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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 43/30 20200101AFI20231130BHJP
   B62J 43/16 20200101ALI20231130BHJP
   B62K 5/027 20130101ALI20231130BHJP
   B62K 5/06 20060101ALI20231130BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20231130BHJP
   B62K 11/10 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B62J43/30
B62J43/16
B62K5/027
B62K5/06
B62K5/10
B62K11/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022563656
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2021039124
(87)【国際公開番号】W WO2022107550
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2020193195
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】池長 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】中西 孝文
(72)【発明者】
【氏名】筒井 正行
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-214088(JP,A)
【文献】特開2013-208921(JP,A)
【文献】特開2011-20558(JP,A)
【文献】特開2019-77287(JP,A)
【文献】特開2019-189053(JP,A)
【文献】特開2019-189054(JP,A)
【文献】特開2012-214109(JP,A)
【文献】特開2016-43722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 43/16,43/30
B62K 5/00- 5/10,11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を構成する車体フレーム(70)と、該車体フレーム(70)に固定されるバッテリ(SB)と、後輪(WR)を回転自在に軸支するパワーユニット(90)を支持するアーム部材(16)と、前記車体フレーム(70)に対して前記アーム部材(16)を揺動自在に軸支するピボット(24)とを備えた鞍乗型車両(1)において、
前記ピボット(24)が、前記アーム部材(16)の前端部で、かつ前記バッテリ(SB)の近傍かつ下方の位置に配設されており、
シート(22)の下方に部材を収納する収納部(29)を備え、
前記バッテリ(SB)が、前記収納部(29)の近傍に配置されており、
前記バッテリ(SB)は、補器類に電力を供給するサブバッテリであり、
前記鞍乗型車両(1)は、メインバッテリ(B)の電力でモータ(M)を駆動する電動車両であり、
前輪(WF)を支持する前側車体(BF)と、前記後輪(WR)を支持する後側車体(BR)とを備え、
前記ピボット(24)は、前記後側車体(BR)に設けられており、
前記前側車体(BF)に対して前記後側車体(BR)をロール方向に揺動可能とする揺動装置(50)を備えており、
前記揺動装置(50)は、ラバー部材の弾性によってロール方向の揺動動作を中立位置に戻す付勢力を発生するナイトハルト機構を備え、
前記メインバッテリ(B)が、前記前側車体(BF)に設けられる前記収納部(29)に収納されており、
前記バッテリ(SB)が、前記後側車体(BR)に配設されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項9】
前記ピボット(24)は、前記後側車体(BR)の前端に位置することを特徴とする請求項1,2,6,7,8のいずれかに記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に係り、特に、後輪を回転自在に軸支する部材を車体フレームに対して揺動自在に支持する鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、前輪が1輪で後輪が2輪の鞍乗型三輪車において、リヤクッションで吊り下げられる後輪を上下方向に揺動させるためのピボットを有する構造が知られている。
