(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231201BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20231201BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R99/00 340
(21)【出願番号】P 2019005798
(22)【出願日】2019-01-17
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴信
(72)【発明者】
【氏名】中北 学
(72)【発明者】
【氏名】陌間 純朗
(72)【発明者】
【氏名】廣島 靖久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 聡
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-269707(JP,A)
【文献】特開2003-237511(JP,A)
【文献】特開2008-230560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60R 99/00
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
B60W 10/00 - 10/30
30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵の指示を出力する出力部を備え、
前記車両に搭載可能であり、前記車両が駐車開始位置から、駐車可能な駐車領域へ経路に沿って移動するように、少なくとも車両の操舵の指示を前記出力部は出力する駐車支援装置であって、
前記駐車開始位置における車路幅、前記駐車開始位置と前記駐車領域との位置関係、及び、前記駐車開始位置における前記車両と前記駐車領域の角度、に係る所定の条件であって、かつ前記車路幅が広くなると、
満たされる前記位置関係も広くなる所定の条件を予め保持し、
前記駐車開始位置について、保持された前記所定の条件を満たす場合、前記駐車開始位置から前記駐車領域への第1の前記経路を生成し、
前記駐車開始位置について、保持された前記所定の条件を満たさない場合、前記第1の前記経路を生成せずに、前記駐車開始位置から、
保持された前記所定の条件を満たす変更位置への第2の前記経路を生成してから、前記変更位置から前記駐車領域への第3の前記経路を生成する、
駐車支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車支援装置であって、
前記車両に搭載されたカメラから映像を受けるように設定された受付部を、更に備え、
前記駐車開始位置において、前記映像を基に、少なくとも前記駐車領域を検出する、
駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駐車支援技術、特に駐車を支援する駐車支援装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車目標位置までの車両の移動を支援する駐車支援装置は、駐車開始位置から駐車目標位置までの駐車経路を演算する。演算の結果、駐車経路の設定が不可能であれば、駐車支援装置は、駐車開始位置を修正するための切り返し操作を支援するような新たな駐車経路を算出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駐車支援装置には、駐車経路を設定するまでの期間の短縮が求められる。駐車経路を演算した結果、駐車経路の設定が不可能であれば新たな駐車経路を算出する処理では、処理量が多いので、演算能力の高いマイコンの使用が必要になる。しかしながら、演算能力の高くないマイコンの使用が求められることもある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、駐車経路を設定するための処理量を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の駐車支援装置は、車両の操舵の指示を出力する出力部を備え、車両に搭載可能であり、車両が駐車開始位置から、駐車可能な駐車領域へ経路に沿って移動するように、少なくとも車両の操舵の指示を出力部は出力する駐車支援装置であって、駐車開始位置における車路幅、駐車開始位置と駐車領域との位置関係、及び、駐車開始位置における車両と駐車領域の角度、に係る所定の条件であって、かつ車両幅が広くなると、満たされる位置関係も広くなる所定の条件を予め保持し、駐車開始位置について、保持された所定の条件を満たす場合、駐車開始位置から駐車領域への第1の経路を生成し、駐車開始位置について、保持された所定の条件を満たさない場合、第1の経路を生成せずに、駐車開始位置から、保持された所定の条件を満たす変更位置への第2の前記経路を生成してから、変更位置から駐車領域への第3の前記経路を生成する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を装置、システム、方法、プログラム、プログラムを記録した記録媒体、本装置を搭載した車両などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、駐車経路を設定するための処理量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)-(b)は、本実施例の車両による駐車の概要を示す図である。
