(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231201BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20231201BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20231201BHJP
C08K 7/28 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/06
C08K5/10
C08K7/28
(21)【出願番号】P 2020028764
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 勤
(72)【発明者】
【氏名】大城 智史
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 友則
(72)【発明者】
【氏名】宇野 克彦
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-057629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~50重量パーセントの範囲内の水不溶性樹脂と、10~30重量パーセントの範囲内の多孔質物質と、
前記水不溶性樹脂および前記多孔質物質以外の部分である残部とを含む樹脂組成物であって、
前記多孔質物質は多孔質ガラスであり、
前記残部は界面活性剤を含み、
前記界面活性剤は非イオン化界面活性剤であり、
前記非イオン化界面活性剤はオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤であり、
前記水不溶性樹脂に対する前記多孔質物質の体積比は6/52以上である
樹脂組成物。
【請求項2】
前記残部はグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、および、プロピレングリコール脂肪酸エステルの少なくとも1つにより構成されるエステルをさらに含む
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤
の重量パーセントは12~23重量パーセントの範囲内である
請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エステル
の重量パーセントは23~38重量パーセントの範囲内である
請求項2または3に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、徐放性を備える樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤と多孔質構造の無機物質とを組み合わせた撥水抑制剤が知られている。特許文献1は、培養土または土壌の親水性を向上させる徐放性を備えた撥水抑制剤の構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される撥水抑制剤は、撥水抑制剤が微小の粒子状に形成され、使用時に多数の撥水抑制剤が培養土または土壌中に混合される。このため培養土または土壌の広い環境に対して作用する。一方で、家電製品のタンク内等の比較的小さい範囲において作用させる場合には、微小の粒子を樹脂で包埋し1つまたは複数の塊として配置することでユーザビリティが向上する。しかしその場合、樹脂の影響により撥水抑制剤の徐放性が低下する可能性がある。
本開示は、上記課題を解決するための発明であり適切な徐放性を備えた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に関する樹脂組成物は、20~50重量パーセントの範囲内の水不溶性樹脂と、10~30重量パーセントの範囲内の多孔質物質と、残部から形成される樹脂組成物であって、前記残部が少なくとも非イオン化界面活性剤を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示に関する樹脂組成物によれば、適切な徐放性を備えた樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態の樹脂組成物が使用される家電製品の一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(樹脂組成物が取り得る形態の一例)
本開示に関する樹脂組成物は、20~50重量パーセントの範囲内の水不溶性樹脂と、10~30重量パーセントの範囲内の多孔質物質と、残部から形成される樹脂組成物であって、前記残部が少なくとも非イオン化界面活性剤を含む。
上記樹脂組成物によれば、水不溶性樹脂および多孔質物質の重量比が所定の範囲内に設定されるために、残部の非イオン化界面活性剤が外部環境に対して適切に徐放される。
【0009】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記多孔質物質は、多孔質ガラスであり、前記非イオン化界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤である。
上記樹脂組成物によれば、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤であるため、家電製品の内面にたいして好適な濡れ性の改良が実現できる。
【0010】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記残部は、エステルをさらに含む。
