(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20231130BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
E04B1/58 506L
E04B1/26 G
(21)【出願番号】P 2023137062
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100229091
【氏名又は名称】山路 英洋
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山口 圭介
(72)【発明者】
【氏名】大角 建
(72)【発明者】
【氏名】高谷 真次
(72)【発明者】
【氏名】久田 昌典
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-160200(JP,A)
【文献】特開2015-145556(JP,A)
【文献】特開2013-113000(JP,A)
【文献】特許第6807473(JP,B1)
【文献】特開2014-114671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/00 - 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と木質梁をコンクリート製の接合部により接合する接合構造であって、
前記木質梁の前記接合部側の端部に、接合金物が設けられ、
前記接合金物から前記接合部の水平方向の途中まで突出するせん断抵抗部材が、前記接合部に埋設され、
前記接合部の両側の前記木質梁から突出する水平鉄筋が、前記接合部内で継手部により接続され
、
前記接合金物は、
前記木質梁の端面に設けられる端板と、
前記木質梁の前記接合部側の端部に埋設される接合板と、
を有し、
前記水平鉄筋は前記端板を貫通し、
前記接合板が前記端板に対して直交するように、前記接合板の端部が前記端板に固定されることを特徴とする接合構造。
【請求項2】
前記接合板と前記せん断抵抗部材の高さ方向の設置範囲または梁幅方向の位置が異なることを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項3】
柱と木質梁をコンクリート製の接合部により接合する接合構造であって、
前記木質梁の前記接合部側の端部に、接合金物が設けられ、
前記接合金物から前記接合部の水平方向の途中まで突出するせん断抵抗部材が、前記接合部に埋設され、
前記接合部の両側の前記木質梁から突出する水平鉄筋が、前記接合部内で継手部により接続され
、
前記接合金物は、
前記木質梁の端面に設けられる端板と、
前記木質梁の前記接合部側の端部に埋設される接合板と、
前記端板の下端部に接合され、前記木質梁の荷重支持部の前記接合部側の端部の下面に配置されるフランジと、
を有し、
前記水平鉄筋は前記端板を貫通し、
前記フランジの下面が、前記木質梁の下面の難燃層で覆われることを特徴とする接合構造。
【請求項4】
前記フランジの幅が、前記木質梁の幅よりも前記木質梁の両側面の難燃層の厚み分小さいことを特徴とする請求項3記載の接合構造。
【請求項5】
前記フランジが、前記木質梁の荷重支持部の下面に設けられた窪みに配置されることを特徴とする請求項3記載の接合構造。
【請求項6】
前記接合金物は、前記端板の上下の端部に接合され、前記木質梁
の荷重支持部の前記接合部側の端部の上面と下面に配置されるフランジを
有し、上下の前記フランジで前記荷重支持部が挟み込まれることを特徴とする
請求項1または請求項
3に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁の接合構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
木質柱と木質梁による木造ラーメン架構では、木質柱と木質梁をコンクリート製の接合部(仕口部)を介して接合することがある。
【0003】
