(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】振動発電装置
(51)【国際特許分類】
H02N 1/08 20060101AFI20231201BHJP
H02K 35/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H02N1/08
H02K35/00
(21)【出願番号】P 2020210829
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2022-09-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/超高速・低消費電力ビッグデータ処理を実現・利活用する脳型推論集積システムの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三屋 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 久幸
(72)【発明者】
【氏名】金 成主
(72)【発明者】
【氏名】青野 真士
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-022409(JP,A)
【文献】特開2019-213295(JP,A)
【文献】特開2018-157724(JP,A)
【文献】特開2019-213296(JP,A)
【文献】特開2019-216584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/00-35/06
H02N 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子と、
負荷抵抗に接続されると、前記振動発電素子によって生成された電力を取り出す出力部と、
前記電力の電力値が所定閾値よりも大きいか否かを判断する判断部と、
前記判断部による判断結果に基づいて前記出力部の入力インピーダンスを決定する決定部と、
前記決定部による決定に応じて前記出力部の前記入力インピーダンスを調整する調整部とを備
え、
前記決定部は、前記判断結果に基づいて演算される指標値に応じて、第1インピーダンス値および前記第1インピーダンス値とは異なる第2インピーダンス値のいずれか一方を、前記入力インピーダンスとして決定し、
前記決定部は、第1タイミングにおける前記判断結果と、前記第1タイミングより前の前記判断結果とに基づき、前記第1タイミングより後の第2タイミングにおける前記指標値を演算し、
前記決定部は、
前記判断結果に基づいて前記第1インピーダンス値に対応する第1演算値および前記第2インピーダンス値に対応する第2演算値を演算し、
前記第1タイミングにおける前記第2演算値から、前記第1タイミングにおける前記第1演算値を引いた差に基づいて、前記第2タイミングにおける前記指標値を演算し、
前記指標値が所定値よりも小さい場合に前記第1インピーダンス値を前記入力インピーダンスとして決定し、
前記指標値が前記所定値よりも大きい場合に前記第2インピーダンス値を前記入力インピーダンスとして決定する、振動発電装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の振動発電装置において、
前記第1タイミングの前記入力インピーダンスが前記第1インピーダンス値であるとき、
前記判断部により前記電力値が前記所定閾値より小さいと判断された場合は、前記第1タイミングより前に演算された前記第1演算値に比例する第1比例値に第1変化量が加えられることによって、前記第1タイミングにおける前記第1演算値が得られ、
前記判断部により前記電力値が前記所定閾値より大きいと判断された場合は、前記第1タイミングより前に演算された前記第1演算値に比例する前記第1比例値から第2変化量が減じられることによって、前記第1タイミングにおける前記第1演算値が得られ、
前記第1タイミングの前記入力インピーダンスが前記第2インピーダンス値であるとき、
前記判断部により前記電力値が前記所定閾値より大きいと判断された場合は、前記第1タイミングより前に演算された前記第2演算値に比例する第2比例値に前記第1変化量が加えられることによって、前記第1タイミングにおける前記第2演算値が得られ、
前記判断部により前記電力値が前記所定閾値より小さいと判断された場合は、前記第1タイミングより前に演算された前記第2演算値に比例する前記第2比例値から前記第2変化量が減じられることによって、前記第1タイミングにおける前記第2演算値が得られる、振動発電装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の振動発電装置において、
前記入力インピーダンスが前記第1インピーダンス値であるとき、前記所定閾値は第1閾値であり、
前記入力インピーダンスが前記第2インピーダンス値であるとき、前記所定閾値は前記第1閾値とは異なる第2閾値であり、
前記入力インピーダンスが前記第1インピーダンス値であるときの、前記振動の加速度に応じた前記電力値の増加が鈍化する変曲点に対応する特定の電力値は、前記第1閾値よりも大きく、かつ前記第2閾値よりも小さい、振動発電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の振動発電装置において、
前記出力部は、
前記振動発電素子から出力される交流電力を直流電力に変換して蓄電する第1蓄電回路と、
前記直流電力の電圧を変換して蓄電する第2蓄電回路と、
前記第1蓄電回路から前記第2蓄電回路への電力伝送を開始または停止する切替動作を行うスイッチング回路とを有し、
前記調整部は、前記切替動作が行われる条件を変更することによって、前記入力インピーダンスを調整する、振動発電装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の振動発電装置において、
前記第1蓄電回路に蓄電される前記直流電力の電圧が、所定電圧値を上回る電圧値に上昇したとき、または前記所定電圧値を下回る電圧値に低下したとき、前記スイッチング回路は前記切替動作を行い、
前記調整部は、前記所定電圧値を変更することによって、前記切替動作が行われる前記条件を変更する、振動発電装置。
【請求項6】
請求項
4に記載の振動発電装置において、