【0003】
特許文献1には、前輪を支持する前側車体と、後輪を支持する後側車体とを備える鞍乗型三輪車において、後輪を回転自在に軸支するパワーユニットの前端部を、後側車体に対して揺動自在に軸支するためのピボットを有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-020558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の鞍乗型三輪車は、荷台下部に配設されるバッテリとパワーユニット前端部に位置するピボットとの間が離間しており、車両全体のマスが分散しやすかった。また、車両の操縦安定性を高めるためには、車両の前後長が長くなりすぎないことが求められる。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、マスの集中化を図ることができると共に車両の前後長を短くすることができる鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、車両を構成する車体フレーム(70)と、該車体フレーム(70)に固定されるバッテリ(SB)と、後輪(WR)を回転自在に軸支するパワーユニット(90)を支持するアーム部材(16)と、前記車体フレーム(70)に対して前記アーム部材(16)を揺動自在に軸支するピボット(24)とを備えた鞍乗型車両(1)において、前記ピボット(24)が、前記アーム部材(16)の前端部で、かつ前記バッテリ(SB)の近傍かつ下方の位置に配設されている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記バッテリ(SB)が、鉛直方向に対して後傾して配設されている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、シート(22)の下方に部材を収納する収納部(29)を備え、前記バッテリ(SB)が、前記収納部(29)の近傍に配置されている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記バッテリ(SB)は、補器類に電力を供給するサブバッテリであり、前記鞍乗型車両(1)は、メインバッテリ(B)の電力でモータ(M)を駆動する電動車両である点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前輪(WF)を支持する前側車体(BF)と、前記後輪(WR)を支持する後側車体(BR)とを備え、前記ピボット(24)は、前記後側車体(BR)に設けられており、前記前側車体(BF)に対して前記後側車体(BR)をロール方向に揺動可能とする揺動装置(50)を備えており、前記揺動装置(50)は、ラバー部材の弾性によってロール方向の揺動動作を中立位置に戻す付勢力を発生するナイトハルト機構を備える点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記前輪(WF)が1輪であり、前記後輪(WR)が車幅方向に2つ並んだ2輪である点に第6の特徴がある。
【0013】
また、前記メインバッテリ(B)と前記バッテリ(SB)とが前後方向で近接配置される点に第7の特徴がある。
【0014】
また、前記ピボット(24)は、前記揺動装置(50)の上方に位置する点に第8の特徴がある。
【0015】
さらに、前記ピボット(24)は、前記後側車体(BR)の前端に位置する点に第9の特徴がある。
【発明の効果】
【0016】
第1の特徴によれば、車両を構成する車体フレーム(70)と、該車体フレーム(70)に固定されるバッテリ(SB)と、後輪(WR)を回転自在に軸支するパワーユニット(90)を支持するアーム部材(16)と、前記車体フレーム(70)に対して前記アーム部材(16)を揺動自在に軸支するピボット(24)とを備えた鞍乗型車両(1)において、前記ピボット(24)が、前記アーム部材(16)の前端部で、かつ前記バッテリ(SB)の近傍かつ下方の位置に配設されているので、ピボットをアーム部材の前方寄りに配設することで車両の前後長が短くできると共に、ピボットをバッテリの近傍かつ下方に配設することでマスの集中化を図ることが可能となる。
【0017】
第2の特徴によれば、前記バッテリ(SB)が、鉛直方向に対して後傾して配設されているので、車両の前後長をより一層短くすることができると共に、マスの集中化を推進することが可能となる。
【0018】