特許文献1には、接合部の両側に設けた突出金物によって接合部とその両側の木質梁との接続を行い、これらの突出金物同士を接合部に埋設される通しボルトによって連結し、且つ、接合部の上下の木質柱については、これらの木質柱に鋼棒のネジ鉄筋部を埋設し、木質柱から突出する当該鋼棒の異形鉄筋部を、接合部に埋設される異形鉄筋の両端と鉄筋継手により接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の接合構造では、接合部内の通しボルトの本数が多くなり、施工に手間がかかる。柱梁の接合部では、係る課題を解決し、容易に施工を行える構造が求められていた。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、容易に施工を行える柱梁の接合構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、柱と木質梁をコンクリート製の接合部により接合する接合構造であって、前記木質梁の前記接合部側の端部に、接合金物が設けられ、前記接合金物から前記接合部の水平方向の途中まで突出するせん断抵抗部材が、前記接合部に埋設され、前記接合部の両側の前記木質梁から突出する水平鉄筋が、前記接合部内で継手部により接続され、前記接合金物は、前記木質梁の端面に設けられる端板と、前記木質梁の前記接合部側の端部に埋設される接合板と、を有し、前記水平鉄筋は前記端板を貫通し、前記接合板が前記端板に対して直交するように、前記接合板の端部が前記端板に固定されることを特徴とする接合構造である。
また、前記接合板と前記せん断抵抗部材の高さ方向の設置範囲または梁幅方向の位置が異なってもよい。
第2の発明は、柱と木質梁をコンクリート製の接合部により接合する接合構造であって、前記木質梁の前記接合部側の端部に、接合金物が設けられ、前記接合金物から前記接合部の水平方向の途中まで突出するせん断抵抗部材が、前記接合部に埋設され、前記接合部の両側の前記木質梁から突出する水平鉄筋が、前記接合部内で継手部により接続され、前記接合金物は、前記木質梁の端面に設けられる端板と、前記木質梁の前記接合部側の端部に埋設される接合板と、前記端板の下端部に接合され、前記木質梁の荷重支持部の前記接合部側の端部の下面に配置されるフランジと、を有し、前記水平鉄筋は前記端板を貫通し、前記フランジの下面が、前記木質梁の下面の難燃層で覆われることを特徴とする接合構造である。
前記フランジの幅が、前記木質梁の幅よりも前記木質梁の両側面の難燃層の厚み分小さいことも望ましい。
前記フランジが、前記木質梁の荷重支持部の下面に設けられた窪みに配置されることも望ましい。
【0008】
本発明では、柱と木質梁をコンクリート製の接合部を介して接合する際に、木質梁の接合部側の端部に接合金物を設け、当該接合金物から突出するせん断抵抗部材を接合部のコンクリート内に埋設させる。また接合部の両側の木質梁から突出する水平鉄筋を、接合部内で継手部により接続する。上記の接合金物により木質梁と接合部の間でせん断力を伝達することで、接合部内に多数の通しボルトや水平鉄筋を配置する必要が無く、接合部内の構成を簡素化でき、施工が容易になる。また本発明では、木質梁から突出する水平鉄筋を継手部により接続するので、一方の木質梁を梁軸方向に移動させて当該木質梁から突出する水平鉄筋を他方の木質梁の孔に挿入するなどの必要が無く、木質梁を単に上から落とし込むことで設置でき、施工が容易になる。
【0009】
前記せん断抵抗部材は、鉛直方向に沿って設けられた孔開き鋼板ジベルであることが望ましい。
この場合、孔開き鋼板ジベルの孔に充填された接合部のコンクリートのせん断抵抗によりせん断力を確実に伝達でき、またせん断抵抗部材の構成も高耐力・高剛性なものになる。
【0010】
前記接合部の下方の柱から前記接合部の鉛直方向の途中まで突出するせん断抵抗部材が、前記接合部に埋設されることも望ましい。
上記のせん断抵抗部材により柱と接合部の間でせん断力を伝達することで、接合部内に多数の鉛直鉄筋等を配置する必要が無く、接合部内の構成を簡素化でき、施工が容易になる。
