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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】真空断熱容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
B65D81/38 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021052738
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150233
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 優大
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 秀司
(72)【発明者】
【氏名】小島 真弥
(72)【発明者】
【氏名】大河 政文
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊明
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037445(JP,A)
【文献】特開2019-065995(JP,A)
【文献】特開2015-168465(JP,A)
【文献】特開2007-283989(JP,A)
【文献】特開2020-083428(JP,A)
【文献】特表2020-519537(JP,A)
【文献】特開2011-102622(JP,A)
【文献】特開2010-143602(JP,A)
【文献】特開2021-008311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口および前記開口に通じる収容空間を有する容器本体と、前記容器本体の前記開口を覆う蓋体と、を備え、
前記容器本体は、
非金属材料の成形体でありガスバリア性を有する二重壁構造の第1外皮材、前記第1外皮材の壁間に収容された第1芯材、および、前記第1外皮材の壁間に収容されて外部と通信可能な圧力センサ、を含むと共に前記第1外皮材の壁間が減圧された断熱容器体を有し、かつ、前記圧力センサは前記断熱容器体の下部に設けられており、
前記蓋体は、
金属層を含みガスバリア性を有する可撓性のフィルムを袋状にした第2外皮材、および、前記第2外皮材の内部に収容された第2芯材、を含むと共に前記第2外皮材の内部が減圧された断熱蓋体と、
前記断熱蓋体の前記第2外皮材の表面を視認可能な可視部と、を有する、
真空断熱容器。
【請求項2】
前記蓋体は、前記断熱蓋体を収容する蓋ケースを有し、前記蓋ケースには前記可視部を成す窓が形成されている、
請求項1に記載の真空断熱容器。
【請求項3】
前記断熱容器体の前記第1外皮材の壁間に配設された第1気体吸着材と、前記断熱蓋体の前記第2外皮材の内部に配設された第2気体吸着材とを有し、
前記第2気体吸着材による気体の吸着能力の寿命は、前記第1気体吸着材による気体の吸着能力の寿命よりも長い、
請求項1又は2に記載の真空断熱容器。
【請求項4】
前記容器本体は、前記断熱容器体の外面を覆う保護部材を更に備え、
前記保護部材において、前記断熱容器体に設けられた前記圧力センサに対応する部分には、他の部分に比べて凹んだ凹部が形成されている、
請求項1~3の何れかに記載の真空断熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内部の温度を長時間にわたって維持する真空断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物を保冷する容器として、特許文献1に開示されているような断熱容器が知られている。特許文献1の断熱容器は、直方体形状を成して開口を有する容器と、容器の開口を開閉する上蓋とを有している。また、容器および上蓋は二重壁構造を成しており、容器の各面および上蓋の計6か所の壁間に、平板状の真空断熱材が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-126188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、真空断熱材は、外皮材を通じて、あるいは、外皮材同士の接着界面を通じて、気体が内部に侵入し得る。そのため、真空断熱材の断熱性能は長期的に見ると経年劣化する。また、使用中に受ける外力によって外皮材が損耗することでも断熱性能の低下が生じうる。そのため、例えば医薬品の輸送などのように厳しい温度管理が求められる使用を想定する場合は特に、真空断熱材の断熱性能を適時に検査する必要がある。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の断熱容器の場合、上述したように容器および上蓋の計6か所に、互いに独立した6つの真空断熱材を備える。このため、これら6つの真空断熱材について個別に検査を実施する必要があり、検査作業に手間および時間を要する。