前記調整部は、前記切替動作が繰り返し行われることにより得られる、前記電力伝送が開始されてから停止されるまでの時間と、前記電力伝送が停止されてから開始されるまでの時間とに基づくデューティ比を、変更することによって、前記切替動作が行われる前記条件を変更する、振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の意思決定装置が知られており、その特許文献1には、意思決定装置を用いて電力を取り出す際の周波数が選択される振動発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された振動発電装置によると、取り出される電力の効率が低い場合があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によると、振動発電装置は、電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子と、負荷抵抗に接続されると、前記振動発電素子によって生成された電力を取り出す出力部と、前記電力の電力値が所定閾値よりも大きいか否かを判断する判断部と、前記判断部による判断結果に基づいて前記出力部の入力インピーダンスを決定する決定部と、前記決定部による決定に応じて前記出力部の前記入力インピーダンスを調整する調整部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、振動発電装置の発電効率を高められる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、給電対象である負荷抵抗に接続された振動発電装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、振動発電素子によって生成された電力の電力値と、振動発生源である振動発生装置の振動加速度との関係を例示する図である。
【
図3】
図3は、振動発電装置の決定部によって行われる、振動発電装置の出力部の入力インピーダンスを決定する処理の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、振動発電装置の調整部によって行われる、振動発電装置の出力部の入力インピーダンスを調整する処理の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、振動発電装置の決定部によって行われる、振動発電装置の出力部の入力インピーダンスを決定する処理の他の例を示す図である。
【
図6】
図6は、振動発電装置の調整部によって行われる、振動発電装置の出力部の入力インピーダンスを調整する処理の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態における振動発電装置100について、
図1から
図4までを用いて以下に説明する。
図1は、給電対象である負荷抵抗200に接続された振動発電装置100の構成の一例を示す図である。振動発電装置100は、電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子110、振動発電素子110により生成された電力を負荷抵抗200に供給する出力部120、判断部130、決定部140および調整部150を有する。振動発電装置100は、振動発電素子110の電極に振動を生じさせる振動発生源である不図示の振動発生装置に設置される。振動発電素子110は固定電極と可動電極とを有し、固定電極の振動加速度は、振動発生源である振動発生装置の振動加速度に応じた値となる。説明を分かりやすくするため、本実施の形態においては、振動発電素子110の固定電極の振動加速度は、振動発生装置の振動加速度に等しい値であるものとする。
図1において、振動発電素子110から出力部120を介して負荷抵抗200へ延びる矢印は、電力供給方向を示す。判断部130、決定部140および調整部150からそれぞれ延びる矢印は、後述する出力部120の入力インピーダンスを調整するための制御の向きを示している。
【0009】
判断部130は、例えばコンパレータで構成され、出力部120により負荷抵抗200に供給される電力の電力値が所定閾値よりも大きいか否かを判断する。所定閾値は、決定部140により任意の値に設定され得る。決定部140は、例えばプロセッサおよびメモリで構成され、プロセッサがメモリ内に保存されたコンピュータプログラムを実行することにより、判断部130による判断結果に基づいて出力部120の入力インピーダンスを決定する。調整部150は、後述するスイッチング回路122の切替動作を制御する制御回路を含み、決定部140による決定に応じて出力部120の入力インピーダンスを調整する。
【0010】
出力部120は、第1蓄電回路121、スイッチング回路122および第2蓄電回路123を含む。第1蓄電回路121は、例えば整流器およびコンデンサで構成され、振動発電素子110から出力される交流電力を直流電力に変換して蓄電する。スイッチング回路122は、例えばトランジスタで構成され、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送を開始または停止する切替動作を行う。第2蓄電回路123は、例えばインダクタおよびコンデンサで構成され、第1蓄電回路121からスイッチング回路122を介して伝送される直流電力の電圧を変換して蓄電する。
【0011】
図2は、振動発電素子110によって生成された電力の電力値Pと、振動発生源である振動発生装置の振動加速度Aとの関係を例示する図である。出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であるとき、振動発生装置の振動加速度Aが0から増加してAxに達するまで、振動発電素子110によって生成された電力Pは振動加速度Aの2乗に比例して増加する。すなわち、比例係数C1を用いて、式(1)のように表される。
P=C1×A
2 (0≦A≦Ax) ・・・(1)
【0012】
出力部120の入力インピーダンスZ=Z1であるとき、式(1)に基づき、振動発生装置の振動加速度A=Axにおいて、振動発電素子110によって生成された電力P=Pxとなり、
図2に変曲点X(Ax,Px)を表すことができる。振動加速度A>Axになると、電力Pが、振動加速度A≦Axにおける振動加速度Aの2乗比例に応じた増加を示す傾向から、変曲点Xにおける電力値Pxからほぼ横ばい、または漸増もしくは漸減を示す傾向へ変化する。
【0013】
出力部120の入力インピーダンスZが、第1インピーダンス値Z1とは異なる第2インピーダンス値Z2であるとき、振動発生装置の振動加速度Aが0から増加してAyに達するまで、振動発電素子110によって生成された電力Pは振動加速度Aの2乗に比例して増加する。すなわち、比例係数C2を用いて、式(2)のように表される。
P=C2×A2 (0≦A≦Ay) ・・・(2)
【0014】
出力部120の入力インピーダンスZ=Z2であるとき、式(2)に基づき、振動発生装置の振動加速度A=Ayにおいて、振動発電素子110によって生成された電力P=Pyとなり、
図2に変曲点Y(Ay,Py)を表すことができる。振動加速度A>Ayになると、電力Pが、振動加速度A≦Ayにおける振動加速度Aの2乗比例に応じた増加を示す傾向から、変曲点Yにおける電力値Pyからほぼ横ばい、または漸増もしくは漸減を示す傾向へ変化する。
