(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】シミアン(ゴリラ)アデノウイルス又はアデノウイルスベクター、及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/861 20060101AFI20231201BHJP
C12N 15/34 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N15/34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019169775
(22)【出願日】2019-09-18
(62)【分割の表示】P 2018137237の分割
【原出願日】2012-10-05
【審査請求日】2019-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-28
(32)【優先日】2011-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512115988
【氏名又は名称】ジェンヴェック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ブラフ、ダグラス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ガル、ジェイソン ジー.ディー.
(72)【発明者】
【氏名】マクヴェイ、ダンカン
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】牧野 晃久
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/051367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号21、
(b)配列番号23、
(c)配列番号24、
(d)配列番号25、
(e)配列番号26、
(f)配列番号27、及び
(g)配列番号28
からなる群より選択される核酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクター
において、該アデノウイルス又はアデノウイルスベクターが、増殖のためにアデノウイルスゲノムの1つ以上の初期領域の欠損により複製欠損を提供するように遺伝子操作により改変されている、アデノウイルス又はアデノウイルスベクター。
【請求項2】
さらに導入遺伝子を含む、請求項1記載のアデノウイルス又はアデノウイルスベクター。
【請求項3】
1つ以上の初期領域がアデノウイルスゲノムE1領域、E2領域及びE4領域からなる群より選択される、請求項1又は2記載のアデノウイルス又はアデノウイルスベクター。
【請求項4】
初期領域がE1領域である、請求項3記載のアデノウイルス又はアデノウイルスベクター。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のアデノウイルス又はアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2011年10月5日出願の米国仮特許出願第61/543,661号(参照により組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
電子提出された物件の参照による組み込み
本明細書と同時に提出される以下:415,748バイトのASCII(テキスト)ファイル1件、名称「711250SequenceListing_ST25.TXT,」2012年10月5日作成と特定される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表が本明細書中、参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
生物学上適切な形状及び量におけるin vivoでのタンパク質送達は、数十年にわたり薬物及びワクチン開発の障害となっている。従来のタンパク質送達の取り組みに対して成功を収めた代替手段であるとすでに証明された一つの解決策は、in vivoでのタンパク質産生のために外来核酸配列を送達することである。遺伝子導入ベクターは、多種多様な細胞型に入り、大きな核酸配列を許容する容量を有し、安全であり、かつ患者を治療するために必要な量を生み出し得ることが理想である。ウイルスベクターは、これらの有利な特性を伴う遺伝子導入ベクターである(例えば、Thomasら,Nature
Review Genetics,4:346-358(2003)を参照)。その上、多くのウイルスベクターは多様な細胞型に感染できるよう改変される一方、ウイルスベクターは特定の細胞型を標的とするようにも変更され得、それによりベクターの治療効果が増強され得る(例えば、Kayら,Nature Medicine,7(1):33-40(2001)を参照)。
【0004】
治療を目的として哺乳類細胞への外来タンパク質の送達のために使用されており、成功した例のあるウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルス(例えばCavazzana-Calvoら,Science,288(5466):669-672(2000)を参照)、レンチウイルス(例えばCartierら,Science,326:818-823(2009)を参照)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(例えばMeaseら,Journal of Rheumatology,27(4):692-703(2010)を参照)、単純ヘルペスウイルス(HSV)(例えばGoinsら,Gene
Ther.,16(4):558-569(2009)を参照)、ワクシニアウイルス(例えばMayrhoferら,J.Virol.,83(10):5192-5203(2009)を参照)、及びアデノウイルス(例えばLasaro and Ertl,Molecular Therapy,17(8):1333-1339(2009)を参照)が挙げられる。
【0005】
その有利な特性にも関わらず、いくつかの要因によりウイルスの遺伝子導入ベクターは広範な使用を妨げられている。これに関して、ある種の細胞は現在利用可能なウイルスベクターによる遺伝子の送達を容易には受け入れない。例えば、リンパ球はアデノウイルスの取り込みを妨げられている(Silverら,Virology,165:377-387(1988)、及びHorvathら,J.Virology,62(1):341-345(1988))。加えて、宿主細胞のゲノムに組み込まれるウイルスベクター(例えばレトロウイルスベクター)は、がん遺伝子への挿入変異の原因となる可能性を有す
る(例えばCavazzana-Calvoら,上記、及びHacein-Bey-Abinaら,N.Engl.J.Med.,348:255-256(2003)を参照)。
【0006】
ウイルスベクターの免疫原性もまた、遺伝子導入のためのウイルスベクター使用の妨げとなっている。アメリカ合衆国民の大多数が、遺伝子導入ベクターとして現在開発中の多くのウイルス(例えばアデノウイルス)の野生型形状に曝露された経験がある。結果として、多くのアメリカ合衆国民は、ある種のウイルスをベースとした遺伝子導入ベクターに対する既存の免疫(pre-existing immunity)を獲得している。かかるベクターは、血流から速やかに除去され、それにより、生物学的に適切な量の遺伝子産物を送達するということへのベクターの有効性が低下する。さらに、ある種のウイルスベクターの免疫原性は効果的な繰り返し投与(ウイルスベクターがワクチン応用に使用された場合に、病原体に対する免疫系の「促進(boosting)」に有効であり得る)を阻み、それにより、ウイルスベクターの投与量のごく一部のみが宿主細胞へその積荷を送達する結果となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、in vivoで哺乳類細胞への効率的な遺伝子送達のために使用され得る、改良されたウイルスベクターに対するニーズが残っている。本発明は、かかるウイルスベクターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の簡単な要旨
本発明は、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号1に対して少なくとも97%同一である核酸配列、(b)配列番号2に対して少なくとも97.5%同一である核酸配列、(c)配列番号3に対して少なくとも80%同一である核酸配列、(d)配列番号4に対して少なくとも96%同一である核酸配列、及び(e)配列番号5に対して少なくとも96%同一である核酸配列、からなる群より選択される1つ以上の核酸配列を含む。
【0009】
本発明は、(a)配列番号6に対して少なくとも98.4%同一である核酸配列、(b)配列番号7に対して少なくとも99.01%同一である核酸配列、(c)配列番号8に対して少なくとも97.08%同一である核酸配列、(d)配列番号9に対して少なくとも96.52%同一である核酸配列、及び(e)配列番号10に対して少なくとも98.49%同一である核酸配列、からなる群より選択される1つ以上の核酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。
【0010】
本発明は、(a)配列番号6の少なくとも121個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(b)配列番号7の少なくとも462個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(c)配列番号8の少なくとも234個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(d)配列番号9の少なくとも606個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、及び(e)配列番号10の少なくとも188個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、からなる群より選択される1つ以上の核酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。
【0011】
本発明は、(a)配列番号11に対して少なくとも93%同一であるアミノ酸配列、(b)配列番号13に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列、(c)配列番号14に対して少なくとも92%同一であるアミノ酸配列、及び(d)配列番号15に対して少なくとも88%同一であるアミノ酸配列、からなる群より選択される1つ以上のアミノ
酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。
【0012】
本発明は、(a)配列番号11に対して少なくとも93%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、(b)配列番号12に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、(c)配列番号13に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、(d)配列番号14に対して少なくとも92%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び(e)配列番号15に対して少なくとも88%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、からなる群より選択される1つ以上の核酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。
【0013】
本発明は、(a)配列番号16に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、(b)配列番号18に対して少なくとも97.8%同一であるアミノ酸配列、(c)配列番号19に対して少なくとも99.1%同一であるアミノ酸配列、及び(d)配列番号20に対して少なくとも99.2%同一であるアミノ酸配列、からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。
【0014】
本発明は、(a)配列番号16に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、(b)配列番号17に対して少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、(c)配列番号18に対して少なくとも97.8%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、(d)配列番号19に対して少なくとも99.1%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び(e)配列番号20に対して少なくとも99.2%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列、からなる群より選択される1つ以上の核酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。
【0015】
