(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】含フッ素有機化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25B 3/28 20210101AFI20231201BHJP
【FI】
C25B3/28
(21)【出願番号】P 2021570113
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000542
(87)【国際公開番号】W WO2021141120
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020001573
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲木 信介
(72)【発明者】
【氏名】信田 尚毅
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 智弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章広
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-348381(JP,A)
【文献】Angewandte Chemie International Edition,ドイツ,2018年03月05日,Volume 57, Issue 11,Pages 2924-2928
【文献】HFIPを溶媒として用いるスルフィド類の電解フッ素化,2014年電気化学秋季大会講演要旨集,2014年09月27日,第170頁
【文献】HFIP中でのKFを用いるスルフィド類の電解フッ素化,日本化学会第94春季年会(2014)講演予稿集,2014年03月12日,第1253頁
【文献】無機フッ化物塩を用いる選択的な電解フッ素化,電気化学会第78回大会講演要旨集,2011年03月29日,第425頁
【文献】支持電解質の使用量削減を志向したバイポーラ電解フッ素化法の開発,第41回フッ素化学討論会要旨集,2018年10月25日,第17-18頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素有機化合物(1)の製造方法であって、
有機化合物(2)を、
0.2M以上の金属フッ化物(但し、フッ化カリウムを除く)、及びフルオロアルコールの存在下で、電解フッ素化する工程A
を含み、前記工程Aが有機溶媒の存在下で実施される製造方法。
【請求項2】
前記含フッ素有機化合物(1)が、式(1):
R
1-(F)
n
[式中、
R
1は、有機基を表し、及び
nは、1以上の整数を表す。]
で表される含フッ素有機化合物であり、及び
前記有機化合物(2)が、式(2):
R
1-(H)
n、R
1-(SR
1a)
n、又はR
1-(=S)
n/2
[式中、
R
1及びnは、前記と同意義を表し、及び
R
1aは、有機基を表す。
但し、n/2は、1以上の整数である。]
で表される有機化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機基は、
1個以上の置換基を有していてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基である、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
nは、
2以上の整数である、
請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
R
1は、
ポリエーテル基である、
請求項2~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記含フッ素有機化合物(1)が、ケトン類、イミン類、スルフィド類、芳香族化合物、チオカルボニル化合物、又はポリエーテルである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属フッ化物は、
周期表1族に属する金属のフッ化物、及び周期表2族に属する金属のフッ化物からなる群より選択される1種以上の金属フッ化物(但し、フッ化カリウムを除く)である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属フッ化物は、
フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、及びフッ化セシウムからなる群より選択される1種以上の金属フッ化物である、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記フルオロアルコールは、
C
1-14フルオロアルコールである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記フルオロアルコールは、
そのフッ素含量が50~80質量%の範囲内であるフルオロアルコールである、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記工程Aの電解フッ素化の開始時における、有機化合物(2)1モル当たりの、フルオロアルコール及び有機溶媒の総体積が、0.1~100Lの範囲内である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記工程Aの電解フッ素化の開始時における、前記フルオロアルコールの前記有機溶媒に対する体積比が、1/100(v/v)以上である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記工程Aにおける、前記金属フッ化物の濃度は、
0.2~5Mの範囲内である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
工程Aの温度は、
0℃以上である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
0.2M以上の金属フッ化物(但し、フッ化カリウムを除く)、フルオロアルコール、及び有機溶媒を含有する
電解フッ素化剤であって、前記有機溶媒が、アルコール溶媒、非芳香族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ニトリル溶媒、スルホキシド溶媒、アミド溶媒、ニトロ溶媒、及びカーボネート溶媒から選択される少なくとも一種である電解フッ素化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は含フッ素有機化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素有機化合物の製造方法としては、例えば、電解フッ素化が、知られている。電解フッ素化の方法としては、例えば非特許文献1に記載の方法が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Sawamuraら, Angew.Chem.Int.Ed.2012,51,4413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、含フッ素有機化合物の、新たな電解フッ素化による製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.
含フッ素有機化合物(1)の製造方法であって、
有機化合物(2)を、
0.2M以上の金属フッ化物、及びフルオロアルコールの存在下で、電解フッ素化する工程A
を含む製造方法。
項2.
前記含フッ素有機化合物(1)が、式(1):
R1-(F)n
[式中、
R1は、有機基を表し、及び
nは、1以上の整数を表す。]
で表される含フッ素有機化合物であり、及び
前記有機化合物(2)が、式(2):
R1-(H)n、R1-(SR1a)n、又はR1(=S)n/2
[式中、
R1及びnは、前記と同意義を表し、及び
R1aは、有機基を表す。
但し、n/2は、1以上の整数である。]
で表される有機化合物である、項1に記載の製造方法。
項3.