【0011】
前記接合部の上下の柱の間で一体に連続する鉛直鉄筋が、前記接合部を貫通するように配置されることも望ましい。
また前記の鉛直鉄筋に関しても、上下の柱の間に一体の鉛直鉄筋を連続するように配置することで、接合部内で鉛直鉄筋同士を機械継手等で接続する必要が無く、施工が容易になる。
【0012】
前記接合金物は、前記木質梁の端面に設けられる端板と、前記木質梁の前記接合部側の端部に埋設される接合板と、を有し、前記水平鉄筋は前記端板を貫通する。また、前記端板の上下の端部に接合され、前記木質梁の荷重支持部の前記接合部側の端部の上面と下面に配置されるフランジを有し、上下の前記フランジで前記荷重支持部が挟み込まれることも望ましい。
接合金物は、上記の接合板によって木質梁に確実に接合することができ、また上下のフランジにより、木質梁に加わる長期荷重と地震時のせん断力の双方を支持できる。
【0013】
前記接合部の上方にスラブが設けられ、前記スラブから突出する凸部が、前記スラブの上方の柱に埋設されることも望ましい。
これにより、スラブの上方の柱とスラブの間でせん断力を伝達でき、前記の鉛直鉄筋等の本数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易に施工を行える柱梁の接合構造等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
(1.接合構造1)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る接合構造1を示す図である。この接合構造1は、木質柱2と木質梁4をコンクリート製の接合部3を介して接合するものである。
図1(b)は木質梁4の鉛直断面であり、
図1(c)は接合部3の水平断面である。
図1(b)、(c)はそれぞれ
図1(a)の線A-A、B-Bによる断面に対応する。また
図1(a)は
図1(c)の線C-Cによる断面に対応する。
【0018】
木質柱2は木質材による柱であり、木質梁4は木質材による梁である。木質材としては、LVL(Laminated Veneer Lumber)やCLT(Cross Laminated Timber)、BP材、集成材等を用いることができるが、特に限定されない。
【0019】
木質柱2は、軸方向と直交する断面(以下、単に断面という)が矩形状であり、断面の中央部に位置する荷重支持部21の周囲に、難燃層22を設けた構成となっている。難燃層22には薬剤を含浸した木質材が用いられる。
【0020】
木質梁4も、矩形状の断面の中央部に位置する荷重支持部41の周囲に、上記と同様の難燃層42を設けた構成となっている。ただし、荷重支持部41の上面はスラブ5に接しており、難燃層42は省略される。
【0021】
接合構造1では、接合部3の上下に木質柱2が配置される。接合部3の平面は矩形状であり、その寸法は木質柱2の断面の寸法に対応する。接合部3のコンクリートは、その上方に設けられるスラブ5のコンクリートと連続しており、上側の木質柱2はスラブ5上に配置される。
【0022】
上下の木質柱2の接合部3側の端部には、一体に連続する鉛直鉄筋6の両端部が埋設される。当該鉛直鉄筋6は、接合部3およびスラブ5を貫通するように配置され、接合部3およびスラブ5のコンクリート内に埋設される。鉛直鉄筋6は異形鉄筋であってもよいし、ネジ鉄筋であってもよいが、前記の特許文献1のように、異形鉄筋部とネジ鉄筋部を途中で切り替える必要はない。
【0023】
鉛直鉄筋6の両端部は、上下の木質柱2の荷重支持部21とGIR(Glued in Rod)接合される。GIR(Glued in Rod)接合は、荷重支持部21に形成された孔に鉛直鉄筋6の端部を挿入し、当該孔に接着材を充填する接合方法である。
図1(c)に示すように、鉛直鉄筋6は、平面において、矩形の角部と矩形の各辺の中央部に当たる計8箇所で配置され、これらの鉛直鉄筋6を取り囲むように、接合部3のコンクリート内にフープ筋7が埋設される。フープ筋7は、上下に間隔を空けて複数段配置される。
