(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】量子ドット及び、量子ドットを用いた波長変換部材、照明部材、バックライト装置、表示装置、並びに、量子ドットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/88 20060101AFI20231201BHJP
C01B 19/04 20060101ALI20231201BHJP
C01B 19/00 20060101ALI20231201BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20231201BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20231201BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231201BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C09K11/88 ZNM
C01B19/04 H
C01B19/04 W
C01B19/00 K
B82Y20/00
B82Y30/00
H01L33/50
H01L29/06 601D
(21)【出願番号】P 2022146660
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2019076953の分割
【原出願日】2018-07-27
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2017145269
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017198667
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和則
(72)【発明者】
【氏名】堤 絵美
(72)【発明者】
【氏名】小椋 佑子
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅典
(72)【発明者】
【氏名】荷方 惣一朗
(72)【発明者】
【氏名】高三潴 由香
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-95850(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106753381(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
C01B 19/04
C01B 19/00
B82Y 20/00
B82Y 30/00
H01L 33/50
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cdを含まず、蛍光半値幅が、40nm以下であり、コアが、ZnTe、ZnTeS、ZnTeSe、或いは、ZnTeSeSで形成される、ことを特徴とする量子ドット。
【請求項2】
銅カルゴゲニドを前駆体として金属交換反応により合成される、ことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット。
【請求項3】
有機銅化合物、或いは、無機銅化合物と、有機カルコゲン化合物とから、前駆体としての銅カルコゲニドが合成され、前記前駆体を用いて、前記量子ドットが合成される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の量子ドット。
【請求項4】
前記コアが、ZnTeで形成され、Cuの残存量が100ppm以下である、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の量子ドット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウムを含まない量子ドット及び、量子ドットを用いた波長変換部材、照明部材、バックライト装置、表示装置、並びに、量子ドットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、数百~数千個程度の原子から構成された、粒径が数nm~数十nm程度のナノ粒子である。量子ドットは、蛍光ナノ粒子、半導体ナノ粒子、またはナノクリスタルとも呼ばれる。
【0003】
量子ドットは、ナノ粒子の粒径や組成によって、発光波長を種々変更することができる。また、量子ドットの性能を表すものとして、蛍光量子収率(Quantum Yield:QY)や蛍光半値幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)が挙げられる。量子ドットを可視光領域の波長変換材料として用いる場合、その最も大きな特徴として、表現可能な色の範囲が広いこと、すなわち高色域化が挙げられる。従って、量子ドットを用いた可視光領域での波長変換部材による高色域化において、重要な光学特性は蛍光半値幅である。
【0004】
従来用いられてきた高効率な量子ドットは、主としてカドミウム(Cd)を含有するものであった。Cdを含む量子ドットは、蛍光量子収率が高く、蛍光半値幅が狭いという利点がある。その一方、Cdの毒性から各国でその使用に規制があり、このことが実用化の大きな障壁となっていた。
【0005】
これに対し、Cdを含有しないCdフリーの量子ドットの開発も数多く検討されている。代表的なものの一つにカルコパイライト系のCopper Indium Sulfide(CuInS2):CIS系量子ドットがある(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、発光原理が欠陥発光であるため、その光学特性はCd系の量子ドットと比較して高くなく、一般的に蛍光半値幅は80~100nm以上である。CIS以外のカルコパイライト系量子ドットも同様で、これまで蛍光半値幅60nmを下回るカルコパイライト系量子ドットの合成は報告されていない。
【0006】
また、Cdフリーの量子ドットのもう一つの代表的なものとしてIndium Phosphide(InP):InP系の量子ドットがある(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、InP系量子ドットは、CdSe系量子ドットと比較すると蛍光半値幅が広く、これまで蛍光半値幅が35nmを下回るInP系量子ドットの合成は報告されていない。
【0007】
また、カドミフリー系量子ドットとしてセレン化亜鉛(ZnSe)が知られているが、ZnSeはバンドギャップが2.7eVのため、ZnSeのみを用いて緑色以上の発光は不可能である。
【0008】
別の亜鉛系の量子ドットとしてはテルル化亜鉛(ZnTe)が考えられるが、その溶液合成に関しての報告例は多くない。
【0009】
下記の非特許文献1では、有機亜鉛化合物とトリアルキルホスフィンテルリドを用いた直接的なZnTeの合成方法について詳細に記載されている。本論文で得られたZnTeは、粒子成長とともに吸収が長波長側にシフトすることなど詳細に研究されているが、本論文で合成されたZnTeはいずれも蛍光特性を有しない。
【0010】
また、下記の非特許文献2では、閃亜鉛鉱構造のZnTeの合成を、有機亜鉛化合物とスーパーヒドリド(Lithium triethylborohydride:LiBHEt3)によって還元したTeを原料として合成している。反応条件を種々検討することによって、ZnTeのナノ粒子の形態を制御する研究が報告されている。非常に反応性が高く、量産において使用しづらいスーパーヒドリドを用いているのが合成方法の特徴である。本論文では得られたZnTeの粒子形態、結晶構造と吸収スペクトルについては詳細が報告されているが、蛍光特性に関しては記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2007/060889号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【文献】Journal of Materials Chemistry. C, 2014, 2, 2877 Synthesis and properties of ZnTe and ZnTe/ZnS core/shell semiconductor nanocrystals
【文献】Journal of Physical Chemistry C, 2008, 112(14), pp 5454-5458 Shape-Control of ZnTe Nanocrystal Growth in Organic Solution
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、CIS系やInP系などCdを含有しない量子ドットの研究開発は進んでいるものの、いずれの量子ドットも蛍光半値幅が大きい。
【0014】
また、上記したZnTeに関し、直接合成による合成方法では、亜鉛原料の反応性を高めるために、例えば、ジエチル亜鉛(Et2Zn)を使用するのが一般的である。しかしながら、ジエチル亜鉛は反応性が高く、空気中で発火するため不活性ガス気流下で取り扱わなければならないなど、原料の取り扱いや保管が難しく、それを用いた反応も発熱、発火等の危険を伴うため、量産には不向きである。