【
図5】
図5(a)-(b)は、
図2の記憶部に記憶される変更テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図6】
図2の車両による駐車の概要を示す図である。
【
図7】
図2の駐車支援装置による駐車支援手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施例を具体的に説明する前に、概要を述べる。本実施例は、車両の駐車を支援する駐車支援装置に関する。ここでは、車両の駐車の動作を開始させる位置(以下、「駐車開始位置」という)から駐車の目標位置(以下、「駐車目標位置」という)まで車両が移動する場合の操舵を駐車支援装置が自動的に実行する。アクセル操作、制動操作、シフト操作は運転者によってなされてもよく、駐車支援装置によってなされてもよい。この駐車支援装置は、撮像装置で撮像した画像をもとに駐車領域を検出する。また、駐車支援装置は、駐車開始位置から、駐車領域中の駐車目標位置まで車両が移動すべき経路(以下、「駐車経路」という)を生成し、駐車経路に沿って車両を移動させる。
【0012】
駐車経路を生成するために、例えば、複素数を含んだ3次方程式を解く必要があるので、経路計算による処理の負荷は大きい。経路計算による処理の負荷は、駐車経路の設定が不可能であり、駐車開始位置を修正するための切り返し操作を支援するような新たな駐車経路を算出する場合にさらに大きくなる。一方、駐車支援を迅速に開始するために、駐車支援装置には、駐車経路を設定するまでの期間の短縮が求められる。経路計算による処理の負荷が大きくなる状況下において、駐車経路を設定するまでの期間を短縮するためには、演算能力の高いマイコンの使用が必要になる。演算能力の高いマイコンの使用は、駐車支援装置のコストの増加につながる。
【0013】
しかしながら、駐車支援装置のコストの増加の抑制が望まれる。特に、軽自動車に搭載するための駐車支援装置には、コストの増加の抑制が望まれる。コストの増加を抑制するためには、演算能力の高いマイコンを使用できない。演算能力の高いマイコンを使用しない状況下において、駐車経路を設定するまでの期間を短縮するためには、経路計算による処理の負荷の低減が必要となる。処理の負荷を低減するために、本実施例に係る駐車支援装置は、駐車領域に対して駐車経路を設定不可能な位置に関する情報(以下、「変更テーブル」という)を予め保持し、駐車経路を設定不可能な位置に駐車開始位置が含まれる場合、駐車開始位置の変更を決定する。以下、本実施例について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施例は一例であり、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0014】
図1(a)-(b)は、車両100による駐車の概要を示す。これらは、車両100を上方から見た場合を示す。
図1(a)の道路110中の駐車開始位置120に車両100が停車している状態において、例えば、運転者が駐車支援開始ボタンを押し下げると、車両100における撮像部によって映像が撮像され、映像から駐車枠が探索される。駐車枠の線は、例えば、白線であるが、オレンジ線のようなその他の色の線であってもよい。
図1(a)においては、駐車枠が検出されることによって、駐車開始位置120に停車している車両100の左側に配置された駐車領域112が検出される。この場合は、並列駐車が想定される。
【0015】
運転者が駐車領域112への駐車を決定した場合、第1駐車経路130aと第2駐車経路130bとが生成される。第1駐車経路130aは、駐車開始位置120から前方に進みながら右側にステアリングを回して切り返し開始位置122に至り、第2駐車経路130bは、切り返し開始位置122から後方に進みながら左側にステアリングを回して駐車目標位置124に至る。駐車目標位置124は駐車領域112内に設定される。第1駐車経路130aと第2駐車経路130bの一方、あるいはそれらの組合せは駐車経路130と呼ばれる。
【0016】
車両100では、例えば、「前進してください」のような音声により、運転者がシフトを前進に入れると、駐車開始位置120から切り返し開始位置122に向かって前進がなされる。切り返し開始位置122に到達すると、車両100では、例えば、「後退してください」のような音声により、運転者がシフトを後退に入れると、切り返し開始位置122から駐車目標位置124に向かって後退がなされる。このように車両100は、駐車経路130に沿って自動操舵を実行することによって、駐車領域112への駐車が実行される。
