(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】自動ドリフト制御機能および高ダイナミックレンジを具備する補償光学アナライザ
(51)【国際特許分類】
G01J 3/42 20060101AFI20231201BHJP
G01J 3/06 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G01J3/42 Z
G01J3/06
(21)【出願番号】P 2019559745
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 US2018032344
(87)【国際公開番号】W WO2018209251
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-11
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519384633
【氏名又は名称】ネオリティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NEOLITICS,INC.
【住所又は居所原語表記】Neolitics,Inc.,7000 North Point Road,Unit 1,Sparrows Point,Maryland 21219,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン,シーン
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-532708(JP,A)
【文献】特開2013-101022(JP,A)
【文献】特開2001-264165(JP,A)
【文献】特開2011-185971(JP,A)
【文献】特開2012-022083(JP,A)
【文献】特開2000-180738(JP,A)
【文献】特開2004-245973(JP,A)
【文献】特開2008-139062(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0108721(US,A1)
【文献】米国特許第09316534(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第103592026(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G02B 5/18
G02B 5/30 - G02B 5/32
G02B 6/35
G02B 26/00 - G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光器であって:
スペクトルを持つ光線を放射する光源、
光の操作もしくは構造化に用いる少なくとも1つの静的光学エレメント、
ルーティング、減衰、エンコードの群から選択される少なくとも1つの光学的機能から、スペクトルソーティングの光学的機能を分けるために構成される少なくとも2つの補償光学エレメント、および
少なくとも1つの検出器を含み、
前記光源、少なくとも1つの静的光学エレメント、少なくとも2つの補償光学エレメントは、光源からの光を第1および第2の
別個の光チャネ
ルに導くように構成され、第1の光チャネルは、分析対象サンプルを含み、
前記少なくとも1つの検出器が、シングル検出器を含み、少なくとも2つの補償光学エレメントが、スペクトルバンドを第1および第2の光チャネルへルーティングおよびエンコードするように構成される、
前記分光器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検出器が、少なくとも2つの検出器を含み、少なくとも2つの補償光学エレメントが、スペクトルバンドを前記第1および第2の光チャネルへルーティングするように構成される、請求項1に記載の分光器。
【請求項3】
光源が広帯域光源である、請求項1に記載の分光器。
【請求項4】
光源が狭帯域光源である、請求項1に記載の分光器。
【請求項5】
第2の光チャネルが、分析対象サンプルを含まない、請求項1に記載の分光器。
【請求項6】
前記第2の光チャネルからの出力が、
前記第1の光チャネルの出力のための参照に用いられる、請求項1に記載の分光器。
【請求項7】
少なくとも1つの静的光学エレメントが、スリットおよび格子を含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項8】
少なくとも1つの静的光学エレメントが、マスクおよび格子を含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項9】
少なくとも1つの静的光学エレメントが、屈折用光学エレメントを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項10】
屈折用光学エレメントが、レンズを含む、請求項9に記載の分光器。
【請求項11】
少なくとも1つの静的光学エレメントが、反射用光学エレメントを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項12】
反射用光学エレメントが、ミラーを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項13】
補償光学エレメントが、マイクロミラーアレイを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項14】
補償光学エレメントが、ピエゾ素子型ミラーを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項15】
補償光学エレメントが、ファブリ・ペロー干渉計を含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項16】
補償光学エレメントが、動的な格子を含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項17】
動的な格子が、シリコン格子光弁を含む、請求項16に記載の分光器。
【請求項18】
動的な格子が、ピエゾ素子型チルト格子を含む、請求項16に記載の分光器。
【請求項19】
補償光学エレメントが、機械的に動作するバルク光学デバイスを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項20】
