(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】照明器具システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/19 20200101AFI20231201BHJP
【FI】
H05B47/19
(21)【出願番号】P 2019196550
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 行紀
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-531481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の照明器具と、無線通信を利用して前記複数の照明器具を個別に操作可能な操作端末を含む照明器具システムであって、
前記複数の照明器具は、自己の器具情報を記憶しており、電源投入前には複数の未登録器具であり、
電源投入をトリガーとして、前記複数の未登録器具間で通信を行い、
各未登録器具を、
自己の器具情報を記憶している登録器具、
または
自己の器具情報を記憶しているとともに、他の照明器具である登録器具の器具情報を記憶している管理者器具、
に変更し、
前記管理者器具から、前記操作端末に対し、前記管理者器具および登録器具についての器具情報を送信することで、前記操作端末により前記複数の照明器具を操作可能と
し、
前記未登録器具を前記管理者器具または前記登録器具に変更する処理は、
複数の未登録器具がビーコン信号を送信し、1つの未登録器具において他の未登録器具がビーコン信号を受信した場合に、一方の未登録器具が他方の未登録器具に自己の器具情報を送信して前記登録器具になり、他方の未登録器具が一方の器具情報を記憶するとともに管理者器具になること、および
1つの管理者器具が前記未登録器具からのビーコンを受信した場合に当該未登録器具の器具情報を受信して記憶し、当該未登録器具を前記登録器具に変更すること、
を含み、
ネットワーク構築の途中状態において、一方が前記管理者器具になると共に他方がその一方の前記管理者器具に登録された前記登録器具となる一対のペアが1以上存在すると共に、ペアになれなかった前記未登録器具が存在した場合、そのペアになれなかった前記未登録器具が前記ビーコン信号を送信する、
照明器具システム。
【請求項2】
複数の照明器具と、無線通信を利用して前記複数の照明器具を個別に操作可能な操作端末を含む照明器具システムであって、
前記複数の照明器具は、自己の器具情報を記憶しており、電源投入前には複数の未登録器具であり、
電源投入をトリガーとして、前記複数の未登録器具間で通信を行い、
各未登録器具を、
自己の器具情報を記憶している登録器具、
または
自己の器具情報を記憶しているとともに、他の照明器具である登録器具の器具情報を記憶している管理者器具、
に変更し、
前記管理者器具から、前記操作端末に対し、前記管理者器具および登録器具についての器具情報を送信することで、前記操作端末により前記複数の照明器具を操作可能とし、
各管理者器具および各登録器具はそれぞれネットワークキーを記憶し、
複数の管理者器具がビーコン信号を送信し、1つの管理者器具が他の管理者器具からのビーコン信号を受信した場合に、一方の管理者器具のネットワークキーを他方の管理者器具のネットワークキーと同一のものに変更することで、各管理者器具のネットワークキーを同一にするとともに、自己が管理している登録器具のネットワークキーも同一のものにする、
照明器具システム。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の照明器具システムであって、
各管理者器具が、自己の器具情報および自己に登録されている登録器具の器具情報と、ネットワークキーを前記操作端末に送信し、
前記操作端末が、管理者器具から送信された照明器具の器具情報を登録する、
照明器具システム。
【請求項4】
複数の照明器具と、無線通信を利用して前記複数の照明器具を個別に操作可能な操作端末を含む照明器具システムであって、
前記複数の照明器具は、自己の器具情報を記憶しており、電源投入前には複数の未登録器具であり、
電源投入をトリガーとして、前記複数の未登録器具間で通信を行い、
各未登録器具を、
自己の器具情報を記憶している登録器具、
または
自己の器具情報を記憶しているとともに、他の照明器具である登録器具の器具情報を記憶している管理者器具、
に変更し、
