(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】感知器及び火災報知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/107 20060101AFI20231201BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G08B17/107 A
G08B17/00 G
(21)【出願番号】P 2022517064
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2021016125
(87)【国際公開番号】W WO2021215460
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2020075695
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】大井 香菜
(72)【発明者】
【氏名】高下 翔也
(72)【発明者】
【氏名】室 直樹
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-067067(JP,A)
【文献】特開2005-293548(JP,A)
【文献】国際公開第2020/075487(WO,A1)
【文献】特開平08-315270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙が流入する流入口を有した煙検知室と、
外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる開口部と、
前記煙検知室
を囲むように、前記周囲の空間に配置されて、気体の流路を分割する分割部を備え、
前記分割部は、前記開口部から前記気体の流路に流入する煙の第1の流入量と、前記開口部から前記気体の流路に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、
前記第1の流入量に対する前記流入口に到達する煙の量の第1割合が、前記第2の流入量に対する前記流入口に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように前記気体の流路を分割する、
感知器。
【請求項2】
前記分割部は、前記煙検知室の周囲の空間を、鉛直方向成分を含む分離方向に二分して、上側流路と下側流路の2つに分岐させる分岐部を備え、
前記分岐部は、前記上側流路及び前記下側流路のうち、前記上側流路を通った煙を、前記流入口から前記煙検知室の内部に流入させる、
請求項1に記載の感知器。
【請求項3】
前記下側流路と前記煙検知室との間に配置されて、前記下側流路を通る湯気の、前記煙検知室の内部への流入を遮断する遮断部を更に備える、
請求項2に記載の感知器。
【請求項4】
前記分岐部は、前記煙検知室の全周にわたって形成されている、
請求項2又は3に記載の感知器。
【請求項5】
前記煙検知室の周壁は、
前記流入口が形成されている第1領域と、
前記流入口が形成されていない第2領域と、を含み、
前記分岐部は、前記第2領域と対向する位置に切り欠きを有する、
請求項2~4のいずれか1項に記載の感知器。
【請求項6】
前記分割部は、前記気体の流路である第1空間と第2空間と第3空間とを形成し、
前記外部空間と前記第1空間、前記第1空間と前記第2空間、及び前記第2空間と前記第3空間とは、前記開口部から前記煙検知室に向かう一方向においてそれぞれ隣接し、
前記煙の第1の流入量と前記湯気の第2の流入量とについて、前記第3空間では、前記煙の第1割合は、前記湯気の第2割合よりも高くなっており、
前記第2空間の体積は、前記第1空間及び前記第3空間の各々の体積よりも大きい、
請求項1~5のいずれか1項に記載の感知器。
【請求項7】
煙が流入する流入口を有した煙検知室と、
外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる開口部と、
前記煙検知室の前記周囲の空間に配置されて、気体の流路を分割する分割部を備え、
前記分割部は、前記気体の流路において第1空間と第2空間と第3空間とを形成し、
前記外部空間と前記第1空間、前記第1空間と前記第2空間、及び前記第2空間と前記第3空間とは、前記開口部から前記煙検知室に向かう一方向においてそれぞれ隣接し、
前記分割部は、前記開口部から前記気体の流路に流入する煙の第1の流入量と、前記開口部から前記気体の流路に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、
前記第1の流入量に対する前記流入口に到達する煙の量の第1割合が、前記第2の流入量に対する前記流入口に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように前記気体の流路を分割し、
前記煙の第1の流入量と前記湯気の第2の流入量とについて、前記第3空間では、前記煙の第1割合は、前記湯気の第2割合よりも高くなっており、
前記一方向及び鉛直方向に沿った断面において、
前記第2空間の断面積は、前記第1空間及び前記第3空間の断面積の各々よりも大きい、
感知器。
【請求項8】
前記一方向及び鉛直方向に沿った断面において、
前記第2空間の鉛直方向の長さは、前記第1空間及び前記第3空間の鉛直方向の長さの各々よりも長い、
請求項6又は7に記載の感知器。
【請求項9】
前記一方向及び鉛直方向に沿った断面において、
前記一方向における前記第2空間の長さは、前記一方向における前記第1空間及び前記第3空間の長さの各々よりも長い、
請求項6~8のいずれか1項に記載の感知器。
【請求項10】
前記分割部は、前記第2空間と前記第3空間との間に、前記一方向において前記煙検知室に近づくに従って鉛直上方に高くなるように傾斜する傾斜面を備える、
請求項6~9のいずれか1項に記載の感知器。
【請求項11】
前記開口部の外周の鉛直上方に配置され、前記気体が前記開口部に流入するように制御する気流制御部を更に備える、
請求項1~10のいずれか1項に記載の感知器。
【請求項12】
前記気流制御部は、前記外部空間の煙又は湯気を含む主気流を、前記開口部から前記気体の流路に流入しない第1気流と、前記開口部から前記気体の流路に流入する第2気流とに分離し、前記主気流が煙を含む場合における前記第1気流の煙の量に対する前記第2気流の煙の量の割合が、前記主気流が湯気を含む場合における前記第1気流の湯気の量に対する前記第2気流の湯気の量の割合よりも高くなるように前記主気流を制御する、
請求項11に記載の感知器。
【請求項13】
前記煙検知室が上に搭載される基台を更に備える、
請求項1~12のいずれか1項に記載の感知器。
【請求項14】
前記基台は、回路基板である、
請求項13に記載の感知器。
【請求項15】
前記基台の外周部に配置される1又は複数の熱検知素子を更に備える、
請求項13又は14に記載の感知器。
【請求項16】
前記外周部は、前記熱検知素子が配置される周辺領域に、内方へ向かって凹んだ凹部を有する、
請求項15に記載の感知器。
【請求項17】
煙が流入する流入口を有した煙検知室と、
前記煙検知室が上に搭載される基台と、
前記基台の下面を覆うように配置される筒部
と、
外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる開口部と、
前記煙検知室の前記周囲の空間に配置されて、気体の流路を分割する分割部を備え、
前記基台は、前記筒部より外方に突出する突出縁部を有
し、
前記分割部は、前記開口部から前記気体の流路に流入する煙の第1の流入量と、前記開口部から前記気体の流路に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、
前記第1の流入量に対する前記流入口に到達する煙の量の第1割合が、前記第2の流入量に対する前記流入口に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように前記気体の流路を分割する、
感知器。
【請求項18】
外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる開口部を有し、前記基台の下側に配置される、下カバーを更に備え、
前記基台の外周部は、前記下カバーを正面から見て、前記開口部から前記外部空間にハミ出ていない、
請求項13~17のいずれか1項に記載の感知器。
【請求項19】
煙が流入する流入口を有した煙検知室と、
前記煙検知室を上から覆うように配置される上カバー
と、
外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる開口部と、
前記煙検知室の前記周囲の空間に配置されて、気体の流路を分割する分割部を備え、
前記分割部は、前記煙検知室の周囲の空間を、鉛直方向成分を含む分離方向に二分して、上側流路と下側流路との2つに分岐させる分岐部を備え、
前記分岐部は、前記上側流路及び前記下側流路のうち、前記上側流路を通った煙を、前記流入口から前記煙検知室の内部に流入させ、
前記上カバーは、前記上側流路と前記下側流路のうちの前記上側流路の一部を形成
し、
前記分割部は、前記開口部から前記気体の流路に流入する煙の第1の流入量と、前記開口部から前記気体の流路に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、
前記第1の流入量に対する前記流入口に到達する煙の量の第1割合が、前記第2の流入量に対する前記流入口に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように前記気体の流路を分割する、
感知器。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の感知器と、
前記感知器と通信する受信機と、を備える、
火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、感知器及び火災報知システムに関し、より詳細には、例えば火災等によって発生する煙を感知する感知器及び火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱煙複合式感知器が開示されている。この感知器は、熱を感知する熱感知手段と、暗箱内に流入した煙を感知する煙感知部(煙検知室)と、を備える。熱感知手段は、回路基板に接続されて回路基板から上側に向けて突出するリード線と、リード線の上端に設けられたサーミスタ等の感熱素子と、を備えて構成される。また煙感知部は、暗箱と、暗箱の内側に配置された発光手段及び受光手段とによって構成され、暗箱内に流入してきた煙により発光手段から発せられた光が散乱されたときの散乱光を受光手段が受光することにより煙を感知する。
【0003】
ところで、感知器は、湯気が煙検知室に入り込む状況が発生しやすい環境(例えば浴室の近くの脱衣所等)に設置されることがある。特許文献1に開示される感知器では、湯気を煙と誤検知してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、誤検知が発生する可能性を低減できる、感知器及び火災報知システムを提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様の感知器は、煙検知室と、開口部と、分割部と、を備える。前記煙検知室は、煙が流入する流入口を有する。前記開口部は、外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる。前記分割部は、前記煙検知室を囲むように、前記周囲の空間に配置されて、気体の流路を分割する。前記分割部は、前記開口部から前記気体の流路に流入する煙の第1の流入量と、前記開口部から前記気体の流路に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、前記第1の流入量に対する前記流入口に到達する煙の量の第1割合が、前記第2の流入量に対する前記流入口に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように前記気体の流路を分割する。
本開示の一態様の感知器は、煙検知室と、開口部と、分割部と、を備える。前記煙検知室は、煙が流入する流入口を有する。前記開口部は、外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる。前記分割部は、前記煙検知室の前記周囲の空間に配置されて、気体の流路を分割する。前記分割部は、前記気体の流路において第1空間と第2空間と第3空間とを形成する。前記外部空間と前記第1空間、前記第1空間と前記第2空間、及び前記第2空間と前記第3空間とは、前記開口部から前記煙検知室に向かう一方向においてそれぞれ隣接する。前記分割部は、前記開口部から前記気体の流路に流入する煙の第1の流入量と、前記開口部から前記気体の流路に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、前記第1の流入量に対する前記流入口に到達する煙の量の第1割合が、前記第2の流入量に対する前記流入口に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように前記気体の流路を分割する。前記煙の第1の流入量と前記湯気の第2の流入量とについて、前記第3空間では、前記煙の第1割合は、前記湯気の第2割合よりも高くなっている。前記一方向及び鉛直方向に沿った断面において、前記第2空間の断面積は、前記第1空間及び前記第3空間の断面積の各々よりも大きい。
本開示の一態様の感知器は、煙検知室と、基台と、筒部と、開口部と、分割部と、を備える。前記煙検知室は、煙が流入する流入口を有する。前記基台は、前記煙検知室が上に搭載される。前記筒部は、前記基台の下面を覆うように配置される。前記開口部は、外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる。前記分割部は、前記煙検知室の前記周囲の空間に配置されて、気体の流路を分割する。前記基台は、前記筒部より外方に突出する突出縁部を有する。前記分割部は、前記開口部から前記気体の流路に流入する煙の第1の流入量と、前記開口部から前記気体の流路に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、前記第1の流入量に対する前記流入口に到達する煙の量の第1割合が、前記第2の流入量に対する前記流入口に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように前記気体の流路を分割する。