機械的に動作するバルク光学デバイスが、回転フィルターホイールを含む、請求項19に記載の分光器。
【請求項21】
機械的に動作するバルク光学デバイスが、スキャンモノクロメータを含む、請求項19に記載の分光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は著作権保護対象となるデータを含んでいる。著作権者は、特許・商標庁のファイルや記録について行われるあらゆる特許開示による複製に対して異議を申し立てない。ただし、その他の場合は全ての著作権を保持する。
【0002】
本発明は一般的に分光学とスペクトル分析の分野、特に補償光学エレメントおよび別個の光チャネルを使用する分光器に関連している。実施形態において、本発明は、光学計測、または、サンプルと参照チャネルを提供することでリアルタイムで計測または標準化を行うためのマイクロミラーアレイ(MMA)、ピエゾ素子型ミラー(PEM)、ファブリ・ペロー干渉計(FPI)などの補償光学エレメント(AOE)を利用する他のスペクトル計測のためのデバイスを含んでいる。
【背景技術】
【0003】
分光測色機、分光計、分光蛍光光度計やスペクトラムアナライザなどの分光器はテストサンプル(SUT)のスペクトルの特徴を検出し、表示するために様々な状況で使用されている。これらの特徴は学術または産業分野における分析のためのサンプルの構成分析に利用される。広範囲にわたるサンプルとソースの情報を提供する能力により、分光器は犯罪捜査における鑑識から科学分析、産業用モニタリング装置までさまざまな事業やその他の活動に使用されている。残念ながら分光器はSUTを分析またはスキャンする際、較正した状態を維持することが分光器そのものの能力に左右される。全ての分光器は周囲の状況変化に敏感で、徐々にドリフトしていく傾向があるという事実により、分光器は一般的に、様々な状況に対する調整、継続的なチェックおよび/または較正の再設定のために、オペレーターによる常時の介入が必要である。これは多くの産業への応用において商業的実行可能性を制限している。
【0004】
本発明者の以前の米国特許番号7,719,680と7,440,098は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。近年の技術革新において、本発明者はリアルタイムでドリフトを補正し信号を標準化するためのスペクトルソーティングおよびルーティングの両方の機能を有するシングルAOEを利用する光学アナライザにて長期ドリフトの問題を処理する光学システムを開発した。この技術革新は、ここ20年の分光学分野における産業的に実現可能な初の技術革新になりうる一方、各スペクトルバンドをスペクトル的にソーティング、ルーティング、エンコード、減衰するために必要な光学エレメントの数の問題から、弱い光学信号を精査する能力が限られている。スペクトル的にソーティングされたバンドは、リアルタイムで減衰させるために使われるそれぞれのスペクトルバンドの利用できるミラーの数を制限するMMAに同時に映されるという事実から、高SN比(SNR)を維持する間、HDR搭載の信号を分析する能力がよりいっそう制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
少なくとも2つの補償光学エレメント(AOE)と少なくとも2つの別個光チャネルとそれらと結びついた1つまたは複数の検出器を利用するために設計された分光器であって、少なくとも1つのAOEがスペクトルソーティングのために利用され、少なくとも1つのAOEが光ルーティング、スペクトルのエンコード、またはスペクトル減衰、またはそれらの任意の組み合わせのために、少なくとも2つの別個光チャネルの間で使用されている。AOEが調和して機能する場合、技術革新は時間と環境刺激の変化によってドリフトする光信号のリアルタイムないしほぼリアルタイムでの計測と標準化を可能にし、スペクトルの特徴が4ディケード(decades)を超える測光ダイナミックレンジで高SN比(SNR)の光学システムを要求する光信号の最適化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の前述および他の対象、特徴、利点は、以下に示す、図面とともに示すより詳細な好ましい実施形態の説明により明らかにする。それらの特徴は、様々な観点から同じ部分に言及している。図面は必ずしも原寸大ではなく、代わりに発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【0007】
【
図1】
図1は以前の技術革新による
分散後の実施形態を示している。
【0008】
【
図2】
図2は本発明による
分散前の実施形態を示している。
【0009】
【
図3A】
図3Aは本開発者の
以前の技術革新
の1つよりも光を減衰させる
本発明の強化された能
力を示している。
【
図3B】
図3Bは本開発者の
以前の技術革新
の1つよりも光を減衰させる
本発明の強化された能
力を示している。
【0010】
【
図4】
図4は
、それぞれの光チャネル
に共通の検出器を利用する
、現在開示されている発明の
代替の分
散前の実施形態を示している。
【0011】
【
図5A】
図5Aは
、それぞれの光チャネル
に共通の検出器を利用する
、現在開示されている発明の
代替の分
散後の実施形態を示している。
【0012】
【
図5B】
図5Bは
、それぞれの光チャネル
に別の検出器を利用する
、現在開示されている発明の
代替の分
散後の実施形態を示している。
【0013】
【
図6A】
図6Aは
、反射分光学のため
にそれぞれの光チャネル
に別
々の検出器を利用する
、開示されている発明の分
散前の実施の一実施形態を示している。
【0014】
【
図6B】
図6Bは
、透過分光学のため
にそれぞれの光チャネル
に別
々の検出器を利用する
、開示されている発明の分
散前の実施の簡略化された実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態に関する詳細な参照を行う。その例は、添付の図面で示されている。以下の説明および図面は実例であり、制限と解釈されるべきではない。多くの特定の詳細が、全体を理解するために記載される。ただし、特定の例において、広く知られているもしくは慣習的な詳細については説明が不明瞭になることを避けるため記載されない。本開示における1つまたは1つの実施形態の参照は、必ずしも同じ実施形態についての参照ではなく、そして、そのような参照は少なくとも1つを意味する。