【0015】
また、反応性の低い脂肪酸塩やハロゲン化亜鉛など有機亜鉛原料を用いた反応系では、ZnTeは生成するものの、粒子生成不十分か、構造欠陥が多い。このため、精製したナノ粒子には一般的に蛍光がみられないという問題があった。
【0016】
蛍光半値幅の狭いZnTe量子ドットの製造方法において、量産可能な安全な方法で蛍光が確認された報告例はなかった。
【0017】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、蛍光半値幅が狭いカドミウムを含まない量子ドットを提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、上記の量子ドットを、安全に、且つ量産可能に合成する量子ドットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明における量子ドットは、Cdを含まず、蛍光半値幅が、40nm以下であり、コアが、ZnTe、ZnTeS、ZnTeSe、或いは、ZnTeSeSで形成される、ことを特徴とする。
【0020】
本発明では、銅カルゴゲニドを前駆体として金属交換反応により合成されることが好ましい。
【0021】
本発明では、有機銅化合物、或いは、無機銅化合物と、有機カルコゲン化合物とから、前駆体としての銅カルコゲニドが合成され、前記前駆体を用いて、前記量子ドットが合成されることが好ましい。
【0022】
本発明では、前記コアが、ZnTeで形成され、Cuの残存量が100ppm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の量子ドットによれば、粒子形状やサイズの揃った量子ドットを合成できるため、蛍光半値幅を狭くでき、高色域化の向上を図ることができる。
【0024】
また本発明の量子ドットの製造方法によれば、蛍光半値幅が狭く、Cdを含まない量子ドットを、安全に、且つ、量産可能な方法で合成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態における量子ドットの模式図である。
【
図2】本発明の実施形態のナノクリスタルを用いたLED装置の模式図である。
【
図3】
図2に示すLED装置を用いた表示装置の縦断面図である。
【
図4】実施例1におけるZnTeの蛍光(Photoluminescence:PL)スペクトルである。
【
図5】実施例2におけるZnTeのPLスペクトルである。
【
図6】実施例3におけるZnTeSのPLスペクトルである。
【
図7】実施例4におけるZnTeSeSのPLスペクトルである。
【
図8】実施例5におけるZnTeのPLスペクトルである。
【
図9】実施例6におけるZnTeSのPLスペクトルである。
【
図10】実施例1におけるZnTeの走査線電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)写真である。
【
図11】実施例1におけるZnTeのX線回折(Xray Diffraction:XRDスペクトルである。
【
図12】実施例1におけるCu
2TeのSEM写真である。
【
図13】実施例7におけるZnTeのPLスペクトルである。
【
図14】実施例8におけるZnTeSeのPLスペクトルである。
【
図15】実施例9におけるZnTeSeのPLスペクトルである。
【
図16】実施例10におけるZnTeSeのPLスペクトルである。
【
図17】実施例11におけるZnTe/ZnSeのPLスペクトルである。
【
図18】実施例12におけるZnTe/ZnSe/ZnSのPLスペクトルである。
【
図19】実施例13におけるZnTeS/ZnSeSのPLスペクトルである。
【
図20】実施例14におけるZnTeSeS/ZnSeSのPLスペクトルである。
【
図21】実施例15におけるZnTe/ZnSeのPLスペクトルである。
【
図22】実施例16におけるZnSeのPLスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0027】
図1は、本実施形態における量子ドットの模式図である。
図1Aに示す量子ドット5は、Cdを含まないナノクリスタルである。
【0028】
本実施形態では、量子ドット5は、亜鉛とテルル(以下、Zn、Teと称する)、或いは、亜鉛とテルルと硫黄(以下、Zn、Te、Sと称する)、又は、亜鉛とテルルとセレンと硫黄(Zn、Te、Se、Sと称する)とを含有するナノクリスタルであることが好ましい。なお、亜鉛とテルルとセレンを含むナノクリスタルでもよい。或いは、量子ドット5は、亜鉛とセレンとを含有するナノクリスタルでもよい。
【0029】
量子ドット5は、バンド端発光による蛍光特性を有し、その粒子の大きさから量子サイズ効果を発現する。
【0030】
ここで「ナノクリスタル」とは、数nm~数十nm程度の粒径を有するナノ粒子を指す。本実施の形態では、多数の量子ドット5を、略均一の粒径にて生成することができる。
【0031】
量子ドット5に含まれる、ZnとTe、或いは、ZnとTeとS、ZnとTeとSとSe、又は、ZnとSeは、主成分であり、これら元素以外の元素が含まれていてもよい。ただし、Cdは含まず、また、リン(P)も含まないことが好適である。有機リン化合物は高価であり、また空気中で酸化されやすいため合成が不安定化し、コストの上昇や蛍光特性の不安定化、製造工程の煩雑性を招きやすくなる。
【0032】
本実施形態の量子ドット5は、蛍光半値幅が40nm以下である。「蛍光半値幅」とは、蛍光スペクトルにおける蛍光強度のピーク値の半分の強度での蛍光波長の広がりを示す半値全幅(Full Width at Half Maximum)を指す。また、蛍光半値幅は30nm以下であることが好ましい。また、蛍光半値幅は、28nm以下であることが好ましい。また、蛍光半値幅は26nm以下であることがより好ましい。また、蛍光半値幅は25nm以下であることが更に好ましい。また、蛍光半値幅は23nm以下であることが更により好ましい。このように、蛍光半値幅を狭くすることができるため、高色域化の向上を図ることができる。本実施形態では、後述するように、量子ドット5を合成する反応系として、銅カルコゲニドを前駆体として合成した後に、前駆体に対して金属交換反応を行う。このような間接的な合成反応に基づいて量子ドット5を製造することで、蛍光半値幅を狭くすることができ、具体的には40nm以下(好ましくは30nm以下)の蛍光半値幅を得ることができる。
【0033】
図1Aに示すように、量子ドット5の表面には多数の有機配位子11が配位していることが好ましい。これにより、量子ドット5同士の凝集を抑制でき、目的とする光学特性が発現する。反応に用いることのできる配位子は特に限定はされないが、例えば、以下の配位子が、代表的なものとして挙げられる。
脂肪族1級アミン系、オレイルアミン:C
18H
35NH
2、ステアリル(オクタデシル)アミン:C
18H
37NH
2、ドデシル(ラウリル)アミン:C
12H
25NH
2、デシルアミン:C
10H
21NH
2、オクチルアミン:C
8H
17NH
2
脂肪酸、オレイン酸:C
17H
33COOH、ステアリン酸:C
17H
35COOH、パルミチン酸:C
15H
31COOH、ミリスチン酸:C
13H
27COOH、ラウリル酸:C
11H
23COOH、デカン酸:C
9H
19COOH、オクタン酸:C
7H
15COOH
チオール系、オクタデカンチオール:C
18H
37SH、ヘキサンデカンチオール:C
16H
33SH、テトラデカンチオール:C
14H
29SH、ドデカンチオール:C
12H
25SH、デカンチオール:C
10H
21SH、オクタンチオール:C
8H
17SH
ホスフィン系、トリオクチルホスフィン:(C
8H
17)
3P、トリフェニルホスフィン:(C
6H
5)
3P、トリブチルホスフィン:(C
4H
9)
3P
ホスフィンオキシド系、トリオクチルホスフィンオキシド:(C
8H
17)
3P=O、トリフェニルホスフィンオキシド:(C
6H
5)
3P=O、トリブチルホスフィンオキシド:(C
4H
9)
3P=O
【0034】
本実施形態では、配位子は1官能の小分子に限定されず、2官能、3官能、4官能やそれ以上の多官能のオリゴマーやポリマーを用いることも可能である。
【0035】
本実施形態における量子ドット5の蛍光量子収率(Quantum Yield)は、5%以上である。また、蛍光量子収率は、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。このように、本実施形態では、量子ドットの蛍光量子収率を高めることができる。
【0036】
本実施形態では、蛍光波長を、400nm以上650nm以下程度にまで自由に制御することができる。例えば、本実施形態における量子ドット5は、亜鉛以外にカルコゲン元素を用いた、ZnTeをベースとする固溶体である。本実施形態では、量子ドット5の粒径及び、量子ドット5の組成を調整することによって、蛍光波長を、青色~緑色~黄色~赤色まで制御することが可能である。このため、蛍光波長は、400nm以上であることが好ましく、430nm以上であることがより好ましい。また蛍光波長は、赤色発光としては650nm以下であることが好ましく、緑色発光としては580nm以下であることがより好ましい。
