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  • 特許-積層電子部品 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】積層電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20231201BHJP
   H01C 1/14 20060101ALI20231201BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20231201BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H01C7/10
H01C1/14 Z
H01G4/228 W
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
H01G4/30 201H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022133821
(22)【出願日】2022-08-25
(62)【分割の表示】P 2019547963の分割
【原出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2022166301
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2017197380
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】矢内 剣
(72)【発明者】
【氏名】山口 朋一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 裕司
(72)【発明者】
【氏名】武藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 沙也佳
(72)【発明者】
【氏名】臼井 良輔
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012749(JP,A)
【文献】実開昭58-111915(JP,U)
【文献】実開昭62-084921(JP,U)
【文献】特開2008-294180(JP,A)
【文献】特開2003-068563(JP,A)
【文献】特開2000-306764(JP,A)
【文献】特開2010-161172(JP,A)
【文献】特開2016-189382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/10
H01C 1/14
H01G 4/228
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に内部電極を有する焼結体と、
前記焼結体の側面に設けられ、前記内部電極に接続された外部電極と、
を含む個体部品と、
前記外部電極に、接合層を介して接続されたリード端子と、
を備えた積層電子部品であって、
前記個体部品は、前記積層電子部品が実装物に実装されている状態で前記実装物に対向する実装面を有し、
前記接合層は、前記外部電極から前記リード端子に沿って前記実装面を超えて広が
前記リード端子は、前記個体部品側に向けてL字状に屈曲されている、積層電子部品。
【請求項2】
酸化亜鉛を含み、その内部に内部電極を有する焼結体と、
前記焼結体の側面に設けられ、前記内部電極に接続された外部電極と、
を含む個体部品と、
前記外部電極に、接合層を介して接続されたリード端子と、
を備えた積層電子部品であって、
前記個体部品は、前記積層電子部品が実装物に実装されている状態で前記実装物に対向する実装面を有し、
前記接合層は、前記外部電極から前記リード端子に沿って前記実装面を超えて広がっている、積層電子部品。
【請求項3】
その内部に内部電極を有する焼結体と、
前記焼結体の少なくとも一部に形成された絶縁層と
前記絶縁層が形成された前記焼結体の側面に設けられ、前記内部電極に接続された外部電極と、
を含む個体部品と、
前記外部電極に、接合層を介して接続されたリード端子と、
を備えた積層電子部品であって、
前記個体部品は、前記積層電子部品が実装物に実装されている状態で前記実装物に対向す
る実装面を有し、
前記接合層は、前記外部電極から前記リード端子に沿って前記実装面を超えて広がっている、積層電子部品。
【請求項4】
その内部に内部電極を有する焼結体と、
前記焼結体の少なくとも一部に形成された絶縁層と
前記絶縁層が形成された前記焼結体の側面に設けられ、前記内部電極に接続された外部電極と、
を含む個体部品と、
前記外部電極に、接合層を介して接続された、リン青銅からなるリード端子と、
を備えた積層電子部品であって、
