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特許7394293ノズル保守分析システムおよびノズル保守分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ノズル保守分析システムおよびノズル保守分析方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20231201BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20231201BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/08 B
H05K13/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023029639
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2022100523の分割
【原出願日】2017-07-18
(65)【公開番号】P2023067912
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-03-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】古賀 博文
(72)【発明者】
【氏名】中島 勇二
(72)【発明者】
【氏名】小松 仁
(72)【発明者】
【氏名】大内 学
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 和之
(72)【発明者】
【氏名】川本 典只
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-165603(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114828(WO,A1)
【文献】特開2008-251714(JP,A)
【文献】国際公開第2016/046967(WO,A1)
【文献】特開2004-140162(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106940818(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/00-23/02
G06Q 50/04
H05K 3/30
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板を生産する実装装置の稼働履歴情報を取得する履歴情報取得部と、
前記稼働履歴情報に含まれる前記実装装置が備えるノズルに関連するエラー回数に基づいてエラー率を算出するエラー率算出部と、
前記エラー率に基づいて前記ノズルの保守の要否を判定する保守判定部と、
保守要と判定された保守推奨ノズルの情報を前記エラー回数が多い順に順序化して表示させる表示処理部と、を備える、
ノズル保守分析システム。
【請求項2】
前記エラー回数は、前記ノズルに部品が所望の状態で吸着されていないエラーが生じた回数および、前記実装装置が備える部品認識カメラで認識を行った際に前記ノズルに部品が吸着されていないエラーが生じた回数を含む、
請求項1に記載のノズル保守分析システム。
【請求項3】
前記表示処理部は、前記保守推奨ノズルに関連する前記エラー回数を表示させる、
請求項1に記載のノズル保守分析システム。
【請求項4】
前記保守判定部は、最新の所定期間における前記ノズルに関連する作業エラーの発生頻度を示す前記エラー率に基づいて前記ノズルの保守の要否を判定することを特徴とする、
請求項1から3のいずれかに記載のノズル保守分析システム。
【請求項5】
実装基板を生産する実装装置に少なくともひとつ取り付けられるノズルの保守の要否を分析するノズル保守分析方法であって、前記実装装置の稼動履歴情報を取得し、前記稼働履歴情報に含まれる前記ノズルに関連するエラー回数に基づいてエラー率を算出し、前記エラー率に基づいて前記ノズルの保守の要否を判定し、保守要と判定された保守推奨ノズルの情報を前記エラー回数が多い順に順序化して表示させる、