本開示の一態様の感知器は、煙検知室と、上カバーと、開口部と、分割部と、を備える。前記煙検知室は、煙が流入する流入口を有する。前記上カバーは、前記煙検知室を上から覆うように配置される。前記開口部は、外部空間と前記煙検知室の周囲の空間とを連通させる。前記分割部は、前記煙検知室の前記周囲の空間に配置されて、気体の流路を分割する。前記分割部は、前記煙検知室の周囲の空間を、鉛直方向成分を含む分離方向に二分して、上側流路と下側流路との2つに分岐させる分岐部を備える。前記分岐部は、前記上側流路及び前記下側流路のうち、前記上側流路を通った煙を、前記流入口から前記煙検知室の内部に流入させる。前記上カバーは、前記上側流路と前記下側流路のうちの前記上側流路の一部を形成する。前記分割部は、前記開口部から前記気体の流路に流入する煙の第1の流入量と、前記開口部から前記気体の流路に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、前記第1の流入量に対する前記流入口に到達する煙の量の第1割合が、前記第2の流入量に対する前記流入口に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように前記気体の流路を分割する。
本開示の一態様の火災報知システムは、前記感知器と、前記感知器と通信する受信機と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る感知器の断面図である。
【
図3】
図3は、同上の感知器の上方から見た分解斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の感知器の下方から見た分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の感知器の、上カバーの一部を除く上方から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の感知器における煙検知室のカバーを取り外した分解斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の感知器のブロック構成図である。
【
図8】
図8は、同上の感知器における変形例1の、上カバーを除く上方から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、同上の感知器における変形例2の、上カバーの一部を除く上方から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、同上の感知器における変形例3の要部断面図である。
【
図11】
図11は、同上の感知器における基台の変形例の平面図である。
【
図13】
図13は、同上の感知器の、上カバーの一部を除く上方から見た斜視図である。
【
図14】
図14は、同上の感知器の下方から見た分解斜視図である。
【
図15】
図15Aは、同上の感知器の傾斜部におけるテーパ角度に対する感知器の応答性を説明するための図である。
図15Bは、同上の感知器の気流制御部におけるテーパ角度の感知器の応答性を説明するための図である。
図15Cは、同上の感知器の気流制御部における厚みに対する感知器の応答性を説明するための図である。
【
図16】
図16は、同上の感知器における突起部を有する変形例の要部断面図である。
【
図17】
図17は、同上の感知器における気流制御部が曲線形状のテーパを有する変形例の要部断面図である。
【
図18】
図18は、同上の感知器における制限部を有する変形例の要部断面図である。
【
図19】
図19は、同上の感知器における分割部のテーパが平面である変形例の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(全体概要)
以下、本開示に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)の概要について、説明する。
【0009】
本開示に係る感知器は、例えば、火災感知器であり、火災等によって発生する(火災)煙を検知する機能を有した感知器である。本開示に係る感知器は、光電式の感知器である。以下では、本開示に係る感知器は、散乱光式の感知器であることを想定して説明するが、散乱光式に限定されず、透過光式の感知器であってもよい。
【0010】
また、以下では、本開示に係る感知器が、煙の検知機能に加えて、火災等によって発生する熱を検知する機能を更に有した、いわゆる複合火災感知器であるものとする。ただし、本開示に係る感知器は、熱の検知機能を有していなくてもよい。本開示に係る感知器は、
図2に示すように、例えば、建物の天井面又は壁面等の施工面100(図示例では天井面)に設置される。
【0011】
本開示に係る感知器は、煙検知室4と、開口部510と、分割部Z1と、を備えている。煙検知室4は、煙が流入する流入口40を有している。開口部510は、外部空間SP2と煙検知室4の周囲の空間SP1とを連通させる。分割部Z1は、煙検知室4の周囲の空間SP1に配置されて、気体の流路6を分割する。分割部Z1は、開口部510から気体の流路6に流入する煙の第1の流入量と、開口部510から気体の流路6に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、第1に流入量に対する流入口40に到達する煙の量の第1割合が、第2の流入量に対する流入口40に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように気体の流路を分割する。分割部Z1は、
図3及び
図13に示すように、煙検知室4の周囲の空間SP1に配置され、煙検知室4の全周にわたって形成されている。
【0012】
ここで、分割部Z1は、例えば、以下の実施形態1では、上側流路61において、開口部510から気体の流路6に流入する煙の第1の流入量と、開口部510から気体の流路6に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、第1の流入量に対する流入口40に到達する煙の量の第1割合が、第2の流入量に対する流入口40に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなることに相当する。また、例えば、以下の実施形態2では、第3空間SP5において、開口部510から気体の流路6に流入する煙の第1の流入量と、開口部510から気体の流路6に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、第1に流入量に対する流入口40に到達する煙の量の第1割合が、第2の流入量に対する流入口40に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなることに相当する。
【0013】
また、「煙の量の第1割合」が「湯気の量の第2割合」よりも高くなっていれば、分割部Z1は、気体の流路6を分割していると言い得る。分割部Z1は、必ずしも煙と湯気とを完全に分けるように気体の流路6を分割することには相当していない。例えば、開口部510に体積流量A[cm3/sec]の煙が流入してきた場合に、流入口40に体積流量B[cm3/sec]の煙が流入したとすると、第1割合は、B/Aとなる。開口部510に、上記の煙の体積流量と同じ体積流量A[cm3/sec]の湯気が流入してきた場合に、流入口40に体積流量C[cm3/sec]の湯気が流入したとすると、第2割合は、C/Aとなる。この場合、分割部Z1は、例えば、(B/A)>(C/A)が成り立つように、気体の流路6を分割することを意味する。
【0014】
ところで、煙と湯気とを比較すると、煙粒子の方が湯気粒子に比べて粒子径が小さくなっており、更に、煙粒子の方が湯気粒子に比べて重量が軽くなっている。このため、煙と湯気とを比較すると、煙粒子は湯気粒子に比べて拡散力が高く、慣性力が小さくなっている。この煙と湯気との差を利用して、分割部Z1は、煙が通りやすい空間と湯気が通りやすい空間とに分割する。
【0015】
この構成によると、湯気粒子と比較して拡散力が高く、慣性力の小さな煙粒子は、分割部Z1により、煙検知室4に流入し易くなる一方で、湯気粒子は、煙検知室4に流入しにくくなる。つまり、分割部Z1によって、煙を含む気流は、流入口40から煙検知室4の内部に流入する。結果的に、本開示に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)は、誤検知が発生する可能性を低減することができる、という利点がある。
【0016】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る感知器1は、
図1に示すように、煙検知室4と、分割部Z1とを備えている。分割部Z1は、分岐部71を備える。
【0017】
煙検知室4は、煙が流入する流入口40を有している。分岐部71は、煙検知室4の周囲に配置される。分岐部71は、煙検知室4の周囲の空間SP1を、鉛直方向A2成分を含む分離方向A1に二分して、気体の流路6を上側流路61と下側流路62の2つに分岐(分割)させる。
【0018】
分岐部71は、上側流路61及び下側流路62のうち、上側流路61を通った煙を、流入口40から煙検知室4の内部に流入させるように構成される。つまり、分割部Z1が備える分岐部71は、気体の流路6を、上側流路61と下側流路62との2つに分岐(分割)させる。上側流路61では、第1に流入量に対する流入口40に到達する煙の量の第1割合が、第2の流入量に対する流入口40に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなる。
【0019】
この構成によれば、上昇しやすい煙粒子は上側流路61を通る一方で、煙粒子よりも質量が大きい湯気粒子は、下側流路62を通りやすくなる。つまり、分岐部71によって煙だけが流入口40から煙検知室4の内部に流入される可能性が高くなる。結果的に、感知器1には、誤検知が発生する可能性を低減できる、という利点がある。
【0020】
ところで、本実施形態では、感知器1は、煙検知室4に加えて、少なくとも1つ(ここでは一例として2つ)の気流制御壁8(
図5参照)を更に備えている。煙検知室4は、煙が流入する流入口40を有している。気流制御壁8は、煙検知室4の周囲に配置される。気流制御壁8は、煙検知室4の周方向A3における、煙検知室4に対する煙流入性のばらつきを小さくするように気流を制御する。ここでいう「煙流入性のばらつきが小さい」とは、感知器1を鉛直方向に沿って見て、感知器1の周囲360度のどの方向から煙が(開口部510を通じて)感知器1内に進入してきても、煙検知室4に流入する量の差が小さい、ということを意味する。
【0021】
この構成によれば、気流制御壁8による気流の制御によって、煙検知室4に対する煙流入性のばらつきを小さくする。そのため、感知器1には、煙検知室4に対する煙流入性の改善を図ることができる、という利点がある。
【0022】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る感知器1の全体構成について詳しく説明する。感知器1は、上述の通り、煙及び熱を検知する複合火災感知器である。
【0023】
以下では、感知器1の上下の方向を、感知器1が施工面100(天井面)に設置されている状態を示す
図2に図示されている上下の矢印を用いて規定して説明する。この矢印は、単に説明を補助する目的で記載しているに過ぎず、実体を伴わない。またこの方向は、感知器1の使用方向を限定する趣旨ではない。
【0024】
感知器1は、上述した煙検知室4(煙検知部)を備えている。また感知器1は、
図1、
図3~
図6に示すように、基台2、筐体5、及び流路形成部材7を更に備えている。また感知器1は、
図7に示すように、熱検知部3、制御部9、及び表示部10を更に備えている。また感知器1は、施工面100に対してねじ止め等によって固定される円盤状の取付ベースを更に備えている。感知器1は、筐体5の上面側に設けられた取付部が取付ベースに対して着脱可能に取り付けられることで、施工面100に設置され得る。
【0025】
また感知器1は、火災を検知したときに、火災の発生を知らせる信号を外部の警報器等へ送信し、また警報器等からの信号を受信する通信部11(
図7参照)を更に備えている。
【0026】
感知器1は、商用電源によって電力が供給されてもよいし、筐体5の内部に設けられた電池によって電力が供給されてもよい。
【0027】
(2.2)筐体
筐体5は、基台2、熱検知部3、煙検知室4、制御部9、表示部10、通信部11、及びその他の回路モジュール等を、内部に収容する。また筐体5は、表示部10のガイド部の一面を外部に露出するように支持する。
【0028】
筐体5は、合成樹脂製であり、例えば難燃性ABS樹脂製である。筐体5は、全体として、上下方向にへん平な円筒状に形成されている。筐体5は、
図3及び
図5に示すように、一面(図示例では上面)が開放された円筒状の下カバー51(表カバー)と、略円板状の上カバー52(裏カバー)と、を有している。筐体5は、上カバー52が下カバー51に対してその開放された一面側から組み付けられることにより構成される。上カバー52は、煙検知室4を上から覆うように配置される。下カバー51は、基台2の下側に配置される。
【0029】
また筐体5は、その内部の空間SP1に設けられて気体が流れる流路6と、流路6と外部空間SP2とを繋ぐ1又は複数(ここでは6つ)の開口部510(横孔)と、を有している。ここでは複数の開口部510が下カバー51に設けられている。言い換えると、下カバー51は、外部空間SP2と煙検知室4の周囲の空間SP1とを連通させる開口部510を有している。
【0030】
具体的には、下カバー51は、
図2及び
図3に示すように、上下の両端が開放されたへん平な円筒体51Aと、円筒体51Aの下方にある円板状の基部51Bと、円筒体51A及び基部51Bを繋ぐ複数本(例えば6本)の支柱51Cと、から構成されている。円筒体51A、基部51B、及び6本の支柱51Cは、一体となって形成されている。6本の支柱51Cは、基部51Bの周縁部において周方向に沿って略等間隔に並んでいて、かつ当該周縁部から円筒体51Aの開放された下縁部に向かって突出している。6本の支柱51Cは、円筒体51Aと基部51Bとの間の距離を規定距離に保つ。6つの開口部510は、このように構成された下カバー51の周壁において、その周方向(感知器1の周方向A4に相当)に沿って略等間隔に並んでいる。
【0031】
各開口部510は、下カバー51の周壁を径方向に貫通する、略矩形状の貫通孔であり、流路6と外部空間SP2とを繋ぐ口となる。
【0032】
基部51Bは、その上面に、基台2を位置決めするための位置決め構造を有している。ここでは、その位置決め構造として、筒部511が設けられている(
図1及び
図3参照)。言い換えると、本実施形態の感知器1は、基台2の下面(第2面22)を覆うように配置される筒部511を更に備えている。筒部511は、基部51Bの上面から円筒状に突出している。筒部511の上端面は、基台2の下面と接触する。
【0033】
なお、下カバー51は、基部51Bに、表示部10のガイド部の一面(下面)を外部空間SP2に露出するための一対の孔部(
図2では図示を省略)を有している。したがって、表示部10の一対の光源10A(
図4参照)から放射された光は、一対のガイド部をそれぞれ介して、筐体5の外部に導出される。
【0034】