【0015】
出力部120の入力インピーダンスZの第2インピーダンス値Z2が第1インピーダンス値Z1よりも大きい場合、
図2に示すように、式(2)に用いられる比例係数C2は式(1)に用いられる比例係数C1よりも小さく、かつ変曲点Yにおける電力値Pyは変曲点Xにおける電力値Pxよりも大きい。
【0016】
図2に示されるように、振動発生装置の振動加速度Aが小さいとき、調整部150によって、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値に調整されると、出力部120の入力インピーダンスZが第2インピーダンス値に調整されるときよりも大きな電力Pが得られる。振動発生装置の振動加速度Aが大きいとき、調整部150によって、出力部120の入力インピーダンスZは第2インピーダンス値に調整されると、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値に調整されるときよりも大きな電力Pが得られる。
【0017】
この点に着目し、本実施の形態においては、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であるとき、振動発生装置の振動加速度Aが0から増加するのに伴って振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値が増加し、さらに上述した所定閾値を上回ると、
図3を用いて後述する指標値Xが増加傾向になる。その指標値Xが後述する所定値よりも小さくないと判断されると、調整部150が、出力部120の入力インピーダンスZを、第1インピーダンス値Z1から第2インピーダンス値Z2に変更する。すると、振動加速度Aがさらに増加するにつれてさらに大きな電力Pが得られるようになる。その後、逆に、振動加速度Aが減少するのに伴って振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値が減少し、さらに上述した所定閾値を下回ると、指標値Xが減少傾向になる。その指標値Xが後述する所定値よりも小さいと判断されると、調整部150が、出力部120の入力インピーダンスZを、第2インピーダンス値Z2から第1インピーダンス値Z1に変更する。すると、振動加速度Aがさらに減少しても、入力インピーダンスZが変更されないと仮定した場合よりも大きな電力Pが得られるようになる。
【0018】
本実施の形態において、上述した所定閾値は
図2に示す第1閾値P1に設定されるものとする。第1閾値P1は、出力部120の入力インピーダンスZ=Z1であるときの、加速度A1に対する電力値に対応し、
図2に示す変曲点Xにおける電力値Pxよりもやや小さい値が好ましい。第1閾値P1が電力値Pxに近い値に設定されると、振動加速度Aの範囲0≦A≦Axにおいて、上述した動作により、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1に決定される傾向が強まり、入力インピーダンスZが第2インピーダンス値Z2であるときよりも高い電力Pが得られる可能性が高くなる。一方、第1閾値P1が電力値Pxに近過ぎない値に設定されることで、上述した動作により、入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1から第2インピーダンス値Z2へ変更される可能性を確保することができる。したがって、第1閾値P1は、電力値Pxになるべく近い値であって、しかし極度に近過ぎない値、例えば電力値Pxの90%程度の値である。
【0019】
なお、所定閾値を第1閾値P1に設定するのは、上述したように決定部140であり、振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値が所定閾値よりも大きいか否かを判断するのは、上述したように判断部130である。調整部150によって変更される入力インピーダンスZは、上述したように判断部130の判断結果に基づいて決定部140により決定される。
【0020】
図3は、振動発電装置100の決定部140によって行われる、振動発電装置100の出力部120の入力インピーダンスZを決定する処理の一例を示す図である。決定部140が有するプロセッサがメモリ内に保存されたコンピュータプログラムを実行することにより、
図3に示すステップS310およびそれ以降の各ステップにおける処理が行われる。
図3に示す処理には、上述した特許文献1に開示された綱引き(Tug-of-War;TOW)モデルが用いられる。本実施の形態において、第1タイミングである時刻tに、
図3に示す最終ステップの処理が完了すると、第1タイミングよりも後の第2タイミングである時刻(t+1)が時刻tに置き換えられ、第2タイミングにおいてステップS310から始まる各ステップの処理が再び行われる。
【0021】
ステップS310において、決定部140は、時刻tにおける出力部120の入力インピーダンスZ(t)が第1インピーダンス値Z1であるか否かを判定する。肯定判定が得られた場合、時刻tにおける出力部120の入力インピーダンスZ(t)は第1インピーダンス値Z1であり、処理は第1インピーダンス値Z1に対応するステップS320へ進められる。否定判定が得られた場合、時刻tにおける出力部120の入力インピーダンスZ(t)は第1インピーダンス値Z1とは異なる第2インピーダンス値Z2であり、処理は第2インピーダンス値Z2に対応するステップS330へ進められる。
【0022】
ステップS320において、決定部140は、時刻tにおいて振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値P(t)が、所定閾値として設定された第1閾値P1よりも小さいか否かを判定する。ステップS320で肯定判定が得られた場合、すなわち電力値P(t)が第1閾値P1よりも小さいと判定された場合、ステップS322において、決定部140は、後述する第1演算値R1(t)の時刻tにおける変化量ΔR1(t)に第1変化量を設定する。本実施の形態において、第1変化量は1であり、すなわちΔR1(t)=1である。このとき、後述する第2演算値R2(t)の時刻tにおける変化量ΔR2(t)には、決定部140は0を設定する。ステップS320で否定判定が得られた場合、すなわち電力値P(t)が第1閾値P1よりも小さくないと判定された場合、ステップS327において、決定部140は、時刻tにおける変化量ΔR1(t)に第2変化量の負の値を設定する。本実施の形態において、第2変化量はwであり、すなわちΔR1(t)=-wである。このとき、時刻tにおける変化量ΔR2(t)には、決定部140は0を設定する。ステップS322またはS327における処理が完了すると、処理はステップS340へ進められる。
【0023】