前記管理者器具から、前記操作端末に対し、前記管理者器具および登録器具についての器具情報を送信することで、前記操作端末により前記複数の照明器具を操作可能とし、
各管理者器具が、自己の器具情報および自己に登録されている登録器具の器具情報と、ネットワークキーを前記操作端末に送信し、
前記操作端末が、管理者器具から送信された照明器具の器具情報を登録し、
前記操作端末がビーコン信号を送信し、前記操作端末からのビーコン信号を受信した前記管理者器具が前記操作端末を登録し、
前記管理者器具が自己および登録されている登録器具の器具情報を前記操作端末に送信する、
照明器具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信を利用して複数の照明器具を個別に操作可能な照明器具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスや店舗などの中規模~大施設において、無線通信を利用して照明器具を制御する照明システムが普及している。このような照明システムでは、日時・エリアなどの条件設定によるきめ細かな照明制御により、施内に滞在している人に適切な空間を提供できる。例えば、特許文献1では、照明器具の照明を制御する照明コントローラに操作端末からスケジュール情報を送り、照明器具の照明を制御することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のようなきめ細かな照明制御を可能にするためは、必要な設定項目も増加する。従って、施工時の初期設定においては、多くの設定を行わなければならない。例えば、日時、エリアなどの設定が細かくなると、どのエリアの照明器具がどの時間にどういう動作をするかなどその設定が複雑になり、無線通信する操作端末においてもこれらの情報を入力できるようにする必要がある。
【0005】
特に、無線通信で照明器具ごとに、操作端末と情報交換をする場合、個別の通信許可する登録作業(ペアリング等)が発生するため、対象とする照明器具が多い場合には初期設定に長時間を要する。操作端末としてタブレットを用いると、グラフィック表示により、操作の容易化を図ることができるが、照明器具とタブレットの接続等の通信不具合が問題となる。
【0006】
また、照明器具と個別に通信するのではなく、ゲートウェイを介し接続することも考えられるが、この場合ゲートウェイ分のコストが高くなる。
【0007】
照明器具同士で自律的にネットワーク構築ができれば理想だが、各照明器具において各種のデータを記憶しなければならず、メモリ増加によるコストアップが課題となる。
【0008】
本開示では、各照明器具におけるメモリの容量の増加を抑制しつつ、照明器具同士でネットワークを形成し、各照明器具を操作端末により操作できる照明器具システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、複数の照明器具と、無線通信を利用して前記複数の照明器具を個別に操作可能な操作端末を含む照明器具システムであって、前記複数の照明器具は、自己の器具情報を記憶しており、電源投入前には複数の未登録器具であり、電源投入をトリガーとして、前記複数の未登録器具間で通信を行い、各未登録器具を、自己の器具情報を記憶している登録器具、または自己の器具情報を記憶しているとともに、他の照明器具である登録器具の器具情報を記憶している管理者器具、に変更し、前記管理者器具から、前記操作端末に対し、前記管理者器具および登録器具についての器具情報を送信することで、前記操作端末により前記複数の照明器具を操作可能とする。
【0010】
前記未登録器具を前記管理者器具または前記登録器具に変更する処理は、複数の未登録器具がビーコン信号を送信し、1つの未登録器具において他の未登録器具がビーコン信号を受信した場合に、一方の未登録器具が他方の未登録器具に自己の器具情報を送信して前記登録器具になり、他方の未登録器具が一方の器具情報を記憶するとともに管理者器具になること、および1つの管理者器具が前記未登録器具からのビーコンを受信した場合に当該未登録器具の器具情報を受信して記憶し、当該未登録器具を前記登録器具に変更すること、を含むとよい。
【0011】
各管理者器具および各登録器具はそれぞれネットワークキーを記憶し、複数の管理者器具がビーコン信号を送信し、1つの管理者器具が他の管理者器具からのビーコン信号を受信した場合に、一方の管理者器具のネットワークキーを他方の管理者器具のネットワークキーと同一のものに変更することで、各管理者器具のネットワークキーを同一にするとともに、自己が管理している登録器具のネットワークキーも同一のものにするとよい。