【0037】
なお、本実施形態では、上述したように、蛍光波長を、青色~赤色まで制御することが可能であるが、可視光領域の波長変換材料としては緑色、または赤色発光が好ましい。
【0038】
図1Bに示す量子ドット5は、コア5aと、コア5aの表面に被覆されたシェル5bと、を有するコアシェル構造である。
図1Bに示すように、量子ドット5の表面には多数の有機配位子11が配位していることが好ましい。また、
図1Bに示す量子ドット5の蛍光半値幅は、40nm以下である。蛍光半値幅は、30nm以下であることが好ましい。
【0039】
図1Bに示す量子ドット5のコア5aは、
図1Aに示すナノクリスタルである。したがって、コア5aは、ZnTe、ZnTeS、ZnTeSeS、ZnSe、ZnSeSで形成されることが好ましい。シェル5bは、コア5aと同様に、カドミウム(Cd)を含まない。シェル5bは、特に材質を問うものではないが、例えば、セレン化亜鉛(ZnSe)や、硫化亜鉛(ZnS)等で形成される。
【0040】
なお、シェル5bは、コア5aの表面に固溶化した状態であってもよい。
図1Bでは、コア5aとシェル5bとの境界を点線で示したが、これは、コア5aとシェル5bとの境界を分析により確認できてもできなくてもどちらでもよいことを指す。
【0041】
図1Bに示す量子ドット5も、
図1Aと同様に、蛍光波長を、400nm以上で650nm以下程度にまで自由に制御することができる。
【0042】
続いて、本実施形態の量子ドット5の製造方法について説明する。
【0043】
まず、本実施形態では、有機銅化合物、或いは、無機銅化合物と、有機カルコゲン化合物とから銅カルコゲニド(前駆体)を合成する。具体的には、前駆体としては、テルル化銅:Cu2Te、或いは、テルル化硫化銅:Cu2TeS、テルル化セレン化硫化銅:Cu2TeSeS、セレン化銅:Cu2Se、又はセレン化硫化銅:Cu2SeSであることが好ましい。
【0044】
本実施形態では、ZnTeコアのみでも蛍光を発するが、量子ドットの蛍光強度を高めるには、ZnTeにSを固溶させることが好ましい。このため、前駆体としてのCu2Teの合成において、チオールをTeに対して1~50当量添加することが好ましく、蛍光強度のより高い量子ドットを得るためには、5~20当量添加することがより好ましい。これにより、Cu2TeSやCu2TeSeSを得ることができる。チオールは限定するものでないが、例えば、オクタデカンチオール:C18H37SH、ヘキサンデカンチオール:C16H33SH、テトラデカンチオール:C14H29SH、ドデカンチオール:C12H25SH、デカンチオール:C10H21SH、オクタンチオール:C8H17SH、等である。
【0045】
ここで、本実施形態では、Cu2TeのCu原料を、特に限定はしないが、例えば、下記の有機銅試薬や無機銅試薬を用いることができる。すなわち、酢酸塩として酢酸銅(I)Cu(OAc)、酢酸銅(II):Cu(OAc)2、脂肪酸塩として、ステアリン酸銅:Cu(OC(=O)C17H35)2、オレイン酸銅:Cu(OC(=O)C17H33)2、ミリスチン酸銅:Cu(OC(=O)C13H27)2、ドデカン酸銅:Cu(OC(=O)C11H23)2、銅アセチルアセトネート:Cu(acac)2、ハロゲン化物として1価、または2価の両方の化合物が使用可能であり、塩化銅(I):CuCl、塩化銅(II):CuCl2、臭化銅(I):CuBr、臭化銅(II):CuBr2、ヨウ化銅(I):CuI、ヨウ化銅(II):CuI2などを用いることができる。
【0046】
本実施形態では、テルルは、有機テルル化合物(有機カルコゲン化合物)を原料として用いる。特に化合物の構造を限定するものではないが、例えば、トリオクチルホスフィンにテルルを溶解させたトリオクチルホスフィンテルリド:(C8H17)3P=Te、或いは、トリブチルホスフィンにテルルを溶解させたトリブチルホスフィンテルリド:(C4H9)3P=Te等を用いることができる。また、ジフェニルジテルリド:(C6H5)2Te2などのジアルキルジテルリド:R2Te2を用いることも可能である。
【0047】
また、本実施形態では、セレンを固溶させる場合、セレンは、有機セレン化合物(有機カルコゲン化合物)を原料として用いる。特に構造を限定するものでないが、例えば、トリオクチルホスフィンにセレンを溶解させたトリオクチルホスフィンセレニド:(C8H17)3P=Se、或いは、トリブチルホスフィンにセレンを溶解させたトリブチルホスフィンセレニド:(C4H9)3P=Se、又は、オクタデセンのような長鎖の炭化水素である高沸点溶媒にセレンを高温で溶解させた溶液等を用いることができる。
【0048】
本実施形態では、有機銅化合物、或いは、無機銅化合物と、有機カルコゲン化合物とを混合して、溶解させる。溶媒としては、高沸点の飽和炭化水素または不飽和炭化水素として、オクタデセンを用いることができる。これ以外にも芳香族系の高沸点溶媒として、t-ブチルベンゼン:t-butylbenzene、高沸点のエステル系の溶媒として、ブチルブチレート:C4H9COOC4H9、ベンジルブチレート:C6H5CH2COOC4H9などを用いることが可能であるが、脂肪族アミン系の化合物、または脂肪酸系の化合物や脂肪族リン系の化合物を溶媒として用いることも可能である。
【0049】
このとき、反応温度を160℃以上で250℃以下の範囲に設定し、銅カルコゲニド(前駆体)を合成する。なお、反応温度は、より低温の、160℃以上で220℃以下であることが好ましく、更に低温の、160℃以上で200℃以下であることがより好ましい。
【0050】
また、本実施形態では、反応法に特に限定はないが、半値幅の狭い量子ドットを得るために、粒径の揃ったCu2Te、Cu2TeS、Cu2TeSeS、Cu2Se、Cu2SeSを合成することが重要である。このため前駆体であるCu2Te、またはCu2TeS、Cu2TeSeS、Cu2Se、Cu2SeSの合成において、加熱した有機銅原料溶液に対し、テルル原料溶液、あるいはテルル原料とセレン原料、又はセレン原料の混合溶液を手早く添加するのが好ましい。
【0051】
また、本実施形態では、コアとして蛍光強度の高いZnTeやZnSeを得るためには硫黄(S)をコアに固溶させることが重要である。このため、例えば、前駆体であるCu2Teの合成において、チオールをTeに対して1~50当量添加することが好ましく、蛍光強度の高い量子ドットを得るためには5~20当量添加することがより好ましい。特にチオールを限定するものでないが、例えば、オクタデカンチオール:C18H37SH、ヘキサンデカンチオール:C16H33SH、テトラデカンチオール:C14H29SH、ドデカンチオール:C12H25SH、デカンチオール:C10H21SH、オクタンチオール:C8H17SH、等である。
【0052】
次に、ZnTe、ZnTeS、ZnTeSeS、ZnSe、又は、ZnSeSの原料として、有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物を用意する。有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物は、空気中でも安定で取り扱い容易な原料である。有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物の構造を特に限定するものではないが、金属交換反応を効率よく行うためには、イオン性の高い亜鉛化合物を使用するのが好ましい。例えば、以下に示す有機亜鉛化合物及び無機亜鉛化合物を用いることができる。すなわち、酢酸塩として酢酸亜鉛:Zn(OAc)2、硝酸亜鉛:Zn(NO3)2、脂肪酸塩として、ステアリン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C17H35)2、オレイン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C17H33)2、パルミチン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C15H31)2、ミリスチン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C13H27)2、ドデカン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C11H23)2、亜鉛アセチルアセトネート:Zn(acac)2、ハロゲン化物として、塩化亜鉛:ZnCl2、臭化亜鉛:ZnBr2、ヨウ化亜鉛:ZnI2、カルバミン酸亜鉛としてジエチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(C2H5)2)2、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(CH3)2)2、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(C4H9)2)2等を用いることができる。
