(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】信号処理装置、慣性力センサ、信号処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20231201BHJP
G01P 15/125 20060101ALI20231201BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20231201BHJP
【FI】
G01P21/00
G01P15/125 V
G01P15/18
(21)【出願番号】P 2021508151
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2020003300
(87)【国際公開番号】W WO2020195139
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2019059473
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】梶原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中塚 淳二
(72)【発明者】
【氏名】永井 正昭
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115891(JP,A)
【文献】特開2014-3765(JP,A)
【文献】特開2011-164073(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0139800(US,A1)
【文献】特開2002-22760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
G01D 3/00- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性力を検出する静電容量型の検出素子の出力信号から第1検出信号を生成する検出回路と、
前記第1検出信号の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号を出力する補正回路と、
前記第1検出信号と前記第2検出信号とを比較し、比較結果に応じた比較信号を出力する比較回路と、を備える、
信号処理装置。
【請求項2】
前記第1検出信号に基づいて慣性力の大きさを判定し、判定結果に応じた第1判定信号を出力する第1判定回路と、
前記比較信号及び前記第1判定信号に基づいて前記補正回路が正常か否かを判定し、判定結果に応じた第2判定信号を出力する第2判定回路と、を更に備え、
前記第2判定回路は、前記比較回路の比較結果が第1条件を満たし、かつ前記第1判定回路の判定結果が第2条件を満たす場合に、前記補正回路が異常と判定する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記第1検出信号に基づいて慣性力の大きさを判定し、判定結果に応じた第1判定信号を出力する第1判定回路と、
前記比較信号及び前記第1判定信号に基づいて前記補正回路が正常か否かを判定し、判定結果に応じた第2判定信号を出力する第2判定回路と、を更に備え、
前記第2判定回路は、前記比較回路の比較結果が第1条件を満たしておらず、かつ前記第1判定回路の判定結果が第2条件を満たす場合に、前記補正回路が正常と判定する、
請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記第1条件は、前記第1検出信号の値と前記第2検出信号の値との差分の絶対値が第1閾値以下の場合であり、
前記第2条件は、前記第1検出信号に基づく慣性力の大きさが第2閾値以上の場合である、
請求項2又は3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記第1判定回路が前記第1検出信号に基づく慣性力の大きさを判定する際の判定用閾値を書換可能に記憶する記憶部を更に備える、
請求項2~4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
擬似的に発生させた慣性力に基づいて、前記第2判定回路に前記補正回路が正常か否かを判定させる判定モードを有する、
請求項2~5のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の信号処理装置と、
前記検出素子と、を備える、
慣性力センサ。
【請求項8】
慣性力を検出する静電容量型の検出素子の出力信号から第1検出信号を生成する検出ステップと、
前記第1検出信号の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号を出力する補正ステップと、
前記第1検出信号と前記第2検出信号とを比較し、比較結果に応じた比較信号を出力する比較ステップと、を含む、
信号処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理装置、慣性力センサ、信号処理方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、慣性力を検出する検出素子からの信号を処理する信号処理装置、慣性力センサ、信号処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電容量型の加速度センサ(慣性力センサ)が記載されている。特許文献1に記載の加速度センサは、センサチップ(検出素子)と、ASIC(信号処理装置)と、を含む。ASICは、入力加速度から補正値を引き算することで理想出力からのずれを補正する自動補正回路(補正回路)を備える。補正値は、入力加速度を変数とする多項式から算出するようになっている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の加速度センサでは、自動補正回路が正常か否かを判定することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、補正回路が正常か否かを判定することができる信号処理装置、慣性力センサ、信号処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【0006】