【0012】
各管理者器具が、自己の器具情報および自己に登録されている登録器具の器具情報と、ネットワークキーを前記操作端末に送信し、前記操作端末が、管理者器具から送信された照明器具の器具情報を登録するとよい。
【0013】
前記操作端末がビーコン信号を送信し、前記操作端末からのビーコン信号を受信した前記管理者器具が前記操作端末を登録し、前記管理者器具が自己および登録されている登録器具の器具情報を前記操作端末に送信するとよい。
【0014】
また、本発明は、ネットワークで接続され各々が通信機能を有する複数の照明器具と、前記複数の照明器具を操作する操作端末と、を含む照明器具システムであって、前記複数の照明器具は、自己の器具情報を記憶している複数の登録器具と、自己の器具情報を記憶しているとともに、少なくとも1つの登録器具の器具情報を記憶している複数の管理者器具と、を含み、前記操作端末は、前記複数の管理者器具から、複数の管理者器具および各管理者器具に登録されている登録器具の器具情報を受信し、受信した器具情報を記憶し、記憶されている器具情報を用いて前記複数の照明器具を個別に操作することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、各照明器具におけるメモリの容量の増加を抑制しつつ、照明器具同士でネットワークを形成でき、各照明器具を操作端末により操作できる照明器具システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る照明器具システム100の構成を示すブロック図である。
【
図4】ネットワークの構築を説明する図であり、(a)は初期状態、(b)は構築の途中の状態、(c)は構築終了時の状態を示す。
【
図5】操作端末への器具情報登録の状態を示す図である。
【
図6】管理者器具が未登録器具を登録器具として登録する照明器具登録シーケンスを示す図である。
【
図7】管理者器具が操作端末を登録するとともに、操作端末が器具リストを取得する操作端末登録シーケンスを示す図である。
【
図8】電源投入時の未登録器具における処理を示すフローチャートである。
【
図9】電源投入時の管理者器具における処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態(実施形態)について、図面を参照して説明する。なお、本開示は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0018】
「システム構成」
図1は、本実施形態に係る照明器具システム100の構成を示すブロック図である。照明器具システム100は、複数個の照明器具10からなる照明器具群12を有する。照明器具10は、電力供給により照明光を出力する。光源には、例えばLEDが採用され、照明強度、波長などを制御可能であることが好ましい。また、各照明器具10は、無線通信機能を有している。
【0019】
照明器具群12は、スイッチ14を介し、配電ユニット16に接続されている。配電ユニット16は、電源からの電力を分配するものであり、照明器具群12に電力供給をオンオフするブレーカーを含んでおり、ブレーカーは異常電流出力時などにオフする。スイッチ14は、配電ユニット16からの電力をオンオフする。
【0020】
操作端末20は、各照明器具10を制御するものであり、この例では、無線機能を有する携帯端末が使用されている。ユーザは、操作端末20を操作することで、照明器具10を個別に制御することができる。ここで、照明器具10と操作端末の無線通信には、例えばBluetooth(登録商標)が利用されるが、他の無線通信を使用してもよく、例えばWiFi、ZigBee、特定小電力無線や、赤外線通信を使用することもできる。
【0021】
図においては、1つの照明器具群12を1つのスイッチ14を介し、1つの配電ユニット16に接続したが、1つの配電ユニット16に対し、複数のスイッチ14を介し、照明器具群12を接続してもよい。この場合、各スイッチ14で分割された照明器具群12をオンオフすることができる。
【0022】
また、照明器具システム100では、照明器具10同士の通信によって、自律的に1つのネットワークを形成し、そのネットワーク内の照明器具10は共通のネットワークキーを持つ。そして、操作端末20は、共通のネットワークキーを持つ照明器具10についての個々の情報を記憶する。そこで、操作端末20によって、対象となるネットワークに存在する照明器具10と直接通信して、これらを個別に操作することができる。