第3の特徴によれば、シート(22)の下方に部材を収納する収納部(29)を備え、前記バッテリ(SB)が、前記収納部(29)の近傍に配置されているので、さらなるマスの集中化を図ることができる。
【0019】
第4の特徴によれば、前記バッテリ(SB)は、補器類に電力を供給するサブバッテリであり、前記鞍乗型車両(1)は、メインバッテリ(B)の電力でモータ(M)を駆動する電動車両であるので、鞍乗型電動車両において、車両の前後長の短縮やマスの集中化を図ることが可能となる。
【0020】
第5の特徴によれば、前輪(WF)を支持する前側車体(BF)と、前記後輪(WR)を支持する後側車体(BR)とを備え、前記ピボット(24)は、前記後側車体(BR)に設けられており、前記前側車体(BF)に対して前記後側車体(BR)をロール方向に揺動可能とする揺動装置(50)を備えており、前記揺動装置(50)は、ラバー部材の弾性によってロール方向の揺動動作を中立位置に戻す付勢力を発生するナイトハルト機構を備えるので、ナイトハルト機構を備えた鞍乗型車両において、車両の前後長の短縮やマスの集中化を図ることが可能となる。
【0021】
第6の特徴によれば、前記前輪(WF)が1輪であり、前記後輪(WR)が車幅方向に2つ並んだ2輪であるので、ナイトハルト機構を備えた鞍乗型三輪車において、車両の前後長の短縮やマスの集中化を図ることが可能となる。
【0022】
第7の特徴によれば、前記メインバッテリ(B)と前記バッテリ(SB)とが前後方向で近接配置されるので、重量物であるメインバッテリとサブバッテリとが前後方向で近接配置されることで、車両全体でマスの集中化を図ることが可能となる。
【0023】
第8の特徴によれば、前記ピボット(24)は、前記揺動装置(50)の上方に位置するので、揺動装置の上方のスペースを有効活用して、マスの集中化および前後長の短縮を図ることが可能となる。
【0024】
第9の特徴によれば、前記ピボット(24)は、前記後側車体(BR)の前端に位置するので、揺動装置の上方のスペースを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る鞍乗型電動三輪車の斜視図である。
図2】鞍乗型電動三輪車の左側面図である。
図3】外装部品を取り外した鞍乗型電動三輪車の左側面図である。
図4】前側車体を構成する車体フレームの斜視図である。
図5】揺動装置の斜視図である。
図6】後側車体の左側面図である。
図7】後側車体の斜視図である。
図8】カバー類を取り外した鞍乗型電動三輪車の一部拡大左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る鞍乗型車両としての鞍乗型電動三輪車1の斜視図である。また、図2は鞍乗型電動三輪車1の左側面図であり、図3図2の状態から外装部品を取り外した鞍乗型電動三輪車1の左側面図である。
【0027】
鞍乗型電動三輪車1は、1つの前輪WFを支持する前側車体BFと2つの後輪WRを支持する後側車体BRとを、揺動装置50によってロール方向に揺動可能に軸支したスクータ型の電動車両である。後輪WRを駆動するモータMに電力を供給する高圧のメインバッテリBは、前側車体BFに設けられるシート22の下方に、車幅方向に2本並んで収納される。2本のメインバッテリBは、開閉式のシート22を開いた状態で上方に引き抜くことで、車体から取り外すことができる。操向ハンドル2とシート22との間には、運転者が足を乗せる低床フロア12が設けられている。
【0028】
前側車体BFを構成する車体フレームFは、操向ハンドル2が固定されるステアリングステムF1を揺動可能に軸支するヘッドパイプF2と、ヘッドパイプF2から後方下方に延びるダウンフレームF3と、該ダウンフレームF3の両側面に接続されて下方に延びて後方に湾曲する左右一対の湾曲フレームF6と、該湾曲フレームF6に連結されて後方に延びる左右一対のフロアフレームF4とを含む。
【0029】
操向ハンドル2には、左右一対のバックミラー3およびメータ装置4が取り付けられている。操向ハンドル2を支持するステアリングステムF1の下端部にはボトムブリッジF5が固定されており、このボトムブリッジF5に、前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク9が固定されている。
【0030】
前側車体BFと後側車体BRとを揺動可能に支持する揺動装置50は、バッテリBの下方の位置でフロアフレームF4の下部に固定されている。大型の荷台19を有する後側車体BRには、ピボット24によって揺動自在に軸支される左右一対のアーム部材としてのスイングアーム16が設けられ、このスイングアーム16の後部に、後輪WRを支持するパワーユニット90が取り付けられている。