上カバー52は、基台2に固定された取付部の複数の接続片が嵌入される嵌入孔を複数有している。複数の接続片は、基台2上に設けられている回路モジュールと電気的に接続されている。複数の接続片は、その先端が上カバー52の裏面側から十分に突出する程度にまで差し込まれている。複数の接続片は、施工面100に固定された取付ベースのコンタクト部に対して、機械的及び電気的に接続され得る。要するに、取付部は、単に取付ベースへの機械的な接続だけではなく、天井裏側にある電線(給電線及び信号線)との電気的な接続、さらに上カバー52に対する基台2の安定的な位置決めも兼ねた部位である。
【0035】
また上カバー52は、基台2と対向する一面(下面)において、基台2に実装された煙検知室4の上部を収容するための収容凹部521(
図4参照)を有している。収容凹部521は、上カバー52の中央部全体が上方に突出することで形成されている。煙検知室4は、収容凹部521により安定的に位置決めされる。
【0036】
ここで感知器1は、
図4に示すように、一対の気流制御壁8を更に備えている。ここでは一例として、気流制御壁8が、上カバー52の一部として形成されている。一対の気流制御壁8は、上カバー52の、基台2と対向する一面(下面)において、収容凹部521よりも外方に設けられている。一対の気流制御壁8は、煙検知室4の周囲に配置されて、煙検知室4の周方向A3における、煙検知室4に対する煙流入性のばらつきを小さくするように気流を制御する。気流制御壁8についての詳細な説明は後述する。
【0037】
(2.3)基台
基台2は、煙検知室4がその上に搭載されるように構成される。ここでは一例として、基台2は、回路基板である。基台2は、例えば、導体のパターン配線が施された一枚のプリント配線板である。基台2は、
図3及び
図4に示すように、その厚み方向に貫通する一対の係合孔27を有している。煙検知室4のボディ4Bに設けられている一対の係合片42(
図4参照)が一対の係合孔27にそれぞれ挿入して引っ掛けられることで、煙検知室4が基台2の第1面21(上面)に取り付けられる。なお、流路形成部材7は、煙検知室4と基台2とによって上下から挟み込まれる形態で保持される。
【0038】
また基台2には、煙検知室4に加えて、熱検知部3、制御部9、表示部10、通信部11、及びその他の回路モジュール等が実装されている。その他の回路モジュールとは、表示部10の光源10A及び煙検知室4の光学素子401(
図6及び
図7参照)を点灯させる点灯回路、並びに、商用電源等より供給される電力を用いて各種回路の動作電力を生成する電源回路等を含む。
【0039】
基台2は、
図3及び
図4に示すように、全体として略円形状に形成されている。本実施形態では、熱検知部3の1又は複数(
図5では6つ)の熱検知素子30が、基台2の外周部23に配置される。6つの熱検知素子30は、基台2の第1面21(上面)に表面実装されている。ここでは一例として、煙検知室4も、基台2の第1面21上に配置されている。以下、基台2の第1面21の反対側の面を、第2面22(下面)と呼ぶこともある。表示部10の光源10Aは、
図4に示すように、基台2の第2面22上に実装されている。
【0040】
第1面21及び第2面22のうち、第1面21が、施工面100に近い側の面に相当する。したがって、熱検知素子30及び煙検知室4は、いずれも、基台2における施工面100に近い側の面に配置されている、といえる。
【0041】
制御部9、及び回路モジュールを構成する複数の電子部品は、基台2の第1面21又は第2面22に実装されている。制御部9、及び回路モジュールを構成する複数の電子部品は、基台2のみに実装されていなくてもよく、例えば、基台2の周辺に別の実装基板が配置されていて、当該実装基板に、それらの一部又は全部が実装されてもよい。
【0042】
以下、基台2の構造について詳しく説明する。基台2は、
図5に示すように、円形状の本体部20(一点鎖線より内側の部位)と、本体部20の縁において本体部20の中心から離れる方向に延出した複数(図示例では合計12個)の延出部分とを有している。煙検知室4は、本体部20の上面の中央部に配置される。
【0043】
12個の延出部分は、6個の突出縁部25と6個の舌部26とから構成される。上述した基台2の外周部23とは、6個の突出縁部25及び6個の舌部26に相当する部位である。
【0044】
各舌部26は、6つの熱検知素子30のうち対応する熱検知素子30が実装される部位である。各舌部26は、本体部20の上面及び下面と、それぞれ面一となって連続している上面及び下面を有している。各舌部26は、上下方向に沿って見て、本体部20から細長い帯板状に突出していて、その先端部は半円状に形成されている。6個の舌部26は、基台2の外周部23を略六等分するように、本体部20の周方向に沿って等間隔に並んでいる。各熱検知素子30は、対応する舌部26の上面における先端付近に実装されている。舌部26は、熱検知素子30よりも内側の領域に、矩形状の開口を有した貫通孔260を有している。貫通孔260が各熱検知素子30の傍に設けられていることで、熱検知素子30の周囲において基台2が占める領域を減らすことができる。結果的に、熱検知素子30における熱が基台2を伝達して低くなったり、本体部20上に実装されている他の回路部品で発生する熱が熱検知素子30に影響を及ぼしたりする可能性を低減できる。すなわち、貫通孔260によって熱絶縁性が向上される。貫通孔260の開口面積は、熱検知素子30の表面積(例えば基台2の上側から見た表面積)よりも大きいことが望ましい。
【0045】
各突出縁部25は、本体部20の上面及び下面と、それぞれ面一となって連続している上面及び下面を有している。各突出縁部25は、上下方向に沿って見て、本体部20の中心軸を円の中心とする円弧状に沿って湾曲した、帯板状である。6個の突出縁部25は、本体部20の周方向に沿って並んでいる。隣り合う2つの突出縁部25の間に、6個の舌部26のうちの対応する舌部26が配置されている。言い換えると、6個の舌部26と6個の突出縁部25は、本体部20の周方向に沿って1つずつ交互に並んでいる。
【0046】
本実施形態の各突出縁部25は、
図1に示すように、筒部511より外方に突出するように構成されている。言い換えると、上下方向に沿って見て、本体部20の投影領域は、筒部511と略同じであり、6個の突出縁部25が筒部511からハミ出ている。なお、本体部20に対する舌部26の突出量は、突出縁部25の突出量よりも、やや大きい。
【0047】
ところで、基台2の外周部23は、熱検知素子30が配置される周辺領域に、内方へ向かって凹んだ凹部24(
図5参照)を有している。ここでは6個の舌部26の各々に、一対の凹部24が対応するように、合計12個の凹部24が設けられている。具体的には、熱検知素子30が実装される各舌部26の、本体部20の周方向における両側に、一対の凹部24が形成されている。
【0048】
したがって、各舌部26は、隣り合う2つ突出縁部25の間において、その2つの突出縁部25の各々と隙間を空ける形態で配置される。そのため、火災による熱気を、凹部24によって効率よく舌部26上の熱検知素子30に誘導できる。すなわち、熱流性が向上される。また熱検知素子30における熱が基台2を伝達して低くなったり、本体部20上の他の回路部品で発生する熱が突出縁部25を介して舌部26上の熱検知素子30に影響を及ぼしたりする可能性を低減できる。
【0049】
このように本実施形態の基台2は、一例として、その中心を軸に60度回転させることで対称となる、六回対称の形状である。
【0050】
(2.4)熱検知部と煙検知部
熱検知部3は、上述の通り、基台2の第1面21に実装される6つの熱検知素子30を有している(
図7では1つのみ図示)。熱検知素子30の数は、特に限定されず、1つでもよいが、少なくとも2つ以上であることが好ましい。熱検知素子30は、開口部510から流入した気体の熱を検知するチップサーミスタであり、基台2に表面実装されている。各熱検知素子30は、互いに異なる1つの開口部510と対向するように配置されている。
【0051】
熱検知部3は、基台2に形成されたパターン配線等を介して、制御部9と電気的に接続されている。各熱検知素子30は、制御部9に電気信号(検知信号)を出力する。言い換えると、制御部9は、各熱検知素子30から出力される電気信号を通じて、温度上昇に依存して変化し得る各熱検知素子30の抵抗値を監視している。
【0052】
熱検知部3は、熱検知素子30以外に、熱検知素子30からの電気信号を増幅する増幅回路、及びアナログ-デジタル変換する変換回路等を更に有してもよいし、あるいは増幅及び変換は、回路モジュール側で行われてもよい。
【0053】
煙検知室4は、筐体5の内部空間の中央部に配置され、煙を検知するように構成されている。具体的には、煙検知室4は、基台2の本体部20の上面に配置されて、かつその上部が上カバー52の収容凹部521に収められている。煙検知室4は、例えば煙を検知する光電式のセンサであり、特に散乱光式のセンサである。
【0054】
煙検知室4は、
図6及び
図7に示すように、光を放射する光学素子401と、光学素子401から放射された光を受光する受光素子402と、ラビリンス部403と、を有している。光学素子401は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。受光素子402は、例えばフォトダイオードである。ラビリンス部403は、へん平な略円筒形状の外郭を有しているハウジングの内部に形成されている。
【0055】
煙検知室4のハウジングは、カバー4Aとボディ4Bとが組み付けられて構成される。カバー4Aは、
図6に示すように、下面が開放されたへん平な略円筒形状の外郭を有している。カバー4Aは、その外周面において気体をラビリンス部403内に流入させる複数の流入口40を有している。火災煙は、流入口40からラビリンス部403内に流入する。各流入口40は、その正面から見て、略矩形の開口を有している。複数の流入口40は、煙検知室4の周方向A3に沿って並んで配置される。なお、本実施形態では、煙検知室4の周方向A3は、感知器1の周方向A4と一致する。
【0056】
ボディ4Bは、略円板状に形成され、かつ、その上面に外光が内部に入射することを抑制する構造、及び光学素子401と受光素子402とを保持する構造を有している。またボディ4Bは、その下端縁から下方に突出する一対の係合片42(
図4参照)を有している。一対の係合片42が、流路形成部材7の一対の挿通孔74に挿通され、更に基台2の一対の係合孔27にそれぞれ挿入して引っ掛けられることで、煙検知室4は、基台2との間に流路形成部材7を挟み込む形態で、基台2に取り付けられる。
【0057】
光学素子401及び受光素子402は、ラビリンス部403内において、互いに対向しないように配置される。言い換えると、受光素子402の受光面が、光学素子401の照射光の光軸上から外れるように配置されている。
【0058】
火災等の発生時には、火災煙が筐体5の開口部510を通じて筐体5内に入り、更に流入口40を通じてラビリンス部403内に導入され得る。ラビリンス部403内に煙が存在しない場合、光学素子401の照射光は、受光素子402の受光面にほとんど到達しない。一方、ラビリンス部403内に煙が存在する場合、光学素子401の照射光が煙によって散乱し、散乱した光の一部が受光素子402の受光面に到達する。つまり、煙検知室4は、煙によって散乱された光学素子401の照射光を受光素子402で受光する。
【0059】
煙検知室4の受光素子402は、制御部9と電気的に接続されている。煙検知室4は、受光素子402で受光された光量に応じた電圧レベルを示す電気信号(検知信号)を制御部9に送信する。制御部9は、煙検知室4から受け取った検知信号の光量を煙濃度に換算して火災の判定を行う。制御部9は、光量をそのまま閾値判定に用いてもよい。煙検知室4は、受光素子402で受光された光量を煙濃度に換算してから煙濃度に応じた電圧レベルを示す検知信号を制御部9に送信してもよい。
【0060】
煙検知室4は、受光素子402からの電気信号を増幅する増幅回路、及びアナログ-デジタル変換する変換回路等を更に有してもよいし、あるいは増幅及び変換は、回路モジュール側で行われてもよい。また煙検知用の光学素子401の数は、1つに限定されず、複数でもよい。
【0061】
(2.5)表示部
表示部10は、一対の光源10Aと、一対のガイド部とを有している。各光源10Aは、例えば、平板状の実装基板の実装面の中央に少なくとも1個のLEDチップが実装された、パッケージ型のLEDとして構成される。各光源10Aは、上述の通り、基台2上に実装されている。各ガイド部は、透光性を有している部位である。各ガイド部は、基台2上の対応する光源10Aと対向し、かつ光源10Aから放射された光が入射する入射面を有している。各ガイド部は、入射面から入射した光がガイド部の外部に出射される出射面を有している。各ガイド部の出射面は、下カバー51の対応する孔部を介して露出している。
【0062】
表示部10は、感知器1の動作状態を外部に通知する作動灯である。通常時(火災の監視時)には、回路モジュールの点灯回路は、制御部9の制御下で光源10Aを消灯させる。火災が発生したと判定したときには、回路モジュールの点灯回路は、制御部9の制御下で光源10Aの点滅又は点灯を開始する。
図7では、制御部9と表示部10との間における点灯回路の図示を省略している。
【0063】
(2.6)制御部
制御部9は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、制御部9として機能する。プログラムは、ここでは制御部9のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0064】
制御部9は、通信部11、及び回路モジュール(点灯回路及び電源回路等)を制御するように構成されている。
【0065】
また制御部9は、熱検知部3及び煙検知室4からの検知信号を受信し、火災が発生したか否かを判定するように構成されている。具体的には、制御部9は、熱検知部3の6つの熱検知素子30からの検知信号を個別に監視し、検知信号に含まれている信号レベル(抵抗値に相当)が閾値を上回る(又は下回る)熱検知素子30が1つでも見つかると、火災が発生したと判定する。また制御部9は、煙検知室4からの検知信号も監視し、検知信号に含まれている信号レベル(受光素子402で受光された光量又は煙濃度に相当)が閾値を超えると、火災が発生したと判定する。
【0066】
制御部9は、熱検知又は煙検知に基づいて火災が発生したと判定すると、通信部11を介して、火災の発生を知らせる信号を、自動火災報知システムの受信機及び火災警報器等へ送信する。通信部11は、例えば有線により、受信機及び火災警報器等と通信するための通信インターフェイスである。通信部11は、取付部の接続片、取付ベースのコネクタ部、及び天井裏側に配線されている信号線を介して、受信機及び火災警報器等と通信可能に接続されている。また制御部9は、火災が発生したと判定すると、表示部10(作動灯)の光源10Aを点滅又は点灯させるための制御信号を、回路モジュールの点灯回路へ出力する。
【0067】
(2.7)流路形成部材
本実施形態における流路形成部材7は、合成樹脂製であり、例えば難燃性ABS樹脂製である。流路形成部材7は、全体として上面が開放されたへん平な略円筒形状の外郭を有している。具体的には、流路形成部材7は、