【0053】
続いて、上記の有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物を、銅カルコゲニドの前駆体が合成された反応溶液に添加する。これにより、銅カルコゲニドの銅(Cu)と、亜鉛(Zn)との金属交換反応が生じる。金属交換反応を、180℃以上280℃以下で生じさせることが好ましい。また、金属交換反応を、より低温の、180℃以上250℃以下で生じさせることがより好ましい。
【0054】
また、本実施形態では、金属交換を行う際に、前駆体の金属を配位またはキレートなどにより反応溶液中に遊離させる補助的な役割をもつ化合物が必要である。
【0055】
上述の役割を有する化合物としては、銅と錯形成可能なリガンドが挙げられる。例えば、リン系リガンド、アミン系リガンド、硫黄系リガンドが好ましく、その中でも、その効率の高さからリン系リガンドが更に好ましい。
【0056】
これにより、CuとZnとの金属交換が適切に行われ、ZnとTeや、ZnとSeとをベースとする蛍光半値幅の狭い量子ドットを製造することができる。
【0057】
また、Cu-Znとの金属交換は定量的に進行することが好ましい。生成するZnTeやZeSeの光学特性を高めるためにもZnTeやZnSe中のCu残存量を低減することが好ましい。Cuの残存量は100ppmが好ましく、50ppmがより好ましく、10ppm以下が理想的である。
【0058】
本実施形態では、有機銅化合物、或いは、無機銅化合物と、有機カルコゲン化合物とから、銅カルコゲニドを前駆体として合成し、前駆体を用いて金属交換することによって量子ドットを合成する。このように、本実施形態では、まず、前駆体の合成を経て量子ドットを合成しており、ZnTeやZnSeを直接合成していない。このような間接的な合成方法により、反応性が高過ぎて取り扱いが危険な試薬を使う必要はなく、半値幅の狭いZnTe系量子ドットやZnSe系量子ドットを安全かつ安定的に合成することが可能である。
【0059】
また、本実施形態では、前駆体を単離・精製することなく、ワンポットで、Cu-Znの金属交換を行い、所望の量子ドットを得ることが可能である。
【0060】
また、本実施形態では、合成した量子ドットは、洗浄、単離精製、被覆処理やリガンド交換などの各種処理を行わずとも蛍光特性を発現する。
【0061】
ただし、
図1Bに示すように、ZnTe、或いは、ZnTeS、又は、ZnTeSeS等のナノクリスタルからなるコア5aをシェル5bで被覆することによって、蛍光量子収率を更に増大させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、コア/シェル構造を前駆体の段階で合成することが可能である。例えば、シェル構造にセレン化亜鉛(ZnSe)を用いた場合、前駆体の銅カルコゲニドはCu2Te/Cu2Seである。これを1つの反応容器でTe原料とSe原料を連続的に添加することによって合成し、引き続き、Cu-Znの金属交換を行うことによって、ZnTe/ZnSeを得ることが可能である。
【0063】
本実施形態では前駆体としてCu2Te、Cu2TeS、またはCu2TeSeSを用いて、Cu-Znの金属交換を行うことによって、ZnTe、ZnTeS、またはZnTeSeSナノクリスタルを合成するのみならず、例えばCu2Te/Cu2Seを前駆体として用いて、Cu-Znの金属交換を行うことによってコアシェル構造を有するZnTe/ZnSeの合成を行うことも可能である。同様にコアシェル構造を有する固溶体のワンポット合成も可能である。
【0064】
本実施形態では前駆体をCu2Te、またはCu2TeS、Cu2TeSeSを主として用いているが、Cu2Se、Cu2SeS、Cu2Sでも同様にCu-Znの金属交換を行うことによって、ZnSe、或いはZnSeS、又はZnS等のナノクリスタルを得ることが可能である。
【0065】
図1に示す量子ドット5の用途を、特に限定するものでないが、以下に具体例をいくつか挙げる。
【0066】
図2は、本実施形態の量子ドットを用いたLED装置の模式図である。本実施形態のLED装置1は、
図2に示すように、底面2aと底面2aの周囲を囲む側壁2bとを有する収納ケース2と、収納ケース2の底面2aに配置されたLEDチップ(発光素子)3と、収納ケース2内に充填され、LEDチップ3の上面側を封止する蛍光層4とを有して構成される。ここで上面側とは、収納ケース2からLEDチップ3の発した光が放出される方向であって、LEDチップ3に対して、底面2aの反対の方向を示す。
【0067】
LEDチップ3は、図示しないベース配線基板上に配置され、ベース配線基板は、収納ケース2の底面部を構成していてもよい。ベース基板としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂等の基材に配線パターンが形成された構成を提示できる。
【0068】
LEDチップ3は、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子であり、P型半導体層とN型半導体層とがPN接合された基本構成を備える。
【0069】
図2に示すように、蛍光層4は、多数の量子ドット5が分散された樹脂6により形成されている。
【0070】
また本実施の形態における量子ドット5を分散した樹脂組成物には、量子ドット5と量子ドット5とは別の蛍光物質とを含んでいてもよい。蛍光物質としては、サイアロン系やKSF(K2SiF6:Mn4+)赤色蛍光体などがあるが材質を特に限定するものでない。
【0071】
蛍光層4を構成する樹脂6は、特に限定するものでないが、ポリプロピレン(Polypropylene:PP)、ポリスチレン(Polystyrene:PS)、アクリル樹脂(Acrylic resin)、メタクリル樹脂(Methacrylate)、MS樹脂、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride:PVC)、ポリカーボネート(Polycarbonate:PC)、ポリエチレンテレテレフタレート(Polyethylene terephthalate:PET)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate:PEN)、ポリメチルペンテン(Polymethylpentene)、液晶ポリマー、エポキシ樹脂(Epoxy resin)、シリコーン樹脂(Silicone resin)、又は、これらの混合物等を使用することができる。
【0072】
本実施形態の量子ドットを用いたLED装置は、表示装置に適用することができる。
図3は、
図2に示すLED装置を用いた表示装置の縦断面図である。
図3に示すように、表示装置50は、複数のLED装置20と、各LED装置20に対向する液晶ディスプレイ等の表示部54とを有して構成される。各LED装置20は、表示部54の裏面側に配置される。各LED装置20は、
図2に示すLED装置1と同様に多数の量子ドット5を拡散した樹脂によりLEDチップが封止された構造を備える。
【0073】
図3に示すように、複数のLED装置20は、支持体52に支持されている。各LED装置20は、所定の間隔を空けて配列されている。各LED装置20と支持体52とで表示部54に対するバックライト55を構成している。支持体52はシート状や板状、あるいはケース状である等、特に形状や材質を限定するものでない。
図3に示すように、バックライト55と表示部54との間には、光拡散板53等が介在していてもよい。
【0074】
本実施の形態における蛍光半値幅の狭い量子ドット5を、
図2に示すLED装置や、
図3に示す表示装置等に適用することで、装置の発光特性を効果的に向上させることが可能となる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0076】
<原料>
本発明では、カドミウムを含まない量子ドットを合成するにあたり以下の原料を用いた。
【0077】
溶媒
オクタデセン:Aldrich株式会社製、出光興産株式会社製
オレイルアミン:花王株式会社製
オレイン酸:花王株式会社製
【0078】
塩化亜鉛:Aldrich株式会社製
ヨウ化亜鉛:Aldrich株式会社製
酢酸亜鉛2水和物:生駒化学株式会社製
無水酢酸亜鉛:Aldrich株式会社製
テルル(4N:99.99%):新興化学株式会社製、またはAldrich社製
セレン(4N:99.99%):新興化学株式会社製、またはAldrich社製
硫黄:キシダ化学株式会社製
【0079】
トリオクチルホスフィン: 北興化学株式会社製
トリオクチルホスフィンオキシド: Aldrich社製
テトラデカン:東京化成(TCI)社製
亜リン酸トリフェニル:Aldrich社製
ヘキサデシルアミン:日油株式会社製
ドデカンチオール:アルケマ社製
【0080】
<測定機器>
蛍光分光計:日本分光株式会社製 F-2700
紫外-可視光分光光度計:日立株式会社製 V-770
量子収率測定装置:大塚電子株式会社製 QE-1100
X線回折装置(XRD):Bruker社製 D2 PHASER
走査線電子顕微鏡(SEM):日立株式会社製 SU9000
【0081】