ステップS330において、決定部140は、時刻tにおいて振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値P(t)が、所定閾値として設定された第1閾値P1よりも小さいか否かを判定する。ステップS330で肯定判定が得られた場合、すなわち電力値P(t)が第1閾値P1よりも小さいと判定された場合、ステップS332において、決定部140は、時刻tにおける変化量ΔR2(t)に第2変化量の負の値を設定する。本実施の形態において、上述したように第2変化量はwであり、すなわちΔR2(t)=-wである。このとき、時刻tにおける変化量ΔR1(t)には、決定部140は0を設定する。ステップS330で否定判定が得られた場合、すなわち電力値P(t)が第1閾値P1よりも小さくないと判定された場合、ステップS337において、決定部140は、時刻tにおける変化量ΔR2(t)に第1変化量を設定する。本実施の形態において、上述したように第1変化量は1であり、すなわちΔR2(t)=1である。このとき、時刻tにおける変化量ΔR1(t)には、決定部140は0を設定する。ステップS332またはS337における処理が完了すると、処理はステップS340へ進められる。
【0024】
ステップS340において、決定部140は、時刻tにおける第1演算値R1(t)および第1演算値R1(t)とは異なる第2演算値R2(t)を演算し、時刻tにおける第2演算値R2(t)から第1演算値R1(t)を引いた差に基づいて、式(3)に示すように、時刻(t+1)における指標値X(t+1)を演算する。指標値X(t+1)は、時刻(t+1)における出力部120の入力インピーダンスZ(t+1)として、第1インピーダンス値Z1および第2インピーダンス値Z2のいずれか一方を決定するための指標を表す。なお、式(3)において、補正量δ(t)には、時刻tにおける、振動発電装置100で生じるノイズやエラーを含む揺らぎを考慮した値が設定される。
X(t+1)=R2(t)-R1(t)+δ(t) ・・・(3)
【0025】
ステップS340において、決定部140により演算される、時刻tにおける第1演算値R1(t)および第2演算値R2(t)は、式(4)および(5)に示される。すなわち、時刻tにおける第1演算値R1(t)および第2演算値R2(t)は、比例係数αを用いて、時刻tに対応する第1タイミングよりも前の時刻(t-1)に演算された第1演算値R1(t-1)および第2演算値R2(t-1)にそれぞれ比例する第1比例値αR1(t-1)および第2比例値αR2(t-1)と、上述した変化量ΔR1(t)および変化量ΔR2(t)とに基づき表される。なお、上述したように、ステップS310における判定処理に基づき、第1インピーダンス値Z1に対応するステップS320または第2インピーダンス値Z2に対応するステップS330が行われる。それぞれの結果に基づいて、第1インピーダンス値Z1に対応する変化量ΔR1(t)または第2インピーダンス値Z2に対応する変化量ΔR2(t)が得られる。このことから、式(4)で表される第1演算値R1(t)は第1インピーダンス値Z1に対応する演算値であり、式(5)で表される第2演算値R2(t)は第2インピーダンス値Z2に対応する演算値である。
R1(t)=ΔR1(t)+αR1(t-1) ・・・(4)
R2(t)=ΔR2(t)+αR2(t-1) ・・・(5)
【0026】
時刻tにおいて、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であるとき、すなわちステップS310で肯定判定が得られたときに行われる処理について説明する。まず、振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値P(t)が所定閾値である第1閾値P1より小さいと、判断部130により判断された場合、すなわちステップS320で肯定判定が得られた場合に行われる処理について説明する。この場合は、式(4)および(5)を用い、次のようにして第1演算値R1(t)および第2演算値R2(t)が演算される。時刻(t-1)に演算された第1比例値αR1(t-1)に上述した第1変化量である1が加えられることによって、時刻tにおける第1演算値R1(t)が得られる。また、時刻(t-1)に演算された第2比例値αR2(t-1)に等しい値として、時刻tにおける第2演算値R2(t)が得られる。
【0027】
時刻tにおいて、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であって、振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値P(t)が所定閾値である第1閾値P1より小さくないと、判断部130により判断された場合、すなわちステップS320で否定判定が得られた場合に行われる処理について説明する。この場合は、式(4)および(5)を用い、次のようにして第1演算値R1(t)および第2演算値R2(t)が演算される。時刻(t-1)に演算された第1比例値αR1(t-1)から上述した第2変化量であるwが減じられることによって、時刻tにおける第1演算値R1(t)が得られる。また、時刻(t-1)に演算された第2比例値αR2(t-1)に等しい値として、時刻tにおける第2演算値R2(t)が得られる。
【0028】
時刻tにおいて、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1とは異なる第2インピーダンス値Z2であるとき、すなわちステップS310で否定判定が得られたときに行われる処理について説明する。まず、振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値P(t)が所定閾値である第1閾値P1より小さいと、判断部130により判断された場合、すなわちステップS330で肯定判定が得られた場合に行われる処理について説明する。この場合は、式(4)および(5)を用い、次のようにして第1演算値R1(t)および第2演算値R2(t)が演算される。時刻(t-1)に演算された第2比例値αR2(t-1)から上述した第2変化量であるwが減じられることによって、時刻tにおける第2演算値R2(t)が得られる。また、時刻(t-1)に演算された第1比例値αR1(t-1)に等しい値として、時刻tにおける第1演算値R1(t)が得られる。
【0029】