図3及び
図4に示すように、基部70と、分岐部71(分割部Z1)と、遮断部72とを有している。
【0068】
基部70は、円板形状となっている。基部70は、その厚み方向に貫通する一対の挿通孔74を有している。一対の挿通孔74には、上述の通り、煙検知室4の一対の係合片42がそれぞれ挿通され得る。
【0069】
遮断部72は、基部70の外周縁から上方に突出するように連続的に形成された、円筒状の部位である。煙検知室4が基台2とで流路形成部材7を挟み込んだ形態で基台2に取り付けられた状態で、煙検知室4は、基部70及び遮断部72によって囲まれた凹所75(
図3参照)内に収まる。煙検知室4が凹所75内に収まった状態で、煙検知室4の周壁41は、遮断部72から所定の隙間X1(
図1及び
図6参照)を空けて、概ね遮断部72によって覆われる。
【0070】
分岐部71は、遮断部72の上端縁から連続的に形成された、略円環状の部位である。具体的には、分岐部71は、遮断部72の上端縁から、遮断部72の径方向の外方に延出し、さらに下方に突出するように形成されている。結果的に、流路形成部材7は、全体として、その上端縁が「返し形状」となっている。分岐部71は、遮断部72の上端縁の周方向の全体にわたって形成されている。煙検知室4が凹所75内に収まった状態で、分岐部71は、煙検知室4の周囲に配置される。
【0071】
本実施形態の分岐部71は、煙検知室4の周囲の空間SP1を、鉛直方向A2成分を含む分離方向A1に二分して、気体の流路6を上側流路61と下側流路62の2つに分岐(分割)させる。そして、分岐部71(分割部Z1)は、上側流路61を通った煙を、流入口40から煙検知室4の内部に流入させるように構成される。ここでは、空間SP1は、分岐部71によって概ね上下方向に二分されている。つまり、分離方向A1は、鉛直方向A2と概ね一致する。ただし、分離方向A1は、鉛直方向A2成分を含む限り、鉛直方向A2と交差する方向でもよい。
【0072】
具体的には、空間SP1は、上カバー52と基台2と煙検知室4とによって囲まれている。上側流路61は、上カバー52と分岐部71とによって囲まれた流路であり、
図1の断面図でいえばクランク形状の流路となっている。言い換えると、上カバー52は、上側流路61の一部を形成する。そのため、上側流路61を形成する部材を、上カバー52とは別に設ける場合に比べて、部品点数の削減を図ることができる。また感知器1の小型化(特に低背化)も図りやすくなる。
【0073】
また下側流路62は、上側流路61の下側にあり基台2の第1面21(上面)に沿った直進的な流路である。
図1では、気体が流れる方向を理解しやすくするために、上側流路61及び下側流路62を矢印で模式的に示している。また
図1では、煙検知室4の左側のみに上側流路61及び下側流路62を矢印で示しているが、上側流路61及び下側流路62は、煙検知室4の周方向A3における略全周にわたって形成される。
【0074】
ここで湯気粒子の質量は、煙粒子の質量よりも大きい。分岐部71(分割部Z1)が設けられていることで、湯気粒子に比べて上昇しやすい煙粒子は、開口部510から進入した後、下側流路62よりも上側流路61の方を支配的に通りやすくなる。そのため、煙粒子は、分岐部71(分割部Z1)を乗り越え、遮断部72の裏側にある流入口40から煙検知室4内に流入しやすくなる。一方、煙粒子よりも質量が大きい湯気粒子は、開口部510から進入した後、上側流路61よりも下側流路62の方を支配的に通りやすくなる。つまり、分岐部71(分割部Z1)によって煙だけが流入口40から煙検知室4の内部に流入される可能性が高くなる。結果的に、感知器1には、湯気を誤って火災煙と判定してしまうといった誤検知が発生する可能性を低減できる、という利点がある。
【0075】
特に感知器1では、煙検知室4の周囲の空間SP1が二分されるため、比較的薄型(低背)化された感知器1の外観サイズを維持しつつも、誤検知が発生する可能性を低減できる。
【0076】
また遮断部72は、
図1に示すように、下側流路62と煙検知室4との間に配置されていて、下側流路62を通る湯気の、煙検知室4の内部への流入を遮断するように構成される。したがって、分岐部71が設けられていることで上側流路61よりも下側流路62の方を支配的に通りやすくなっている湯気は、遮断部72に衝突する可能性が高くなる。結果的に、湯気が煙検知室4の内部に流入しにくくなり、誤検知の発生を更に抑制できる。特に、流路形成部材7の上端縁は、上述の通り「返し形状」となっているため、湯気が、遮断部72に衝突した時の反動で上昇して遮断部72を乗り越えて遮断部72の裏側にある流入口40に到達してしまう可能性を抑制できる。
【0077】
また上述の通り、本実施形態の基台2は、筒部511からハミ出ているように突出した(6個の)突出縁部25を有している。そのため、開口部510から進入した湯気が、
図1に矢印で模式的に示す流路6Aを通った場合に、筒部511に衝突した時の反動で上昇し基台2を乗り越えてしまう可能性を抑制できる。要するに、突出縁部25によって湯気の上昇を遮断できる。
【0078】
さらに突出縁部25は、下側流路62の流路長をより長く確保できるように突出している。下側流路62の流路長が長いほど、煙粒子の質量に比べて大きい湯気粒子の慣性による直進性が保持されやすい。そのため、突出縁部25が基台2に設けられていることで、下側流路62の流路長をより長く確保でき、湯気が途中で上昇して上側流路61に向かう割合を更に減らすことができる。
【0079】
このように突出縁部25によって、上昇する湯気が遮断され、さらに湯気の直進性が保持されるため、湯気が上側流路61を通る可能性を低減できる。
【0080】
なお、本実施形態では、基台2の外周部23(ここでは突出縁部25及び舌部26)は、下カバー51を正面から見て、開口部510から外部空間SP2にハミ出ていないように構成される。そのため、基台2の外周部23が、開口部510から感知器1内への煙の進入を阻害してしまう可能性を低減できる。
【0081】
(2.8)気流制御壁
ところで、本実施形態の煙検知室4の周壁41には、煙の流入口40が形成されておらず煙が煙検知室4の内部に流入しにくい領域が存在する。ここでは、煙検知室4のカバー4Aの対向壁405(
図6参照)が、煙の流入しにくい領域に相当する。カバー4Aがボディ4Bに組み付けられた状態で、対向壁405は、ボディ4Bの、光学素子401を保持する保持ブロック404(
図6参照)の外面と対向する。要するに、本実施形態の感知器1では、光学素子401を保持する保持ブロック404が、ボディ4Bの外周部寄りに配置されているため、保持ブロック404の外面側に流入口40を配置しにくい構造となっている。
【0082】
以下では、煙検知室4の周壁41のうち、流入口40が形成されている領域を第1領域411と呼び、流入口40が形成されていない領域を第2領域412と呼ぶことがある(
図5参照)。つまり、周壁41は、第1領域411と第2領域412とを含む。対向壁405が、第2領域412に相当する。
【0083】
ここで本実施形態の煙検知室4は、上述の通り、2つ(一対)の気流制御壁8を備えている(
図5及び
図6参照)。各気流制御壁8は、略矩形の板状の部位であり、上下方向に沿って見て、煙検知室4の周壁41から、基台2の突出縁部25の外縁より僅かにハミ出る程度の位置まで延びている。また各気流制御壁8は、その厚み方向が、略円形状の基台2の接線方向と平行となるように配置される。
図5及び
図6では、上カバー52のうち2つの気流制御壁8だけを断面で図示している。
【0084】
各気流制御壁8は、
図1に示すように、その厚み方向に沿って見て、L字状の第1部位81と、矩形状の第2部位82とを含む。第1部位81は、流路形成部材7の分岐部71の上面及び外周面と合わさるように配置される。第2部位82は、その上端部の内側の角が、L字状の第1部位81の下端部の外側の角と略一致するように配置される。第2部位82の下端部は、基台2の第1面21(主に突出縁部25の上面)と接触する。
【0085】
また各気流制御壁8は、下側流路62に対応する位置に溝部80を有している。溝部80は、下側流路62を支配的に通り得る湯気を逃がすために設けられている。溝部80は、第1部位81の下端部と第2部位82と内側の側部とによって構成されている。気流制御壁8が基台2及び流路形成部材7に接触した状態で、溝部80は、
図1に示すように、周方向A3に沿って見て、第1部位81、第2部位82、基台2及び流路形成部材7によって囲まれた略矩形状の開口となる。
【0086】
本実施形態の2つの気流制御壁8は、
図5及び
図6に示すように、周壁41の周方向A3において、それらが第2領域412を間に挟むように配置される。ここで
図5に示すように、煙検知室4を上から見たときの煙検知室4の中心点P1を中心とする、周方向A3における第2領域412(対向壁405)の範囲に対応する第1角度θ1は、約40度である。また中心点P1を中心とする、周方向A3における2つの気流制御壁8間の範囲に対応する第2角度θ2は、約120度である。つまり、第2角度θ2は、一例として第1角度θ1の約3倍である。言い換えると、2つの気流制御壁8は、各々が、周方向A3において第2領域412から一定の角度(ここでは約40度)を空けて配置される。なお、これらの角度に関する数値は、単なる一例であり、特に限定されない。
【0087】
このように煙検知室4の周囲に配置された各気流制御壁8は、周方向A3における、煙検知室4に対する煙流入性のばらつきを小さくするように気流を制御する。具体的には、外部空間SP2から第2領域412に向かって進入した煙は、第2領域412で衝突して周方向A3に沿って弾き流れてしまっても、各気流制御壁8で衝突させて気流制御壁8近傍の流入口40に誘導できる(
図5中の矢印で示す気流B1参照)。
【0088】
特に気流制御壁8の第1部位81は、上側流路61に対応する位置に設けられている。そのため、「(2.7)流路形成部材」の欄で説明した通り、分岐部71によって煙は上側流路61を支配的に通ることになるが、上側流路61を周方向A3に沿って流れ逃げる煙を、第1部位81で効率良く衝突させて流入口40に誘導できる。
【0089】
このように気流制御壁8が設けられていることで、感知器1全体で見たときに周囲360度のどの方向から煙が開口部510を通じて感知器1内に進入してきても(
図5中の12個の矢印Y1参照)、最終的に煙検知室4に流入する量の差は小さくなり得る。結果的に、感知器1には、煙検知室4に対する煙流入性の改善を図ることができる、という利点がある。また気流制御壁8が上カバー52の一部として形成されているため、感知器1の組み立ての際に、第2領域412に対して、気流制御壁8を安定的に位置決めできる。
【0090】
気流制御壁8の数は特に限定されず1つでもよい。ただし、本実施形態のように2つの気流制御壁8が周方向A3において第2領域412を間に挟むように配置されるため、第2領域412で衝突して左右に分流した煙の両方を効率よく流入口40に誘導できる。したがって、煙検知室4の内部に流入しにくくなる可能性を更に低減できる。
【0091】
なお、「(2.7)流路形成部材」の欄で説明した通り、流路形成部材7の分岐部71(分割部Z1)によって、湯気は、下側流路62を支配的に通ることになるが、気流制御壁8に衝突して分岐部71を乗り越えて上側流路61を通ってしまう可能性がある。しかし、本実施形態では、上述の通り、下側流路62に対応する位置に溝部80が設けられている。そのため、下側流路62を周方向A3に沿って流れる湯気は、気流制御壁8の溝部80を通り抜けていきやすくなる。結果的に、湯気が気流制御壁8に衝突して分岐部71を乗り越えて上側流路61を通る可能性を低減できる。
【0092】
ところで、本実施形態の分岐部71(分割部Z1)は、煙検知室4の全周にわたって形成されておらず、切り欠き73を有している(
図3~
図6参照)。切り欠き73は、第2領域412と対向する位置に設けられている。ここでは、切り欠き73は、分岐部71(分割部Z1)だけでなく遮断部72にも及んで形成されている。つまり、分岐部71(分割部Z1)及び遮断部72はいずれも、切り欠き73によって、周方向A3における一部が欠けていて、上下方向に沿って見て、略C字の形状である。周方向A3における切り欠き73の幅寸法は、第2領域412と略等しい。つまり、切り欠き73を正面から見ると、第2領域412の略全体が露出している。
【0093】
このように切り欠き73が設けられていることで、第2領域412に向かって感知器1内に進入してきた煙は、切り欠き73を通じて、煙検知室4の周壁41と遮断部72との間の隙間X1に入り込みやすくなる(
図5中の矢印で示す気流B2参照)。したがって、煙が、煙検知室4の内部に流入しにくくなる可能性を更に低減できる。
【0094】
特に流路形成部材7によって湯気が煙検知室4の内部に入ることが抑制されているが、第2領域412が存在することから、その部分には分岐部71及び遮断部72が無くても、第2領域412に向う湯気は、第2領域412によって遮られる可能性が高い。逆に、第2領域412の存在に加えて、もしその部分に分岐部71及び遮断部72が存在すると、煙の流入を相乗的に妨げてしまうことになる。これらの観点から、切り欠き73が設けられていることで、煙流入性が改善される。
【0095】
(2.9)設置の向き
ところで、感知器1の流路形成部材7には、煙流入性を考慮して、第2領域412と対向する位置に切り欠き73が設けられていることを説明した。ここで、例えば感知器1を湯気が煙検知室4に入り込む状況が発生しやすい環境(例えば浴室の近くの脱衣所)に設置される際に、切り欠き73側を浴室側に向けた状態で施工面100に設置されると、湯気の流入を許してしまう可能性が高くなり得る。
【0096】
そこで、感知器1は、感知器1を施工面100に設置する際に、感知器1の周方向A4に関する設置の向きを示す目印M1を更に備えている(
図2~
図6参照)。目印M1は、例えば、下カバー51の円筒体51Aに設けられている。目印M1は、上下方向に沿った直線状の印であるが、印の形態は特に限定されない。本実施形態では一例として、感知器1の周方向A4における、切り欠き73に対応する位置に、目印M1が設けられている。言い換えると、目印M1は、煙検知室4を上から見たときの煙検知室4の中心点P1と目印M1とを結ぶ仮想的な線分が切り欠き73を通るように、配置される。つまり、目印M1は、切り欠き73に関連する向きを示すものである、といえる。
【0097】
目印M1は、下カバー51に対して直接印刷されてもよいし、印刷されたシールが下カバー51に貼着されてもよい。或いは目印M1は、下カバー51の表面に形成された凹部又は凸部でもよい。
【0098】
感知器1を設置する施工者は、目印M1を浴室とは反対側に向けた状態で感知器1を施工面100に設置することで、切り欠き73が浴室側に向いてしまうことを容易に回避できる。したがって、感知器1の周方向A4における特定領域(切り欠き73が存在する領域)が、特定の場所(浴室)を向かないように感知器1を設置できる。
【0099】