【0017】
ここで、駐車開始位置120、切り返し開始位置122、駐車目標位置124は、車両100の後輪軸の中心に配置される。また、x軸は、道路110に沿った方向に規定され、y軸は、x軸に直交した道路110の幅方向に規定される。矢印で示した方向が正方向であり、それと反対の方向が負方向である。つまり、x軸の正方向は、道路110の進行方向と反対向きであり、y軸の正方向は、駐車領域112から遠ざかる方向である。
【0018】
また、駐車経路130を生成する際に、車路幅140と所定の前進量142とによる制限が規定される。車路幅140は、道路110のy軸方向の幅である。これは、道路110において、駐車領域112が設けられている側から、駐車領域112が設けられていない側までの長さに相当する。所定の前進量142は、駐車領域112のx軸の負方向端から車両100が前進可能な長さである。車両100が切り返し開始位置122に到達した場合に、車両100が車路幅140からはみ出ず、かつ車両100の後端が所定の前進量142からはみ出さないように、駐車経路130が設定されなければならない。ここで、所定の前進量142は、車路幅140に対応して定めるようにしてもよい。
図1(a)において、車路幅140は4.5mとされ、所定の前進量142aは3.0mとされている。また、
図1(b)において、車路幅140は4.0mとされ、所定の前進量142bは、3.6mとされている。即ち、所定の前進量142aと所定の前進量142bとは、それぞれ所定の前進量142の一例である。
【0019】
図1(b)の場合、車両100では、
図1(a)の場合と同様の処理が実行されるが、車路幅140が
図1(a)の場合よりも狭いために、さらに切り返しがなされる駐車経路130が生成される。ここでの駐車経路130は、第1駐車経路130aから第4駐車経路130dを含む。第1駐車経路130aは、駐車開始位置120から前方に進みながら左側から右側へとステアリングを回して第1切り返し開始位置122aに至る。第2駐車経路130bは、第1切り返し開始位置122aから後方に進みながら左側にステアリングを回して第2切り返し開始位置122bに至る。第3駐車経路130cは、第2切り返し開始位置122bから前方に進みながら右側にステアリングを回して第3切り返し開始位置122cに至る。第4駐車経路130dは、第3切り返し開始位置122cから後方に進みながら左側にステアリングを回して駐車目標位置124に至る。
【0020】
駐車領域112に対する駐車開始位置120の相対的な配置によっては、車路幅140および所定の前進量142に対する制限を満たすような駐車経路130をできない場合がある。その場合、駐車開始位置120の位置を変更し、変更した位置(以下、「変更位置」という)から駐車目標位置124への駐車経路130を生成することが有効である。このような処理を実行する場合、まず、駐車開始位置120から駐車目標位置124へのさまざまな駐車経路130の生成を試みることによって、車路幅140および所定の前進量142に対する制限を満たすような駐車経路130をできないことが決定される。その後、駐車開始位置120から変更位置への駐車経路130と、変更位置から駐車目標位置124への駐車経路130とが生成される。これらのうち、特に、駐車開始位置120から駐車目標位置124へのさまざまな駐車経路130の生成を試みることによって、車路幅140および所定の前進量142に対する制限を満たすような駐車経路130をできないことを決定するための処理量が多くなる。前述のごとく、演算能力の高いマイコンを使用しない状況下において、処理量の低減が必要とされるので、駐車経路130をできないことを決定するための処理量を低減することが求めあれる。
【0021】
図2は、車両100の構成を示す。車両100は、駐車支援装置200、撮像部202、ステアリング角センサ206、車速センサ208、表示装置210、操舵制御装置212、操作装置214を含む。駐車支援装置200は、検出部220、位置取得部222、経路生成部228、出力部230、通知部232、受付部240、記憶部242、選択部244を含む。
【0022】