ノズル保守分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造物を製造する製造設備に取り付けられる設備要素のひとつであるノズルの保守の要否を分析するノズル保守分析システムおよびノズル保守分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造物を製造する部品実装機などの製造設備は、交換可能な設備要素を製造物に応じて選択して取り付けた状態で使用される。回路基板に電子回路部品を装着した実装基板を製造物として製造する部品実装機は、設備要素として電子回路部品を供給する部品供給装置やノズルなどを取り付けて使用される。設備要素は、使用時間の増加にともない内蔵する構成部品の摩耗や歪みが増加して、作業エラーなどの不具合が発生することがある。
【0003】
そこで、所定のメンテナンスのタイミングで設備要素に対する清掃や基準位置調整などの保守作業や、部品交換などの修理作業を含むメンテナンス作業が実行される(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のメンテナンス方法では、各部品実装機の運転状況を監視して、部品実装機に取り付けられた部品供給装置の部品供給回数あるいは供給ミス発生回数が設定回数以上になると、その部品供給装置にメンテナンスが必要と判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-140162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ゴミなどが原因の突発的なエラーから自然に回復し、または作業者による予防保守が行われることにより、現在はメンテナンスが必要ではない場合でも、ミスの累積発生回数が所定回数以上になるとメンテナンスが必要と判断されるため、更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、設備要素のひとつであるノズルの保守の要否を適切に分析することができるノズル保守分析システムおよびノズル保守分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のノズル保守分析システムは、実装基板を生産する実装装置の稼働履歴情報を取得する履歴情報取得部と、前記稼働履歴情報に含まれる前記実装装置が備えるノズルに関連するエラー回数に基づいてエラー率を算出するエラー率算出部と、前記エラー率に基づいて前記ノズルの保守の要否を判定する保守判定部と、保守要と判定された保守推奨ノズルの情報を前記エラー回数が多い順に順序化して表示させる表示処理部と、を備える。
【0008】
本発明のノズル保守分析方法は、実装基板を生産する実装装置に少なくともひとつ取り付けられるノズルの保守の要否を分析するノズル保守分析方法であって、前記実装装置の稼動履歴情報を取得し、前記稼働履歴情報に含まれる前記ノズルに関連するエラー回数に基づいてエラー率を算出し、前記エラー率に基づいて前記ノズルの保守の要否を判定し、保守要と判定された保守推奨ノズルの情報を前記エラー回数が多い順に順序化して表示させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設備要素のひとつであるノズルの保守の要否を適切に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態の設備要素保守分析システムの構成説明図
図2】本発明の一実施の形態の部品実装機の構成説明図
図3】本発明の一実施の形態の設備要素保守分析システムの処理系の構成を示すブロック図
図4】本発明の一実施の形態の設備要素保守分析システムによって(a)保守要と判定されるテープフィーダの稼働履歴情報の一例の説明図(b)保守不要と判定されるテープフィーダの稼働履歴情報の一例の説明図
図5】本発明の一実施の形態の設備要素保守分析システムによって報知される保守推奨フィーダリストの一例を示す図
図6】本発明の一実施の形態の設備要素保守分析システムによる設備要素保守分析方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、設備要素保守分析システム、部品実装ライン、部品実装機、部品供給装置などの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図2、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図2における紙面垂直方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図2における左右方向)が示される。また、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図2における上下方向)が示される。