[実施例1]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 36.3mgとドデカンチオール:DDT 0.5mLと、オレイルアミン:OLAm 0.1mLと、オクタデセン:ODE 4mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0082】
この溶液に、トリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M) 0.2mLを添加し、220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Te)を、室温まで冷却した。
【0083】
その後、反応溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 273mgとトリオクチルホスフィン:TOP 3mLと、オレイルアミン:OLAm 0.1mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。
【0084】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図4に示すように、蛍光波長が約518.5nm、蛍光半値幅が約24.3nmである光学特性が得られた。
【0085】
また、得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収した。そして、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTe粒子の分散溶液とした。
【0086】
[実施例2]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 36.3mgと、ヘキサデカンチオール:HDT 63.8μLと、オレイルアミン:OLAm 0.1mLと、オクタデセン:ODE 10mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0087】
この溶液に、トリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M) 0.2mLを添加し、200℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0088】
得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 273mgと、トリオクチルホスフィン:TOP 3mLと、オレイルアミン:OLAm 0.1mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、250℃で15分間、攪拌しつつ加熱した。
【0089】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した結果、
図5に示すように、蛍光波長が約510.0nm、蛍光半値幅が約22.3nmである光学特性が得られた。
【0090】
得られた反応液に、エタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収した。そして、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTe粒子の分散溶液を得た。
【0091】
[実施例3]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 36.3mgと、ドデカンチオール:DDT 5mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0092】
この溶液に、トリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M) 0.2mLを添加し、220℃で20分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 273mgと、トリオクチルホスフィン:TOP 3mLと、オレイルアミン:OLAm 0.2mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。
【0093】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、
図6に示すように、蛍光波長が約529.5nm、蛍光半値幅が約26.1nmである光学特性が得られた。
【0094】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収した。そして、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTeSの粒子溶液とした。
【0095】
[実施例4]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)2 72.7mgとトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)0.4mLとトリオクチルホスフィンセレニド:Se-TOP溶液(1M)0.2mLとドデカンチオール:DDT 1mLとオクタデセン:ODE 8mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0096】
この溶液を220℃で10分間攪拌しつつ加熱し、その後、オレイルアミン:OLAm 0.2mLを添加し、220℃で5分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 546mgとトリオクチルホスフィン:TOP 6mLとオレイルアミン:OLAm 0.2mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。
【0097】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長522.5nm、蛍光半値幅24.9nmである光学特性が得られた(
図7)。
【0098】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTeSeS粒子分散溶液とした。
【0099】
[実施例5]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)236.3mgとトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)0.2mLとドデカンチオール:DDT0.5mLとオクタデセン:ODE 4mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0100】
この溶液を180℃で10分間攪拌しつつ加熱し、その後、オレイルアミン:OLAm 0.1mLを添加し、180℃で5分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 273mgとトリオクチルホスフィン:TOP 3mLとオレイルアミン:OLAm 0.1mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。
【0101】
この溶液を室温まで冷却し、塩化亜鉛:ZnCl2 546mgを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で60分間攪拌しつつ加熱した。
【0102】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長542.0nm、蛍光半値幅27.8nmである光学特性が得られた(
図8)。
【0103】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTe粒子分散溶液とした。
【0104】
[実施例6]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)2 36.3mgとトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)0.2mLとドデカンチオール:DDT 4mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0105】
この溶液を220℃で10分間攪拌しつつ加熱し、その後、オレイルアミン:OLAm 0.1mLを添加し、220℃で10分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODE 4mLとOLAm 0.1mLを加えて分散させ、CuTe(S)粒子分散溶液とした。
【0106】
その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 273mgとトリオクチルホスフィン:TOP 3mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で20分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.2M)0.5mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0107】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長520.5nm、蛍光半値幅22.4nmである光学特性が得られた(
