に、有用なスタンドオフレンジで効果的に動作することができる水条件に限りがある。
【0006】
3つめの既知のアーキテクチャはレーザラインスキャン(Laser Line Scan;LLS)である。このアプローチは、実用化されている2つの既存構成を持つ。1つめの元々の構成は、幅狭の“ペンシル”ビーム連続波(CW)レーザと、小さい“ピンホール”受信器アパーチャと、FPAに代わる感光受信素子としての、高ダイナミックレンジの光増倍管(PMT)とを採用している。ミラー系を用いて、海底を横切ってペンシルビーム及びピンホールを同期して走査し、PMTが、アパーチャを通り抜けた光子を電気信号に変換し、該電気信号が、所望の画像ピクセルレートで増幅及びデジタル化される。ミラー系の各回転が、ミラーファセットごとに一ラインの画像を提供する。STILと同様に、連続的にスクロールする滝のようなもので表示される画像において各走査ラインが新しい地面をカバーするように、前方プラットフォーム動作が必要とされる。しかしながら、STILの3D能力とは異なり、これは振幅画像しか提供することができない。何故なら、パルスレーザ、及びパルスリターンの高速サンプリングが使用されないからである。この構成は、空間的手段のみによって後方散乱及び前方散乱の影響を軽減しようとするものである。直接的な後方散乱を避けるために、送信ミラーと受信ミラーとが1フィート以上離隔され、このソース-レシーバ(S-R)分離は、送信ビームが海底と交わる所を受信器が振り返ることを必要とするので、アパーチャ開口は、被写界深度を提供するために一方向に延長されたピンホールへと縮小される。このアプローチは、非散乱光子に対する散乱光子の比率を3DフラッシュLiDARアプローチとの比較で低下させることにおいて、少なくともSTILと同等に効果的であり、これがPMTを使用するは、FPAベースの受信器によってサポートされることができるよりも低いノイズで、より大きい範囲の入力信号を受信することを可能にする。これは、STIL又は3DフラッシュLiDARのいずれかで可能であるよりも広い水条件のセットで、有効なスタンドオフレンジで動作することを可能にする。しかしながら、CW LLSは、散乱された周囲光の影響をいっそう受けやすく、劣悪水の昼光条件で動作するときに、その撮像性能が低下することになる。
【0007】
2つめのLLS構成は、CWレーザ、増幅及び低速デジタル化電子回路、及びより低い帯域幅のPMTを、狭パルス高繰り返しレートパルスレーザ、高速(サブナノ秒)デジタイザ、及び高帯域幅PMTで置き換えることを除いて、1つめの構成と同様である。この構成では、短いレーザパルスが送出され、高帯域幅PMTからのリターン信号を高速デジタイザがサンプリングする。物体/ボトムリターン信号のデジタル化されたタイムシーケンスから、デジタル信号処理が振幅及びレンジを抽出する。
【0008】
このアプローチは、3D画像を生成し、“3Dパルス化時間分解(3D Pulsed-Time-Resolved)LLS”又は“3D PTR LLS”と呼ばれている。これは、空間的及び時間的の両方の手段を使用して、後方散乱光及び前方散乱光の影響を効果的に軽減し、所与のレーザパワーで、全ての水条件で、3DフラッシュLiDAR及びSTILよりも実質的に大きいスタンドオフレンジで、より高解像度の撮像を行うことが可能である。
【0009】
LLS構成は、他のアーキテクチャに対する撮像性能の向上を提供するが、LLS構成の1つの欠点は、直接的な近接場後方散乱の影響を軽減するために必要とされる大きいS-R分離である。この分離は2つの結果を持つ。第1に、上述したように、それは、ピンホールアパーチャの延長をもたらし、それ故に、最適なペンシルビーム/ピンホールアーキテクチャよりも多くの散乱光子を許してしまう。第2に、それは、撮像システムのサイズ及び重量を増加させて、レーザイメージングセンサにとって新たに出現したプラットフォームである小型の無人/自律型潜水機(UUV/AUV)と適合しないものになる。
【発明の概要】
【0010】
本開示の実施形態は、共通の走査ミラーを共有する送受信光路、直接的な近接場後方散乱信号を減衰させるための受信器のPMTの高速電子ゲーティング、各レーザパルスリターンのタイムシーケンスを生成するための高速PMT出力デジタル化、及び各タイムシーケンスからレンジ及び振幅情報を抽出するための信号処理を有した、小型のPTRレーザイメージングシステムのための方法及び装置を提供する。
【0011】
実施形態において、モノスタティック3D PTR LLS水中撮像センサアプローチは、空間的及び時間的な処理を使用して後方散乱及び前方散乱の影響を最大限に軽減することで、所与のレーザパワーで、既存のアーキテクチャよりも長いレンジで、より明瞭な画像を生成することができる水中レーザイメージングアプローチを生み出す。さらに、実施形態例は、12.75インチ(32.39cm)以上の直径のUUV/AUVと適合する小型の低電力センサ設計を可能にするが、よりコンパクトに小型化したバージョンも実現可能である。
【0012】
一態様において、視野(FOV)を持つ三次元レーザラインスキャン撮像システムは、FOVを照らすパルスレーザ送信器と、送信されたレーザパルスをFOV内のターゲットへと反射させるとともに、FOV内のターゲットからの信号リターンを反射する角錐形ミラーを持つ回転式光スキャナと、信号リターンを検出してPMT出力を生成するPMTベースの検出器と、PMT出力を処理するように構成されたプロセッサ及びメモリと、を有する。
【0013】