時刻tにおいて、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1とは異なる第2インピーダンス値Z2であって、振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値P(t)が所定閾値である第1閾値P1より小さくないと、判断部130により判断された場合、すなわちステップS330で否定判定が得られた場合に行われる処理について説明する。この場合は、式(4)および(5)を用い、次のようにして第1演算値R1(t)および第2演算値R2(t)が演算される。時刻(t-1)に演算された第2比例値αR2(t-1)に上述した第1変化量である1が加えられることによって、時刻tにおける第2演算値R2(t)が得られる。また、時刻(t-1)に演算された第1比例値αR1(t-1)に等しい値として、時刻tにおける第1演算値R1(t)が得られる。
【0030】
ステップS350において、決定部140は、ステップS340で得られた時刻(t+1)における指標値X(t+1)が所定値よりも小さいか否かを判定する。所定値には0が設定されるのが好ましい。したがって、指標値X(t+1)が0よりも小さい場合は肯定判定され、指標値X(t+1)が0よりも小さくない場合は否定判定される。肯定判定が得られた場合、処理はステップS352へ進められ、否定判定が得られた場合、処理はステップS357へ進められる。
【0031】
ステップS352において、決定部140は、第1インピーダンス値Z1を、時刻(t+1)における出力部120の入力インピーダンスZ(t+1)として決定する。その後、上述したように第2タイミングである時刻(t+1)が時刻tに置き換えられてから、第1タイミングにおいて入力インピーダンスZを決定する処理が終了し、第2タイミングにおいて入力インピーダンスZを決定する処理が再び始まる。
【0032】
ステップS357において、決定部140は、第2インピーダンス値Z2を、時刻(t+1)における出力部120の入力インピーダンスZ(t+1)として決定する。その後、上述したように第2タイミングである時刻(t+1)が時刻tに置き換えられてから、第1タイミングにおいて入力インピーダンスZを決定する処理が終了し、第2タイミングにおいて入力インピーダンスZを決定する処理が再び始まる。
【0033】
なお、上述した第2変化量の値wは、例えば固定値1であるが、1以外の値であってもよいし、固定値でなくてもよい。時刻tにおけるステップS352およびS357で、第1インピーダンス値Z1および第2インピーダンス値Z2のいずれかが入力インピーダンスZとして選択された際の、次の時刻(t+1)におけるステップS320およびS330で肯定および否定のいずれかの判定結果が得られる確率に応じて、第2変化量の値wが得られることとしてもよい。さらに、第2変化量の値wが固定値の場合、補正量δ(t)は0であることとしてもよい。
【0034】
また、上述した式(4)および(5)で用いられる比例係数αの値は、0以上1以下であり(0≦α≦1)、過去の演算値による影響が考慮される程度に応じて定められる。比較的直前の影響のみを考慮することで出力部120の入力インピーダンスZを適切に設定することが可能であれば、比例係数αの値は小さくてよい。
【0035】
図4は、振動発電装置100の調整部150によって行われる、振動発電装置100の出力部120の入力インピーダンスZを調整する処理の一例を説明するための図である。上述したように、調整部150は、スイッチング回路122の切替動作を制御する制御回路を含む。
図4(A)に示すように、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vが、所定電圧値Vthを上回る電圧値に上昇すると(V>Vth)、スイッチング回路122は、調整部150による制御にしたがって、電力伝送の切替動作を行う。スイッチング回路122の状態はオフからオンへ変化し、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が開始される。
図4(B)に示すように、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vが、所定電圧値Vthを下回る電圧値に低下すると(V<Vth)、スイッチング回路122は、調整部150による制御にしたがって、電力伝送の切替動作を行う。スイッチング回路122の状態はオンからオフへ変化し、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が停止される。
【0036】
調整部150は、
図3を用いて上述した決定部140による入力インピーダンスZの決定に応じて、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更する。本実施の形態において、調整部150は、上述した所定電圧値Vthを変更することによって、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更し、その条件を、決定部140による入力インピーダンスZの決定に応じて変更することによって、出力部120の入力インピーダンスZを調整する。こうした調整部150による入力インピーダンスZの調整処理を、
図4(C)に示す。
【0037】
図4(C)に示す調整部150による入力インピーダンスZの調整処理は、決定部140により入力インピーダンスZ(t)が決定された時刻tに開始される。ステップS410において、調整部150は、決定部140により決定された入力インピーダンスZ(t)が、第1インピーダンス値Z1であるか否かを判定する。肯定判定が得られた場合、処理はステップS420へ進められ、否定判定が得られた場合、処理はステップS430へ進められる。
【0038】
ステップS420において、調整部150は、時刻tにおける所定電圧値Vth(t)を第1電圧値V1に設定する。所定電圧値Vth(t)=V1であるとき、出力部120の入力インピーダンスZ(t)は第1インピーダンス値Z1となる。ステップS420が完了すると、時刻tにおける入力インピーダンスZの調整処理は終了する。
【0039】
ステップS430において、調整部150は、時刻tにおける所定電圧値Vth(t)を第1電圧値V1よりも大きい第2電圧値V2に設定する。所定電圧値Vth(t)=V2であるとき、出力部120の入力インピーダンスZ(t)は第2インピーダンス値Z2となる。ステップS430が完了すると、時刻tにおける入力インピーダンスZの調整処理は終了する。
【0040】
本実施の形態における振動発電装置100によれば、以下の作用効果が得られる。
【0041】
(1)振動発電装置100は、電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子110と、負荷抵抗200に接続されると、振動発電素子110によって生成された電力を取り出す出力部120と、判断部130と、決定部140と、調整部150とを含む。判断部130は、振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値が所定閾値である第1閾値P1よりも大きいか否かを判断する。決定部140は、判断部130による判断結果に基づいて出力部120の入力インピーダンスZを決定する。調整部150は、決定部140による決定に応じて出力部120の入力インピーダンスZを調整する。したがって、振動発電装置100の出力部120により取り出される電力Pを、入力インピーダンスZに応じて変化させることが可能となり、振動発電装置100の発電効率を高められる場合があるという効果が得られる。