目印M1は、切り欠き73が存在しない領域に対応した位置に設けられてもよい。この場合も、目印M1は、切り欠き73に関連する向きを示すものである、といえる。施工者は、目印M1を浴室に向けた状態で感知器1を施工面100に設置することで、切り欠き73が浴室側に向いてしまうことを容易に回避できる。したがって、感知器1の周方向A4における特定領域(切り欠き73が存在しない領域)が、特定の場所(浴室)を向くように感知器1を設置できる。
【0100】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0101】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0102】
基本例では、感知器1は、気流制御壁8を備えている。しかし、気流制御壁8は、本開示の感知器1にとって必須の構成要素ではなく、適宜に省略されてもよい。例えば
図8は、変形例1の感知器1Aを示す。感知器1Aは、基本例の感知器1と同様に、切り欠き73を有した流路形成部材7、及び、突出縁部25を有した基台2を備えている。ただし、感知器1Aは、気流制御壁8を備えていない点で、基本例の感知器1と相違する。この感知器1Aにおいても、誤検知が発生する可能性を低減できる。
【0103】
基本例では、感知器1の流路形成部材7は、切り欠き73を有している。しかし、切り欠き73は、本開示における感知器1にとって必須の構成要素ではない。例えば
図9は、変形例2の感知器1Bを示す。感知器1Bは、基本例の感知器1と同様に、気流制御壁8、及び、突出縁部25を有した基台2を備えている。ただし、感知器1Bの分岐部71Aは、煙検知室4の全周にわたって形成されている点で、基本例の感知器1と相違する。この感知器1Bにおいても、煙検知室4に対する煙流入性の改善を図ることができる。また誤検知が発生する可能性を低減できる。また感知器1Bにおいては、湯気が、360度どの方向から感知器1内に進入しても煙検知室4の内部に流入しにくくなる。
【0104】
基本例では、切り欠き73が分岐部71及び遮断部72の両方にわたって形成されている。しかし、切り欠き73は、分岐部71のみに形成されてもよい。言い換えると、切り欠き73は、上側流路61に対応する位置にだけ形成されてもよい。
【0105】
基本例では、感知器1の流路形成部材7の分岐部71(分割部Z1)は、その断面形状がL字状に直角を成して屈曲している(
図1参照)。しかし、分岐部71(分割部Z1)の形状は特に限定されない。例えば
図10は、変形例3の感知器1Cの要部断面図を示す。感知器1Cの流路形成部材7は、傾斜面76を有した分岐部71B(分割部Z1)を有している点で、基本例の感知器1と相違する。傾斜面76は、遮断部72の上端部から外方に離れるほど、基台2に近づく方向に傾斜している。したがって、煙粒子は、傾斜面76を通じて、基本例の感知器1よりも分岐部71Bを乗り越えやすくなり、遮断部72の裏側にある流入口40から煙検知室4内に流入しやすくなる。
【0106】
本例では、感知器1の基台2は、突出縁部25を有している。しかし、突出縁部25は、本開示における感知器1にとって必須の構成要素ではない。感知器1は、
図11に示すように、突出縁部25を1つも有していなく、本体部20と6個の舌部26とだけを有した基台2Aを備えてもよい。
図11では、比較しやすいように、基本例の感知器1の基台2が有していた突出縁部25を二点鎖線で図示する。
図11では、熱検知素子30の図示を省略している。
【0107】
基本例では、気流制御壁8の数は、2つであるが、特に限定されず、1つ、又は3つ以上でもよい。
【0108】
基本例では、光学素子401を保持する保持ブロック404の外面と対向する対向壁405である第2領域412を基準として、気流制御壁8が配置されている。しかし、気流制御壁8は、煙検知室4の周方向A3における、煙検知室4に対する煙流入性のばらつきを小さくするように気流を制御するものであれば、第2領域412を基準に配置されなくてもよい。
【0109】
基本例では、気流制御壁8は、上カバー52の一部として形成されている。しかし、気流制御壁8の少なくとも一部は、上カバー52とは別体でもよい。例えば、気流制御壁8の第1部位81は、流路形成部材7と一体となって形成されてもよい。また例えば、気流制御壁8の第2部位82は、基台2に接着剤等で固定されてもよい。
【0110】
基本例では、第2領域412が、光学素子401を保持する保持ブロック404の外面と対向する対向壁405であることを想定する。しかし、第2領域412は、受光素子402を保持する保持ブロック406(
図6参照)の外面と対向するカバー4Aの対向壁であってもよい。
【0111】
基本例では、煙検知室4が、基台2の第1面21(上面)に搭載されている。しかし、煙検知室4は、基台2の第2面22(下面)に搭載されてもよい。
【0112】
基本例では、煙検知室4が搭載される基台2は、制御部9等も実装される回路基板である。しかし、基台2は、制御部9等が実装される回路基板とは別体に設けられてもよい。ただし、基本例の方が部品点数の削減を図ることができる。
【0113】
基本例では、目印M1は、切り欠き73に関連する向きを示すものである。しかし、目印M1は、感知器1の周方向A4における特定領域に関する向きを示すものであれば、切り欠き73に関連する向きに限定されない。
【0114】
目印M1は、LED等の光源から出射される光によって実現されてもよい。この場合、作動灯である表示部10が目印M1の役割を兼ねてもよい。
【0115】
(実施形態2)
(1)概要
本実施形態では、気流は煙又は湯気を含む気体であり、傾斜部202及び気流制御部201を有する点が、実施形態1とは異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。また、以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0116】
本実施形態に係る感知器1Dは、
図12に示すように、煙検知室4と、開口部510と、分割部Z1と、を備えている。分割部Z1は、傾斜部202を備える。
【0117】
煙検知室4は、煙が流入する流入口40を有している。開口部510は、外部空間SP2と煙検知室4の周囲の空間SP1とを連通させる。傾斜部202は、煙検知室4の周囲の空間SP1に配置されて、煙検知室4の周囲の空間SP1について、気体の流路6を、分割する。傾斜部202は、開口部510から気体の流路6に流入する煙の第1の流入量と、開口部510から気体の流路6に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、第1の流入量に対する流入口40に到達する煙の量の第1割合が、第2の流入量に対する流入口40に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように気体の流路6を分割する。
【0118】
傾斜部202(分割部Z1)は、
図13に示すように、煙検知室4の全周にわたって形成されている。また、基台2は
図13及び
図14に示すように、全体として略円形状に形成されている。本実施形態では、熱検知部3の1又は複数(
図13では6つ)の熱検知素子30が、基台2の外周部23に配置されている。また、基台2は熱検知素子30を備える6個の舌部26を有している。各舌部26は、6つの熱検知素子30のうち対応する熱検知素子30が実装される部位である。6個の舌部26は、基台2の外周部23を略六等分するように、周方向に沿って等間隔に並んでいる。各熱検知素子30は、対応する舌部26の上面における先端付近に実装されている。舌部26は、熱検知素子30よりも内側の領域に、矩形状の開口を有した貫通孔260を有している。貫通孔260が各熱検知素子30の傍に設けられていることで、熱検知素子30の周囲において基台2が占める領域を減らすことができる。結果的に、熱検知素子30における熱が基台2を伝達して低くなったり、本体部20上に実装されている他の回路部品で発生する熱が熱検知素子30に影響を及ぼしたりする可能性を低減できる。すなわち、貫通孔260によって熱絶縁性が向上される。
【0119】
感知器1Dは、開口部510の外周の鉛直上方に気流制御部201を備えている。円筒体51Aの外周面54は、上側の第1周面208と下側の第2周面204とを含み、第1周面208は、鉛直方向A2に沿っていて、第2周面204は、第1周面208よりもテーパ角度θvを成すように内側へ傾斜している。この円筒体51Aの第2周面204が、気流制御部201に相当する。気流制御部201は、感知器1Dの上カバー53の円筒体51Aにおける第1周面208と第2周面204とのなす角度を気流制御部201のテーパ角度θvとして、テーパ角度θvにより、外部空間SP2から開口部510に流入する気流を制御する。ここで、「気流を制御する」とは、煙は流入し易く、湯気は流入しにくくするように気流の流れを制御することに相当し、具体的には、煙は拡散力を利用して開口部510に流入しやすい一方、湯気は慣性力の大きさを利用して開口部510に流入しにくくすることに相当する。また、気流制御部201は、開口部510に流入する気流の総量を制御する。気流制御部201は、開口部510に流入する気流について、煙は、拡散力が大きく、慣性力が小さいために開口部510に流入し易く、湯気は拡散力が小さく、慣性力が大きいために開口部510に流入しにくいようになる。その結果として、気流制御部201は煙が開口部510から流入し易いように制御される。
【0120】
このように本実施形態では、感知器1Dが気流制御部201を備えているため、煙が流入し易いように気流を開口部510に流入させることができる。このため、感知器1Dには、煙検知室4に対する煙流入性の改善を図ることができる、という利点がある。
【0121】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る感知器1Dの全体構成について詳しく説明する。感知器1Dは、実施形態1と同様、煙及び熱を検知する複合火災感知器である。
【0122】
感知器1Dは、煙検知室4(煙検知部)と、分割部Z1の傾斜部202と、を備えている。また感知器1Dは、基台2、及び筐体5を更に備えている。また感知器1Dは、熱検知部3、制御部9、及び表示部10を更に備えている。また感知器1Dは、施工面100に対してねじ止め等によって固定される円盤状の取付ベースを更に備えている。感知器1Dは、筐体5の上面側に設けられた取付部が取付ベースに対して着脱可能に取り付けられることで、施工面100に設置され得る。
【0123】
また感知器1Dは、火災を検知したときに、火災の発生を知らせる信号を外部の警報器等へ送信し、また警報器等からの信号を受信する通信部11を更に備えている。
【0124】
感知器1Dは、商用電源によって電力が供給されてもよいし、筐体5の内部に設けられた電池によって電力が供給されてもよい。
【0125】
上述した各部の構成については、実施形態1の「(2.2)筐体」から「(2.6)制御部」において説明した内容と概ね共通するので、本実施形態における詳細な説明は割愛する。
【0126】
(2.2)傾斜部
本実施形態における傾斜部202(分割部Z1)は、開口部510から煙検知室4の流入口40に至る流路を形成している。第2空間SP4と第3空間SP5との間には、感知器1Dは、煙検知室4に近づくにつれて、鉛直上方に高くなるように傾斜する傾斜面203を有する傾斜部202(分割部Z1)を備えている。傾斜部202(分割部Z1)は、合成樹脂製であり、例えば、難燃性ABS樹脂製である。傾斜部202(分割部Z1)は、
図14に示すように、全体として略リング形状となっており、円筒形状となっている内周面75Aを有している。傾斜部202(分割部Z1)は、感知器1Dの径方向において、内周面75Aに向かうにつれて鉛直方向A2の上方に高くなり、且つ、凹面となる傾斜面203を有している。また、傾斜部202(分割部Z1)は円環状に形成されている。また、傾斜部202(分割部Z1)は、水平方向の高さが一定となる上面207を有している。上面207は、内周面75Aと一致するように真ん中に穴の開いた円環状に形成されている。すなわち、傾斜部202(分割部Z1)は、煙検知室4の全周にわたって形成されている。ただし、傾斜部202は、その周方向の一部の部位が切り欠かれて略C字形状に形成されてもよい。
【0127】
傾斜部202(分割部Z1)の断面形状は、
図12に示すように、感知器1Dの鉛直方向A2に垂直な水平面と傾斜面203とは、テーパ角度θrを形成する。傾斜面203の水平面の長さは、長さb2であり、高さが一定となる上面207の長さは、長さb3である。すなわち、傾斜部202の水平方向の長さは、長さb2と長さb3とを加えた長さである。
【0128】
傾斜部202(分割部Z1)は、具体的には、煙が支配的に通り煙検知室4に流入する空間と湯気が支配的に通り煙検知室4に流入しない空間とに煙検知室4の周囲の空間SP1を分離する。
【0129】
傾斜部202(分割部Z1)は、第2空間SP4と第3空間SP5との間において、煙検知室4に近づくにつれて、鉛直上方に高くなるように傾斜する。傾斜部202(分割部Z1)は、実施形態1における上カバー52の一部が変形した上カバー53と共に、気体の流路6を第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5に分割する。すなわち、傾斜部202(分割部Z1)は、煙検知室4の周囲の空間SP1を、第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5に分割しており、第3空間SP5を通った煙を、流入口40から煙検知室4の内部に流入させるように構成される。具体的には、傾斜部202(分割部Z1)と第1空間SP3と第2空間SP4と第3空間SP5とは、上カバー53と基台2と煙検知室4によって囲まれている。
図12に示す断面図において、第1空間SP3は、開口部510周辺の空間であり、円筒体51Aの内側面209よりも外側の空間である(
図12参照)。第2空間SP4は、内側面209から傾斜部202の上角P0(
図12中の拡大図を参照)までの空間である。第3空間SP5は、傾斜部202の上角P0から煙検知室4の流入口40までの空間である。第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5の範囲に関する上記の規定は、単なる一例であり、これらの空間の範囲を厳密に規定する趣旨はない。第1空間SP3、第2空間SP4、第3空間SP5は、煙検知室4を中心部として、輪環状の空間を形成している。
【0130】
図12に示すように、開口部510と第1空間SP3、第1空間SP3と第2空間SP4、及び第2空間SP4と第3空間SP5とは、開口部510から煙検知室4に向かう一方向において、それぞれ隣接している。ここで、煙の第1の流入量と湯気の第2の流入量とについて、第3空間SP5では、煙の第1割合は、湯気の第2割合よりも高くなっている。なお、第1空間SP3及び第2空間SP4では、この限りではない。
【0131】