【0012】
まず図1を参照して、設備要素保守分析システム1の構成を説明する。設備要素保守分析システム1は、工場F、工場Fから離れた場所に開設されたサポートセンタSを備えて構成されている。工場Fには、複数の部品実装機M1~M3を連結して構成される部品実装ラインL1が設置されている。部品実装ラインL1は、部品実装機M1~M3によって回路基板B(図2参照)に電子回路部品(以下「部品D」と称す。図2参照)を順に装着しながら実装基板を製造する機能を有している。
【0013】
各部品実装機M1~M3は、LAN(Local Area Network)などの構内通信ネットワーク2を介してライン管理PC3に接続されている。また、工場Fには、サポートセンタSから送信される電子メールを受信するメール受信装置4が備えられている。なお、工場Fには、複数の部品実装ラインを設置してもよい。また、部品実装ラインL1を構成する部品実装機M1~M3は3台である必要はなく、1台、2台、4台以上であってもよい。
【0014】
図1において、サポートセンタSは、複数の工場F(顧客)に対する設備要素の保守の要否の分析、各工場Fの担当者に対する各種サポートなどを効率的に実行可能な位置に開設されている。サポートセンタSには、保守管理PC5、メールサーバ6が設けられている。メールサーバ6は、LANなどの構内通信ネットワーク7を介して保守管理PC5に接続されている。ライン管理PC3と保守管理PC5は、インターネットや移動体通信回線などの構外通信ネットワーク8を介して情報の授受を行う。メール受信装置4とメールサーバ6は、構外通信ネットワーク9を介して情報の授受を行う。なお、構外通信ネットワーク8と構外通信ネットワーク9は、同じ構外通信ネットワークを共用して使用してもよい。
【0015】
次に図2を参照して、部品実装機M1~M3の構成を説明する。部品実装機M1~M3は同様の構成をしており、以下、部品実装機M1について説明する。部品実装機M1は、回路基板Bに部品Dを装着する機能を有している。基台11の上面に設けられた基板搬送機構12は、回路基板BをX方向に搬送して位置決めして保持する。ヘッド移動機構13は、プレート13aを介して装着された実装ヘッド14をX方向、Y方向に移動させる。実装ヘッド14の下端には、吸着ノズル(ノズル)15が装着される。
【0016】
基板搬送機構12の側方で基台11に結合された台車17の上部のフィーダベース17aには、複数のテープフィーダ16がX方向に並んで取り付けられている。フィーダベース17aにはテープフィーダ16を装着する複数のスロットが設けられており、各スロットにはフィーダアドレスが設定されている。部品実装機M1は、前側と後側の2箇所のフィーダ位置に台車17を装着することができる。部品実装機M1では、フィーダ位置(前側、後側)、フィーダアドレスによって、テープフィーダ16の装着位置を特定することができる。
【0017】
台車17には、部品実装機M1に供給される部品Dを格納するキャリアテープ18が、リール19に巻回収納されて保持されている。テープフィーダ16に挿入されたキャリアテープ18は、テープフィーダ16に内蔵されるテープ送り機構16aにより一定間隔でピッチ送りされる。これにより、キャリアテープ18が格納する部品Dがテープフィーダ16の上部に設けられた部品供給口16bに順に供給される。
【0018】
部品実装動作では、実装ヘッド14は、ヘッド移動機構13によりテープフィーダ16の上方に移動し、テープフィーダ16の部品供給口16bに供給された部品Dを吸着ノズル15により真空吸着してピックアップする(矢印a)。部品Dを保持した実装ヘッド14は、ヘッド移動機構13により基板搬送機構12に保持された回路基板Bの上方に移動し、回路基板B上の所定の部品装着位置Baに部品Dを実装する(矢印b)。
【0019】
図2において、プレート13aには、光軸方向を下方に向けた基板認識カメラ20が取り付けられている。基板認識カメラ20は、ヘッド移動機構13により実装ヘッド14と一体的にX方向、Y方向に移動する。基板認識カメラ20は、テープフィーダ16の上方に移動して、部品供給口16bに供給された部品Dを撮像する。撮像結果は画像認識されて、期待される正規の供給位置から供給された部品Dがずれた供給位置ずれ量が算出される。算出された供給位置ずれ量に基づいて、吸着ノズル15が部品Dをピックアップする際の吸着位置(実装ヘッド14の停止位置)が補正される。また、部品供給口16bに部品Dが供給されずに部品Dを認識することができない供給エラーも検出される。
