(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A47J27/00 109B
A47J27/00 103Z
(21)【出願番号】P 2021025443
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】河合 祐
(72)【発明者】
【氏名】梛木 隆
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雅章
【審査官】芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174707(JP,A)
【文献】特開2012-187295(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104688014(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋と、
水を収容する水容器と、
前記水容器を加熱する水容器加熱装置と、
前記水容器から発生した蒸気を加熱して100℃を超える過熱蒸気を生成し、当該過熱蒸気を前記鍋内に供給する過熱蒸気発生装置と、
前記水容器から発生した蒸気を取り込む前記過熱蒸気発生装置の入口側に配置され、前記蒸気の温度を検知する入口側温度検知部と、
前記過熱蒸気を前記鍋内に供給する前記過熱蒸気発生装置の出口側に配置され、前記過熱蒸気の温度を検知する出口側温度検知部と、
前記水容器加熱装置及び前記過熱蒸気発生装置の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記過熱蒸気発生装置による加熱を行う一方で前記鍋内に前記過熱蒸気を供給しない予熱工程と、前記水容器から発生した蒸気を取り込んで前記鍋内に前記過熱蒸気を供給する供給工程とを行うように前記過熱蒸気発生装置を制御するとともに、前記予熱工程において前記入口側温度検知部の検知温度が100℃以上である第1閾温度になったとき、当該第1閾温度を超えないように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、前記供給工程において前記入口側温度検知部の検知温度が第1閾温度よりも高い第2閾温度になったとき、当該第2閾温度を超えないように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱めるように制御する、
炊飯器。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1閾温度を100℃以上120℃以下の範囲内の特定の温度に設定する、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2閾温度を120℃以上150℃以下の範囲内の特定の温度に設定する、請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記水容器の温度を検知する水容器温度検知部を更に備え、
前記制御部は、前記予熱工程において前記水容器温度検知部の検知温度が第3閾温度以上になったとき、前記第1閾温度を高くする、請求項1~3のいずれか1つに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御部は、前記予熱工程において前記水容器温度検知部の検知温度が前記第3閾温度未満のとき、前記第1閾温度を100℃以上110℃未満の範囲内の特定の温度に設定し、前記予熱工程において前記水容器温度検知部の検知温度が前記第3閾温度以上になったとき、前記第1閾温度を110℃以上120℃以下の範囲内の特定の温度に設定する、請求項4に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記制御部は、前記予熱工程において前記出口側温度検知部の検知温度が100℃以上である第4閾温度になったとき、当該第4閾温度を超えないように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、前記予熱工程において前記水容器温度検知部の検知温度が前記第3閾温度を超えたとき、前記第4閾温度を高くする、請求項4又は5に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記制御部は、前記供給工程において予め決められた期間が経過した場合、前記出口側温度検知部の検知温度が第5閾温度以下になるように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、その後予め決められた期間が経過した後、前記水容器加熱装置による加熱を停止する、請求項1~6のいずれか1つに記載の炊飯器。
【請求項8】