【0006】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、検査作業を容易に実施することができる真空断熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る真空断熱容器は、開口および前記開口に通じる収容空間を有する容器本体と、前記容器本体の前記開口を覆う蓋体と、を備え、前記容器本体は、非金属材料の成形体でありガスバリア性を有する二重壁構造の第1外皮材、前記第1外皮材の壁間に収容された第1芯材、および、前記第1外皮材の壁間に収容されて外部と通信可能な圧力センサ、を含むと共に前記第1外皮材の壁間が減圧された断熱容器体を有し、前記蓋体は、金属層を含みガスバリア性を有する可撓性のフィルムを袋状にした第2外皮材、および、前記第2外皮材の内部に収容された第2芯材、を含むと共に前記第2外皮材の内部が減圧された断熱蓋体と、前記断熱蓋体の前記第2外皮材の表面を視認可能な可視部と、を有する。
【0008】
この構成によれば、容器本体が備える断熱容器体は、成形体から成る二重壁構造を有するため、例えば直方体形状の断熱容器体であっても、壁間空間を連通させた状態に成形できる。また、断熱容器体を構成する第1外皮材は非金属製であるため、収容された圧力センサが発信する電波を外部へ透過できる。それゆえ、断熱容器体は、例えば1つの圧力センサによって、その断熱性能を測定することができる。一方、蓋体が備える断熱蓋体は、金属層を含む可撓性のフィルムから成る第2外皮材を有する。ゆえに、断熱蓋体内に気体が進入して断熱性能が低下した場合には、第2外皮材が膨らむなどその表面が変形する。そして、このような第2外皮材の変形は、可視部を通じて視認可能である。以上のように、本開示に係る真空断熱容器は、その断熱容器体は圧力センサにより例えば1回で検査でき、断熱蓋体は目視によって適時に検査できるゆえ、検査作業が容易になる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る真空断熱容器は、第1の態様において、前記蓋体は、前記断熱蓋体を収容する蓋ケースを有し、前記蓋ケースには前記可視部を成す窓が形成されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、蓋ケースによって断熱蓋体を保護しつつ、窓を通じて断熱蓋体の第2外皮材の変形の有無を目視で確認することができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る真空断熱容器は、第1又は第2の態様において、前記断熱容器体の前記第1外皮材の壁間に配設された第1気体吸着材と、前記断熱蓋体の前記第2外皮材の内部に配設された第2気体吸着材とを有し、前記第2気体吸着材による気体の吸着能力の寿命は、前記第1気体吸着材による気体の吸着能力の寿命よりも長いものであってもよい。
【0012】
この構成によれば、断熱蓋体の方が断熱容器体よりも断熱性能の寿命が長い。ゆえに、検査により断熱容器体の断熱性能の維持を確認できれば、基本的に断熱蓋体の断熱性能も維持できていると判断することができる。従って、断熱蓋体に対する目視検査の頻度を少なくできるため、検査作業をより容易化できる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る真空断熱容器は、第1~第3の何れかの態様において、前記容器本体は、前記断熱容器体の外面を覆う保護部材を更に備え、前記保護部材において、前記断熱容器体に設けられた前記圧力センサに対応する部分には、他の部分に比べて凹んだ凹部が形成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、保護部材により使用中に加わる外力から断熱容器体を保護することができると共に、断熱性能の検査時には、保護部材の凹部に検査用の受信装置を外部から押し入れて、圧力センサからの電波を受信することができる。これにより、非常に近距離での通信しかできない通信仕様による場合であっても、確実に圧力センサからの電波を受信でき、正確な検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、検査作業を容易に実施することができる真空断熱容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の実施形態に係る真空断熱容器の外観構成を示す斜め方向から見た組立図である。