【0020】
図2において、実装ヘッド14は、吸着ノズル15から流入する空気の流量を計測する流量センサ14aを備えている。吸着ノズル15が部品Dを正常に吸着すると、吸着ノズル15より流入する空気は小さくなって吸着ノズル15の真空圧力が低くなる。一方、吸着ノズル15が部品Dを保持できなかったり、異常な姿勢で吸着したりする吸着ミスが発生した場合は、吸着ノズル15より空気が流入するため吸着ノズル15の真空圧力は下がらない。
【0021】
そこで、流量センサ14aによる空気の流量の計測結果より、吸着ミス(吸着エラー)の発生の有無を検出することができる。なお、流量センサ14aの代わりに真空計を備えて、真空計による真空圧力の計測結果より吸着ミス(吸着エラー)の発生の有無を判断するようにしてもよい。また、流量センサ14aにより部品実装後の吸着ノズル15から流入する空気の流量を計測することにより、実装ヘッド14が回路基板Bに部品Dを実装できずに持ち帰る実装エラーを検出することもできる。
【0022】
基板搬送機構12とテープフィーダ16の間の基台11の上面には、光軸方向を上方に向けた部品認識カメラ21が取り付けられている。部品認識カメラ21は、部品Dをピックアップした吸着ノズル15が上方を通過する際に、吸着ノズル15に保持される部品D(または、部品Dを保持できなかった吸着ノズル15)の下面を撮像する。撮像結果は画像認識されて、吸着ノズル15に保持される部品Dの姿勢が正常か異常か、または吸着ノズル15に保持されているはずの部品Dを認識することができない認識エラーが発生していないかが判断される。なお、部品認識カメラ21は、部品Dの下面以外に側面も撮像してもよい。
【0023】
また、撮像結果は画像認識されて、期待される正規の吸着位置から吸着ノズル15に吸着された部品Dがずれた吸着位置ずれ量が算出される。回路基板B上の部品装着位置Baに部品Dを実装する際は、吸着位置ずれ量に基づいて装着位置補正、装着姿勢補正が実行される。
【0024】
実装ヘッド14、吸着ノズル15、テープフィーダ16は、回路基板Bに実装する部品Dの種類に応じて適宜選択されて、部品実装機M1に取り付けられる。このように、回路基板Bに部品Dを実装する実装ヘッド14、実装ヘッド14に装着されて部品Dを吸着する吸着ノズル15、または部品Dを実装ヘッド14に供給するテープフィーダ16(部品供給装置)は、部品実装機M1に取り付けられる設備要素となる。そして、部品実装機M1は、少なくともひとつの設備要素が取り付けられ、部品供給装置から供給される部品Dを実装ヘッド14で吸着し、吸着した部品Dの下面を部品認識カメラ21で認識し、認識した部品Dを回路基板Bに実装して製造物(実装基板)を製造する製造設備となる。
【0025】
次に図3を参照して、設備要素保守分析システム1の処理系の構成について説明する。部品実装機M1~M3は同様の構成をしており、以下、部品実装機M1について説明する。図3において、部品実装機M1は、実装制御部31を備えている。実装制御部31は、実装記憶部32、認識処理部35、実装動作処理部36、構内通信部37を備えている。構内通信部37は、構内通信ネットワーク2を介して他の部品実装機M2,M3、ライン管理PC3との間でデータの送受信を行う。実装記憶部32は記憶装置であり、実装データ記憶部33、パラメータ記憶部34を備えている。実装データ記憶部33には、回路基板Bに実装される部品Dの部品種やサイズ、部品装着位置Ba(XY座標)などのデータが製造する実装基板の種類ごとに記憶されている。
【0026】
認識処理部35は、基板認識カメラ20によるテープフィーダ16の部品供給口16bの撮像結果を画像認識して、吸着ノズル15の吸着位置の補正値を算出して、パラメータ記憶部34に記憶させる。また、認識処理部35は、部品認識カメラ21による部品Dをピックアップした吸着ノズル15の撮像結果を画像認識して、部品Dを回路基板B上に実装する際の部品装着位置Baと装着姿勢の補正値を算出して、パラメータ記憶部34に記憶させる。また、認識処理部35は撮像結果を画像認識して、供給エラー、認識エラーを検出する。
【0027】
図3において、実装動作処理部36は、実装データ記憶部33に記憶された各種データ、パラメータ記憶部34に記憶された各種補正値に基づいて、基板搬送機構12、ヘッド移動機構13、実装ヘッド14、テープフィーダ16を制御して、部品実装動作を実行させる。また、実装動作処理部36は、部品実装動作中に後述する作業エラーを検知すると、作業エラーの発生時刻、作業エラーの内容などをライン管理PC3に送信する。