前記制御部は、前記供給工程において前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、前記出口側温度検知部の検知温度が第5閾温度以下まで低下した後、前記水容器加熱装置による加熱を停止する、請求項1~6のいずれか1つに記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、100℃を超える蒸気(以下、過熱蒸気という)を生成する過熱蒸気発生装置を備える炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器としては、例えば、特許文献1(特開2016-44880号公報)に記載の炊飯器が知られている。特許文献1には、水を収容する水容器と、水容器を加熱する水容器加熱装置と、水容器から発生した蒸気を加熱して100℃を超える過熱蒸気を生成し、当該過熱蒸気を鍋内に供給する過熱蒸気発生装置とを備える炊飯器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の炊飯器では、鍋内に供給する過熱蒸気の温度をより高くするという観点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、鍋内に供給する過熱蒸気の温度をより高くすることができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、鍋と、
水を収容する水容器と、
前記水容器を加熱する水容器加熱装置と、
前記水容器から発生した蒸気を加熱して100℃を超える過熱蒸気を生成し、当該過熱蒸気を前記鍋内に供給する過熱蒸気発生装置と、
前記水容器から発生した蒸気を取り込む前記過熱蒸気発生装置の入口側に配置され、前記蒸気の温度を検知する入口側温度検知部と、
前記過熱蒸気を前記鍋内に供給する前記過熱蒸気発生装置の出口側に配置され、前記過熱蒸気の温度を検知する出口側温度検知部と、
前記水容器加熱装置及び前記過熱蒸気発生装置の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記過熱蒸気発生装置による加熱を行う一方で前記鍋内に前記過熱蒸気を供給しない予熱工程と、前記水容器から発生した蒸気を取り込んで前記鍋内に前記過熱蒸気を供給する供給工程とを行うように前記過熱蒸気発生装置を制御するとともに、前記予熱工程において前記入口側温度検知部の検知温度が100℃以上である第1閾温度になったとき、当該第1閾温度を超えないように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、前記供給工程において前記入口側温度検知部の検知温度が第1閾温度よりも高い第2閾温度になったとき、当該第2閾温度を超えないように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱めるように制御する、
ように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る炊飯器によれば、鍋内に供給する過熱蒸気の温度をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る過熱蒸気発生装置を備える炊飯器の模式断面図である。
【
図2】
図1の炊飯器の蓋の一部の部品を取り外した状態を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る過熱蒸気発生装置の側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る過熱蒸気発生装置の平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る過熱蒸気発生装置の分解斜視図である。
【
図7】本実施形態に係る炊飯器を用いて炊飯工程の一例を行ったときの各種温度検知部の検知温度又は閾温度の変化を示すグラフである。
【
図8】本実施形態に係る炊飯器を用いて炊飯工程の一例を行ったときの各種温度検知部の検知温度又は閾温度の変化を示すグラフである。
【
図9】
図1の炊飯器において、IGBTを基板に実装する構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者らは、鍋内に供給する過熱蒸気の温度をより高くするために鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0010】
従来の炊飯器において、炊飯工程は、浸水工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程の主として4つの工程で構成されている。過熱蒸気発生装置は、蒸らし工程において過熱蒸気を鍋内に供給するように構成されている。鍋内に供給する過熱蒸気の温度が高いほど、ご飯の食味が向上することが知られている。従来の炊飯器において、過熱蒸気発生装置が生成する過熱蒸気の温度は130℃~220℃である。
【0011】
また、従来の炊飯器においては、予熱工程時に過熱蒸気発生装置による加熱を行うと、100℃より高温(例えば、130℃)の熱気が過熱蒸気発生装置内で生成されることになり、過熱蒸気発生装置及びその周辺に配置される部品への熱負荷が大きくなる。鍋内に過熱蒸気を供給しないときに、この熱負荷が大きい状態が継続すると、過熱蒸気発生装置及びその関連部品の劣化につながる。このため、従来の炊飯器は、過熱蒸気発生装置の入口側に入口側温度検知部を備え、当該入口側温度検知部の検知温度が閾温度(例えば130℃)になったとき、水容器加熱装置及び過熱蒸気発生装置、或いは過熱蒸気発生装置による加熱を停止するように構成されている。
【0012】
しかしながら、この構成では、220℃を超える過熱蒸気を発生させる場合は、過熱蒸気発生装置の予熱時に過熱蒸気発生装置の発熱により、過熱蒸気発生装置及びその周辺の部品の温度が高くなり、過熱蒸気を発生させる動作を継続できなくなる。このため、従来の炊飯器においては、鍋2内に供給する過熱蒸気の温度を220℃より高くすることが難しい。