図2図2は、真空断熱容器の断面図である。
図3図3(A)は、蓋ケースの斜視図であり、図3(B)は、蓋ケースに取り付けられる窓カバーの斜視図である。
図4図4(A)は、断熱容器体の断熱性能を検査する検査システムを示す模式図であり、図4(B)は、断熱蓋体を視認する様子を示す模式図である。
図5図5は、真空断熱容器に収容される蓄熱ユニットの外観構成を示す斜め方向から見た組立図である。
図6図6は、蓄熱ユニットが収容された状態の真空断熱容器の断面図である。
図7図7(A)は、断熱容器体および断熱蓋体の断熱空間内での真空度の経年変化を示すグラフであり、図7(B)は、断熱容器体および断熱蓋体の寿命分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下ではすべての図面を通じて同一または対応する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明は省略する。
【0018】
図1および図2に示す真空断熱容器1は、医薬品、検体、食品等の物品を輸送したり保管したりするために用いられる保温容器である。この真空断熱容器1は、外装バッグ10(外装袋11および外装蓋12を含む)、保護底板20、保護ボックス30,断熱容器体40、および断熱蓋体50を備えている。このうち外装袋11、保護底板20、保護ボックス30、および断熱容器体40は、本開示に係る容器本体100を構成し、外装蓋12および断熱蓋体50は、本開示に係る蓋体101を構成する。以下、各部材について詳述する。
【0019】
<外装バッグ>
外装バッグ10は、外装袋11および外装蓋12を有している。外装袋11は、例えばナイロンやポリエステルなどの化学繊維から成る可撓性の生地を用いて、一面(上面)を開口11aとする横長の直方体形状に形成された袋状を成し、内部空間11bを有している。また、外装袋11の左右の側面のそれぞれには、人手で把持可能な取っ手14が取り付けられ、かつ、左右の側面の間にはベルト15が架け渡されている。
【0020】
外装蓋12は、外装袋11の開口13とほぼ同じ輪郭を有する矩形板状を成している。この外装蓋12は、その一辺部分が外装袋11の後部上辺に接続されている。そして、外装蓋12を前方へ倒伏させることにより、外装袋11の開口11aを閉じることができる。また、外装蓋12は、外装袋11と同様の化学繊維から成る生地を用いて袋状に形成されており、かつ、一辺又は隣接する複数辺にわたる開閉可能なファスナが設けられている。このファスナを通じて、外装蓋12の中には、断熱蓋体50が収容される(断熱蓋体50については後述する)。
【0021】
なお、以下の説明では、上述したように外装袋11に対して外装蓋12が接続されている側を「後方」、その反対側を「前方」とする。また、前方から見たときを基準にして「左右方向」を定め、外装袋11において開口13が位置する側を「上方」、その反対側で底のある側を「下方」とする。
【0022】
<保護底板・保護ボックス>
保護底板20は、ポリエチレンフォーム等の発泡材から成る保護部材であり、矩形平板状を成すと共に、その平面視形状は外装袋11の内底面とほぼ同一となっている。保護底板20の所定位置、本実施形態では左右方向の中央位置であって、かつ、前後方向の前寄りの位置には、矩形状の貫通した開口21が形成されている。
【0023】
保護ボックス30は、保護底板20と同様の発泡材から成る保護部材であり、上面に内部空間30bへ通じる開口30aが形成された直方体形状を成している。また、この保護ボックス30の平面視形状は外装袋11の内底面とほぼ同一である。
【0024】
これら保護底板20と保護ボックス30とを合わせて保護部材を成している。真空断熱容器1の組立時は、はじめに外装袋11の開口13が開かれ、次に外装袋11の底面に正対するように保護底板20が配置され、さらに、この保護底板20の上に載るように保護ボックス30が外装袋11内に収容される。上下に重ねられた保護底板20と保護ボックス30とを合わせた高さ寸法は、外装袋11の高さ寸法とほぼ同一である。