上記樹脂組成物によれば、エステルにより非イオン化界面活性剤の徐放性が調節されるため、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤をより適切に徐放できる。
【0011】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤は、12~23重量パーセントの範囲内である。
上記樹脂組成物によれば、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤の重量比が所定の範囲内に設定されるため、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤をより適切に徐放できる。
【0012】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記エステルは、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、および、プロピレングリコール脂肪酸エステルの少なくとも1つにより構成される。
上記樹脂組成物によれば、エステルの重量比が所定の範囲内に設定されるため、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤をより適切に徐放できる。
【0013】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記エステルは、23~38重量パーセントの範囲内である。
上記樹脂組成物によれば、エステルの重量比が所定の範囲内に設定されるため、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤をより適切に徐放できる。
【0014】
(実施の形態)
本実施の形態の樹脂組成物10は、例えば液体を利用する家電製品の内部に配置され、家電製品の使用時に樹脂組成物10が液体と接触することで、樹脂組成物10に含まれる物質を液体中に徐放する。物質は、種々の機能性物質により構成される。一例では、機能性物質は、界面活性剤である。液体を利用する家電製品100は、例えばスチームアイロン、エアコンディショナ、洗濯機、食器洗浄乾燥機、および、電気ケトルである。図示される家電製品の例は、スチームアイロンである。家電製品100は、内部に液体を貯蔵するタンク110、液体を出力するベース面120、ユーザが把持する把持部130、および、樹脂組成物10を保持するケース140を備える。液体の一例は、水である。樹脂組成物10は、タンク110の内部に移動可能に配置されてもよい。タンク110は、液体を供給する供給口111および液体を放出する放出口112をさらに備える。
【0015】
樹脂組成物10を構成する主な物質は、水不溶性樹脂、多孔質物質、および、残部である。水不溶性樹脂は、残部および多孔質物質を保持する。水不溶性樹脂は、水に対して不溶の任意の材料により構成される。水不溶性樹脂を構成する材料の一例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンレテレフタレート、および、アクリル変性ポリエチレンである。好ましくは、水不溶性樹脂の融点は100℃以上である。
【0016】
多孔質物質は、細孔を含む。多孔質物質は、例えば細孔の内部に残部を保持する。多孔質物質は、例えば多孔質ガラス、活性炭、ゼオライト、および、ポーラスコンクリートの少なくとも1つで構成される。好ましくは、多孔質物質は多孔質ガラスである。より好ましくは、多孔質ガラスはアモルファスシリカである。多孔質物質は、例えば粒子状に形成される。多孔質物質の粒径、比表面積、細孔径、および、吸油量は、徐放性を備えるのに適した値が任意に設定される。一例では、多孔質物質の粒径は平均5μmである。一例では、多孔質物質の比表面積は、700m2/gである。一例では、多孔質物質の細孔径は11nmである。多孔質物質の吸油量は、400ml/100gである。
【0017】
残部は、樹脂組成物10のうち水不溶性樹脂および多孔質物質以外の部分である。残部は、少なくとも界面活性剤を含む。好ましくは、界面活性剤は非イオン化界面活性剤である。非イオン化界面活性剤は、好ましくはオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤である。オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤の一例は、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである。オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤割合は、好ましくは30~70重量パーセントの範囲内である。より好ましくは、40~60重量パーセントの範囲内である。オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤は、例えばタンク110の内面110A、放出口112の内面112A、および、図示しないベース面120に対してタンク110の液体を供給する流路の内面の濡れ性を改良する。具体的には、流路の内面の親水性を向上させる。
【0018】
残部は、エステルをさらに含む。エステルは、例えば乳化剤としての作用を備えることが好ましい。エステルは、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、および、ショ糖脂肪酸エステルの少なくとも1つにより構成される。残部は、その他の界面活性剤、塩類、消泡剤、増粘剤、減粘剤、香料、着色料、および、pH調整剤の少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。
