(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】荷電粒子のビームを特性評価するためのシステムおよびそのようなシステムを含む荷電粒子のビームを生成するための機械
(51)【国際特許分類】
G01T 1/29 20060101AFI20231201BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20231201BHJP
G01T 1/28 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
G01T1/29 A
A61N5/10 Q
G01T1/29 B
G01T1/28
(21)【出願番号】P 2020542160
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2019052721
(87)【国際公開番号】W WO2019154785
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-31
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513072237
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク
(73)【特許権者】
【識別番号】511134470
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ ルシェルシェ サイエンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルド,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ボイヤー,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】マニゴット,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ティバックス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルデーリ,マーク
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-101367(JP,A)
【文献】特開2011-161056(JP,A)
【文献】米国特許第03450879(US,A)
【文献】Akio HIGASHI et al.,Secondary-electron-emission type of beam profile monitor for the HIMAC-injector (6MeV/u),12th Symposium on Accelerator Science and Technology,1999年10月,pp.90-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子のビーム(F)の特性評価のためのシステム(1)であって、前記システムはスタックを含み、前記スタックは、
-導電性材料から形成された超薄型パターン(20)と、
-前記パターンを担持する薄い基板(10)であって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートルの厚さを有する基板と、
を含み、
前記スタックは放射電極(2)を形成し、前記放射電極は、前記放射電極を荷電粒子の前記ビームが通過するとき、前記パターンの表面(22)の近傍で二次電子(e
s
-)を放出することができる、
システム。
【請求項2】
前記スタックは、前記パターンの前記基板への接着を促進するために、前記パターン(20)と前記基板(10)との間に挿入された少なくとも1つの結合層(28)をさらに含む、請求項1に記載の特性評価システム(1)。
【請求項3】
前記基板(10)は、ポリマーおよび/またはセラミックなどの耐熱性材料から形成される、請求項1または2に記載の特性評価システム(1)。
【請求項4】
前記基板(10)が、ポリ(4,4’-オキシジフェニレンピロメリットイミド、以下に示す構造式を有するCP1(登録商標)などのポリイミドおよび/またはポリエーテルエーテルケトンまたはPET(ポリ(エチレン)テレフタレート)から形成される、請求項1に記載の特性評価システム(1)。
【請求項5】
前記パターン(20)の厚さは10nm~100nmの間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の特性評価システム(1)。
【請求項6】
前記基板(10)は電気的に絶縁性であり、前記パターン(20)は互いに電気的に絶縁された複数の導電性セグメント(24)から形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の特性評価システム(1)。
【請求項7】
前記セグメント(24)は、防錆材料、好ましくは金から作製される、請求項6に記載の特性評価システム(1)。
【請求項8】
前記セグメント(24)は、前記ビームの伝播方向に対して略垂直に延びるように意図された平面に並んで配置される、請求項6または7に記載の特性評価システム(1)。
【請求項9】
前記セグメント(24)は、所与の軸に沿って前記ビーム(F)をサンプリングするように、同じ幅で等距離に、同じ方向に配向される、請求項8に記載の特性評価システム(1)。
【請求項10】
前記セグメント(24)は、前記ビーム(F)の前記非センタリングおよび/または前記角度分布を測定するために、角度セクタに切断される、請求項8に記載の特性評価システム(1)。
【請求項11】
前記セグメント(24)は、前記ビーム(F)の前記非センタリングおよび/または前記放射状分布を測定するために、同心のセクタに切断される、請求項8に記載の特性評価システム(1)。
【請求項12】
前記セグメント(24)は、前記ビーム(F)のイメージングを実行するように、角度のある同心のセクタに切断される、請求項8に記載の特性評価システム(1)。
【請求項13】
収集電極(3)をさらに含み、前記収集電極は正の電位が与えられ、前記電位は前記放射電極(2)の前記電位よりも大きく、前記放射電極によって放出された前記二次電子(e
s
-)を収集する、請求項1~12のいずれか一項に記載の特性評価システム(1)。
【請求項14】
測定手段(4)を含み、前記手段により、前記放射電極(2)の表面から放出された二次電子(e
s
-)の量を測定することが可能になる、請求項1~13のいずれか一項に記載の特性評価システム(1)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム(1)を含む荷電粒子のビームを生成するための機械であって、前記システムは固定され永続的である機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子のビームを特性評価するためのシステム、およびそのようなシステムを備える荷電粒子のビームを生成するための機械に関する。これは特に、真空中の荷電粒子のビームの位置、プロファイル、および/または強度を測定することを意図しており、粒子は、例えば数メガボルト電子から数十ギガボルトの電子の運動エネルギーを有し、ビームは100フェムトアンペアから最大1マイクロアンペアの強度を有する。
【0002】
本発明は、健康の分野、特に治療用のイオンのビームを測定および誘導することによって癌性腫瘍を治療するための機器に、その主要な用途を有する。また、放射性医薬品の同位元素を生成するための機器の荷電粒子のビームラインや、原子力分野の学術研究や生物学分野の照射で使用されるようなラインの機器のアイテムにも使用できる。
【背景技術】
【0003】
癌性腫瘍の治療には、ハドロン療法、より具体的には陽子療法などの治療法が必要である。各々イオンと陽子である荷電粒子のビームによる癌細胞の照射に基づくものである。それらの電荷のおかげで、これらの粒子は、電場の適用によって運動エネルギーを獲得することができ、ビームに誘導されることができる。ハドロン療法および陽子療法による癌性腫瘍の治療には、通常、イオンの場合は核子あたり50MeVから核子あたり900MeV、陽子の場合は70MeV~250MeVの運動エネルギーを有する粒子が必要である。このエネルギーの範囲は、一般的に治療エネルギー範囲と呼ばれる。
