(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ターボファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20231201BHJP
F04D 29/30 20060101ALI20231201BHJP
F24F 1/0022 20190101ALI20231201BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
F04D29/28 R
F04D29/30 D
F24F1/0022
B29C65/02
(21)【出願番号】P 2019128563
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】土井 康之
(72)【発明者】
【氏名】岡部 清志
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩崇
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122394(JP,A)
【文献】特開2018-017123(JP,A)
【文献】特開2008-130254(JP,A)
【文献】特開2018-185081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/26-29/38
B29C 65/02
F24F 1/0022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主板と、シュラウドと、前記主板と前記シュラウドとの間に複数の羽根部材とを備えたターボファンにおいて、前記羽根部材は、溶着支持部を備え、前記溶着支持部に溶着用ピンを突設し、前記シュラウドに前記溶着支持部が係合される溶着用係合部を形成するとともに溶着用孔を形成し、前記溶着用ピンを、前記溶着用ピンと断面形状の異なる前記溶着用孔に挿通し、前記溶着用ピンを溶融して、前記溶着用孔を覆って前記羽根部材と前記シュラウドとが接合され
、
前記羽根部材は、樹脂製の2つの羽根部材の周縁部を接触させて形成されており、前記羽根部材は、前記シュラウドよりも摩擦係数が小さい部材で構成されている
ことを特徴とするターボファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボファンに係り、特に、羽根部材を安定して支持することができ、遠心方向に歪んだ場合でも、シュラウドと羽根部材にズレが起こりにくいことを可能としたターボファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気調和機の室内ユニットなどに搭載され、主板と、シュラウドと、複数の翼とから構成されたターボファンが知られている。
【0003】
このようなターボファンとして、従来、例えば、中央部にモータの回転軸に固定されるボスを有する主板と、吸込み導風壁を形成するシュラウドと複数の羽根部材を熱可塑性樹脂で別々に成形し、主板は、複数の羽根部材との嵌合部を有し、シュラウドは複数の羽根部材との嵌合部を有し、複数の羽根部材を、主板とシュラウドの複数の嵌合部に回転軸に平行に嵌合させ超音波溶着にて一体化するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の技術においては、主板に形成された嵌合部に羽根部材を嵌合させた状態で、超音波溶着により一体化するようにしており、回転時の遠心力で羽根部材がねじれて、回転数が変わった時に異音が発生しやすい、というおそれがある。
【0006】
特に、近年のターボファンにおいては、風量を確保するため、羽根部材が湾曲形成されて主板に対して傾斜配置する傾向があり、ターボファン回転時に、羽根部材はねじれが発生しやすく、特にシュラウドと羽根部材との接合部の溶着部から異音が発生するという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、羽根部材を安定して支持することができ、羽根部材の接合部の異音を抑制することのできるターボファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明は、主板と、シュラウドと、前記主板と前記シュラウドとの間に複数の羽根部材とを備えたターボファンにおいて、前記羽根部材は、溶着支持部を備え、前記溶着支持部に溶着用ピンを突設し、前記シュラウドに前記溶着支持部が係合される溶着用係合部を形成するとともに溶着用孔を形成し、前記溶着用ピンを、前記溶着用ピンと断面形状の異なる前記溶着用孔に挿通し、前記溶着用ピンを溶融して、前記溶着用孔を覆って前記羽根部材と前記シュラウドとが接合されることを特徴とする。
【0009】
また、前記構成において、前記溶着用孔に切欠き部を形成したことを特徴とする。
【0010】