本発明は、(a)配列番号16の少なくとも89個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、(b)配列番号18の少なくとも247個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、(c)配列番号19の少なくとも230個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、及び(d)配列番号20の少なくとも231個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。
【0016】
本発明は、(a)配列番号16の少なくとも89個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列、(b)配列番号17の少なくとも286個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列、(c)配列番号18の少なくとも247個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列、(d)配列番号19の少なくとも230個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び(e)配列番号20の少なくとも231個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列、からなる群より選択される1つ以上の核酸配列を含むアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
アデノウイルスは一般にヒトにおける良性の病状と関連しており、ヒトを含む様々な種から単離されたアデノウイルスのゲノムが、広く研究されている。アデノウイルスは、中程度の大きさ(90~100nm)であり、約36kbの2本鎖DNAを含みエンベロープを持たない正二十面体のウイルスである。アデノウイルスのカプシドは、ウイルスによる細胞への感染の初期段階における重要な相互作用を媒介し、アデノウイルス生活環の終わりにアデノウイルスゲノムをパッケージングするために必要である。カプシドは、240のヘキソン、12のペントン基部タンパク質及び12のファイバーを含む、252のカ
プソメアを含む(Ginsbergら,Virology,28:782-83(1966))。ヘキソンは、3つの同一タンパク質すなわちポリペプチドII(polypeptide II)を含む(Robertsら,Science,232:1148-51(1986))。ペントン基部は5つの同一タンパク質を含み、ファイバーは3つの同一タンパク質を含む。タンパク質IIIa、VI及びIXは、アデノウイルスのコートに存在し、ウイルスのカプシドを安定化させると考えられている(Stewartら,Cell,67:145-54(1991)、及びStewartら,EMBOJ.,12(7):2589-99(1993))。pIXを別としてカプシドタンパク質の発現は、アデノウイルスポリメラーゼタンパク質に依存している。従って、ポリメラーゼタンパク質遺伝子が存在し発現している場合のみ、アデノウイルス粒子の主要な構成要素がゲノムから発現する。
【0018】
アデノウイルスはそのいくつかの特徴により、治療用途で遺伝物質を細胞へ移入させるための(すなわち、「遺伝子治療」)、又はワクチン応用において抗原送達システムとして使用するための、理想的な運搬体となる。例えば、アデノウイルスは、高い力価で生み出され得(例えば約1013粒子単位(particle units(pu)))、非複製細胞及び複製細胞に対して遺伝物質を移入し得る。アデノウイルスゲノムは、大量の外来DNA(最大で約8kbまで)を運ぶよう操作され得、アデノウイルスのカプシドは、より長い配列でさえ移入を促進し得る(Curielら,Hum.Gene Ther.,3:147-154(1992))。加えて、アデノウイルスは一般に宿主細胞の染色体へ組み込まれず、線状エピソームとして維持され、それによって組換えアデノウイルスが正常な細胞機能を妨害するであろう可能性を最小限にする。
【0019】
本発明は、少なくとも部分的には、これまでに同定又は単離されていないアデノウイルスの発見及び単離に基礎を置いている。本明細書に記載のアデノウイルスは、ゴリラから単離された。ヒガシゴリラ(Gorilla beringei)及びニシゴリラ(Gorilla gorilla)の2つの種の中に、4種の広く認識されたゴリラの亜種がある。ニシゴリラ種には、ニシローランドゴリラ亜種(Gorilla gorilla
gorilla)及びクロスリバーゴリラ亜種(Gorilla gorilla diehli)が含まれる。ヒガシゴリラ種には、マウンテンゴリラ亜種(Gorilla
beringei beringei)及びヒガシローランドゴリラ亜種(Gorilla beringei graueri)が含まれる(例えばWilson and Reeder編,Mammalian Species of the World,第3版,Johns Hopkins University Press,Baltimore,Maryland(2005)を参照)。本発明のアデノウイルスは、ヒガシローランドゴリラ(Gorilla beringei graueri)より単離された。
【0020】
いくつかのかかるアデノウイルスゲノムは分析されており、例えば、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27又は配列番号28の核酸配列(そのそれぞれがアデノウイルスを独自に定義づける働きのあるいくつかの部分配列(すなわち核酸配列の配列番号1~10及びアミノ酸配列の配列番号11~20)を含む)をアデノウイルスが有し得ることが決定されている。配列番号6~10は、それぞれ配列番号16~20のアミノ酸配列をコードする。配列番号1~5は、それぞれ配列番号6~10の核酸配列の部分である。配列番号11~15は、それぞれ配列番号16~20のアミノ酸配列の部分である。
【0021】
アデノウイルスは、アデノウイルスベクター(例えば遺伝子送達運搬体)として使用され既に公知であるアデノウイルスと同様の方法で変更され得る。
【0022】
本明細書で使用する用語「アデノウイルス」は、アデノウイルスの生活環をもつ(participate in)能力を保持し、かつ、例えば破壊(例えば超音波処理)、変性(例えば熱又は溶剤を用いて)又は架橋(例えばホルマリン架橋を介して)により物理的に不活性化されていないアデノウイルスを指す。「アデノウイルスの生活環」は、(1)ウイルスの結合及び細胞への侵入、(2)アデノウイルスゲノムの転写及びアデノウイルスタンパク質の翻訳、(3)アデノウイルスゲノムの複製、及び(4)ウイルス粒子の組立てを含む(例えばFields Virology,第5版,Knipeら(編),Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA(2006)を参照)。
【0023】
本明細書で使用する用語「アデノウイルスベクター」は、そのアデノウイルスゲノムがアデノウイルスゲノムに関して非天然である核酸配列を収容するよう操作されているアデノウイルスを指す。典型的には、例えば遺伝子導入のため非天然の核酸配列の挿入をアデノウイルスに収容するために、アデノウイルスのアデノウイルスゲノムに1つ以上の変異(例えば欠失、挿入又は置換)を導入することによりアデノウイルスベクターは作製される。
【0024】
アデノウイルス及びアデノウイルスベクターは、複製可能、条件付きで複製可能又は複製欠損であり得る。
【0025】
複製可能なアデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、典型的な宿主細胞(すなわち、アデノウイルスによって典型的に感染され得る細胞)において複製し得る。複製可能なアデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、野生型アデノウイルスと比較して1つ以上の変異(例えば、1つ以上の欠失、挿入及び/又は置換)(宿主細胞でのウイルスの複製を阻害しない)をアデノウイルスゲノムに有し得る。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、E3領域(アデノウイルスゲノム又はアデノウイルスの増殖に必須ではない)として知られるアデノウイルス初期領域の部分的又は全体的な欠失を有し得る。
【0026】
条件付きで複製するアデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、事前に決められた条件下で複製するように改変されたアデノウイルス又はアデノウイルスベクターである。例えば、複製に必須な遺伝子機能(例えばアデノウイルス初期領域によってコードされる遺伝子機能)は、誘導可能な、抑制可能な又は組織特異的な転写制御配列(例えばプロモーター)と操作可能に連結され得る。かかる実施形態において、転写制御配列と相互作用する特定の因子が存在すること又は存在しないことが複製に必要となる。条件付きで複製するアデノウイルスベクターは、米国特許第5,998,205号にさらに記載されている。
【0027】
複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、典型的な宿主細胞(特にアデノウイルス又はアデノウイルスベクターに感染されたヒトの宿主細胞)においてアデノウイルス又はアデノウイルスベクターが複製しないような、例えば1つ以上の複製に必須な遺伝子機能又は領域の欠損の結果、1つ以上の複製に必要なアデノウイルスゲノムの遺伝子機能又は領域の補完を必要とするアデノウイルス又はアデノウイルスベクターである。
【0028】
本明細書で使用される遺伝子機能又はゲノム領域の欠損とは、全体又は部分的にその核酸配列が破壊された(例えば欠失した)遺伝子の機能を妨げ又は消失させるために十分な(例えば、遺伝子産物の機能が少なくとも約2倍、5倍、10倍、20倍、30倍又は50倍減少するような)アデノウイルスゲノムの遺伝物質の破壊(例えば欠失)として定義される。多くの場合、遺伝子領域全体の欠失は、複製に必須な遺伝子機能の破壊に必要ではない。しかしながら、1つ以上の導入遺伝子のために十分なスペースをアデノウイルス
ゲノム中に提供する目的のためには、1つ以上の遺伝子領域の大部分の除去が望ましいかもしれない。遺伝物質の欠失が好ましい一方、付加又は置換による遺伝物質の変異もまた、遺伝子機能の破壊に適している。複製に必須な遺伝子機能とは、アデノウイルスの複製(例えば増殖)に必要であるそれらの遺伝子機能であり、例えば、アデノウイルス初期領域(例えばE1、E2及びE4領域)、後期領域(例えばL1、L2、L3、L4及びL5領域)、ウイルスのパッケージングに関与する遺伝子(例えばIVa2遺伝子)、及びウイルス関連RNA(例えばVA-RNA-1及び/又はVA-RNA-2)によってコードされる。
【0029】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターが複製可能又は複製欠損であるかに関わらず、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは少なくともアデノウイルスゲノムの一部分を保持する。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、タンパク質コード領域又は非タンパク質コード領域を含む、アデノウイルスゲノムの任意の部分を含み得る。望ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスタンパク質をコードする少なくとも一つの核酸配列を含む。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、例えば、初期領域遺伝子(すなわち、E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4領域)のいずれか1つがコードするタンパク質、又はウイルスの構造タンパク質をコードする後期領域遺伝子(すなわち、L1、L2、L3、L4及びL5領域)のいずれか1つがコードするタンパク質などの任意の適切なアデノウイルスタンパク質をコードする核酸配列を含み得る。
【0030】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、pIXタンパク質、DNAポリメラーゼタンパク質、ペントンタンパク質、ヘキソンタンパク質及び/又はファイバータンパク質をコードする1つ以上の核酸配列を含むことが望ましい。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスタンパク質の完全長アミノ酸配列をコードする完全長核酸配列を含み得る。あるいは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスタンパク質の完全長アミノ酸配列の一部分をコードする完全長核酸配列の一部分を含み得る。
【0031】