【0023】
「照明器具の構成」
図2は、照明器具10の構成を示すブロック図である。電源部30は、配電ユニット16からスイッチ14を介し供給される電力を受け、適切な電圧として、各部材に電力を供給する。電源投入判定部32は、電源部30に電源が投入されたことを判定する。光源部34は、電源部30からの電力により照明光を出力する。また、光源部34には、制御部36が接続されており、光源部34の照明光の出力は制御部36によって制御される。制御部36には、記憶部38が接続されており、ここに各種データが記憶される。また、制御部36には、計算部40、判断部42が接続されており、ここにおいて制御部36において必要な各種の計算、判断がなされる。さらに、制御部36には、通信部44が接続されており、この通信部44を介し、操作端末20と無線通信を行う。制御部36は、通信により取得した情報に基づき、光源部34の調光、調色状態を制御する。なお、電源投入判定部32、制御部36、記憶部38、計算部40、判断部42などは、1つのマイクロコンピュータの機能として実現することとよい。
【0024】
「操作端末の構成」
図3は、操作端末20の構成を示すブロック図である。制御部52は、内部の各部材を制御する。制御部52には、通信部60が接続されており、この通信部60を介し、照明器具10と無線通信を行う。制御部52には、表示部54が接続されており、各種の表示が行われる。取得部50はユーザによる入力情報を取得する。なお、表示部54の前面にタッチセンサを配置してタッチパネルとし、このタッチパネルへのユーザ操作を取得部50が取得するとよい。
【0025】
制御部52には、各種データが記憶される記憶部56、必要な計算を行う計算部58が接続されている。制御部52が、これらを利用して各種の処理を行う。なお、取得部50、制御部52、計算部58は、マイクロコンピュータの機能とするとよい。
【0026】
操作端末20は、各照明器具10を個別に操作可能である。
【0027】
「ネットワークの構築」
<照明器具の状態>
図4は、ネットワークの構築を説明する図であり、(a)は初期状態、(b)は構築の途中の状態、(c)は構築終了時の状態を示す。
【0028】
本実施形態では、配電ユニット16のブレーカーにスイッチ14を介し接続されている複数の照明器具10により1つのネットワークを構築する。
【0029】
照明器具10には、未登録状態(未登録器具10a)、管理者状態(管理者器具10b)、登録状態(登録器具10c)の3つの状態があり、各照明器具10はどの状態にあるかを器具状態(デフォルトでは未登録状態)として登録している。
【0030】
未登録器具10aは、デフォルト器具情報を持っており、どのネットワークにも所属していない。デフォルト器具情報は、工場出荷時に与えられるマックアドレス(Mac address)、ランダムに与えられたデフォルトのネットワークキー(Network key)を含む。なお、マックアドレスは、装置に固有のIDであり、未登録器具10aが管理者器具10b、登録器具10cのいずれになってもそのまま変わらずに登録されている。一方、ネットワークキーは、ネットワーク内に限られた通信を行うためのキーであり、構築されるネットワークにおいて1つに統一されるため、後に上書きされる。
【0031】
管理者器具10bは、デバイスIDと、ネットワークキーと、器具リストを持っている。デバイスIDは、ネットワーク内の照明器具10、操作端末20を個別に認識するためのIDであり、ネットワーク構築時に管理者器具10b自身が付与する。ネットワークキーは、上述のように照明器具10は当初はデフォルトのネットワークキーを持つが、構築された1つのネットワーク内の各照明器具10は同一のネットワークキーを持つ。器具リストは、自己の器具情報と、自己が管理している登録器具10cの器具情報を含むリストであり、登録器具10cの器具情報は、マックアドレス、デバイスIDなど、照明器具10を個別に識別するための情報を含む。なお、個別に識別できれば、ユニキャストアドレスなどでもよい。
【0032】
登録器具10cは、自己の器具情報を持っている。この照明器具情報には、マックアドレス、デバイスID、ネットワークキー、シーン情報などが含まれる。登録器具10cのデバイスIDは、ネットワーク登録時に管理者器具10bから与えられる。また、ネットワークキーは管理者器具10bから供給されるものが上書きされることで統一されたものになっている。シーン情報は、その照明器具が持っているシーン番号の対応する調光、調色状態を示す情報であり、デフォルトで持っているが、後から別途設定するとよい。