【0004】
さらに、これらの方法の周知の利点は、他の従来の放射線治療と比較して、治療対象のゾーンの近くにある健常な組織や臓器の劣悪化を回避することにより、癌細胞の照射を改善できる可能性があることである。
【0005】
ビームをモニタリングするには、ビームの特性、特に強度、位置、プロファイルを測定する必要がある。この測定は、通常、治療的処置を実施するために使用される機械の近くまたはその中に設置されたモニタによって行われる。
【0006】
モニタを通過することにより、ビームは角度分散、つまり初期の軌道に対する逸脱を経て、モニタからの所定の距離でのビームの横方向の偏差を修正する結果になる。腫瘍をスキャンして操作する治療法(ペンシルビームスキャン)の場合、ビームを患者のレベルでサブミリメートルの横方向の偏差に制限し、許容できるように、角度分散は十分に低くなければならない。したがって、モニタが患者から数メートル上流に配置されている場合、これはそれ故、その水等価厚(WET:water equivalent thickness)が15マイクロメートルを超えてはならず、水等価のマイクロメートルでの測定は、荷電粒子のビームと材料などの媒体との相互作用の深さの測定であることを意味する。
【0007】
材料の厚さx(cm)を通過する電荷zと移動量p(MeV/c)の粒子の場合、角度分散(二次の平均、つまり二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)という観点)θ0(ラジアン)は、おおよそ次の式で得られる。
【0008】
式中、X
0は、cmで表される、通過される媒体の放射の長さ、βは光速cに対する粒子の速度である。陽子線療法とハドロン療法の場合、粒子はやや相対論的なレジームにあり、分散は次のように記述される。
【0009】
式中、E
kinは粒子の運動エネルギー、
は、他のパラメータを吸収する定数である。したがって、所与の運動エネルギーから10倍低い運動エネルギーに通過する同じ分散θ
0、すなわち、E
kin->E
kin/10に準拠するには、
という事実によって、厚さxを100分の1、つまりx->x/100にする必要があることがわかる。これらの定性的な角度の基準は、数値シミュレーションに基づいて、
図1c~
図4cにさらに具体的に表されている。
【0010】
上記の式(1)および(2)に関連して、また
図1aに示すように、一定のエネルギービームでは、通過する材料の厚さが小さくなり、ビームの分散が小さくなるため、送られるエネルギーの割合が多くなる。例えば、モニタから2mでの1mmからの横方向の逸脱制限(ここでは陽子線療法型と呼ばれている)が順守されるように、10MeVの陽子線が通過する材料の厚さは1μmのWET未満である必要がある。ただし、250MeVの陽子ビームの場合、モニタの厚さは100μmのWETを超えてはならない。
【0011】
さらに、
図1bおよび
図1cは、陽子ビームのエネルギー損失が、1keV~10GeVのエネルギー範囲にわたってビームが通過する材料の厚さに従って、また0.1μmのWET、1μmのWET、10μmのWETおよび100μmのWETの厚さに対して表されていることを示している。高エネルギーでは、伝達されるエネルギーの割合は1に等しくなる。つまり、陽子ビームは、通過する物質の厚さによってほとんど乱されず、ビームのエネルギーとともに減少する。さらに、通過する材料の厚さが薄くなるほど、伝達されるエネルギーの割合の減少が大きくなり、最低のエネルギーで発生する。
【0012】
図2a、
図3a、および
図4aを分析すると、陽子線療法型の横方向の偏差制限は、厚さが、10MeVの電子ビームで0.1μmのWET、または10MeV/uに対してアルファ粒子または
12Cイオンのビームで約3μmのWETを超えないモニタでのみ尊重され得ることを示している。さらに、
図2b、
図2c、
図3b、
図3c、
図4bおよび
図4cは、1keVと10GeV(電子)の間、1keV/uと10GeV/u(アルファおよび
12Cイオン)の間のエネルギー範囲にわたってビームによって通過された材料の厚さによる、また上記の厚さに対する、アルファ粒子と
12Cイオンの電子ビームのエネルギー損失を示している。陽子ビームで観察されたものと同様に、そのようなビームがモニタを通過した後に伝達されるエネルギーの割合は、通過する物質の厚さが増加し、入射ビームのエネルギーが減少するにつれて、いっそう影響を受ける。
【0013】
横方向の偏位の要件が尊重されるように、ビームを遮る粒子のビームの特性評価をするシステムは、マイクロメートルの厚さ、例えば15μmのWET未満であることが必要であることが、出願人により示された。これらすべてについて、この要件はハドロン療法または陽子線療法でのこれらのモニタの単純な使用に限定されたものではなく、このことは他の用途に使用できる荷電粒子のビームをモニタリングするための定性的な評価基準である。
【0014】
荷電粒子のビームを特性評価するために業界で現在開発されている主な解決策は、電離箱からなる。特許文献1は、そのような電離箱を記載している。それらは通常、互いに向かい合う2つの電極からなり、ガス体積によって互いに分離されている。電離箱がラインの真空内に、粒子のビームが通過するために置かれ、電子を放出することによって、粒子とガスの分子の衝突によりイオンが生成される。したがって、放出された電子は、カソードによって収集され、それは測定可能な信号を生成し、粒子のビームの強度と形状を判定するためのものである。
【0015】
ビームの分散に関する能力に関係なく、電離箱には多くの欠点がある。実際、特に空間電荷現象のために、ガスの圧力をビームの強度の範囲に適合させねばならない。さらに、これらは、デバイス内に配置され、これらの箱の小型化を本質的に制限し、箱によって実行される操作に影響を与える、環境パラメータ(温度、圧力、湿度)を制御するための、センサーなどの追加の手段を必要とする。さらに、放射線に対する良好な耐性を確実にするために、頻繁にそれらを交換せねばならない。実際、放射は壁、特にそれらの機械的強度の特性の劣化を引き起こし、ガスによって及ぼされる圧力に対するそれらの抵抗を変化させ、その後漏れる。さらに、電流密度が増加した粒子ビームの場合、信号を補正する手段も必要である。実際、このようなビームはガスを通過することにより、電子と正孔のペアの再結合を引き起こし、信号を乱す多数の電子と正孔のペアを生成し、これにより、信号が補正されない場合はビームの強度と形状の測定に誤差が生じる。
【0016】
粒子のビームをモニタリングするために、他の代替の解決策も開発されている。
【0017】
特許文献2は、粒子ビームの供給源と、照射されるゾーンとの間に位置するシンチレーション材料に基づくスクリーンの使用に基づくシステムを記載している。陽子ビームに反応して、材料は可視光スクリーンに蓄積されたエネルギーを変換する。したがって、この光は、信号に乱れを生じさせる可能性のある光学デバイス(レンズ、ミラーなど)を使用して送られ、最大1つ以上のイメージングセンサーによって、ビームの位置とプロファイルを瞬時に提供できる。このようなシステムでは、イメージングセンサーにスクリーンの画像を投影するのに必要な収縮率を補うために、感光センサーのサイズをできるだけ大きくしなければならない。それは特にかさばりをもたらす。さらに、複雑な光学的手段を使用するのに伴い、画面からセンサーを分離する距離が正確に調整されていない場合、測定でのアーチファクトが現れる可能性がある。さらに、例示的な実施形態で基板の厚さは100μmである他には、システムの厚さが示されていない。
【0018】