【0024】
下側の木質柱2の荷重支持部21の上面には円形鋼管9の下部が埋設される。円形鋼管9の上部は、荷重支持部21から接合部3の鉛直方向の途中まで凸状に突出し、この凸部(せん断抵抗部材)が接合部3のコンクリートに埋設されることで、接合部3とその下方の木質柱2との間でせん断力の伝達が可能となる。
【0025】
円形鋼管9はスラブ5の上面にも埋設され、当該円形鋼管9の上部はスラブ5から凸状に突出する。この凸部が上側の木質柱2の荷重支持部21に挿入されることで、スラブ5とその上方の木質柱2との間でもせん断力の伝達が可能となる。
【0026】
木質梁4は、接合部3の左右両側に配置される。左右の木質梁4の接合部3側の端部には、接合金物8が設けられる。接合金物8は、木質梁4のせん断力を一旦支持し、これを接合部3に伝達する機能を有する。
【0027】
図2は接合金物8を示す図である。接合金物8は鋼板等を組み合わせて形成され、端板81、接合板82、フランジ83、孔開き鋼板ジベル84等を有する。
【0028】
端板81は、木質梁4の荷重支持部41の接合部3側の端面に沿って配置される板材である。接合板82とフランジ83は、端板81から木質梁4側に突出する板材であり、接合板82は、板面を鉛直方向として端板81の幅方向の中央部分に配置される。フランジ83は、端板81および接合板82の上下の端部に接合される水平方向の板材である。
【0029】
接合金物8は、木質梁4の荷重支持部41から突出する水平鉄筋10を端板81の孔811に通し、接合板82を荷重支持部41に形成された梁軸方向のスリット411に挿入して荷重支持部41の接合部3側の端部に配置される。この際、接合板82に設けられた孔821と、荷重支持部41に設けられた木質梁4の幅方向の孔413が連続する。ドリフトピン85をこれらの孔821、413に通して配置することで、接合金物8が荷重支持部41の接合部3側の端部に固定される。
【0030】
フランジ83は、荷重支持部41の上下に設けられた窪み412に配置される。上下のフランジ83は、木質梁4の長期荷重や地震時のせん断力を受けるために設けられており、これらのフランジ83で受けたせん断力は、接合板82を介して孔開き鋼板ジベル84に伝達される。窪み412を設けることにより、上下のフランジ83を荷重支持部41の上下面と同一面内に収めることができるが、窪み412を省略し、上下のフランジ83を荷重支持部41の上下に配置することも可能である。
【0031】
孔開き鋼板ジベル84は、上記のせん断力を接合部3に伝達するものである。孔開き鋼板ジベル84は、端板81から接合部3の水平方向の途中まで突出する板材であり、端板81の幅方向の中央部分で板面を鉛直方向として配置される。
【0032】
孔開き鋼板ジベル84は接合部3に埋設され、孔開き鋼板ジベル84の孔841(
図1(a)参照)には接合部3のコンクリートが充填される。孔開き鋼板ジベル84は、当該コンクリートのせん断抵抗によりせん断力を伝達するせん断抵抗部材として機能する。孔開き鋼板ジベル84は、端板81の高さ方向の中間部のみに配置されており、端板81の全高さに亘って配置する場合と比べて鋼材量が低減される。
【0033】
水平鉄筋10は、一方の端部が木質梁4の荷重支持部41の接合部3側の端部にGIR接合され、他方の端部が接合金物8の端板81の孔811を貫通して接合部3のコンクリート内に突出する。接合部3の左右の木質梁4から突出する水平鉄筋10の先端同士は、
図1(a)に示すように、接合部3内で継手部11により接続される。継手部11としては機械継手を用いることができるが、これに限ることはない。
【0034】
(2.接合構造1の構築方法)
接合構造1を構築するには、下側の木質柱2を現場で構築した後、
図3(a)の矢印に示すように、接合金物8や水平鉄筋10を事前に取り付けた左右の木質梁4を上方から落とし込み、
図3(b)に示すように下側の木質柱2の上に設置する。鉛直鉄筋6と円形鋼管9は、予め下側の木質柱2の荷重支持部41の上端部に固定されている。木質梁4への接合金物8と水平鉄筋10の取り付けは現場で行われるが、工場等で予め行われても良い。