【0013】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、過熱蒸気を鍋内に供給するときと、供給しないときとで入口側温度検知部の閾値を変更することで、過熱蒸気の温度をより高温(例えば250℃)まで上昇可能であることを見出した。過熱蒸気の温度を上昇させることで、食味をより高めることができる。この新規な知見に基づき、本発明者らは、以下の発明に至った。
【0014】
本発明の第1態様によれば、鍋と、
水を収容する水容器と、
前記水容器を加熱する水容器加熱装置と、
前記水容器から発生した蒸気を加熱して100℃を超える過熱蒸気を生成し、当該過熱蒸気を前記鍋内に供給する過熱蒸気発生装置と、
前記水容器から発生した蒸気を取り込む前記過熱蒸気発生装置の入口側に配置され、前記蒸気の温度を検知する入口側温度検知部と、
前記過熱蒸気を前記鍋内に供給する前記過熱蒸気発生装置の出口側に配置され、前記過熱蒸気の温度を検知する出口側温度検知部と、
前記水容器加熱装置及び前記過熱蒸気発生装置の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記過熱蒸気発生装置による加熱を行う一方で前記鍋内に前記過熱蒸気を供給しない予熱工程と、前記水容器から発生した蒸気を取り込んで前記鍋内に前記過熱蒸気を供給する供給工程とを行うように前記過熱蒸気発生装置を制御するとともに、前記予熱工程において前記入口側温度検知部の検知温度が100℃以上である第1閾温度になったとき、当該第1閾温度を超えないように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、前記供給工程において前記入口側温度検知部の検知温度が第1閾温度よりも高い第2閾温度になったとき、当該第2閾温度を超えないように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱めるように制御する、
炊飯器を提供する。
【0015】
本発明の第2態様によれば、前記制御部は、前記第1閾温度を100℃以上120℃以下の範囲内の特定の温度に設定する、第1態様に記載の炊飯器を提供する。
【0016】
本発明の第3態様によれば、前記制御部は、前記第2閾温度を120℃以上150℃以下の範囲内の特定の温度に設定する、第1又は第2態様に記載に記載の炊飯器を提供する。
【0017】
本発明の第4態様によれば、前記水容器の温度を検知する水容器温度検知部を更に備え、前記制御部は、前記予熱工程において前記水容器温度検知部の検知温度が第3閾温度以上になったとき、前記第1閾温度を高くする、第1~第3態様のいずれか1つに記載の炊飯器を提供する。
【0018】
本発明の第5態様によれば、前記制御部は、前記予熱工程において前記水容器温度検知部の検知温度が前記第3閾温度未満のとき、前記第1閾温度を100℃以上110℃未満の範囲内の特定の温度に設定し、前記予熱工程において前記水容器温度検知部の検知温度が前記第3閾温度以上になったとき、前記第1閾温度を110℃以上120℃以下の範囲内の特定の温度に設定する、第4態様に記載の炊飯器を提供する。
【0019】
本発明の第6態様によれば、前記制御部は、前記予熱工程において前記出口側温度検知部の検知温度が100℃以上である第4閾温度になったとき、当該第4閾温度を超えないように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、前記予熱工程において前記水容器温度検知部の検知温度が前記第3閾温度を超えたとき、前記第4閾温度を高くする、第4又は第5態様に記載の炊飯器を提供する。
【0020】
本発明の第7態様によれば、前記制御部は、前記供給工程において予め決められた期間が経過した場合、前記出口側温度検知部の検知温度が第5閾温度以下になるように前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、その後予め決められた期間が経過した後、前記水容器加熱装置による加熱を停止する、第1~6態様のいずれか1つに記載の炊飯器を提供する。
【0021】
本発明の第8態様によれば、前記制御部は、前記供給工程において前記過熱蒸気発生装置による加熱を弱め、前記出口側温度検知部の検知温度が第5閾温度以下まで低下した後、前記水容器加熱装置による加熱を停止する、第1~第6態様のいずれか1つに記載の炊飯器を提供する。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0023】
また、以下では、説明の便宜上、通常使用時の状態を想定して「上」、「下」等の方向を示す用語を用いるが、本発明に係る炊飯器の使用状態等を限定することを意味するものではない。
【0024】
《実施形態》
図1及び
図2を用いて、本発明の実施形態に係る炊飯器の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る炊飯器の模式断面図である。
図2は、
図1の炊飯器の蓋の一部の部品を取り外した状態を示す平面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、水と米とを含む調理物が入れられる鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能な中空構造の蓋3が取り付けられている。蓋3の内側(鍋2の開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を密閉可能な略円盤状の内蓋4が着脱可能に取り付けられている。