システムは、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:当該システムは、無人/自律型潜水機に含められている;該無人/自律型潜水機は、12.75インチ(32.39cm)以上の外形を持つ;送信器は、パルス繰り返し周波数(PRF)、ビーム発散角、パルス継続時間、パルスエネルギー均一性、及びパルスピークエネルギーが、信号リターンの所望の特性に対して選択された、小型の青緑色パルスレーザを有する;回転式光スキャナは、70度のクロストラックFOVを提供し、回転ハウジング内の1つの4面の角錐形ミラーを有し、回転ハウジングは、角錐の面ごとに1つで、4つの光ポートを備える;面及び光ポートの各々が、出射する送信ビーム及び入射するリターン光線束の両方に対する別々の重なり合わない光パスをサポートする;プロセッサは、PMT出力からレンジ及び振幅ピクセルデータを抽出して、ターゲットの3D画像を形成するように構成されている;ターゲットは海底を有する;3D画像は、各レーザパルスからのリターン信号に対応するPMT出力の時系列デジタル化サンプルから形成される。
【0014】
他の一態様において、方法は、無人/自律型潜水機用の三次元レーザラインスキャン撮像システムについて視野(FOV)を選択し、パルスレーザ送信器でFOVを照らし、角錐形ミラーを持つ回転式光スキャナを使用して、送信されたレーザパルスをFOV内のターゲットへと反射させるとともに、FOV内のターゲットからの信号リターンを検出器へと反射し、PMTベースの検出器を使用して、信号リターンを検出してPMT出力を生成し、高速デジタイザを使用してPMT出力をサンプリングし、デジタル化された出力を処理して3D画像を作り出す、ことを有する。
【0015】
方法は更に、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:システムは、無人/自律型潜水機に含められている;該無人/自律型潜水機は、12.75インチ(32.39cm)以上の外形を持つ;送信器は、パルス繰り返し周波数(PRF)、ビーム発散角、パルス継続時間、パルスエネルギー均一性、及びパルスピークエネルギーが、信号リターンの所望の特性に対して選択された、小型の青緑色パルスレーザを有する;回転式光スキャナは、70度のクロストラックFOVを提供し、回転ハウジング内の1つの4面の角錐形ミラーを有し、回転ハウジングは、角錐の面ごとに1つで、4つの光ポートを備える;面及び光ポートの各々が、出射する送信ビーム及び入射するリターン光線束の両方に対する別々の重なり合わない光パスをサポートする;プロセッサは、PMT出力からレンジ及び振幅ピクセルデータを抽出して、ターゲットの3D画像を形成するように構成されている;ターゲットは海底を有する;3D画像は、各レーザパルスからのリターン信号に対応するPMT出力の時系列デジタル化サンプルから形成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
この発明の前述の特徴並びに発明それ自体は、以下の図面の説明からいっそう十分に理解され得る。
図1】レーザイメージングシステムを有する潜水機の概略表現である。
図2】一例の~12インチ径のUUV/AUVと適合するようにパッケージングされたモノスタティック3D PTR LLSセンサの断面図を示している。
図3】海底の撮像を示すモノスタティックLLSアーキテクチャの図である。
図4】可能な走査速度の範囲及び一般的なラインあたりの表示ピクセルの選択肢から得られるレーザパルス繰り返し周波数(PRF)の例を示している。
図5】走査ラインあたりのレーザパルス及び撮像スタンドオフレンジの関数として、インチ単位でのトラック横断方向の(走査の方向の)ピクセル地上サンプル距離(GSD)の例を示している。
図6】スキャナ回転速度及びビークル前進速度の関数として、インチ単位でのトラック沿い方向の(ビークル運動の方向の)ピクセルGSDの例を示している。
図7】70度の走査ライン広がりを所与とした、スタンドオフレンジの関数としてのトラック横断方向スワース幅の例を示している。
図8】例えばレーザ発散である様々な撮像レンジにおけるビーム径の例を示している。
図9】様々な水透明度におけるモノスタティック3D PTR LLSの動作レンジの例を示している。
図10】モノスタティック3D PTR LLS内部センサアセンブリ(ISA)の実施形態例のコンポーネントを示している。
図11】共通の送受信角錐ミラーを持つモノスタティックスキャナの例を示している。
図12】頂点から小さい距離を置いた角錐ミラーの表面に向けられる送信レーザビームを示している。
図13】軸上(例えば、ダウンルック)イメージング及び35度軸外イメージングでの、角錐走査ミラー上の送信ビーム及び受信リターン光線束の位置を示している。
図14】カートリッジベースの受信器光学系の例を示している。
図15】2つの異なる水濁度における、4mのスタンドオフレンジでの、2GHzインクリメントで受信された光子のモデリング結果の例を示している。
図16】広い一組の動作水条件でのパルスあたりの非散乱ボトムリターン光子のレンジを示している。
図17】同様に広い一組の動作条件で、後方散乱リターンを情報含有ボトムリターンと比較している。
図18】三次元撮像をサポートするレンジ及び振幅ピクセルデータを抽出するために、デジタル化されたリターンタイムシーケンスを処理することへのアプローチ例のフロー図である。
図19】散乱ノイズ有り及び無しでのレンジ及び振幅処理の例を示している。
図20】ここに記載される処理の少なくとも一部を実行するコンピュータの一例の概略表現である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、海底102及び海底上又は海底付近の物体の画像を生成するためのレーザイメージングシステム101を有する潜水機(水中ビークル)100の例を示している。この例示的な図では、送信レーザビームと受信器との間に隔たりを有するバイスタティックバージョンのLLSセンサが示されている。受信器から出ている陰影付きの領域103は、その瞬間視野を海底上に投影したものである。バイスタティック構成では、反射されたレーザリターンを最適に受信するために受信器が数度前方に傾けられたときに被写界深度を提供するよう、受信器アパーチャがビークルのトラック沿い(アロングトラック)方向に僅かに延長される。
