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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】光学調整装置、及び、光学調整方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20231201BHJP
   G01B 11/27 20060101ALI20231201BHJP
   G01B 11/14 20060101ALI20231201BHJP
   G02B 6/30 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G02B6/26
G01B11/27 Z
G01B11/14 Z
G02B6/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021083303
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022176732
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 寛和
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 淳一
(72)【発明者】
【氏名】白石 竜朗
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032950(JP,A)
【文献】特開平10-282355(JP,A)
【文献】米国特許第09494529(US,B1)
【文献】特開2022-166647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光ファイバーを接続先の光学基板に接続する際に用いられる光学調整装置であって、
複数の第2の光ファイバーを有し、前記複数の第2の光ファイバーを介して単一波長を有する複数の光を、互いに異なるタイミングで出射する測定光照射部と、
前記第1の光ファイバー及び前記複数の第2の光ファイバーの出射側端部を保持する光ファイバーブロックと、
前記光学基板の基板端面で反射した前記複数の光に対応する複数の反射光を、前記複数の第2の光ファイバーを介して受光して、検出する光検出部と、
前記複数の反射光ごとの強度の時間変化を互いに比較し、比較結果に基づいて前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの傾きを算出する傾き算出部と、
前記複数の反射光のうちの少なくとも1つの強度の時間変化に基づいて前記光学基板と前記光ファイバーブロックとの端面間距離を算出する距離算出部と、
を備える、光学調整装置。
【請求項2】
前記複数の第2の光ファイバーは、出射端面同士を相互に結ぶ複数の線が三角形を構成するように配置された3つの光ファイバーを含む、
請求項1に記載の光学調整装置。
【請求項3】
前記複数の第2の光ファイバーは、互いに異なる光路長を有する、
請求項2に記載の光学調整装置。
【請求項4】
前記測定光照射部は、
単一波長を有する光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を互いに強度が等しい前記複数の光に分岐し、前記複数の光を前記複数の第2の光ファイバーにそれぞれ導光する光カプラと、
を備える、
請求項3に記載の光学調整装置。
【請求項5】
前記傾き算出部は、第1の軸周りの前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの傾きθxと、前記第1の軸に対して垂直な第2の軸周りの前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの傾きθyとを算出する、
請求項3または4に記載の光学調整装置。
【請求項6】
前記傾き算出部は、前記複数の反射光ごとの強度の時間変化に基づいて、前記複数の反射光にそれぞれ対応する複数の強度の積算値を算出し、前記複数の強度の積算値を互いに比較する、
請求項1から5のいずれかに記載の光学調整装置。
【請求項7】
前記傾き算出部は、前記複数の反射光ごとの強度の時間変化における前記複数の反射光にそれぞれ対応する複数のピーク幅を互いに比較する、
請求項1から6のいずれかに記載の光学調整装置。
【請求項8】
算出された前記傾きに基づいて前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの相対姿勢を調整する傾き調整部をさらに備える、
請求項1から7のいずれかに記載の光学調整装置。
【請求項9】
前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの相対距離を調整する距離調整部をさらに備える、
請求項1から8のいずれかに記載の光学調整装置。
【請求項10】
前記距離算出部は、前記光ファイバーブロックが異なる位置にあるときの前記反射光の強度の積算値の差分に基づいて、前記光学基板と前記光ファイバーブロックとの端面間距離を算出する、
請求項1から9のいずれかに記載の光学調整装置。
【請求項11】
前記距離算出部は、前記光ファイバーブロックが異なる位置にあるときの前記反射光の強度の時間変化におけるピーク位置を示す時間に基づいて、前記光学基板と前記光ファイバーブロックとの端面間距離を算出する、
請求項1から10のいずれかに記載の光学調整装置。
【請求項12】
第1の光ファイバーを接続先の光学基板に接続する際に行われる光学調整方法であって、
前記第1の光ファイバー及び測定用の複数の第2の光ファイバーの出射側端部を光ファイバーブロックで保持し、
前記複数の第2の光ファイバーを介して単一波長を有する複数の光を、互いに異なるタイミングで出射し、
前記光学基板の基板端面で反射した前記複数の光に対応する複数の反射光を、前記複数の第2の光ファイバーを介して受光して検出し、
前記複数の反射光ごとの強度の時間変化を互いに比較し、比較結果に基づいて前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの傾きを算出し、
前記複数の反射光のうちの少なくとも1つの強度の時間変化に基づいて前記光学基板と前記光ファイバーブロックとの端面間距離を算出する、
光学調整方法。
【請求項13】
算出された前記傾きに基づいて前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの相対姿勢を調整し、