【0025】
<断熱容器体>
断熱容器体40は、非金属材料の成形体でありガスバリア性を有する二重壁構造の第1外皮材41と、第1外皮材41の壁間に収容された第1芯材42と、第1外皮材41の壁間に収容されて外部と通信可能な圧力センサ43とを有している。そして、第1外皮材41の壁間は所定の圧力に減圧され、かつ、内部が密封されている。
【0026】
より具体的には、第1外皮材41は断熱容器体40の真空度を維持する部材であり、合成樹脂等の非金属材料を型成形して一定形状を維持可能に構成されている。その結果、断熱容器体40は、図1に示すように全体として直方体の容器形状を成し、内部空間40bに通じる開口40aを有している。また、第1外皮材41は、容積の大きい外型41Aと容積の小さい内型41Bとを合わせたような二重壁構造を成している。この第1外皮材41は、例えば、熱溶着可能な熱可塑性樹脂層と、エチレン-ビニルアルコール共重合体又はポリビニルアルコール重合体等の空気バリア層と、ポリプロピレン等の水蒸気バリア層とによる積層構造を採用することができる。
【0027】
第1芯材42は、熱伝導性の低い材料で形成されており、断熱容器体40の骨格となって第1外皮材41の壁間空間である断熱空間を形成する。第1芯材42は、例えば多孔質体から成り、具体的には、連続気泡ウレタンフォーム等の連続気泡体、ガラス繊維の集合体、および、無機微粒子の集合体のいずれか1又は複数を用いて構成できる。
【0028】
圧力センサ43は、第1外皮材41の内部空間の圧力(気圧)を検出する検圧部44と、この検圧素子が検出した情報を無線で外部へ送信する送信部45と、検圧部44および送信部45に電力を供給する給電部46とを有している。また、圧力センサ43は、複数の貫通孔により内外を連通させたセンサケース47を有し、当該センサケース47内に、上記検圧部44、送信部45、および給電部46が収容されている。
【0029】
検圧部44は、例えばヒータ及び熱電対を備え、ヒータを加熱したときに熱電対で検出される温度から周囲の熱伝導特性を測定することで気圧(真空度)を測定するものが知られている。ただし、検圧部44の構成はこれに限られず、例えばピエゾ式、静電容量式、あるいは振動式等の微小電気機械システム(MEMS)を採用してもよい。
【0030】
送信部45は、検圧部44と電気的に接続されており、検圧部44が検出した圧力に関する情報を無線により外部へ送信する。そのために、送信部45は、通信制御IC、メモリ、およびアンテナ等を有している。例えば送信部45は、13.56MHz帯の周波数を使った近距離無線通信装置であって、NFC(Near Field Communication)によって情報を送信する。
【0031】
給電部46は、検圧部44および送信部45と電気的に接続されており、これらに電力を供給する。例えば給電部46は、給電制御ICおよび磁気共鳴方式のワイヤレス給電の受電部を有している。この受電部は、第1外皮材41の外部の1次側コイル(送電コイル)から無接触受電する2次側コイル(受電コイル)を含む。受電コイルは、送電コイルから伝送された電力を受け、給電制御ICはこの電力を検圧部44および送信部45に供給する。
【0032】
これら検圧部44、送信部45、および給電部46を収容するセンサケース47は、樹脂などの非金属材料で形成されており、例えば上下に扁平な平板形状を成している。このような圧力センサ43は、断熱容器体40の下部に設けられている。より具体的には、断熱容器体40の底部の所定部分では、壁間の第1芯材42の下面が上方に窪んでおり、第1外皮材41の外型41Aと第1芯材42の下面との間にセンサ収容スペース48が形成されている。このセンサ収容スペース48に、圧力センサ43は配置されている。
【0033】
上述した断熱容器体40は、保護ボックス30の内部空間32に収容される。ここで、本実施形態では、センサ収容スペース48の形成位置は、断熱容器体40の底部において左右方向の中央位置であり、かつ、前後方向の前寄りの位置である。従って、保護ボックス30に断熱容器体40を収容した状態では、平面視したときの保護底板20の開口21と圧力センサ43との位置がほぼ一致し、例えば、平面視で開口21内に圧力センサ43の全体が位置する。
【0034】