【0033】
<操作端末の状態>
操作端末20は、マックアドレス、デバイスID、ネットワークキーを含む操作端末情報を有する。デバイスIDは、ネットワーク内で操作端末20を個別に識別するためのIDであり、管理者器具10bに登録される際に管理者器具10bから与えられる。ネットワークキーは、登録したネットワークにおいて統一されたキーであり、管理者器具10bへの登録時に管理者器具10bから与えられる。なお、操作端末20は、ネットワーク内のすべての管理者器具10bにおいて、登録されるとよい。この場合、デバイスIDは最初に与えられたもの1つにするとよい。各管理者器具10bにおいて、1つの操作端末20について同じデバイスIDが登録される。
【0034】
<ネットワーク構築の開始>
まず、施工業者などのユーザは、配電ユニット16、スイッチ14がオフの状態で各照明器具10をセットする。
【0035】
初期状態では、
図4(a)示すように、すべての照明器具10は、ネットワークに登録されていない未登録状態であり、未登録状態の照明器具10を未登録器具10aと称し、図において白丸で示す。未登録器具10aは、上述したように、デフォルト器具情報を有している。
【0036】
(i)配電ユニット16の対応するブレーカーおよびスイッチ14をオンにする。
【0037】
(ii)照明器具10は、電力が供給された場合に、電源投入判定部32がこれを検知し、制御部36へ通知する。制御部36は、記憶部38に格納されている器具状態を読み出す。電源投入前の初期状態では、未登録状態であり、通信部44から未登録状態ビーコン信号を発信する。また、通信部44により、受信信号のスキャンを開始する。各未登録器具10aよりビーコン信号を送信するので、通常各未登録器具10aにおいて複数の他の未登録器具10aからのビーコン信号を受信する。少なくとも1台の未登録状態のビーコンを通信部44で受信した場合に、ビーコン信号に含まれた当該未登録器具10aの器具情報を制御部36で読み出し、記憶部38に格納する。
【0038】
未登録状態ビーコンを発信する期間は、予め定めておく。なお、光源部34は、予め定められている未登録状態を示す点灯状態で発光しているとよい。
【0039】
(iii)判断部42において、(ii)で受信したビーコン信号から未登録器具10aの1つを選択する。例えば、所定の条件(RSSI(受信信号強度)が最も強い等)でペアになる未登録器具を選択する。例えば、近くの未登録器具10aが選択される。1つの未登録器具10aを選択することで未登録器具のペアp(破線で示す)を形成し、そして、選択した未登録器具10aのビーコン信号からデフォルト器具情報(マックアドレス、ネットワークキー等)を取り出し、これと記憶部38から読み出した自分のデフォルト器具情報とを所定の条件(マックアドレスのチェックサム値等)で比較し、いずれか一方を管理者器具10bに変更する。
【0040】
(iv)管理者器具10bは、(iii)で比較した相手方の未登録器具10aについて、登録シーケンス(別途説明)によって登録する。管理者器具10bに登録されることで、未登録器具10aは、登録器具10cに変更され、管理者器具10bは、登録器具10cの器具情報を取得し、自己の器具リストに登録する。このようにして、ペアとなった一対の未登録器具10aの中の、一方が管理者器具10b(斜線ハッチングで示す)、他方が管理者器具10bに登録した登録器具10c(砂地で示す)になる。管理者器具10bの器具状態が管理者状態となり、登録器具10cの器具状態は登録状態となり、これが記憶部38に記憶される。
【0041】
図4(b)には、この状態が示されており、4つのペアpにおいて、一方が管理者器具10b、他方が登録器具10cになり、2つの未登録器具10aが残っている。
【0042】
(iv)ペアpになれなかった未登録器具10aは、再度ビーコン信号を送信する。未登録器具10aからのビーコン信号を受信した管理者器具10bは、対象となる未登録器具10aと通信し、登録シーケンスを実行することで、当該未登録器具10aの器具情報を器具リストに登録する。これによって、未登録器具10aが登録器具10cとなる。このようにして、
図4(c)に示すように、未登録器具10aがなくなり、いずれかの管理者器具10bに登録された登録器具10cになり、1つの管理者器具10bとその管理者器具10bに登録された登録器具10cの管理グループg(一点鎖線で示す)が形成される。