前記有機基は、
1個以上の置換基を有していてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基である、
項2に記載の製造方法。
項4.
nは、
2以上の整数である、
項2又は3に記載の製造方法。
項5.
R1は、
ポリエーテル基である、
項2~4のいずれか一項に記載の製造方法。
項6.
前記含フッ素有機化合物(1)が、ケトン類、イミン類、スルフィド類、芳香族化合物、チオカルボニル化合物、又はポリエーテルである、項1に記載の製造方法。
項7.
前記金属フッ化物は、
周期表1族に属する金属のフッ化物、及び周期表2族に属する金属のフッ化物からなる群より選択される1種以上の金属フッ化物である、
項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
項8.
前記金属フッ化物は、
フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、及びフッ化セシウムからなる群より選択される1種以上の金属フッ化物である、
項7に記載の製造方法。
項9.
前記フルオロアルコールは、
C1-14フルオロアルコールである、
項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
項10.
前記フルオロアルコールは、
そのフッ素含量が50~80質量%の範囲内であるフルオロアルコールである、
項9に記載の製造方法。
項11.
前記工程Aが有機溶媒の存在下で実施され、及び
前記工程Aの電解フッ素化の開始時における、有機化合物(2)1モル当たりの、フルオロアルコール及び有機溶媒の総体積が、0.1~100Lの範囲内である、
項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
項12.
前記工程Aが有機溶媒の存在下で実施され、及び
前記工程Aの電解フッ素化の開始時における、前記フルオロアルコールの前記有機溶媒に対する体積比が、1/100(v/v)以上である、
項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
項13.
前記工程Aにおける、前記金属フッ化物の濃度(系中の液体成分全体に対する金属フッ化物の濃度)は、
0.2~5Mの範囲内である、
項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
項14.
工程Aの温度は、
0℃以上である、
項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
項15.
0.2M以上の金属フッ化物、フルオロアルコール、及び有機溶媒を含有する組成物。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、新たな含フッ素有機化合物の製造方法等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の製造方法等の詳細、及び形態を説明するが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その詳細、及び形態の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0008】
以下の実施形態の構成要素の組み合わせ、及び代替が可能なことは、技術常識に照らして、当業者によって理解され得る。
【0009】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示の製造方法等が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」の意味は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含し得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「Cn~Cm」(ここで、n、及びmは、それぞれ、1以上の整数であり、n<mである。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0010】
本明細書中、特に限定の無い限り、「ハロ(基)」の例は、フルオロ(基)、クロロ(基)、ブロモ(基)、及びヨード(基)を包含できる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「ハロゲン(原子)」の例は、フッ素(原子)、塩素(原子)、臭素(原子)、及びヨウ素(原子)を包含できる。
【0011】
本明細書中、「有機基」とは、1個以上の炭素原子を含有する基(又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基)を意味する。
【0012】
本明細書中、特に限定の無い限り、「ヘテロ原子」は、水素及び炭素以外の原子を意味し得る。
本明細書中、特に限定の無い限り、特に限定の無い限り、「ヘテロ原子」の例は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を包含する。
【0013】
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」は、その構成原子として1個以上の炭素原子を含有する基を意味する。
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」の例は、
(1)ヒドロカルビル(これは、1個以上の置換基を有していてもよい。)、
(2)ヒドロカルビル(これは、1個以上の置換基を有していてもよい。)に1個以上のヘテロ原子が挿入された基[本明細書中、これを「ヘテロヒドロカルビル」と称する場合がある。)]、
を包含する。
当該置換基の例は、ハロ、ニトロ、シアノ、オキソ、チオキソ、スルホ、スルファモイル、スルフィナモイル、及びスルフェナモイルを包含する。
【0014】
本明細書中、特に限定のない限り、「ヒドロカルビル(基)」は、その構成原子として、1個以上の炭素原子、及び1個以上の水素原子を含有する基を意味する。
【0015】