核酸配列の一「部分」は、少なくとも10個のヌクレオチド(例えば、約10個から約5000個のヌクレオチド)を含む。好ましくは、核酸配列の一「部分」は、10個以上(例えば15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、45個以上、50個以上又は100個以上)のヌクレオチドであるが、5,000個未満(例えば4900個以下、4000個以下、3000個以下、2000個以下、1000個以下、800個以下、500個以下、300個以下又は100個以下)のヌクレオチドを含む。好ましくは、核酸配列の一部分は、約10個から約3500個のヌクレオチド(例えば、約10個、20個、30個、50個、100個、300個、500個、700個、1000個、1500個、2000個、2500個又は3000個のヌクレオチド)、約10個から約1000個のヌクレオチド(例えば、約25個、55個、125個、325個、525個、725個又は925個のヌクレオチド)若しくは約10個から約500個のヌクレオチド(例えば、約15個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、150個、175個、250個、275個、350個、375個、450個、475個、480個、490個、495個又は499個のヌクレオチド)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲である。より好ましくは、核酸配列の一「部分」は約3200個以下のヌクレオチド(例えば、約10個から約3200個のヌクレオチド、約10個から約3000個のヌクレオチド、若しくは約30個から約500個のヌクレオチド、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲)を含む。
【0032】
アミノ酸配列の一「部分」は、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、約3個から約1200個のアミノ酸)を含む。好ましくはアミノ酸配列の一「部分」は、3個以上(例えば
、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、40個以上又は50個以上)のアミノ酸であるが、1200個未満(例えば1,000個以下、800個以下、700個以下、600個以下、500個以下、400個以下、300個以下、200個以下又は100個以下)のアミノ酸を含む。好ましくは、アミノ酸配列の一部分は、約3個から約500個のアミノ酸(例えば約10個、100個、200個、300個、400個又は500個のアミノ酸)、約3個から約300個のアミノ酸(例えば約20個、50個、75個、95個、150個、175個又は200個のアミノ酸)、若しくは約3個から約100個のアミノ酸(例えば、約15個、25個、35個、40個、45個、60個、65個、70個、80個、85個、90個、95個又は99個のアミノ酸)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲である。より好ましくは、アミノ酸配列の一「部分」は、約500個以下のアミノ酸(例えば約3個から約400個のアミノ酸、約10個から約250個のアミノ酸若しくは約50個から約100個のアミノ酸又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲)を含む。
【0033】
アデノウイルスpIXタンパク質は、アデノウイルスカプシドに存在し、ヘキソン9量体相互作用を強化することが示されており、完全長ゲノムのパッケージングに必須である(例えば、Boulangerら,J.Gen.Virol.,44:783-800(1979);Horwitz M.S.,“Adenoviridae and their replication”in Virology,第二版,B.N.Fieldsら(編),Raven Press,Ltd.,New York,pp.1679-1721(1990)、Ghosh-Choudhuryら,EMBO J.,6:1733-1739(1987)及びvan Oostrumら,J.Virol.,56:439-448(1985)を参照)。アデノウイルス構造への寄与に加えて、アデノウイルス主要後期プロモーター(MLP)活性を刺激することなど、pIXは転写特性を示すことが示されている(例えばLutzら,J.Virol.,71(7):5102-5109(1997)を参照)。アデノウイルスpIXタンパク質の全体又は一部分をコードする核酸配列としては、例えば、配列番号6及び配列番号1が挙げられる。完全長pIXタンパク質又はその一部分を含むアミノ酸配列としては、例えば、配列番号16及び配列番号11が挙げられる。
【0034】
アデノウイルスDNAポリメラーゼタンパク質は、in vitro及びin vivoの両方においてウイルスDNAの複製に必須である。ポリメラーゼは、アデノウイルスDNAの5’末端に共有結合している末端タンパク質(TP)の前駆体(pTP)との複合体として共精製される(Fieldら,J.Biol.Chem.,259:9487-9495(1984))。アデノウイルスDNAポリメラーゼ及びpTPの両方は、E2領域によりコードされる。ポリメラーゼタンパク質は、pIXを除く全ての構造タンパク質の発現に必要である。ポリメラーゼタンパク質の遺伝子配列なしでは、ポリメラーゼタンパク質は産生されない。結果として、ウイルスゲノムは複製されず、主要後期プロモーターは活性化されず、カプシドタンパク質は発現しない。アデノウイルスDNAポリメラーゼタンパク質の全体又は一部分をコードする核酸配列としては、例えば、配列番号7が挙げられる。配列番号2は、配列番号7の部分である。完全長アデノウイルスDNAポリメラーゼ又はその一部分を含むアミノ酸配列としては、例えば、配列番号17及び配列番号12が挙げられる。
【0035】
アデノウイルスヘキソンタンパク質は、アデノウイルスカプシドにおいて最も大きくかつ最も豊富なタンパク質である。ヘキソンタンパク質は、ウイルスカプシドの組立て、カプシドの正二十面体の対称性の決定(これによりカプシドの体積及びDNAのパッケージングの大きさの限界が決まる)、及びカプシドの完全性に必須である。さらに、ヘキソンは、アデノウイルスベクターの中和を減少させるよう変更するための第一標的である(例えばGallら,J.Virol.,72:10260-264(1998)及びRux
ら,J.Virol.,77(17):9553-9566(2003)を参照)。ヘキソンタンパク質の主要な構造的特徴は血清型を超えてアデノウイルス間で共有されるが、ヘキソンタンパク質は血清型間で大きさ及び免疫学的特性が異なる(Jornvallら,J.Biol.Chem.,256(12):6181-6186(1981))。15種類のアデノウイルスヘキソンタンパク質の比較によって、ヘキソンの主たる抗原性領域及び血清型特異的な領域はループ1及びループ2(すなわち、それぞれLI又はl1、及びLII又はl2)にあるようであり、その中にアデノウイルス血清型間で長さ及び配列の異なる7つの別々の超可変領域(HVR1からHVR7)があることが明らかとなった(Crawford-Mikszaら,J.Virol.,70(3):1836-1844(1996))。全体又は一部分のアデノウイルスヘキソンタンパク質をコードする核酸配列としては、例えば、配列番号9及び配列番号4が挙げられる。完全長アデノウイルスヘキソンタンパク質又はその一部分を含むアミノ酸配列としては、例えば、配列番号19及び配列番号14が挙げられる。
【0036】
アデノウイルスファイバータンパク質は、尾部(tail)、軸部(shaft)及びノブ(knob)の三つのドメインを有するアデノウイルスポリペプチドIVのホモトリマーである(Devauxら,J.Molec.Biol.,215:567-88(1990)、Yehら,Virus Res.,33:179-98(1991))。ファイバータンパク質は、ノブ及び軸部ドメインを介して細胞表面の受容体に対する最初のウイルスの結合を媒介する(Henryら,J.Virol.,68(8):5239-46(1994))。三量体化のためのアミノ酸配列はノブに位置しており、それはファイバーのアミノ末端(尾部)がペントン基部と適切に結合するために必要なようである(Novelliら,Virology,185:365-76(1991))。細胞受容体の認識及びペントン基部への結合に加え、ファイバーは血清型同一性の一因となる。異なるアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質は、大幅に異なる(例えばGreenら,EMBO J.,2:1357-65(1983)、Chroboczekら,Virology,186:280-85(1992)、及びSignasら,J.Virol.,53:672-78(1985)を参照)。このように、ファイバータンパク質は、アデノウイルスの生活環に重要となる複数の機能を有する。アデノウイルスファイバータンパク質の全体又は一部分をコードする核酸配列としては、例えば、配列番号10が挙げられる。配列番号5は、配列番号10の部分である。完全長アデノウイルスファイバータンパク質又はその一部分を含むアミノ酸配列としては、例えば、配列番号20及び配列番号15が挙げられる。
【0037】
アデノウイルスペントン基部タンパク質は、正二十面体のカプシドの頂点に位置し、5つの同一の単量体を含む。ペントン基部タンパク質は、正二十面体のカプシドの複数の切子面(facet)においてヘキソンタンパク質を架橋するための構造を提供し、ファイバータンパク質がカプシドに組み込まれるのに必須な接合部分を提供する。ペントン基部のそれぞれの単量体は、RGDトリペプチドモチーフを含む(Neumannら,Gene,69:153-157(1988))。RGDトリペプチドはαvインテグリンとの結合を媒介し、ペントン基部のRGD配列に点変異を有するアデノウイルスは、細胞に感染する能力が制限される(Baiら,J.Virol.,67:5198-5205(1993))。従って、ペントン基部タンパク質は、カプシドの構築及びウイルスと細胞の相互作用の最大限の効率を得るために必須である。アデノウイルスペントン基部タンパク質の全体又はその一部分をコードする核酸配列としては、例えば、配列番号8及び配列番号3が挙げられる。完全長アデノウイルスペントン基部タンパク質又はその一部分を含むアミノ酸配列としては、例えば、配列番号18及び配列番号13が挙げられる。
【0038】
本明細書に記載の核酸又はアミノ酸配列の「同一性」は、関心の核酸又はアミノ酸配列と、参照の核酸又はアミノ酸配列との比較により決定され得る。参照配列において、関心
配列となるように変更及び/又は改変(modified)されている(例えば点変異、挿入又は欠失などによって)ヌクレオチド又はアミノ酸残基の数を数える。かかる変更の総数を関心配列の全長から差し引き、その差を関心配列の長さで割り、百分率として表す。二つ以上の配列間での最適なアラインメント取得及び同一性計算のためのいくつかの数学的アルゴリズムは、公知であり、いくつかの利用可能なソフトウエアプログラムに組み込まれている。かかるプログラムの例としては、CLUSTAL-W、T-Coffee及びALIGN(核酸及びアミノ酸配列のアラインメントのため)、BLASTプログラム(例えばBLAST 2.1、BL2SEQ及びそれらの後のバージョン)及びFASTAプログラム(例えばFASTA3x、FASTM及びSSEARCH)(配列のアラインメント及び配列相同性検索のため)などが挙げられる。配列のアラインメントのアルゴリズムは、例えば、Altschulら,J.Molecular Biol.,215(3):403-410(1990)、Beigertら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,106(10):3770-3775(2009)、Durbinら編,Biological Sequence Analysis:Probalistic Models of Proteins and Nucleic Acids,Cambridge University Press,Cambridge,UK(2009)、Soding,Bioinformatics,21(7):951-960(2005)、Altschulら,Nucleic Acids Res.,25(17):3389-3402(1997)、及びGusfield,Algorithms on Strings,Trees and Sequences,Cambridge University Press,Cambridge UK(1997))にも開示されている。
【0039】
一実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、以下の核酸配列を1つ以上含む:(a)配列番号1に対して少なくとも97%同一である(例えば、少なくとも98.20%、少なくとも99.41%又は100%同一である)核酸配列、(b)配列番号2に対して少なくとも97.5%同一である(例えば、少なくとも98.5%、少なくとも99.5%又は100%同一である)核酸配列、(c)配列番号3に対して少なくとも80%同一である(例えば、少なくとも82.22%、少なくとも84.44%、少なくとも86.67%、少なくとも88.89%、少なくとも91.11%、少なくとも93.33%、少なくとも95.56%、少なくとも97.78%又は100%同一である)核酸配列、(d)配列番号4に対して少なくとも96%同一である(例えば、少なくとも96.9%、少なくとも97.8%、少なくとも98.7%、少なくとも99.6%又は100%同一である)核酸配列、及び(e)配列番号5に対して少なくとも96%同一である(例えば、少なくとも96.83%又は100%同一である)核酸配列。