算出された前記端面間距離に基づいて前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの相対位置を調整する、
請求項12に記載の光学調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光ファイバーを、光ファイバーを保持する基板、または、導波路が形成された基板等の接続先の光デバイスの光学基板に対して接続する際、光学基板のコアを伝搬する光の強度が最大となるように、光ファイバーの光軸が調整される。
【0002】
光ファイバーの光軸の調整は、光ファイバーの出射端面を光学基板の入射端面に近づけながら行われる。光ファイバーの出射端面が、光学基板の入射端面に接触してしまうと、光ファイバー及び光学基板の各端面が損傷するおそれがある。これらの端面の損傷は、光ファイバーから光学基板への光の伝搬効率の低下を招く。
【0003】
よって、光ファイバーと光学基板との接触を回避するために、光ファイバーと光学基板との端面間距離を測定しながら、光ファイバーの光軸調整が行われる。
【0004】
特許文献1には、光ファイバーから接続先の光学基板に向けて波長の異なる光を出射し、光学基板からの反射光の強度を測定し、測定された反射光強度の波長依存性に基づいて光ファイバーと光学基板との端面間距離を算出する距離測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-228444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光ファイバーの出射端面が光学基板の入射端面に対して傾いている場合、光ファイバーによって受光できる光学基板からの反射光が少なくなる。特許文献1の距離測定装置は、光学基板からの反射光に基づいて距離を算出するので、受光される反射光が少なくなると、距離測定の精度が低下する。このため、特許文献1の距離測定装置を使用する場合、距離測定の前に光ファイバーの出射端面と光学基板の入射端面とが平行となるように調整しておく必要がある。
【0007】
特許文献1の距離測定装置は、接続先の光学基板に対する光ファイバーの傾きを測定することができないので、別途傾きを測定する機器が必要である。
【0008】
本開示は、別途機器を準備することなく、接続先の光学基板に対する光ファイバーの距離を精度よく測定できる光学調整装置、光学調整方法、及び、光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る光学調整装置は、第1の光ファイバーを接続先の光学基板に接続する際に用いられる光学調整装置であって、複数の第2の光ファイバーを有し、前記複数の第2の光ファイバーを介して単一波長を有する複数の光を、互いに異なるタイミングで出射する測定光照射部と、前記第1の光ファイバー及び前記複数の第2の光ファイバーの出射側端部を保持する光ファイバーブロックと、前記光学基板の基板端面で反射した前記複数の光に対応する複数の反射光を、前記複数の第2の光ファイバーを介して受光して、検出する光検出部と、前記複数の反射光ごとの強度の時間変化を互いに比較し、比較結果に基づいて前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの傾きを算出する傾き算出部と、前記複数の反射光のうちの少なくとも1つの強度の時間変化に基づいて前記光学基板と前記光ファイバーブロックとの端面間距離を算出する距離算出部と、を備える。
【0010】
本開示の一態様に係る光学調整方法は、第1の光ファイバーを接続先の光学基板に接続する際に行われる光学調整方法であって、前記第1の光ファイバー及び測定用の複数の第2の光ファイバーの出射側端部を光ファイバーブロックで保持し、前記複数の第2の光ファイバーを介して単一波長を有する複数の光を、互いに異なるタイミングで出射し、前記光学基板の基板端面で反射した前記複数の光に対応する複数の反射光を、前記複数の第2の光ファイバーを介して受光して検出し、前記複数の反射光ごとの強度の時間変化を互いに比較し、比較結果に基づいて前記光学基板に対する前記光ファイバーブロックの傾きを算出し、前記複数の反射光のうちの少なくとも1つの強度の時間変化に基づいて前記光学基板と前記光ファイバーブロックとの端面間距離を算出する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、接続先の光学基板に対する光ファイバーの距離を精度よく測定できる光学調整装置、光学調整方法、及び、光デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る光学調整装置を示す概略図である。
図2図2は、実施形態に係る光ファイバーブロックに保持されている光ファイバーの位置関係を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る光学調整装置が実行する光学調整の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、光検出部による反射光の検出結果の一例を示す図である。
図5図5は、第2の光ファイバーから出射された光が光学基板の基板端面で反射されて反射光として戻る様子を示す図である。
図6図6は、図4の一部のピークを拡大して示す図である。
図7図7は、反射光の検出結果と傾きとの対応関係を示す図である。
図8図8A及び図8Bは、異なる位置に光ファイバーブロックが位置しているときの光検出部による反射光の検出結果の一例を示す図である。
図9図9A及び図9Bは、異なる位置に光ファイバーブロックが位置しているときの反射光の違いを示す図である。
図10図10は、実施形態に係る光デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係る光学調整装置10を示す概略図である。光学調整装置10は、第1の光ファイバー105を、接続先の光学基板120の導波路121に接続する際に、第1の光ファイバー105の光軸を調整するために用いられる。具体的には、光学調整装置10は、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30の傾き、及び、基板端面130とブロック端面30の端面間距離を測定可能に構成されている。光学基板120は、例えば、光回路が形成された基板である。なお、基板端面130は、第2の光ファイバー106~109からの光が入射される光学基板120の端面であり、ブロック端面30は、基板端面130に対向する光ファイバーブロック104の端面である。