【0018】
図2は、一例の~12インチ径のUUV/AUVと適合するようにパッケージングされたモノスタティック3D PTR LLSセンサの一実施形態例の断面図200を示している。当該センサは、アルミニウム製の圧力容器(PV)201に収められている。PV201は円筒形の光学ウィンドウ202を持つ。内部コンポーネントは、パルス青緑色レーザ送信器203、回転式光スキャナアセンブリ204、及び光電子増倍管(PMT)205と高速デジタイザ/信号プロセッサ206とを有する検出器アセンブリを含む。
【0019】
動作時、図3に示すように、パルスレーザビーム300が、回転する走査ミラー301に向けられる。実施形態において、ミラー301は、例えば海底に向けてなど、下向きにレーザビームを反射する四面(4ファセット)の角錐を有する。理解されることには、特定の用途のニーズを満たす任意の実用方向に反射レーザビーム302を向けることができるように、PV304は回転されることができる。当該システムは、下側を見たり海水中で動作したりすることに限定されるものではない。レーザビームはセンサの円筒形PV304のウィンドウ303を通り抜け、海底305で反射する。ビーム306の小さい一部がPV304の方に反射され返し、ウィンドウ303を通り抜けて集束レンズ307に至る。ビームが集束されるときに、それは走査ミラー301で反射し、最適な焦点となったときにアパーチャプレート308の小さい孔を通り抜けてPMT309に至る。PMT309の出力が、デジタイザ310によってタイムシーケンスへと変換され得る。タイムシーケンスは、更に十分に後述するように、1つの画像ピクセルのレンジ及び振幅を抽出するように処理される。スキャナ301が回転するにつれて、反射ビーム302は海底を横方向に横断する。走査ミラー301、集束レンズ307、及びアパーチャプレート308が全て一緒に回転する一方で、PMT309及びウィンドウ303は位置を固定されている。各90度のスキャナ301の回転が、受信レーザリターンの走査ライン311となる。ホストプラットフォーム(例えば、UUV/AUV)の前進運動が、立て続けの走査ラインを新たなボリュームの水上に置いて、連続した滝のような画像の表示(ウォーターフォール画像表示)をもたらす。度を単位とする走査幅は、ウィンドウ303、集束レンズ307、走査ミラー301、及びPMT309のサイズと位置に依存する。広角撮像用途では、各面(ファセット)の90度の回転から70度の走査幅を達成可能である。
【0020】
実施形態において、レーザパルス送信器は、民生品の(commercial-off-the-shelf;COTS)パルス青緑色レーザとして設けられる。レーザパルス繰り返し周波数(PRF)は、ウォーターフォール画像表示のピクセルごとにパルスを提供するのに十分な高さである。選択されるPRFは、用途の詳細に依存する複数のファクタの関数とし得る。PRFを選択する際、適用の主な原動力は、走査ライン内及び走査ライン間の所望のピクセル間隔(地上空間距離;GSD)、ウォーターフォールフォーマット(走査ラインあたりの表示ピクセル)、及び一緒になってセンサのエリアカバレッジ率を決定するものであるビークル前進速度と撮像スタンドオフレンジを含む。実際に取得することができる値の範囲は、GSDがスタンドオフレンジでのビーム径におおよそ一致されると仮定すると、走査ミラー301の回転速度及びレーザビーム302の発散を含むセンサ設計パラメータによって制限される。平均レーザパワー、パルスあたりのパワー、パルスあたりの最大エネルギー、及びパルス継続時間も役割を果たし、これらは水透明度の関数として撮像品質に影響を与えるので、これらについては後述する。
【0021】
動作において、図4は、可能な走査速度の範囲及び一般的なラインあたりの表示ピクセルの選択肢から得られるPRFの例を提供している。沿岸水域での撮像についての一般的な経験則は、パルスごとに最大エネルギーが得られる最も高いレーザPRFでセンサを動作させることである。
【0022】
図5は、走査ラインあたりのレーザパルス及び撮像スタンドオフレンジの関数として、インチ単位でのトラック横断(アクロストラック)方向の(走査の方向の)ピクセルGSDの例を提供している。なお、2メートルから16メートルの撮像スタンドオフレンジが示されているが、実際の撮像レンジは、水透明度に応じて3m未満から~60mまで様々となり得る。
【0023】
図6は、スキャナ回転速度及びビークル前進速度の関数として、インチ単位でのトラック沿い(アロングトラック)方向の(ビークル運動の方向の)ピクセルGSDの例を提供している。
【0024】
図7は、70度のトラック横断方向の走査ライン広がりを所与とした、スタンドオフレンジの関数としてのトラック横断方向スワース(swath、帯状走査)幅の例を提供している。
【0025】
図5図6、及び図7は一緒になって、所与の用途に必要とされるGSD及びエリアカバレッジ率を達成するためのセンサ設定(例えば、PRF、走査速度、走査ラインあたりのピクセル数)及びエンゲージメントジオメトリ(ビークル速度及び撮像スタンドオフレンジ)をセンサユーザが決定することを可能にする。さらに、図8は、典型的に利用可能なCOTSレーザ発散について、様々な撮像レンジにおけるビーム径を提供している。これらの直径を図5及び図6のGSDと比較することで、画像品質がGSD制約されるのか、解像度制約されるのかを決定することができる。
【0026】