【0042】
(2)振動発電装置100において、決定部140は、判断部130による判断結果に基づいて演算される指標値Xに応じて、第1インピーダンス値Z1および第1インピーダンス値Z1とは異なる第2インピーダンス値Z2のいずれか一方を、出力部120の入力インピーダンスZとして決定する。決定部140は、第1タイミングである時刻tにおける判断部130による判断結果と、第1タイミングより前の時刻(t-1)における判断部130による判断結果とに基づき、第1タイミングより後の第2タイミングである時刻(t+1)における指標値X(t+1)を演算する。したがって、振動発電装置100の出力部120により電力Pが、一時的な電圧変動に影響されることなく安定的に取り出されるという効果が得られる。
【0043】
(3)振動発電装置100において、決定部140は、判断部130による判断結果に基づいて第1インピーダンス値Z1に対応する第1演算値R1(t)および第2インピーダンス値Z2に対応する第2演算値R2(t)を演算する。決定部140は、第1タイミングである時刻tにおける第2演算値R2(t)から、第1タイミングである時刻tにおける第1演算値R1(t)を引いた差に基づいて、第2タイミングである時刻(t+1)における指標値X(t+1)を演算する。この指標値X(t+1)の演算の際には補正量δ(t)が考慮される。決定部140は、指標値X(t+1)が所定値である0よりも小さい場合に第1インピーダンス値Z1を出力部120の入力インピーダンスZ(t+1)として決定し、指標値X(t+1)が所定値である0よりも大きい場合に第2インピーダンス値Z2を出力部120の入力インピーダンスZ(t+1)として決定する。したがって、出力部120の入力インピーダンスZとして第1インピーダンス値Z1が選択される可能性と、出力部120の入力インピーダンスZとして第2インピーダンス値Z2が選択される可能性との間の綱引き(TOW)を通じて、可能性の高い選択肢に決定されるという効果が得られる。
【0044】
(4)振動発電装置100において、第1タイミングである時刻tの出力部120の入力インピーダンスZ(t)が第1インピーダンス値Z1であるとき、判断部130により出力部120が取り出す電力Pの電力値が所定閾値である第1閾値P1より小さいと判断された場合は、第1タイミングより前の時刻(t-1)に演算された第1演算値R1(t-1)に比例する第1比例値αR1(t-1)に第1変化量である1が加えられることによって、第1タイミングである時刻tにおける第1演算値R1(t)が得られる。判断部130により出力部120が取り出す電力Pの電力値が所定閾値である第1閾値P1より大きいと判断された場合は、第1タイミングより前の時刻(t-1)に演算された第1演算値R1(t-1)に比例する第1比例値αR1(t-1)から第2変化量であるwが減じられることによって、第1タイミングである時刻tにおける第1演算値R1(t)が得られる。
【0045】
第1タイミングである時刻tの出力部120の入力インピーダンスZ(t)が第1インピーダンス値Z1とは異なる第2インピーダンス値Z2であるとき、判断部130により出力部120が取り出す電力Pの電力値が所定閾値である第1閾値P1より大きいと判断された場合は、第1タイミングより前の時刻(t-1)に演算された第2演算値R2(t-1)に比例する第2比例値αR2(t-1)に第1変化量である1が加えられることによって、第1タイミングである時刻tにおける第2演算値R2(t)が得られ、判断部130により出力部120が取り出す電力Pの電力値が所定閾値である第1閾値P1より小さいと判断された場合は、第1タイミングより前の時刻(t-1)に演算された第2演算値R2(t-1)に比例する第2比例値αR2(t-1)から第2変化量であるwが減じられることによって、第1タイミングである時刻tにおける第2演算値R2(t)が得られる。したがって、第2変化量であるwを実験に基づいて適切な値に設定することにより、安定的に効率性の高い電力Pが出力部120により取り出されるという効果が得られる。
【0046】
(5)振動発電装置100において、出力部120は、振動発電素子110から出力される交流電力を直流電力に変換して蓄電する第1蓄電回路121と、その直流電力の電圧を変換して蓄電する第2蓄電回路123と、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送を開始または停止する切替動作を行うスイッチング回路122とを有する。調整部150は、調整部150に含まれる制御回路により制御される電力伝送の切替動作が行われる条件を変更することによって、出力部120の入力インピーダンスZを調整する。従来の出力部120の回路構成に特別な変更を加える必要無く、出力部120の入力インピーダンスZを調整することが可能になるという効果が得られる。
【0047】
(6)振動発電装置100において、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vが、所定電圧値Vthを上回る電圧値に上昇したとき、または所定電圧値Vthを下回る電圧値に低下したとき、スイッチング回路122は電力伝送の切替動作を行う。調整部150に含まれる制御回路は、所定電圧値Vthを変更することによって、スイッチング回路122により電力伝送の切替動作が行われる条件を変更することができる。この場合、制御回路を比較的簡易な回路で構成することができるという効果が得られる。
【0048】
次のような変形も本発明の範囲内であり、以下に示す変形例の一つ、もしくは複数を上述した実施の形態と組み合わせることも可能である。
【0049】
(1)上述した一実施の形態において、振動発電装置100の判断部130が、振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値が所定閾値よりも大きいか否かを判断する際、所定閾値として第1閾値P1のみが用いられることとした。しかし、その所定閾値として、第1閾値P1のみならず複数種類の閾値が用いられることとしてもよい。その所定閾値として用いられる閾値の種類の数を、例えば、出力部120の入力インピーダンスZに設定され得るインピーダンス値の種類の数に等しい数とする。出力部120の入力インピーダンスZに第1インピーダンス値Z1または第2インピーダンス値Z2が設定され得る場合、所定閾値として、第1インピーダンス値Z1に対応する第1閾値P1とともに、第2インピーダンス値Z2に対応する第2閾値P2が用いられることとしてもよい。第2閾値P2は、第1閾値P1と同様に、決定部140によって決定される。