【0026】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して隙間が空くように配置される筒状部分1baと、筒状部分1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとを備えている。また、フランジ部1bbには、水容器5を収納する水容器収納部1bcが形成されている。
【0027】
水容器5は、蒸気を生成するための水を収容する有底筒状の容器である。水容器収納部1bcの外周面には、水容器5を加熱する水容器加熱装置6が取り付けられている。本実施形態において、水容器加熱装置6は、加熱コイルにより水容器5を誘導加熱するように構成されている。なお、水容器加熱装置6は、ヒータにより水容器5を加熱するように構成されてもよい。水容器加熱装置6が水容器5を加熱することにより、水容器5内の水が沸騰して、約100℃の蒸気が生成される。また、水容器収納部1bcの側部には開口が設けられている。当該開口部分には、水容器5の温度を測定するための水容器温度検知部51が、水容器収納部1bcに収納された水容器5の側部に当接可能に配置されている。
【0028】
コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底筒状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部分1baの下端部に取り付けられている。コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置7が取り付けられている。鍋加熱装置7は、底内加熱コイル7aと底外加熱コイル7bとで構成されている。底内加熱コイル7aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル7bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。底内加熱コイル7aの下方には、底内加熱コイル7aより発生した磁束を内部に誘導して磁束の漏れを防止する複数のフェライト8が配置されている。
【0029】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口が設けられている。当該開口部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部9が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に配置されている。鍋2の温度は鍋2内の調理物の温度と略同じであるので、鍋温度検知部9が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の調理物の温度を知ることができる。
【0030】
蓋3は、蓋3の外郭を構成する上外郭部材3aと下外郭部材3bとを備えている。また、蓋3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、蓋3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に保持されている。蓋3には、その中央部付近を蓋3の厚み方向に貫通するように貫通穴3cが設けられている。貫通穴3cの上端部は、上外郭部材3bに設けられた凹部3aaの底部に連通している。凹部3aaには、蒸気筒10が着脱自在に取り付けられている。
【0031】
蓋3の内蓋4側の貫通穴3cの周囲には、環状のパッキン11が取り付けられている。パッキン11は、内蓋4が蓋3に取り付けられたときに、内蓋4に設けられた蒸気排出穴4aの周囲に密着するように設けられている。蒸気筒10の上壁には、蒸気排出穴4a及び貫通穴3cを通じて凹部3aa内に供給された鍋2内の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし穴10aが設けられている。
【0032】
内蓋4の外周部の鍋2側の面には、環状のパッキン12が取り付けられている。パッキン12は、蓋3が閉状態にあるときに鍋2のフランジ部に密着するように設けられている。
【0033】
また、蓋3の内部には、水容器5から発生した蒸気を加熱して100℃を超える過熱蒸気を生成し、当該過熱蒸気を鍋2内に供給する過熱蒸気発生装置13が設けられている。過熱蒸気発生装置13は、ビスなどの締結部材により蓋3の下外郭部材3bに取り付けられている。過熱蒸気発生装置13の構造については、後で詳細に説明する。
【0034】
また、蓋3には、炊飯コース、炊飯時間などの各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示部21と、白米コースや玄米コース、白米(柔らかめ)コースなどの複数の炊飯コースの中から特定の炊飯コースを選択可能な操作部(図示せず)とが設けられている。操作部は、炊飯コースの選択の他、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を指示できるように、炊飯開始ボタンなどの複数のボタンで構成されている。使用者は、表示部21の表示内容を参照しつつ、操作部にて特定の炊飯コースを選択し、炊飯開始を指示することができる。
【0035】