実施形態において、性能に影響する他のレーザパラメータは、パルス継続時間、パルス間均一性、及びパルスエネルギーを含む。パルス継続時間は、PMT立ち上がり時間、デジタイザサンプリングレート(高いほど良い)、及び/又は所望のレンジ分解能(光は海水中でナノ秒あたり~9インチ(~23cm)進む))によって制限され得る。より短いPMT立ち上がり時間、及びより高いサンプリングレートは、より短い継続時間のパルスに対応することができ、高度な信号処理と一緒になって、より優れたレンジ分解能をもたらすことができる。現在利用可能なCOTSコンポーネントで得ることが可能なレンジ分解能は、0.7nsのPMT立ち上がり時間、14ビット/サンプルで2Gsps(ギガ(10)サンプル/秒)のデジタイザサンプリングレート、及び~2.5ナノ秒のレーザパルス継続時間(半値全幅)を用いて、~0.25インチ(0.64cm)である。設計の経験則の一例は、パルス間サンプリングノイズを管理可能なレベル(2-3%未満)に保つために、デジタイザはレーザパルス継続時間あたり少なくとも5サンプルを提供すべきであるというものである。
【0027】
パルス間のエネルギー及びピークパワーの均一性は、システム性能に寄与するファクタである。何故なら、各パルスリターンが画像の1つのピクセルに対応し、それ故に、パルス間のピーク差及びエネルギー差は、レンジ及び振幅画像において相関のないノイズになるからである。数パーセント(<1% RMS)の不均一性が望まれる。より高い不均一性のレーザからの画像ノイズは、出射する送信パルスの高速サンプリングから導出されるスケーリング係数を適用することによって軽減され得る。
【0028】
パルスエネルギーは、利用可能なホストビークルのパワー/エネルギーと、パッケージング体積及び熱管理の制約とによって制限され得る。~1W(350kHzのPRFで2.9μJ/パルス)に至る532nmレーザ平均パワーは、12インチUUV/AUVペイロードサイズ及び利用可能なミッションパワーとエネルギーと適合する小型の3D PTR LLS構成例をサポートするはずである。より高いパワー(20W+;700kHzのPRFで28.6μJ/パルス)のパルスレーザが利用可能であるが、熱管理のためにもっと多くの体積を提供することができるものである遥かに大規模なシステム及びホストプラットフォームのみと適合し得る。
【0029】
動作において、パルスあたりのエネルギーも撮像スタンドオフレンジに寄与するファクタである。レーザ光のパルスが、例えば海水などの、散乱及び吸収のある媒体中を進むことができる能力は、水透明度の関数であり、水透明度は、ビーム減衰長(Beam Attenuation Length;BAL)の観点で測定されることができる。1BALは、吸収と散乱との組み合わせによってレーザパルスのエネルギーが元の値の1/eまで減少する前にレーザパルスが進む経路長である。様々な環境におけるBALのおおよその経験則は:
- 混濁した沿岸の水:<1m
- 平均的な沿岸の水:1.5-2m
- きれいな沿岸の水:3-5m
- 外洋の水:7-10+m
である。
【0030】
上述のように、3D PTR LLSは、沿岸水域におけるBALの主要な原動力である散乱光の影響を軽減するのによく適した走査ペンシルビーム-ピンホールアーキテクチャを持つ多数の水中撮像センサアーキテクチャのうちの1つである。モノスタティック3D PTR LLSの性能予測モデリングは、PMTのゲーティングなしで~4.5-5BALにおいて、又はPMTのゲーティングありで~6-6.5BALにおいて、高品質の画像を生成することができる能力を示している。PMTゲーティングについては、図15と併せて後述する。
【0031】
図9は、様々な水透明度におけるモノスタティック3D PTR LLSの実施形態例の例示的な動作レンジを示している。陰影なしの升目はゲーティングなしであり、薄い灰色の陰影付きの升目はゲーティングを用いて追加される動作環境を示し、濃い灰色の陰影付きの升目の領域での性能は、パルスエネルギー及び/又はPMTゲーティング効率の大幅な増加なしには達成可能でない。図9の見積もりは、2.9μJ(350kHzのPRFで1Wの平均電力)の532nmパルスエネルギーについてのものである。上述のように、これは~12インチ径のUUV/AUV動作と適合する小型のCOTSレーザで達成されることができる。より大型のプラットフォームでは、平均レーザパワーを10W又は20Wに上げることで、(特に、より透明な吸収によって制限される水において)最大で~1.5BALだけ性能を向上させることができる。
【0032】
図10Aは、モノスタティック3D PTR LLS内部センサアセンブリ(Internal Sensor Assembly;ISA)1000の実施形態例のコンポーネントを示す第1の側面図であり、図10Bは正面図であり、図10Cは第2の側面図(図10Aの第1の側面図の反対側)である。当該ISAは、送信、走査、受信、組み込み制御、及び電力分配のサブシステムで構成される。
【0033】
実施形態において、送信器は、レーザヘッド1001、ヒートシンクを備えたレーザエレクトロニクス1002、ビームサンプリングアセンブリ1003、及びビーム方向付けターンプリズムアセンブリ1004を有する。スキャナは、ハウジング1005内の回転する光学アセンブリと、デジタルスキャンモータコントローラ1006とを有する。受信器は、バイアスネットワークを備えたPMT1007と、高電圧電源(High Voltage Power Supply;HVPS)1008と、サンプリングされたPMT出力を表示用のレンジ及び振幅ピクセルに変換するために必要なデジタル信号処理を実行するFPGAを備えたデジタイザ1009とを有する。組み込みコントローラ(embedded controller;EC)1010は、スキャナ1005及びデジタイザ1009の全体的な動作及び時間同期を制御するシングルボードコンピュータである。EC1010はまた、ホストUUV/AUV内のセンサから離して置かれる外部のミッション及びペイロード制御コンピュータ(実施形態内ではない)及びデータストレージ(実施形態内ではない)と通信する。電力分配は、電力変換器1011及び電源1012を有し、これらの詳細は、ホストUUV/AUVプラットフォームから利用可能な電力と、様々なセンサコンポーネントの電力ニーズとに依存する。主要な構造要素は、隔壁板1013及び1014と、構造ロッド(数量4)1015、レーザヘッドプラットフォームシェルフ1016、及びアライメントのために光学コンポーネントへのアクセスをサポートするヒンジ付き回転コンポーネント取り付けウィングを含む。