【0040】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち1種、2種、3種、4種又は全5種を、単独又は任意の組み合わせで含み得る。これに関して、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち任意の2種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の3種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の4種を任意の組み合わせで、又は前述の配列のうち全5種を含み得る。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号1に対して少なくとも97%同一である核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号2に対して少なくとも97.5%同一である核酸配列、及び配列番号3に対して少なくとも80%同一である核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号1に対して少なくとも97%同一である核酸配列、配列番号3に対して少なくとも80%同一である核酸配列、及び配列番号5に対して少なくとも96%同一である核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号1の核酸配列、(b)配列番号2の核酸配列、(c)配列番号3の核酸配列、(d)配列番号4の核酸配列、又は(e)配列番号5の核酸配列、を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクター
は、(a)配列番号1に対して少なくとも97%同一である核酸配列、(b)配列番号2に対して少なくとも97.5%同一である核酸配列、(c)配列番号3に対して少なくとも80%同一である核酸配列、(d)配列番号4に対して少なくとも96%同一である核酸配列、及び(e)配列番号5に対して少なくとも96%同一である核酸配列、を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号1の核酸配列、(b)配列番号2の核酸配列、(c)配列番号3の核酸配列、(d)配列番号4の核酸配列、及び(e)配列番号5の核酸配列、を含み得る。
【0041】
別の実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、以下の核酸配列の1つ以上を含む:(a)配列番号6に対して少なくとも98.4%同一である(例えば、少なくとも98.65%、少なくとも98.9%、少なくとも99.15%、少なくとも99.4%、少なくとも99.65%、少なくとも99.9%又は100%同一である)核酸配列、(b)配列番号7に対して少なくとも99.01%同一である(例えば、少なくとも99.04%、少なくとも99.07%、少なくとも99.10%、少なくとも99.14%、少なくとも99.17%、少なくとも99.20%、少なくとも99.23%、少なくとも99.26%、少なくとも99.29%、少なくとも99.33%、少なくとも99.36%、少なくとも99.39%、少なくとも99.42%、少なくとも99.45%、少なくとも99.48%、少なくとも99.52%、少なくとも99.55%、少なくとも99.58%、少なくとも99.61%、少なくとも99.64%、少なくとも99.67%、少なくとも99.70%、少なくとも99.74%、少なくとも99.77%、少なくとも99.80%、少なくとも99.83%、少なくとも99.86%、少なくとも99.89%、少なくとも99.93%、少なくとも99.96%、少なくとも99.99%又は100%同一である)核酸配列、(c)配列番号8に対して少なくとも97.08%同一である(例えば、少なくとも97.13%、少なくとも97.18%、少なくとも97.23%、少なくとも97.28%、少なくとも97.33%、少なくとも97.38%、少なくとも97.43%、少なくとも97.49%、少なくとも97.54%、少なくとも97.59%、少なくとも97.64%、少なくとも97.69%、少なくとも97.74%、少なくとも97.79%、少なくとも97.84%、少なくとも97.89%、少なくとも97.94%、少なくとも97.99%、少なくとも98.04%、少なくとも98.09%、少なくとも98.14%、少なくとも98.19%、少なくとも98.25%、少なくとも98.30%、少なくとも98.35%、少なくとも98.40%、少なくとも98.45%、少なくとも98.50%、少なくとも98.55%、少なくとも98.60%、少なくとも98.65%、少なくとも98.70%、少なくとも98.75%、少なくとも98.80%、少なくとも98.85%、少なくとも98.90%、少なくとも98.95%、少なくとも99.01%、少なくとも99.06%、少なくとも99.11%、少なくとも99.16%、少なくとも99.21%、少なくとも99.26%、少なくとも99.31%、少なくとも99.36%、少なくとも99.41%、少なくとも99.46%、少なくとも99.5%1、少なくとも99.56%、少なくとも99.61%、少なくとも99.66%、少なくとも99.71%、少なくとも99.76%、少なくとも99.82%、少なくとも99.87%、少なくとも99.92%、少なくとも99.97%又は100%同一である)核酸配列、(d)配列番号9に対して少なくとも96.52%同一である(例えば、少なくとも96.55%、少なくとも96.59%、少なくとも96.62%、少なくとも96.66%、少なくとも96.69%、少なくとも96.73%、少なくとも96.76%、少なくとも96.80%、少なくとも96.83%、少なくとも96.87%、少なくとも96.90%、少なくとも96.94%、少なくとも96.97%、少なくとも97.01%、少なくとも97.04%、少なくとも97.08%、少なくとも97.11%、少なくとも97.15%、少なくとも97.18%、少なくとも97.22%、少なくとも97.25%、少なくとも97.29%、少なくとも97.32%、少なくとも97.36%、少なくとも97.39%、少なくとも97.43%、少なくとも97.46%、少な
くとも97.50%、少なくとも97.53%、少なくとも97.57%、少なくとも97.60%、少なくとも97.64%、少なくとも97.67%、少なくとも97.71%、少なくとも97.74%、少なくとも97.78%、少なくとも97.81%、少なくとも97.85%、少なくとも97.88%、少なくとも97.92%、少なくとも97.95%、少なくとも97.99%、少なくとも98.02%、少なくとも98.06%、少なくとも98.09%、少なくとも98.13%、少なくとも98.16%、少なくとも少なくとも98.20%、少なくとも98.23%、少なくとも98.27%、少なくとも98.30%、少なくとも98.34%、少なくとも98.37%、少なくとも少なくとも98.40%、少なくとも98.44%、少なくとも98.47%、少なくとも98.51%、少なくとも98.54%、少なくとも98.58%、少なくとも98.61%、少なくとも98.65%、少なくとも98.68%、少なくとも98.72%、少なくとも98.75%、少なくとも98.79%、少なくとも98.82%、少なくとも98.86%、少なくとも98.89%、少なくとも98.93%、少なくとも98.96%、少なくとも99.00%、少なくとも99.03%、少なくとも99.07%、少なくとも99.10%、少なくとも99.14%、少なくとも99.17%、少なくとも99.21%、少なくとも99.24%、少なくとも99.28%、少なくとも99.31%、少なくとも99.35%、少なくとも99.38%、少なくとも99.42%、少なくとも99.45%、少なくとも99.49%、少なくとも99.52%、少なくとも99.56%、少なくとも99.59%、少なくとも99.63%、少なくとも99.66%、少なくとも99.70%、少なくとも99.73%、少なくとも99.77%、少なくとも99.80%、少なくとも99.84%、少なくとも99.87%、少なくとも99.91%、少なくとも99.94%、少なくとも99.98%又は100%同一である)核酸配列、及び(e)配列番号10に対して少なくとも98.49%同一である(例えば、少なくとも98.55%、少なくとも98.60%、少なくとも98.66%、少なくとも98.72%、少なくとも98.78%、少なくとも98.83%、少なくとも98.89%、少なくとも98.95%、少なくとも99.01%、少なくとも99.06%、少なくとも99.12%、少なくとも99.18%、少なくとも99.24%、少なくとも99.29%、少なくとも99.35%、少なくとも99.41%、少なくとも99.47%、少なくとも99.52%、少なくとも99.58%、少なくとも99.64%、少なくとも99.70%、少なくとも99.75%、少なくとも99.81%、少なくとも99.87%、少なくとも99.93%、少なくとも99.98%又は100%同一である)核酸配列。
【0042】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち1種、2種、3種、4種又は全5種を、単独又は任意の組み合わせで含み得る。これに関して、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち任意の2種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の3種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の4種を任意の組み合わせで、又は前述の配列のうち全5種を含み得る。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号6に対して少なくとも98.4%同一である核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号7に対して少なくとも99.01%同一である核酸配列、及び配列番号8に対して少なくとも97.08%同一である核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号8に対して少なくとも97.08%同一である核酸配列、配列番号9に対して少なくとも96.52%同一である核酸配列、及び配列番号10に対して少なくとも98.49%同一である核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号6の核酸配列、(b)配列番号7の核酸配列、(c)配列番号8の核酸配列、(d)配列番号9の核酸配列、又は(e)配列番号10の核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号6に対して少なくとも98.4%同一である核酸配列、(b)配列番号7に対して少なくとも99.01%同一である核酸配列、(c)配列番号8に対して少なくとも97.08%同一である核酸配列、(d)配
列番号9に対して少なくとも96.52%同一である核酸配列、及び(e)配列番号10に対して少なくとも98.49%同一である核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号6の核酸配列、(b)配列番号7の核酸配列、(c)配列番号8の核酸配列、(d)配列番号9の核酸配列、及び(e)配列番号10の核酸配列、を含み得る。
【0043】
別の実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、以下の核酸配列を1つ以上含む:(a)配列番号6の少なくとも121個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(b)配列番号7の少なくとも462個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(c)配列番号8の少なくとも234個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(d)配列番号9の少なくとも606個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、又は(e)配列番号10の少なくとも188個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列。
【0044】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号6の少なくとも121個(例えば125個以上、130個以上、150個以上、200個以上、250個以上又は300個以上)の連続するヌクレオチドであるが、配列番号6の399個以下(例えば398個以下、350個以下又は275個以下)の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号6の121個から300個の連続するヌクレオチド(例えば125個、150個、175個、200個、250個又は275個の連続するヌクレオチド)、配列番号6の121個から200個の連続するヌクレオチド(例えば130個、140個、145個、160個、165個、170個、180個、185個、190個、195個又は199個の連続するヌクレオチド)若しくは配列番号6の121個から150個の連続するヌクレオチド(例えば122個、123個、124個、125個、126個、127個、128個、129個、130個、131個、132個、133個、134個、135個、136個、137個、138個、139個、140個、141個、142個、143個、144個、145個、146個、147個、148個又は149個の連続するヌクレオチド)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含む核酸配列を含む。