炊飯器本体1の内部には、制御部22が搭載されている。制御部22は、米を炊飯するための炊飯シーケンスを複数記憶する記憶部を備えている。ここで、「炊飯シーケンス」とは、浸水、昇温、沸騰維持、蒸らしの主として4つの工程で構成される炊飯工程の各工程を順に行うにあたって、各工程において通電時間、加熱温度、加熱時間、加熱出力等が予め決められている炊飯の手順をいう。各炊飯シーケンスは、複数の炊飯コースのいずれかにそれぞれ対応している。制御部22は、操作部にて選択された炊飯コース及び各温度検知部の検知温度などに基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。また、制御部22は、水容器加熱装置6及び過熱蒸気発生装置13の動作を制御する。制御部22による制御については、後で詳細に説明する。
【0036】
次に、
図3~
図6を参照しつつ、過熱蒸気発生装置13の構造について、より詳細に説明する。
図3は、過熱蒸気発生装置13の側面図である。
図4は、過熱蒸気発生装置13の平面図である。
図5は、過熱蒸気発生装置13の分解斜視図である。
図6は、
図4のA1-A1線断面図である。
【0037】
図5に示すように、過熱蒸気発生装置13は、パイプ31と、パイプ31内に配置された熱交換器32と、パイプ31の外周面を包囲するように配置されたコイルボビン33と、コイルボビン33の外周面に配置された誘導加熱コイル34とを備えている。
【0038】
パイプ31は、誘導加熱コイル34が駆動されたときにパイプ31と熱交換器32の両方が誘導加熱されるように、例えば、オーステナイト系ステンレスなどの非磁性金属で構成されている。パイプ31と熱交換器32の両方が誘導加熱されることにより、パイプ31内に取り込まれた蒸気は、100℃を超える過熱蒸気となるように加熱される。
【0039】
パイプ31の一端部には、パイプ31内に蒸気を供給する吸気パイプ35が接続されている。吸気パイプ35は、蓋3が閉状態にあるときに水容器5内と連通し、水容器5内で発生した蒸気をパイプ31内へ導くように設けられている。吸気パイプ35とパイプ31との接続部には、吸気パイプ抑え部材36が設けられている。
図3及び
図4に示すように、吸気パイプ抑え部材36がコイルボビン33の一端部に取り付けられることにより、吸気パイプ35がパイプ31から外れないように抜け止めされる。蓋3の下外郭部材3bと水容器5との間には、
図1に示すように、環状のパッキン14が取り付けられている。パッキン14は、蓋3が閉状態にあるときに水容器5のフランジ部に密着するように設けられている。
【0040】
なお、水容器5の上方の下外郭部材3bと吸気パイプ35を連結する通路16には、逆止弁17が設けられている。逆止弁17は、自重で落ちるボール17aとオリフィス状の弁座17bとを有する。水容器5の内部の圧力が上昇すると、ボール17aが浮いて逆止弁17は閉塞放状態から開放状態になる。鍋2の内部の圧力が上昇すると、ボール17aが下がり弁座17bと密着することで逆止弁17が閉まるため、水容器5への逆流を抑制することができる。
【0041】
パイプ31の他端部は、
図1に示すように、鍋2内に向かうように曲げられ、内蓋4に設けられた過熱蒸気排出穴4bを通じて鍋2内と連通している。パイプ31の他端部には、
図5及び
図6に示すように、過熱蒸気排出用金具37が取り付けられている。パイプ31内の過熱蒸気は、過熱蒸気排出用金具37及び過熱蒸気排出穴4bを通じて鍋2内に排出される。
【0042】
また、パイプ31の他端部には、
図6に示すように、当該他端部及び過熱蒸気排出用金具37を覆うように環状のパッキン15が配置されている。パッキン15は、
図1に示すように、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4の過熱蒸気排出穴4bの周囲に密着するように設けられている。パッキン15は、外周部をパイプ抑え部材38に保持されている。パイプ抑え部材38は、コイルボビン33の他端部に取り付けられている。パイプ抑え部材38の外周面には、パッキン39が嵌合している。このパッキン39により、パッキン15がパイプ抑え部材38及びパイプ31と密着されている。
【0043】
熱交換器32は、
図5及び
図6に示すように、芯棒32aと、芯棒32aの外周面に螺旋状に巻き回された螺旋体32bとを備えている。芯棒32aと螺旋体32bの少なくとも一方は、誘導加熱コイル34の駆動により誘導加熱されるように、金属で構成されている。芯棒32aは、パイプ31内においてパイプ31の中心軸と同軸に配置されている。なお、
図6において、芯棒32a及び螺旋体32bについては、側面図で示している。
【0044】
また、パイプ31には、
図6に示すように、熱交換器32の両端部近傍にカシメ部31aが設けられている。これらのカシメ部31aにより、熱交換器32の移動が規制されている。過熱蒸気排出側(出口側)のカシメ部31aには、パイプ31内で生成された過熱蒸気の温度を検知する出口側温度検知部41が当接している(
図4及び
図5参照)。すなわち、出口側温度検知部41は、過熱蒸気を鍋2内に供給する過熱蒸気発生装置13の出口側に配置され、過熱蒸気の温度を検知するように構成されている。一方、蒸気取り込み側(入口側)のカシメ部31aには、パイプ31内に取り込まれた蒸気の温度を検知する入口側温度検知部42(
図4及び
図5参照)が当接している。すなわち、入口側温度検知部42は、水容器5から発生した蒸気を取り込む過熱蒸気発生装置13の入口側に配置され、蒸気の温度を検知するように構成されている。
【0045】
コイルボビン33は、樹脂などの絶縁部材で構成されている。コイルボビン33は、