ステアリング角センサ206は、車両100の前輪のステアリング角を取得する。ステアリング角センサ206は、取得したステアリング角を位置取得部222に出力する。車速センサ208は、車両100における車軸の回転数に比例して発生されたパルス信号の数量を計測することによって、車両100の速度を計測する。車速センサ208は、車両100の速度を位置取得部222に出力する。位置取得部222は、ステアリング角センサ206からのステアリング角を取得するとともに、車速センサ208からの速度を取得する。位置取得部222は、車両100のステアリング角をもとに、車両100の前輪のタイヤ角を算出する。この算出には、例えば、近似式が使用される。位置取得部222は、タイヤ角と速度をもとに、車両100の位置「X,Y」と方位「Θ」とを取得する。以下では、位置と方位とをまとめて「配置」ということもある。なお、x軸上の1つの値が「X」であり、y軸上の1つの値が「Y」であり、車両100の先頭がx軸からなす角度θの1つの値が「Θ」である。車両100の方位とは、車両100の先頭が向く方向を示す。位置取得部222は、位置「X,Y」と方位「Θ」とを経路生成部228、出力部230に出力する。
【0023】
操作装置214は、ボタン、ダイヤル等によって構成され、運転者からの指示を受けつける。なお、操作装置214は、表示装置210と一体的に構成されたタッチパネルでもよい。操作装置214は、例えば、駐車支援の開始のボタン(以下、「駐車支援開始ボタン」という)を含み、運転者による駐車支援開始ボタンの押し下げを検出する。受付部240は、操作装置214における駐車支援開始ボタンの押し下げを受けつけると、駐車支援開始を検出部220に指示する。
【0024】
撮像部202は車両100に搭載されたカメラであり、車両100の周囲の画像を撮像可能である。なお、複数の画像が時系列に並べられることによって映像が構成される。
図3は、撮像部202の配置を示し、これは車両100の上面図に相当する。車両100は、撮像部202と総称される第1撮像部202a、第2撮像部202b、第3撮像部202c、第4撮像部202dを含む。第1撮像部202aは、フロントカメラとも呼ばれ、車両100のフロントグリルに設置され、前方の領域を地面に対して斜めに見下ろす方向に撮像する。第2撮像部202bは、左サイドカメラとも呼ばれ、車両100の左側サイドミラーに設置され、左側方の領域を地面に対して斜めに見下ろす方向に撮像する。第3撮像部202cは、リアカメラとも呼ばれ、車両100のトランク付近に設置され、後方の領域を地面に対して斜めに見下ろす方向に撮像する。第4撮像部202dは、右サイドカメラとも呼ばれ、車両100の右側サイドミラーに設置され、右側方の領域を地面に対して斜めに見下ろす方向に撮像する。これらの撮像部202は、例えば180°程度の画角を有する広角カメラであり、車両100の全周が撮像されるように配置される。
図2に戻る。撮像部202は、撮像した映像を検出部220に出力する。
【0025】
検出部220は、撮像部202からの映像を受けつける。また、検出部220は、操作装置214から駐車支援開始を指示されると、映像をもとに、車両100を駐車可能な駐車領域112であって、かつ道路110に面して設けられた駐車領域112を検出する。なお、検出には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。検出部220は、検出結果を経路生成部228に出力する。
【0026】
経路生成部228は、駐車領域112に車両100を駐車することを運転者に確認するための情報、例えば画像を生成する。経路生成部228は、画像を通知部232に出力し、通知部232は画像を表示装置210に表示させる。表示装置210に表示された画像により、運転者は駐車領域112を確認する。運転者は、駐車領域112に車両100を駐車することを決定した場合、操作装置214を操作して、駐車領域112の決定を入力するとともに、車両100を駐車させようとしている道路110における車路幅140の値を入力する。ここでは、車路幅140の値は、「4.5m」と「4.0m」のいずれかであるが、これらに限定されない。また、車路幅140の値は、画像認識処理により映像から自動的に検出されてもよい。受付部240は、操作装置214への駐車領域112の決定の入力を受けつけるとともに、車路幅140の値も入力する。受付部240は、駐車領域112の決定の指示と車路幅140の値を選択部244に出力する。
【0027】
記憶部242は、前述の変更テーブルを記憶する。ここでは、「4.5m」の車路幅140に対応した第1変更テーブルと、「4.0m」の車路幅140に対応した第2変更テーブルとが記憶される。第1変更テーブルと第2変更テーブルの詳細は後述する。選択部244は、駐車領域112の決定の指示と車路幅140の値を受付部240から受けつける。選択部244は、受けつけた車路幅140の値に対応した変更テーブルを記憶部242から選択する。例えば、選択部244は、「4.5m」の車路幅140を受けつけた場合に第1変更テーブルを選択し、「4.0m」の車路幅140を受けつけた場合に第2変更テーブルを選択する。選択部244は、駐車領域112の決定の指示と、選択した変更テーブルとを経路生成部228に出力する。
【0028】