【0016】
本実施形態の説明において、後述の光ファイバーブロック104が、光学基板120に対して近づく方向をz軸正方向とする。また、z軸と右手座標系を構成する2つの方向のうちの一方をx軸正方向、及び、他方をy軸正方向とする。図1において、手前から奥に向かう方向がx軸正方向、上方向がy軸正方向、及び、右方向がz軸正方向である。
【0017】
光学調整装置10は、測定光照射部103、光ファイバーブロック104、光検出部110、算出部111、及び、調整装置114を備えている。
【0018】
測定光照射部103は、測定用の複数の第2の光ファイバー106~109を有し、第2の光ファイバー106~109を介して単一波長を有する複数の光L1~L4を、互いに異なるタイミングで出射する。本実施形態では、測定光照射部103は、光源100、サーキュレーター101及び光カプラ102を有している。
【0019】
光源100は、単一波長を有する光Lを出射する光出射装置である。サーキュレーター101は、光Lの進行方向を変更する部品である。
【0020】
光カプラ102は、光源100から出射された光Lを互いに強度が等しい複数の光L1~L4に分岐し、光L1~L4を複数の第2の光ファイバー106~109にそれぞれ導光する。
【0021】
第2の光ファイバー106~109は、傾き及び距離測定用の光ファイバーである。第2の光ファイバー106~109は、光ファイバーブロック104に保持されている。また、第2の光ファイバー106~109は、互いに異なる光路長を有している。本実施形態では、第2の光ファイバー106、第2の光ファイバー107、第2の光ファイバー108、及び、第2の光ファイバー109の順に長くなる。光カプラ102で分岐された光L1~L4は、長さが異なる第2の光ファイバー106~109を介して導光されることで、互いに異なるタイミングで出射される。
【0022】
光ファイバーブロック104は、第1の光ファイバー105及び第2の光ファイバー106~109の出射側端部を保持する部品である。第1の光ファイバー105及び第2の光ファイバー106~109は、それぞれの出射端面がブロック端面30と面一となるように光ファイバーブロック104に配置される。光ファイバーブロック104は、例えば、図2に示されているように、ホルダ41及びリッド42を有する。ホルダ41は、第1の光ファイバー105が配置される溝が形成されている部品である。リッド42は、ホルダ41に対する蓋に相当する部品である。ホルダ41の溝形成面に対してリッド42を接触させることで、ホルダ41の溝とリッド42の接触面とにより、光ファイバーブロック104の中央部分に、第1の光ファイバー105を保持する挿通孔50が形成される。
【0023】
また、光ファイバーブロック104の四隅に挿通孔51~54が形成されている。挿通孔51~54の中の3つは、相互に結ぶ複数の線が三角形を構成する位置関係にある。
【0024】
第2の光ファイバー106~109は、挿通孔51~54にそれぞれ挿通されている。よって、第2の光ファイバー106~109は、第2の光ファイバー106~109の出射端面のうちの3つの出射端面同士を相互に結ぶ線が三角形を構成するように配置される。
【0025】
第2の光ファイバー106~109をこのような配置とすることで、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30の傾きを、互いに直交する2つの軸周りについて測定することができる。
【0026】
光検出部110は、光学基板120の基板端面130で反射した複数の光L1~L4の反射光RL1~RL4を、第2の光ファイバー106~109を介して受光して、反射光RL1~RL4の強度を検出する。光検出部110は、検出結果を算出部111に出力する。なお、複数の反射光RL1~RL4は、第2の光ファイバー106~109によって導光された後、サーキュレーター101によって進行方向が変更され、光検出部110に導かれる。
【0027】
算出部111は、演算機能を有するコンピュータである。算出部111は、傾き算出部112及び距離算出部113として機能する。算出部111は、算出結果を調整装置114に出力する。
【0028】
傾き算出部112は、光検出部110による検出結果に基づいて、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30の傾きを算出する。距離算出部113は、光検出部110による検出結果に基づいて、光学基板120の基板端面130と光ファイバーブロック104のブロック端面30との端面間距離を算出する。
【0029】
調整装置114は、光ファイバーブロック104を保持する駆動装置を含み、傾き調整部115、及び、距離調整部116として機能する。傾き調整部115は、算出された傾きに基づいて光学基板120に対する光ファイバーブロック104の相対姿勢を調整する。距離調整部116は、算出された端面距離に基づいて光学基板120に対する光ファイバーブロック104の相対距離を調整する。
【0030】
光学基板120に対して第1の光ファイバー105を接続するに際して、光学調整装置10を用いて第1の光ファイバー105の光学調整が行われる。本明細書において、光学調整とは、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30の相対姿勢および相対位置を調整することを言う。図3は、実施形態に係る光学調整装置10が実行する光学調整の手順を示すフローチャートである。図3に示す光学調整装置10を用いた光学調整方法は、ステップS1~S5による相対姿勢調整工程と、ステップS6~S10による相対距離調整工程と、を含む。
【0031】
光学調整に際し、光学調整装置10の光ファイバーブロック104に、第1の光ファイバー105及び第2の光ファイバー106~109が取り付けられる。そして、第1の光ファイバー105及び第2の光ファイバー106~109を保持した光ファイバーブロック104は、光ファイバーブロック104のブロック端面30と光学基板120の基板端面130とが確実に接触しない程度離間されて配置される。この離間距離は、例えば、20μmである。
【0032】