前記個体部品は、前記積層電子部品が実装物に実装されている状態で前記実装物に対向する実装面を有し、
前記接合層は、前記外部電極から前記リード端子に沿って前記実装面を超えて広がっている、積層電子部品。
【請求項5】
前記接合層は、はんだを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層電子部品。
【請求項6】
前記リード端子は、L字状に屈曲されている、請求項2~4のいずれか1項に記載の積層電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に用いられる積層電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年表面実装用の電子部品には、積層セラミックコンデンサや積層セラミックバリスタ他様々な電子部品がある。これらの電子部品のサイズが小さい場合は特に問題が起こらないが、大容量あるいは大電流対応等により電子部品のサイズが大きくなってくると、回路基板材料とセラミックの線膨張率の差により機械応力が発生し、電子部品が破壊に至る可能性がある。そのため従来の電子部品では、電子部品の両端面の外部電極に金属板を加工してなるリード端子を取り付け、このリード端子を介して回路基板に実装することが行なわれている。
【0003】
上記の電子部品に類似の従来の電子部品が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-306764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、リード端子側からの応力を分散することができる信頼性の高い積層電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その内部に内部電極を有する焼結体と、焼結体の側面に設けられ、内部電極に接続された外部電極と、を含む個体部品と、外部電極に、接合層を介して接続されたリード端子と、を備えた積層電子部品であって、個体部品は、積層電子部品が実装物に実装されている状態で実装物に対向する実装面を有し、接合層は、外部電極からリード端子に沿って前記実装面を超えて広がっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、リード端子側からの応力を分散することができる信頼性の高い積層電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは実施の形態における積層電子部品の斜視図である。
図1B図1B図1Aに示す積層電子部品の線1B-1Bにおける断面図である。
図2図2は実施の形態における積層電子部品の製造方法を示す断面図である。
図3図3は実施の形態における積層電子部品の製造方法を示す断面図である。
図4図4は実施の形態における積層電子部品の製造方法を示す断面図である。
図5図5は実施の形態における積層電子部品の製造方法を示す断面図である。
図6図6は実施の形態における積層電子部品の製造方法を示す断面図である。
図7図7は実施の形態における積層電子部品の製造方法を示す断面図である。
図8図8は実施の形態における積層電子部品の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aは実施の形態における積層電子部品1000の斜視図である。図1B図1Aに示す積層電子部品1000の線1B-1Bにおける断面図である。実施の形態においては、積層電子部品1000は積層セラミックバリスタである。
【0010】
積層電子部品1000は、焼結体11と、焼結体11上に設けられた絶縁層15と、焼結体11上に設けられた外部電極13A、13Bと、外部電極13A上に設けられた外部電極14Aと、外部電極13B上に設けられた外部電極14Bと、外部電極14A上に設けられためっき層16Aと、外部電極14B上に設けられためっき層16Bと、めっき層16A上に設けられた接合材18Aと、めっき層16B上に設けられた接合材18Bと、接合材18Aでめっき層16Aすなわち外部電極14Aに接合するリード端子17Aと、接合材18Bでめっき層16Bすなわち外部電極14Bに接合するリード端子17Bとを備える。焼結体11は、互いに交互に積層された複数の絶縁層22と内部電極12A、12Bとを備える。焼結体11は、内部電極12Aが露出する側面11Aと、内部電極12Bが露出する側面11Bと、側面11A、11Bに繋がる実装面11Cと、側面11A、11Bに繋がりかつ実装面11Cの反対側の対面11Dと、側面11A、11Bと実装面11Cと対面11Dとに繋がる表面11Eと、側面11A、11Bと実装面11Cと対面11Dとに繋がりかつ表面11Eの反対側の表面11Fとを有する。絶縁層15は焼結体11の実装面11Cと対面11Dと表面11E、11F上に設けられている。積層電子部品1000は回路基板等の実装物2001にリード端子17A、17Bが接続されることにより実装物2001に実装されるように構成されている。