図6に示すように、パイプ31に対して空間を空けて設けられている。これにより、パイプ31が誘導加熱されて発熱した場合でも、その熱によりコイルボビン33が溶融することが抑えることができる。また、このとき、コイルボビン33とパイプ31との間に断熱材を配置する必要性も無くすことができる。
【0046】
誘導加熱コイル34は、コイルボビン33の外周面に少なくとも2つ以上(本実施形態においては2つ)に分割して配置されている。誘導加熱コイル34は、通常、中央部分の加熱力が最も高く、中央部分から離れる距離が長くなるほど加熱力が低下するという性質を有している。誘導加熱コイル34を2つ以上に分割して配置することで、当該分割された誘導加熱コイルの中央部分から両端部までの距離を短くすることができる。例えば、誘導加熱コイル34の長さ50mmである場合、当該誘導加熱コイル34の中央部分から両端部までの距離は25mmとなる。これに対して、誘導加熱コイル34を2つに分割した場合、当該分割した誘導加熱コイルの中央部分から両端部までの距離は12.5mmとなる。これにより、誘導加熱コイル34による加熱力の低下を抑えることができ、誘導加熱コイル34による平均加熱力を向上させることができる。
【0047】
次に、本実施形態に係る炊飯器の動作について説明する。
図7は、本実施形態に係る炊飯器を用いて炊飯工程の一例を行ったときの各種温度検知部の検知温度DT9,DT51又は閾温度T41,T42の変化を示すグラフである。
図7において、鍋温度検知部9の検知温度DT9の変化を点線で示している。また、水容器温度検知部51の検知温度DT51の変化を1点鎖線で示している。また、出口側温度検知部41の閾温度T41の変化を2点鎖線で示している。また、入口側温度検知部42の閾温度T42の変化を実線で示している。
【0048】
本実施形態において、制御部22は、過熱蒸気発生装置13による加熱を行う一方で鍋2内に過熱蒸気を供給しない予熱工程と、水容器5から発生した蒸気を取り込んで鍋2内に過熱蒸気を供給する供給工程とを行うように過熱蒸気発生装置13を制御する。予熱工程は、浸水工程、昇温工程、及び沸騰維持工程に対応する。供給工程は、蒸らし工程の前期に対応する。
【0049】
まず、ユーザにより、米と水とを含む調理物が入れられた鍋2が鍋収納部1aにセットされるとともに、水が入れられた水容器5が水容器収納部1bcにセットされる。その後、ユーザにより、操作部(図示せず)にて炊飯コースが選択された後、炊飯開始が指示されると、制御部22の制御により炊飯工程が開始される。炊飯工程が開始されると、まず、浸水工程及び予熱工程が開始される。
【0050】
浸水工程は、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化できるように、糊化温度よりも低温の水に米を浸して、予め米に吸水させる工程である。この浸水工程において、制御部22は、鍋2内の水の温度を米の糊化が始まる温度(例えば約60℃)近くまで昇温させた後、当該昇温後の温度を維持するように、鍋温度検知部9の検知温度DT9に基づいて鍋加熱装置7の鍋加熱動作を制御する。これにより、米の吸水が促進される。また、この浸水工程において制御部22は、水容器加熱装置6を駆動させて水容器5内の水を予熱する予熱工程を開始する。これにより、水容器温度検知部51の検知温度DT51は徐々に上昇し始める。制御部22は、予熱工程において入口側温度検知部42の検知温度が100℃以上である閾温度T42a(第1閾温度)になったとき、閾温度T42aを超えないように過熱蒸気発生装置13による加熱を弱める(例えば、停止する)ように制御する。本実施形態において、制御部22は、閾温度T42aを100℃以上120℃以下の範囲内の特定の温度(例えば、110℃)に設定する。なお、予熱工程は、鍋加熱装置7によって使用されていない電力を利用して行うことが好ましい。浸水工程は、昇温工程及び沸騰維持工程に比べて、鍋加熱装置7によって使用される電力が少ない。このため、予熱工程は、浸水工程中に開始されることが好ましい。浸水工程の開始から前記選択された炊飯コースに応じて予め決められた時間経過すると、昇温工程に移行する。
【0051】
昇温工程は、鍋2を強火で一気に加熱して、鍋2内の水を沸騰状態(約100℃)にする工程である。この昇温工程において、制御部22は、鍋2を急速に加熱して鍋2内の水を沸騰状態にするように、鍋加熱装置7を制御する。昇温工程にかかる時間は、炊飯量(鍋2に入れられた調理物の量)により異なる。このため、昇温工程にかかる時間に基づいて、炊飯量を自動的に判定することができる。制御部22は、昇温工程にて判定した炊飯量に基づいて以降の工程を行う。昇温工程において、蒸気温度センサ(図示せず)が所定温度(例えば、水の沸点)を検知すると、沸騰維持工程に移行する。
【0052】
沸騰維持工程は、鍋2内の水の沸騰状態を維持して、米の澱粉を糊化させ、糊化度を50%~80%程度まで引き上げる工程である。この沸騰維持工程において、制御部22は、鍋2内の水の沸騰状態を維持するように、鍋温度検知部9の検知温度DT9に基づいて鍋加熱装置7を制御する。
【0053】
沸騰維持工程においては、連続的に水を沸騰させるため、蒸気が大量に発生する。この蒸気は、内蓋4の蒸気排出穴4a、貫通穴3c、及び蒸気逃がし穴10aを通過して炊飯器の外部に放出される(