【0035】
木質梁4の設置時には、下側の難燃層42の接合部3側の端部を木質柱2の難燃層22の上に載置する。これにより、重力によって木質梁4の下側の難燃層42が荷重支持部41から剥離するのが防止される。また木質柱2の難燃層22の上面は荷重支持部21の上面より低い位置にあり、木質梁4の設置時には、荷重支持部21の上面と木質梁4の下側の難燃層42の上面とが同じ高さとなる。
【0036】
この後、
図3(b)に示すように左右の木質梁4の水平鉄筋10の先端同士を継手部11により接続し、フープ筋7等の配置を行った上で、
図3(c)に示すように接合部3とスラブ5のコンクリートを打設する。スラブ5の上面には円形鋼管9が埋設される。また接合金物8の端板81は接合部3のコンクリートを打設する際の型枠として機能し、接合部3のコンクリートの打設時は、残りの必要な型枠を配置するだけでよい。
【0037】
この後、
図3(c)の矢印に示すように、上側の木質柱2をスラブ5の上方から落とし込み、スラブ5から突出する水平鉄筋10の上端部と円形鋼管9を、木質柱2の荷重支持部21に形成した孔211や切り込み212に挿入する。孔211には接着材を充填し、これにより
図1(a)等に示す接合構造1が形成される。
【0038】
このように、本実施形態では、木質柱2と木質梁4をコンクリート製の接合部3を介して接合する際に、木質梁4の接合部3側の端部に接合金物8を設け、当該接合金物8から突出する孔開き鋼板ジベル84を接合部3のコンクリート内に埋設させる。また接合部3の両側の木質梁4から突出する水平鉄筋10を、接合部3内で継手部11により接続する。上記の接合金物8により木質梁4と接合部3の間でせん断力を伝達することで、接合部3内に多数の通しボルトや水平鉄筋10を配置する必要が無く、接合部3内の構成を簡素化でき、施工が容易になる。また本実施形態では、木質梁4から突出する水平鉄筋10を継手部11により接続するので、一方の木質梁4を梁軸方向に移動させて当該木質梁4から突出する水平鉄筋10を他方の木質梁4の孔に挿入するなどの必要が無く、木質梁4を単に上から落とし込むことで設置でき、施工が容易になる。
【0039】
また本実施形態では、孔開き鋼板ジベル84の孔841に充填された接合部3のコンクリートのせん断抵抗によりせん断力を確実に伝達でき、その構成も高耐力・高剛性になる。さらに、本実施形態では接合部3の下方の木質柱2に設けた円形鋼管9により当該木質柱2と接合部3の間でせん断力を伝達することで、接合部3内に多数の鉛直鉄筋6等を配置する必要が無く、接合部3内の構成を簡素化でき、施工が容易になる。
【0040】
上記の鉛直鉄筋6に関しても、本実施形態では上下の木質柱2の間に一体の鉛直鉄筋6を連続するように配置することで、接合部3内で鉛直鉄筋6同士を機械継手等で接続する必要が無く、施工が容易になる。ただし、上下の木質柱2から突出する鉛直鉄筋の先端同士を、接合部3内で機械継手等の継手部により接続することは可能である。
【0041】
円形鋼管9はスラブ5の上面にも設けられ、その上部がスラブ5の上方の木質柱2に埋設されることで、当該木質柱2とスラブ5の間でせん断力を伝達でき、鉛直鉄筋6等の本数を減らすことができる。
【0042】
また前記の接合金物8は、接合板82によって木質梁4に確実に接合することができ、また上下のフランジ83により、木質梁4に加わる長期荷重と地震時のせん断力の双方を支持できる。
【0043】
しかしながら、本発明が上記の実施形態に限られることはない。例えば本実施形態では、木質柱2と木質梁4を接合構造1により接合しているが、木質柱2に代えて鉄筋コンクリート造の柱を用いることも可能であり、コンクリートと木質材による合成構造の柱としてもよい。
【0044】
また本実施形態の接合構造1は、単一構面のラーメン構造に適用されるが、
図1(a)に示す構面と、当該構面と平面において直交する構面の二方向のラーメン構造の接合箇所に適用されてもよい。この場合、木質梁4は接合部3の左右だけでなく、接合部3の前後(