【0050】
所定閾値として第1閾値P1とともに用いられる第2閾値について、
図2を用いて説明する。振動発生装置の振動加速度Aが小さいときを初期状態として、この初期状態において、調整部150により、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値に調整されているものとする。振動加速度Aが0から増加するのに伴って振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値が増加し、さらに所定閾値である第1閾値P1を上回ると指標値Xが増加傾向になる。その指標値Xが所定値よりも小さくないと判断されると、調整部150が、出力部120の入力インピーダンスZを、第1インピーダンス値Z1から第2インピーダンス値Z2に変更する。すると、振動加速度Aがさらに増加するにつれてさらに大きな電力Pが得られるようになる。その後、逆に、振動加速度Aが減少するのに伴って振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値が減少し、さらに第1閾値P1ではない所定閾値である第2閾値P2を下回ると指標値Xが減少傾向になる。その指標値Xが所定値よりも小さいと判断されると、調整部150が、出力部120の入力インピーダンスZを、第2インピーダンス値Z2から第1インピーダンス値Z1に変更する。すると、振動加速度Aがさらに減少しても、入力インピーダンスZが変更されないと仮定した場合よりも大きな電力Pが得られるようになる。
【0051】
第2閾値P2は、出力部120の入力インピーダンスZ=Z2であるときの、加速度A2に対する電力値に対応し、
図2に示す変曲点Xにおける電力値Pxよりもやや大きい値が好ましい。
図2において、出力部120の入力インピーダンスZ=Z1であるときの電力Pのグラフと、入力インピーダンスZ=Z2であるときの電力Pのグラフとの交点Cにおける電力値Pxに対応する振動加速度A=Acとする。第2閾値P2が電力値Pxよりも大きい値に設定されると、入力インピーダンスZ=Z2であるときに振動加速度Aの値がAcを下回った場合(A<Ac)、上述した動作により、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1に決定される傾向が強まり、入力インピーダンスZが第2インピーダンス値Z2であるときよりも高い電力Pが得られる可能性が高くなる。第2閾値P2が電力値Pxよりも大きいことにより、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1に決定される方が大きな電力Pが得られるにも関わらず、出力部120の入力インピーダンスZが第2インピーダンス値Z2に決定されるといった好ましくない動作を防止できる可能性が高い。
【0052】
上述したように、第2閾値P2は電力値Pxよりも大きいものの、大き過ぎないことが好ましい。第2閾値P2(P2>Px)が電力値Pxに近い値に設定されると、振動加速度Aの範囲A>Acにおいて、上述した動作により、出力部120の入力インピーダンスZが第2インピーダンス値Z2に決定される傾向が強まり、入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であるときよりも高い電力Pが得られる可能性が高くなる。
【0053】
図5は、振動発電装置100の決定部140によって行われる、振動発電装置100の出力部120の入力インピーダンスZを決定する処理の他の例を示す図である。この入力インピーダンス決定処理は、本変形例における振動発電装置100の決定部140によって行われる。この
図5と、上述した一実施の形態における振動発電装置100の決定部140によって行われる入力インピーダンス決定処理を示す
図3との相違点は、
図3におけるステップS330の処理に代えて、
図5においてステップS331の処理が行われる点である。ステップS331において、決定部140は、時刻tにおいて振動発電素子110によって生成された電力Pの電力値P(t)が、所定閾値として設定された第2閾値P2よりも小さいか否かを判定する。肯定判定が得られた場合、すなわち電力値P(t)が第2閾値P2よりも小さいと判定された場合、処理はステップS332へ進められ、否定判定が得られた場合、すなわち電力値P(t)が第2閾値P2よりも小さくないと判定された場合、処理はステップS337へ進められる。
【0054】
本変形例における振動発電装置100において、入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であるとき、判断部130による判断に用いられる所定閾値は第1閾値P1であり、入力インピーダンスZが第2インピーダンス値Z2であるとき、所定閾値は第1閾値P1とは異なる第2閾値P2である。入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であるときの、振動発電素子110が有する電極の振動の加速度に応じた電力Pの電力値の増加が鈍化する変曲点Xに対応する特定の電力値Pxは、第1閾値P1よりも大きく、かつ第2閾値P2よりも小さい。したがって、入力インピーダンスZが第2インピーダンス値Z2であるときに振動加速度Aの値が低下した際の、振動発電素子110によって生成され振動発電装置100の出力部120により出力される電力Pが、より向上する可能性があるという効果が得られる。なお、本変形例において、振動発電素子110が有する固定電極の振動の加速度は、振動発生源である振動発生装置の振動加速度に等しい値であるものとする。
【0055】
(2)上述した一実施の形態において、振動発電装置100の出力部120の入力インピーダンスZには、第1インピーダンス値Z1および第2インピーダンス値Z2からなる2種類のインピーダンス値が設定され得ることとした。しかし、出力部120の入力インピーダンスZには、2種類よりも多い複数種類のインピーダンス値が設定され得ることとしてもよい。それら複数種類のインピーダンス値は、連続的に変更可能な設定値であることとしてもよい。
【0056】
(3)上述した一実施の形態において、振動発電装置100の出力部120が有するスイッチング回路122により電力伝送の切替動作が行われる条件は、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vと所定電圧値Vthとの関係に依存し、その所定電圧値Vthを変更することによって、その電力伝送の切替動作が行われる条件が変更されることとした。しかし、スイッチング回路122が電力伝送の切替動作を周期的に繰り返し行うこととし、電力伝送が開始されてから停止されるまでの時間と、電力伝送が停止されてから開始されるまでの時間とに基づくデューティ比を、調整部150に含まれる制御回路が変更することによって、電力伝送の切替動作が行われる条件が変更されることとしてもよい。