図1参照)。これにより、鍋2内のほとんどの水がなくなると、鍋2の底面の温度が100℃以上に上昇する。鍋温度検知部9の検知温度DT9が100℃を超える予め決められた温度(例えば、130℃)に到達したことを検知すると、蒸らし工程に移行する。制御部22は、予熱工程中である沸騰維持工程において出口側温度検知部41の検知温度が閾温度T41aになったとき、閾温度T41aを超えないように過熱蒸気発生装置13による加熱を弱める(例えば、停止する)ように制御する。本実施形態において、制御部22は、閾温度T41aを前記予め決められた温度よりも高い温度(例えば、140℃)に設定する。
【0054】
蒸らし工程は、予熱を利用して余分な水分を蒸発させ、米の糊化度を100%近くまで引き上げる工程である。この蒸らし工程において、制御部22は、過熱蒸気発生装置13を制御して、水容器5から発生した蒸気を加熱して100℃を超える過熱蒸気を生成し、当該過熱蒸気を鍋2内に供給する供給工程を行う。本実施形態において、鍋2内に供給する過熱蒸気の温度は、250℃±25℃である。制御部22は、供給工程において出口側温度検知部41の検知温度が閾温度T41aより高い閾温度T41bになったとき、閾温度T41bを超えないように過熱蒸気発生装置13による加熱を弱める(例えば、停止する)ように制御する。本実施形態において、制御部22は、閾温度T41bを鍋2内に供給する過熱蒸気に応じた温度(例えば、250℃±25℃)に設定する。なお、制御部22が閾温度T41aから閾温度T41bに切り替えるタイミングは、
図7に示すように、供給工程の開始よりも少し(例えば、数十秒)早くてもよい。これにより、供給工程の開始後直ぐに高温の過熱蒸気を鍋2内に供給可能となる。
【0055】
また、供給工程の終了直後に水容器加熱装置6による加熱を停止すると、それまでに過熱蒸気発生装置13に蓄積された熱によって、過熱蒸気発生装置13の温度が一気に上がるオーバーシュートが起こり得る。このため、本実施形態において、制御部22は、水容器加熱装置6による加熱を停止する前に、出口側温度検知部41の閾温度T41を閾温度T41bから閾温度DT41c(第5閾温度)に低下させるように制御する。すなわち、制御部22は、供給工程において過熱蒸気発生装置13による加熱を弱め、出口側温度検知部41の検知温度が閾温度T41c以下まで低下した後、水容器加熱装置6による加熱を停止するように制御する。閾温度T41cは、閾温度T41bよりも低い温度、例えば、200℃である。これにより、オーバーシュートを抑えることができる。或いは、制御部22は、出口側温度検知部41の検知温度を閾温度T41bに設定してから予め決められた時間が経過した場合、出口側温度検知部41の検知温度が閾温度T41c以下になるように過熱蒸気発生手段13による加熱を弱めてもよい。その後、制御部22は、予め決められた期間が経過したのち、水容器加熱装置6による加熱を停止してもよい。これによりオーバ―シュートを抑えることができる。
【0056】
また、制御部22は、供給工程において入口側温度検知部42の検知温度が閾温度T42aよりも高い閾温度T42b(第2閾温度)になったとき、閾温度T42bを超えないように過熱蒸気発生装置13による加熱を弱める(例えば、停止する)ように制御する。本実施形態において、制御部22は、閾温度T42bを120℃以上150℃以下の範囲内の特定の温度(例えば、140℃)に設定する。なお、制御部22が閾温度T42aから閾温度T42bに切り替えるタイミングは、
図7に示すように、供給工程の開始よりも少し(例えば数十秒)早くてもよい。これにより、供給工程の開始後直ぐに高温の過熱蒸気を鍋2内に供給可能となる。制御部22は、供給工程終了後、入口側温度検知部42の検知温度が閾温度T42cになったとき、当該閾温度T42cを超えないように過熱蒸気発生装置13による加熱を弱める(例えば、停止する)ように制御する。本実施形態において、閾温度T42cは、閾温度T42aと同じであっても、異なっていてもよい。
【0057】
蒸らし工程の開始から前記選択された炊飯コースに応じて予め決められた時間経過すると、蒸らし工程を終了(すなわち、炊飯工程を終了)する。
【0058】
本実施形態に係る炊飯器によれば、制御部22は、過熱蒸気発生装置13による加熱を行う一方で鍋2内に過熱蒸気を供給しない予熱工程と、水容器5から発生した蒸気を取り込んで鍋2内に過熱蒸気を供給する供給工程とを行うように過熱蒸気発生装置13を制御する。また、制御部22は予熱工程において入口側温度検知部42の検知温度が閾温度T42aになったとき、過熱蒸気発生装置13による加熱を弱めるように制御する。これにより、過熱蒸気発生装置13及びその関連部品への熱負荷を軽減しつつ、供給工程前に過熱蒸気の温度を上昇させることができる。更に、制御部22は、供給工程において入口側温度検知部42の検知温度が閾温度T42bになったとき、過熱蒸気発生装置13による加熱を弱めるように制御する。すなわち、制御部22は、予熱工程と供給工程とで閾温度T42を変更するように制御する。これにより、鍋2内に供給する過熱蒸気の温度をより高くすることができる。
【0059】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、供給工程の開始より少し早いタイミングで閾温度T42aから閾温度T42bに切り替えるようにしたが、水容器5内の水の温度に応じて閾温度T42aから閾温度T42bに切り替えてもよい。例えば、水容器5内の水の温度が高く(例えば、90℃以上)なると蒸気(湯気)が発生する。この蒸気が過熱蒸気発生装置13内に侵入すると、過熱蒸気発生装置13内で結露することが起こり得る。過熱蒸気発生装置13は、100℃以上の蒸気を過熱して過熱蒸気を生成するものであるので、100℃未満の蒸気(湯気)を鍋2内に供給する場合は、本来加熱する必要がない。このため、結露水を発生させないためだけに過熱蒸気発生装置13による加熱を行うと、余分な電力が必要になり得る。また、過熱蒸気発生装置13の周囲に設置されている部品の劣化に影響を及ぼすこともある。例えば、水容器温度検知部51の検知温度が70℃未満の場合、まだ飽和蒸気が発生する準備が完了していない状態であるので、過熱蒸気発生装置13の温度が低い。このため、制御部22は、