Shapiraら(非特許文献1)では、二次電子の放出に基づくハドロン療法のためのオフセットイメージングシステムを提案している。このシステムでは、粒子のビームの伝播軸に対して45°または30°で傾斜したシートがこのビームにより通過され、シートの表面で二次電子を放出するメカニズムの起点で、イオンのインパクトを発生させる。次に、シートから放出された電子は、イメージング検出器の方向を示すために、電場から来る第1のパルスに曝され、次に、検出器の方向に加速されるために、より中程度の電場からくる第2のパルスに曝される。したがって、検出器は入射電子の数、またシンチラントスクリーンと組み合わせて、2Dの電子というパターンの形で画像化するために検出および処理される信号を増加させる。シートから放出される電子の分散を最小限に抑えるために、検出器の近くにマスクも配置される。したがって、システムは相対的に複雑である。さらに、得られるパターンの解像度は検出器の解像度(<0.25mm)に制限される。システムは、高強度と同様に低強度でも使用できるが、高強度では、検出器の比率のカウントのしきい値に到達すると、得られるパターンが大幅に劣化する可能性がある。さらに、このシステムは、測定対象のビームを生成する機械の要素によって引き起こされる電磁環境に非常に影響を受けやすい。
【0019】
Vignetら(非特許文献2)は金属製のワイヤーモニタを提案している。これらのモニタは、例えばアルミニウム製の放出シート上で粒子の部分ビームが通過する際の二次電子の放出にも基づいている。このシステムでは、検出器の放出シートを分離する金属線ネットワークが電子からのエネルギーを最適化し、モニタが損傷を受けることなく高輝度で動作できるようにする。モニタは、中程度のエネルギー(50MeV)と同じように、低エネルギー(50keV)で動作できる。しかし、そのようなモニタは、低エネルギーのビームの通過をブロックするので、照射中、ビームの伝搬ラインに留めておくことができない。さらに、モニタの形状、特に電子の移動を制御するために使用される磁石の配置は、シートと検出器の間の電子分散に大きな影響を与える。
【0020】
特許文献3は、金属電極によってその各面が覆われた誘電体からなる検出器を提案している。誘電体は、検出器から電子を放出する非導電性の媒体を形成する。誘電体を覆う金属電極は、測定システムと組み合わせて使用することにより、誘電体から放出された電子が発生した場所を画像化することができる。したがって、この場合、金属電極は受容電極を形成する。この検出器は、二次電子を放出する原理に従って動作しない。
【0021】
非特許文献3は、ハドロン療法での使用を目的としたビームモニタを開示している。モニタは、0.1~0.3μmのアルミナのサポートと、アルミナサポートの両側にある10~20nmのアルミニウムの層で構成されている。シートの両側に存在するアルミニウム層は、シートの表面から電界線によって放出された二次電子を誘導する。パターンがないため、このアルミニウム層は、それ自体ではビームを結像できない。これは独立した検出デバイス(ビームの軸の外側にある)であり、イメージングを確実にする。
【0022】
Koppら(非特許文献4)は、高強度および高エネルギー(例えば、120GeV)のビームの強度、位置、およびプロファイルを測定するように適合された、セグメント化されたシートベースのモニタを提案している。5μmの厚さの5つのセグメント化されたチタンシートが、位置合わせと機械的強度を保証する溝を持つセラミック櫛に取り付けられる。これは、材料の厚さの合計が25μmであることを示す。このようなシステムは、高エネルギー(数GeV)での粒子ビームの特性評価に非常に適している。これは、この厚さの材料では、放射線を遮断しないためである。しかし、中間エネルギーを有するそのようなモニタを使用することにより、粒子のビームはモニタによって高度に妨害され、ビームを伝搬するラインへの恒久的な設置は不可能である。
【0023】
確かに、下方の式(1)から得るKoppらのモニタの水等価の数字なら、このようなモニタを使用すると、許容できる15μmのWETをはるかに超える分散が生じる。実際、チタンの場合、放射の長さは3.56cmで、これは水の放射の長さの36.08cmの10分の1である。したがって、チタンの厚さが5μmの場合、水50μmと同じ分散が生じる。2つの平面2と4を有する各シートでは、モニタの通過が100μmの水と等価の分散を誘発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】US2014/0265823
【文献】US7,515,681B2
【文献】US3450879
【非特許文献】
【0025】
【文献】Shapira et al.(Nuclear Instrument and Methods in Physics Research,vol.454,p.409-420,200)
【文献】Vignet et al.(Proceedings of IBIC2013,Oxford,UK,ISBN:978-3-95450-127-4)
【文献】Badano et al.,Laboratory and In-Beam Tests of a Novel Real-Time Beam Monitor for Hadrontherapy,IEEE,vol.52,4,2005.08.01
【文献】Kopp et al.(Nuclear Instruments Methods in Physics Research Section A:Accelerator, Spectrometers,Detector and Associated Equipment,vol.554,issue1-3,p.138-146,2005)
【発明の概要】
【0026】
上述の代替的な解決策には、多くの欠点がある。実際、モニタは、選択により、中間エネルギーの観点からは厚すぎ、光学および/または電磁設備の点で複雑すぎ、ビームの伝搬ラインでは永続的には使用できず、使用の点で制限され、利用可能なエネルギー範囲および/または強度のダイナミックという点で制限される。
【0027】
したがって、課題は、ビームを劣化させない荷電粒子のビームのプロフィロメトリーを達成することであり、ここで検討されているような低エネルギーのビームについてさえもである。
【0028】
本発明は、荷電粒子のビームを特性評価するためのシステムを提案する、上述のシステムの欠点を克服するものである。このシステムはスタックを含み、スタックは、
-導電性材料から形成された超薄型パターンと、
-パターンを担持する薄い基板と、
を含み、
スタックは、基板とパターンとにより構成され、放射電極を形成し、前記放射電極は、当該放射電極を荷電粒子のビームが通過するとき、パターンの表面の近傍で二次電子を放出することができる。
【0029】
「薄い基板」とは、マイクロメートルまたはサブマイクロメートルの厚さを有する基板、すなわち、システムの機械的強度を確保するために特有でありながら、可能な限り薄い基板を意味する。基板の材料の収支は、目的とする用途に依存し、例えば、特に陽子線療法のビームを特性評価するために、15マイクロメートル未満の水等価量であり得る。
【0030】
さらに、「超薄型パターン」は、導電性を確保するために特有でありながら、可能な限り薄いパターンを意味する。例えば、ナノメートルの寸法の厚さを有するパターン、すなわち、厳密に1mm未満の厚さのパターンが挙げられる。
【0031】
したがって、本発明のおかげで、導電を可能にすることに寄与し、したがって荷電粒子のビームのプロファイルを確立することに寄与する一方で、本発明による特性評価システムで使用される超薄型パターンは、2メートルでのサブミリメートルの偏差で、ビームの分散を制限することに寄与する。つまり、2メートルに対して、システムに到達する完全なビームの幅が1mm未満である。
【0032】
さらに、それは以下を可能にする:
-システムへの通過中のビームの途絶を減らすため、つまり、特性評価システムへの通過後に伝達されるエネルギーの割合が、例えば0.95を超えるようにすること、および
-ビームの通過によって引き起こされる過熱を最小限に抑えること、これにより、本発明は、現在の陽子線療法システムよりも高い強度で動作することができる。
【0033】
さらに、システムの全体の厚さ、つまり放射電極の厚さが薄いままなので、これによりビームの途絶が制限され、連続測定が保証される。
【0034】
また、現在のシステムとは対照的に、本発明による特性評価システムは単純な構造を有することに留意しなければならない。実際、横方向の偏位が低次であること、すなわち患者のレベルでのビームの分散が低いことは、システム自体の厚みが薄いことによってもたらされる。また、ビームのプロファイルをモニタリングする際の測定の精度と連続性を向上させるのは、この薄い厚さである。