上述したように光ファイバーブロック104及び光学基板120が設置された状態で、光学調整装置10は、光検出動作を実行する(ステップS1)。ステップS1において、光源100は、光Lを出射する。光Lは、サーキュレーター101を通過し、光カプラ102により複数の光L1~L4に分岐される。光L1~L4は、第2の光ファイバー106~109の出射端面から光学基板120の基板端面130に向けて出射される。
【0033】
第2の光ファイバー106~109に入射してから出射されるまでの光L1~L4の光路長が互いに異なるので、光L1~L4は、互いに異なるタイミングで出射される。本実施形態では、光L1、光L2、光L3、光L4の順に出射される。
【0034】
出射された光L1~L4は、光学基板120の基板端面130で反射される。そして、それぞれの反射光RL1~RL4が第2の光ファイバー106~109によって受光され、第2の光ファイバー106~109、光カプラ102、及び、サーキュレーター101を経て光検出部110によって検出される。第2の光ファイバー106~109の長さの違いに起因して、反射光RL1~RL4は互いに異なるタイミングで検出される。本実施形態では、反射光RL1、反射光RL2、反射光RL3、反射光RL4の順に検出される。
【0035】
図4は、光検出部110による反射光RL1~RL4の検出結果の一例を示す図である。縦軸及び横軸は、それぞれ光強度及び時間である。なお、時刻tbは、光源100が光Lを出射した時刻である。
【0036】
図4のピークP1~P4は、それぞれ、反射光RL1~RL4に対応する。時刻tbからピークP1~P4までの時間はそれぞれΔt1~Δt4であり、第2の光ファイバー106~109の長さに起因して、Δt1<Δt2<Δt3<Δt4となる。ピークP1~P4は、時間幅を有する。以下、その理由について説明する。
【0037】
図5は、第2の光ファイバー106、107から出射された光L1、L2が光学基板120の基板端面130で反射されて反射光RL1、RL2として第2の光ファイバー106、107に戻る様子を示す図である。
【0038】
図5の強度スペクトルD11~D14は、それぞれ、第2の光ファイバー106から出射される光L1の強度スペクトル、光学基板120へ入射した光L1の強度スペクトル、光学基板120で光L1が反射した直後の反射光RL1の強度スペクトル、第2の光ファイバー106へ入射した反射光RL1の強度スペクトルである。
【0039】
図5の強度スペクトルD21~D24は、それぞれ、第2の光ファイバー107から出射される光L2の強度スペクトル、光学基板120へ入射した光L2の強度スペクトル、光学基板120で光L2が反射した直後の反射光RL2の強度スペクトル、第2の光ファイバー107へ入射した反射光RL2の強度スペクトルである。
【0040】
第2の光ファイバー106~109から出射される光L1~L4は、第2の光ファイバー106~109の開口数に対して広がり角度を有している。このため、図5に示されているように、第2の光ファイバー106、107の中央部分から出射される光(以下、「中央光」と称することもある。)の光軸に対して、第2の光ファイバー106、107の周縁部分から出射される光(以下、「外周光」と称することもある。)の光軸は、外周側に傾く。
【0041】
例えば、光ファイバーブロック104のブロック端面30が光学基板120の基板端面130に平行である場合、中央光は、光学基板120の基板端面130に垂直に入射し反射するのに対して、外周光は、光学基板120の基板端面130に対して傾いた方向から入射し、入射角度に応じた方向に反射される。このため、第2の光ファイバー106から光L1が出射されてから反射光RL1が受光されるまでの中央光及び外周光の光路長に差が生じる。したがって、外周光に基づく反射光RL1は、中央光に基づく反射光RL1よりも遅れて第2の光ファイバー106に戻る。
【0042】
このように、第2の光ファイバー106の出射端面における光L1の出射位置(中央部及び周縁部など)に応じて、同じ反射光RL1であっても検出時刻に差が生じる。よって、図4に示されているように、ピークP1~P4には、時間幅が生じる。
【0043】
上述したように、図3のステップS1において光検出動作が行われた後、光検出部110は、反射光RL1~RL4の検出結果を算出部111に出力する(ステップS2)。この検出結果は、図4に示されているような、反射光RL1~RL4に対応する複数のピークを有する光強度の時間変化のデータのことである。
【0044】
続いて、傾き算出部112は、光検出部110の検出結果に基づいて、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30の傾きを算出し、算出された傾きを傾き調整部115に出力する(ステップS3)。
【0045】
以下、ステップS3について、y軸周りの傾きθyを算出することを例に挙げて説明する。なお、本実施形態の説明では、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30が平行であるとき、x軸周りの傾きθx及びy軸周りの傾きθyがいずれも0度であるとする。
【0046】
図6は、第2の光ファイバー106、107と光ファイバーブロック104が図5に示す状態にあるときに検出される光強度の時間変化を示す図である。図6のΔt11及びΔt21は、光源100が光Lを出射した時刻tbから、光検出部110が反射光RL1及び反射光RL2を検出し始めるまでの時間である。
【0047】
ピークP1及びP2の時間における積算値AC1及びAC2は互いに異なる。また、ピークP1及びP2における時間幅W1及びW2も互いに異なる。以下、それら理由について説明する。なお、時間幅W1及びW2は、ピークP1、P2において光強度が最大値を示す時刻からピークP1、P2の最遅端を示す時刻までの時間である。
【0048】
図5に示されているように、光ファイバーブロック104のブロック端面30が光学基板120の基板端面130に対して所定角度傾いている場合、光L1、L2は、光学基板120の基板端面130に対して傾いて入射する。そして、反射光RL1、RL2は、光L1、L2の基板端面130への入射角度に応じた方向に進行する。このため、反射光RL1、RL2の一部は、第2の光ファイバー106、107に戻らない。その結果、第2の光ファイバー106、107は、反射光RL1、RL2の一部を受光できない。
【0049】
具体的には、光ファイバーブロック104のブロック端面30が光学基板120の基板端面130に対して傾いている場合、第2の光ファイバー106、107のそれぞれの出射端面と光学基板120の基板端面130との端面間距離が同じにならない。
【0050】