前記「(1)ヒドロカルビル」の例は、1個以上の芳香族ヒドロカルビル基で置換されていてもよい脂肪族ヒドロカルビル基(例:ベンジル基)、及び1個以上の脂肪族ヒドロカルビル基で置換されていてもよい芳香族ヒドロカルビル基(狭義のアリール基)を包含する。
本明細書中、(ヘテロ)アリール基は、狭義のアリール基、及びヘテロアリール基を包含する。
【0016】
前記「(2)ヒドロカルビル基に1個以上のヘテロ原子が挿入された基」(ヘテロヒドロカルビル基)の例は、5~6員ヘテロアリール基、及び当該5~6員ヘテロアリール基にベンゼン環が縮合している基、アルコキシ基、エステル基、エーテル基、及び複素環基を包含する。
【0017】
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族ヒドロカルビル(基)」は、直鎖状、分岐状、環状、又はそれらの組み合わせであることができる。
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族ヒドロカルビル(基)」は、飽和又は不飽和であることができる。
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族ヒドロカルビル(基)」の例は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルキル基を包含する。
【0018】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキル(基)」の例は、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びヘキシル等の、直鎖状又は分岐状の、炭素数1~10のアルキル基を包含する。
【0019】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルケニル(基)」の例は、直鎖状又は分岐状の、炭素数1~10のアルケニル基(例:ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、及び5-ヘキセニル等)を包含する。
【0020】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキニル(基)」の例は、直鎖状又は分岐状の炭素数2~6のアルキニル基(例:エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、及び5-ヘキシニル)を包含する。
【0021】
本明細書中、特に限定のない限り、「シクロアルキル(基)」の例は、炭素数3~8のシクロアルキル基(例:シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチル)を包含する。
【0022】
本明細書中、特に限定のない限り、「芳香族ヒドロカルビル(基)[アリール(基)]」としては、例えば、フェニル、ナフチル、フェナンスリル、アンスリル、及びピレニルが例示される。
【0023】
本明細書中、特に限定のない限り、用語「アラルキル(基)」は、通常理解される通り、1個のアリール基で置換されたアルキル基を意味し得る。
【0024】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルコキシ(基)」は、例えば、RO-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0025】
本明細書中、特に限定のない限り、「エステル基」は、エステル結合(すなわち、-C(=O)-O-、または-O-C(=O)-)を有する有機基を意味する。
その例は、
式:RCO2-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基、及び
式:Ra-CO2-Rb-(当該式中、Raはアルキル基であり、及びRbはアルキレン基である。)で表される基
を包含する。
【0026】
本明細書中、特に限定のない限り、「エーテル基」は、エーテル結合(-O-)を有する基を意味する。
「エーテル基」の例は、ポリエーテル基を包含する。
ポリエーテル基の例は、式:Ra-(O-Rb)n-(当該式中、Raはアルキル基であり、Rbは各出現において同一又は異なって、アルキレン基であり、及びnは1以上の整数である。)で表される基を包含する。
アルキレン基は前記アルキル基から水素原子を1個除去して形成される2価の基である。
「エーテル基」の例は、また、ヒドロカルビルエーテル基を包含する。
ヒドロカルビルエーテル基は、1個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基を意味する。「1個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基」は、1個以上のエーテル結合が挿入されているヒドロカルビル基であることができる。その例は、ベンジルオキシ基を包含する。
「1個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基」の例は、1個以上のエーテル結合を有するアルキル基を包含する。
「1個以上のエーテル結合を有するアルキル基」は、1個以上のエーテル結合が挿入されているアルキル基であることができる。本明細書中、このような基をアルキルエーテル基と称する場合がある。
【0027】
本明細書中、特に限定のない限り、「アシル(基)」は、アルカノイル基を包含する。本明細書中、特に限定のない限り、「アルカノイル(基)」は、例えば、RCO-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0028】
本明細書中、「5~6員ヘテロアリール(基)」の例は、
環構成原子として、酸素、硫黄、及び窒素からなる群より選択される1個以上(例:1個、2個、又は3個)のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロアリール基[例:ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、フリル(例:2-フリル、3-フリル)、チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、イソキサゾリル(例:3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル)、オキサジアゾリル(例:1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)、チアジアゾリル(例:1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル)、テトラゾリル、ピリジル(例:2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル)、及びピラジニル等を包含する。]