本開示の一態様に係る信号処理装置は、検出回路と、補正回路と、比較回路と、を備える。前記検出回路は、慣性力を検出する静電容量型の検出素子の出力信号から第1検出信号を生成する。前記補正回路は、前記第1検出信号の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号を出力する。前記比較回路は、前記第1検出信号と前記第2検出信号とを比較し、比較結果に応じた比較信号を出力する。
【0007】
本開示の一態様に係る慣性力センサは、前記信号処理装置と、前記検出素子と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る信号処理方法は、検出ステップと、補正ステップと、比較ステップと、を含む。前記検出ステップは、慣性力を検出する静電容量型の検出素子の出力信号から第1検出信号を生成するステップである。前記補正ステップは、前記第1検出信号の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号を出力するステップである。前記比較ステップは、前記第1検出信号と前記第2検出信号とを比較し、比較結果に応じた比較信号を出力するステップである。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る信号処理装置及び慣性力センサの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、同上の慣性力センサを構成する検出素子の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の慣性力センサの入力加速度とセンサ出力との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、同上の信号処理装置の動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下の実施形態等において参照する
図2及び
図3は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(1)概要
以下、本実施形態に係る慣性力センサ10の概要について、
図1を参照して説明する。
【0013】
本実施形態に係る慣性力センサ10は、慣性力を検出するためのセンサであり、例えば、互いに直交する3軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサである。つまり、本実施形態に係る慣性力センサ10は、X軸方向における加速度と、Y軸方向における加速度と、Z軸方向における加速度と、をそれぞれ検出することができる。慣性力センサ10は、例えば、プリント基板等の表面に実装される表面実装型の加速度センサである。また、慣性力センサ10は、静電容量型の加速度センサである(
図3参照)。
【0014】
本実施形態に係る慣性力センサ10は、
図1に示すように、信号処理装置1と、複数(
図1では3つ)の検出素子2,3,4と、を備えている。信号処理装置1は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。検出素子2は、X軸方向における慣性力(加速度)を検出する。検出素子3は、Y軸方向における慣性力(加速度)を検出する。検出素子4は、Z軸方向における慣性力(加速度)を検出する。
【0015】
ところで、このような慣性力センサ10では、一般的に、慣性力の大きさとセンサ出力の大きさとが直線的に変化するような応答特性に設計されている。しかしながら、実際には、慣性力の大きさが一定値以上になると、センサ出力の大きさが直線からずれるように変化する。そのため、センサ出力のずれを補正する補正回路を備えた加速度センサが従来から提供されているが、補正回路が正常に機能しているか否かを判断できるように構成された加速度センサはなかった。本実施形態に係る信号処理装置1では、補正回路が正常に機能しているか否かを判断できるように、以下の構成を採用している。
【0016】
本実施形態に係る信号処理装置1は、
図1に示すように、検出回路11と、補正回路12と、比較回路13と、を備える。検出回路11は、慣性力を検出する静電容量型の検出素子2,3,4の出力信号Sig1から第1検出信号Sig2を生成する。補正回路12は、第1検出信号Sig2の非直線性(non-linearity)を補正し、補正後の第2検出信号Sig3を出力する。比較回路13は、第1検出信号Sig2と第2検出信号Sig3とを比較し、比較結果に応じた比較信号Sig4を出力する。本開示でいう「非直線性」とは、入力と出力とが直線的に変化するような応答特性において、直線からのずれの程度をいう。そして、直線からのずれが大きくなるほど非直線性は大きくなり、直線からのずれが小さくなるほど非直線性は小さくなる。言い換えると、非直線性が大きくなるほど直線性が悪くなり、非直線性が小さくなるほど直線性が良くなる。
【0017】