図5に示すように、端面間距離が長い(図5では、第2の光ファイバー107)ほど、反射光RL1、RL2の到達位置が第2の光ファイバー106、107の中心から大きくずれる。このため、第2の光ファイバー106、107に到達する反射光RL1、RL2の光量(強度スペクトルD14、D24の網掛け部分)にも違いが生じる。
【0051】
その結果、図6に示されているように、端面間距離が長いほど、光強度の時間変化におけるピークP1、P2の積算値AC1、AC2は小さくなる。
【0052】
また、端面間距離が長いほど、受光されない外周光が多くなるので、光強度のピークP1、P2は、比較的早く収束し、ピークP1、P2の最大値を示す時刻以降の時間幅W1、W2が短くなる。時間幅W1、W2は、全ピーク幅のうち、ピークP1、P2に対応する中央光が入射した時刻から、当該中央光の入射後に入射する外周光の入射時刻までの時間に相当する。
【0053】
傾き算出部112は、反射光RL1及びRL2の強度の時間変化に基づいて、ピークP1、P2の積算値AC1及びAC2を算出し、互いに比較する。また、反射光RL3及びRL4の強度の時間変化に基づいて、ピークP3、P4の積算値AC3及びAC4を算出し、互いに比較する。
【0054】
また、傾き算出部112は、反射光RL1及びRL2に対応するピークP1、P2の時間幅W1及びW2を算出し、互いに比較する。さらに、傾き算出部112は、反射光RL3及びRL4に対応するピークP3、P4の時間幅W3及びW4を算出し、互いに比較する。
【0055】
傾き算出部112は、以下(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)の比較結果に基づいて、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30のy軸周りの傾きθyを算出する。
(A1)積算値AC1と積算値AC2との比較結果
(A2)積算値AC3と積算値AC4との比較結果
(A3)時間幅W1と時間幅W2との比較結果
(A4)時間幅W3と時間幅W4との比較結果
【0056】
また、傾き算出部112は、以下(B1)、(B2)、(B3)及び(B4)の比較結果に基づいて、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30のx軸周りの傾きθxを算出する。
(B1)積算値AC1と積算値AC3との比較結果
(B2)積算値AC2と積算値AC4との比較結果
(B3)時間幅W1と時間幅W3との比較結果
(B4)時間幅W2と時間幅W4との比較結果
【0057】
図7は、上述の(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)、並びに、(B1)、(B2)、(B3)及び(B4)の比較結果と、傾きθx、θyとの対応関係を示す図である。
【0058】
積算値AC1と積算値AC3とが等しく、積算値AC2と積算値AC4とが等しく、時間幅W1と時間幅W3とが等しく、時間幅W2と時間幅W4とが等しい場合、傾きθxが0と判定できる。
【0059】
積算値AC1が積算値AC3よりも大きく、積算値AC2が積算値AC4よりも大きく、時間幅W1が時間幅W3よりも大きく、時間幅W2は時間幅W4よりも大きい場合、傾きθxが正と判定できる。傾きθxが正の状況とは、第2の光ファイバー106、107の出射端面が、第2の光ファイバー108、109の出射端面よりも、光学基板120のブロック端面30に近くなるように、光ファイバーブロック104のブロック端面30が傾いた状況のことである。
【0060】
積算値AC1が積算値AC3よりも小さく、積算値AC2が積算値AC4よりも小さく、時間幅W1が時間幅W3よりも小さく、時間幅W2は時間幅W4よりも小さい場合、傾きθxが負と判定できる。傾きθxが負の状況とは、第2の光ファイバー106、107の出射端面が、第2の光ファイバー108、109の出射端面よりも光学基板120の基板端面130から遠くなるように、光ファイバーブロック104のブロック端面30が傾いた状況のことである。
【0061】
積算値AC1と積算値AC2とが等しく、積算値AC3と積算値AC4とが等しく、時間幅W1と時間幅W2とが等しく、時間幅W3と時間幅W4とが等しい場合、傾きθyが0と判定できる。
【0062】
積算値AC1が積算値AC2よりも大きく、積算値AC3が積算値AC4よりも大きく、時間幅W1が時間幅W2よりも大きく、時間幅W3は時間幅W4よりも大きい場合、傾きθyが正と判定できる。傾きθyが正の状況とは、第2の光ファイバー106、108の出射端面が、第2の光ファイバー107、109の出射端面よりも、光学基板120の基板端面130に近くなるように、光ファイバーブロック104のブロック端面30が傾いた状況のことである。
【0063】
積算値AC1が積算値AC2よりも小さく、積算値AC3が積算値AC4よりも小さく、時間幅W1が時間幅W2よりも小さく、時間幅W3は時間幅W4よりも小さい場合、傾きθyが負と判定できる。傾きθyが負の状況とは、第2の光ファイバー106、108の出射端面が、第2の光ファイバー107、109の出射端面よりも光学基板120の基板端面130から遠くなるように、光ファイバーブロック104のブロック端面30が傾いた状況のことである。
【0064】
図3のステップS3において傾きθx及びθyが算出された後、傾き調整部115は、算出された傾きθx及びθyがいずれも所定角度以下であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0065】
傾きθx及びθyの少なくとも一方が所定角度よりも大きい場合(ステップS4で“NO”)、傾き調整部115は、算出された傾きθx及びθyに基づいて、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104の相対姿勢を調整する(ステップS5)。具体的には、ステップS5において、傾き調整部115は、傾きθx及びθyが0に近づくように、光ファイバーブロック104をx軸周り及びy軸周りに回転させる。
傾きθx及びθyがいずれも所定角度以下となるまで、すなわち光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30が平行とみなせるまで、ステップS1~S5の処理が実行され、光学基板120に対する光ファイバーブロック104の傾き(姿勢)が調整される。
【0066】