図1(c)の上下に対応する)にも設けられる。
【0045】
また木質柱2や木質梁4の構成も前記に限定されることはなく、例えば難燃層22、42の外側に化粧材を設けても良いし、難燃層22、42として石膏ボード等の難燃材料を用いてもよい。また木質柱2や木質梁4の断面は矩形状であるが、その形状も特に限定されない。
【0046】
また本実施形態では接合金物8のせん断抵抗部材として孔開き鋼板ジベル84を用いているが、孔開き鋼板ジベル84の代わりに頭付きスタッドや鉄筋等の棒状の突出部材を用いることもできる。同様に、本実施形態では木質柱2のせん断抵抗部材として円形鋼管9を用いているが、円形鋼管9の代わりに頭付きスタッドや鉄筋等の棒状の突出部材を用いることも可能である。
【0047】
また本実施形態ではドリフトピン85を用いて接合金物8を木質梁4の荷重支持部41に固定するが、これに限ることはなく、ドリフトピン85が無くても構造的には成立する。
【0048】
接合金物8のその他の形状、構成等も特に限定されない。以下、別の接合金物を用いる例を、第2~第4の実施形態として説明する。これらの実施形態は、それまでに説明した実施形態と異なる構成について主に説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また第1の実施形態も含め、各実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせることができる。
【0049】
[第2の実施形態]
図4(a)~(c)は、本発明の第2の実施形態の接合構造1aに関し、
図1(a)~(c)と同様の断面を示したものである。接合構造1aは、接合金物8aの形状において第1の実施形態の接合構造1と主に異なる。
【0050】
図5は接合金物8aを示す図である。接合金物8aは、前記の接合金物8と同様の端板81、接合板82、フランジ83、孔開き鋼板ジベル84を有するが、孔開き鋼板ジベル84は、端板81の幅方向の両側において、端板81の全高さに亘って設けられる。
【0051】
接合金物8aの木質梁4への取り付け時も、木質梁4の荷重支持部41から突出する水平鉄筋10を端板81の孔811に貫通させるが、荷重支持部41の接合部3側の端部と接合板82に前記した孔が設けられず、木質梁4の断面欠損が回避された構成となっている。
【0052】
また本実施形態では、
図4(a)、(c)に示すように、前記した円形鋼管9の代わりに、鋼板を平面十字状に組み合わせた十字プレート9aが用いられる。十字プレート9aの下部は、下側の木質柱2の荷重支持部21やスラブ5の上面に埋設され、その上部が木質柱2やスラブ5から凸状に突出し、この凸部(せん断抵抗部材)が接合部3のコンクリートや上側の木質柱2の荷重支持部21に埋設される。なお
図4(c)の符号13は接合部3の外面に設けられる化粧材である。
【0053】
[第3の実施形態]
図6(a)~(c)は、本発明の第3の実施形態の接合構造1bに関し、
図1(a)~(c)と同様の断面を示したものである。接合構造1bでは、接合金物8bの孔開き鋼板ジベル84の突出長が大きくなっており、その孔841にフープ筋7aを通して配置することで孔841内のコンクリートのせん断抵抗力を高め、せん断力の伝達性能を向上させた点で第1の実施形態の接合構造1と主に異なる。
【0054】
図6(c)に示すように、フープ筋7aは、平面コの字状の一対の鉄筋71の両端部同士を組み合わせて環状としたものであり、各鉄筋71の両端部を孔開き鋼板ジベル84の孔841に通し、両鉄筋71の端部同士を溶接等により固定することで、接合構造1bの施工時にフープ筋7aを容易に配置することができる。
【0055】
また本実施形態では、接合部3の下方の木質柱2の荷重支持部21の断面中央部が上方に凸となっており、この凸部9b(せん断抵抗部材)が接合部3のコンクリートに埋設されることで、当該木質柱2と接合部3との間でせん断力を伝達することが可能である。
【0056】