本実施形態に係る信号処理装置1では、検出回路11からの第1検出信号Sig2と補正回路12からの第2検出信号Sig3とを比較し、この比較結果に応じた比較信号Sig4を出力している。ここで、補正回路12は、検出回路11からの第1検出信号Sig2に対して非直線性を補正しているため、所定値以上の慣性力が発生すると、第1検出信号Sig2の値と第2検出信号Sig3の値との間には所定値以上の差分が生じることになる。そのため、第1検出信号Sig2と第2検出信号Sig3とを比較した結果、所定値以上の差分が生じていない場合には、補正回路12が正常に機能していないと判断することができる。つまり、本実施形態に係る信号処理装置1によれば、比較回路13からの比較信号Sig4によって、補正回路12が正常か否かを判断することができる。
【0018】
(2)構成
次に、本実施形態に係る慣性力センサ10の構成について、
図1、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る慣性力センサ10は、
図1に示すように、信号処理装置1と、複数(
図1では3つ)の検出素子2,3,4と、を備えている。
【0020】
(2.1)信号処理装置
信号処理装置1は、複数(
図1では3つ)の検出回路11と、複数(
図1では3つ)の補正回路12と、複数(
図1では3つ)の比較回路13と、複数(
図1では3つ)の第1判定回路14と、複数(
図1では3つ)の第2判定回路15と、を備えている。また、信号処理装置1は、記憶部16を更に備えている。
【0021】
複数の検出回路11、複数の補正回路12、複数の比較回路13、複数の第1判定回路14、及び複数の第2判定回路15は、複数の検出素子2,3,4と一対一に対応している。つまり、検出素子2,3,4の各々には、1つの検出回路11、1つの補正回路12、1つの比較回路13、1つの第1判定回路14、及び1つの第2判定回路15が対応している。
【0022】
複数の検出回路11の各々は、検出素子2,3,4の各々の出力信号Sig1から第1検出信号Sig2を生成する。複数の補正回路12の各々は、複数の検出回路11のうち対応する検出回路11の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号Sig3を出力する。複数の比較回路13の各々は、複数の検出回路11のうち対応する検出回路11の第1検出信号Sig2と、複数の補正回路12のうち対応する補正回路12の第2検出信号Sig3とを比較し、比較結果に応じた比較信号Sig4を出力する。
【0023】
複数の第1判定回路14の各々は、複数の検出回路11のうち対応する検出回路11の第1検出信号Sig2に基づいて慣性力の大きさを判定し、判定結果に応じた第1判定信号Sig5を出力する。複数の第2判定回路15の各々は、複数の比較回路13のうち対応する比較回路13の比較信号Sig4、及び複数の第1判定回路14のうち対応する第1判定回路14の第1判定信号Sig5に基づいて、対応する補正回路12が正常か否かを判定する。そして、複数の第2判定回路15の各々は、判定結果に応じた第2判定信号Sig6を出力する。
【0024】
(2.1.1)検出回路
複数の検出回路11の各々は、
図1に示すように、CV変換回路111と、A/D変換回路112と、を有している。
【0025】
CV変換回路111は、検出素子2,3,4の各々で生じた容量の変化を電圧に変換する。CV変換回路111は、増幅器113と、コンデンサ114と、スイッチ115と、を含む。増幅器113の反転入力端子は、検出素子2,3,4の各々の一部を構成する2つのコンデンサC1,C2の接続点に電気的に接続されている。増幅器113の反転入力端子と出力端子との間には、コンデンサ114とスイッチ115とが並列に電気的に接続されている。また、増幅器113の非反転入力端子には、基準電圧が入力される。
【0026】
A/D変換回路112は、CV変換回路111を介して入力される検出素子2,3,4の各々のアナログの出力信号Sig1からデジタルの第1検出信号Sig2を生成する。A/D変換回路112によって変換されたデジタルの第1検出信号Sig2は、補正回路12、比較回路13、及び第1判定回路14にそれぞれ入力される。
【0027】
(2.1.2)補正回路
複数の補正回路12の各々は、
図1に示すように、減算器121と、乗算器122と、を有している。
【0028】
乗算器122は、検出回路11からの第1検出信号Sig2に補正係数A1,A2,A3のいずれかを乗算し、減算器121に出力する。減算器121は、検出回路11からの第1検出信号Sig2から、補正係数A1,A2,A3のいずれかを乗算した第1検出信号Sig2を減算する。これにより、第1検出信号Sig2の非直線性を補正した第2検出信号Sig3を生成することができる。つまり、乗算器122における補正係数A1,A2,A3の各々は、第1検出信号Sig2の理論値と実測値との差分に応じた係数である。減算器121によって生成された第2検出信号Sig3は、比較回路13に入力されると共に、プリント基板に実装されている制御回路に入力される。制御回路は、補正回路12からの第2検出信号Sig3に基づいて、慣性力(加速度)の大きさを検出する。
【0029】
(2.1.3)比較回路
複数の比較回路13の各々は、
図1に示すように、減算器131と、比較器132と、を有している。
【0030】
減算器131は、補正回路12からの第2検出信号Sig3から、検出回路11からの第1検出信号Sig2を減算する。つまり、減算器131は、第1検出信号Sig2の値と第2検出信号Sig3の値との差分を算出する。
【0031】
比較器132は、例えば、コンパレータである。比較器132の一方の入力端子には、減算器131からの信号(差分信号)が入力され、他方の入力端子には、第1閾値TH1が入力される。第1閾値TH1は、記憶部16に記憶されている。比較器132は、減算器131からの差分信号の値と第1閾値TH1とを比較し、比較結果に応じた比較信号Sig4を出力する。比較器132は、上記差分信号の値が第1閾値TH1以下であれば、「1」の比較信号Sig4を出力する。また、比較器132は、上記差分信号の値が第1閾値TH1よりも大きければ、「0」の比較信号Sig4を出力する。比較信号Sig4は、第2判定回路15に入力される。