傾きθx及びθyがいずれも所定角度以下である場合(ステップS4のYES)、ステップS6以降の処理により、光ファイバーブロック104のブロック端面30と光学基板120の基板端面との端面間距離の調整が行われる。
まず、距離調整部116は、光ファイバーブロック104を、予め定められた設定距離移動させ、光学基板120に近づける(ステップS6)。
【0067】
以下、ステップS6で移動される前の光ファイバーブロック104の位置を第1の位置、第1の位置から設定距離移動された後の光ファイバーブロック104の位置を第2の位置と称す。
【0068】
次に、光学調整装置10は、光検出動作を実行する(ステップS7)。ステップS7の処理は、ステップS1の処理と同じである。
【0069】
続いて、光検出部110は、反射光RL1~RL4の検出結果を算出部111に出力する(ステップS8)。ステップS8の処理は、ステップS2の処理と同じである。
【0070】
次に、距離算出部113は、光検出部110の検出結果に基づいて、光学基板120の基板端面130と光ファイバーブロック104のブロック端面30との端面間距離を算出し、算出された距離を距離調整部116に出力する(ステップS9)。
【0071】
具体的には、距離算出部113は、光ファイバーブロック104が第1の位置に位置していた時の反射光RL1の強度の時間変化と、光ファイバーブロック104が第2の位置に位置しているときの反射光RL1の強度の時間変化とを比較する。
【0072】
図8Aは、第1の位置に光ファイバーブロック104が位置しているときの光検出部110による反射光RL1の検出結果の一例を示す図である。図8Bは、第2の位置に光ファイバーブロック104が位置しているときの光検出部110による反射光RL1の検出結果の一例を示す図である。
【0073】
図8AのΔt11及び図8BのΔt12は、光源100が光Lを出射した時刻tbから、光検出部110が反射光RL1を検出し始めるまでの時間であり、反射光RL1の強度の時間変化におけるピークP11、P12の位置を示す時間である。
【0074】
図8A図8Bに示すように、時間Δt11は、時間Δt12よりも大きい。ピークP11の最大強度I11は、ピークP12の最大強度I12よりも小さい。また、ピークP11の時間における積算値AC111は、ピークP12の時間における積算値AC112よりも小さい。
【0075】
時間Δt11が、時間Δt12よりも大きい理由は、光ファイバーブロック104が第1の位置に位置するときの反射光RL1の光路長が、光ファイバーブロック104が第2の位置に位置するときの反射光RL1の光路長よりも長いからである。
【0076】
以下、積算値AC111が、積算値AC112よりも小さい理由を説明する。
【0077】
図9A図9Bは、第2の光ファイバー106から出射された光L1が光学基板120の基板端面130で反射されて反射光RL1として第2の光ファイバー106に戻る様子を示す図である。図9A図9Bは、それぞれ、光ファイバーブロック104が第1の位置及び第2の位置にそれぞれ位置しているときの状態を示している。
【0078】
上述したように、第2の光ファイバー106から出射される光L1は、第2の光ファイバー106の開口数に対して広がり角度を有しているので、中央光の光軸に対して、外周光の光軸が外周側に傾く。よって、光ファイバーブロック104のブロック端面30に到達したときの反射光RL1の照射領域は、第2の光ファイバー106の出射端面よりも広がってしまう。したがって、第2の光ファイバー106の出射端面の外側に到達した反射光RL1は、第2の光ファイバー106に受光されない。
【0079】
図9A図9Bに示されているように、光ファイバーブロック104のブロック端面30(第2の光ファイバー106の出射端面)が光学基板120の基板端面130に近いほど、第2の光ファイバー106の出射端面に対する反射光RL1の照射領域の差が小さくなる。よって、第2の光ファイバー106に受光される反射光RL1の光量が多くなり、光検出部110によって検出される光量が多くなる。
【0080】
以上の理由から、積算値AC111は、積算値AC112よりも小さくなる。
【0081】
また、第2の光ファイバー106の出射端面が光学基板120の基板端面130に近いほど、光L1が広がりにくく、第2の光ファイバー106に対する中心光に基づく反射光と外周光に基づく反射光の到達時刻との差が生じにくい。そのため、ピークP11のピーク幅は、ピークP12のピーク幅よりも大きくなる。
【0082】
このように、積算値AC111と積算値AC112との差、及び、時間Δt11と時間Δt12との差に基づいて、光学基板120の基板端面130と光ファイバーブロック104のブロック端面30との端面間距離を算出することができる。
【0083】
図3のステップS9において端面間距離が算出された後、距離調整部116は、算出された端面間距離が、所定距離以下であるか否かを判定する(ステップS10)。算出された端面間距離が、所定距離よりも大きい場合(ステップS10のNO)、距離調整部116は、算出された端面間距離に基づいて、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30の相対位置を調整する(ステップS11)。具体的には、距離調整部116は、光ファイバーブロック104を、第2の位置よりも光学基板120に近づける。その後、光学基板120の基板端面130に対する光ファイバーブロック104のブロック端面30の距離が所定距離以下となるまで、ステップS7~S10の処理が実行される。
【0084】
なお、再度ステップS7~S10が実行されるときは、光ファイバーブロック104を移動させる前の位置を第1の位置、移動させた後の位置を第2の位置として、それぞれにおける反射光RL1の検出結果に基づいて端面間距離が算出される。
【0085】
算出された端面間距離が、所定距離以下である場合(ステップS10のYES)、光学調整装置10は、光学調整動作を終了する。
【0086】
なお、上述の光学調整の後、光学基板120の導波路121を伝搬する光の強度が最大となるように、xy平面における光ファイバーブロック104の位置が調整される。この調整動作、および、上述の光学調整動作により、第1の光ファイバー105の光軸が、光学基板120の導波路121に対して適切に調整される。
【0087】
上述した説明では、図3のステップS3において、光強度が最大値を示す時刻からピークの最遅端を示す時刻までの時間幅に基づいて、基板端面130に対するブロック端面30の傾きが算出されている。しかしながら、光強度が最大値を示す時刻からピークの最遅端を示す時刻までの時間幅を含むピーク幅に基づいた算出方法であれば、必ずしも、上述の算出方法でなくてもよい。例えば、ピークP1~P4の最早端を示す時刻から最遅端を示す時刻までの時間幅(全ピーク幅)に基づいて傾きが算出されてもよい。