【0028】
作業エラーとしては、吸着ノズル15が部品Dを吸着できない吸着エラー、部品認識カメラ21による吸着ノズル15が吸着して保持する部品Dが認識できない認識エラー、実装ヘッド14が回路基板Bに部品Dを実装できずに持ち帰る実装エラー、基板認識カメラ20によるテープフィーダ16(部品供給装置)が供給する部品Dが認識できない供給エラーなどが検知される。なお、部品実装ラインL1が部品実装機M1~M3の他に回路基板Bに実装した部品Dを検査する実装検査装置を備える場合、実装検査装置が検査した部品Dの有無や位置ずれ量に基づいて実装エラーを検出してもよい。
【0029】
図3において、ライン管理PC3は、ライン処理部41を備えている。ライン処理部41は、ライン記憶部42、稼動情報収集部44、構内通信部45、構外通信部46を備えている。構内通信部45は、構内通信ネットワーク2を介して部品実装機M1~M3との間でデータの送受信を行う。構外通信部46は、構外通信ネットワーク8を介してサポートセンタSに設置された保守管理PC5との間でデータの送受信を行う。ライン記憶部42は記憶装置であり、稼動履歴記憶部43を備えている。
【0030】
稼動情報収集部44は、部品実装機M1~M3から送信された作業エラーの発生時刻、作業エラーの内容を、その作業エラーに関連する設備要素を特定する情報と関連付けて稼動履歴情報として稼動履歴記憶部43に記憶させる。また、稼動情報収集部44は、作業エラーが発生したタイミングの他、1時間毎など所定のタイミングで吸着ノズル15毎の部品Dの吸着回数、実装回数、テープフィーダ16(部品供給装置)が供給した供給部品数などを収集し、設備要素を特定する情報と関連付けて稼動履歴情報として稼動履歴記憶部43に記憶させる。
【0031】
図3において、保守管理PC5は、保守処理部51を備えている。保守処理部51は、構外通信部52、構内通信部53、表示部54、保守記憶部55、履歴情報取得部58、エラー率算出部59、保守判定部60、リスト作成部61、表示処理部62を備えている。保守記憶部55は記憶装置であり、設備情報記憶部56、分析結果記憶部57を備えている。構外通信部52は、構外通信ネットワーク8を介して工場Fに設置されたライン管理PC3との間でデータの送受信を行う。構内通信部53は、構内通信ネットワーク7を介してメールサーバ6との間でデータの送受信を行う。表示部54は、液晶パネルなどの表示装置であり、各種データ、情報などを表示する。
【0032】
履歴情報取得部58は、毎日の終業時、工場Fにおける作業者の交替時などの所定のタイミングでライン管理PC3から稼動履歴情報を取得し、設備要素ごとに設備情報として設備情報記憶部56に記憶させる。履歴情報取得部58は、前回の取得から更新された差分の稼動履歴情報を一日毎に取得しても、1週間など所定の解析対象期間の稼動履歴情報をまとめて取得してもよい。すなわち、設備情報記憶部56には、各設備要素の保守の要否を分析するのに十分な解析対象期間の情報が記憶されるようになっていればよい。
【0033】
図3において、エラー率算出部59は、稼働履歴情報に含まれる設備要素に関連する作業エラーのエラー回数と吸着回数に基づいてエラー率を算出する。その際、エラー率算出部59は、1日などの所定の期間毎にエラー率を算出して、分析結果記憶部57に記憶させる。保守判定部60は、設備情報記憶部56に記憶される稼動履歴情報、分析結果記憶部57に記憶されるエラー率などの分析結果に基づいて、設備要素の保守の要否を判定する。より具体的に保守判定部60は、1週間などの解析対象期間に発生した設備要素に関連する作業エラーのエラー回数を累積し、エラー回数が多い設備要素のうち、最新の2日などの所定期間の最新のエラー率が警告エラー率(所定値)以上の設備要素を保守要と判定する。
【0034】
ここで図4(a)、図4(b)を参照して、保守判定部60によって判定される保守の要否の例について説明する。図4(a)には保守要と判定されたテープフィーダ16、図4(b)には保守不要と判定されたテープフィーダ16の7稼動日分の累積エラー回数(棒グラフ)と各稼働日のエラー率(折れ線グラフ)をグラフで示している。累積エラー回数は、そのテープフィーダ16に関連する作業エラーを7稼動日前から累積して表示している。エラー率は、そのテープフィーダ16に関連する作業エラーのエラー率を稼働日毎に、警告エラー率以上の場合を黒丸で、警告エラー率より低い場合を白丸で表示している。
【0035】