第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5との体積において、第2空間SP4の体積は、第1空間SP3及び第3空間SP5の体積の各々よりも大きくなっている。ここで、第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5の各々の「体積」とは、これらの空間の各々が形成するリング状の空間全体の体積に相当する。
【0132】
また、
図12に示すように、第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5を感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面において、第2空間SP4の断面積は、第1空間SP3及び第3空間SP5の断面積の各々よりも大きい。ここで、開口部510から煙検知室4に向かう一方向とは、感知器1Dの開口部510から煙検知室4の方向を向いたときの感知器1Dの径方向に沿った方向に相当する。
【0133】
さらに、
図12に示すように、第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5を感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面では、感知器1Dの鉛直方向A2において、第2空間SP4の長さは、第1空間SP3及び第3空間SP5の各々の長さよりも長くなっている。ここで、各空間の鉛直方向A2の長さとは、感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面において、
図12に示すように、水平方向に対して、鉛直方向A2の長さが最も長くなることに相当する。
図12に第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5の鉛直方向A2の長さを、それぞれSM1、SM2、SM3として記載している。
【0134】
同様に、
図12に示すように、第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5を感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面では、感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向において、第2空間SP4の長さは、第1空間SP3及び第3空間SP5の各々の長さよりも長くなっている。ここで、各空間の水平方向の長さとは、感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面において、各空間の始点及び終点の感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向に沿った長さに相当する。
図12に示すように、第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5の水平方向の長さを、それぞれSL1、SL2、SL3として記載している。
図12に示すように、各空間の水平方向の長さとは、水平方向において、最も長さが長くなるところに相当する。
【0135】
つまり、第2空間SP4は、体積、径方向の断面積、径方向の断面における鉛直方向A2の長さ、径方向の断面における径方向の長さにおいて、第1空間SP3及び第3空間SP5のそれぞれの値よりも大きくなっている。
【0136】
また、第2空間SP4と第3空間SP5との間には、感知器1Dは、煙検知室4に近づくにつれて、鉛直上方に高くなるように傾斜する傾斜面203を有する傾斜部202(分割部Z1)を備えている。感知器1Dの鉛直方向に垂直な水平面と、傾斜部202(分割部Z1)の傾斜面203とは、テーパ角度θrを形成している。傾斜面203は、
図12に示すように、傾斜面203の断面において、傾斜面203は開口部510から煙検知室4に向かう一方向において内部に向かうにつれて、鉛直上方に高くなるように傾斜しており、傾斜面203は鉛直方向A2の下方に向けて凹となる曲線形状を有している。ここで、テーパ角度θrとは、
図12における拡大図に示すように、傾斜面203の上角P0と下角Q0とを結んだ仮想線b4と、基台2の第1面21(上面)と、のなす角度をテーパ角度θrとしている。
【0137】
次に、傾斜部202(分割部Z1)のテーパ角度θrが、感知器1Dの煙に対する応答に関する煙流入時間と湯気低減率へ及ぼす影響について説明する。ここで、感知器1Dの煙に対する応答に関する煙流入時間とは、開口部510から流入した煙が周囲の空間SP1を経て煙検知室4に到達するまでの時間を意味しており、煙に対する応答性の指標となる時間である。一方、湯気低減率とは、あるテーパ角度を基準として、テーパ角度θrを変化させた場合に湯気の量を基準となるテーパ角度に対してどれだけ湯気を低減できるか、を表している。湯気低減率のグラフでは、値が小さくなるにつれて、基準となるテーパ角度の場合の煙検知室4に入る湯気の量に対して、湯気の量が低減できていることを表している。
図15Aに示すグラフでは、一例として、テーパ角度θrが60°のときを基準となるテーパ角度とした比率として表示している。つまり、テーパ角度60°の場合を「1」とした比率を表示している。
図15Aのグラフに示すように、テーパ角度θrが35°~90°の範囲において、煙流入時間を示すグラフX50はあまり大きく変化はしていない。このため、傾斜部202(分割部Z1)のテーパ角度θrを35°~90°の範囲で変化させても火災に対する応答性はほとんど変化しない。これに対して、湯気低減率を示すグラフX60では、テーパ角度θrが大きくなるにつれて、大きく減少している。特にテーパ角度θrが60°から90°に近くなるにつれて、湯気を大きく削減することができる。このことから、テーパ角度θrを適切な値に設定することによって、湯気が流入してきた場合には湯気を低減する一方、煙が流入してきた場合には煙に対する応答性を損なうことなく、煙流入時間を維持することが可能である。例えば、テーパ角度θrは、60°から90°の範囲内に設定することが好ましく、より好ましくは、70°から80°である。なお、
図12のテーパ角度θrは一例として70°である。すなわち、テーパ角度θrを大きくすることによって、煙が流入してきた場合には、感知器1Dの煙に対する応答性をほとんど損なうことなく、湯気が流入してきた場合には湯気の比率を低下させることができており、傾斜部202(分割部Z1)は、火災による煙に対する応答をほとんど維持したまま、湯気が流入した場合における誤発報を抑制できている、と言い得る。
【0138】
(2.3)気流制御部
感知器1Dは、外部空間SP2から感知器1Dの開口部510に流入する気流の量を制御する気流制御部201を備えている。気流制御部201は、開口部510の外周の鉛直上方に配置され、気体が開口部510に流入するように制御する。気流制御部201は、外部空間SP2の煙又は湯気を含む主気流を、開口部510から気体の流路6にしない第1気流と、開口部510から気体の流路6に流入する第2気流とに分離する。気流制御部201は、主気流が煙を含む場合における第1気流の煙の量に対する第2気流の煙の量の割合が、主気流が湯気を含む場合における第1気流の湯気の量に対する第2気流の湯気の量の割合よりも高くなるように主気流を制御する。具体的には、気流制御部201は、
図12に示すように、感知器1Dの上カバー53において、上下の両端が開放されたへん平な円筒体51Aの外周面54のうち、第1周面208から派生している第2周面204を含んでいる。円筒体51Aの外周面54において、第1周面208と第2周面204とが形成する角度をテーパ角度θvとする。テーパ角度θvを大きくしていくと、煙又は湯気の気流は、感知器1Dの開口部510に流入し易くなり、開口部510への気流の流入量が増加する。一方、テーパ角度θvを小さくしていくと、煙又は湯気の気流は、感知器1Dの開口部510に流入しにくくなり、開口部510への気流の流入量が減少する。つまり、テーパ角度θvを制御することにより、感知器1Dに流入する煙又は湯気の気流を制御することができる。
【0139】
テーパ角度θvと、上述した煙流入時間及び湯気低減率との関係性を
図15Bに示す。
図15Bに示すグラフでは、テーパ角度θvが30°の場合を基準とした比率として、煙流入時間を示すグラフX10及び湯気低減率を示すグラフX20を表示している。湯気低減率では、値が低くなるにつれて湯気の量が基準となるテーパ角度30°に対して低減できていることを表している。テーパ角度θvが0°から30°まで変化した場合、煙流入時間の変化率を示すグラフX10はほとんど変化していない。これに対して、湯気低減率を示すグラフX20の変化率はテーパ角度θvが0°に近づくにつれて、湯気の低減率が大きくなっている。すなわち、テーパ角度θvを大きくすることによって、感知器1Dの煙に対する応答性をほとんど損なうことなく、湯気の場合には、基準となるテーパ角度(
図15Bでは30°)に対して湯気の量を低減することができており、気流制御部201のテーパ角度θvにより、火災による煙が開口部510から流入する場合には開口部510から流入する煙の比率を高め、湯気が開口部510から流入する場合には湯気の比率を低下させることができている、と言い得る。なお、テーパ角度θvは、例えば、0°~30°の範囲が好ましく、より好ましくは、0°~15°の範囲がより好ましい。なお、
図12のテーパ角度θvは、一例として11°である。
【0140】
図12に示すように、気流制御部201のテーパ角度θvが付いていない部分の径方向の下カバー51の円筒体51Aの厚みを厚みa1とすると、厚みa1は、感知器1Dの煙に対する応答性である煙応答性を維持しつつ、湯気が流入してきた場合には湯気の流入を抑制する効果を有している。厚みa1と、上述した煙流入時間及び湯気低減率との関係性を
図15Cに示す。
図15Cに示すグラフでは、厚みa1を9mmとした場合に対する比率として、煙流入時間を示すグラフX30及び湯気低減率を示すグラフX40を表示している。厚みa1を9mmから1mmまで変更した場合、煙流入時間を示すグラフX30は基準となる厚み9mmに対してほとんど変化しないのに対して、湯気低減率を示すグラフX40は、厚みa1を基準となる厚み9mmから減少させるにつれて、湯気の量は減少している。すなわち、厚みa1を薄くすることによって、感知器1Dの煙に対する応答性はほとんど損なうことはなく、湯気が流入してきた場合には湯気の量を低減することができている。すなわち、気流制御部201の厚みa1により、火災による煙が開口部510から流入する場合には煙の比率を高め、湯気が開口部510から流入する場合には湯気の比率を低下させることができている、と言い得る。これは、湯気の粒子径が、例えば、10μm程度であるのに対して、煙の粒子径は、例えば、0.1μm程度である。さらに、煙粒子の質量は、湯気粒子の質量よりも小さいために、煙粒子の慣性力は、湯気粒子の慣性力よりも小さくなっている。厚みa1が薄くなったとしても、煙は拡散性を有しているため、厚みa1の影響をほとんど受けない。これに対して、厚みa1が、円筒体51Aの内側面209が外部空間SP2の方向へ薄くなると、第2空間SP4が広くなるために、慣性力が大きい湯気であっても、渦を巻きやすくなる。これに対して、厚みa1が円筒体51Aの内側面209が煙検知室4の方向へ厚くなると、気体の流路6を変える第2空間SP4が狭くなって、渦を巻きにくくなり、煙検知室4に到達する湯気の量が増加する。
【0141】
(2.4)傾斜部(分割部Z1)と気流制御部
上述したように、感知器1Dは、傾斜部202(分割部Z1)と気流制御部201とを備えている。
図12に示すように、気流制御部201の開口部510から煙検知室に向かう一方向の厚みを厚みa1、気流制御部201の鉛直方向の長さを長さa2、円筒体51Aの外周面54の第1周面208と第2周面204とのなす角度をテーパ角度θvとする。本実施形態の感知器1Dは、一例として、厚みa1が5mm、長さa2が10.64mm、テーパ角度θvは11°である。さらに、
図12に示すように、傾斜部202(分割部Z1)の傾斜面203において、気流制御部201から傾斜部202(分割部Z1)までの距離の長さをb1、傾斜面203の径方向の長さをb2、傾斜部202(分割部Z1)の高さが一定となっている長さをb3とする。本実施形態の感知器1Dは、一例として、長さb1が13.65mm、長さb2が4.29mm、長さb3が6.11mmである。なお、これらの数値は一例であって、これらの数値に限定する趣旨ではない。
【0142】
(3)動作
<動作例1>煙が流入するケース
ここで、煙が流入する場合について説明する。上述したように、開口部510の外周の鉛直上方に設けられる気流制御部201は、煙を含む気流から煙の一部を分離する。上述したテーパ角度θvと厚みa1により構成された気流制御部201により、煙は開口部510から傾斜部202(分割部Z1)を有する空間SP1に入りやすくなっている。言い換えると、煙は気流制御部201の影響を受けにくく、開口部510から感知器1Dの内部に流入し易い。したがって、煙を含む気流において、気流制御部201を経て開口部510に流入する気流では、外部空間SP2の気流と比較して、煙の比率は上昇する。
【0143】
具体的には、
図12に示すように、気流制御部201は、外部空間SP2の煙の気流63から開口部510に流入する煙の分流65を形成する。ここで、煙の気流63と、煙の分流65と、の比率は、一例として、75%と25%である。つまり、気流制御部201により、大部分の煙を含む気体は、開口部510から流入しないことを意味している。なお、この数値は一例であって、この数値に固定する趣旨ではない。
【0144】
次に、感知器1Dの開口部510に流入した煙を含む気流は、空間SP1のうちの第1空間SP3に到達する。気流は、さらに感知器1Dの内部に流入すると、第1空間SP3から第2空間SP4に到達する。第2空間SP4では、上述したように、体積、開口部510から煙検知室4に向かう一方向に垂直な鉛直方向の断面積が第1空間SP3及び第3空間SP5のそれぞれの値よりも、大きくなっている。また、開口部510から煙検知室4に向かう一方向に垂直な鉛直方向の断面における鉛直方向の長さ、及び開口部510から煙検知室4に向かう一方向の長さにおいて、第1空間SP3及び第3空間SP5のそれぞれの値よりも、大きくなっている。なお、これらの条件をすべて満たすことが好ましいが、これらの条件を全て満たすことが必須の条件ではない。
【0145】
さらに、テーパ角度θrの傾斜面203を有する傾斜部202(分割部Z1)は、第2空間SP4と第3空間SP5との間に存在している。
【0146】
このため、第2空間SP4に流入した気流は、例えば、
図12に示すように、第2空間SP4を鉛直下方から鉛直上方へ、感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向の内部から外部へ、そして鉛直上方から鉛直下方へと回転するように流れるようになる。この場合、煙は煙粒子径が小さいために、拡散力が大きく、慣性力が小さくなっている。このため、第2空間SP4に対して、第3空間SP5に、煙の一部は流入することができる。