【0032】
(2.1.4)第1判定回路
複数の第1判定回路14の各々は、慣性力(加速度)の大きさに応じた第1判定信号Sig5を出力するように構成されている。複数の第1判定回路14の各々は、複数の検出回路11のうち対応する検出回路11からの第1検出信号Sig2に基づいて慣性力(加速度)の大きさを判定する。各第1判定回路14は、第1検出信号Sig2の値と、記憶部16に記憶されている第2閾値と、を比較することで慣性力(加速度)の大きさを判定し、判定結果に応じた第1判定信号Sig5を出力する。各第1判定回路14は、第1検出信号Sig2の値が第2閾値以上であれば、「1」の第1判定信号Sig5を出力する。また、各第1判定回路14は、第1検出信号Sig2の値が第2閾値よりも小さければ、「0」の第1判定信号Sig5を出力する。第1判定信号Sig5は、第2判定回路15に入力される。
【0033】
(2.1.5)第2判定回路
複数の第2判定回路15の各々は、
図1に示すように、例えばAND回路である。複数の第2判定回路15の各々は、複数の比較回路13のうち対応する比較回路13からの比較信号Sig4と、複数の第1判定回路14のうち対応する第1判定回路14からの第1判定信号Sig5と、が入力される。そして、各第2判定回路15は、比較信号Sig4及び第1判定信号Sig5に基づく第2判定信号Sig6を出力する。例えば、第1判定信号Sig5の値が「1」で、かつ比較信号Sig4の値が「1」であれば、第2判定信号Sig6の値は「1」になる。また、第1判定信号Sig5の値が「0」、又は比較信号Sig4の値が「0」であれば、第2判定信号Sig6の値は「0」になる。第2判定信号Sig6は、上述の制御回路に入力される。制御回路は、第2判定信号Sig6の値が「1」であれば補正回路12が異常と判定し、第2判定信号Sig6の値が「0」であれば補正回路12が正常と判定する。
【0034】
言い換えると、第2判定回路15は、比較回路13の比較結果が第1条件を満たし、かつ第1判定回路14の判定結果が第2条件を満たす場合には、補正回路12が異常と判定する。また、第2判定回路15は、比較回路13の比較結果が第1条件を満たしておらず、かつ第1判定回路14の判定結果が第2条件を満たす場合には、補正回路12が正常と判定する。
【0035】
ここで、第1条件は、第1検出信号Sig2の値と第2検出信号Sig3の値との差分の絶対値が第1閾値TH1以下の場合である。つまり、第1検出信号Sig2の値と第2検出信号Sig3の値との差分の絶対値が第1閾値TH1以下であれば、比較回路13の比較結果が第1条件を満たすことになる。また、第2条件は、第1検出信号Sig2に基づく慣性力の大きさが第2閾値以上の場合である。つまり、第1検出信号Sig2に基づく慣性力の大きさが第2閾値以上であれば、第1判定回路14の判定結果が第2条件を満たすことになる。
【0036】
(2.1.6)記憶部
記憶部16は、例えば、ASICのレジスタである。記憶部16は、補正係数A1,A2,A3、第1閾値TH1、及び第2閾値を記憶する。ここで、第2閾値は、第1判定回路14が第1検出信号Sig2に基づく慣性力の大きさを判定する際の判定用閾値である。記憶部16は、少なくとも第2閾値を書き換え可能に構成されている。したがって、記憶部16は、補正係数A1,A2,A3、及び第1閾値TH1の少なくとも一方についても書き換え可能に構成されていてもよい。
【0037】
(2.2)検出素子
検出素子2は、X軸方向の慣性力(加速度)を検出する。検出素子3は、Y軸方向の慣性力(加速度)を検出する。検出素子4は、Z軸方向の慣性力(加速度)を検出する。つまり、本実施形態に係る慣性力センサ10は、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、及びZ軸方向の加速度をそれぞれ検出することができる3軸加速度センサである。
【0038】
本実施形態に係る慣性力センサ10は、
図2に示すように、筐体5と、上蓋6と、下蓋7と、を更に備えている。筐体5、上蓋6、及び下蓋7の各々は、Y軸方向に長い直方体状に形成されており、Z軸方向から見たときの外形寸法(X軸方向の寸法及びY軸方向の寸法)は略同じである。
【0039】
検出素子2は、錘21と、一対の固定電極22,22と、一対の可動電極23,23と、を有している。錘21は、Z軸方向から見たときの形状が矩形状に形成されている。錘21は、Y軸方向の両端部において一対の梁24,24を介して筐体5に固定されている。錘21の上面(上蓋6との対向面)には、一対の可動電極23,23がX軸方向に並んだ状態で取り付けられている。一対の固定電極22,22は、X軸方向に並んだ状態で上蓋6の下面(筐体5との対向面)に取り付けられている。一対の固定電極22,22と一対の可動電極23,23とは、筐体5と上蓋6とを重ねた状態において、所定の間隔を空けた状態で対向している。検出素子2は、X軸方向に加速度が加わると、一対の梁24,24を支点として、ZX平面内で揺動するように構成されている。
【0040】
検出素子3は、錘31と、一対の固定電極32,32と、一対の可動電極33,33と、を有している。錘31は、Z軸方向から見たときの形状が矩形状に形成されている。錘31は、X軸方向の両端部において一対の梁34,34を介して筐体5に固定されている。錘31の上面(上蓋6との対向面)には、一対の可動電極33,33がY軸方向に並んだ状態で取り付けられている。一対の固定電極32,32は、Y軸方向に並んだ状態で上蓋6の下面(筐体5との対向面)に取り付けられている。一対の固定電極32,32と一対の可動電極33,33とは、筐体5と上蓋6とを重ねた状態において、所定の間隔を空けた状態で対向している。検出素子3は、Y軸方向に加速度が加わると、一対の梁34,34を支点として、YZ平面内で揺動するように構成されている。