【0045】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号7の少なくとも462個(例えば470個以上、500個以上、600個以上、700個以上、800個以上、900個以上又は1,000個以上)の連続するヌクレオチドであるが、配列番号7の3168個以下(例えば3,100個以下、3,000個以下、2,500個以下、2,000個以下又は1,500個以下)の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号7の462個から2,000個の連続するヌクレオチド(例えば475個、500個、700個、1,000個、1,200個、1,500個又は1,700個の連続するヌクレオチド)、配列番号7の462個から1,000個の連続するヌクレオチド(例えば490個、525個、575個、600個、650個、675個、725個、750個、800個、850個、900個又は950個の連続するヌクレオチド)若しくは配列番号7の462個から800個の連続するヌクレオチド(例えば480個、485個、490個、495個、499個、510個、515個、530個、540個、550個、560個、565個、570個、580個、585個、590個、595個、615個、625個、630個、640個、660個、665個、670個、680個、685個、690個、695個、705個、715個、730個、740個、755個、760個、765個、770個、775個、780個、785個、790個、795個又は799個の連続するヌクレオチド)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含む核酸配列を含む。
【0046】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号8の少なくとも234個(例えば235個以上、250個以上、300個以上、350個以上、400個以上、450
個以上又は500個)の連続するヌクレオチドであるが、配列番号8の1,974個以下(例えば1,900個以下、1,800個以下、1,500個以下、1,200個以下、1,000個以下、850個以下、800個以下、750個以下又は700個以下)の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号8の234個から1,500個の連続するヌクレオチド(例えば290個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1,000個又は1,200個の連続するヌクレオチド)、配列番号8の234個から1,000個の連続するヌクレオチド(例えば295個、350個、450個、550個、650個、750個、850個又は950個の連続するヌクレオチド)若しくは配列番号8の234個から500個の連続するヌクレオチド(例えば290個、305個、310個、315個、325個、340個、345個、360個、365個、370個、375個、380個、385個、390個、395個、405個、425個、430個、440個、455個、460個、465個、470個、475個、480個、485個、490個、495個又は499個の連続するヌクレオチド)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含む核酸配列を含む。
【0047】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号9の少なくとも606個(例えば610個以上、650個以上、700個以上、800個以上又は1,000個以上)の連続するヌクレオチドであるが、配列番号9の2865個以下(例えば2,800個以下、2,500個以下、2,000個以下、1,800個以下又は1,500個以下)の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号9の606個から2,000個の連続するヌクレオチド(例えば615個、650個、700個、800個、900個、1,000個、1,200個、1,500個、1,700個又は1,900個の連続するヌクレオチド)、配列番号9の606個から1,000個の連続するヌクレオチド(例えば630個、645個、665個、675個、725個、750個、775個、825個、850個、875個、925個、950個又は975個の連続するヌクレオチド)若しくは配列番号9の606個から800個の連続するヌクレオチド(例えば620個、635個、640個、655個、660個、670個、680個、685個、690個、695個、699個、705個、715個、730個、735個、740個、745個、755個、760個、765個、770個、785個、790個、795個又は799個の連続するヌクレオチド)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含む核酸配列を含む。
【0048】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号10の少なくとも188個(例えば189個以上、200個以上、300個以上、500個以上、700個以上又は900個以上)の連続するヌクレオチドであるが、配列番号10の1,740個以下(例えば1,700個以下、1,500個以下、1,200個以下又は1,000個以下)の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号10の188個から1,500個の連続するヌクレオチド(例えば200個、400個、600個、800個、1,000個、1,200個又は1,400個の連続するヌクレオチド)、配列番号10の188個から1,000個の連続するヌクレオチド(例えば195個、250個、350個、450個、550個、650個、750個、850個又は950個の連続するヌクレオチド)若しくは配列番号10の188個から500個の連続するヌクレオチド(例えば190個、225個、230個、240個、255個、260個、265個、270個、275個、315個、325個、330個、340個、355個、360個、365個、370個、375個、380個、385個、390個、395個、415個、425個、430個、440個、455個、460個、465個、470個、475個、480個、485個、490個、495個又は499個の連続するヌクレオチド)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含む核酸配列を含む。
【0049】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち1種、2種、3種、4種又は全5種を単独又は任意の組み合わせで含み得る。これに関して、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち任意の2種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の3種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の4種を任意の組み合わせで、又は前述の配列の全5種を含み得る。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号6の少なくとも121個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号8の少なくとも234個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、及び配列番号10の少なくとも188個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号7の少なくとも連続する462個のヌクレオチドを含む核酸配列、配列番号9の少なくとも606個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、及び配列番号10の少なくとも188個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号6の少なくとも121個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、配列番号7の少なくとも462個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、配列番号8の少なくとも234個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、及び配列番号9の少なくとも606個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号6の少なくとも121個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(b)配列番号7の少なくとも462個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(c)配列番号8の少なくとも234個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、(d)配列番号9の少なくとも606個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列、及び(e)配列番号10の少なくとも188個の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を含み得る。
【0050】
別の実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは以下のアミノ酸配列を1つ以上含む:(a)配列番号11に対して少なくとも93%同一である(例えば、少なくとも96.57%又は100%同一である)アミノ酸配列、(b)配列番号13に対して少なくとも80%同一である(例えば、少なくとも86.67%、少なくとも93.33%又は100%同一である)アミノ酸配列、(c)配列番号14に対して少なくとも92%同一である(例えば、少なくとも97.56%又は100%同一である)アミノ酸配列、及び(d)配列番号15に対して少なくとも88%同一である(例えば、少なくとも94.67%又は100%同一である)アミノ酸配列。
【0051】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述のアミノ酸配列のうち1種、2種、3種又は全4種を、単独又は任意の組み合わせで含み得る。これに関して、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち任意の2種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の3種を任意の組み合わせで、又は前述の配列のうち全4種を含み得る。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは配列番号11に対して少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号11に対して少なくとも93%同一であるアミノ酸配列、及び配列番号13に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号11に対して少なくとも93%同一であるアミノ酸配列、配列番号13に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列、及び配列番号15に対して少なくとも88%同一であるアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号11のアミノ酸配列、(b)配列番号13のアミノ酸配列、(c)配列番号14のアミノ酸配列、又は(d)配列番号15のアミノ酸配列、を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号11に対して少なくとも93%同一であるアミノ酸配列、(b)配列番号13に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列、(c)配列番号14に対して少なくとも92%同一であるアミノ酸配列、及び(d)配列番号15に対して少なくとも88%同一であるア
ミノ酸配列、を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号11のアミノ酸配列、(b)配列番号13のアミノ酸配列、(c)配列番号14のアミノ酸配列、及び(d)配列番号15のアミノ酸配列、を含み得る。
【0052】
別の実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは以下のアミノ酸配列を1つ以上含む:(a)配列番号16に対して少なくとも99%同一である(例えば、少なくとも99.75%又は100%同一である)アミノ酸配列、(b)配列番号18に対して少なくとも97.8%同一である(例えば、少なくとも97.95%、少なくとも98.10%、少なくとも98.26%、少なくとも98.41%、少なくとも98.56%、少なくとも98.71%、少なくとも98.86%、少なくとも99.02%、少なくとも99.17%、少なくとも99.32%、少なくとも99.47%、少なくとも99.62%、少なくとも99.78%、少なくとも99.93%又は100%同一である)アミノ酸配列、(c)配列番号19に対して少なくとも99.1%同一である(例えば、少なくとも99.20%、少なくとも99.31%、少なくとも99.41%、少なくとも99.52%、少なくとも99.62%、少なくとも99.73%、少なくとも99.83%、少なくとも99.94%又は100%同一である)アミノ酸配列、及び(d)配列番号20に対して少なくとも99.2%同一である(例えば、少なくとも99.37%、少なくとも99.54%、少なくとも99.72%、少なくとも99.89%又は100%同一である)アミノ酸配列。