【0035】
さらに、形成されたスタックの特性のおかげで、本発明による特性評価システムは、放射線に対する良好な耐性を有し、機械的な力を受けないため、累積する線量に耐えることができ、寿命が現在の陽子線治療システムより長くなる。
【0036】
一緒にまたは別々に取得することができる本発明の異なる特徴によれば、
-放射電極は、略平坦な分布に沿って、および/またはビームの伝播方向に略垂直に延びる。
-システムは、測定するビームのラインに配置することを意図している。
-粒子は、核子あたり10MeVから数十GeVの間、好ましくはイオンについて核子あたり50~900MeVの間、またさらに好ましくは陽子について70~250MeVの間のエネルギーを有する。
-ビームの強度は100fA~1μAの間である。
-スタックは、パターンの基板への接着を促進するために、パターンと基板との間に挿入された少なくとも1つの結合層を含む。
-基板は、ポリマーおよび/またはセラミックおよび/またはMYLAR(登録商標)および/またはPEEKなどの耐熱性材料から形成される。
-基板は、CP1(登録商標)やKapton(登録商標)などのポリイミドから形成される。
-変形例として、基板は窒化ケイ素からなる。
-パターンの厚さは10nm~100nmの間である。
-基板は電気的に絶縁性である。
-パターンは、互いに電気的に絶縁された複数の導電性セグメントから形成される。
-セグメントは、防錆材料、好ましくは金で作製される。
-セグメントは並んで配置されている。
-セグメントは電子手段に接続されている。
-所定の軸に沿ってビームをサンプリングするために、セグメントは同じ方向に向けられている。
-セグメントは同じ幅で等距離である。
-ビームの非センタリングおよび/または放射状分布を測定するために、セグメントは角度セクタに切断される。
-変形例では、セグメントは、ビームの非センタリングおよび/または放射状分布を測定するために、同心のセクタに切断される。
-変形例では、セグメントは、ビームのイメージングを実行するために、角度のある同心のセクタに切断される。
-システムは、収集電極を含む。
-収集電極は、放射電極によって放出された二次電子を収集するために、放射電極の電位よりも高い電位が与えられる。
-収集電極は、放射電極の反対側に位置する。
-収集電極は、放射電極の反対側ではなく、ビームの軸の外側に配置されている。
-システムは、複数の放射電極を含む。
-システムは、複数の収集電極を含む。
-各収集電極は、複数の放射電極のうちの1つによって放出された二次電子の収集専用である。
-変形例では、各収集電極は、複数の放射電極によって放出された二次電子の収集専用である。
-システムは、放射電極によって放出された二次電子がシステムを取り巻く材料によって収集されるように構成される。
-システムは測定手段を含む。
-測定手段は、放射電極の表面から放出される二次電子の量を測定する。
-測定手段は、放射電極に電気的に接続される。
【0037】
別の態様によれば、本発明はまた、上記のようなシステムを備える、荷電粒子のビームを生成するための機械に関する。システムは、好ましくは、機械に固定され永続的である。このことは、この変形が可能であるが、格納式に取り付けられていないことを意味する。
【0038】
別の態様によれば、本発明はまた、例として、癌性腫瘍を治療するための機器のアイテムの荷電粒子のビームを特性評価するための、上記のような特性評価システムの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照して行われる以下の説明でより明確になる。
【0040】
【
図1a-1c】2mでモニタを通過した陽子ビームの幅を示し(
図1a)、ビームのエネルギーに応じたビームのエネルギー損失を示している(
図1b、1c)。横軸は、
図1a、
図1b、および
図1cに共通であり、ビームの運動エネルギー(MeV/u)を表す。
図1aの縦軸は、2m(ミリメートル)でモニタを通過した陽子ビームの幅を表している。
図1bおよび
図1cの縦軸は、伝達されるエネルギーの割合を表す。上向きの実線の矢印は、厚さが100μmのWETのモニタに対応している。下向きの黒の矢印は、厚さが10μmのWETのモニタに対応している。上向きの白の矢印は、厚さが1μmのWETのモニタに対応する。下向きの白の矢印は、厚さが0.1μmのWETのモニタに対応する。
【
図2a-2c】2mでモニタを通過した電子ビームの幅を示し(
図2a)、ビームのエネルギー損失を示している(
図2b、2c)。
図2a、
図2bおよび
図2cの横軸および縦軸に表されているパラメータは、
図1a、
図1bおよび
図1cに表されるものと同一である。これは、考慮されている様々なモニタの厚さに対応するシンボルについても同じである。
【
図3a-3c】2mでのアルファ粒子のビームの幅を示し(
図3a)、モニタを通過したビームのエネルギー損失を示す(
図3b、3c)。
図3a、
図3bおよび
図3cの横軸および縦軸に表されているパラメータは、
図1a、
図1bおよび
図1cに表されるものと同一である。これは、考慮されている様々なモニタの厚さに対応するシンボルについても同じである。
【
図4a-4c】2mでモニタを通過した
12Cイオンのビームの幅を示し(
図4a)、ビームのエネルギー損失を示している(
図4b、4c)。
図4a、
図4b、
図4cの横軸および縦軸に表されているパラメータは、
図1a、
図1bおよび
図1cに表されるものと同一である。これは、考慮されている様々なモニタの厚さに対応するシンボルについても同じである。
【
図5a-5c】本発明の実施形態による特性評価システムを斜視図で概略的に示し(
図5a)、本発明の変形例による特性評価システムを斜視図で概略的に示す(
図5b、5c)。矢印F(1)は前方への放出を表し、矢印F(2)は後方への放出を表す。
【
図7】本発明の第2の実施形態による特性評価システムを斜視図で概略的に示し、このシステムは、収集電極を含む。矢印F(1)は前方への放出を表し、矢印F(2)は後方への放出を表す。
【
図8a-8b】ビームの軸に平行な1つ以上の収集電極を有する、本発明の第3の実施形態による特性評価システムを斜視図で概略的に示す。ビームの軸に平行な1つ以上の収集電極を有する、本発明の第3の実施形態による特性評価システムを斜視図で概略的に示す。矢印F(1)は前方への放出を表し、矢印F(2)は後方への放出を表す。
【
図9a】本発明の第4の実施形態による特性評価システムを斜視図で概略的に示し、システムはいくつかの放射電極を含む。
【
図9b】本発明の第4の実施形態の変形による特性評価システムを概略的に斜視図で示し、システムはいくつかの放射電極およびいくつかの収集電極を含む。
【
図9c】本発明による特性評価システムおよび測定手段を含む電気測定回路を概略的に示す。
【
図10a-10b】本発明および最新技術の様々なシステムによるビームのエネルギーによる(
図10a)およびビームの強度による(
図10b)二次電子の比率の変化を示す。
【
図11a-11c】セグメントの位置に従って測定された電流の変化を示し、陽子は60MeVのエネルギーを有し、ビームの強度は、本発明に従ってそれぞれ200fA、1pAおよび1nAである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図5aを参照すると、本発明は、荷電粒子のビームFを特性評価するためのシステム1に関する。システム1は、測定されるべきビームFを含む、粒子を輸送するためのラインに配置され、その結果、システムは、ビームによって通過される。
【0042】
ビームを構成する粒子は、陽子および/またはイオンおよび/または電子および/または陽電子などの荷電亜原子の粒子である。それらは、通過する媒体、例えば材料に、それから1つ以上の電子を得ることにより、その後、媒体の原子を直接電離することにより、エネルギーを蓄積することができる。
【0043】
治療目的のために、特に陽子療法およびハドロン療法によって癌性腫瘍を治療するために、粒子は好ましくは陽子および/またはイオンである。他のタイプの荷電粒子は、それ自体で、または他の粒子と組み合わせて使用することができ、本発明は上記の例に限定されない。