【0041】
検出素子4は、錘41と、一対の固定電極42,42と、一対の可動電極43,43(
図2では、上側の可動電極43のみ図示)と、を有している。錘41は、Z軸方向から見たときの形状が矩形状に形成されている。錘41は、L字状の4つの梁44を介して筐体5に固定されている。錘41のZ軸方向における両面には、一対の可動電極43,43がそれぞれ取り付けられている。一対の固定電極42,42のうち一方の固定電極42は、上蓋6の下面に取り付けられ、一対の固定電極42,42のうち他方の固定電極42は、下蓋7の上面に取り付けられている。筐体5と上蓋6と下蓋7とを重ねた状態では、一対の固定電極42,42のうち一方の固定電極42と、一対の可動電極43,43のうち一方の可動電極43とが、所定の間隔を空けた状態で対向している。また、筐体5と上蓋6と下蓋7とを重ねた状態では、一対の固定電極42,42のうち他方の固定電極42と、一対の可動電極43,43のうち他方の可動電極43とが、所定の間隔を空けた状態で対向している。検出素子4は、Z軸方向に加速度が加わると、4つの梁44を支点として、Z軸方向に移動可能に構成されている。
【0042】
図3は、
図2のX1-X2断面図であり、検出素子2を示している。一対の固定電極22,22のうち一方(
図3の左側)の固定電極22と、一対の可動電極23のうち一方(
図3の左側)の可動電極23と、でコンデンサC1を構成している。また、一対の固定電極22,22のうち他方(
図3の右側)の固定電極22と、一対の可動電極23のうち他方(
図3の右側)の可動電極23と、でコンデンサC2を構成している。ここで、
図3におけるX3の向きに加速度が作用した場合を想定する。この場合、検出素子2の錘21は、上記加速度によって、一対の梁24,24を支点としてZX平面内を揺動する。
図3に示す例では、X3の向きの加速度によって、一方の固定電極22と可動電極23との間隔が広く、他方の固定電極22と可動電極23との間隔が狭くなっている。これにより、X3の向きに加速度が作用していない場合に比べて、コンデンサC1の容量が小さくなり、かつコンデンサC2の容量が大きくなっている。そして、本実施形態に係る慣性力センサ10では、これら2つのコンデンサC1,C2の静電容量からX3の向きの加速度を検出することができる。
【0043】
ここで、Z軸方向から見たときの一対の固定電極22、及び一対の可動電極23の各々の表面積をSa、比誘電率をε0、コンデンサC1,C2の電極間距離をd1,d2とすると、コンデンサC1,C2の静電容量Ca,Cbは(1)、(2)式のようになる。
【0044】
【0045】
【0046】
そして、加速度の増加に伴って電極間距離d1が大きくなれば、電極間距離d2は小さくなり、加速度の増加に伴って電極間距離d1が小さくなれば、電極間距離d2は大きくなる。したがって、加速度は、コンデンサC1,C2の静電容量Ca,Cbの差(Ca-Cb)に比例する。
【0047】
図4は、本実施形態に係る慣性力センサ10の入力加速度とセンサ出力との関係を示すグラフである。
図4では、横軸が入力加速度を示し、縦軸がセンサ出力を示している。また、
図4において、実線a1は補正前の入力加速度とセンサ出力との関係を示し、破線b1は補正後の入力加速度とセンサ出力との関係を示し、一点鎖線c1は補正前後の差分を示している。加速度は、検出素子2を構成するコンデンサC1,C2の静電容量Ca,Cbの差(Ca-Cb)に比例し、静電容量Ca,Cbの差(Ca-Cb)は、(1/d1-1/d2)に比例する。そして、加速度が大きくなると、加速度に対する電極間距離d1,d2の変化が非線形になるので、入力加速度が大きい領域では非直線性が顕著になる(
図4参照)。
【0048】
一例として、慣性力センサ10が有する非直線性による誤差が、10Gの加速度が作用する場合に少なくとも1%以上あると仮定する。この場合、補正前の信号である第1検出信号Sig2の値は10.1G以上になる。第1検出信号Sig2の値が10.1G以上の場合、第2検出信号Sig3の値は10Gになり、第1検出信号Sig2の値と第2検出信号Sig3の値との間には、0.1Gの差分が発生する。この場合、第1閾値TH1を、例えば、0.05Gにすることで、上記差分が第1閾値TH1を超えていれば補正回路12が正常と判定し、上記差分が第1閾値TH1を下回っていれば補正回路12が異常と判定する。
【0049】
ここで、入力加速度が小さい場合には、
図4に示すように、非直線性の誤差も小さいため、非直線性の誤差がある程度大きくなる領域(例えば、
図4では4G以上)においてのみ、補正回路12が正常か否かを判定することが好ましい。
【0050】
また、
図4に示す例では、第1判定回路14が慣性力の大きさを判定する際に用いられる判定用閾値(第2閾値)を、加速度の非直線性が顕著になり始める4G程度に設定することが好ましい。
【0051】
(3)動作
次に、本実施形態に係る信号処理装置1の動作について、
図5に示すシーケンス図を参照して説明する。以下では、X軸方向に加速度が作用する場合を例に説明するが、Y軸方向に加速度が作用する場合、及びZ軸方向に加速度が作用する場合についても同様であり、Y軸方向及びZ軸方向については説明を省略する。
【0052】
検出素子2は、X軸方向の加速度を検出すると、対応する検出回路11に対して出力信号Sig1を出力する(第1ステップS1)。検出回路11は、検出素子2からの出力信号Sig1から第1検出信号Sig2を生成する(第2ステップS2)。検出回路11は、生成した第1検出信号Sig2を、補正回路12、比較回路13、及び第1判定回路14に出力する(第3ステップS3)。