【0034】
図11は、共通の送受信角錐ミラー1101を持つモノスタティックスキャナ1100の一例を示している。実施形態において、スキャナ部は、固定された(回転しない)メインハウジング1102を持つ。薄いリングモータアセンブリ1103がメインハウジングに取り付けられる。モーター1103は、取付プレート1104、シャフト1105、及びベアリングセット1106を介して回転光学アセンブリに取り付けられる。光学アセンブリは、ハウジング1107と、四面(4ファセット)の角錐ミラー1101と、ミラーファセットごとの受信器光学系カートリッジ1108と、チューブ1110上に取り付けられたアパーチャスリットプレート1109とを含む。スリットプレートは、各ミラーファセット焦点面に1つの、4つの僅かに延長されたピンホール1111を持つ。スキャナを通る送信ビーム1112及び受信光線束エンベロープ1113の経路が図11に示されており、これらについては図12で更に詳述する。
【0035】
動作において、当該スキャナが所望の回転速度(例えば、最高4000RPM)にされ、パルスレーザが所定のPRFで送信を開始する。図12は、送信ビーム1201が、頂点から小さい距離を置いた角錐ミラー1202の表面に向けられていることを示している。ビーム1201は、海底又は撮像面に向けて下方に90度反射する。ビームは、底で(一般的に、おおよそランバート的に)反射し、カートリッジベースの受信器光学系1204の収集エリアに入るリターン1203が、送信ビームが反射されたファセットに付随するスリットプレート穴1205内に集束される。ミラーとスリットプレートが一緒に回転して、モノスタティックLLSアーキテクチャの“ペンシルビーム-ピンホール”アーキテクチャの特徴を作り出す。
【0036】
図13は、軸上(on-axis)(例えば、ダウンルック)イメージング1303及び35度軸外(off-axis)イメージング1304での、角錐走査ミラー上の送信ビーム1301及び受信リターン光線束1302の位置を示している。~12インチ(30cm)径のAUV/UUVプラットフォームに適合する小型イメージャの場合、走査ミラーの底面は約5インチ(13cm)となり、送信ビームと受信ビームとの間の隔たりは、受信ビームの焦点(図12の1205)で約1.125インチ(2.858cm)となる。
【0037】
図14は、図12(1204)で参照したカートリッジベースの受信器光学系の一実施形態例を示している。図11(1107)に示した回転光学ハウジングは、4つの角錐ミラーファセットの各々に1つで、4つの光ポートを持つ。各光ポートが、送信ビームが通り抜けるための開口1401と、一組の受信器光学系とを含む。受信器光学系コンポーネントは、補正レンズ1402(外部環境への非平坦なウィンドウを補償するために必要とされる場合)と、狭帯域(レーザのスペクトル線幅及び安定性に応じて1Åから2Å)のソーラーフィルタ1403と、集束レンズ1404とを含む。ソーラーフィルタと集束レンズは、スペーサ1405によって隔てられるとともに、保持クリップ1407によって、取り外し可能なカートリッジ1406に固定される。補正レンズは、レンズクリップ1408で所定位置に固定される。
【0038】
実施形態において、3D PTR LLS検出器は、PMTと、PMTバイアスネットワークと、デジタイザ/信号プロセッサ(例えば、システムタイミング及び信号処理をサポートするFPGAを備える)と、高電圧電源(HVPS)とを含む。PMTバイアスネットワークは、COTS HVPSによってサポートされる従来からのバイアスネットワーク、又は電源のネットワークによってサポートされる特別注文(カスタム)のアクティブゲートバイアスネットワーク(AGBN)を含むことができる。前述のように、実施形態例は、スタンドオフレンジに応じて最大4.5-5.5BALで1Wの青緑色レーザによる高品質3D撮像をサポートし得る。カスタムPMT AGBNアプローチは、より短いスタンドオフレンジで最大6BALでの撮像をサポートし得る。
【0039】
図12に示すように、リターン信号は、PMT1206内へと、アパーチャスリットプレートピンホール1205を通り抜ける。PMTの感光カソードがリターン光子を電子雲へと変換し、PMTのダイノードチェーン中で加速され、該ダイノードチェーンによって増幅される。ダイノードプレート間で電子を加速するとともに、信号増幅のための蓄積電荷を提供する電圧が、PMTのバイアスネットワークを介して作用するHVPSによって供給される。最終ダイノードステージから加速された電子がPMTのアノードによって集められ、出力電流へと変換される。この電流がシャント抵抗を通過することで、COTSデジタイザによってデジタル信号に変換される電圧をもたらす。
【0040】
(個々のレーザパルスに対する)受信信号は主に、水柱からの後方散乱リターンと、非散乱光子及び小角散乱光子の両方を含むものである海底及び/又は撮像対象からのリターンとを含む。これらの成分の相対振幅比及びタイミングは、水の濁度及び撮像スタンドオフレンジに依存する。図15は、2つの異なる水濁度における、4mのスタンドオフレンジでの、2GHzインクリメントで受信された光子のモデリング結果の例を示している。ボトムリターンが支配的である上のプロットは、平均的な沿岸水域(2mのビーム減衰長)についてのものである。後方散乱が支配的である下のプロットは、非常に混濁した沿岸水域(0.67mのビーム減衰長)についてのものである。