また、上述したように、断熱容器体40の外面を覆う保護部材は保護底板20および保護ボックス30から成り、かつ、保護底板20には開口21が形成されている。従って、保護部材(保護底板20および保護ボックス30)において、断熱容器体40に設けられた圧力センサ43に対応する部分には、他の部分に比べて凹んだ凹部が形成されており、より具体的にはこの凹部は保護底板20の開口21により形成されている。
【0035】
また、本実施形態に係る断熱容器体40は、第1気体吸着材49を備えている。図2に示すように、第1気体吸着材49は扁平形状を成し、第1外皮材41内の断熱空間において、第1芯材42と外型41Aとの間に配置されている。また、本実施形態において第1気体吸着材49は、圧力センサ43を挟んで左右の2か所に配置されている。
【0036】
<断熱蓋体>
蓋体101を構成する断熱蓋体50は、平面視で矩形の平板形状を成している。この断熱蓋体50は、金属層を含みガスバリア性を有する可撓性のフィルムを袋状にした第2外皮材51、および、第2外皮材51の内部に収容された第2芯材52を有している。そして、第2外皮材51の内部が所定の圧力に減圧密封されている。また、蓋体101は断熱蓋体50を収容する蓋ケース60を有している。図1では、蓋ケース60の一部を切り欠いて内部の断熱蓋体50を図示している。この蓋ケース60には、第2外皮材51の表面を視認可能な可視部を成す窓61が形成されている。断熱蓋体50は蓋ケース60に収容された状態で、更に外装蓋12内に収容される。
【0037】
より具体的には、第2外皮材51は断熱蓋体50の真空度を維持する部材であり、多層構造を成している。例えば、第2外皮材51は、その最内層には熱溶着層として低密度ポリエチレンフィルムを有し、最外層には表面保護層としてナイロンフィルムを有する。また、熱溶着層と表面保護層との間に、例えばアルミニウムを蒸着により成膜したPETフィルムを、ガスおよび水分の浸透を抑制するガスバリア層として有する。なお、第2外皮材51の構成はこれに限られず、断熱蓋体50の真空度を維持できる他の構成を採用してもよい。
【0038】
第2芯材52は、熱伝導率の低い材料で形成されており、第2外皮材51の内部が減圧されたときに断熱蓋体50の骨格となり、第2外皮材51の内部に断熱空間を形成する。第2芯材52は、例えば、連続気泡ウレタンフォーム等の連続気泡体、ガラス繊維の集合体、および、無機微粒子の集合体のいずれか1又は複数を用いて構成できる。断熱蓋体50は、このような第2芯材52を袋状の第2外皮材51内に収容し、第2外皮材51内を減圧して所定の真空度にした後に封止して構成している。
【0039】
また、本実施形態に係る断熱蓋体50は、第2気体吸着材53を備えている。図2に示すように、第2気体吸着材53は扁平形状を成し、第2外皮材51内の断熱空間において、第2芯材52と第2外皮材51との間に挟まれて配置されている。
【0040】
このような断熱蓋体50は、窓61を有する蓋ケース60に収容されている。図3(A)に示すように、蓋ケース60は、平面視で矩形を成す平板形状を成し、断熱蓋体50を収容する内部空間60bを有している。より具体的には、蓋ケース60は、いずれも矩形状の下板62および上板63を有し、互いに対応する1つの長辺部分において、長尺帯状の側面板64により接続されている。また、下板62の他の3辺部分からは長尺帯状の側面板62a~62cが延設され、上板63の他の3辺部分からも長尺板状の側面板63a~63cが延設されている。
【0041】
蓋ケース60は、下板62および上板63が側面板64を基点にして接離することで開閉する。また、下板62および上板63が閉じたときには、それぞれの側面板62a~62c,63a~63cが重なって、二重の側壁が形成される。このような蓋ケース60は、内部空間60bに収容した断熱蓋体50を保護する保護部材を成す。そのため、蓋ケース60は緩衝部材から成り、例えば、発泡ポリプロピレン製シートをカットして折り曲げて形成することができる。なお、内部空間60bの高さ寸法は、断熱蓋体50の高さ寸法(厚み寸法)よりも若干(数mm程度)大きく設定されている。
【0042】
蓋ケース60の上板63の中央には窓61が形成されている。この窓61は、所定寸法の径を有する円形状であり、上板63を貫通して形成されている。窓61の径としては、例えば30mm以上80mm以下から選択することができる。
【0043】