【0053】
補正回路12は、検出回路11からの第1検出信号Sig2の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号Sig3を生成する(第4ステップS4)。具体的には、補正回路12は、第1検出信号Sig2の値から、第1検出信号Sig2に補正係数A1を乗算した値を減算する。補正回路12は、生成した第2検出信号Sig3を、上述の制御回路、及び比較回路13に出力する(第5ステップ)。
【0054】
第1判定回路14は、検出回路11からの第1検出信号Sig2に基づいて慣性力(加速度)の大きさを判定する(第6ステップS6)。具体的には、第1判定回路14は、第1検出信号Sig2の値と第1閾値TH1との大小を比較し、比較結果に応じた第1判定信号Sig5を生成する。そして、第1判定回路14は、生成した第1判定信号Sig5を第2判定回路15に出力する(第7ステップS7)。
【0055】
比較回路13は、検出回路11からの第1検出信号Sig2と、補正回路12からの第2検出信号Sig3と、を比較する(第8ステップS8)。具体的には、比較回路13は、第2検出信号Sig3の値と第1検出信号Sig2の値との差分を算出し、算出した差分と第1閾値TH1とを比較する。そして、比較回路13は、比較結果に応じた比較信号Sig4を生成し、生成した比較信号Sig4を第2判定回路15に出力する(第9ステップS9)。
【0056】
第2判定回路15は、比較回路13からの比較信号Sig4、及び第1判定回路14からの第1判定信号Sig5に基づいて、補正回路12が正常か否かを判定する(第10ステップS10)。具体的には、第2判定回路15は、比較信号Sig4の値が「1」で、かつ第1判定信号Sig5の値が「1」であれば、値が「1」である第2判定信号Sig6を生成する。また、第2判定回路15は、比較信号Sig4の値が「0」、又は第1判定信号Sig5の値が「0」であれば、値が「0」である第2判定信号Sig6を生成する。第2判定回路15は、生成した第2判定信号Sig6を上述の制御回路に出力する(第11ステップS11)。
【0057】
(4)効果
本実施形態に係る信号処理装置1では、検出回路11からの第1検出信号Sig2と補正回路12からの第2検出信号Sig3とを比較し、この比較結果に応じた比較信号Sig4を出力している。ここで、補正回路12は、検出回路11からの第1検出信号Sig2に対して非直線性を補正しているため、第1検出信号Sig2の値と第2検出信号Sig3の値との間には所定値以上の差分が生じることになる。そのため、第1検出信号Sig2と第2検出信号Sig3とを比較した結果、所定値以上の差分が生じていない場合には、補正回路12が正常に機能していないと判断することができる。つまり、本実施形態に係る信号処理装置1によれば、比較回路13からの比較信号Sig4によって、補正回路12が正常か否かを判断することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る信号処理装置1では、第2判定回路15は、比較回路13の比較結果が第1条件を満たし、かつ第1判定回路14の判定結果が第2条件を満たす場合に、補正回路12が異常と判定している。また、第2判定回路15は、比較回路13の比較結果が第1条件を満たしておらず、かつ第1判定回路14の判定結果が第2条件を満たす場合に、補正回路12が正常と判定している。つまり、本実施形態に係る信号処理装置1によれば、比較回路13の比較結果と第1判定回路14の判定結果に基づいて、補正回路12が正常か否かを判定することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る信号処理装置1では、第1検出信号Sig2に基づく慣性力の大きさが第2閾値以上の場合に、第1検出信号Sig2の値と第2検出信号Sig3の値との差分の絶対値が第1閾値TH1以下であれば、補正回路12が正常に機能していないことになる。そのため、第1検出信号Sig2の値と第2検出信号Sig3の値との差分の絶対値が第1閾値TH1以下であることをもって、補正回路12が異常と判断することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る信号処理装置1では、記憶部16は、第1判定回路14が第1検出信号Sig2に基づく慣性力の大きさを判定する際の判定用閾値(第2閾値)を書き換え可能に構成されている。したがって、センサ出力が非直線的になり始める慣性力の大きさが異なる場合であっても、判定用閾値を書き換えることで対応することができる。
【0061】
(5)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上述の実施形態に係る信号処理装置1と同様の機能は、信号処理方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0062】
一態様に係る信号処理方法は、検出ステップ(第2ステップS2)と、補正ステップ(第4ステップS4)と、比較ステップ(第8ステップS8)と、を含む。検出ステップは、慣性力を検出する静電容量型の検出素子2,3,4の出力信号Sig1から第1検出信号Sig2を生成するステップである。補正ステップは、第1検出信号Sig2の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号Sig3を出力するステップである。比較ステップは、第1検出信号Sig2と第2検出信号Sig3とを比較し、比較結果に応じた比較信号Sig4を出力するステップである。
【0063】
一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに上述の信号処理方法を実行させるためのプログラムである。