図4(a)に示すテープフィーダ16のエラー率は、7稼動日前は警告エラー率より低いが、6稼働日前から以降は警告エラー率を超えている。すなわち、最新の2日(2稼働日前と1稼働日前)のエラー率がそれぞれ警告エラー率以上であるため、保守判定部60は「保守要」と判定する。図4(b)に示すテープフィーダ16のエラー率は、突発的に6稼働日前と5稼働日前に警告エラー率を超えているが、4稼働日以降は原因となるゴミが除去されるなどで不具合が解決されて警告エラー率より低くなっている。そのため、最新の2日のエラー率が警告エラー率以上ではなく、保守判定部60は「保守不要」と判定する。
【0036】
図3において、リスト作成部61は、設備情報記憶部56に記憶される稼動履歴情報、分析結果記憶部57に記憶されるエラー率などの分析結果、保守判定部60によって判定された保守の要否に基づいて、保守が必要な設備要素のリスト(保守推奨設備要素リスト)を作成する。
【0037】
作成された保守推奨設備要素リストは、分析結果記憶部57に記憶されると共に、メールサーバ6を経由して電子メールとして工場Fに設置されたメール受信装置4に送信される。すなわち、メールサーバ6は、保守要と判定された設備要素の情報を含む電子メールを送信する通信部となる。そして、リスト作成部61とメールサーバ6(通信部)は、エラー回数が多い設備要素の情報を順序化し、エラー回数と保守が必要な旨を含めて保守要と判定された設備要素の情報を報知する報知手段となる。これによって、工場Fの担当者に保守要の設備要素が優先度の高い順番に表示された情報を伝達することができ、効率的に設備要素の保守を実行することで生産性を改善することができる。
【0038】
ここで図5を参照して、テープフィーダ16の保守推奨設備要素リストである保守推奨フィーダリストの一例について説明する。保守推奨フィーダリストには、テープフィーダ16を特定する「フィーダ番号」、テープフィーダ16が供給する部品Dを特定する「部品番号」、テープフィーダ16が装着された部品実装機M1~M3を特定する「装置番号」、フィーダベース17aに装着されたテープフィーダ16の位置を特定する「フィーダアドレス」、部品実装機M1~M3に装着された台車17の位置を特定する「フィーダ位置」が含まれる。
【0039】
また保守推奨フィーダリストには、解析対象期間(例えば、一週間)にそのテープフィーダ16が供給して吸着ノズル15が吸着した部品Dの吸着回数の合計である「累積吸着回数」、解析対象期間に発生したそのテープフィーダ16に関連する作業エラーの合計である「累積エラー回数」、累積エラー回数を累積吸着回数で除して得られる「累積エラー率」が含まれる。また保守推奨フィーダリストには、吸着エラーの合計である「吸着エラー回数」、認識エラーの合計である「認識エラー回数」、実装エラーの合計である「実装エラー回数」が含まれる。吸着エラー回数、認識エラー回数、実装エラー回数の合計が、累積エラー回数となる。
【0040】
なお、累積エラー回数の内訳には、吸着エラー回数、認識エラー回数、実装エラー回数の全てを含める必要はない。すなわち、累積エラー回数には、少なくとも実装ヘッド14に装着される吸着ノズル15による吸着エラー、部品認識カメラ21による部品Dの認識エラー、実装ヘッド14による実装エラーのいずれかの回数が含まれていればよい。
【0041】
図5において、保守推奨フィーダリストは、累積エラー回数が多い順に順序化されている。また、最新の2日のエラー率が警告エラー率以上で保守判定部60によって「保守要」と判定されたテープフィーダ16(ここでは5基)を特定するフィーダ番号、部品番号、装置番号、フィーダアドレス、フィーダ位置には、網掛けがされている。保守推奨フィーダリストが報知された工場Fの担当者は、網掛けがされた保守要のテープフィーダ16を上位から順に保守作業することで、効率的に保守作業をすることができる。
【0042】
図3において、表示処理部62は、リスト作成部61が作成した保守推奨設備要素リストを表示部54に表示させる表示処理を実行する。すなわち、表示部54は、保守要と判定された設備要素の情報を表示する。そして、リスト作成部61、表示処理部62、表示部54は、エラー回数が多い設備要素の情報を順序化し、エラー回数と保守が必要な旨を含めて保守要と判定された設備要素の情報を報知する報知手段となる。なお、設備要素保守分析システム1の構成として、保守管理PC5を工場F内に配置し、工場F内に配置された表示部54に保守要と判定された設備要素の情報を表示させて、工場Fの担当者に保守要の設備要素の情報を伝達するようにしてもよい。
【0043】