【0011】
積層電子部品1000の製造方法を以下に説明する。図2から図8は積層電子部品1000の製造方法を説明するための断面図である。
【0012】
酸化亜鉛に酸化ビスマス等を添加し、可塑剤、バインダ等を混合して得られた混合材料をシート形状に成形して複数のグリーンシート122を形成する。銀粉にバインダ等を混ぜて内部電極用ペースト112を形成する。複数のグリーンシート122に内部電極用ペースト112を印刷してグリーンシート122と内部電極用ペースト112とが交互に配列されるように積層した後、個片化することにより図2に示す複数の積層体111を形成する。複数の積層体111を約900℃で焼成することにより複数の焼結体11を得る。その際、グリーンシート122と内部電極用ペースト112とは同時に焼成されそれぞれ絶縁層22と内部電極12A、12Bとなる。複数の焼結体11を研磨剤と混ぜて攪拌して面取りすることにより、焼結体11の角部の面取りを行なうとともに、内部電極12A、12Bを焼結体11の互いに反対側の側面11A、11Bにそれぞれ露出させる。これにより図2に示す焼結体11が得られる。内部電極12Aは側面11Bには露出しておらず、内部電極12Bは側面11Aに露出していない。焼結体11の大きさは、幅約7mm、長さ約9mm、高さ約3mmとなっている。
【0013】
銀粉にバインダ等を混ぜて得られる導体ペーストを準備する。次に内部電極12Aが露出した側面11Aが揃いかつ内部電極12Bが露出した側面11Bが揃うように複数の焼結体11を整列させ、露出した内部電極12A、12Bをそれぞれ覆うように焼結体11の側面11A、11Bに導体ペーストを印刷し、約800℃で焼成することにより外部電極13A、13Bを形成することにより中間部品1001を得る。その際に、側面11A、11Bから露出した内部電極12A、12Bに外部電極13A、13Bを直接的に接触するように形成するので、内部電極12A、12Bと外部電極13A、13Bとの電気的接続を安定なものとすることができる。外部電極13A、13Bの厚さは約20μmとなっている。内部電極12A、12Bどうしに挟まれた絶縁層22の領域は、積層電子部品1000の電気的特性を決定する。外部電極13A、13Bに銀粉にバインダ等を混ぜた導体ペーストを用いているので、導体である銀粉以外の誘電体等の積層電子部品1000の電気的特性に影響する余計なものがこの領域に拡散することを防ぎ、電気的特性を安定
化することができる。
【0014】
図4に示すように、例えばサブミクロンサイズのシリカ粉末502と、シリカ粉末502が分散する媒体液503とよりなるシリカ粉末502の懸濁液であるガラスコーティング用のコーティング液501を準備する。次に、図4に示すように、外部電極13A、13Bが形成された焼結体11である中間部品1001をコーティング液501に漬け、中間部品1001全体をガラスコーティングする。このとき、外部電極13A、13Bの表面と焼結体11の表面11C~11F(図1A図1B参照)にシリカ粉末502が付着する。このあと、全体をガラスコーティングされた中間部品1001を約900℃で熱処理することにより図5に示す中間部品1002を形成する。焼結体11の酸化亜鉛の素体すなわち表面11C~11Fに付着したシリカ粉末502は絶縁層22の酸化亜鉛の亜鉛と反応して焼結体11の表面11C~11Fの全体に安定な絶縁層15を形成する。このような安定な絶縁層15を外部電極13A、13B以外の外部電極13A、13Bから露出する表面11C~11Fの全体に形成することにより、信頼性に優れた積層電子部品1000を得ることができる。図5に示す中間部品1002では、外部電極13A、13Bの表面にはシリカが付着してシリカ層51A、51Bがそれぞれ形成されている。
【0015】
銀粉とガラスフリットにバインダ等を混ぜて得られる混合ペーストを準備する。次に、外部電極13Aが形成された側面が揃いかつ外部電極13Bが形成された側面が揃うように複数の焼結体11すなわち中間部品1002を整列させ、外部電極13A、13Bが露出しないように外部電極13A、13Bを完全に覆うように外部電極13A、13Bに混合ペーストを塗布し、約700℃で焼成することにより図6に示す外部電極14A、14Bを形成する。外部電極14A、14Bは外部電極13A、13Bよりも大きな面積を有し、外部電極13A、13Bの周囲をそれぞれ囲む。このとき、外部電極13A、13Bの表面に付着したシリカ層51A、51Bのシリカの一部は混合ペーストすなわち外部電極14A、14B中のガラスフリットに拡散する。これにより、外部電極13A、13Bが外部電極14A、14Bに確実に電気的接続される。混合ペーストを塗布する方法としては、印刷工法を用いることが好ましいが、ディップ工法を用いてもかまわない。但しこの場合も中間部品1002のほぼ側面のみに塗布することが好ましい。外部電極14A、14Bを形成するためにガラスフリット入りの銀ペーストを用いているので、外部電極14A、14Bは外部電極13A、13Bとおよび焼結体11とに十分な強度で固着することができる。