【0064】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0065】
本開示における信号処理装置1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における信号処理装置1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。更に、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0066】
また、信号処理装置1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは、信号処理装置1に必須の構成ではない。つまり、信号処理装置1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、信号処理装置1の少なくとも一部の機能、例えば、補正回路12の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0067】
さらに、信号処理装置1は、擬似的に発生させた慣性力(加速度)に基づいて、第2判定回路15に補正回路12が正常か否かを判定させる判定モードを有していてもよい。この場合、例えば、上述した下蓋7の上面に固定電極を設けると共に、錘21の下面に可動電極を設け、少なくとも1つのコンデンサを形成する。そして、固定電極及び可動電極に通電して両極間に静電力を発生させることで、錘21を傾けて擬似的な加速度を発生させる。そして、上述の方法により擬似的に発生させた加速度に基づいて、第2判定回路15に補正回路12が正常か否かを判定させる。これにより、慣性力センサ10の出荷前の検査時はもちろんのこと、慣性力センサ10の使用状態でも、補正回路12が正常か否かを判定することができる。
【0068】
上述の実施形態では、慣性力センサ10が3軸加速度センサであるが、慣性力センサ10は、例えば、2軸加速度センサであってもよい。
【0069】
上述の実施形態では、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の加速度をそれぞれ別々の検出回路11で検出しているが、例えば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の加速度を1つの検出回路で検出してもよい。この場合、例えば、マルチプレクサによって時分割で、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、Z軸方向の加速度の順に順次検出すればよい。
【0070】
上述の実施形態では、慣性力センサ10が表面実装型であるが、例えば、スルーホール実装型であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、慣性力センサ10が加速度センサであるが、慣性力センサ10は加速度センサに限らず、例えば、角速度センサ(ジャイロセンサ)であってもよい。
【0072】
上述の実施形態では、信号処理装置1がASICであるが、信号処理装置1はASICに限らず、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)であってもよいし、1以上のプロセッサ及びメモリにて構成されていてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、及びZ軸方向の加速度をそれぞれ別々の検出素子2,3,4で検出しているが、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、及びZ軸方向の加速度を1つの検出素子で検出してもよい。すなわち、検出素子は、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、及びZ軸方向の加速度を検出する機能を1チップに集積させたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で構成されていてもよい。
【0074】
上述の実施形態では、第2判定回路15がAND回路であるが、第2判定回路15は、AND回路に限らず、例えば、NAND回路であってもよい。さらに、第2判定回路15は、比較信号Sig4及び第1判定信号Sig5に基づいて、補正回路12が正常か否かを判定するように構成されていればよく、他の構成であってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、第1閾値TH1及び第2閾値(判定用閾値)が固定であるが、第1閾値TH1及び第2閾値の少なくとも一方は調整可能であってもよい。
【0076】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る信号処理装置(1)は、検出回路(11)と、補正回路(12)と、比較回路(13)と、を備える。検出回路(11)は、慣性力を検出する静電容量型の検出素子(2,3,4)の出力信号(Sig1)から第1検出信号(Sig2)を生成する。補正回路(12)は、第1検出信号(Sig2)の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号(Sig3)を出力する。比較回路(13)は、第1検出信号(Sig2)と第2検出信号(Sig3)とを比較し、比較結果に応じた比較信号(Sig4)を出力する。
【0077】
この態様によれば、検出回路(11)からの第1検出信号(Sig2)と補正回路(12)からの第2検出信号(Sig3)との比較結果に応じた比較信号(Sig4)から、補正回路(12)が正常か否かを判定することができる。
【0078】