【0041】
図15は、一般的に遭遇する2つの沿岸水域条件における実質的な信号変動を示している。撮像スタンドオフレンジ及び走査角度(-35度から+35度)も変わる場合、さらに大きな変動が生じる。図15の下のプロットは、上述の図9で導入したPMTゲーティングの恩恵を受けることになる撮像条件の一例である。この場合、6BALでの近距離濁水イメージング、近接場後方散乱ピーク、全エネルギーが、ボトムリターンのそれらより支配的となる。ゲーティングなしでは、PMTがその最大平均アノード電流レベルより上で動作することを避けるために、PMT利得が低く保たれ、ボトムリターン信号は殆ど増幅を受けず、信号対雑音制限を受けることになる。ゲーティングにより、感光カソードと最初のダイノードとの間の電圧差が瞬間的に低下され、PMTダイノードチェーン中で加速され且つそれによって増幅される近接場後方散乱光電子の減少をもたらす。これは、PMTの平均アノード出力電流を低下させて、もっと大きいPMT利得を適用することを可能にし、それ故に、ボトムリターン信号を、PMTを発生源としないシステムノイズレベルより上まで増加させ、それによって、より濁った水条件で撮像が行うことができるレンジを長くする。PMTゲーティングは実験的に実証されているが、実施形態には含まれない。
【0042】
図16は、広い一組の動作条件でのパルスあたりの非散乱ボトム光子のレンジを提示するものであり、それらの条件をカバーするために少なくとも5ディケードの信号範囲を管理する必要があることを示している。図17は、同様に広い一組の動作条件で、後方散乱リターンを情報含有ボトムリターンと比較している。
【0043】
実施形態において、PMT、バイアスネットワーク、HVPS、及びデジタイザの選択は、所与の用途のためにモノスタティック3D PTR LLSセンサが撮像することを要求される動作サブ空間に依存する。考慮すべきファクタは、必要なPMT利得範囲、PMT利得制御の自動化、及び支配的な後方散乱リターンを増幅した後のボトムリターン信号ドループを防ぐためのPMTダイノードチェーンへの十分な電力の印加を含む。PMT利得制御を自動化することは、PMT出力信号範囲をデジタイザ入力電圧範囲と一致させて、後方散乱信号及び/又はボトムリターン信号の飽和を回避すること、及び(例えば、高コントラストの関心対象物の突然の出現からの)ボトムリターン反射率の突然の変化を許容することを含み得る。PMT利得制御を自動化することは更に、PMTダメージ(例えば、ボトムリターンを“見る”ために後方散乱を過剰増幅してしまったときに発生し得るような、平均アノード電流制限及び/又はピーク電流制限を長期間にわたって超えることによる)を防ぐことを含み得る。図15図16、及び図17に含まれる情報が、上の設計ガイダンスと組み合わさって、特定の用途のニーズを満たす3D PTR LLS検出器の実施形態用のコンポーネントを選択するためのガイダンス例を提供する。
【0044】
動作において、図15を再び参照するに、信号処理を用いて、各パルス時間リターン波形からレンジ及び振幅値が抽出される。これらの値が1ピクセル分のデータを構成し得る。そして、順次のピクセルからのデータ、及びそれらが発生した関連する走査角度を、ウォーターフォール表示ラインのフォーマットにすることができる。例えば、4つの表示ラインが、走査ミラーの物理的な回転ごとに生成され、各ラインが、先行ラインに平行であるが、プラットフォーム動作の方向に先行ラインから僅かにずらされる。これは、レンジ及び/又は振幅データのウォーターフォール画像表示を可能にする。これはまた、物体の特定に非常に有用となり得る三次元画像の表示を可能にする。
【0045】
実施形態において、3D PTR LLSの時間リターン波形からレンジ及び振幅情報が抽出され得る。実施形態例は、例えば、2048サンプルのレーザパルス時間リターンシーケンスからボトムリターン振幅及びレンジ情報を抽出するように構成される。実施形態において、走査ラインのアクティブな撮像部分(例えば中央の70度)で受信されたパルス時間リターンシーケンスに対して計算シーケンスが実行される。
【0046】
入力の例は、以下を含む:
- Altitude[m]:メートル単位での底からのプラットフォームの高さ(UUV/AUVから)。
【0047】
定数の例は、以下を含む:
ADC_Sample_Rate=3.6Gsps(この例では、実際の値はデジタル化の速さに依存する):
- IoR_H2O=海水の屈折率=1.333;
- 半値全幅でのレーザパルス幅(PW)=3nsec(例);
- Pix_Per_Line=走査ラインあたりのピクセル数(オペレータ選択によるスキャナRPM及びレーザPRFから導出される;1つの90度角錐ミラーファセットからのリターンの中央70度に対応する)。
【0048】
センサセットアップ変数の例は、以下を含む:
- Up_App_%=上側アパーチャ%:現在の走査角度でボトムリターンを探し始めるセンサからの距離を決定する(例えば、10mのプラットフォームの高度入力、0度/下向きの走査角度、及び80のUp_App_%が与えられると => 8mのスタンドオフに対応する物体/ボトムリターンを探すことを始める);
- Lower_App_%=下側アパーチャ%:現在の走査角度でボトムリターンを探すのを止めるセンサからの距離を決定する(例えば、10mのプラットフォームの高度入力、0度/下向きの走査角度、及び110のLower_App_%が与えられると => 11mのスタンドオフに対応する物体/ボトムリターンを探すことを止める)。
【0049】