【0088】
また、図3のステップS9において、反射光RL1に対応するピークP11、P12の位置を示す時間として、光源100が光Lを出射した時刻tbから光検出部110が反射光RL1を検出し始めるまでの時間Δt11およびΔt12に代えて、別の時間が用いられていてもよい。例えば、光源100が光Lを出射した時刻tbから、ピークP11、P12の最大強度を示す時刻までの時間が用いられてもよい。
【0089】
<光デバイス210>
図10は、本実施形態の光デバイス210を示す図である。光デバイス210は、第1の光ファイバー105と、光学基板120と、光ファイバーブロック104と、を備えている。光デバイス210は、第1の光ファイバー105及び測定用の第2の光ファイバー106~109を保持する光ファイバーブロック104が、位置決めされた状態で光学基板120に接続されることで形成される。
【0090】
光デバイス210において、光ファイバーブロック104と光学基板120は、接着剤層220により接着され、相対的な位置関係が保持されている。第1の光ファイバー105は、光学基板120の導波路121と光学的に接続される。図12では、光ファイバーブロック104が第2の光ファイバー106~109を保持しているが、第1の光ファイバー105の光学的な調整が完了した後は、必ずしも第2の光ファイバー106~109を保持していなくてもよい。光ファイバーブロック104が第2の光ファイバー106~109を保持する場合、第2の光ファイバー106~109は、挿通孔51~54にそれぞれ挿通されている。
【0091】
接着剤層220は、光ファイバーブロック104を光学基板120の基板端面130に固定する層である。
【0092】
以下、光デバイス210の形成過程を説明する。
【0093】
まず、上述の光学調整装置10を用いて、光学基板120に対する第1の光ファイバー105の相対姿勢及び相対距離の調整(光学調整動作)を実行する。これにより、光学基板120に対する光ファイバーブロック104の相対姿勢及び相対距離が適切に調整される。
【0094】
次に、光学基板120の導波路121を伝搬する光の強度が最大となるように、xy平面における光ファイバーブロック104の位置が調整される。この調整動作、並びに、上述の光学調整動作により、第1の光ファイバー105の光軸が、光学基板120の導波路121に対して適切に調整される。
【0095】
次いで、光ファイバーブロック104を光学基板120に固定する接着剤層220を形成する。このとき、接着剤層220は、光ファイバーブロック104と光学基板120が物理的に接続されるように接着剤が塗布され、硬化することで形成される。接着剤には、光に対する屈折率が調整されているものが用いられる。なお、図12の接着剤層220は、光ファイバーブロック104の側面と光学基板120の基板端面130とを接着しているが、光ファイバーブロック104のブロック端面30と光学基板120の基板端面130とを接続してもよい。
【0096】
その後、必要に応じて、第2の光ファイバー106~109を短く切断する。または、光ファイバーブロック104から第2の光ファイバー106~109を除去する。
【0097】
以上の過程を経て光デバイス210が形成される。
【0098】
本実施形態の光学調整装置10は、第1の光ファイバー105を接続先の光学基板120に接続する際に用いられる光学調整装置10であって、複数の第2の光ファイバー106~109を有し、複数の第2の光ファイバー106~109を介して単一波長を有する複数の光L1~L4を、互いに異なるタイミングで出射する測定光照射部103と、第1の光ファイバー105及び複数の第2の光ファイバー106~109の出射側端部を保持する光ファイバーブロック104と、光学基板120の基板端面130で反射した複数の光L1~L4に対応する複数の反射光RL1~RL4を、複数の第2の光ファイバー106~109を介して受光して、検出する光検出部110と、複数の反射光RL1~RL4ごとの強度の時間変化を互いに比較し、比較結果に基づいて光学基板120に対する光ファイバーブロック104の傾きθx,θyを算出する傾き算出部112と、複数の反射光RL1~RL4のうちの少なくとも1つの強度の時間変化に基づいて光学基板120と光ファイバーブロック104との端面間距離を算出する距離算出部と、を備える。
【0099】
光学調整装置10によれば、接続先の光学基板120に対する第1の光ファイバー105の傾きθx、θyが測定され、測定された傾きθx、θyに基づいて第1の光ファイバー105の傾きθx、θyを適切に調整することで、端面間距離を精度よく測定できる。ひいては、第1の光ファイバー105の光軸調整の精度を高めることができる。
【0100】
また、光学調整装置10は、光学基板120と光ファイバーブロック104との端面間距離を精度よく測定できるので、光軸調整時に光学基板120の導波路121と第1の光ファイバー105とが接触するのを回避できる。
【0101】
特許文献1の距離測定装置は、波長を周期的に変化させる光源を使用する必要がある。また、その距離測定装置は、波長が周期的に変化する光の強度を検出する受光器を使用する必要がある。さらに、距離測定装置は、光源の波長変化と同期した受光器の信号処理を実行できる信号処理装置が必要である。このように、特許文献1の距離測定装置を使用する場合、各装置の高機能化、複雑化、さらには大型化が伴う。
【0102】
本実施形態の光学調整装置10は、複数の光L1~L4を第2の光ファイバー106~109を介して互いに異なるタイミングで光学基板120に出射して、互いに異なるタイミングで反射光RL1~RL4を受光する構成を有するだけである。すなわち、簡易な構成で傾き及び距離の測定を実行できるので、各装置の高機能化、複雑化、及び、大型化が伴わない。このため、傾き及び距離測定用の装置、及び、当該測定に伴う工程の簡略化及び低コスト化を実現できる。
【0103】
また、複数の第2の光ファイバー106~109は、出射端面同士を相互に結ぶ複数の線が三角形を構成するように配置された3つの光ファイバー106~108を含む。よって、互いに直交する2つの軸(x軸及びy軸)周りの傾きθx、θyを測定できる。
【0104】