図9)。
【0108】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTeS粒子分散溶液とした。
【0109】
[実施例7]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)2 0.091gとドデカンチオール:DDT 0.625mLとトリオクチルホスフィン:TOP 0.625mLとトリオクチルホスフィンオキシド:TOPO 0.194gとテトラデカン 10mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0110】
この溶液にトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)0.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.125mLを添加し、200℃で15分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 0.685gとトリオクチルホスフィン:TOP 7.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.25mLと亜リン酸トリフェニル 0.066mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)1.25mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0111】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長502.0nm、蛍光半値幅17.9nmである光学特性が得られた(
図13)。
【0112】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTe粒子分散溶液とした。
【0113】
[実施例8]
100mL反応容器にオレイン酸銅:Cu(OLAc)2 (0.5M)0.8mLとトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)0.4mLとSe-ODE溶液(0.1M)2mLとドデカンチオール:DDT 1mLとオクタデセン:ODE 6.2mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0114】
この溶液を220℃で10分間攪拌しつつ加熱し、その後、オレイルアミン:OLAm 0.2mLを添加し、220℃で5分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 0.546gとトリオクチルホスフィン:TOP 6mLとオレイルアミン:OLAm 0.2mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.2M)0.5mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0115】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長522.5nm、蛍光半値幅23.1nmである光学特性が得られた(
図14)。
【0116】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTeSe粒子分散溶液とした。
【0117】
[実施例9]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)2 0.182gとトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)1mLとSe-DDT/OLAm溶液(0.285M)0.439mLとドデカンチオール:DDT 2.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.25mLとトリオクチルホスフィンオキシド:TOPO 0.387gとオクタデセン:ODE 20mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0118】
この溶液を180℃で20分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 1.37gとトリオクチルホスフィン:TOP 15mLとオレイルアミン:OLAm 0.5mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)2.5mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0119】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長496.5nm、蛍光半値幅21.3nmである光学特性が得られた(
図15)。
【0120】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTeSe粒子分散溶液とした。
【0121】
[実施例10]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)2 0.091gとドデカンチオール:DDT 0.625mLとトリオクチルホスフィン:TOP 0.625mLとトリオクチルホスフィンオキシド:TOPO 0.194gとオクタデセン:ODE 10mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0122】
この溶液にトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)0.5mLとSe-TOP溶液(1M)0.25mLとオレイルアミン:OLAm 0.125mLを添加し、180℃で20分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 0.685gとトリオクチルホスフィン:TOP 7.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.25mLと亜リン酸トリフェニル 0.066mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)1.25mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0123】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長495.0nm、蛍光半値幅18.7nmである光学特性が得られた(
図16)。
【0124】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTeSe粒子分散溶液とした。
【0125】
[実施例11]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)2 0.091gとドデカンチオール:DDT 1.25mLとトリオクチルホスフィン:TOP 0.625mLとオクタデセン:ODE 10mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0126】
この溶液にトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)0.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.125mLを添加し、200℃で15分間攪拌しつつ加熱した。さらに、Se-ODE溶液(0.1M)1.25mL添加し、200℃で15分間攪拌し続けた。Se-ODE溶液(0.1M)を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行い、得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 0.685gとトリオクチルホスフィン:TOP 7.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.25mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)1.25mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0127】
得られた反応溶液を室温まで冷却した後、トルエンとエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にオクタデセン:ODE 11mLを加えて分散させ、ZnTe/ZnSe粒子ODE分散溶液とした。
【0128】