【0147】
具体的には、
図12に示すように、感知器1Dが傾斜部202を備え、更に、第2空間SP4の開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面の断面積が第1空間SP3及び第3空間SP5の開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面の断面積の各々よりも大きいことによって、第2空間SP4では煙の渦流67Bが形成されている。また、煙の渦流67Bと形成する形で、煙の分離流67Aが形成されている。煙の分離流67Aは、第2空間SP4から第3空間SP5へと流入し、流入口40から煙検知室4に流入する。
【0148】
上述したように、煙粒子は、拡散力が大きく、慣性力が小さい。このため、第2空間SP4に流入した煙は、傾斜部202により煙の渦流67Bを形成する一方で、第2空間SP4から第3空間SP5に向かう煙の分離流67Aが形成される。言い換えると、煙検知室4の周囲に配置されて、気体の流路6を、煙が支配的に通り煙検知室に流入する空間を形成する。開口部510から流入した煙の分流65の煙の比率と比較して、第2空間SP4から第3空間SP5に向かう煙の分離流67Aの煙の比率は、分離流67Aの方が煙の比率が大きくなっている。つまり、傾斜部202(分割部Z1)は、煙が支配的に通り煙検知室4に流入する空間(本実施形態では第3空間SP5)を形成する。
【0149】
したがって、傾斜部202(分割部Z1)は、テーパ角度θrを備え、更に、第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5の空間等の大きさの違いを利用して、煙の渦流67Bと煙の分離流67Aを形成することができる。第3空間SP5に流入した煙の気流は、第2空間SP4における気流と比較して、煙の比率が高くなっており、第3空間SP5から流入口40を介して煙検知室4に到達した気流により、感知器1Dは、火災を検知して発報することができる。
【0150】
<動作例2>湯気が流入するケース
次に、湯気が流入する場合について説明する。上述したように、湯気を含む気流は、開口部510の外周の鉛直上方に設けられる気流制御部201により、湯気の一部は分離される。上述したテーパ角度θvと厚みa1により構成された気流制御部201により、湯気は開口部510から空間SP1に入りにくくなっている。言い換えると、湯気は気流制御部201の影響を受けて、開口部510から感知器1Dの内部に流入しにくい。したがって、湯気を含む気流において、気流制御部201を経て開口部510に流入する気流では、外部空間SP2の気流と比較して、湯気の比率は低下する。これは、湯気の湯気粒子径が大きいために、慣性力が大きく、拡散力が小さくなっている。このため、湯気の大部分は、気流制御部201による効果と、湯気自体が持つ上述した性質によって、開口部510から感知器1Dの内部に流入することができない。
【0151】
具体的には、
図12に示すように、気流制御部201は、外部空間SP2の湯気の気流64から開口部510に流入する湯気の分流66を形成する。ここで、湯気の気流64と、湯気の分流66と、の比率は、一例として、75%と25%である。つまり、気流制御部201により、大部分の湯気を含む気体は、開口部510から流入しないことを意味している。なお、この数値は一例であって、この数値に固定する趣旨ではない。
【0152】
次に、感知器1Dの開口部510に流入した湯気を含む気流は、空間SP1のうちの第1空間SP3に到達する。気流は、さらに感知器1Dの内部に流入すると、第1空間SP3から第2空間SP4に到達する。第2空間SP4では、上述したように、体積、開口部510から煙検知室4に向かう一方向に垂直な鉛直方向の断面積、開口部510から煙検知室4に向かう一方向に垂直な鉛直方向の断面における鉛直方向の長さ、及び開口部510から煙検知室4に向かう一方向の長さにおいて、第1空間SP3及び第3空間SP5のそれぞれの値よりも大きくなっている。さらに、第2空間SP4と第3空間SP5との間にテーパ角度θrの傾斜面203を有する傾斜部202(分割部Z1)を有している。このため、傾斜部202(分割部Z1)を備える第2空間SP4に流入した気流は、例えば、
図12に示すように、第2空間SP4を鉛直下方から鉛直上方へ、感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向の内部から外部へ、そして鉛直上方から鉛直下方へと回転するように流れるようになる。この場合、煙に対して粒子径が大きく、又煙に対して重量のある湯気は、煙に対して慣性力が大きく、拡散力が低いために、第2空間SP4において渦を巻くように流動する。
【0153】
具体的には、
図12に示すように、感知器1Dが傾斜部202を備え、更に、第2空間SP4の開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面の断面積が第1空間SP3及び第3空間SP5の開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向A2に沿った断面の断面積の各々と比較して大きいことによって、第2空間SP4では湯気の渦流68Bが形成されている。また、湯気の渦流68Bと分離する形で、湯気の分離流68Aが形成されている。湯気の分離流68Aは、第2空間SP4から第3空間SP5へと流入し、流入口40から煙検知室4に流入する。
【0154】
上述したように、湯気粒子は、煙粒子に対して拡散力が小さく、慣性力が大きいために、湯気の渦流68Bが主流となり、第2空間SP4から第3空間SP5に向かう湯気の分離流68Aは小さくなる。開口部510から流入した湯気の分流66の湯気の比率と比較して、第2空間SP4から第3空間SP5に向かう湯気の分離流68Aの湯気の比率は、湯気の分流66における湯気の比率が大きくなっている。つまり、傾斜部202(分割部Z1)は、湯気が支配的に通り煙検知室4に流入しない空間(本実施形態では第2空間SP4)を形成する。
【0155】
したがって、傾斜部202(分割部Z1)は、テーパ角度θrを備え、更に、第1空間SP3、第2空間SP4、及び第3空間SP5の空間等の大きさの違いを利用して、湯気が支配的に通り煙検知室4に流入しない空間を形成することができる。第3空間SP5に流入した湯気の気流は、第2空間SP4における気流と比較して、湯気の比率が低くなっており、第3空間SP5から流入口40を介して煙検知室4に到達した気流により、感知器1Dは、火災を検知して誤発報することを抑制することができる。
【0156】
(4)利点
感知器1Dは、煙検知室4と、開口部510と、傾斜部202(分割部Z1)と、を備える。煙検知室4は、煙が流入する流入口40を有する。開口部510は、外部空間SP2と煙検知室4の周囲の空間SP1とを連通させる。傾斜部202(分割部Z1)は、煙検知室4の周囲の空間SP1に配置されて、気体の流路6を分割する。分割部Z1は、開口部510から気体の流路6に流入する煙の第1の流入量と、開口部510から気体の流路6に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、第1の流入量に対する流入口40に到達する煙の量の第1割合が、第2の流入量に対する流入口40に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように気体の流路6を分割する。
【0157】
この構成によると、気体の流路6を分割することにより、感知器1Dの誤報を抑制することができる。
【0158】
傾斜部202(分割部Z1)は、気体の流路6である第1空間SP3と第2空間SP4と第3空間SP5とを形成する。外部空間SP2と第1空間SP3、第1空間SP3と第2空間SP4、第2空間SP4と第3空間SP5とは、傾斜部202(分割部Z1)の開口部510から煙検知室4に向かう一方向においてそれぞれ隣接している。感知器1Dの開口部510から煙検知室4に向かう一方向及び鉛直方向に沿った断面において、第2空間SP4の断面積は、第1空間SP3及び第3空間SP5の断面積の各々よりも大きい。
【0159】
この構成によると、傾斜部202(分割部Z1)を備えること、及び、第2空間SP4の断面積が、第1空間SP3及び第3空間SP5の断面積の各々よりも大きくなっていることにより、第2空間SP4に流入した気体は、第2空間SP4の鉛直下方から鉛直上方へ、第2空間SP4の内部から外部の方向へ、更に第2空間SP4の鉛直上方から鉛直下方へ、と渦を巻くように流動する。湯気を含んだ気体では、湯気が慣性力に従って渦を巻くように流動する。一方、煙は拡散力に従って第2空間SP4から第3空間SP5へと流動することができ、傾斜部202(分割部Z1)及び第2空間SP4の相対的な大きさにより、煙と湯気とを分離することができる。したがって、感知器1Dの湯気による誤報を抑制することができる。
【0160】
傾斜部202(分割部Z1)は、第2空間SP4と第3空間SP5との間に、開口部510から煙検知室4に向かう一方向に進むにつれて鉛直上方に高くなるように傾斜する傾斜面203を備えた傾斜部202を備えている。
【0161】
この構成によると、傾斜部202(分割部Z1)は、煙又は湯気を含む気体が第2空間SP4において渦を巻くように流動させる。煙又は湯気を含む気体が渦を巻くように流動することにより、傾斜部202は、煙の拡散力と湯気の慣性力とを利用して、開口部510から気体の流路6に流入する煙の第1の流入量と、開口部510から気体の流路6に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、第1の流入量に対する流入口40に到達する煙の量の第1割合が、第2の流入量に対する流入口40に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように気体の流路6を分割する。このため、感知器1Dの湯気による誤報を抑制することができる。
【0162】
感知器1Dは、開口部510の外周の鉛直上方に配置され、気体が開口部510に流入するように制御する気流制御部201を備える。気流制御部201は、外部空間SP2の煙又は湯気を含む主気流を、開口部510から気体の流路6に流入しない第1気流と、開口部510から気体の流路6に流入する第2気流とに分離する。気流制御部201は、主気流が煙を含む場合における第1気流の煙の量に対する第2気流の煙の量の割合が、主気流が湯気を含む場合における第1気流の湯気の量に対する第2気流の湯気の量の割合よりも高くなるように気流を制御する。
【0163】
この構成によると、気流制御部201は、気体の総量を制御しながら、煙の拡散力の大きさ及び慣性力の小ささを利用して、外部空間SP2の煙又は湯気を含む主気流を、開口部510から気体の流路6に流入しない第1気流と、開口部510から気体の流路に流入する第2気流とに分離する。気流制御部201は、主気流が煙を含む場合における第1気流の煙の量に対する第2気流の煙の量の割合が、主気流が湯気を含む場合における第1気流の湯気の量に対する第2気流の湯気の量の割合よりも高くなるように気流を制御する。一方、気流制御部201は、煙に対して湯気の拡散力が小さく慣性力が大きいことを利用して、主気流が湯気を含む場合における第2気流の湯気の量を低下させることができる。
【0164】
(5)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0165】
実施形態2では、気流制御部201と、傾斜部202(分割部Z1)とを両方備える構成としたが、この構成に限定されない。気流制御部201と実施形態1の気流制御壁8との組み合わせであってもよい。また、気流制御部201は設置されずに傾斜部202(分割部Z1)が単体で設置されていてもよい。さらに、気流制御部201と、実施形態1に記載の分岐部71と、の組み合わせであってもよい。
【0166】
実施形態2では、傾斜部202(分割部Z1)は、
図19に示すように、鉛直方向の断面の形状は、凹面を有する曲線形状である構成としたが、この構成に限定されない。鉛直方向の断面の形状は、
図19に示すように、例えば、直線形状であってもよい。この場合、傾斜部202Aの傾斜面203Aは、感知器1Hの水平面に対して、テーパ角度θrを備えている。
【0167】
実施形態2では、気流制御部201と、傾斜部202(分割部Z1)とを備える構成としたが、この構成に限定されない。
図16に示すように、気流制御部201は、気流を制限する突起部205を更に備えていてもよい。
図16に示す感知器1Eは、突起部205を備えることにより、更に開口部510に流入する気流を制限することができる。このため、煙に対して慣性力が大きく、拡散力が低い湯気は、実施形態2と比較して、更に開口部510から流入しにくくなる。具体的には、
図16に示すように、気体の流路6は、煙又は湯気を含む気流の主流である流路69Aと、開口部510から感知器1Dに流入する流路69Bとに分離する。このため、気流制御部201と突起部205との組み合わせにより、外部空間SP2の気体に比べて、開口部510に流入する煙を含む気体は、煙の比率が高められている。一方、湯気を含む気体が流入してきた場合には、流路69Aと流路69Bをと比較すると、流路69Bの方が湯気の比率を低下させることができる。
図16に示す感知器1Eでは、突起部205の鉛直方向の断面の形状を三角形としているが、この形状には限定されない。突起部205の鉛直方向の断面の形状は、例えば、正方形、長方形、台形、半円であってもよい。
【0168】
実施形態2では、気流制御部201の径方向に垂直で鉛直方向の断面は、円筒体51Aの外周面54の第1周面208と第2周面204とのなすテーパ角度θvを有する気流制御部201の断面における第2周面204が直線となる構成としたが、この構成に限定されない。気流制御部201Aの鉛直方向の断面は、例えば、
図17に示すように、テーパ部204Aは、曲線であってもよい。
図17に示す感知器1Fでは、テーパ部204Aが曲線となっている。このため、煙に対して慣性力が大きく、拡散力が低い湯気は、実施形態2と比較して、更に開口部510から流入しにくくなる。具体的には、
図17に示すように、気流制御部201Aは、煙又は湯気の主気流である流路69Cと、流路69Dとに分割する。気流制御部201Aは、主気流である流路69Cに含まれる煙に対して、開口部510から気体の流路6に流入する流路69Dに含まれる煙の割合は、湯気を含む主気流である流路69Cに含まれる湯気に対して、開口部510に流入する流路69Dに含まれる湯気の割合よりも、高くなるように気流を制限する。このため、気流制御部201Aは、感知器1Fの湯気による誤作動を抑制し得る。
【0169】
実施形態2では、気流制御部201と開口部510とを有する構成としたが、この構成に限定されない。