窓61には、窓カバー65が設けられている。図3(B)に示すように、窓カバー65は、クッション材66および支持板67を有する。クッション材66は、窓61と実質的に同一形状かつ同一寸法を成す円板状であり、厚みは上板63と同一寸法であって、例えばポリエチレン樹脂から成る。支持板67は、一辺がクッション材66の径より大きい矩形のシート状であり、その中央にクッション材66が両面テープ等により取り付けられている。
【0044】
窓カバー65は、クッション材66が窓61に嵌め込まれた状態で、支持板67の一辺が蓋ケース60の上板63の上面所定箇所に接着テープ65aによって接続されている。従って、上記一辺を基点にして窓カバー65を開閉でき、窓カバー65を開くと、窓61を通じて蓋ケース60内を視認できる。
【0045】
このような蓋ケース60内に、断熱蓋体50が収容される。このとき、矩形状の断熱蓋体50の四隅には緩衝材68が設けられる。緩衝材68は平面視でL字状を成し、高さ寸法は断熱蓋体50の高さ寸法(厚み寸法)よりも大きく、ほぼ蓋ケース60の内部空間60bの高さ寸法と同一である。このような緩衝材68が断熱蓋体50の四隅に取り付けられた状態で、断熱蓋体50は蓋ケース60の内部空間60bに収容される。従って、蓋ケース60の内面と断熱蓋体50の外面との間(本実施形態では、断熱蓋体50の上方、すなわち、蓋ケース60の上板63の内面と断熱蓋体50の上面との間)には、わずかに隙間69が形成される。
【0046】
また、内部空間60bに断熱蓋体50が収容された状態で、蓋ケース60の上部の窓カバー65を開くと、窓61を通じて断熱蓋体50の上部の第2外皮材52を視認でき、人の手で直接触れることもできる。
【0047】
<作用および効果>
以上に説明した真空断熱容器1は、容器本体100が備える断熱容器体40が、成形体から成る二重壁構造を有するため、例えば直方体形状の断熱容器体であっても、壁間空間を連通させた状態に成形できる。また、断熱容器体40を構成する第1外皮材41は非金属製であるため、収容された圧力センサ43が発信する電波を外部へ透過できる。それゆえ、断熱容器体40は、例えば1つの圧力センサによって、その断熱性能を測定することができる。
【0048】
断熱容器体40の断熱性能を検査する検査システムの一例を図4(A)に示す。ここに図示するように、当該システム80は、検査台81およびコンピュータ82を備えている。検査台81にはその所定位置に検査ユニット83が設けられている。この検査ユニット83は、受信部85および送電部86を有する。受信部85は、例えば通信制御IC、メモリ、およびアンテナ等を備えており、断熱容器体40の圧力センサ43が有する送信部45との間で、例えばNFC等によって通信可能である。また、送電部86は、本システム80において1次コイルを成す送電コイルを含み、図示しない電源からの給電により磁界を発生させる。
【0049】
このような検査システムを用いて断熱容器体40の断熱性能を検査する場合、まず、検査台81の所定位置に真空断熱容器1を載置する。載置する位置は、圧力センサ43と検査ユニット83との間で給電可能かつ通信可能な位置であり、例えば両者が正対する位置である。検査台81の上面には、真空断熱容器1を置く位置を示す案内表記をしてもよい。そして、真空断熱容器1を検査台81上に置いた状態で、検査台81の送電部86に給電して磁界が発生すると、これにより断熱容器体40の給電部46が有する2次側コイル(受電コイル)に電磁誘導が生じ、圧力センサ43は給電される。このようにして供給された電力により、圧力センサ43は、検圧部44にて圧力を検知し、検知した圧力に関する情報を、送信部45により送信する。送信された情報は検査台81の受信部85にて受信され、コンピュータ82へ送られる。コンピュータ82は、入力された情報に基づき、断熱容器体40の断熱性能が許容し得るか否かを判断し、その結果を出力(例えば、表示)する。
【0050】
また、蓋体101が備える断熱蓋体50は、金属層を含む可撓性のフィルムから成る第2外皮材51を有する。ゆえに、断熱蓋体50内に気体が進入して断熱性能が低下した場合には、第2外皮材51が膨らむなどその表面が変形する。そして、このような第2外皮材51の変形は、可視部である窓61を通じて視認可能である。
【0051】
断熱蓋体50を視認により検査するときの具体的な様子を図4(B)に示す。はじめに、断熱蓋体50を検査する場合、蓋体101の外装蓋12から、蓋ケース60に入った状態で断熱蓋体50を取り出す。取り出した蓋ケース60の上部に設けられた窓カバー65を開くと、窓61を通じて内部の断熱蓋体50(正確には、その第2外皮材51)が視認可能となる。従って、第2外皮材51が破袋するなどして内部に空気が入ると、断熱蓋体50は膨張するなど変形するので、その状態は窓61を通じて視認できる。特に、本実施形態に係る蓋体101は、蓋ケース60内の断熱蓋体50の上方に隙間69が存在するため、第2外皮材51の変形が阻害されることなく、変形が生じたら目視で確認しやすくなっている。