【0053】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述のアミノ酸配列のうち1種、2種、3種又は全4種を、単独又は任意の組み合わせで含み得る。これに関して、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち任意の2種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の3種を任意の組み合わせで、又は前述の配列のうち全4種を含み得る。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、及び配列番号19に対して少なくとも99.1%同一であるアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、配列番号19に対して少なくとも99.1%同一であるアミノ酸配列、及び配列番号20に対して少なくとも99.2%同一であるアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号16のアミノ酸配列、(b)配列番号18のアミノ酸配列、(c)配列番号19のアミノ酸配列、又は(d)配列番号20のアミノ酸配列、を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号16に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、(b)配列番号18に対して少なくとも97.8%同一であるアミノ酸配列、(c)配列番号19に対して少なくとも99.1%同一であるアミノ酸、及び(d)配列番号20に対して少なくとも99.2%同一であるアミノ酸配列、を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号16のアミノ酸配列、(b)配列番号18のアミノ酸配列、(c)配列番号19のアミノ酸配列、及び(d)配列番号20のアミノ酸配列、を含み得る。
【0054】
別の実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、以下のアミノ酸配列を1つ以上含む:(a)配列番号16の少なくとも89個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、(b)配列番号18の少なくとも247個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、(c)配列番号19の少なくとも230個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、及び(d)配列番号20の少なくとも231個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列。
【0055】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16の少なくとも89個(例
えば90個以上、100個以上又は110個以上)の連続するアミノ酸残基であるが、配列番号16の133個以下(例えば130個以下、125個以下、120個以下又は115個以下)の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16の89個から130個(例えば90個、100個、110個、115個、120個又は125個の連続するアミノ酸残基)の連続するアミノ酸残基、配列番号16の89個から115個(例えば95個、110個又は112個の連続するアミノ酸残基)の連続するアミノ酸残基、若しくは配列番号16の89個から100個(例えば89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個又は99個の連続するアミノ酸残基)の連続するアミノ酸残基、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含むアミノ酸配列を含む。
【0056】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号18の少なくとも247個(例えば250個以上、275個以上、300個以上又は400個以上)の連続するアミノ酸残基であるが、配列番号18の658個以下(例えば650個以下、550個以下又は450個以下)の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号18の247個から600個(例えば255個、275個、300個、400個又は500個の連続するアミノ酸残基)の連続するアミノ酸残基、配列番号18の247個から500個(例えば325個、350個、375個、425個、450個又は475個の連続するアミノ酸残基)の連続するアミノ酸残基、若しくは配列番号18の247個から400個(例えば265個、280個、285個、290個、295個、360個、365個、380個、385個、390個、395個又は399個の連続するアミノ酸残基)の連続するアミノ酸残基、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含む酸配列(acid sequence)を含む。
【0057】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号19の少なくとも230個(例えば、250個以上、300個以上、350個以上、400個以上又は500個以上)の連続するアミノ酸残基であるが、配列番号19の955個以下(例えば、950個以下、900個以下、800個以下、700個以下又は600個以下)の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号19の230個から800個の連続するアミノ酸残基(例えば、240個、260個、270個、280個、290個、300個、350個、390個、400個、500個、600個又は750個の連続するアミノ酸残基)、配列番号19の230個から600個の連続するアミノ酸残基(例えば、255個、265個、275個、285個、295個、305個、325個、335個、345個、355個、365個、375個、385個、395個、425個、445個、450個、465個、475個、525個、545個、550個、565個又は575個の連続するアミノ酸残基)、又は配列番号19の230個から500個の連続するアミノ酸残基(例えば、235個、245個、299個、320個、330個、340個、360個、370個、385個、389個、395個、399個、415個、435個、440個、460個、470個、480個又は499個の連続するアミノ酸残基)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含む酸配列(acid sequence)を含む。
【0058】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号20の少なくとも231個(例えば、250個以上、300個以上又は350個以上)の連続するアミノ酸残基であるが、配列番号20の580個以下(例えば、575個以下、550個以下、500個以下、450個以下又は400個以下)の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号20の231個から500個の連続するアミノ酸残基(例えば、245個、255個、275個、300個、350個、375個又は400個の連続するアミノ酸残基)、配列番号20の23
1個から400個の連続するアミノ酸残基(例えば、235個、265個、280個、285個、295個、305個、315個、325個、335個、345個、355個、365個、375個、385個、395個又は399個の連続するアミノ酸残基)、又は配列番号20の231個から300個の連続するアミノ酸残基(例えば、240個、250個、260個、270個又は299個の連続するアミノ酸残基)、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲を含む酸配列(acid sequence)を含む。
【0059】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述のアミノ酸配列のうち1種、2種、3種又は全4種を、単独又は任意の組み合わせで含み得る。これに関して、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述の配列のうち任意の2種を任意の組み合わせで、前述の配列のうち任意の3種を任意の組み合わせで、又は前述の配列のうち全4種を含み得る。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16の少なくとも89個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16の少なくとも89個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、及び配列番号19の少なくとも230個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16の少なくとも89個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、配列番号18の少なくとも247個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、及び配列番号19の少なくとも230個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号16の少なくとも89個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、配列番号18の少なくとも247個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、及び配列番号20の少なくとも231個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含み得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、(a)配列番号16の少なくとも89個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、(b)配列番号18の少なくとも247個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、(c)配列番号19の少なくとも230個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、及び(d)配列番号20の少なくとも231個の連続するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列、を含み得る。
【0060】
別の実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、前述のアミノ酸配列(例えば配列番号11~20のいずれかのアミノ酸配列、又は本明細書に記載のそれらのバリアント及び/又は部分のいずれか)のいずれか1つ以上をコードする1つ以上の核酸配列を含む。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、配列番号17に対して少なくとも99.5%同一である(例えば、少なくとも99.59%、少なくとも99.69%、少なくとも99.78%、少なくとも99.88%、少なくとも99.97%又は100%同一である)アミノ酸配列をコードする核酸配列、又は配列番号12に対して少なくとも95%同一である(例えば、少なくとも97.94%又は100%同一である)アミノ酸配列をコードする核酸配列を含み得る。
【0061】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、例えば、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27又は配列番号28の核酸配列を含み得る。
【0062】
本明細書で論ずる通り、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、複製可能、条件付きで複製又は複製欠損であり得る。好ましくは、複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターが、1つ以上のアデノウイルスゲノム領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能の補完を、増殖のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)に必要とするように、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは複製欠損である。
【0063】
複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、1つ以上の増殖のためのアデノウイルスゲノム領域において1つ以上の複製に必須な遺伝子機能に欠損をもたらすため
に任意の適切な方法により改変され得る。1つ以上のアデノウイルスゲノム領域中の1つ以上の複製に必須な遺伝子機能の欠損の補完とは、欠損している複製に必須な遺伝子機能を提供するための外来手段の使用を指す。かかる補完は、任意の適した方法で(例えば、補完細胞及び/又は破壊された複製に必須な遺伝子機能をコードする外来のDNA(例えばヘルパーアデノウイルス)を使用することにより)達成され得る。