を包含する。
【0029】
製造方法
本開示の一態様である製造方法は、
含フッ素有機化合物(1)の製造方法であって、
有機化合物(2)を、
0.2M以上の金属フッ化物、及びフルオロアルコールの存在下で、電解フッ素化する工程A
を含む。
【0030】
本開示において、反応基質である有機化合物(2)としては、例えば、
(2-1)ケトン類(例:1,3-ジケトン等のジケトン、β-ケトカルボン酸、β-ケトエステル)、イミン類(例:シッフ塩基、ヒドラゾン)、
(2-2)スルフィド類、
(2-3)芳香族化合物(例:芳香族炭化水素、フェニルヒドラジン誘導体、フェノール誘導体、2-ナフトール誘導体、アニリン誘導体)、
(2-4)チオカルボニル化合物
が挙げられる。
なお、本開示における、有機化合物のフッ素化は、水素原子がフッ素原子に置換されることに加えて、後記の各丸括弧内に示すように、以下の原子、又は基などがフッ素原子に置換されること(置き換えられること)を意味する:水素原子(CH→CF)、ヒドラジノ基(C-NHNH2→C-F;C=N-NH2→CF2)。
以下に、本開示の製造方法におけるフッ素化を例示する。これにより、本開示の製造方法によって得られる含フッ素有機化合物(1)もまた例示される。
【0031】
なお、本開示において、置換基を有してもよいとは、置換基を有する場合(すなわち、置換)と置換基を有していない場合(すなわち、無置換)を意味する。例えば、置換基を有してもよいアルキル基とは、アルキル基(すなわち、無置換のアルキル基)と置換基を有するアルキル基(すなわち、置換アルキル基)とを意味する。
【0032】
(2-1)ケトン類(ジケトン、β-ケトカルボン酸、β-ケトエステルを含む)、シッフ塩基、及びヒドラゾン等のイミン類のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、以下の反応(2-1-1)~(2-1-4)のいずれかが行われる。
【化1】
[式中、
Xは、各出現において、同一又は異なって、O又はNR’(R’は、水素原子、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよい複素環基、1個以上の置換基を有してもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、1個以上の置換基を有してもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、アシル基、アシルアミノ基を示す。)を示す。
R
2は、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよい複素環基、1個以上の置換基を有してもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有してもよいアリールオキシ基、1個以上の置換基を有してもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、アシル基、又はアシルアミノ基を示す。
R
2a及びR
2bは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよい複素環基、1個以上の置換基を有してもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有してもよいアリールオキシ基、1個以上の置換基を有してもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、アシル基、又はアシルアミノ基を示す。
R
2とR
2aは互いに結合して環状構造を形成してもよい。]
【0033】
環状構造としては、1個以上の置換基を有してもよい脂肪族4~7員環などが挙げられる。
【0034】
R2は、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はモノアルキルアミノ基であることが好ましい。R’、R2a、及びR2bは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はモノアルキルアミノ基であることが好ましい。
【0035】
ケトン類としては、ジアルキルケトン(例:アセトン、メチルエチルケトン)、ジケトン類(例:アセチルアセトン、アセト酢酸、アセト酢酸エステル)、シクロアルカノン(例:シクロヘキサノン)、アルキルアリールケトン(例:アセトフェノン、プロピオフェノン)、ジアリールケトン(例:ベンゾフェノン)、4-ピペリドン、1-オキソ-1,2-ジヒドロナフタレン、アリール(アリールアルケニル)ケトン(例:ベンジリデンアセトフェノン(カルコン))、及びアリールアラルキルケトン(例:デオキソベンゾイン)、並びにこれらのケタールなどが挙げられる。
【0036】
シッフ塩基、及びヒドラゾン等のイミン類としては、ケトン又はアルデヒドと適当な第一級アミンやヒドラジンとの縮合物が挙げられる。
【0037】
(2-2)スルフィド類(ジチオアセタール、ジチオケタールを含む)のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、S原子の隣のメチレンの水素原子の1個又は2個[又は-CHQ-(Qは有機基である)の水素原子の1個]をフッ素原子に置換する又は-SQ(Qは有機基である)をフッ素で置換する反応が行われる。当該フッ素化では、例えば、以下の反応(2-2-1)~(2-2-7)のいずれかが行われる。
【化2】
[式中、
R
3a、R
3a’、及びR
3a’’は、同一又は異なって、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基、又は1個以上の置換基を有してもよい複素環基を示すか、或いは