経路生成部228は、駐車領域112の決定の指示と、選択した変更テーブルとを選択部244から受けつける。また、経路生成部228は、位置取得部222からの車両100の位置X,Y、方位Θを受けつける。このタイミングで受けつけた車両100の位置X,Y、方位Θの組合せが駐車開始位置120に相当する。経路生成部228は、駐車領域112の決定の指示を受けつけると、駐車開始位置120から駐車領域112への駐車経路130を生成するための処理を開始する。この処理は、(1)変更テーブル、駐車開始位置120、駐車領域112をもとに、駐車経路130が生成可能であるか否かを判定するための判定処理、(2)判定処理において生成可能と判定された場合に駐車経路130を生成する第1生成処理を含む。また、この処理は、(3)判定処理において生成不可能と判定された場合に、駐車開始位置120から変更位置への駐車経路130を生成するとともに、変更位置から駐車領域112への駐車経路130を生成する第2生成処理も含む。以下では、(1)判定処理、(2)第1生成処理、(3)第2生成処理の順に説明する。
【0029】
(1)判定処理
判定処理を説明するために、ここでは
図4を使用する。
図4は、経路生成部228の処理を示す。検出部220において検出された駐車領域112は道路110に接する。経路生成部228は、道路110と駐車領域112との境界からx軸の負方向に所定距離だけ移動させた位置に、
図1(a)-(b)に示されたx軸とy軸の原点「0」を設定する。所定距離は、例えば、「1000mm」のように予め規定される。また、角度θは、x軸から駐車領域112に向く方を「+」となるように設定される。このようなx軸、y軸、角度θによって、車両100の駐車開始位置120が示される。
【0030】
これに続いて、経路生成部228は、車両100における第2撮像部202bの位置、つまり左側サイドミラーの位置と、車体角度を取得する。第2撮像部202bの位置も「X,Y」と示され、第2撮像部202bの位置と車体角度との組合せは初期配置と呼ばれる。ここで、第2撮像部202bの位置と、車両100の後輪軸の中心に配置される駐車開始位置120との相対的な関係は固定であるので、第2撮像部202bの位置は、駐車開始位置120を相対的な関係だけずらすことによって取得される。また、第2撮像部202bの位置ではなく、他の撮像部202の位置であってもよい。車体角度は、駐車開始位置120の方位Θである。経路生成部228は、第2撮像部202bの位置と車体角度とをもとに、変更テーブルを参照することによって、駐車経路130が生成可能であるか否かを判定する。
【0031】
図5(a)-(b)は、記憶部242に記憶される変更テーブルのデータ構造を示す。
図5(a)は第1変更テーブルを示し、
図5(b)は第2変更テーブルを示す。
図5(a)において、「車路幅」欄には車路幅140の「4.5m」が示される。「Θ、Y」欄には、車体角度に対する条件と、第2撮像部202bの位置「Y」に対する条件が示される。「X」欄には、第2撮像部202bの位置「X」に対する条件が示される。経路生成部228は、車体角度ΘからYに対する条件を複数選択する。次に、経路生成部228は、位置「Y」と選択された条件から、Xに対する条件を選択する。その次に、経路生成部228は、Xに対する条件に示された値(以下、「しきい値」という)と、位置「X」とを比較する。位置「X」がしきい値より大きければ、経路生成部228は、駐車経路130が生成可能であると判定する。一方、位置「X」がしきい値以下であれば、経路生成部228は、駐車経路130が生成不可能であると判定する。
【0032】
図5(b)における「車路幅」欄には車路幅140の「4.0m」が示される。その他は
図5(a)と同様に示され、経路生成部228は、第2変更テーブルを使用する場合であっても、第1変更テーブルを使用する場合と同様の処理を実行し、駐車経路130が生成可能であるか否かを判定する。位置「X」がしきい値より大きいことを「第1条件」と呼び、位置「X」がしきい値以下であることを「第2条件」と呼ぶ場合、記憶部242に記憶された変更テーブルには、互いに異なった第1条件と第2条件とが示されるといえる。ここで、第1条件および第2条件は、実験、シミュレーション等によって予め定められる。また、車両100が移動可能な領域を、「4.5m」の車路幅140に対する第1領域と、「4.0m」の車路幅140に対する第2領域と呼ぶ場合、第1領域と第2領域とのそれぞれに対して、第1条件と第2条件とが規定されるといえる。
図2に戻る。
【0033】
(2)第1生成処理
判定処理において、駐車経路130が生成可能であると判定された場合、つまり車両100の初期配置と駐車領域112との相対的な関係が第1条件を満たす場合、経路生成部228は、駐車開始位置120から、駐車領域112内の駐車目標位置124へ至る駐車経路130を生成する。このような駐車経路130の生成は、
図1(a)-(b)に示されるとおりでよいので、ここでは説明を省略する。前述のごとく、駐車経路130は、車路幅140および所定の前進量142に対する制限を満たす。
【0034】
(3)第2生成処理