【0044】
照射または治療されるゾーンは、特性評価システム1および粒子のビームFの出力窓から数メートルまで下流に位置することができ、すなわち、ゾーンは、粒子を輸送するためのラインの出力に位置する。
【0045】
特性評価システム1は、スタックを含み、スタックは、導電性材料から形成された超薄型パターン20と、パターン20を担持する薄い基板10とを含む。パターン20が超薄型の場合、基板10は、特にその厚さによって、パターン20の機械的支持を確実なものする。
【0046】
基板10およびパターン20によって構成されるスタックは、実質的に平坦な分布に従って有利に延びる、および/またはパターン20および基板10のスタック方向に対応するビームFの伝播方向に実質的に垂直に延びる放射電極2を形成する。換言すれば、放射電極2は低寸法を有する、すなわち、ビームFの伝播方向に延びるZ軸に沿った、および他の2つの寸法であるX軸およびY軸に沿った低寸法であって、粒子を輸送するためのラインへのその挿入および維持に適合した低厚みを有する。
【0047】
特性評価システム1は、10MeVと数十GeVの間の運動エネルギーを有する粒子のビームのモニタリングを可能にする。
【0048】
実際、
図1a~
図4bを参照すると、高エネルギー、つまり500MeV(または500MeV/u)を超えるエネルギーでは、ビームFを遮るWETが100μm未満の厚さのシステムは、ビームに大きな途絶をもたらすことはない、すなわち、伝達されたエネルギーの割合は、例えば、ビームがシステム1を通過した後、0.95以上である。さらに、これらのエネルギーでは、100μmのWETのシステムを通過した後でも、荷電粒子のビームFはいずれの分散もほとんど経ない。これは、非常に高いエネルギー(1GeV以上)に対して、2mで1mm未満、2mで0.1m未満であってもその幅を維持するためである。
【0049】
ただし、低エネルギー、つまり50MeV(または12.5MeV/u)未満のエネルギーでは、ビームの途絶が小さく(例えば、0.95以上の透過エネルギーの割合)、ビームの分散が小さい(2mで1mm未満のビーム幅)、厚さが非常に薄いシステムでのみ到達する。より具体的には、電子ビームに対し100μmのWET、陽子ビームに対し10μmのWET、アルファ粒子または12Cイオンのビームに対し1μmのWETである。
【0050】
特性評価システム1は、中間エネルギー範囲と呼ばれる、核子あたり50MeVと900MeVの間のエネルギーを有する粒子のビームFに特によく適合している。実際、システム1は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートルの次元であり、特に厚さが15μmのWET未満であり、ビームFの低い途絶および低分散という要件が尊重されている。
【0051】
したがって、中間エネルギー範囲は、治療用途のビームFを標的にする。つまり、特性評価システム1からの、この用途に特に適合される発明を形成する陽子に対して70MeV~250MeV、イオンに対して核子あたり50MeVから核子あたり900MeVのエネルギーを有する。実際、ビームFは、低分散であることにより、治療されるゾーンに到達することができ、そのため、ゾーンの近くに位置する健常な組織および器官の劣悪化を回避することにより、非常に正確な解像度でゾーンをターゲットにすることが可能になる。したがって、ビームFのエネルギーを変えるだけで、ビームFの侵入する深さを腫瘍ゾーンで非常に正確に、したがって患者に何かしらのリスクを及ぼすことなく変更することができる。
【0052】
本発明によれば、放射電極2は、放射電極2を荷電粒子のビームが通過するときに、パターン20の表面22の近くで二次電子es
-を放出することができる。二次電子es
-の放出は、パターン20を通過したビームの粒子の数に比例しているため、この現象は有利には線形である。実際、パターン20を通過することにより、ビームFの荷電粒子は、パターン20の原子にそれらのエネルギーを蓄積させ、その結果、パターン20の原子で電子が得られ、原子が電離される。
【0053】
言い換えると、粒子のビームFが通過した後、パターン20の表面22に位置する原子は、最後の電子層に1つ以上の電子を含まず、そのため、それらの安定性を回復するべく電子er
-を回復させざるを得なくなる。パターン20が導電性材料から形成されている場合、電子er
-は、少なくとも1つの電子手段26を介して電子デバイスから移動でき、次いで、電子デバイスによって、ビームFの通過により誘導された電荷または電流の画像によって測定される。したがって、この画像は、特性評価システム1によって測定された信号を構成する。
【0054】
ビームFが放射電極2を通過する間に関与する二次電子の放出は、パターン20の表面上で数ナノメートル、特に10nmにわたってのみ動作する現象である。言い換えれば、それは、パターンの表面22から始まる10nmの厚さにのみ関連する。したがって、パターン20は、超薄型のままでありながら、少なくとも10nmの厚さを有することが好ましい。
【0055】
同時に、基板10はパターン20を機械的に支持することのみが対象であり、有利には、基板から放出される二次電子は測定信号に寄与しないことが理解される。
【0056】
好ましくは、パターン20は、その導電性を確保するのに十分な厚さを有する。実際、使用される堆積技術および/または使用される材料の性質によれば、超薄層、すなわちナノメートルの寸法は、厚みが薄いため多かれ少なかれ互いから絶縁された材料の「島」または「集合体」の形で提示され得る。したがって、その表面の特定の領域では、超薄層が十分な導電性を有することができる一方で、他の領域では、導電性は必要なものよりはるかに低い。
【0057】
したがって、パターン20の厚さは、これらの材料の島または集合体の合体、すなわち、パターン20による基板10の完全な被覆を確実にするために適合され、その結果、パターン20の電導性が十分であるだけでなく、表面22の全体にわたって均一でもあることを確実にすることが好ましい。当業者は、使用される堆積技術および/またはパターンを構成する材料に従って、パターン20の厚さを調整することができる。例として、金で作られたパターン20の場合、二次電子es
-の放出を可能にするのに十分な導電率を得るためには、30nmの厚さで十分である。
【0058】
パターン20は、金属、金属合金、酸化金属、有機化合物、またはそれが十分に導電性となることを可能にする任意の他の材料などの異なる材料で作ることができる。しかし、酸化は二次電子の比率を変更する汚染源であるので、パターン20を形成する材料は防錆性であることが好ましい。実際、導電性または半導電性の薄層および超薄層の汚染は、層の表面が異質の原子および主に酸素原子を吸収する電流劣化現象である。
【0059】
有利には、パターン20は金で作ることができる。金は、原子番号が大きく、防錆性があり、優れた導体である。したがって、二次電子を放出するプロセスを保証および促進するのに特に適している。金は、その防錆特性とそれに起因する層間剥離のために、基板に弱く付着する可能性があるが、金はその一般的な特性、つまり、導電率と原子番号により好ましい材料になる。
【0060】
図5bを参照すると、放射電極2は、有利には、パターン20と基板10との間に挿入された結合層28を備えることができる。
【0061】
結合層28は、特にパターンを形成する材料が十分に付着しない場合に、基板10のパターン20の付着を促進する。例えば、結合層28は、クロム(Cr)またはチタン(Ti)で作ることができる。クロムは平均的な原子番号であるが、酸化されやすく、チタンと同様に金の可能な層間剥離を含むように非常によく適合される。特性評価システム1は、異なる特性を有する複数の結合層28を含むこともできる。
【0062】
さらに、マイクロメートルの基板10の厚さは、荷電粒子のビームFが、より厚いシステム(例えば、15μmのWETを超える厚さ)で発生するであろう加熱と比較して、特性評価システム1の中で誘導する加熱がより少ないことを意味する。実際に、特性評価システム1を通過することにより、ビームFの荷電粒子は原子の低次の厚みと相互作用し、したがって、同一のシステムと比較してこのシステムではエネルギーが低くなるが、厚い基板10を有する。
【0063】