【0064】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムの初期領域(すなわち、E1~E4領域)のみの、アデノウイルスゲノムの後期領域(すなわち、L1~L5領域)のみの、アデノウイルスゲノムの初期領域及び後期領域の両方の、又は全てのアデノウイルス遺伝子の(すなわち、高容量アデノベクター(HC-Ad)、Morsyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:965-976(1998);Chenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:1645-1650(1997);及びKochanekら、Hum.Gene Ther.,10:2451-2459(1999)を参照)1つ以上の複製に必須な遺伝子機能を欠損し得る。複製欠損アデノウイルスベクターの例は、米国特許第5,837,511号;第5,851,806号、第5,994,106号;第6,127,175号;第6,482,616号;及び第7,195,896号、並びに国際特許出願公開WO1994/028152、WO1995/002697、WO1995/016772、WO1995/034671、WO1996/022378、WO1997/012986、WO1997/021826及びWO2003/022311に開示されている。
【0065】
アデノウイルスゲノムの初期領域には、E1、E2、E3及びE4領域が含まれる。E1領域はE1A及びE1Bサブ領域を含み、E1領域における複製必須遺伝子機能の1つ以上の欠損には、E1A、E1Bサブ領域のどちらか一方又はE1A及びE1Bサブ領域の両方における複製に必須な遺伝子機能の1つ以上の欠損が含まれ得、それにより、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターが増殖するため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)にアデノウイルスゲノムのE1Aサブ領域及び/又はE1Bサブ領域の補完が必要となる。E2領域はE2A及びE2Bサブ領域を含み、E2領域における複製に必須な遺伝子機能の1つ以上の欠損には、E2A、E2Bサブ領域のどちらか一方又はE2A及びE2Bサブ領域の両方における複製に必須な遺伝子機能の1つ以上の欠損が含まれ得、それにより、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターが増殖するため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)にアデノウイルスゲノムのE2Aサブ領域及び/又はE2Bサブ領域の補完が必要となる。
【0066】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターの増殖のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)に、E3領域の部分又は全体の欠失がE3領域のいずれの遺伝子機能の補完も必要としないように、E3領域は、複製に必須な遺伝子機能をいずれも含まない。本発明に関して、E3領域は、ヒトアデノウイルス5のE3領域の12.5Kタンパク質(NCBI reference sequence AP_000218)と高い相同性を持つタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから始まり、ヒトアデノウイルス5のE3領域の14.7Kタンパク質(NCBI reference sequence AP_000224.1)と高い相同性を持つタンパク質をコードするオープンリーディングフレームで終わる領域として定義される。E3領域は、全体又は部分的に欠失されてもよく、全体又は部分的に保持されてもよい。欠失の大きさは、そのゲノムが最適なゲノムのパッケージングの大きさと厳密に適合するアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを保持するように調整されてもよい。欠失が大きくなれば、アデノウイルス又はアデノウイルスゲノムに、より大きな異種の核酸配列の挿入を収容するであろう。本発明の一実施形態において、E3領域に存在するL4ポリアデニル化シグナル配列は、保持される。
【0067】
E4領域は、複数のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。ORF6(及び場合によってはORF3)を除くE4領域の全てのオープンリーディングフレームの欠失を伴うアデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターの増殖のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)にE4領域のいかなる遺伝子機能の補完も必要としない。反対に、E4領域のORF6(及び場合によってはORF3)の破壊又は欠失を伴う(例えばE4領域のORF6及び/又はORF3に基づく複製に必須な遺伝子機能の欠損を伴う)アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、E4領域の他のオープンリーディングフレーム、又は天然のE4プロモーター、ポリアデニル化配列、及び/又は右側末端逆位配列(ITR)のいずれかの破壊又は欠失の有無に関わらず、E4領域(特にE4領域のORF6及び/又はORF3)の補完がアデノウイルス又はアデノウイルスベクターの増幅のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)に必要となる。アデノウイルスゲノムの後期領域には、L1、L2、L3、L4及びL5領域が含まれる。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、国際特許出願公開WO2000/000628で述べられているとおり、主要後期プロモーター(MLP)に変異を有し得、これにより必要に応じてアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを複製欠損にし得る。
【0068】
複製に必須な遺伝子機能の1つ以上の欠損を含むアデノウイルスゲノムの1つ以上の領域は、望ましくは、アデノウイルスゲノムの1つ以上の初期領域(すなわち、E1、E2及び/又はE4領域)であり、任意選択で、E3領域の全体の又は部分的な欠失を伴ってよい。
【0069】
複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、宿主細胞でのウイルスの複製を阻害しない1つ以上の変異(例えば1つ以上の欠失、挿入、及び/又は置換)(野生型アデノウイルスと比較して)をアデノウイルスゲノムに有し得る。従って、1つ以上の複製に必須な遺伝子機能の欠損に加え、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、複製に必須ではない別の点に関して欠損し得る。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルス又はアデノウイルスゲノムの増殖に必須でないE3領域として知られるアデノウイルス初期領域の部分的又は全体的な欠失を有し得る。
【0070】
一実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは複製欠損であり、増殖のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)に、最大限で、アデノウイルスゲノムのE1領域又はE4領域の補完を必要とする。従って、複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、増殖のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)に、アデノウイルスゲノムのE1Aサブ領域及び/又はE1B領域(E1-欠損アデノウイルスベクターと表される)、又はアデノウイルスゲノムのE4領域(E4-欠損アデノウイルスベクターと表される)の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能の補完を必要とする。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムのE1領域の少なくとも一つの複製に必須な遺伝子機能(望ましくは全ての複製に必須な遺伝子機能)、及びアデノウイルスゲノムの非必須E3領域の少なくとも1つの遺伝子機能を欠損し得る(E1/E3-欠損アデノウイルスベクターと表される)。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムのE4領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能(望ましくは全ての複製に必須な遺伝子機能)、及びアデノウイルスゲノムの非必須E3領域の少なくとも1つの遺伝子機能を欠損し得る(E3/E4-欠損アデノウイルスベクターと表される)。
【0071】
一実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは複製欠損であり、増殖のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)に、最大限で、アデノウイルスゲノムのE2領域(好ましくはE2Aサブ領域)の補完を必要とする。従って、複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、増殖のため(例えばアデノウイル
スベクターの粒子形成のため)に、アデノウイルスゲノムのE2Aサブ領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能の補完を必要とする(E2A-欠損アデノウイルスベクターと表される)。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムのE2A領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能(望ましくは全ての複製に必須な遺伝子機能)及びアデノウイルスゲノムの非必須E3領域の少なくとも1つの遺伝子機能を欠損し得る(E2A/E3-欠損アデノウイルスベクターと表される)。
【0072】
一実施形態において、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは複製欠損であり、増殖のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)に、最大限で、アデノウイルスゲノムのE1領域及びE4領域の補完を必要とする。従って、複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、増殖のため(例えばアデノウイルスベクターの粒子形成のため)に、アデノウイルスゲノムのE1及びE4領域の両方の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能の補完を必要とする(E1/E4-欠損アデノウイルスベクターと表される)。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムのE1領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能(望ましくは全ての複製に必須な遺伝子機能)、アデノウイルスゲノムのE4領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能、及びアデノウイルスゲノムの非必須E3領域の少なくとも1つの遺伝子機能を欠損し得る(E1/E3/E4-欠損アデノウイルスベクターと表される)。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、好ましくは、増殖のため、最大限で、アデノウイルスゲノムのE1領域の補完を必要とし、かつ、増殖のため、アデノウイルスゲノムの他のいかなる欠損の補完も必要としない。より好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、増殖のため、最大限で、アデノウイルスゲノムのE1及びE4領域の補完を必要とし、かつ、増殖のためにアデノウイルスゲノムの他のいかなる欠損の補完も必要としない。
【0073】
アデノウイルスゲノムの複製に必須な複数の遺伝子機能が欠損している場合(例えばE1/E4-欠損アデノウイルスベクター)、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、複製に必須な単一の遺伝子機能を欠損するアデノウイルス又はアデノウイルスベクター(例えばE1-欠損アデノウイルスベクター)により得られるのと同様に、補完細胞株でのウイルス増殖を提供するスペーサー配列を含み得る。スペーサー配列は、例えば、少なくとも約15塩基対(例えば約15ヌクレオチドから約12,000ヌクレオチドの間)、好ましくは約100ヌクレオチドから約10,000ヌクレオチド、より好ましくは約500ヌクレオチドから約8,000ヌクレオチド、更に一層好ましくは約1,500ヌクレオチドから約6,000ヌクレオチド、最も好ましくは約2,000ヌクレオチドから約3,000ヌクレオチドの長さ、又は前述の値のうち任意の2種により決められる範囲の配列など望ましい長さの任意のヌクレオチド配列(単数)又は配列(複数)を含み得る。スペーサー配列は、コード又は非コード、及びアデノウイルスゲノムに対して天然又は非天然であり得るが、しかし欠損領域に対して複製に必須な機能を回復させない。スペーサーは、発現カセットも含み得る。より好ましくは、スペーサーは、ポリアデニル化配列、及び/又はアデノウイルス若しくはアデノウイルスベクターに対して非天然である遺伝子を含む。アデノウイルスベクターにおけるスペーサーの使用は、例えば、米国特許第5,851,806号及び国際特許出願公開WO1997/021826に更に記載されている。