判定処理において、駐車経路130が生成不可能であると判定された場合、経路生成部228は、駐車開始位置120から変更位置へ至る駐車経路130を生成するとともに、変更位置から、駐車領域112内の駐車目標位置124へ至る駐車経路130を生成する。駐車経路130が生成不可能であると判定された場合は、車両100の初期配置と駐車領域112との相対的な関係が第2条件を満たす場合に相当する。ここで、変更位置は、変更配置とも呼ばれ、駐車領域112に対する第1条件を満たす位置、つまり位置「X」がしきい値より大きい位置である。変更位置は予め定められていればよい。
【0035】
図6は、車両100による駐車の概要を示す。これは、
図1(a)-(b)と同様に示される。経路生成部228は、駐車開始位置120に対して、予め保持していた変更位置126を設定する。経路生成部228は、駐車開始位置120から前方に進みながら左側にステアリングを回して第1切り返し開始位置122aに至る第1駐車経路130aと、第1切り返し開始位置122aから後方に進んで変更位置126に至る第2駐車経路130bとを生成する。
【0036】
さらに、経路生成部228は、第3駐車経路130cから第6駐車経路130fを生成する。第3駐車経路130cは、変更位置126から前方に進みながら右側にステアリングを回して第2切り返し開始位置122bに至る。第4駐車経路130dは、第2切り返し開始位置122bから後方に進みながら左側にステアリングを回して第3切り返し開始位置122cに至る。第5駐車経路130eは、第3切り返し開始位置122cから前方に進みながら右側にステアリングを回して第4切り返し開始位置122dに至る。第6駐車経路130fは、第4切り返し開始位置122dから後方に進みながら左側にステアリングを回して駐車目標位置124に至る。
【0037】
ここで、第1駐車経路130aと第2駐車経路130bが、駐車開始位置120から変更位置126へ至る駐車経路130に相当し、第3駐車経路130cから第6駐車経路130fが、変更位置126から駐車目標位置124へ至る駐車経路130に相当する。また、第1生成処理において生成される駐車開始位置120から駐車目標位置124へ至る駐車経路130を第1経路と呼ぶ場合、第2生成処理において生成される駐車開始位置120から変更位置126へ至る駐車経路130は第2経路と呼ばれる。また、第2生成処理において生成される変更位置126から駐車目標位置124へ至る駐車経路130は第3経路と呼ばれる。
図2に戻る。経路生成部228は、生成した駐車経路130を出力部230に出力する。
【0038】
出力部230は、経路生成部228から駐車経路130を受けつけるとともに、位置取得部222から位置X,Y、方位Θを受けつける。出力部230は、経路生成部228において取得した駐車経路130に沿った操舵の指示を出力する。その際、出力部230は、位置X,Y、方位Θが駐車経路130からずれている場合、ずれを小さくするように操舵を制御する。
【0039】
操舵制御装置212は、自動運転制御機能を実装した自動運転コントローラであり、自動駐車における車両100の行動を決定する。ここでは、特に、電動パワーステアリングの自動操舵を実行する。操舵制御装置212の構成はハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他のLSIを利用でき、ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション、ファームウェア等のプログラムを利用できる。操舵制御装置212は、駐車支援装置200から入力した制御値を、各制御対象のECUまたはコントローラに伝達する。本実施例ではステアリングECUに伝達する。
【0040】
以上の構成による駐車支援装置200の動作を説明する。
図7は、駐車支援装置200による駐車支援手順を示すフローチャートである。第1条件を満たす場合(S10のY)、経路生成部228は第1経路を生成する(S12)。一方、第1条件を満たさない場合(S10のN)、つまり第2条件を満たす場合、経路生成部228は第2経路と第3経路とを生成する(S14)。
【0041】
本実施例によれば、変更テーブルをもとに、駐車経路を生成可能であるか否かを判定するので、判定のための処理量を低減できる。また、駐車経路を生成可能であると判定した場合に、第1経路を生成するので、第1経路の生成を迅速に決定できる。また、駐車経路を生成不可能であると判定した場合に、第2経路と第3経路とを生成するので、第2経路と第3経路の生成を迅速に決定できる。また、判定のための処理量が低減されるので、演算能力の高くないマイコンを使用できる。また、第1経路の生成が迅速に決定されるので、演算能力の高くないマイコンを使用できる。また、第2経路と第3経路の生成が迅速に決定されるので、演算能力の高くないマイコンを使用できる。また、演算能力の高くないマイコンが使用されるので、コストの増加を抑制できる。また、変更テーブルを予め記憶するので、処理量を低減できる。また、車路幅の値毎に、複数種類の変更テーブルを記憶するので、車路幅に適した処理を実行できる。
【0042】