【0016】
次に電気めっきにより、外部電極14A、14B上にめっき層16A、16Bをそれぞれ形成することで図7に示す個別部品1003を形成する。めっき層16A(16B)は、外部電極14A(14B)上に形成されたニッケルめっき層と、ニッケルめっき層上に形成された錫めっき層とよりなる二層構造を有する。実施の形態では、ニッケルめっき層の厚さは約3μmであり、錫めっき層の厚さは約5μmである。
【0017】
鉄またはリン青銅の板を所定の形状に打ち抜いた後、L字状に折り曲げることによりリード端子17A、17Bを準備する。リード端子17A、17Bにはニッケルおよび錫のめっき層が形成され、外部電極14A、14Bと当接する領域にははんだ等の接合材により接合層18A、18Bがそれぞれ設けられている。次に、図8に示すように、めっき層16A、16Bすなわち外部電極14A、14Bにリード端子17A、17Bをそれぞれ接続する。リード端子17A、17Bを外部電極14A、14Bと接合層18A、18Bを当接させ、レーザ等で加熱して接合層18A、18Bのはんだを溶かし、外部電極14A、14Bにリード端子17A、17Bを接続し、リード端子付の積層電子部品1000を得ることができる。外部電極13A、13Bと外部電極14A、14Bを印刷で形成したことによりリード端子17A、17Bに接する外部電極14A、14B(めっき層16A、16B)の表面を平坦にすることができ、接合層18A、18Bをリード端子17A
、17Bに沿って焼結体11の側面11A、11Bから実装面11Cを超えて実装物2001に向かって濡れ広げることができる。このように構成することにより、リード端子17A、17B側からの応力を分散することができ、積層電子部品1000の信頼性をさらに向上させることができる。
【0018】
図7図8に示す個別部品1003は、積層電子部品1000が回路基板等の実装物2001(図1B参照)に実装されているときに実装物2001に対向する実装面53Cと、実装面53Cと反対側の対面53Dとを有する。リード端子17A、17Bを外部電極14A、14Bに接続する場合、個別部品1003の対面53Dを下にして基準面54に当接するように配置し、リード端子17A、17Bの端部117A、117Bを基準面54に当接させて対面53Dと位置あわせした状態でリード端子17A、17Bを外部電極14A、14Bに接続する。上記方法により形成した外部電極14A、14Bは個別部品1003の対面53Dにほとんどつかないようにすることができる。したがって上記の位置合せにより、リード端子17A、17Bの取り付け位置を安定させることができ、積層電子部品1000を高精度に容易に実装物2001に実装でき実装性を向上させることができる。
【0019】
上述の従来の電子部品では、リード端子を取り付けるときに位置ずれが発生すると、回路基板に実装するときに以下の問題が発生する。従来のリード端子付の面実装の電子部品は、通常の面実装用の部品にリード端子を取り付けたものであり、これらの電子部品では回路基板に実装するために、電子部品の実装面に電極がディップ等の方法によって形成される。したがって、実装面以外に上面、側面等の電子部品の他の面にも電極が形成されている。この電子部品の外形を基準にしてリード端子を取り付けようとすると、電極の厚さばらつきによって、位置ずれが生じる場合がある。
【0020】
実施の形態における積層電子部品1000は、上述のように、高精度に容易に実装物2001に実装でき実装性を向上させることができる。
【0021】
リード端子17A、17Bを位置決めする際に、個別部品1003のうち実装面53Cの反対側で実装面53Cから最も遠い部分を基準面54に当接させる。図8に示す個別部品1003ではめっき層16A、16Bが基準面54に当接している。実施の形態では、焼結体11のバラつきによるリード端子17A、17Bの位置のばらつきを確実に抑えるためには、外部電極14A、14Bに比べて絶縁層15が実装面53Cの反対側で実装面53Cからより遠いことが好ましい。
【符号の説明】
【0022】
11 焼結体
12A,12B 内部電極
13A,13B 外部電極(第1の外部電極)
14A,14B 外部電極(第2の外部電極)
15 絶縁層
16A,16B めっき層
17A,17B リード端子
18A,18B 接合層
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8