【0052】
このように、本開示に係る真空断熱容器1は、その断熱容器体40は圧力センサ43により例えば1回で検査でき、断熱蓋体50は目視によって適時に検査できるゆえ、検査作業が容易になる。
【0053】
また、真空断熱容器1は、断熱容器体40が保護部材により覆われ、かつ、この保護部材が有する保護底板20には開口21が形成されている。そして、この開口21により、保護部材において、断熱容器体40に設けられた圧力センサ43に対応する部分に、他の部分に比べて凹んだ凹部が形成される。また、この開口21を覆う外装袋11は化学繊維から成る可撓性の生地を用いて形成されている。
【0054】
これにより、外力から断熱容器体40を保護できると共に、断熱性能の検査時には、保護部材の凹部に検査用の受信装置を外部から外装袋11の生地越しに押し入れて、圧力センサからの電波を受信することができる。従って、圧力センサ43との通信が非常に近距離でしかできない仕様による場合であっても、圧力センサ43からの電波を確実に受信でき、正確な検査を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係る真空断熱容器1は、容器本体100の断熱容器体40が有する第1外皮材41が非金属材料から成る成形体であり、電波を透過できる。そのため、断熱容器体40の収容空間40bと真空断熱容器1の外部との間で通信可能である。従って、例えば収容空間40bに無線通信機能付きの温度センサを入れ、真空断熱容器1の外部からこの温度センサからの電波を受信することで、蓋体101を閉じた状態のまま、収容空間40bの温度をチェックすることができる。
【0056】
<その他の構成>
上述したように、断熱容器体40の第1外皮材41の壁間には第1気体吸着材49が設けられ、断熱蓋体50の第2外皮材51の内部には第2気体吸着材53が設けられている。この場合、第2気体吸着材53による気体の吸着能力の寿命を、第1気体吸着材49による気体の吸着能力の寿命よりも、長くなるように設定してもよい。
【0057】
この構成によれば、断熱蓋体50の方が断熱容器体40よりも断熱性能の寿命が長くなる。ゆえに、検査により断熱容器体40の断熱性能の維持を確認できれば、基本的に断熱蓋体50の断熱性能も維持できていると判断することができる。従って、断熱蓋体50に対する目視検査の頻度を少なくできるため、検査作業をより容易化できる。
【0058】
なお、第1気体吸着材49および第2気体吸着材53の各吸着能力の寿命[日]は、次のようにして設定できる。すなわち、使用する吸着剤1グラムで吸着できるガス量を吸着能力[cc/g]、吸着剤の使用量を吸着材量[g]、吸着剤が収容される断熱空間に残っている初期のガス量を初期残留ガス量[cc]、外皮材による気体に対するバリア性をガスバリア性能[cc/日]とする。このとき、第1気体吸着材49および第2気体吸着材53の吸着寿命[日]は、次式(1)で表される。
【0059】
吸着材寿命[日]=
(吸着能力[cc/g]×吸着材量[g]-初期残留ガス量[cc])
÷ガスバリア性能[cc/日] ・・・(1)
【0060】
従って、上記(1)式に基づいて、第2気体吸着材53の吸着材寿命を、第1気体吸着材49の吸着材寿命よりも、長くなるように設定することができる。
【0061】
例えば、上記(1)式に基づけば、断熱空間内での真空度の経年変化として図7(A)のグラフのような態様を示す吸着材を設計することができる。ここで、Vtは断熱容器体40および断熱蓋体50が所要の保冷性能を担保できる真空度の閾値である。また、グラフ200,201は、(1)式に基づき設計した第1気体吸着材49を備える断熱容器体40の真空度の経年変化を示し、(1)式中の各パラメータが含み得るバラツキを考慮して、グラフ200は最も経年変化の速いものを、グラフ201は最も経年変化が遅いものを、それぞれ示している。同様に、グラフ300,301は、(1)式に基づき設計した第2気体吸着材53を備える断熱蓋体50の真空度の経年変化を示し、(1)式中の各パラメータが含み得るバラツキを考慮して、グラフ300は最も経年変化の速いものを、グラフ301は最も経年変化が遅いものを、それぞれ示している。