以上、本開示に係る実施例について図面を参照して詳述してきたが、上述した装置や各処理部の機能は、コンピュータプログラムにより実現されうる。上述した機能をプログラムにより実現するコンピュータは、キーボードやマウス、タッチパッドなどの入力装置、ディスプレイやスピーカなどの出力装置、CPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)やUSBメモリなどの記録媒体から情報を読み取る読取装置、ネットワークを介して通信を行うネットワークカードなどを備え、各部はバスにより接続される。また、読取装置は、上記プログラムを記録した記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置に記憶させる。また、CPUが、記憶装置に記憶されたプログラムをRAMにコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAMから順次読み出して実行することにより、上記各装置の機能が実現される。
【0043】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の駐車支援装置は、車両の操舵の指示を出力する出力部を備える。車両に搭載可能な駐車支援装置であって、互いに異なった第1条件と第2条件とが規定され、車両の初期配置と駐車領域との相対的な関係が第1条件を満たす場合、駐車領域へ至る第1経路を生成し、車両の初期配置と駐車領域との相対的な関係が第2条件を満たす場合、駐車領域に対する第1条件を満たす変更配置へ至る第2経路と、変更配置から駐車領域へ至る第3経路とを生成し、第1経路に沿った操舵の指示、あるいは第2経路と第3経路に沿った操舵の指示を出力部から出力させる。
【0044】
この態様によると、車両の初期配置と駐車領域との相対的な関係が第1条件を満たすか、あるいは第2条件を満たすかを判定してから経路を生成するので、駐車経路を設定するための処理量を低減できる。
【0045】
駐車支援装置であって、第1条件と第2条件とを記憶する記憶部をさらに備えてもよい。この場合、第1条件と第2条件とを記憶するので、処理量を低減できる。
【0046】
駐車支援装置であって、車両が移動可能な第1領域と第2領域とが規定され、第1領域と第2領域とのそれぞれに対して、第1条件と第2条件とが規定されてもよい。この場合、第1領域と第2領域とのそれぞれに対して、第1条件と第2条件とが規定されるので、第1領域と第2領域のそれぞれに適した処理を実行できる。
【0047】
本開示の別の態様は、車両である。この車両は、操舵の指示に応じて自動操舵を実行する操舵制御装置を備える車両であって、互いに異なった第1条件と第2条件とが規定され、車両の初期配置と駐車領域との相対的な関係が第1条件を満たす場合、駐車領域へ至る第1経路を生成し、車両の初期配置と駐車領域との相対的な関係が第2条件を満たす場合、駐車領域に対する第1条件を満たす変更配置へ至る第2経路と、変更配置から駐車領域へ至る第3経路とを生成し、第1経路に沿った操舵の指示、あるいは第2経路と第3経路に沿った操舵の指示を操舵制御装置に出力する。
【0048】
この態様によると、車両の初期配置と駐車領域との相対的な関係が第1条件を満たすか、あるいは第2条件を満たすかを判定してから経路を生成するので、駐車経路を設定するための処理量を低減できる。
【0049】
車両であって、第1条件と第2条件とを記憶する記憶部をさらに備えてもよい。この場合、第1条件と第2条件とを記憶するので、処理量を低減できる。
【0050】
車両であって、車両が移動可能な第1領域と第2領域とが規定され、第1領域と第2領域とのそれぞれに対して、第1条件と第2条件とが規定されてもよい。この場合、第1領域と第2領域とのそれぞれに対して、第1条件と第2条件とが規定されるので、第1領域と第2領域のそれぞれに適した処理を実行できる。
【0051】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
本実施例において、車両100を並列駐車する場合を一例としている。しかしながらこれに限らず例えば、車両100を縦列駐車する場合に適用してもよい。本変形例によれば、本実施例の適用範囲を拡大できる。
【0053】
本実施例において、撮像部202により撮像された映像をもとに駐車領域112が特定される。しかしながらこれに限らず例えば、ソナーの探索結果をもとに駐車領域112が特定されてもよい。本変形例によれば、本実施例の適用範囲を拡大できる。
【符号の説明】
【0054】
100 車両、 142 142a 142b 所定の前進量、 200 駐車支援装置、 202 撮像部、 206 ステアリング角センサ、 208 車速センサ、 210 表示装置、 212 操舵制御装置、 214 操作装置、 220 検出部、 222 位置取得部、 228 経路生成部、 230 出力部、 232 通知部、 240 受付部、 242 記憶部、 244 選択部。