図8に示すように、予熱工程において水容器温度検知部51の検知温度DT51が閾温度DT51a(第3閾温度)以上になったとき、閾温度T42aを高く(例えば、閾温度T42b)してもよい。また、制御部22は、予熱工程において水容器温度検知部51の検知温度DT51が閾温度DT51a(第3閾温度)未満のとき、閾温度T42aを100℃以上110℃未満の範囲内の特定の温度に設定してもよい。更に、制御部22は、予熱工程において水容器温度検知部51の検知温度DT51が閾温度DT51a以上になったとき、閾温度T42aを110℃以上130℃未満の範囲内の特定の温度に設定してもよい。これにより、余分な電力を抑えることができる。また、周辺部品の温度上昇が低減され、部品劣化を抑制できる。なお、閾温度DT51aは、例えば、70℃である。
【0060】
また、前記では、水容器5内の水の温度に応じて入口側温度検知部42の検知温度の閾温度を切り替えるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、水容器5内の水の温度に応じて出口側温度検知部41の検知温度の閾温度を切り替えるようにしてもよい。例えば、制御部22は、予熱工程において出口側温度検知部41の検知温度が100℃以上である閾温度T41a(第4閾温度)になったとき、閾温度T41aを超えないように過熱蒸気発生装置13による加熱を弱めてもよい。更に、制御部22は、予熱工程において水容器温度検知部51の検知温度DT51が閾温度DT51aを超えたとき、閾温度DT41aを高く(例えば、閾温度DT41b)してもよい。これにより、余分な電力を抑えることができる。
【0061】
なお、過熱蒸気発生装置13が誘導加熱コイル34により誘導加熱する構成である場合、過熱蒸気発生装置13を制御する制御部22にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を設けることが考えられる。IGBTは、基板の実装面にチップ部品として搭載されるのが一般的である。鍋2内に供給する過熱蒸気の温度をより高くするためには、過熱蒸気発生装置13の加熱力を強くすることが求められる。過熱蒸気発生装置13の加熱力を強くするには、誘導加熱コイル34への通電量を増やす必要があり、IGBTの発熱量が増加し、ジャンクション温度が上昇することになる。このとき、IGBTのコレクタ部は、基板の回路と半田で接続されており、ジャンクション温度が上昇すると、半田も温度上昇する。その際、半田の耐熱温度(すなわち経年使用による熱衝撃で劣化する温度)を超えて上昇することが起こり得る。このため、IGBTのジャンクション温度を低減し、また、半田部分に熱を伝達させにくい構成が求められる。当該構成としては、例えば、
図9に示す構成が考えられる。すなわち、
図9に示すように、IGBT61が基板62から離れて位置するように、IGBT61を3本のリード線63を介して基板62に接続する。このIGBT61をヒートシンク64に実装する。この構成によれば、IGBT61の発熱をヒートシンク64を通じて外部に放出することができる。また、IGBT61の発熱が基板62側に伝達されるのを抑えることができる。
【0062】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0063】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る炊飯器は、鍋内に供給する過熱蒸気の温度をより高くすることができるので、例えば、家庭用及び業務用の炊飯器として有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 炊飯器本体
1a 鍋収納部
1b 上枠
1ba 筒状部分
1bb フランジ部
1bc 水容器収納部
1c コイルベース
2 鍋
3 蓋
3A ヒンジ軸
3a 上外郭部材
3aa 凹部
3b 下外郭部材
3c 貫通穴
4 内蓋
4a 蒸気排出穴
4b 過熱蒸気排出穴
5 水容器
6 水容器加熱装置
7 鍋加熱装置
7a 底内加熱コイル
7b 底外加熱コイル
8 フェライト
9 鍋温度検知部
DT9 検知温度
10 蒸気筒
10a 蒸気逃がし穴
11,12,14,15 パッキン
13 過熱蒸気発生装置
16 通路
17 逆止弁
17a ボール
17b 弁座
21 表示部
22 制御部
31 パイプ
31a カシメ部
32 熱交換器
32a 芯棒
32b 螺旋体
33 コイルボビン
34 誘導加熱コイル
35 吸気パイプ
36 吸気パイプ抑え部材
37 過熱蒸気排出用金具
38 パイプ抑え部材
39 パッキン
41 出口側温度検知部
T41a 閾温度(第4閾温度)
T41b 閾温度
T41c 閾温度(第5閾温度)
42 入口側温度検知部
T42 閾温度
T42a 閾温度(第1閾温度)
T42b 閾温度(第2閾温度)
T42c 閾温度
51 水容器温度検知部
DT51 検知温度
DT51a 閾温度(第3閾温度)
61 IGBT
62 基板
63 リード線
64 ヒートシンク