【0016】
この明細書における「ある実施形態」もしくは「その実施形態」の参照は、実施形態と関連して記載された特定の機能、構造もしくは特徴が、本開示の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。本明細書のあらゆる場所での「ある実施形態における」というフレーズの出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を言及するものではなく、また他の実施形態と互いに排他的な別々のまたは代替の実施形態でもない。さらに、いくつかの実施形態で発現し、他の実施形態で発現しない可能性がある様々な特徴が記載されている。同じように、いくつかの実施形態のための要件となるが他の実施形態のための要件とはならない可能性がある様々な要件が記載されている。
【0017】
好ましい実施形態において、この技術革新は、光ソーティングおよびルーティング機能を、2つの独立した光チャネルの間のスペクトルルーティングおよび減衰のためのMMAと連結したスペクトルソーティングのためのFPIを使用して分ける。第1の光チャネルはSUTと接続されており、第2の光チャネルは開かれたままか、安定した標準目盛と接続されている。好ましい実施形態において、光は、サンプル(すなわち、分散前光アナライザ)と接続する前に、FPIによってスペクトルにソーティング(フィルター)されて、MMAによりルーティングされる。好ましい実施形態において、スペクトルにソーティングされた光は、MMAがスペクトルルータに加えて光減衰器の機能を果たすことができるように、1つより多いマイクロミラーにわたってMMA上でコリメートされ、映される。
【0018】
図1において
先行発明の
実施形態によるシステムが表されている。この
実施形態においては、シングルAOEは、スペクトルソーティング、ルーティング、エンコード、減衰の光学的機能を果たしている。
図1に
表された
実施形態による光学的経路は以下の通りである。光は光源(1)を出て、レンズ(2)を通過し、サンプル(3)を通過し、第2のレンズ(4)を通過し、スリット(5)を通過し、格子(6)を通過し、オーダーソーティングフィルター(7)を通過し、全ての光学的機能を果たすAOE(8)を通過し、格子(9)を通過し、第2のレンズ(10)を通過し、そして最後に検出器(11)に当たる。
【0019】
ソーティングとルーティングの機能を分けることにおいて、本技術革新は大幅に拡大されたダイナミックレンジを持つシステムの構造を可能にする。
【0020】
図2は本発明の
実施形態によるシステムを表している。
表された実施形態による光学的経路は以下の通りである。光(広帯域もしくは狭帯域であり得る)は、光源(21)を出て、レンズ(22)を通過し、第1のソーティング用のAOE(23)を通過し、ルーティング、エンコーディング、および/または減衰用の第2のAOE(24)を通過し、サンプル(25)を通過し、第2のレンズ(26)を通過し、検出器(27)に当たる。レンズ(22)の代替
としてもしくはそれに加えて、本発明では、スリットおよび格子、マスクおよび格子もしくはミラーを使用してもよい。AOEは、例えばピエゾ素子型ミラー、ファブリ・ペロー干渉計、もしくはシリコン格子光弁もしくはピエゾ素子型チルト格子などの動的な格子などでもよい。AOEは
、回転フィルターホイールやスキャンモノクロメータなどの
機械的に動作するバルク光学デバイスを含むことができる。
【0021】
本技術革新は感度
の大
幅な向
上、およびHDRにより入力を減衰させ
る(すなわちスケール)
能力の2~3
桁の向上
を提供することができる。
図2に
表されている
実施形態
において、システムのダイナミックレンジを2~3
桁拡大させる能力は、1つ
より多いAOE
の使用を通じてスペクトルソーティン
グおよび光ルーティングという光学的機能を分ける
ことの直接的な結果
である。
【0022】
図3は、シングルAOEとデュアルAOE両方の
実施形態の構成要素を
表している。
図は、スペクトルソーティングおよび光ルーティングという光学的機能
を分離することが、どのようにして分光器
のダイナミックレンジを
物理的に3
ディケード(decades)以上拡大しているか
を示
している。
【0023】
さらに、
図3Aおよび3Bでは、スペクトルソーティングおよびルーティングという光学的機能を分離させることが、光をスペクトルバンドにスペクトル的にソートする能力がAOEのサイズおよび構造により物理的に制限されている
図1の機器よりも、明らかに多くのスペクトルチャネルを
潜在的に分析できるスペクトラムアナライザ製作につながるかが示されている。
図3Aは、以前の技術革新に
おけるシングルAOEが、どのようにソーティング、減衰、ルーティングという光学的機能を果たしていたかを示している。
図3Bは、本発明によるダブルAOEが、ど
のようにソーティング、減衰、ルーティングの光学的機能を分け、以前の技術革新に対して、分光器が光を減衰させる能力を大きく強化した
かを示している。
【0024】
図2の好ましい
実施形態は分散前であるものの、本技術革新を利用した分散後のデザインを提示することも可能である
。シングル検出器およびダブル検出器の
分散後の実施形態は、
図5Aと
図5Bにそれぞれ
表されている。
【0025】
図6Aは、それぞれの光チャネルに対し、反射分光学のために別
々の検出器を利用する、開示される発明の分散前の
実施形態を示している。
図6Bは、それぞれの光チャネルに対し、透過分光学のために別
々の検出器を利用する、開示される発明の分散前の
実施の簡素化された
実施形態を示している。
【0026】
当業者は、本技術革新によって、MMAはもはや光のスペクトル的なソーティングに必要ないことから、同時的もしくは連続的に、スペクトルバンドをダブル検出器実施形態における両方の光チャネルに向けてルーティングする、もしくは、同時的もしくは連続的に、スペクトルバンドをシングル検出器実施形態における両方の光チャネルに向けてルーティング、およびエンコードすることができると理解するだろう。
【0027】
さらに、当業者は、シングルエレメントPRMなどの第3のAOEを、スペクトルバンドをエンコードする独立したパルス幅変調(PWM)に用いることができる可能性があり、減衰およびルーティングについて同等の結果を出せる可能性があると理解するだろう。