R
3aとR
3a’が、又はR
3a’とR
3a’’が、一緒になって、1個以上の置換基を有してもよい脂肪族4~7員環を示す。
R
3、及びR
3bは、同一又は異なって、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよい複素環基、1個以上の置換基を有してもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、1個以上の置換基を有してもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、アシル基、アシルアミノ基、シアノ基、1個以上の置換基を有してもよいアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有してもよいアリールスルフィニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有してもよい複素環基の結合したスルフィニル基、1個以上の置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有してもよいアリールスルホニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキルスルホニル基、又は1個以上の置換基を有してもよい複素環基の結合したスルホニル基を示すか、或いは
R
3及びR
3bは、これらが結合する炭素原子と共に、ヘテロ原子を介し、又は介することなく互いに結合して4~8員環を形成してもよい(該環は、ハロゲン原子、オキソ基、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、シアノ基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。)。
R
3c及びR
3dは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよい複素環基、1個以上の置換基を有してもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、1個以上の置換基を有してもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、アシル基、アシルアミノ基、又はシアノ基を示すか、或いは
R
3cとR
3dは、これらが隣接する炭素原子と共に、互いに結合して、飽和又は不飽和の1個以上の置換基を有する脂肪族4~7員環を形成していてもよい(該環は、ハロゲン原子、オキソ基、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、シアノ基、及びアミノ基からなる群より選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。)。]
【0038】
R3a、R3a’、及びR3a’’は、それぞれ、アルキル基、アリール基、又はアルケニル基であることが好ましい。R3、R3b、R3c、及びR3dは、それぞれ、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、又はシアノ基であることが好ましい。
【0039】
スルフィド類としては、ジアルキルスルフィド(例:メチルエチルスルフィド)、アルキルアラルキルスルフィド(例:メチルベンジルスルフィド)、2-アリールチオ酢酸エステル(例:2-フェニルチオ酢酸エステル)、アルキル(アリールチオ)ケトン(例:2-(フェニルチオ)アセトフェノン)、アルキル(アルキルチオ)ケトン(例:2-(メチルチオ)アセトフェノン)、2-アリールオキシ-2-(アリールチオ)アセトニトリル(例:2-フェノキシ-2-(フェニルチオ)アセトニトリル)、ビス(アルキルチオ)アルキルアレーン(例:ビス(メチルチオ)メチルベンゼン)、ビス(アリールチオ)ジアリールメタン(例:ビス(フェニルチオ)ジフェニルメタン)、2位に1個以上の置換基を有する1,3-ジチアン(例:2-オクチル-1,3-ジチアン)、2位に1個以上の置換基を有する1,3-ジチオラン(例:2-フェニル-2-トリフルオロメチル-1,3-ジチオラン、2,2-ジフェニル-1,3-ジチオラン)、トリス(アルキルチオ)アルカン(例:トリス(エチルチオ)ヘキサン)、及びトリス(アルキルチオ)アルキルアレーン(例:α,α,α-トリス(メチルチオ)トルエン)などが挙げられる。
【0040】
(2-3)芳香族化合物のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、以下の反応(2-3-1)~(2-3-5)のいずれかが行われる。反応(2-3-1)~(2-3-4)では、芳香性部分にフッ素置換基が導入される。反応(2-3-2)又は(2-3-4)で示されるように、フェノール誘導体又はアニリン誘導体の芳香環へのフッ素化は、フッ素化後、亜鉛末等の還元剤で還元することにより行うことができ、目的とするフッ素化物を得ることができる。
【0041】
(2-3-1)フェニルヒドラジン誘導体のフッ素化
当該フッ素化では、1個以上の置換基を有してもよいフェニルヒドラジン残基(-NHNH
2)をフッ素原子に置換することができる。
【化3】
[式中、R
5a、R
5b、R
5c、R
5d、及びR
5eは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、アリールカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルチオ基を示す。]
【0042】
(2-3-2)フェノール誘導体のフッ素化
当該フッ素化では、フェノール誘導体は、例えば、下記に示すジフルオロ化したキノノイド構造となり、次いで還元することにより、ヒドロキシル基のオルト位又はパラ位にフッ素が導入されたフェノール誘導体が生成する。
【0043】
【化4】
[式中、R
5a、R
5b、R
5c、及びR
5dは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、アリールカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、又はアルキルチオ基を示す。]