また、前記構成において、前記溶着用係合部の前記溶着用孔の周囲には、溶着ガイド用座部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記構成において、前記羽根部材は、フランジ部を備え、前記フランジ部を前記主板に一体成形して前記羽根部材と前記主板とが接合されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記構成において、前記羽根部材は、樹脂製の2つの羽根部材の周縁部を接触させて形成されており、前記羽根部材は、前記シュラウドよりも摩擦係数が小さい部材で構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記構成において、前記羽根部材は、樹脂製の正圧側羽根部材と負圧側羽根部材とを合わせて形成されており、少なくともどちらか一方は、摩擦係数が小さい材料を含有させた樹脂部材で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶着用ピンを、溶着用ピンと断面形状の異なる溶着用孔に挿通し、溶着用ピンの溶融により、溶着用孔を覆って羽根部材とシュラウドとが接合されるので、ファン回転時の接合部のねじれを低減でき、異音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のターボファンを適用した天井埋込型空気調和機の実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】本実施形態の天井埋込型空気調和機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るターボファンの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るターボファンを適用した天井埋込型空気調和機の実施形態を示す縦断面図である。
図2は、天井埋込型空気調和機の斜視図である。
【0018】
本実施形態においては、
図1に示すように、室内ユニット10は、建屋の天井11とこの天井11の下方に設置された天井板12との間の天井空間13に設置されるものである。
【0019】
この室内ユニット10は、
図1に示すように、下面が開放された箱型に形成された空気調和機本体14を備えており、空気調和機本体14の外側角部には、吊り用金具18が取り付けられている。空気調和機本体14は、吊り用金具18に連結された吊りボルト15で天井11から吊り下げられた状態で設置される。この空気調和機本体14の内側には、発泡スチロール製の断熱部材16が、空気調和機本体14の側板17の内面に接した状態で配置され、側板17における結露を防止している。
【0020】
空気調和機本体14の上板の下面には、ファンモータ21が取り付けられており、このファンモータ21には、ファンモータ21の駆動により回転駆動される回転シャフト22が下方に延在するように設けられている。この回転シャフト22の下端部分には、ターボファン23が取り付けられており、このファンモータ21とターボファン23とで送風装置20を構成している。
【0021】
ターボファン23は、環状の板状に形成された主板24を備えている。主板24の中心部分には、下方に延出する逆円錐台形状のモータ収容部25が形成されている。
【0022】
モータ収容部25には、ファンモータ21が収容されており、ファンモータ21の回転シャフト22は、下方に延在しモータ収容部25の底面に連結されている。そして、ファンモータ21を回転駆動させることにより、回転シャフト22を介してターボファン23を回転動作させるように構成されている。
【0023】
主板24の下方には、シュラウド26が設けられており、シュラウド26は、周面が弧状に形成された環状に形成されている。主板24とシュラウド26の内周面との間には、周方向に所定間隔をもって配置される複数の羽根部材27があり、羽根部材27は主板24と一体成形されている。
【0024】
シュラウド26の下方には、オリフィス28が配置されており、オリフィス28は、周面が弧状に形成された環状に形成されている。
【0025】
この送風装置20と断熱部材16との間には、送風装置20の側方を取り囲むように、平面視でほぼ四角形状に曲折形成された熱交換器30が配置されている。
【0026】
熱交換器30は、冷房運転時には、冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時、冷媒の凝縮器として機能する熱交換器30である。熱交換器30は、空気調和機本体14の内部に吸い込まれる室内の空気と冷媒との熱交換を行って、冷房運転時には、空調室内の空気を冷却し、暖房運転時には、室内の空気を加熱することができるように構成されている。
【0027】
また、熱交換器30の下側には、熱交換器30の下面に対応するようにドレンパン31が配置されている。このドレンパン31は、熱交換器30で発生するドレン水を受けるためのものである。また、ドレンパン31の中央部分には、送風装置20の吸い込み口32が形成されている。
【0028】
また、空気調和機本体14の下面には、
図1および
図2に示すように、空気調和機本体14の下側開口を覆うように、ほぼ四角形状の化粧パネル33が取り付けられている。
【0029】
化粧パネル33の中央部分には、ドレンパン31の吸い込み口32に連通する吸い込み口34が形成されており、化粧パネル33の吸い込み口34部分には、吸い込み口34を覆う吸い込みグリル35が着脱可能に取り付けられている。吸い込みグリル35の空気調和機本体14側には、空気中の塵などを除去するためのフィルタ36が設けられている。
【0030】
化粧パネル33の吸い込み口34の外側であって化粧パネル33の各辺に沿った位置には、空調後の空気を室内に送る吹出口37がそれぞれ形成されている。各吹出口37には、風向を変更するフラップ38がそれぞれ設けられている。そして、ファンモータ21により回転シャフト22を回転駆動させてターボファン23を回転させることにより、室内の空気は、吸い込み口32,34から吸い込まれ、フィルタ36を通過した後に熱交換器30を通過して熱交換され、吹出口37から空調後の空気が室内に送られるように構成されている。
【0031】
次に、ターボファンについてさらに詳細に説明する。
【0032】
図3は、ターボファンの底面図である。
図4はターボファンの斜視図である。
図5は、ターボファンの分解斜視図である。
【0033】