【0019】
樹脂組成物10の製造方法の一例について説明する。
水不溶性樹脂、多孔質物質、および、界面活性剤を加熱混錬して樹脂組成物10のストランドが形成される。加熱混錬は、例えば2軸押し出し式混錬機を使用して、140~180℃の条件で実行される。ストランドは、細断されペレットが形成される。ペレットを射出成型することで、所定の形状の樹脂組成物10が形成される。所定の形状の一例は、楕円形状である。別の例では、所定の形状の一例は、板形状である。
図1に示される樹脂組成物10の形状は、楕円形状である。
【0020】
本願発明者は、各比較例および各実施例の樹脂組成物10を作成し、第1比較試験および第2比較試験に供した。第1比較試験と第2比較試験とは、試験の手順は同様である。第1比較試験と第2比較試験とは、比較例および実施例の樹脂組成物10の構成が異なる。
【0021】
第1比較試験では、界面活性剤、多孔質物質、および、水不溶性樹脂のそれぞれの適切な重量比および体積比を検討した。第1比較試験では、比較例1~6および実施例1~7の樹脂組成物10を作成して試験に供した。第1比較試験では、界面活性剤としてオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を使用した。多孔質物質として、多孔質ガラスを使用した。水不溶性樹脂として、アクリル変性ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、ポリアミドの少なくとも1つを使用した。
【0022】
第1比較試験における比較例1の樹脂組成物10は、残部の界面活性剤の重量比が0.10、多孔質ガラスの重量比が0.03、水不溶性物質のアクリル変性ポリエチレンが0.87となるように製造された。残部は、界面活性剤以外の構成を含まない。比較例2~6の樹脂組成物10は、残部の界面活性剤の重量比が0.30~0.35の範囲内、多孔質ガラスの重量比が0.09~0.11の範囲内、水不溶性物質のアクリル変性ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、ポリアミドが0.54~0.61の範囲内となるように製造された。残部は、界面活性剤以外の構成を含まない。
【0023】
第1比較試験における実施例1~7の樹脂組成物10は、残部の界面活性剤の重量比が0.40~0.55の範囲内、多孔質ガラスの重量比が0.13~0.17の範囲内、水不溶性物質のアクリル変性ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、ポリアミドが0.28~0.47の範囲内となるように製造された。残部は、界面活性剤以外の構成を含まない。
【0024】
第2比較試験では、界面活性剤およびエステルの適切な重量比を検討した。第2比較試験では、比較例2~7および実施例1~10の樹脂組成物10を作成して試験に供した。第2比較試験では、界面活性剤としてオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を使用した。エステルとして、グリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルを利用した。多孔質物質として、多孔質ガラスを使用した。水不溶性樹脂として、アクリル変性ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリアミドの少なくとも1つを使用した。多孔質ガラスおよび水不溶性樹脂の重量比は、比較例2~7および実施例1~10のすべてで同一である。
【0025】
第2比較試験における実施例10の樹脂組成物10は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を0.46の重量比で含み、グリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルを含まない。水不溶性樹脂として、アクリル変性ポリエチレンを含む。
【0026】
第2比較試験における比較例2の樹脂組成物10は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を含まない。エステルとしてグリセリン脂肪酸エステルを0.46の割合で含み、ソルビタン脂肪酸エステルを含まない。水不溶性樹脂として、アクリル変性ポリエチレンを含む。
【0027】
第2比較試験における比較例3の樹脂組成物10は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を含まない。エステルとしてソルビタン脂肪酸エステルを0.46の割合で含み、グリセリン脂肪酸エステルを含まない。水不溶性樹脂として、アクリル変性ポリエチレンを含む。
【0028】
第2比較試験における比較例4~7の樹脂組成物10は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を含まない。グリセリン脂肪酸エステルを0.35の割合で含み、ソルビタン脂肪酸エステルを0.11の割合で含む。水不溶性樹脂として、比較例4ではアクリル変性ポリエチレン、比較例5ではポリエチレン、比較例6ではポリプロピレン、比較例7ではポリアミドを含む。
【0029】
第2比較試験における実施例1~3の樹脂組成物10は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、および、ソルビタン脂肪酸エステルを任意の割合で含む。水不溶性樹脂として、アクリル変性ポリエチレンを含む。
【0030】