【0044】
なお、オルト及びパラ位の全てが置換された出発原料では、オルト又はパラ位にフッ素原子が導入され、フルオロ化したキノノイド構造の化合物が生成する。
【0045】
上記の例では、フェノール誘導体として1個以上の置換基を有してもよいフェノールを用いたが、水酸基又はアルコキシ基などの電子供与性基を有し、及び更に置換されていてもよいベンゼン系芳香族化合物又は縮合多環炭化水素にも同様にフッ素原子を導入することができる。
【0046】
(2-3-3)2-ナフトール誘導体のフッ素化
当該フッ素化では、ナフトールの1位をモノ-又はジ-フッ素化することができる。
【化5】
[式中、
R
5a、R
5b、R
5c、R
5d、R
5e、及びR
5fは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、アリールカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、又はアルキルチオ基を示す。
R
5gは、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、アリールカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、又はアルキルチオ基を示す。]
【0047】
(2-3-4)アニリン誘導体のフッ素化
当該フッ素化において、アニリン誘導体もまたフェノール誘導体と同様に、例えば、下記に示すジフルオロ化したキノノイド構造となり、次いで還元することにより、オルト位又はパラ位にフッ素が導入されたアニリン誘導体が生成する。
【化6】
[式中、R
5a、R
5b、R
5c、及びR
5dは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、アリールカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルチオ基を示す。]
【0048】
上記の例では、アニリン誘導体として1個以上の置換基を有してもよいアニリンを用いたが、1個以上の置換基を有してもよいナフチルアミンでも同様に芳香環にフッ素原子を導入することができる。
【0049】
(2-3-5)(ヘテロ)アリールメチル部含有化合物のフッ素化
下記式で表すように、(ヘテロ)アリールメチル部含有化合物における(ヘテロ)アリールメチル部の1位(例:ベンジル部含有化合物のベンジル位)の炭素をモノ-又はジ-フッ素化することができる。
Ar-CHR’-R → Ar-CFR’-R 及び/又は
Ar-CF2-R
[式中、
Arは、1個以上の置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基(例:5~6員芳香環基)を示し、
Rは、アルキル基、-C(=O)-ORs、-NRs、-C(=O)-Rs、-C(=O)-Rs、-CN、又は1個以上の置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基(例:5~6員芳香環基)を示し、
R’は、-H、アルキル基-C(=O)-ORs、-NRs、-C(=O)-Rs、-C(=O)-Rs、-CN、又は1個以上の置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基(例:5~6員芳香環基)を示し、及び
Rsは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、アリールカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、又はアルキルチオ基を示す。]
【0050】
前記5~6員芳香環基は、フェニル基、又は5~6員ヘテロアリール基であることができる。
【0051】
(ヘテロ)アリールメチル部含有化合物としては、例えば、トリアリールメタン(例:トリフェニルメタン)、アリールジアルキルメタン(例:4-ブロモクメン)、アリール酢酸エステル(例:(4-メトキシフェニル)酢酸エチル)が挙げられる。
【0052】
(2-4)チオカルボニル化合物(チオケトン、チオエステル、チオ炭酸エステル、チオアミド、ジチオカルボン酸エステル、ジチオカルバメートを含む)のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、以下の反応(2-4-1)又は(2-4-2)が行われる:
【化7】
[式中、
R
6及びR
6aは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよい複素環基、1個以上の置換基を有してもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有してもよいアリールオキシ基、1個以上の置換基を有してもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、アシル基、アシルアミノ基を示す。
R
6とR
6aは互いに結合して環状構造を形成してもよい。
R
6bは、1個以上の置換基を有してもよいアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有してもよいアリール基、1個以上の置換基を有してもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有してもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有してもよい複素環基を示す。]
【0053】
R6、R6a、及びR6bは、それぞれ、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又はアルケニル基であることが好ましい。
【0054】