ターボファン23は、シュラウド26と、主板24と複数の羽根部材27とが予め一体成形されており、これらをそれぞれ製造した後、組立を行い、ターボファン23を形成するようになっている。
【0034】
本実施形態においては、
図5に示すように、羽根部材27は、正圧側に位置する正圧側羽根部材40と、負圧側に位置する負圧側羽根部材41とを備え、この2つの羽根部材を接触させて1枚の羽根部材27を形成している。
【0035】
正圧側羽根部材40は、正圧側の面を構成する羽根本体部42と、羽根本体部42の底板を延在したフランジ部43とを備えており、フランジ部43は負圧側羽根部材41の底板を受ける側および反対側に延在して形成されている。また、フランジ部43には、取り付け用孔44が形成されている。正圧側羽根部材40の上部には、異なる高さに形成された段差状の溶着支持部46が形成されている。溶着支持部46の各段の上面は、平坦面とされており、これら各溶着支持部46には、
図5に示すように、溶着用ピン47が突設されている。
【0036】
羽根部材27はフランジ部43を介して主板24に一体成形されている。
【0037】
また、負圧側羽根部材41は、負圧側の面を構成する羽根本体部48を備えている。正圧側羽根部材40の羽根本体部42の内面には、係合ピン(図示しない)が形成され、負圧側羽根部材41の羽根本体部48の内面には、係合ピンが係合される係合凹部(図示せず)が形成されている。
【0038】
図6から
図8に示すように、シュラウド26の内側面には、羽根部材27の溶着支持部46が係合される溶着用係合部70がシュラウド26の外側に膨出するように形成されている。溶着用係合部70の内面形状は、溶着支持部46の外面形状とほぼ同様に形成されており、羽根部材27の溶着支持部46を溶着用係合部70に係合させた状態で、羽根部材27とシュラウド26とを安定して支持することができるように構成されている。
【0039】
また、溶着用係合部70には、溶着用ピン47が挿通される溶着用孔71が形成されている。溶着用孔71の内周縁部71aは、略円形状で、内周縁部71aの一部の縁部が挿通される溶着用ピン47の外周部から離れて遠ざかる方向に位置して形成され、溶着用ピン47との間に矩形状の切欠き部90が複数形成されるようになっている。
【0040】
そして、熱溶着により溶着用ピン47を溶融させて、溶融した溶着用ピン47が切欠き部90内を塞ぐことで、羽根部材27とシュラウド26とを固定するように構成されている。
【0041】
なお、本実施形態においては、溶着手段として、熱溶着としたが、その他、インパルス溶着(ヒータ溶着)や赤外線ヒータ溶着、超音波溶着などの溶着手段でも、同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、負圧側羽根部材41の係合突起を正圧側羽根部材40の係合部に係合させるとともに、係合ピン(図示しない)を係合凹部に係合させることにより、正圧側羽根部材40の周縁部と負圧側羽根部材41の周縁部とを接触させて羽根部材27を形成する。
【0043】
続いて、羽根部材27は主板24を成形する成型治具に組み込んでインサート成形で一体成形される。
【0044】
このように主板24と羽根部材27とは一体成形されるので、主板24と羽根部材27との接合部で遠心方向への歪によるズレが発生しないので異音を防止することができる。
【0045】
次に、シュラウド26の溶着用係合部70に、羽根部材27の溶着支持部46を係合させるとともに、シュラウド26の溶着用孔71から羽根部材27の溶着用ピン47を突出させる。
【0046】
この状態で、溶着用ピン47に熱を加えて熱溶着することで、溶着用ピン47を溶融させ、溶融した溶着用ピン47が切欠き部90内を塞ぐことで、羽根部材27とシュラウド26とを固定する。
【0047】
このとき、羽根部材27の溶着支持部46を溶着用係合部70に係合させた状態で、羽根部材27とシュラウド26とを安定して支持することができ、溶着作業を容易に行うことが可能となる。
【0048】
以上述べたように、本実施形態においては、羽根部材27は主板24を成形する成型治具に組み込んでインサート成形で一体成形されることで、正圧側羽根部材40に形成されたフランジ部43が主板24に接合している。
【0049】
また、本実施形態においては、羽根部材27は、シュラウド26の溶着用係合部70に接触して溶着しており、樹脂製の羽根部材27が、樹脂製のシュラウド26よりも摩擦係数が小さい部材で構成されることで、羽根部材27の回転時に遠心力によってシュラウド26に対してねじれが発生し、羽根部材27がシュラウド26からズレが生じたとしても摩擦振動によるキシミ音などの異音を抑制することができる。
【0050】
また、羽根部材27を構成する正圧側羽根部材40と負圧側羽根部材41のうち、少なくともどちらか一方に、摩擦係数が小さい材料を含有させた樹脂部材としている。
【0051】
これによって、羽根部材27の遠心力により、ねじれが生じても正圧側羽根部材40に対して負圧側羽根部材41の周縁部が擦れて摩擦振動によるキシミ音などの異音を抑制することができる。
【0052】
なお、切欠き部90が複数個備えるとしたが、羽根部材27が遠心力でねじれてシュラウド26との接合部でキシミ音が発生しないのであれば、切欠き部は1個であってもよい。
【0053】
なお、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 室内ユニット
14 空気調和機本体
24 主板
23 ターボファン
26 シュラウド
27 羽根部材
40 正圧側羽根部材
41 負圧側羽根部材
42、48 羽根本体部
43 フランジ部
44 取り付け用孔
46 溶着支持部
47 溶着用ピン
70 溶着用係合部
71 溶着用孔
71a 内周縁部
90 切欠き部