得られたODE分散溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 0.685gとトリオクチルホスフィン:TOP 7.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.25mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)1.25mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0129】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長517.0nm、蛍光半値幅20.1nmである光学特性が得られた(
図17)。
【0130】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTe/ZnSe粒子分散溶液とした。
【0131】
[実施例12]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)2 0.091gとドデカンチオール:DDT 1.25mLとトリオクチルホスフィン:TOP 0.625mLとオクタデセン:ODE 10mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0132】
この溶液にトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)0.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.125mLを添加し、200℃で15分間攪拌しつつ加熱した。さらに、Se-ODE溶液(0.1M)1.25mL添加し、200℃で15分間攪拌した後、S-ODE溶液(0.1M)1.25mLを添加し、200℃で15分間攪拌し続けた。得られた反応溶液を室温まで冷却した後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 0.685gとトリオクチルホスフィン:TOP 7.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.25mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)1.25mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0133】
得られた反応溶液を室温まで冷却した後、トルエンとエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にオクタデセン:ODE 11mLを加えて分散させ、ZnTe/ZnSe/ZnS粒子ODE分散溶液とした。
【0134】
得られたODE分散溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 0.685gとトリオクチルホスフィン:TOP 7.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.25mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)1.25mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0135】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長513.0nm、蛍光半値幅21.6nmである光学特性が得られた(
図18)。
【0136】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTe/ZnSe/ZnS粒子分散溶液とした。
【0137】
[実施例13]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 0.182gとトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)1mLとドデカンチオール:DDT 2.5mLとオクタデセン:ODE 20mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0138】
この溶液を180℃で10分間攪拌しつつ加熱し、その後、オレイルアミン:OLAm0.25mLを添加し、180℃で10分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 1.37gとトリオクチルホスフィン:TOP 15mLと、オレイルアミン:OLAm 0.25mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)2.5mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。その後、得られた反応溶液(ZnTeS)を室温まで冷却した。
【0139】
反応溶液10mLに対して、ヘキサデシルアミン:HDA 0.241gを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で5分間攪拌しつつ加熱した。さらに、トリオクチルホスフィン:TOP 2mLとSe-TOP(1M)0.125mLとS-TOP(1M) 0.375mLを混合し、反応溶液に0.25mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。混合溶液を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計10回行った。その後、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)1mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0140】
得られた反応溶液を蛍光分光計および量子効率測定システムで測定した結果、蛍光波長522.5nm、蛍光半値幅27.3nm、量子収率約12%である光学特性が得られた(
図19)。
【0141】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTeS/ZnSeS粒子分散溶液とした。
【0142】
[実施例14]
100mL反応容器に無水酢酸銅:Cu(OAc)2 0.182gとトリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M)1mLとSe-DDT/OLAm溶液(0.285M)0.439mLとドデカンチオール:DDT 2.5mLとオレイルアミン:OLAm 0.25mLとトリオクチルホスフィンオキシド:TOPO 0.387gとオクタデセン:ODE 20mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0143】
この溶液を180℃で20分間攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。その後、反応溶液に塩化亜鉛:ZnCl2 1.37gとトリオクチルホスフィン:TOP 15mLとオレイルアミン:OLAm 0.5mLと亜リン酸トリフェニル 0.131mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で30分間攪拌しつつ加熱した。さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)2.5mLを添加し、220℃で10分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。その後、得られた反応溶液(ZnTeSeS)を室温まで冷却した。
【0144】
反応溶液10mLに対して、ヘキサデシルアミン:HDA 0.241gを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、240℃で5分間攪拌しつつ加熱した。さらに、トリオクチルホスフィン:TOP 1.125mLとSe-TOP(1M)0.031mLとS-TOP(1M)0.094mLを混合し、反応溶液に0.125mLを添加し、240℃で5分間攪拌し続けた。混合溶液を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計10回行った。その後、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)0.5mLを添加し、240℃で5分間攪拌し続けた。オクタン酸亜鉛を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計2回行った。
【0145】
得られた反応溶液を蛍光分光計および量子効率測定システムで測定した結果、蛍光波長532.0nm、蛍光半値幅27.6nm、量子収率約20%である光学特性が得られた(
図20)。
【0146】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTeSeS/ZnSeS粒子分散溶液とした。
【0147】