この原理はGarnirら、NIM,202(1-2),p.187-192,1982)にて説明されており、これは、様々な基板での強度に応じた理論的な加熱の計算の結果を概説している。
【0064】
加熱に対する良好な耐性を有する特性評価システム1は、非常に高い強度を有する粒子のビームによって生成された信号を測定する。確かに、粒子のビームの特性評価は、ビームFの通過によって生成される熱に抵抗する能力によって制限される。しかし、実際には、この制限がデバイスの厚さの低減によって克服されたとしても、システムの完全性は強度が1μA未満のビームに対してのみ保証される。
【0065】
したがって、この目的のために、基板10は、耐熱性材料から有利に形成され得る。「耐熱性」とは、ビームが高強度であるときでさえ、基板10を形成する材料が粒子のビームFによって誘導された熱を特定の期間にわたってサポートできることを意味する。
【0066】
好ましくは、基板10は、耐熱性ポリマーで作製することができ、すなわち、ポリマーは、一定の期間、200℃、好ましくは300℃を超える熱に耐えることができる。例えば、ポリマーは、Kapton(登録商標)、Colorless Polyimide 1(登録商標)(CP1)、またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であり得る。Kapton(登録商標)は、過剰な放射と熱に対する優れた耐性を備えたポリイミドで、厚さ8μm未満で入手できる。さらに、Kapton(登録商標)は溶けない。したがって、ポリイミドであるCP1は、放射線に対する耐性が優れている。さらに、1.5μmの厚さで入手可能である。それは、入手可能であるKapton(登録商標)よりも薄い。PEEKは、化学エッチングに対する耐性に加えて、放射線や熱に対する耐性も優れている。有利には、これは6μm未満の厚さで利用できる。
【0067】
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などの他のより一般的なポリマー、例えば、Mylar(登録商標)が使用できる。これらの材料は、0.5μmなどの非常に薄い厚さで入手できるが、このような厚さでは操作が困難である。さらに、それらはガラス転移温度が低い、つまり70℃である。つまり、この温度を超えると、PETはゴム状態から固体状態に移行し、その特性が変化するため、高強度ビームに曝されるシステムには適していない。
【0068】
また、基板を形成する材料は脱ガスしないことが好ましい。確かに、脱ガスは、物質が分子をガスの形態で放出させるプロセスである。これは、特定の材料、特に真空下にある場合に発生する可能性のあるプロセスである。以下に示す材料、つまりポリマーと耐熱性セラミックスは、ほとんど脱ガスされない。
【0069】
また、より好ましくは、基板10は、窒化ケイ素(Si3N4)のような耐熱性セラミックで作ることができる。窒化ケイ素は、放射線や熱に対する耐性が非常に大きく、溶けない。これは、1800℃を超える温度で分解する。つまり、この温度で特性が変化する。非常に有利には、窒化ケイ素は、たとえ非常に小さな表面積(<1cm2)でしか利用できない場合でも、数十ナノメートルの厚さで形成できる。例として、システム1は、50nmの金のパターン20で覆われた100nmの窒化ケイ素の基板10を備えた放射電極2を備えることができる。
【0070】
基板10はいかなる機械的応力もないので、これは、放射線の有害な影響を制限し、特に、高すぎる強度のビームに曝された場合のシステム1の劣化を回避する。実際、特性評価システム1は、測定されるビームFの真空ラインに配置されており、周囲の媒体によって基板10に加えられる接触力はない。
【0071】
特性評価システム1は、非常に低い強度、例えば100fAの粒子のビームの特徴を測定することを可能にする。100fAでのこの制限は、実際には、測定デバイスの限界である。実際、100fA未満では、電子デバイスのノイズから電子の放出によって生成された信号を区別できるようにするために、高度に洗練された測定手段を使用しなければならない。したがって、特性評価システム1は、100fAと1μAの間の強度を有するビームをモニタリングすることを可能にする。
【0072】
特に有利には、パターン20は、特に基板の表面に互いに距離を置いて配置されることによって、互いに電気的に絶縁された複数の導電性セグメント24から形成される。基板10は、セグメント24間に導通がないことを確実にするために、好ましくは電気的に絶縁性である。
【0073】
好ましくは、セグメント24のそれぞれは、電子手段26に接続される。したがって、セグメント24ほど多くの電子手段26は存在しない。したがって、電子er
-、つまり二次電子es
-の放出後に回収された電子は、各セグメント24に対して独立して測定できる。したがって、有利には、各セグメント24は、セグメントを通過した粒子の数に特徴的な特定の信号を有する。
【0074】
好ましくは、セグメント24は、並んで配置される。換言すれば、セグメント24は、ビームFの空間的サンプリングを可能にするように隣接している。ビームFのサンプリングは、ビームの特徴、特にその位置、プロファイルおよびその強度を、形状および互いに対するセグメントの相対的な配置に従って、決定する。
【0075】
図6aに示されているように、所与の軸に沿ってビームFをサンプリングするために、セグメント24は、同じ方向に沿って、同じ幅で等距離に配向することができる。
【0076】
より具体的には、セグメント24は、水平方向に続いて並んで配置され、これにより、X軸に沿ったビームFおよび/またはX軸に沿って移動される、移動可能なビームFを測定することが可能になる(ビームFは、
図6aに垂直な平面Zに沿ってパターン20を通過する)。これは非限定的な例であり、セグメント24は、Y軸に沿った垂直方向、または任意の他の方向に配置することができる。
【0077】
図6bでは、例えば、セグメント24は、(1mmから数mm程度の)異なる幅のものである。より具体的には、パターン20の中心に位置するセグメント24は、パターン20のエッジに位置するセグメント24よりも幅が狭くなっている。このような構成は、ビームFのコアを、ビームFのテール(尾部)よりも高い精度で測定し、ビームのテールをコアよりもより高い感度で、すなわち、中心と比較してビームの側方エッジをより高い感度で測定する。
【0078】
変形例では、セグメント24は、ビームFの非センタリングおよび/または角度の分布を測定するために、角度セクタに切断することができる。また、変形例では、セグメント24は、ビームFの非センタリングおよび/または放射状分布を測定するために、同心セクタに切断することができる。
【0079】
図6cでは、上記の2つの例の組み合わせを見ることができる。セグメント24は、パターン20の中心で角度セクタに切断され、またそれらは中心から離れても同心である。そのようなアレンジは、単一の放射電極2によるビームFのイメージングを有利には達成する。
【0080】
そうでなければ、2つの放射電極2に頼る必要があり、それぞれが、他のパターン20を補完するパターン20を含む。例として、第1の電極2がビームFの角度分布の測定専用であるのに対し、他方の電極2が、その放射状分布の測定専用で、ビームFのプロファイルを再構築することを可能にする。この2つの電極についての実施形態は、以下でより具体的に説明する。
【0081】
ちなみに、
図6cの例では、ビームのイメージングを得るために必要な電極2の数が減るので、通過する材料の量は少なくなる。したがって、そのようなセグメント24の構成を有するパターン20は、特に、リマインダとして、通過材料の非常に薄い厚さに対してビームの低い途絶および低分散の基準を満たすのみである低エネルギービームの測定に適合される。しかし、本発明は、そのような構成に限定されず、より特別な必要性を満たすことを可能にする他の任意の構成が考慮され得る。
【0082】
図7を参照すると、システムは、放射電極2から分離された実質的に平坦な収集電極3をさらに含む。
【0083】
より具体的には、収集電極3は、電極3と放射電極2との間に電位差が存在するように、正の電位で伝送することができる材料層30を含む。実際、収集電極3は、放射電極2によって放出された二次電子e