複数の第2の光ファイバー106~109は、互いに異なる光路長を有する。これにより、複数の光L1~L4の出射タイミングを容易に異ならせることができる。
【0105】
測定光照射部103は、単一波長を有する光を出射する光源100と、光源100から出射された光Lを互いに強度が等しい複数の光L1~L4に分岐し、複数の光L1~L4を複数の第2の光ファイバー106~109にそれぞれ導光する光カプラ102と、を備える。
【0106】
よって、複数の光源100を準備することなく、光検出部110は、反射光RL1~RL4を互いに異なるタイミングで検出できる。また、互いに異なる時間帯に、光源100が第2の光ファイバー106~109に対して光を出射する必要が無いので、反射光RL1~RL4の検出動作を早期に完了させることができる。
【0107】
傾き算出部112は、光学基板120に対する光ファイバーブロック104のx軸(第1の軸)周りの傾きθxと、x軸(第1の軸)に対して垂直なy軸(第2の軸)周りの傾きθyとを算出する。
【0108】
よって、光学基板120の基板端面130に対して光ファイバーブロック104のブロック端面30をより確実に平行にすることができる。
【0109】
傾きθx、θyを算出する際、傾き算出部112は、反射光RL1~RL4の強度の時間変化に基づいて、反射光RL1~RL4にそれぞれ対応するピークP1~P4の積算値AC1~AC4を算出し、積算値AC1~AC4を互いに比較する。
【0110】
また、傾き算出部112は、反射光RL1~RL4にそれぞれ対応する複数のピークP1~P4のピーク幅を互いに比較する。
【0111】
そして、傾き調整部115は、算出された傾きθx,θyに基づいて光学基板120に対する光ファイバーブロック104の相対姿勢を調整する。
【0112】
また、光学調整装置10は、光学基板120に対する光ファイバーブロック104の相対距離を調整する距離調整部116をさらに備える。
【0113】
端面間距離を算出する際、距離算出部113は、光ファイバーブロック104が異なる位置にあるときの反射光RL1の強度の積算値AC111、AC112の差分に基づいて、光学基板120と光ファイバーブロック104との端面間距離を算出する。
【0114】
また、距離算出部113は、光ファイバーブロック104が異なる位置にあるときの反射光RL1のピーク位置を示す時間Δt11、Δt12に基づいて、光学基板120と光ファイバーブロック104との端面間距離を算出する。
【0115】
本実施形態に係る光デバイス210は、第1の光ファイバー105と、導波路を有し、第1の光ファイバー105の接続先である光学基板120と、光学基板120に固定された光ファイバーブロック104と、を備えている。光デバイス210は、上述の光学調整方法を使用して形成されているので、光ファイバーブロック104は、第1の光ファイバー105を保持するだけでなく、相互に結ぶ複数の線が三角形を構成する挿通孔51~54を有する。
【0116】
また、上述したように、光デバイス210は、挿通孔51~54に挿通された第2の光ファイバー106~109を備えていてもよい。
【0117】
なお、実施形態では、光学調整装置10について、第1の光ファイバー105と、光学基板120の導波路121との接続を例に挙げて説明したが、第1の光ファイバー105と、基板に保持された別の光ファイバーとの接続においても同様に適用できる。
【0118】
(変形例)
光学調整装置10は、光カプラ102を有していなくてもよい。その場合、第2の光ファイバー106~109が別々に光源100に接続される。さらに、第2の光ファイバー106~109は、互いに同じ長さであってもよい。この場合、光源100が、それぞれ異なるタイミングで、光L1~L4を第2の光ファイバー106~109に出射する。
【0119】
光ファイバーブロック104は、少なくとも、出射端面同士を相互に結ぶ複数の線が三角形を構成するように配置された3本の第2の光ファイバーを有していればよい。
【0120】
図3のステップS3において、y軸周りの傾きを、上述の(A1)及び(A2)のみに基づいて算出してもよいし、上述の(A3)及び(A4)のみに基づいて算出してもよい。また、x軸周りの傾きを、上述の(B1)及び(B2)のみに基づいて算出してもよいし、上述の(B3)及び(B4)のみに基づいて算出してもよい。
【0121】
図3のステップS9では、同一の第2の光ファイバーを介して検出された反射光の検出結果同士を比較すればよい。つまり、第2の光ファイバー106以外の第2の光ファイバー107~109を介して検出された反射光RL2~RL4の検出結果同士を比較してもよい。また、複数の反射光RL1~RL4のそれぞれの検出結果に基づいて端面間距離を算出し、算出した端面間距離の平均をとってもよい。
【0122】
また、ステップS9において、ピークの積算値同士の比較結果のみに基づいて、端面間距離が算出されてもよいし、ピークの位置を示す時間同士の比較結果のみに基づいて距離が算出されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示は、接続先の光学基板に対する光ファイバーの傾き及び距離を測定する光学調整装置、光学調整方法、及び、光デバイスに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0124】
10 光学調整装置
30 ブロック端面
41 ホルダ
42 リッド
50 挿通孔
51 挿通孔
52 挿通孔
53 挿通孔
54 挿通孔
100 光源
101 サーキュレーター
102 光カプラ
103 測定光照射部
104 光ファイバーブロック
105 第1の光ファイバー
106 第2の光ファイバー
107 第2の光ファイバー
108 第2の光ファイバー
109 第2の光ファイバー
110 光検出部
111 算出部
112 傾き算出部
113 距離算出部
114 調整装置
115 傾き調整部
116 距離調整部
120 光学基板
121 導波路
130 基板端面
210 光デバイス
220 接着剤層
AC1 積算値
AC2 積算値
AC3 積算値
AC4 積算値
AC111 積算値
AC112 積算値
L 光
P1 ピーク
P2 ピーク
P3 ピーク
P4 ピーク
P11 ピーク
P12 ピーク
RL1 反射光
RL2 反射光
RL3 反射光
RL4 反射光
tb 時刻
W1 時間幅
W2 時間幅
W3 時間幅
W4 時間幅
Δt11 時間
Δt21 時間
Δt12 時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10