チオカルボニル化合物としては、ジチオ炭酸O-アリールS-アルキル(例:ジチオ炭酸O-(4-イソプロピルフェニル)S-メチル、ジチオ炭酸O-(4-ブロモフェニル)S-メチル)、((アルキルチオ)カルボノチオイル)オキシ安息香酸エステル(例:4-(((メチルチオ)カルボノチオイル)オキシ)安息香酸エチル)、ジチオ炭酸O-アルキルS-アルキル(例:ジチオ炭酸O-デシルS-メチル)、ジチオ炭酸O-アラルキルS-アルキル(例:ジチオ炭酸O-(3-フェニルプロピル)S-メチル)、シクロアルカンカルボチオン酸O-アルキル(例:シクロヘキサンカルボチオ酸O-メチル)、ヘテロアレーンカルボチオ酸O-アルキル(例:1-ピペリジンカルボチオ酸O-プロピル)、ジチオ安息香酸エステル(例:ジチオ安息香酸メチル)、ジアリールチオケトン(例:チオベンゾフェノン)、チオ安息香酸エステル(例:チオ安息香酸O-フェニル)、N,N-ジアルキルアリールチオアミド(例:N,N-ジメチルフェニルチオアミド)、ジチオカルボン酸エステル(例:3-キノリンジチオカルボン酸エチル)、フルオロアルカンカルボチオイルアレーン(例:トリフルオロメタンカルボチオイルナフタレン)、N-アルキル-N-アリールフルオロアルカンチオアミド(例:N-メチル-N-フェニルトリフルオロメタンチオアミド)、N-アラルキル-N-アリールフルオロアルカンチオアミド(例:N-ベンジル-N-フェニルヘプタフルオロプロパンチオアミド)、ジチオ炭酸O-シクロアルキルS-アルキル(例:ジチオ炭酸O-(4’-ペンチル-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-イル)S-メチル)、
【化8】
などが挙げられる。
【0055】
(2-5)ポリエーテルのフッ素化
当該フッ素化では、例えば、エーテル結合を構成する酸素原子に隣接する炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子に置き換わることができるが、これに限定されない。当該フッ素化において導入されるフッ素原子の数は、特に限定されないが、例えば1個である。
【0056】
ポリエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、式(1A):
R7a-(O-R7b)p-O-R7c
[式中、
R7a及びR7cは、同一又は異なって、有機基を表し、
R7bは、アルキレン基を表し、及び
pは、0又は1以上の整数である。]
で表される化合物である。
R7a及びR7cは、それぞれ、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基であることが好ましい。R7bは、C2-4アルキレン基であることが好ましい。
pは、例えば、50以下、40以下、30以下、又は20以下であることができる。
式(1A)で表される化合物の例としては、エチレングリコールジC1-4アルキルエーテル(例:モノグライム)、ポリエチレングリコールジC1-4アルキルエーテル(例:ジグライム、トリグライム)などが挙げられる。
【0057】
当該一態様の好適な一例においては、
前記含フッ素有機化合物(1)が、式(1):
R1-(F)n
[式中、
R1は、有機基を表し、及び
nは、1以上の整数を表す。]
で表される含フッ素有機化合物であり、及び
前記有機化合物(2)が、式(2):
R1-(H)n、R1-(SR1a)n、R1-(NH-NH2)n、R1-(N=NR1b)n、R1(=N-NHR1c)n/2、又はR1(=S)n/2
[式中、
R1及びnは前記と同意義を表し、及び
R1a~R1cは、同一又は異なって、有機基である。]
で表される有機化合物である。なお、式(2)がR1(=N-NHR1c)n/2又はR1(=S)n/2である場合、n/2は1以上の整数、すなわち、nは2の倍数である。
【0058】
R1及びR1aで表される有機基は、その内部に、1個以上のフルオロ基を含有していてもよい。
【0059】
前記有機基は、
好ましくは、1個以上の置換基を有していてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基
である。
【0060】
本開示の製造方法では、基質である有機化合物(2)に1個以上のFが導入され、好ましくは、2個以上のFが導入される。このことと関係して、前記式(1)及び前記式(2)において、nは、好ましくは、2以上の整数である。nは、有機化合物(2)に置換可能な最大数以下の整数である。R1で表される有機基は、nが2以上の整数である場合、「用語」に記載される1価の基から、さらにn-1個の水素原子を除去して形成されるn価の基である。
本開示の製造方法では、例えば、1個のFが導入された目的物、及び2個のFが導入された目的物の両方が得られ得る。
【0061】
一実施態様において、式(2)はR1-Hであり、R1は、好ましくは、トリアリールメタン残基(又はトリアリールメチル基)である。
【0062】
一実施態様において、式(2)はR1-Hであり、R1は、好ましくは、ポリエーテル基である。
【0063】
一実施態様において、式(2)はR1-(H)2であり、
R1は、好ましくは、
>C(C(=O)Q1)(C(=O)Q2)
[式中、Q1及びQ2は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、又は有機基(例:アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基)である。]、又は
>C(CO2Q3)(SQ4)
[式中、Q3及びQ4は、同一又は異なって、水素原子又は有機基(例:アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基)である。]
である。
【0064】
一実施態様において、式(2)はR1-(SR1a)2であり、
R1は、好ましくは、
>CQ5Q6
[式中、Q5及びQ6は、同一又は異なって、有機基(例:アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基)である。]
であり、
R1aは、好ましくは、各出現において独立して
有機基(例:アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基)
であるか、或いは、R1a同士が結合して環構造を形成していてもよい。
【0065】
一実施態様において、式(2)はR1=Sであり、
R1は、好ましくは
=CQ7Q8
[式中、Q7及びQ8は、同一又は異なって、有機基(例:アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はアラルキルオキシ基)である。]