【0031】
ヘッドパイプF2の前方は、左右一対のサイドカウル10に連なるセンタカウル5で覆われており、ヘッドパイプF2の後方にはレッグシールド11が配設されている。ヘッドライト7を支持する延出部の左右には前側フラッシャランプ6が取り付けられており、前輪WFの上方を覆うフロントフェンダ8は、フロントフォーク9に支持されている。
低床フロア12の左右両端部には、フロアフレームF4の側方および下方を覆うアンダカウル13が連結されている。シート22の下方には、収納部としてのバッテリケース29を前方から覆うシート下カウル14と、シート下カウル14の後部に連結される後部カバー15が配設されている。
【0032】
図3に示すように、メインバッテリBの後方で、後部カバー15の内側の位置には、配線ターミナルであるジャンクションボックスJが配設されている。メインバッテリBおよびジャンクションボックスJは、モータMに電力を供給する電源装置を構成する。一方、メインバッテリBおよびジャンクションボックスJから供給される電力をモータMに伝達するための制御装置(PCU:パワーコントロールユニット)64は、後側車体BRの前端部に配設されている。メインバッテリBの下端部には、車体側の端子を覆うカバー部材としてのバッテリ下部カバー30が配設されている。
【0033】
後側車体BRの荷台19には、荷物のずれを防ぐ細パイプ状のストッパ18が設けられている。薄板状の合成樹脂等からなる荷台19は、後側車体フレーム70の上部に配設されており、後側車体フレーム70の下部には、後輪WRの上方を覆うリヤフェンダ17が固定されている。荷台19は、後側車体フレーム70に固定された金属製の丸パイプ材からなる荷台フレーム32に支持されている。荷台19の前端部には、荷台フレーム32の上方にアーチ状をなして立設する部分を覆う荷台フレームカバー20が配設されている。荷台フレームカバー20の前方側の面には、ノートやバインダ等の板状部材21の収納に好適な収納部23が設けられている。車体左側のリヤフェンダ17の前方には、左側電装部品カバー25が取り付けられている。左側電装部品カバー25の内側には、ヘッドライト7等の補器類に電力を供給するサブバッテリSBが配設されている。主に金属製の角パイプ材からなる後側車体フレーム70の後端部には、テールランプ27、左右一対の後側フラッシャランプ28およびライセンスプレートホルダ26が固定されている。
【0034】
図4は、前側車体BFを構成する車体フレームFの斜視図である。主に金属製の丸パイプ材で構成される車体フレームFは、ヘッドパイプF2から後方下方に延びるダウンフレームF3と、該ダウンフレームF3の両側面に接続されて下方に延びて後方に湾曲する左右一対の湾曲フレームF6と、該湾曲フレームF6に連結されて後方に延びる左右一対のフロアフレームF4とを含む。車幅方向中央のダウンフレームF3は、下端部で後方に湾曲して、左右一対のフロアフレームF4に固定されるガセットF7に連結される。
【0035】
ガセットF7の後方の位置で、フロアフレームF4の上部には、低床フロア12を支持する長尺の低床フロア支持ステー33が架け渡されている。低床フロア支持ステー33の後方には、バッテリケース29を下方から支持する前側バッテリケース支持ステー34および後側バッテリケース支持ステー37が、それぞれ左右一対で取り付けられている。
【0036】
後側バッテリケース支持ステー37の内側の位置には、車幅方向に指向して左右のフロアフレームF4を連結するクロスフレームF8が配設されており、クロスフレームF8の下部には、揺動装置50の後方寄りの位置を支持する後側ステー38が設けられている。一方、前側バッテリケース支持ステー34の下方の位置には、揺動装置50の前方寄りの位置を支持する前側ステー35が左右一対で設けられている。
【0037】
図5は、揺動装置50の斜視図である。この図では、右側後方上方から見た状態を示している。金属製のケーシングを有する揺動装置50は、後側車体BRに固定される金属製の揺動軸60を揺動自在に軸支すると共に、揺動軸60を中立位置に戻す付勢力を与える付勢機構を内蔵した構造体である。付勢機構には、複数の円柱状のラバー部材の弾性を利用したナイトハルト機構が適用される。揺動軸60は、車幅方向に貫通する2本のボルト61およびナット62によって後側車体BRに固定される。
【0038】
揺動装置50の前端部には、左右に分割された前側支持部51L,51Rが設けられており、揺動装置50の後方寄りの車幅方向中央には、上方に立設する後側支持部55が設けられている。前側支持部51L,51Rは、ボルト53、カラー部材52およびナット54を用いて、前側車体BFの車体フレームFに設けられた前側ステー35(図4参照)に固定される。また、後側支持部55は、ボルト56およびナット57を用いて、車体フレームFに設けられた後側ステー38(図4参照)に固定される。揺動装置50の車幅方向右側には、平坦な側面58が形成されている。