計算シーケンスの例において、各走査ラインピクセルについて、例えば2048個のADCサンプルの時間リターンシーケンスが抽出される。シーケンス内の最初のADCサンプルは、レーザトリガーから一定のオフセットであるべきである。あるいは、ボトムリターンウィンドウ内及びその周辺で、振幅及びレンジデータを生成するのに必要なサンプルのみを抽出してもよい。
【0050】
図18は、各レーザパルスのデジタル化された時間リターンシーケンスから振幅及びレンジ値を計算するのに必要な処理の実装例を示している。この例において、各シーケンスは2048個のデジタル化されたサンプルを有する。
【0051】
ステップ1800にて、システムは最後の後方散乱サンプル番号Last_BS_Sampを特定する。リターン処理の値の例を以下に示す:
- Pix_Num=時間リターンシーケンスに関連するピクセルの番号(例えば、70度の走査ラインの開始時の最初のピクセルについて、Pix_Num=1);
- Scan_Width[m]=2*Altitude[m]+tan(70/2);
- Pix_GSD[m]=Scan_Width/Pix_Per_Line;
- Pix_X_Pos[m]=-1*Scan_Width/2+(Pix_Num-1)*Pix_GSD;
- Pix_Ang[rad]=atan(Pix_X_Pos/Altitude);
- Last_BS_Time[nsec]=((Up_App_%/100)*1e9*(2*Pix_X_Pos/sin(Pix_Ang)))/(3e8/IoR_H2O);
- Last_BS_Samp=int((Last_BS_Time+Pulse_Width)*ADC_Sample_Rate+0.5)。
【0052】
ステップ1810にて、システムは、以下に示すように、ボトムリターンウィンドウサンプルを特定する:
- First_Bottom_Sample=Last_BS_Sample+int(Pulse_Width*ADC_Sample_Rate+0.5);
- Last_Bottom_Sample=int((((Lower_App_%/100)*1e9*(2*Pix_X_Pos/sin(Pix_Ang)))/(3e8/IoR_H2O)))*ADC_Sample_Rate+0.5)。
【0053】
ステップ1820にて、システムはボトムリターンピークADCサンプルを見つける。ステップ1821にて、システムは、ノイズ低減のために、以下に示すように、予め計算されたガウシアンフィルタでボトムリターンウィンドウADCサンプルを畳み込む:
- フィルタカーネルのハーフ幅を、レーザパルス幅の半値全幅(FWHM)内のADCサンプルの数に設定する;例えば、3nsecのパルス幅且つ3.6Gspsのデジタイザサンプリングレートの場合、ハーフ幅は、int(3nsec*3.6Gsps+0.5)=11サンプルである;
- この場合、フィルタカーネルサイズ=ハーフ幅*2+1=23サンプルを設定する;
- カーネルサイズの中央50%に対応する+/-1シグマでガウス関数を計算する;
- 合計が1になるようにガウシアンフィルタの重みを正規化する;
- カーネルをボトムリターンADCサンプルで畳み込む;First_Bottom_SampleのADC値を中心としたカーネルで畳み込みを開始し、Last_Bottom_Sampleを中心としたカーネルで終了する;
- このフィルタリングされたデータシーケンスをレンジ&振幅抽出プロセスへの入力として保持する。
【0054】
ステップ1822にて、システムは、以下に示すように、ガウシアンフィルタリングされたボトムリターンウィンドウADCサンプルをハイパスフィルタで畳み込んで、ボトムリターンピークの発見に対する近接場後方散乱ロールオフの影響を低減させる:
- 平均化ウィンドウのハーフ幅を、レーザパルス幅FWHM内のADCサンプルの数の1.5倍に設定する(例えば、3nsecのパルス幅且つ3.6Gspsのデジタイザサンプリングレートの場合、ウィンドウのハーフ幅は、int(1.5*3nsec*3.6Gsps+0.5)=17サンプルである);
- この場合、平均化ウィンドウサイズ=ハーフ幅*2+1=35サンプルである;
- ボトムリターンウィンドウ内のガウシアンフィルタリングされたADCサンプル値の各々について、平均化ウィンドウの中心をそのサンプルにし、平均化ウィンドウ内の全てのサンプルの平均を計算し、現在のサンプルからその値を減算する。これが、ガウシアン及びハイパスフィルタリングされたADCサンプル値である。
【0055】
ステップ1823にて、ボトムピークADCサンプル番号が、以下の示すようにして見出される:
- Bottom_Pk_Samp=ボトムリターンウィンドウ内の最大のガウシアンハイパスフィルタリングされた値を持つサンプル;
- そのピークが局所的な極大値であり且つ後方散乱の下降勾配上にはないことを確認する。そうでない場合、2番目に高いピークを用いる。
【0056】
再び図18を参照するに、ステップ1830にて、システムはピクセル値及びレンジ情報を抽出する。実施形態例において、システムは、(ステップ1821からの)ボトムリターンピーク又はその付近を中心とするN個のガウシアンフィルタリングされたADC出力値に、2次多項式(y=ax+bx+c)をフィッティングし、ここで、Nは、int(Pulse_Width*ADC_Samp_Rate+0.5)に最も近い奇数であり、Pulse_Width=3nsであり、n=#ADC Gsps=3.6である。xは、2048個のADCサンプルの時間リターンシーケンスからのサンプル番号であり、yは、対応するADCロー(未加工)振幅であるとして、このシステムは、次式を用いて曲線フィッティング係数(a,b,c)を計算することができる:
D=n*sumx2*sumx4+2*sumx*sumx2*sumx3-sumx2^3-sumx^2*sumx4-n*sumx3^2