上側の木質柱2については、荷重支持部21が接合部3の上面に当接し、その両側がスラブ5に挟まれた状態となっている。これにより、上側の木質柱2とスラブ5の間でせん断力を伝達することができる。当該木質柱2の難燃層22は、スラブ5の上に載置される。
【0057】
接合構造1bを構築するには、下側の木質柱2を構築した後、
図7(a)の矢印に示すように、接合金物8bや水平鉄筋10を事前に取り付けた左右の木質梁4を上方から落とし込み、
図7(b)に示すように下側の木質柱2の上に載置する。この後、左右の木質梁4の水平鉄筋10の先端同士を継手部11により接続し、フープ筋7aの配置を行い、
図7(c)に示すように接合部3のコンクリートを打設する。
【0058】
次に、
図7(c)の矢印に示すように、上側の木質柱2をスラブ5の上方から落とし込み、スラブ5から突出する水平鉄筋10の上端部を木質柱2の荷重支持部21に形成した孔211に挿入し、当該孔に接着材を充填する。こうして
図7(d)に示すように木質柱2の建方を行った後、スラブ5のコンクリートを打設することにより、
図6(a)等に示す接合構造1bが形成される。
【0059】
[第4の実施形態]
図8(a)~(c)は、本発明の第4の実施形態の接合構造1cに関し、
図1(a)~(c)と同様の断面を示したものである。接合構造1cは、接合金物8cの形状において第1の実施形態の接合構造1と主に異なる。
【0060】
図9は接合金物8cを示す図である。接合金物8cは、前記の接合金物8と同様の端板81、接合板82、フランジ83、孔開き鋼板ジベル84を有するが、フランジ83は端板81の下端部のみに設けられ、木質梁4の長期荷重を支持する。
【0061】
また接合板82と孔開き鋼板ジベル84は、端板81の幅方向の両側で、木質梁4の荷重支持部41の幅方向の両端部に当たる位置に設けられており(
図8(c)等も参照)、接合板82は、端板81とフランジ83とを接続するように略直角三角形状の形状を有する。また
図8(a)に示すように、孔開き鋼板ジベル84は、端板81の高さ方向の中央部分よりもやや下に設けられており、孔開き鋼板ジベル84の上端と、接合板82の上端とは同程度の高さに位置する。なお本実施形態では、接合部3の平面の寸法が木質柱2の断面の寸法に対応する。
【0062】
また本実施形態では、
図8(a)に示すように、接合部3の下方の木質柱2の荷重支持部21が、難燃層22よりも上方に突出しており、この凸部(せん断抵抗部材)によって当該木質柱2と接合部3の間でせん断力を伝達することが可能である。また荷重支持部21の上端部には鉄筋9cの下部が埋設されており、鉄筋9cの上部は接合部3のコンクリートに埋設される。この鉄筋9cは、下側の木質柱2が地震時に水平方向へずれようとする動きに対するフェールセーフとして機能する。鉄筋9cは、矩形の四隅に対応する位置で計4本設けられる。
【0063】
また木質梁4の下側の難燃層42は、前記と同様、下側の木質柱2の難燃層22の上に載置されている。また本実施形態では、上側の木質柱2について、荷重支持部21がスラブ5のコンクリートに挟まれる形で接合部3の上面に当接する。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0065】
1、1a、1b、1c:接合構造
2:木質柱
3:接合部
4:木質梁
5:スラブ
6:鉛直鉄筋
7、7a:フープ筋
8、8a、8b、8c:接合金物
9:円形鋼管
9a:十字プレート
9b:凸部
9c:鉄筋
10:水平鉄筋
11:継手部
81:端板
82:接合板
83:フランジ
84:孔開き鋼板ジベル
【要約】
【課題】容易に施工を行える柱梁の接合構造等を提供する。
【解決手段】接合構造1は、木質柱2と木質梁4をコンクリート製の接合部3により接合するものである。接合構造1では、木質梁4の接合部3側の端部に、接合金物8が設けられ、接合金物8から接合部3の水平方向の途中まで突出する孔開き鋼板ジベル84が、接合部3に埋設され、接合部3の両側の木質梁4から突出する水平鉄筋10が、接合部3内で継手部11により接続される。
【選択図】
図1