【0039】
図6は、後側車体BRの左側面図である。この図では、揺動装置50を後側車体BRに固定した状態で、前側車体BFを除去した状態を示す。揺動装置50の前側支持部51L,51Rには、ボルト53を通す貫通孔51aが形成されている。また、揺動装置50の後側支持部55には、ボルト56を通す貫通孔55aが形成されている。
【0040】
本実施形態では、メインバッテリBの電力を、配線ターミナルであるジャンクションボックスJに一旦送り、ジャンクションボックスJから延びる高圧ハーネスH1,H2によって、後側車体BRに送るように構成されている。ジャンクションボックスJから下方前方に延びる高圧ハーネスH1,H2は、前側支持部51L,51Rの前方に位置する湾曲部CでUターンするように湾曲した後、揺動装置50の右側を通って後方に向けて配索される。なお、電源装置としてのジャンクションボックスJを廃して、メインバッテリBから直接後側車体BRに電力を供給する構成としてもよい。
【0041】
荷台19は、荷物を載せる平板部19aの前端に、上方に立設する立設部19bを備えた形状とされる。荷台フレームカバー20は、荷台フレーム32のアーチ部分と荷台19の立設部19bとを同時に覆う構成とされる。
【0042】
図7は、後側車体BRの斜視図である。前記したように、荷台フレームカバー20の前面部には、収納部23が設けられている。モータMに供給する電力を制御する制御装置64は、この収納部23の下方の位置で、複数の冷却フィンが車体前方に露出するように配設されている。制御装置64の左右には、左側電装部品カバー25および右側電装部品カバー63が配設されている。左側電装部品カバー25の内側に配設されるバッテリとしてのサブバッテリSBは、左側電装部品カバー25と制御装置64との間の位置で、車体側面視で長手方向を上下方向に向けると共に、下端部より上端部の方が後方に位置するように鉛直方向に対して後傾して固定されている。
【0043】
図8は、カバー類を取り外した鞍乗型電動三輪車1の一部拡大左側面図である。サブバッテリSBは、車幅方向左側の後側車体フレーム70と制御装置64との間に配設されている。前記したように、パワーユニット90を支持するスイングアーム16は、左右一対の後側車体フレーム70に対して、ピボット24によって揺動自在に軸支されている。本実施形態において、ピボット24は、スイングアーム16の前端部かつ後側車体フレーム70の下端部に配設されている。これにより、車両の前後長を短く抑えることが可能となる。また、ピボット24は、サブバッテリSBの近傍かつ下方に設けられており、重量物であるサブバッテリSBの近傍かつ下方にピボット24が位置することで、マスの集中化を図ることが可能となる。
【0044】
また、サブバッテリSBは、鉛直方向に対して後傾して配設されている。サブバッテリSBの傾斜角度は、後側車体フレーム70および制御装置64の傾斜角度に沿っており、これにより、前側車体BFの後端面と後側車体BRの前端面とを近接配置することが可能となり、車両の前後長をより一層短くすることができると共に、マスの集中化を推進することができる。また、シート22の下方に部材を収納する収納部29を備え、サブバッテリSBが、収納部29の近傍に配置されることで、さらなるマスの集中化を図ることができる。さらに、メインバッテリBとサブバッテリSBとが前後方向で近接配置されるので、車両全体でマスの集中化が可能となる。
【0045】
なお、鞍乗型車両の形態、前側車体および後側車体の形態、パワーユニットやスイングアームの形状や構造、メインバッテリおよびサブバッテリの形状や配設位置等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係るピボットの配設位置は、鞍乗型電動三輪車に限られず、鞍乗型の二輪車や四輪車等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…鞍乗型電動三輪車(鞍乗型車両)、16…スイングアーム(アーム部材)、22…シート、24…ピボット、29…バッテリケース(収納部)、50…揺動装置、70…後側車体フレーム(車体フレーム)、90…パワーユニット、B…メインバッテリ、SB…サブバッテリ(バッテリ)、M…モータ、BF…前側車体、BR…後側車体、WF…前輪、WR…後輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8