【0062】
また、図7(B)に、上記のような第1気体吸着材49を備える断熱容器体40と、第2気体吸着材53を備える断熱蓋体50とについて、複数のサンプルの寿命分布を示す。図7(A)に示すように、断熱容器体40および断熱蓋体50はいずれも、初期からある時点までは真空度の経年劣化がゆっくりと進む一方、ある時点以降は経年劣化が早く進行して上記閾値Vtを超える傾向がある。従って、経年劣化の進行スピードの変換点である図中のP1~P4の時点を、断熱容器体40および断熱蓋体60の寿命と定義することができる。
【0063】
そして、図7(A)および図7(B)に示すように、上記(1)式により設計した場合、バラツキを考慮したときの断熱容器体40の寿命をP1~P2の範囲に含めることができ、断熱蓋体50の寿命をP3~P4の範囲に含めることができる。このように、断熱容器体40と断熱蓋体50は、バラツキを考慮しても互いの寿命期間が重複しないように設計でき、かつ、断熱容器体40よりも断熱蓋体50の方が長寿命となるように設計することができる。
【0064】
上述した真空断熱容器1が備える断熱容器体40の内部空間40bには、蓄熱ユニット70を収容可能である。例えば、真空断熱容器1内に蓄熱ユニット70を入れ、この蓄熱ユニット70内に医薬品や検体等の物品を収容する。これにより、蓄熱ユニット70が形成する物品周りの温度環境が、真空断熱容器1によって長時間維持される。
【0065】
図5および図6を参照しつつ蓄熱ユニット70について概説する。蓄熱ユニット70は、バスケット71、緩衝材72、複数の蓄熱材73、および内箱74を有している。このうちバスケット71は上部に開口を有する底浅のボックス形状を成し、左右に設けられた上方への延設部71aの間にはベルト71bが架け渡されている。このバスケット71は、平面視で、断熱容器体40の内部空間40bとほぼ同一形状かつ同一寸法となっている。
【0066】
緩衝材72は、バスケット71の内底部の四隅に配置され、バスケット71の内面に予め接着等により装着されている。複数の蓄熱材73は平板状を成し、内箱74の下面、4つの側面、および上面に対応して6枚用意されている。そして、緩衝材72が装着されたバスケット71に対し、その内底面に、下面用の蓄熱材73が配置される。次に、この下面用の蓄熱材73の上に、上部が開口したボックス状の内箱74が載置される。そして、内箱74の周面とバスケット71の周面との隙間に、4枚の蓄熱材73が挿入され、内箱74の開口を塞ぐようにして1枚の蓄熱材73が載置される。
【0067】
これにより、蓄熱ユニット70は断熱容器体40に対して隙間なく収容される。従って、真空断熱容器1の使用中に、蓄熱ユニット70が内部で振動するなどして断熱容器体40の内面を傷つけるのを防止することができる。その結果、真空断熱容器1の断熱性能を長期にわたって維持することができる。なお、平板状の蓄熱材73に替えて、例えばペレット状(粒状)の蓄熱材(例えば、ドライアイス)を、内箱74の周面とバスケット71の周面との隙間に充填してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では可視部として、蓋ケース60の上板63を貫通する円形の窓61を例示したが、可視部の構成はこれに限られない。例えば、輪郭が多角形状を成して貫通する開口から成る窓であってもよいし、他の輪郭形状であってもよく、設ける位置も上板63に限らない。また、貫通した開口を透光性(透明性)のシートやフィルムで覆った構成により可視部としてもよい。また、蓋ケース60の一部または全部の板面を透光性(透明性)の材料で構成してもよい。更には、蓋ケース60内の断熱蓋体50の変形に連動して移動する目印を設け、この目印を可視部としてもよい。すなわち、可視部は、断熱蓋体50の変形を直接的に視認できる構成に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示の真空断熱容器は、内部の温度を長時間にわたって維持するための真空断熱容器に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 真空断熱容器
40 断熱容器体
41 第1外皮材
42 第1芯材
49 第1気体吸着材
50 断熱蓋体
51 第2外皮材
52 第2芯材
53 第2気体吸着材
60 蓋ケース
61 窓
100 容器体
101 蓋体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7