s
-の全部または一部を収集する(電子の移動は、
図7の矢印によって示されている)。換言すれば、収集電極3は、誘導された電流のループを確実にし、したがって、放射電極2と共に閉回路を形成する。
【0084】
好ましくは、誘導電流をループさせる目的で、材料層30は導電性であり、その結果、層30の表面32は入射二次電子es
-を収集することができる。材料層30は、金属または任意の合金材料で作ることができ、したがって十分に導電性になる。放射電極2と同様に、収集電極3は、層30の機械的支持を確実にする基板12を備えることができる。
【0085】
収集電極3がパターンを含むこと、すなわち、材料層30が放射電極2のパターン20のようなパターンを形成することは必須ではない。したがって、材料層30は、収集電極3の表面全体を覆うことができる。実際、収集電極は、二次電子es
-が放射電極2の表面を離れる位置をイメージングする役割を有していない。この機能が本発明のパターンによって達成されるからである。上述のように、収集電極は、誘導電流のループを可能にし、したがって放射電極2と共に閉回路を形成するように機能する。
【0086】
有利には、二次電子の収集を促進するために、収集電極3を放射電極2の反対側に配置することができる。実際、二次電子が放射電極2の表面を離れるとき、電子es
-は本質的に等方性の様式で放出される。したがって、電極2および3が互いに対向して配置されると、電子の収集が促進される。
【0087】
表面22からのそれらの主に等方性の放出により、二次電子es
-のいくつかは、収集電極3の表面32の異なる位置に到達する可能性がある。
【0088】
ちなみに、このような構成では、収集電極3の最大面がビームFの伝搬軸を実質的に垂直に通過しているので、電極3の厚みと放射電極2の厚みは、好ましくは、例えば組み合わせて15μmのWETを超えないようにする。実際、これは、特性評価システム1がビームFの低い途絶(例えば、0.95を超えるエネルギーの透過率)およびビームFの低分散(1mm未満である2mでのビームの幅)の基準を満たすプロセスである。言い換えると、この目的によれば、通過する材料の厚さ、すなわち基板10とパターン20、および基板12と材料層30の厚さの合計は、例えば、陽子線療法用に15μm未満のWETでなければならない。
【0089】
しかし、本発明は、そのような構成に限定されず、収集電極3は、ビームFの伝播軸の外側に位置することができる。本発明のこの第3の実施形態(
図8aおよび
図8bに示されている)では、収集電極3は遮るものではなく、厚さの制限を受けない。収集電極3は、この構成では、基板12および導電性材料30を含むスタック、または有利には単一の導電性材料、例えば金属板のいずれかで形成することができる。単一の制限が、ビームFの伝播ライン内に特性評価システム1を設置できる必要性にある。例えば、
図8aでは、収集電極3は互いに対向する2つの収集電極に分離されているが、
図8bでは、収集電極3は連続的であり、円形パターン20を中心に円筒形である。
【0090】
あるいは、収集電極3による二次電子es
-の収集率を最大化し、電子es
-の分散効果を最小化するために、収集電極3に印加される電位を増加させることも可能である。実際、収集電極3の電位を増加させることにより、電極3と放射電極2との間の電位差が増加し、その結果、表面32に向かう二次電子の引力が増加する。
【0091】
実際、特性評価システム1は、有利には、放射電極2の表面から放出された二次電子es
-の量を測定することを可能にする測定手段4を備えることができる。言い換えれば、測定手段4は、放射電極2の表面から放出された二次電子es
-の信号を「読み取る」。測定手段は、放出面から測定を行う、すなわち、放射電極2を出る信号を測定することを可能にする。放出面を測定することは有利である。
【0092】
実際、一方では、セグメント24が互いに電気的に絶縁されているため、放出面を測定すると、独立して導電性セグメント24各々から放出された二次電子es
-の信号を個別に測定し、荷電粒子のビームFをサンプリングする。
【0093】
実際、一方で、上述したように、収集電極3によって収集された電流は、放射電極2に対する電極3の相対的な位置、収集電極3に印加される電位、または残留する電界および/または磁界の影響に応じて、変動を受ける。したがって、放出面の信号を測定することにより、電子が放出されること、及びビームのラインの機器に影響を与えることが回避される。
【0094】
図9cは、セグメント24と測定手段4との間を接続するための電気回路を概略的に示す。上記のように、各セグメント24は、電子手段26に接続されている。好ましくは、この電子手段は、測定手段4によってセグメント24の電子手段26を接続するインターフェース手段に通じている。測定手段4は、低強度電流を測定するように適合され、それにより、放射電極2の表面から放出された二次電子e
s
-の量を測定することができる。例えば、測定手段4は、低ノイズの電子システムからなることができる。電気回路は、電流をセグメントごとに測定できるように構成されている。
【0095】
さらに、収集電極3の使用は任意である。実際、収集電極3がない場合、放出された二次電子e
s
-は、特性評価システム1の環境に残すことができる。この場合、電子e
s
-は、システム1を取り巻く物質によって吸収される。この操作方法を
図5a、
図5b、および
図5cに示す。したがって、放射電極2はそれ自体で十分である。
【0096】
図9aは、本発明の第4の実施形態による特性評価システム1を概略的に示す。この実施形態では、特性評価システム1は、複数、すなわち少なくとも2つの放射電極2と収集電極3とを備える。
【0097】
複数の放射電極2の使用は、上記の通り、単一のパターン20がすべての必要な情報を得ることを可能にしない場合、補足的な手段を得ることを可能にする。これはまた、冗長な測定値を取得する、さもなければ測定値を洗練させる。
図9aに示す例では、第1の放射電極2は、X軸に沿ったビームFのプロファイルの測定専用であり、その一方で、他方の電極2が、Y軸に沿ったビームFのプロファイルを測定する。
【0098】
さらに、
図9aにまた示されているように、収集電極3は、第1の表面32の反対側の第2の表面32も備えることができる。そのような構成では、収集電極3は、2つの放射電極2によって放出された二次電子e
s
-を収集することができるように、2つの放射電極2の間に配置される。このような構成では、
図9aの上部に見える放射電極2に対して放出が後方に行われながらも、
図9aの下部に見える放射電極2に対して放出が前方に行われる。
【0099】
しかし、本発明はこの例示に限定されない。
【0100】
特性評価システム1はまた、複数の放射電極2によって放出された二次電子の収集専用の複数の収集電極3を備えることができる。収集電極の数が放射電極の数と等しいことは可能であるが、必須ではない。
【0101】
図9bの場合、第1の放射電極2(
図9bの上部に見える)によって放出される二次電子を収集するための専用の第1の収集電極3と、第2の放射電極2から二次電子を収集するための専用の第2の収集電極3と、が存在する。この構成では、
図9bの上部に見える放射電極2と収集電極3に対して放出が前方に行われながらも、
図9aの下部に見える放射電極2と収集電極3に対して放出が後方に行われる。
【0102】
さらに、
図9bにてまた見られるように、その伝搬方向において、ビームFは、必ずしも電極の基板10を通過してからパターン20を通過するわけではない。換言すれば、ビームFは、パターン20、次いで基板10を通過することもできる。
【0103】
しかし、本発明はこの例示に限定されない。
【0104】
例えば、システム1は、第1および第2の電極2のセグメント24間ならびに第2の電極および第3の電極2のセグメント24間で120°の角度のオフセットを含む3つの放射電極2を含むことができ、ビームFは冗長セグメントに沿ってサンプリングでき、その精度が向上する。
【0105】
あるいは、特性評価システム1は、並進および/または回転移動を実行するように移動可能であり得る。この目的のために、システム1をガイドするための機械的制御手段を設けることができる。そのような構成は、サンプリングを実行するために使用されるのが特性評価システム1の並進および/または回転ステップであるため、放射電極2の数を低減する。