図18に示す感知器1Gのように、開口部510Aは、開口部510Aの下端から鉛直上方に向けて形成される制限部206を有していてもよい。制限部206は、開口部510Aの下端から鉛直上方に向けて突出するように形成されることで、開口部510Aから流入する気流を制限する。このため、煙に対して慣性力が大きく、拡散力が低い湯気は、実施形態2と比較して、更に開口部510Aから流入しにくくなる。具体的には、制限部206は、気体の主気流である流路69Eと、流路69Fとに分離された気体の流路6において、制限部206は、分離された69Fの感知器1Gへの流入を制限する。気流制御部201は、主気流である流路69Eに煙が含まれる場合の煙の量に対する分離された流路69Fの煙の量の割合は、主気流である流路69Eに湯気が含まれる場合の湯気の量に対する分離された流路69Fの湯気の量の割合よりも高くする。制限部206は、更に湯気の量を低減し得るので、流路69Fに含まれる煙の量の割合に対する湯気の量の割合は、煙の量の割合の方が多くなるように制限し得る。
図18では、制限部206の鉛直方向の断面の形状を長方形としたが、この構成に限定されない。制限部206の鉛直方向の断面の形状は、例えば、正方形、台形、三角形、半円であってもよい。
【0170】
(6)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)は、煙検知室(4)と、開口部(510,510A)と、分割部(Z1)と、を備える。煙検知室(4)は、煙が流入する流入口(40)を有する。開口部(510,510A)は、外部空間(SP2)と煙検知室(4)の周囲の空間(SP1)とを連通させる。分割部(Z1)は、煙検知室(4)の周囲の空間(SP1)に配置されて、気体の流路(6)を分割する。分割部(Z1)は、開口部(510,510A)から気体の流路(6)に流入する煙の第1の流入量と、開口部(510,510A)から気体の流路(6)に流入する湯気の第2の流入量とにおいて、第1の流入量に対する流入口(40)に到達する煙の量の第1割合が、第2の流入量に対する流入口(40)に到達する湯気の量の第2割合よりも高くなるように気体の流路(6)を分割する。第1の態様によれば、誤検知が発生する可能性を低減することができる。
【0171】
第2の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)では、第1の態様において、分割部(Z1)は、分岐部(71,71A,71B)を備える。分岐部(71,71A,71B)は、煙検知室(4)の周囲の空間(SP1)を、鉛直方向(A2)成分を含む分離方向(A1)に二分して、気体の流路(6)を上側流路(61)と下側流路(62)の2つに分岐(分割)させる。分岐部(71,71A,71B)は、上側流路(61)及び下側流路(62)のうち、上側流路(61)を通った煙を、流入口(40)から煙検知室(4)の内部に流入させる。第2の態様によれば、誤検知が発生する可能性を低減できる。
【0172】
第3の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)は、第2の態様において、下側流路(62)と煙検知室(4)との間に配置されて、下側流路(62)を通る湯気の、煙検知室(4)の内部への流入を遮断する遮断部(72)を更に備える。第3の態様によれば、湯気が、より煙検知室(4)の内部に流入しにくくなり、誤検知の発生を更に抑制できる。
【0173】
第4の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第2又は第3の態様において、分岐部(71,71A,71B)は、煙検知室(4)の全周にわたって形成されている。第4の態様によれば、湯気が、360度どの方向から感知器(1,1A,1B,1C)内に進入しても煙検知室(4)の内部に流入しにくくなり、誤検知の発生を更に抑制できる。
【0174】
第5の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C)に関して、第2~第4の態様のいずれか1つにおいて、煙検知室(4)の周壁(41)は、流入口(40)が形成されている第1領域(411)と、流入口(40)が形成されていない第2領域(412)とを含む。分岐部(71,71A,71B)は、第2領域(412)と対向する位置に切り欠き(73)を有する。第5の態様によれば、第2領域(412)に向かって感知器(1,1A,1B,1C)内に進入してきた煙が、煙検知室(4)の内部に流入しにくくなる可能性を低減できる。
【0175】
第6の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、分割部(Z1)は、気体の流路(6)を第1空間(SP3)と第2空間(SP4)と第3空間(SP5)とに分割する。開口部(510,510A)と第1空間(SP3)、第1空間(SP3)と第2空間(SP4)、及び第2空間(SP4)と第3空間(SP5)とは、開口部(510,510A)から煙検知室(4)に向かう一方向においてそれぞれ隣接する。煙の第1の流入量と湯気の第2の流入量とについて、第3空間(SP5)では、煙の第1割合は、湯気の第2割合よりも高くなっている。第2空間(SP4)の体積は、第1空間(SP3)及び第3空間(SP5)の各々の体積よりも大きい。第6の態様によれば、第2空間(SP4)の体積が第1空間(SP3)及び第3空間(SP5)の各々の体積よりも大きくなることで、第2空間(SP4)に流入した煙又は湯気、煙及び湯気を含む気体は、渦流を形成し易くなる。
【0176】
第7の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、分割部(Z1)は、気体の流路(6)を第1空間(SP3)と第2空間(SP4)と第3空間(SP5)とに分割する。開口部(510,510A)と第1空間(SP3)、第1空間(SP3)と第2空間(SP4)、及び第2空間(SP4)と第3空間(SP5)とは、開口部(510,510A)から煙検知室(4)に向かう一方向においてそれぞれ隣接する。煙の第1の流入量と湯気の第2の流入量とについて、第3空間(SP5)では、煙の第1割合は、湯気の第2割合よりも高くなっている。分割部(Z1)の開口部(510)から煙検知室(4)に向かう一方向及び鉛直方向(A2)に沿った断面において、第2空間(SP4)の断面積は、第1空間(SP3)及び第3空間(SP5)の断面積の各々よりも大きい。第7の態様によれば、第2空間(SP4)の断面積が第1空間(SP3)及び第3空間(SP5)の各々の断面積よりも大きくなることで、第2空間(SP4)に流入した煙又は湯気、煙及び湯気を含む気体は、渦流を形成し易くなる。
【0177】
第8の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第6又は第7の態様において、開口部(510,510A)から煙検知室(4)に向かう一方向及び鉛直方向(A2)に沿った断面において、第2空間の鉛直方向の長さは、第1空間(SP3)及び第3空間(SP5)の鉛直方向(A2)の長さの各々よりも長い。第8の態様によれば、第2空間(SP4)の断面積における鉛直方向の長さが第1空間(SP3)及び第3空間(SP5)の各々の断面積の鉛直方向の長さよりも長くなることで、第2空間(SP4)に流入した煙又は湯気、煙及び湯気を含む気体は、渦流を形成し易くなる。
【0178】
第9の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第6~第8の態様のいずれか1つにおいて、開口部(510,510A)から煙検知室(4)に向かう一方向及び鉛直方向(A2)に沿った断面において、一方向における第2空間(SP4)の長さは、第1空間(SP3)及び第3空間(SP5)の長さの各々よりも長い。第9の態様によれば、第2空間(SP4)の断面積における第2空間(SP4)の開口部(510,510A)から煙検知室(4)に向かう一方向の長さが第1空間(SP3)及び第3空間(SP5)の各々の断面積における径方向の長さと比較して大きくなることで、第2空間(SP4)に流入した煙又は湯気、煙及び湯気を含む気体は、渦流を形成し易くなる。
【0179】
第10の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第6~第9の態様のいずれか1つにおいて、分割部(Z1)は、第2空間(SP4)と第3空間(SP5)との間に、一方向において鉛直上方に高くなるように傾斜する傾斜面(203,203A)を備える。第10の態様によれば、分割部(Z1)は、傾斜面(203,203A)を備えることで、第2空間(SP4)に流入した煙又は湯気、煙及び湯気を含む気体は、渦流を形成し易くなる。
【0180】
第11の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第1~第10の態様のいずれか1つにおいて、開口部(510,510A)の外周の鉛直上方に配置され、気体が開口部(510,510A)に流入するように制御する気流制御部(201,201A)を更に備える。第11の態様によれば、気流制御部(201,201A)は、気体の流路(6)を制限することで、開口部(510,510A)に流入する気体の煙と湯気との比率において、流入する前の気体と比較して、煙の比率を高めることができる。
【0181】
第12の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第11の態様において、気流制御部(201,201A)は、外部空間(SP2)の煙又は湯気を含む主気流を、開口部(510,510A)から気体の流路(6)に流入しない第1気流と、開口部(510,510A)から気体の流路(6)に流入する第2気流とに分離する。気流制御部(201,201A)は、主気流が煙を含む場合における第1気流の煙の量に対する第2気流の煙の量の割合が、主気流が湯気を含む場合における第1気流の湯気の量に対する第2気流の湯気の量の割合よりも高くなるように主気流を制御する。第12の態様によれば、気流制御部(201,201A)は、主気流を第1気流と第2気流とに分離し、第1気流の煙又は湯気の量に対する第2気流の煙又は湯気の量の割合が、湯気の割合よりも煙の割合が高くなるように主気流を制御することで、湯気による誤検知の発生を抑制することができる。
【0182】
第13の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)は、第1~第12の態様のいずれか1つにおいて、煙検知室(4)が上に搭載される基台(2,2A)を更に備える。第12の態様によれば、煙検知室(4)が基台(2,2A)の上に搭載されている感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G)において、誤検知が発生する可能性を低減できる。
【0183】
第14の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C)に関して、第13の態様において、基台(2,2A)は、回路基板である。第14の態様によれば、例えば、基台(2,2A)が回路基板とは別体に設けられる場合に比べて、部品点数の削減を図ることができる。
【0184】
第15の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)は、第13又は第14の態様において、基台(2,2A)の外周部(23)に配置される1又は複数の熱検知素子(30)を更に備える。第15の態様によれば、熱検知の機能を更に有した感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)において、誤検知が発生する可能性を低減できる。
【0185】
第16の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に関して、第15の態様において、外周部(23)は、熱検知素子(30)が配置される周辺領域に、内方へ向かって凹んだ凹部(24)を有する。第16の態様によれば、熱検知素子(30)に対する熱流性の向上を図ることができる。
【0186】
第17の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)は、第13~第16の態様のいずれか1つにおいて、基台(2,2A)の下面(第2面22)を覆うように配置される筒部(511)を更に備える。基台(2,2A)は、筒部(511)より外方に突出する突出縁部(25)を有する。第17の態様によれば、突出縁部(25)によって湯気が上側流路(61)を通る可能性を低減できる。
【0187】
第18の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)は、第13~第17の態様のいずれか1つにおいて、下カバー(51)を更に備える。下カバー(51)は、外部空間(SP2)と煙検知室(4)の周囲の空間(SP1)とを連通させる開口部(510)を有し、基台(2,2A)の下側に配置される。基台(2,2A)の外周部(23)は、下カバー(51)を正面から見て、開口部(510)から外部空間(SP2)にハミ出ていない。第18の態様によれば、基台(2,2A)の外周部(23)が、開口部(510)から感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)内への煙の進入を阻害してしまう可能性を低減できる。
【0188】
第19の態様に係る感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)は、第1~第18の態様のいずれか1つにおいて、煙検知室(4)を上から覆うように配置される上カバー(52,53)を更に備える。分割部(Z1)は、分岐部(71,71A,71B)を備える。分岐部(71,71A,71B)は、煙検知室(4)の周囲の空間(SP1)を、鉛直方向(A2)成分を含む分離方向(A1)に二分して、上側流路(61)と下側流路(62)との2つに分岐(分割)させる。分岐部(71,71A,71B)は、上側流路(61)及び下側流路(62)のうち、上側流路(61)を通った煙を、流入口(40)から煙検知室(4)の内部に流入させる。上カバー(52,53)は、上側流路(61)と下側流路(62)のうちの上側流路(61)の一部を形成する。第19の態様によれば、上側流路(61)を形成する部材を、上カバー(52)とは別に設ける場合に比べて、部品点数の削減を図ることができる。また小型化(特に低背化)も図りやすくなる。
【0189】
第2~第19の態様に係る構成については、感知器(1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0190】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H 感知器
2,2A 基台
202 傾斜部
22 第2面(下面)
23 外周部
24 凹部
25 突出縁部
30 熱検知素子
4 煙検知室
40 流入口
41 周壁
411 第1領域
412 第2領域
51 下カバー
510,510A 開口部
511 筒部
52,53 上カバー
6 流路
61 上側流路
62 下側流路
71,71A,71B 分岐部
72 遮断部
73 切り欠き
A1 分離方向
A2 鉛直方向
SP1 周囲の空間
SP2 外部空間
SP3 第1空間
SP4 第2空間
SP5 第3空間
Z1 分割部