【0074】
全体又は部分的なアデノウイルスゲノム(例えばアデノウイルスゲノムのE1、E3及びE4領域)の除去により、結果として生じるアデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルスカプシドへパッケージングされる能力を保持しながらも、外来の核酸配列の挿入を許容し得る。外来の核酸配列は、その場所への挿入がアデノウイルス又はアデノウイルスベクター粒子の形成を許す限り、アデノウイルスゲノムの任意の場所に挿入され得る。外来の核酸配列は、好ましくは、アデノウイルスゲノムのE1領域、E3領
域又はE4領域に置かれる。
【0075】
本発明の複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、高力価のウイルスベクターストックを作製するために適したレベルで、複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターに存在しないがウイルスの増殖に必要である遺伝子機能を提供する補完細胞株において、生み出され得る。かかる補完細胞株は公知であり、293細胞(例えばGrahamら,J.Gen.Virol.,36:59-72(1977)に記載)、PER.C6細胞(例えば国際特許出願公開WO1997/000326並びに米国特許5,994,128号及び第6,033,908号に記載)、及び293-ORF6細胞(例えば国際特許出願公開WO95/34671及びBroughら,J.Virol.,71:9206-9213(1997)に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターを生み出すのに適切な他の補完細胞株は、その発現が宿主細胞においてウイルス増殖を阻害する導入遺伝子をコードするアデノウイルスベクターを増殖させるために作製された補完細胞を含む(例えば米国特許出願公開第2008/0233650号を参照)。更なる適切な補完細胞は、例えば米国特許第6,677,156号及び第6,682,929号、並びに国際特許出願公開WO2003/020879に記載されている。いくつかの例において、細胞のゲノムは、その遺伝子産物が複製欠損アデノウイルスベクターの全ての欠損を補完するような核酸配列を含む必要はない。複製欠損アデノウイルスベクターに欠けている1つ以上の複製に必須な遺伝子機能は、ヘルパーウイルス(例えば複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターの複製のため必要な1つ以上の必須遺伝子機能をトランスに供給するアデノウイルスベクター)により供給され得る。あるいは、本発明のアデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、本発明の複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクターに欠けている1つ以上の複製に必須な遺伝子機能を補完する非天然の複製に必須な遺伝子を含み得る。例えば、E1/E4-欠損アデノウイルスベクターは、異なるアデノウイルス(例えば本発明のアデノウイルス若しくはアデノウイルスベクターと異なる血清型のアデノウイルス、又は本発明のアデノウイルス若しくはアデノウイルスベクターと異なる種のアデノウイルス)から得られた又は由来するE4 ORF6をコードする核酸配列を含むよう改変され得る。
【0076】
アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、更に導入遺伝子を含み得る。用語「導入遺伝子」は、本明細書において、非天然核酸配列がタンパク質(例えばペプチド又はポリペプチド)を産生するために発現され得るように、適した制御要素(例えばプロモーター)と操作可能に連結された非天然の核酸配列と定義される。制御要素(例えばプロモーター)は、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターに対して天然又は非天然であり得る。
【0077】
「非天然」な核酸配列とは、アデノウイルスの天然に位置し天然に存在するアデノウイルスの核酸配列ではない、任意の核酸配列(例えばDNA、RNA又はcDNA配列)である。従って、非天然核酸配列は、アデノウイルスで天然に見られ得るが、アデノウイルスゲノム中の非天然な場所に位置し得るか、及び/又は非天然プロモーターに操作可能に結合され得る。用語「非天然核酸配列」、「異種の核酸配列」及び「外来の核酸配列」は、同意語であり、本発明に関して交換可能に使用され得る。非天然核酸配列は好ましくはDNAであり、好ましくはタンパク質をコードする(すなわち、1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の核酸配列)。
【0078】
非天然核酸配列は、予防的又は治療的に哺乳類の疾病を処置するために使用され得る治療用タンパク質をコードし得る。適切な治療用タンパク質の例としては、サイトカイン、毒素、腫瘍抑制タンパク質、成長因子、ホルモン、受容体、分裂促進因子、免疫グロブリン、神経ペプチド、神経伝達物質及び酵素が挙げられる。あるいは、非天然核酸配列は、
病原体(例えば細菌又はウイルス)の抗原をコードし得、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターはワクチンとして使用され得る。
【0079】
本発明は、本明細書に記載のアデノウイルス又はアデノウイルスベクター、及びそれらのための担体(例えば医薬上許容される担体)を含む組成物を提供する。組成物は、望ましくは、担体(好ましくは生理学上(例えば医薬上)許容される担体)、及びアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを含む、生理学上許容される(例えば医薬上許容される)組成物である。本発明の関連の中で、任意の適切な担体を使用でき、かかる担体は当該分野で周知である。担体の選択は、組成物の特定の使用(例えば動物への投与)及び組成物を投与するために使用される特定の方法により、ある程度決定されるであろう。理想的には、複製欠損アデノウイルスベクターに関して、医薬組成物は好ましくは複製可能なアデノウイルスを含まない。医薬組成物は、任意選択で、滅菌的であり得る。
【0080】
適切な組成物には、抗酸化物質、緩衝液及び静菌薬を含み得る水性及び非水性の等張滅菌溶液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。組成物は、単位服用量又は複数回分の服用量でアンプルやバイアルなどの密閉された容器中に提示され得、滅菌液体担体(例えば、水)を使用直前に添加することのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)の状態で保存され得る。即時溶液及び懸濁液は、滅菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。好ましくは、担体は緩衝生理食塩溶液である。より好ましくは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターは、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターを投与前に損傷から守るよう製剤化された組成物の一部である。例えば、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターの調製、保存又は投与に使用される機器(ガラス製品、注射器又は注射針など)上で、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターの損失を減少させるよう、組成物は製剤化され得る。組成物は、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターの光感受性及び/又は温度感受性を減少させるように製剤化され得る。このような目的のために、組成物は好ましくは、医薬上許容される液体担体、例えば上記のものなど、並びにポリソルベート80、L-アルギニン、ポリビニルピロリドン、トレハロース及びこれらの組み合わせからなる群より選択される安定化剤を含む。かかる組成物の使用は、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターの保存可能期間を延長させるであろうし、その投与を容易にすることであろう。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターを含む組成物の製剤化は、例えば米国特許第6,225,289号、米国特許第6,514,943号及び国際特許出願公開WO2000/034444に更に記載されている。
【0081】
組成物は、導入効率を増強するようにも製剤化され得る。さらに、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターが他の治療剤又は生物活性剤との組成物中に存在し得ることを当業者なら理解するであろう。例えば、イブプロフェン又はステロイドなどの炎症を制御する因子は、アデノウイルス及びアデノウイルスベクターのin vivo投与に伴う腫れや炎症を減少させるために組成物の一部になり得る。アデノウイルス又はアデノウイルスベクターを使用して抗原をコードする核酸配列を宿主に送達する場合、免疫系促進剤又はアジュバント(例えばインターロイキン、リポ多糖又は二本鎖RNA)を、抗原に対する任意の免疫応答を増強又は変更させるために投与できる。抗生物質(すなわち、殺菌剤及び抗真菌剤)は、既存の感染を治療する及び/又は将来の感染危険性(遺伝子導入手順と関連する感染など)を減少させるために存在し得る。
【0082】
以下の実施例は、本発明を更に説明するものであるが、その範囲を限定するものであると決して解釈すべきではないことは当然である。
【実施例】
【0083】
実施例1
本実施例は、コットンラットにおける呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory
Syncytial Virus(RSV))のFタンパク質をコードするアデノウイルスベクターの免疫原性を実証する。
【0084】
配列番号22の核酸配列を有するゴリラアデノウイルスを、(1)E1領域の欠失による複製欠損を提供するよう、かつ(2)ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の融合(F)糖タンパク質を発現するように遺伝子操作により改変した。細胞の細胞質内でRSVは複製するため、RNAプロセッシングシグナル(例えばRNAスプライシング部位)の除去によりFタンパク質をコードする遺伝子を細胞核内で発現するように改変し、哺乳類細胞での発現のためコドンを最適化した。アデノウイルスベクターからのFタンパク質の発現は、in vitroでのHEK-293細胞の感染、並びに感染細胞のタンパク質抽出液及び市販の抗RSVポリクローナル抗体(Pab7133P,Maine Biotechnology,Portland,Maine)を用いたウエスタンブロッティング分析により検証した。
【0085】
RSV F糖タンパク質を発現するE1欠失アデノウイルスベクター107粒子単位(pu)を脛骨筋へ単回投与しコットンラット(Sigmodon hispidus)に注入した。28日後、当該動物に生きたヒトRSV(106粒子形成単位(particle forming units(pfu))の鼻腔内投与)を抗原投与した。抗原投与5日後、当該動物の肺におけるRSVのウイルス量を測定した。Fタンパク質を発現するアデノウイルスベクターにより免疫性を与えられた動物は、肺に検出可能なRSVを有さなかった(検出限界、70pfu/肺組織1グラム)。
【0086】
本実施例の結果は、RSV Fタンパク質をコードする本発明のアデノウイルスベクターがin vivoで免疫原性であり、かつコットンラットにおいてRSV感染に対する完全な防御を授与し得ることを実証する。
【0087】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書で引用された全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示されており、かつその全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0088】
本発明の説明の文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「~を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書中に個々に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0089】
発明を実施するための発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明
を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書中に添付した特許請求の範囲に記載される対象の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって含まれる。
【配列表】