【0106】
本発明はまた、上記のようなシステム1を備える荷電粒子のビームを生成するための機械に関し、システムは、固定され、ビームFの伝搬ラインに永続的である。
【0107】
例えば、機械は、ハドロン療法または陽子線療法装置、粒子加速器、放射性医薬品同位体を製造するための機械であり得る。
【0108】
その機械は、深度変調器の上流および下流のビームプロファイリングのためのシステムを備えることができ、アセンブリは陽子ビーム真空管内に配置される。ビームF、特にチャネル、ビームから来る粒子の軌道を制御するために、1つまたは複数の磁石をビームの近くに配置することができる。これらの磁石は磁場の起点にあり、粒子を照射または治療されるゾーンに向けることができるようになる。それらは、ビームFの特性評価をするためのシステムの動作において何の役割も果たさない。
【0109】
より一般的には、特性評価システム1は、荷電粒子のビームをモニタリングすることが有用である任意の機器に設置および/または使用することができる。
【0110】
例示的な実施形態
荷電粒子のビームを特性評価するシステム1が検証されてきた。
【0111】
それは、50nmの金のパターン20が堆積された厚さ6μmのPEEKで作られた基板10から構成される放射電極2を含む。パターン20は、X軸に沿って並んで配置され、幅が1.6mmであり、互いに0.35mmの距離離れている複数のセグメント24を含む。またこのシステムは、厚さ50nmの金の層30を支える8μmのKapton(登録商標)基板12を含む収集電極3を含む。
【0112】
この特性評価システムは、ARRONAXサイクロトロンの陽子線の出力から約1m下流にある真空チャンバに設置されている。真空チャンバは、ビームF内でシステムを移動させる並進テーブルによって支えられる。設備はまた、ピコアンメータおよび簡略化された取得システムを備えた、信号を読み取るためのシステムを備える。
【0113】
また、真空チャンバには2種類のビーム入射窓が備えられている。したがって、最初の一連の測定では、2mmのサファイアで作られた窓が使用された(
図11a~
図11c)。このタイプの窓は、ビームからのエネルギーを減少させ、そのため、通過した後、機械によって供給された68MeVの陽子は、検出器で60MeVのエネルギーを有する、つまり11.7%減少する。
【0114】
しかし、2回目の測定では、230μmのKapton窓が使用されている。この窓は、たとえ途絶が存在していても、ビームの減少を減らす。例として、68MeVのビームは窓を通過した後2MeVのエネルギーを失い、30MeVのビームは2.2MeVのエネルギーを失う(2.9%および7.3%の減少)。
【0115】
陽子線での二次電子の比率の測定。
【0116】
図10aは、27.8MeV(テストB、黒丸)、60MeV(テストA、黒菱形)、66MeV(テストB、黒丸)のビームFについて測定された二次電子の比率のバリエーションを示している。本研究中に行われた実験測定が、先行技術で得られた結果と比較されている。
【0117】
上記の測定のほとんどは、低または非常に低いエネルギー(<20MeV)の荷電粒子のビームに関連している。その時に利用可能なエネルギーで放出材料を検討するために、これらのエネルギーにおいて、数多くの実験が行われてきた。
【0118】
本研究でテストされた3つのエネルギーでは、二次電子の速度は予想されたものに近い。得られた測定値がRotthardらによる予測に基づいて重ねられるからである。さらに、この放出率は、まさに非常に低い強度のビームの場合でも、利用できる信号を生成するのに広く十分である。
【0119】
二次電子の比率は、発射体粒子の長さの単位あたりの電子エネルギーの損失として変動があることを指摘することは有用である(Betheの式)。しかし、後者の量は、発射体からのエネルギーとともに減少する。それは、最小値(電離の最小値と呼ばれ、例えば陽子の場合は約2GeV/c)まで増加してその後ゆっくりと戻るが、広範囲にわたった低エネルギーでの損失を下回ったままである。したがって、運動エネルギーが高いと、粒子は二次電子のより少ない放出を誘導する。しかし、この現象は、高エネルギービームが高強度で発生し、したがって放出されるより多くの二次電子を有利に誘導するという事実によって、高エネルギーで補償されることに留意しなければならない。
【0120】
図10bは、ビームの強度が27.8MeV(テストB、正方形)、60MeV(テストA、菱形)、66MeV(テストB、丸)のビームFに対して10
-1pAと10
4pAの間で変化するときの(測定電流における)二次電子の比率の変化を示している。
【0121】
二次電子の比率は、ビームの強度に応じて常に変化し、二次電子を放出する現象の線形性を示している。したがって、特性評価システム1は、ビームの強い部分と低い部分との間のモニタからの応答の歪みがないことにより、ビームのプロファイルを具体的にモニタリングすることができる。さらに、これは、側方過剰投与の適用が不可逆的に健常な組織に損傷を与え、患者の健康に影響を与える可能性がある陽子療法による腫瘍領域の治療に特に有利である。
【0122】
さらに、
図10bは、特性評価システム1により、提供されているように、非常に低い強度のビーム、つまり60MeVのビームで測定した場合に最大2・10
-1pA、および非常に高い強度のビーム、つまり66MeVのビームで測定した場合、最大10
4pAの二次電子の比率を測定できることを示している。当然、すべての中間の強度が利用できる。
【0123】
陽子線のプロファイルと位置を測定する。
【0124】
図11a~
図11cは、セグメント24の位置にて測定された電流の変化を示している。陽子のエネルギーは60MeVで、ビームの強度はそれぞれ200fA、1pA、1nAである。示されている3つのプロファイルは、
図10bに示されている菱形の点に対応している。
【0125】
これらの図に示されているように、ビームFのプロファイルは、対象のセグメント24によって測定された信号に従って再構築することができる。実際、プロファイルは数個の点から調整できるため、プロファイルを取得するために各セグメント24の信号を測定する必要はない。しかし、セグメント24の数が増加するほど、プロファイルの解像度は高くなる。セグメント24ごとに測定された信号は、ビームの強度とともに増加する。15mmにあるセグメント24を分析すると、強度は5fA~200fA、0.07pA~1pA、24pA~1nAになる。
【0126】
より具体的には、
図11aに見られるように、測定に関する不確実性は、非常に低い強度のビーム(200fA)で非常に高いままである。上で明示したように、非常に低い強度の場合、測定電子機器のノイズは、特性評価システム1にとって制限を課す要因のままである。さらに、観察できるように、セグメント24ごとに測定された電流(最大5fA)が200fAで低いままであっても、ビームのプロファイルを再構築でき、ビームの位置を比較的小さな誤差(16.99±0.4mm)で推定できる。
【0127】
1pA(
図11b)および1nA(
図11c)のビームの場合、測定に関する不確実性が小さくなり、ビームのプロファイルと位置をより正確に判定できる。さらに、ビームの位置とプロファイルは、特性評価システム1の位置を変更することによって(真空チャンバをサポートする変換テーブルを使用して)、同じセグメント24の電流の変動をモニタリングすることによって判定できる。
【0128】
さらに、
図11a~
図11cに見られるように、パラメータσからビームFのサイズの「測定値」を求めることも可能である。実際、このパラメータσは、主に3~3.5mmで、200fAで0.6mm、1pAで0.28mm、1nAで0.06mmの誤差があり、具体的にはビームの実際のサイズの6分の1を表す。つまり、シグマが3.37mmの場合、ビームのサイズは20.22mmになる。そのような例は、さらに
図11cで得られる。したがって、本発明によるシステム1は、広いダイナミックレンジにわたって、すなわち、強度が1nAで数百fAの間で変動し得るビームについて、ビームのプロファイルを評価することを可能にする。