【0057】
図6は、振動発電装置の調整部150によって行われる、振動発電装置の出力部の入力インピーダンスを調整する処理の他の例を説明するための図である。この入力インピーダンス調整処理は、本変形例における振動発電装置100の調整部150によって行われる。上述したように、調整部150は、スイッチング回路122の切替動作を制御する制御回路を含む。
図6(A)に示すように、スイッチング回路122は、調整部150による制御にしたがって、時系列上、オフの状態からオンの状態に変化する切替動作と、オンの状態からオフの状態に変化する切替動作とを、周期Tで周期的に繰り返す。スイッチング回路122がオンの状態に変化すると、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が開始され、スイッチング回路122がオフの状態に変化すると、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が停止される。
【0058】
図6(A)において、当初は、周期Tのうち、電力伝送が開始されてから停止されるまでの電力伝送時間は第1時間h1であることから、周期Tと第1時間h1とに基づくデューティ比Dは、式(6)により得られる。このデューティ比Dは、調整部150によって演算される。
D=h1/T ・・・(6)
【0059】
次に、
図6(A)において、振動発電装置100の決定部140によって決定された出力部120の入力インピーダンスZに基づいて、調整部150が入力インピーダンスZを変更した場合、その後の期間において、周期Tのうち、電力伝送が開始されてから停止されるまでの電力伝送時間は第1時間h1よりも小さい第2時間h2であることから、周期Tと第2時間h2とに基づくデューティ比Dは、式(7)により得られる。
D=h2/T ・・・(7)
【0060】
すなわち、調整部150は、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が開始されてから停止されるまでの電力伝送時間と、その電力伝送が停止されてから開始されるまでの電力停止時間とに基づくデューティ比Dを変更することによって、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更する。
図6(A)に示すように、デューティ比Dが、式(6)に基づくh1/Tから、これよりも小さな値である式(7)に基づく値h2/Tに変更されることによって、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値Z1から第1インピーダンス値Z1よりも大きな第2インピーダンス値Z2に変更される。
【0061】
図6(B)に示すように、デューティ比Dが、上述した式(7)に基づく値h2/Tから、これよりも大きな値である式(6)に基づく値h1/Tに変更されることによって、出力部120の入力インピーダンスZは第2インピーダンス値Z2から第2インピーダンス値Z2よりも小さな第1インピーダンス値Z1に変更される。
【0062】
調整部150は、
図3または
図5を用いて上述した決定部140による入力インピーダンスZの決定に応じて、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更する。本変形例において、調整部150は、上述したデューティ比Dを変更することによって、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更し、その条件を、決定部140による入力インピーダンスZの決定に応じて変更することによって、出力部120の入力インピーダンスZを調整する。こうした調整部150による入力インピーダンスZの調整処理を、
図6(C)に示す。
【0063】
図6(C)に示す調整部150による入力インピーダンスZの調整処理は、決定部140により入力インピーダンスZ(t)が決定された時刻tに開始される。
図6(C)に示す入力インピーダンスZの調整処理は、
図4(C)とは、ステップS410の処理が共通するとともに、その後、ステップS420およびS430の処理に代えて、それぞれステップS620およびS630の処理が行われる点で相違する。ステップS410において、調整部150は、決定部140により決定された入力インピーダンスZ(t)が、第1インピーダンス値Z1であるか否かを判定する。肯定判定が得られた場合、処理はステップS620へ進められ、否定判定が得られた場合、処理はステップS630へ進められる。
【0064】
ステップS620において、調整部150は、デューティ比Dとして、式(6)を用いて得られる値h1/Tを設定する。デューティ比D=h1/Tであるとき、出力部120の入力インピーダンスZ(t)は第1インピーダンス値Z1となる。ステップS620が完了すると、時刻tにおける入力インピーダンスZの調整処理は終了する。
【0065】
ステップS630において、調整部150は、デューティ比Dとして、式(7)を用いて得られる値h2/Tを設定する。デューティ比D=h2/Tであるとき、出力部120の入力インピーダンスZ(t)は第2インピーダンス値Z2となる。ステップS630が完了すると、時刻tにおける入力インピーダンスZの調整処理は終了する。
【0066】
本変形例における振動発電装置100において、調整部150に含まれる制御回路は、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が繰り返し行われることにより得られる、電力伝送が開始されてから停止されるまでの電力伝送時間と、電力伝送が停止されてから開始されるまでの電力停止時間とに基づくデューティ比Dを、変更することによって、スイッチング回路122により電力伝送の切替動作が行われる条件を変更することができる。この場合、制御回路が、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作を制御しやすくなるという効果が得られる。また、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vの測定が不要であるため、その測定に伴う電流損失を防止できるという効果が得られる。
【0067】
本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態および各変形例における構成に何ら限定されない。
【符号の説明】
【0068】
100 振動発電装置、110 振動発電素子、120 出力部、
121 第1蓄電回路、122 スイッチング回路、123 第2蓄電回路、
130 判断部、140 決定部、150 調整部、200 負荷抵抗