【0043】
(v)次に、各管理者器具10bが、管理者であることを示すビーコン信号を発信する。また、管理者器具10bは、同時にスキャンを開始し、少なくとも1台の管理者器具10bのビーコン信号を受信する。
【0044】
(vi)判断部42において、(v)で受信したビーコン信号から、所定の条件(RSSIが最も強い、管理者器具10bが持つ登録器具の台数等)で管理者器具10bを1台選択する。そして、選択した管理者器具10bのデフォルト器具情報の所定の情報(マックアドレス等)や、器具情報の所定の情報(デバイスID等)を読み出し、自分の情報と対象となる管理者器具10b間で所定の条件(チェックサム値等)で比較し、優勢な管理者器具10bと劣勢な管理者器具10bを決定する。
【0045】
(vii)優勢となった管理者器具10bが、劣勢となった管理者器具10bにネットワークキーを送信する。劣勢となった管理者器具10bは、受信したネットワークキーを自己のネットワークキーに上書きするとともに、自己が管理している登録器具10cのネットワークキーも上書きする。
【0046】
(viii)上記(vii)の処理を繰り返すことで、ネットワーク内のすべての照明器具10のネットワークキーが1つのネットワークキーに統一され、登録が完了する。なお、(ii)~(viii)までの状態を、照明器具10の点灯レベル、色、点滅などで表現するとよい。
【0047】
<操作端末の登録>
(ix)次に、操作端末20が、取得部50によりユーザの操作を受け付け、スキャンモードとなり、これを表示部54に表示する。これによって、操作端末20の通信部60からネットワーク設定のためのビーコン信号を発信する。
【0048】
管理者器具10bは、操作端末20からのビーコン信号を受信した場合、後述する操作端末登録シーケンスに従い、操作端末20を登録する。
【0049】
(x)登録された操作端末20が各管理者器具10bと通信し、各管理者器具10bおよびそこに登録されている登録器具10cの器具情報リストを取得する。
【0050】
(xi)上記(ix)、(x)を各管理者器具10bと行うことで、操作端末20がネットワーク全体の情報を得る。なお、(ix)において、操作端末20は所定の条件(例えば、マックアドレス)によって登録する宛先の管理者器具10bを順次選択することができる。
【0051】
(xii)このようにして、操作端末20は、1つのネットワークキーを有する照明器具群12内の各照明器具10の情報を格納することができ、各照明器具10を個別に制御することができる。
【0052】
図5は、上記(ix)~(xi)の操作端末20への器具情報登録の状態を示す図である。このように、操作端末20が各管理者器具10bと通信し、照明器具10の情報を取得して登録する。
【0053】
<照明器具登録シーケンス>
図6は、管理者器具10bが未登録器具10aを登録器具10cとして登録する照明器具登録シーケンスを示す図である。このシーケンスでは、認証keyを使用してセキュアな登録動作を確保する。
【0054】
1.管理者器具10bから未登録器具10aに登録開始信号を送信する。
2.未登録器具10aが登録開始信号を受信したら、受領確認の意味の登録開始信号ACKを送信する。
3.管理者器具10bから未登録器具10aに認証keyを送信する。
4.未登録器具10aは、認証key受信後、計算部40で解読し自身の持っているkeyと参照する(一致するかを確認する)ことで、送られてきた認証keyを確認する。
5.認証keyの一致確認後、未登録器具10aから管理者器具10bに認証keyACKを送信する。
6.管理者器具10bは、認証keyACK受信後、計算部40で解読し、自身の持っているkeyと参照する(一致するかを確認する)ことで、送られてきた認証keyACKを確認する。
7.認証keyACKの一致確認後、管理者器具10bから未登録器具10aにネットワークキーを送信する。
8.未登録器具10aがネットワークキーを受信し、ネットワークキーACKを送信する。また、受信したネットワークキーを自己のネットワークキーに上書きする。
9.上記のような処理によって、未登録器具10aの器具情報が管理者器具10bの器具リストに登録されるとともに、未登録器具10aのネットワークキーが管理者器具10bのものと同一のものとされて、未登録器具10aが登録器具10cとなり、登録が完了する。登録器具10cの器具状態は登録状態になる。