第2の態様に係る信号処理装置(1)は、第1の態様において、第1判定回路(14)と、第2判定回路(15)と、を更に備える。第1判定回路(14)は、第1検出信号(Sig2)に基づいて慣性力の大きさを判定し、判定結果に応じた第1判定信号(Sig5)を出力する。第2判定回路(15)は、比較信号(Sig4)及び第1判定信号(Sig5)に基づいて補正回路(12)が正常か否かを判定し、判定結果に応じた第2判定信号(Sig6)を出力する。第2判定回路(15)は、比較回路(13)の比較結果が第1条件を満たし、かつ第1判定回路(14)の判定結果が第2条件を満たす場合に、補正回路(12)が異常と判定する。
【0079】
この態様によれば、比較回路(13)の比較結果、及び第1判定回路(14)の判定結果から、補正回路(12)が異常と判定することができる。
【0080】
第3の態様に係る信号処理装置(1)は、第1又は2の態様において、第1判定回路(14)と、第2判定回路(15)と、を更に備える。第1判定回路(14)は、第1検出信号(Sig2)に基づいて慣性力の大きさを判定し、判定結果に応じた第1判定信号(Sig5)を出力する。第2判定回路(15)は、比較信号(Sig4)及び第1判定信号(Sig5)に基づいて補正回路(12)が正常か否かを判定し、判定結果に応じた第2判定信号(Sig6)を出力する。第2判定回路(15)は、比較回路(13)の比較結果が第1条件を満たしておらず、かつ第1判定回路(14)の判定結果が第2条件を満たす場合に、補正回路(12)が正常と判定する。
【0081】
この態様によれば、比較回路(13)の比較結果、第1判定回路(14)の判定結果から、補正回路(12)が正常と判定することができる。
【0082】
第4の態様に係る信号処理装置(1)では、第2又は3の態様において、第1条件は、第1検出信号(Sig2)の値と第2検出信号(Sig3)の値との差分の絶対値が第1閾値(TH1)以下の場合である。第2条件は、第1検出信号(Sig2)に基づく慣性力の大きさが第2閾値以上の場合である。
【0083】
この態様によれば、第1検出信号(Sig2)に基づく慣性力の大きさが第2閾値以上の場合に、第1検出信号(Sig2)の値と第2検出信号(Sig3)の値との差分の絶対値が第1閾値(TH1)以下であれば、補正回路(12)が正常に機能していないことになる。そのため、第1検出信号(Sig2)の値と第2検出信号(Sig3)の値との差分の絶対値が第1閾値(TH1)以下であることをもって、補正回路(12)が異常と判断することができる。
【0084】
第5の態様に係る信号処理装置(1)は、第2~4のいずれかの態様において、記憶部(16)を更に備える。記憶部(16)は、第1判定回路(14)が第1検出信号(Sig2)に基づく慣性力の大きさを判定する際の判定用閾値を書換可能に記憶する。
【0085】
この態様によれば、センサ出力が非直線的になり始める慣性力の大きさが異なる場合であっても、判定用閾値を書き換えることで対応することができる。
【0086】
第6の態様に係る信号処理装置(1)は、第2~5のいずれかの態様において、判定モードを有する。判定モードは、擬似的に発生させた慣性力に基づいて、第2判定回路(15)に補正回路(12)が正常か否かを判定させるモードである。
【0087】
この態様によれば、擬似的に発生させた慣性力によって、補正回路(12)が正常か否かを判定することができる。
【0088】
第7の態様に係る慣性力センサ(10)は、第1~6のいずれかの態様に係る信号処理装置(1)と、検出素子(2,3,4)と、を備える。
【0089】
この態様によれば、検出回路(11)からの第1検出信号(Sig2)と補正回路(12)からの第2検出信号(Sig3)との比較結果に応じた比較信号(Sig4)から、補正回路(12)が正常か否かを判定することができる。
【0090】
第8の態様に係る信号処理方法は、検出ステップ(S2)と、補正ステップ(S4)と、比較ステップ(S8)と、を含む。検出ステップ(S2)は、慣性力を検出する静電容量型の検出素子(2,3,4)の出力信号(Sig1)から第1検出信号(Sig2)を生成するステップである。補正ステップ(S4)は、第1検出信号(Sig2)の非直線性を補正し、補正後の第2検出信号(Sig3)を出力するステップである。比較ステップ(S8)は、第1検出信号(Sig2)と第2検出信号(Sig3)とを比較し、比較結果に応じた比較信号(Sig4)を出力するステップである。
【0091】
この態様によれば、検出ステップ(S2)における第1検出信号(Sig2)と補正ステップ(S4)における第2検出信号(Sig3)との比較結果に応じた比較信号(Sig4)から、補正回路(12)が正常か否かを判定することができる。
【0092】
第9の態様に係るプログラムは、第8の態様に係る信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0093】
この態様によれば、検出ステップ(S2)における第1検出信号(Sig2)と補正ステップ(S4)における第2検出信号(Sig3)との比較結果に応じた比較信号(Sig4)から、補正回路(12)が正常か否かを判定することができる。
【0094】
第2~6の態様に係る構成については、信号処理装置(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 信号処理装置
11 検出回路
12 補正回路
13 比較回路
14 第1判定回路
15 第2判定回路
16 記憶部
2,3,4 検出素子
10 慣性力センサ
Sig1 出力信号
Sig2 第1検出信号
Sig3 第2検出信号
Sig4 比較信号
Sig5 第1判定信号
Sig6 第2判定信号
S2 第2ステップ(検出ステップ)
S4 第4ステップ(補正ステップ)
S8 第8ステップ(比較ステップ)
TH1 第1閾値