a=(n*sumx2*sumx2y+sumx*sumx3*sumy+sumx*sumx2*sumxy-sumx2^2*sumy-sumx^2*sumx2y-n*sumx3*sumxy)/D
b=(n*sumx4*sumxy+sumx*sumx2*sumx2y*sumx2*sumx3*sumy-sumx2^2*sumxy-sumx*sumx4*sumy-n*sumx3*sumx2y)/D
c=(sumx2*sumx4*sumy+sumx2*sumx3*sumxy+sumx*sumx3*sumx2y-sumx2^2*sumx2y-sumx*sumx4*sumxy-sumx3^2*sumy)/D。
【0057】
実施形態例において、次いで、システムは、曲線フィッティング係数からピーク値及びレンジを抽出する:
・ ピーク振幅(カウント)=c-b/4a
・ レンジ(メートル)=(12/39.37)*(-b/2a)*(0.2778)/(2*1.333)。
【0058】
図19は、概念上のシステム及び散乱ノイズ有り及び無しでのレンジ及び振幅処理の例を示している。
【0059】
図20は、ここに記載される処理の少なくとも一部を実行することができる例示的なコンピュータ2000を示している。コンピュータ2000は、プロセッサ2002、揮発性メモリ2004、不揮発性メモリ2006(例えば、ハードディスク)、出力装置2007、及びグラフィカルユーザインタフェース(GUI)2008(例えば、マウス、キーボード、ディスプレイ)を含む。不揮発性メモリ2006は、コンピュータ命令2012、オペレーティングシステム2016、及びデータ2018を格納する。一例において、コンピュータ命令2012は、揮発性メモリ2004からプロセッサ2002によって実行される。一実施形態において、物品2020が、非一時的なコンピュータ読み取り可能な命令を有する。
【0060】
処理は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせで実装され得る。処理は、プロセッサ、記憶媒体若しくはプロセッサによって読み取り可能な他の製造物品(揮発性及び不揮発性のメモリ、及び/又は記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力装置、及び1つ以上の出力装置を各々が含む複数のプログラマブルコンピュータ/マシン上で実行されるコンピュータプログラムにて実装され得る。入力装置を使用して入力されたデータにプログラムコードが適用されて、処理を実行し、出力情報を生成する。
【0061】
システムは、データ処理装置(例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のコンピュータ)による実行のため、又はその動作を制御するために、少なくとも部分的にコンピュータプログラムプロダクト(例えば、機械読み取り可能記憶装置内)を介して処理を実行することができる。そのような各プログラムは、コンピュータシステムと通信するために、ハイレベルの手続型又はオブジェクト指向のプログラミング言語で実装され得る。しかしながら、プログラムはアセンブリ言語又は機械語で実装されてもよい。言語は、コンパイルされた又はインタープリットされた言語であってもよく、それは、スタンドアローンプログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に適したモジュール、コンポーネント、サブルーチン、又は他のユニットとして、を含む任意の形態で展開され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように、あるいは、一箇所の、又は複数箇所に分散されて通信ネットワークによって相互接続された、複数のコンピュータ上で実行されるように展開され得る。コンピュータプログラムは、汎用又は特殊目的のプログラム可能なコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体又は記憶装置(例えば、CD-ROM、ハードディスク、又は磁気ディスケット)に格納されることができ、該コンピュータによって記憶媒体又は記憶装置が読み取られるときに該コンピュータを構成して動作させる。処理はまた、コンピュータプログラムで構成された機械読み取り可能記憶媒体として実装されることができ、実行時に、該コンピュータプログラム内の命令がコンピュータを動作させる。
【0062】
処理は、1つ以上のコンピュータプログラムを実行してシステムの機能を果たす1つ以上のプログラマブルプロセッサによって実行され得る。システムの全部又は一部が、特殊目的のロジック回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)及び/又はASIC(特定用途向け集積回路))として実装されてもよい。
【0063】
本発明の例示的な実施形態を説明したが、当業者にもはや明らかになることには、それらの概念を組み込んだ他の実施形態も使用され得る。ここに含まれる実施形態は、開示された実施形態に限定されるべきでなく、むしろ、添付の特請求項の精神及び範囲によってのみ限定されるべきである。ここで引用される全ての刊行物及び参考文献は、それらの全体にてここに明示的に援用される。
【0064】
ここに記載した複数の異なる実施形態の要素を組み合わせて、具体的には上述していない他の実施形態を形成してもよい。単一の実施形態の文脈で説明されたものである様々な要素がまた、別々に又は何らかの好適なサブコンビネーションで提供されてもよい。ここでは具体的に記載されていない他の実施形態も、以下の請求項の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A-10C】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20