第2比較試験における実施例4の樹脂組成物10は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を0.15の割合で含み、グリセリン脂肪酸エステルを0.31の割合で含む。ソルビタン脂肪酸エステルは、含まない。水不溶性樹脂として、アクリル変性ポリエチレンを含む。
【0031】
第2比較試験における実施例5の樹脂組成物10は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を0.15の割合で含み、ソルビタン脂肪酸エステルを0.31の割合で含む。グリセリン脂肪酸エステルは、含まない。水不溶性樹脂として、アクリル変性ポリエチレンを含む。
【0032】
第2比較試験における実施例6~8の樹脂組成物10は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を0.15の割合で含み、グリセリン脂肪酸エステルを0.23の割合で含み、ソルビタン脂肪酸エステルを0.08の割合で含む。水不溶性樹脂として実施例6ではポリエチレン、実施例7ではポリプロピレン、実施例8ではポリアミドを含む。第2比較試験における実施例9の樹脂組成部物は、水不溶性樹脂としてアクリル変性ポリエチレンを含み、エステルとしてプロピレングリコール脂肪酸エステルを0.31の割合で含む。
【0033】
第1比較試験および第2比較試験は、以下の手順で実行された。各比較例および実施例の樹脂組成物10と同じ数のビーカーに各比較例および実施例の樹脂組成物10を1個ずつに投入し、100mlの水を添加した。各比較例および実施例の樹脂組成物10の重量は、0.5gである。水を添加した5分後にビーカー内の水を採取し、水中の界面活性剤の濃度を測定した。水中の界面活性剤の濃度は、吸光光度計により測定された。水を採取後、各比較例および実施例の樹脂組成物10を乾燥させた。乾燥の時間は30分である。乾燥した樹脂組成物10の重量を測定し、残存率を算出した。上記の手順は、20回を1セットとして、複数回実施した。表示される残存率は、複数回実施した結果の平均値である。また、ビーカー内の水中における界面活性剤の濃度が検出限界を下回った場合、その時の残存率を20回繰り返した後の残存率として記録した。
【0034】
表1を参照して試験結果について説明する。
【表1】
【0035】
比較例1~6の樹脂組成物10は、72パーセントから76パーセントの残存率を示した。実施例1~7の樹脂組成物10は、40~64パーセントの残存率を示した。比較例1~6の樹脂組成物10は、高い残存率を示した。比較例の樹脂組成物10は、樹脂組成物10に含まれる界面活性剤が水中に適切に徐放されなかったことを示す。一方で、実施例1~7の樹脂組成物10は、比較例と比較すると低い残存率を示した。これは、樹脂組成物10に含まれる界面活性剤が水中に適切に徐放されたことを示す。実施例の樹脂組成物10の条件において多孔質ガラスによるパーコレーション効果が適切に発現した。
【0036】
第1比較試験からは、以下の知見を得られる。
樹脂組成物10における好ましい水不溶性樹脂の重量パーセントは、20~50重量パーセントの範囲内である。より好ましくは、水溶性樹脂の重量パーセントは、30~40重量パーセントの範囲内である。樹脂組成物10における好ましい多孔質物質の重量パーセントは、10~30重量パーセントの範囲内である。より好ましくは、14~16重量パーセントである。樹脂組成物10における好ましい界面活性剤の重量パーセントは、40~60重量パーセントの範囲内である。より好ましくは、界面活性剤の重量パーセントは、45~50重量パーセントの範囲内である。
【0037】
表2を参照して試験結果について説明する。_
【表2】
【0038】
実施例10の樹脂組成物10は、89パーセントの残存率を示した。比較例2~7の樹脂組成物10は、99パーセント以上の残存率を示した。実施例1~9の樹脂組成物10は、95~98パーセントの残存率を示した。比較例2~7の結果は、エステルのほとんどは水中に徐放されないことを示す。実施例1~9の結果は、エステルの添加により徐放性が向上していることを示す。
【0039】
第2比較試験の結果からは、以下の知見を得られる。
樹脂組成物10における界面活性剤に対するエステルの含有率を変更することで、適切な徐放性が得られる。樹脂組成物10における好ましい界面活性剤の重量パーセントは、12~23重量パーセントの範囲内である。より好ましくは、界面活性剤の重量パーセントは、15重量パーセントである。樹脂組成物10における好ましいエステルの重量パーセントは、23~38重量パーセントの範囲である。より好ましくは、樹脂組成物10におけるエステルの重量パーセントは、31重量パーセントである。好ましくは、樹脂組成物10の界面活性剤に対して2倍のエステルが含まれる。
【0040】
本実施の形態の樹脂組成物10の作用について説明する。
ユーザは、樹脂組成物10を家電製品100のタンク110の内部に入れる。樹脂組成物10は、タンク110の内部に水が供給されるごとに樹脂組成物10に含まれる界面活性剤を徐放する。界面活性剤は、タンク110の内面110A、放出口112の内面112A、および、図示しないベース面120に対してタンク110の液体を供給する流路の内面と接触する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示に関する樹脂組成物は、例えばスチームアイロン、エアコンディショナ、洗濯機、食器洗浄乾燥機、および、電気ケトルなどの液体を利用する家庭用および業務用の家電製品に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
10 :樹脂組成物
100 :家電製品
110 :タンク
120 :ベース面
130 :把持部
140 :ケース