[実施例15]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 72.7mgとドデカンチオール:DDT 0.5mLと、オレイルアミン:OLAm 0.1mLと、オクタデセン:ODE 10mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0148】
この溶液に、トリオクチルホスフィンテルリド:Te-TOP溶液(0.5M) 0.65mLを添加し、220℃で5分間、攪拌しつつ加熱した。その後、トリオクチルホスフィンセレニド:Se-TOP溶液(1M) 0.1mLを添加し、220℃で5分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を室温まで冷却した。
【0149】
この反応溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 550mgとトリオクチルホスフィン:TOP 6mLと、オレイルアミン:OLAm 0.2mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で15分間、280℃で110分間攪拌しつつ加熱した。
【0150】
その後、オクタン酸Zn(0.4M)12mlとDDT 1.1mlを混合した溶液を1ml滴下して、280℃で60分間撹拌しつつ加熱した。
【0151】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長が約610nm、蛍光半値幅が約38.5nmである光学特性が得られた(
図21)。
【0152】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnTe/ZnSe粒子分散溶液とした。
【0153】
[実施例16]
100mL反応容器に、アセチルアセトナト銅:Cu(acac)2 131mgと、ドデカンチオール:DDT 1.5mLと、オレイルアミン:OLAm 4.75mLと、オクタデセン:ODE 6.25mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0154】
この溶液に、Se-DDT/OLAm溶液(0.3M)1.75mLを添加し、220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Se(S))を、室温まで冷却した。
【0155】
Cu2Se反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0156】
その後、ZnSe(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 682mgとトリオクチルホスフィン:TOP 5mLと、オレイルアミン:OLAm 0.5mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、280℃で120分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0157】
得られた反応溶液を蛍光分光計及び量子効率測定システムで測定した結果、蛍光波長が約446.0nm、蛍光半値幅が約16.6nmであり、量子収率が約30.6%である光学特性が得られた(
図22)。
【0158】
得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnSe粒子分散溶液とした。
【0159】
[比較例1]
100mL反応容器に、無水酢酸亜鉛:Zn(OAc)2 91.7mgと、オクタデセン:ODE 10mL、オレイルアミン:OLAm 3mL、トリオクチルホスフィン:TOP 3mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0160】
この溶液に、トリオクチルホスフィンテルリド溶液:Te-TOP溶液(0.5M)0.5mLを添加し、280℃で10分間攪拌しつつ加熱した。反応溶液は、薄い黄色から赤茶かかった懸濁液に変化し、得られた溶液を365nmのブラックライトで照射したが蛍光は全く確認されなかった。
【0161】
[比較例2]
100mL反応容器に、塩化亜鉛無水物:ZnCl2 68.1mgと、オクタデセン:ODE 10mL、オレイルアミン:OLAm 3mL、トリオクチルホスフィン:TOP 3mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0162】
この溶液に、トリオクチルホスフィンテルリド溶液:Te-TOP溶液(0.5M) 0.5mLを添加し、280℃で10分間攪拌しつつ加熱した。反応溶液は、薄い黄色から赤茶かかった懸濁液に変化し、得られた溶液を365nmのブラックライトで照射したが蛍光は全く確認されなかった。
【0163】
[比較例3]
100mL反応容器に、ステアリン酸亜鉛:Zn(OC(C=O)C17H35)2 316.2mgと、オクタデセン 10mL、オレイルアミン:OLAm 3mL、トリオクチルホスフィン:TOP 3mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0164】
この溶液に、トリオクチルホスフィンテルリド溶液:Te-TOP溶液(0.5M) 0.5mLを添加し、280℃で10分間攪拌しつつ加熱した。反応溶液は、薄い黄色から赤茶かかった懸濁液に変化し、得られた溶液を365nmのブラックライトで照射したが蛍光は全く確認されなかった。
【0165】
[比較例4]
100mL反応容器に、オレイン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C17H33)2 314.2mgと、オクタデセン:ODE 10mL、オレイルアミン:OLAm 3mL、トリオクチルホスフィン:TOP 3mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0166】
この溶液に、トリオクチルホスフィンテルリド溶液:Te-TOP溶液(0.5M) 0.5mLを添加し、280℃で10分間攪拌しつつ加熱した。反応溶液は、薄い黄色から赤茶かかった懸濁液に変化し、得られた溶液を365nmのブラックライトで照射したが蛍光は全く確認されなかった。
【0167】
以下に示す表1に、実施例1から実施例16における合成原料、前駆体合成条件、金属交換反応条件、シェル被覆条件、蛍光波長、及び蛍光半値幅をまとめた。
【0168】
【0169】
表1に示すように、実施例では、いずれも蛍光半値幅が、40nm以下であった。また、蛍光半値幅を30nm以下にすることができ、更に、蛍光半値幅を28nm以下にすることができ、更に、蛍光半値幅を約25nm以下に制御することが可能であるとわかった。
【0170】
また、表1に示すように、蛍光波長を、400nm~650nmの範囲内で調整することが可能であるとわかった。
【0171】
また、表1に示すように、実施例1から実施例14によって緑色発光、または実施例15によって赤色発光の量子ドットが合成可能であるとわかった。
【0172】
また、実施例1のZnTe粒子の分散溶液を、走査型電子顕微鏡(SEM)およびX線回折(XRD)装置を用いて測定した。
図10が、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定結果であり、
図11が、X線回折(XRD)の測定結果である。
【0173】
また、実施例1のCu
2Te粒子の分散溶液を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。その結果が、
図12に示されている。
【0174】
図10及び
図12に示すように、量子ドットとしてのZnTe粒子、及び前駆体としてのCu
2Teの各粒子径をほぼ均一に生成できたことがわかった。
【0175】
また、
図11に示すZnTeのXRDスペクトルのピーク値より、ZnTe固溶体が生成していることが証明された。
【0176】
本発明では前駆体にCu2Teのみならず、Cu2SeやCu2Sを用いることが可能である。実施例16によって、Cu2Seを前駆体として青色発光の半値幅の狭いZnSeを得ることができた。
【0177】
加えて、Cu2Seを前駆体として得たZnSeにはCuがZnに対して100ppm以下含まれていることがICP分析によってわかっている。
【0178】
本実施形態においてもCu2Teを前駆体としてZnTeを得ていることから、Cuが含まれていることが考えられる。このことからCu-Zn金属交換反応を調整することによってZn1-xCuxTe(X<0.001)(Xは、ZnとCuとの合計モル数に対するCuモル数の比率)という量子ドットを得ることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明によれば、例えば、高輝度の緑色の蛍光を示す量子ドットを安定して得ることができる。そして本発明の量子ドットを、LEDやバックライト装置、表示装置等に適用することで、各装置において優れた発光特性を得ることができる。
【0180】
本出願は、2017年7月27日出願の特願2017-145269、2017年10月12日出願の特願2017-198667号に基づく。この内容は全てここに含めておく。