【0055】
なお、電源投入時やユーザによる指令時に上記動作を行うことで、照明器具10を取り換えたり、増設することなどによって、新たな未登録器具10aが発生した場合に、未登録器具10aをいずれかの管理者器具10bに登録することができる。
【0056】
<操作端末登録シーケンス>
図7は、管理者器具10bが操作端末20を登録するとともに、操作端末20が器具リストを取得する操作端末登録シーケンスを示す図である。このシーケンスの1~9の登録動作は、
図6に示した未登録器具10aの登録動作と同一(未登録器具10aが操作端末20に置き換わっただけ)である。
【0057】
1.管理者器具10bから操作端末20に登録開始信号を送信する。
2.操作端末20が登録開始信号を受信したら、登録開始信号ACKを送信する。
3.管理者器具10bから操作端末20に認証keyを送信する。
4.操作端末20は認証key受信後、計算部58で解読し、自身の持っているkeyと参照する。
5.一致後、操作端末20から管理者器具10bに認証keyACKを送信する。
6.管理者器具は認証keyACK受信後、計算部40で解読し自身の持っているkeyと参照する。
7.一致後、管理者器具10bから操作端末20にネットワークキーを送信する。
8.操作端末20がネットワークキーを受信したら、ネットワークキーACKを送信する。
9.登録完了
10.操作端末20が管理者器具10bに器具リスト要求信号を送信する。
11. 管理者器具10bから、操作端末20に器具リストを送信する。
【0058】
このようにして、管理者器具10bに操作端末20が登録され、また操作端末20において、管理者器具10bの器具リストを入手することができる。器具リストには、当該管理者器具10bと、そこに登録されている登録器具10cの器具情報が含まれている。このため、ネットワーク内の各管理者器具10bを順次選択して、上記1~11の処理を行うことで、ネットワーク内のすべての照明器具10についての器具情報を得ることができる。ここで、操作端末20は、最初にネットワークキーを受信したときに、それを記憶すればよく、その後は同一であることを確認するだけでよい。また、最初の管理者器具10bとの通信において、操作端末20は、その管理者器具10bよりデバイスIDの送信を受け、これを登録する。従って、管理者器具10bによる操作端末20へのデバイスIDの付与は、1回だけとして、その後は操作端末20からの情報にデバイスIDが含まれ、管理者器具10bにおいて、送られてきたデバイスIDを相手方の操作端末のデバイスIDとして登録する。また、ユーザからの指令時などに、上述の動作を行うことによって、操作端末20の情報を更新することができる。
【0059】
<未登録器具における処理>
図8は、電源投入時の未登録器具10aにおける処理を示すフローチャートである。
【0060】
電源が投入された場合には、自己が未登録か否かを確認し、未登録である場合にビーコン信号を送信するとともに、ビーコン信号を受信する(S11)。この際に、他の未登録器具10aも送信を行っているので、他の未登録器具10aからのビーコン信号を受信できる。複数の他の未登録器具10aからのビーコン信号を受信した場合には、受信強度の強いものを選択するなどして、相手(コネクション先)を決定し、相手方と通信によるコネクションの形成(通信の確立)を試みる(S12)。例えば、上述したような認証手続きを行いコネクションを確立する。
【0061】
そして、コネクションの形成が成功したかを判定する(S13)。受信できなかった場合には、S11に戻り、ビーコン信号の受信をやり直す。
【0062】
S13において、コネクションに成功であれば、コネクション先と、自己のいずれが優位かを判定する(S14)。この判定は、上述したようにマックアドレスなどに基づいて行う。
【0063】
そして、自己が優位であった場合には、器具状態を管理者状態として、管理者器具10bとして登録する(S15)。次に、登録シーケンスを実行して、コネクション先を自己が管理する登録器具10cとして登録する(S16)。一方、S14において、劣勢であった場合には、器具情報として登録状態を登録し、登録器具10cとなる(S17)。
【0064】
<管理者器具における処理>
図9は、電源投入時の管理者器具10bにおける処理を示すフローチャートである。なお、電源投入時に必ず行う必要はなく、他のスイッチの操作などをトリガーとして処理を行ってもよい。また、未登録器具10aについての処理を最優先し、次に管理者器具10bの処理を行い、これらが完了している状態で、操作端末20についての処理を行うことが好適である。