次に図6を参照して、設備要素保守分析システム1よって設備要素の保守の要否を分析する設備要素保守分析方法について説明する。まず、保守管理PC5の履歴情報取得部58は、工場Fに設置されたライン管理PC3から工場Fに設置された部品実装ラインL1を構成する部品実装機M1~M3(製造設備)の稼動履歴情報を一日に一度など所定のタイミングで取得する(ST1:稼動履歴情報取得工程)。取得された稼動履歴情報は、設備情報記憶部56に記憶される。
【0044】
稼動履歴情報取得工程(ST1)を所定回数(例えば7回)繰り返して所定の解析対象期間(例えば1週間)の稼動履歴情報を取得すると(ST2においてYes)、エラー率算出部59は、稼働履歴情報に含まれる設備要素に関連する作業エラーのエラー回数に基づいて、取得した稼働履歴情報のうちで最新の所定期間(例えば最新の2日)におけるエラー率を算出する(ST3:最新エラー率算出工程)。次いで保守判定部60は、解析対象期間の累積エラー回数を算出し(ST4:累積エラー回数算出工程)、エラー回数が多い設備要素のうち、最新のエラー率が所定値(警告エラー率)以上の設備要素を保守要と判定する(ST5:保守要否判定工程)。これによって、設備要素の保守の要否を適切に分析することができる。
【0045】
図6において、リスト作成部61はエラー回数が多い設備要素の情報を順序化し、メールサーバ6がエラー回数と保守が必要な旨を含めて保守要と判定された設備要素の情報を含む電子メールを送信して報知させる(ST6:報知工程)。なお、報知工程(ST6)では、表示処理部62がエラー回数と保守が必要な旨を含めて保守要と判定された設備要素の情報を表示部54に表示させて報知させるようにしてもよい。これによって、工場Fの担当者に保守要の設備要素が優先度の高い順番で表示された情報を報知することができる。
【0046】
上記説明したように、本実施の形態の設備要素保守分析システム1は、製造設備の稼動履歴情報を所定のタイミングで取得する履歴情報取得部58と、稼働履歴情報に含まれる設備要素に関連するエラー回数に基づいてエラー率を算出するエラー率算出部59と、設備要素の保守の要否を判定する保守判定部60と、保守要と判定された設備要素の情報を報知する報知手段とを備えている。
【0047】
そして、エラー率算出部59は、稼働履歴情報のうちで最新の所定期間におけるエラー率を算出し、保守判定部60は、エラー回数が多い設備要素のうち、最新のエラー率が所定値(警告エラー率)以上の設備要素を保守要と判定し、報知手段は、エラー回数が多い設備要素の情報を順序化し、エラー回数と保守が必要な旨を含めて報知させている。これによって、設備要素の保守の要否を適切に分析することができる。また、サポートセンタSは、工場Fから大量に送られる情報の中から適切な情報を用いて、保守の要否を分析することができる。
【0048】
なお、上記は保守の要否が判断される設備要素としてテープフィーダ16を用いて説明したが、保守の要否が判断される設備要素はテープフィーダ16に限定されることはない。例えば、吸着ノズル15または実装ヘッド14に関連する作業エラーのエラー回数に基づいて累積エラー回数、最新のエラー率を算出して保守の要否を判断することで、吸着ノズル15または実装ヘッド14の保守の要否も分析することができる。すなわち、吸着ノズル15の保守の要否を分析する場合においては、設備要素保守分析システム1は、ノズル保守分析システムと言い換えることができる。また、ノズル保守分析システムを用いた吸着ノズル15の保守分析の方法は、ノズル保守分析方法と称呼することができる。また、解析対象期間のすべての日にちで稼動履歴情報を取得できなくても、取得した日にちのうちで最新の日にちから最新のエラー率を算出してもよい。また、上記では、日にち単位で稼働履歴情報をまとめて分析したが、生産ロット単位で稼働履歴情報をまとめて分析をしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のノズル保守分析システムおよびノズル保守分析方法は、設備要素のひとつであるノズルの保守の要否を適切に分析することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 設備要素保守分析システム(ノズル保守分析システム)
6 メールサーバ(通信部)
14 実装ヘッド(設備要素)
15 吸着ノズル(ノズル)
16 テープフィーダ(部品供給装置、設備要素)
21 部品認識カメラ
B 回路基板
D 部品
M1~M3 部品実装機(製造設備)
図1
図2
図3
図4
図5
図6