【0065】
まず、受信信号をスキャンし、照明器具10、操作端末20からのビーコン信号を受信したかを判定し(S21)、受信した場合にはこれを解読して受信したビーコンが未登録器具か、管理者器具か、操作端末かを判定する(S22)。各器具、端末で送信タイミングを異ならせていれば、いずれかの機器からのビーコン信号のみを受信することになる。
【0066】
受信したビーコン信号が未登録器具10aからであり複数の未登録器具10aから受信した場合には、受信強度などに基づき通信相手(コネクション先)を決定し(S23)、コネクションが成功したかを判定する(S24)。コネクションが成功した場合には、上述した未登録器具の登録シーケンスを実行し、未登録器具の情報を登録し、未登録器具にネットワークキーを送信する。これによって、未登録器具10aにおいてネットワークキーが上書きされ、登録器具10cになる。
【0067】
S22の判定で、相手方が管理者器具10bからであり複数の管理者器具10bから受信した場合には、マックアドレスなどを用い通信相手(コネクション先)を決定し(S26)、コネクションが成功したかを判定する(S27)。コネクションが成功した場合には、自己と相手方のいずれか優位かを判定する(S28)。自己が優位であった場合には、ネットワークキーを相手方に送信する(S29)。従って、相手方において、ネットワークキーが上書きされる。
【0068】
S28の判定で劣勢であった場合には、相手方からのネットワークキーを受信する(S30)。そして、受信したネットワークキーを自己が登録しているネットワークキーに上書きする(S31)。さらに、そのネットワークキーを自己の管理下の登録器具10cに送信する(S32)。ネットワークキーの送信を受けた登録器具10cは、ネットワークキーを上書きする。
【0069】
S22の判定で、ビーコン信号が操作端末20からと判定された場合、その操作端末20とコネクションを試み、コネクションが成功したかを判定する(S33)。コネクションが成功した場合には、操作端末登録シーケンスを実行する(S34)。これによって、管理者器具10bにおいて、操作端末20の操作端末情報が登録される。
【0070】
また、管理者器具10bは、ネットワークキーを送信するとともに、自己と自己が管理している登録器具10cの器具情報を含む器具リストを送信する。
【0071】
「実施形態の効果」
本実施形態によれば、数台単位の照明器具10からなる小規模ネットワーク(管理グループg)を構築してから、隣接する管理グループgのネットワークキーを上書きしていき統一して、最終的に1つのネットワークキーを共有する1つのネットワークを構築する。管理グループgを管理している管理者器具10bは、数台の登録器具10cの登録情報で記憶することで済むため、照明器具10のメモリを増やすことなく、照明器具10間のみでネットワーク構築を完了できる。従って、初期設定における作業者の手間が省け、施工時間を短縮することができる。
【0072】
また、初期設定において、操作端末20は、管理者器具10bと通信するだけで、全照明器具10の情報を得ることができ、各照明器具10と通信する場合に比べ、タッチポイントが減少し、通信不具合が生じる確率を小さくすることができる。
【0073】
電源投入で1つのネットワーク構築ができるため、ブレーカーや壁スイッチを操作するだけで一括グループ登録可能であり、その作業が容易になる。
【0074】
ネットワーク構築が完了したら、操作端末20が各管理グループgの管理者器具10bから器具リストを取得し、ネットワーク内の各照明器具10の情報を登録する。従って、操作端末20は、ネットワーク内のすべての照明器具10の情報を有しており、これらを個別に制御することができる。
【0075】
操作端末20は、各照明器具10と個別にアクセスすることができ、各照明器具10を個別に操作することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 照明器具、10a 未登録器具、10b 管理者器具、10c 登録器具、12 照明器具群、14 スイッチ、16 配電ユニット、20 操作端末、30 電源部、32 電源投入判定部、34 光源部、36 制御部、38 記憶部、40 計算部、42 判断部、44 通信部、50 取得部、52 制御部、54 表示部、56 記憶部、58 計算部、60 通信部、100 照明器具システム。