である。
【0066】
一実施態様において、式(2)はR1-NH-NH2であり、R1は、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基である。
【0067】
一実施態様において、式(2)はR1-N=NR1bであり、R1は、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基であり、R1bは、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基である。
【0068】
一実施態様において、式(2)はR1=N-NHR1cであり、
R1は、好ましくは
=CQ9Q10
[式中、Q9及びQ10は、同一又は異なって、有機基(例:アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基)である。]
である。
【0069】
前記金属フッ化物は、工程Aにおいて、支持塩(支持電解質)として機能し得る。
前記金属フッ化物は、
好ましくは、周期表1族に属する金属のフッ化物、及び周期表2族に属する金属のフッ化物からなる群より選択される1種以上の金属フッ化物であり;及び
より好ましくは、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、及びフッ化セシウム、及びフッ化カルシウムからなる群より選択される1種以上の金属フッ化物である。
【0070】
前記フルオロアルコールは、工程Aにおいて、電解液として機能し得る。
前記フルオロアルコールは、
好ましくは、C1-14フルオロアルコール
である。
【0071】
前記フルオロアルコールは、好ましくは、
RfCH2OH、又はRf2CHOH(式中、Rfは、各出現において独立して、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロアルコールである。
前記フルオロアルコールの具体例は、
2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールを包含し、及び
その好適な例は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールを包含する。
前記フルオロアルコールは、
好ましくは、そのフッ素含量が50質量%以上であるフルオロアルコール、
より好ましくは、フッ素含量が55質量%以上であるフルオロアルコール、及び
更に好ましくは、フッ素含量が60質量%以上であるフルオロアルコール
である。
前記フルオロアルコールは、
好ましくは、フッ素含量が80質量%以下であるフルオロアルコール、
より好ましくは、フッ素含量が75質量%以下であるフルオロアルコール、及び
更に好ましくは、フッ素含量が70質量%以下であるフルオロアルコール
である。
前記フルオロアルコールは、
好ましくは、フッ素含量が50~80質量%の範囲内であるフルオロアルコール、
より好ましくは、フッ素含量が55~75質量%の範囲内であるフルオロアルコール、及び
更に好ましくは、フッ素含量が60~70質量%の範囲内であるフルオロアルコール
である。
当該フッ素含量(質量%)は、フルオロアルコールの一分子中のフッ素の質量の割合を意味する。
【0072】
工程Aの反応は、有機溶媒の存在下、又は不存在下で実施され得る。当該有機溶媒の具体例については、後述する。
好ましくは、前記工程Aが有機溶媒の存在下で実施される。
前記工程Aの電解フッ素化の開始時における、有機化合物(2)1モル当たりの、フルオロアルコール及び有機溶媒の総体積は、
好ましくは、0.1L以上;
より好ましくは、1L以上:及び
更に好ましくは、2L以上
である。
前記工程Aの電解フッ素化の開始時における、有機化合物(2)1モル当たりの、フルオロアルコール及び有機溶媒の総体積は、
好ましくは、100L以下
より好ましくは、50L以下及び
更に好ましくは、30L以下
である。
前記工程Aの電解フッ素化の開始時における、有機化合物(2)1モル当たりの、フルオロアルコール及び有機溶媒の総体積は、
好ましくは、0.1~100Lの範囲内;
より好ましくは、1~50Lの範囲内:及び
更に好ましくは、1~30Lの範囲内
である。
【0073】
前記工程Aが有機溶媒の存在下で実施される場合、
前記工程Aの電解フッ素化の開始時における、前記フルオロアルコールの前記有機溶媒に対する体積比は、
好ましくは1/100(v/v)以上、
より好ましくは、0.2~2(v/v)の範囲内:及び
更に好ましくは、0.5~1(v/v)の範囲内
である。
【0074】
前記工程Aにおける、前記金属フッ化物の濃度(系中の液体成分全体に対する金属フッ化物の濃度)は、
好ましくは、0.2M(mol/L)以上、
より好ましくは、0.2~5M(mol/L)の範囲内
更に好ましくは、0.2~2M(mol/L)の範囲内:及び
より更に好ましくは、0.2~1M(mol/L)の範囲内
である。
【0075】
工程Aの温度の下限は、
好ましくは0℃、
より好ましくは5℃、
及び更に好ましくは10℃であることができる。
工程Aの温度の上限は、
好ましくは150℃、
より好ましくは120℃、
及び更に好ましくは100℃であることができる。
工程Aの温度は、
好ましくは0~150℃の範囲内、
より好ましくは0~120℃の範囲内、
更に好ましくは0~100℃の範囲内である。
当該温度であることにより、
工程Aの温度の上限は、より低い方が、副反応を抑制し得る傾向がある。
工程Aの温度の下限は、より高い方が、目的の反応の進行が促進される傾向がある。
工程Aは、室温下で実施され得る。
【0076】
工程Aは、空気、又は不活性ガス(例:窒素、アルゴン)、或いはこれらの組み合わせの雰囲気下で実施され得る。
【0077】
当該工程Aの反応時間の下限は、
好ましくは0.5時間、
より好ましくは1時間
であることができる。
当該工程Aの反応時間の上限は、
好ましくは72時間、
より好ましくは48時間、及び
更に好ましくは24時間
であることができる。
当該工程Aの反応時間は、
好ましくは、0.5~72時間の範囲内、
より好ましくは、1~48時間の範囲内、
及び更に好ましくは、1~24時間の範囲内
であることができる。
工程Aの反応時間の上限は、より短い方が、副反応を抑制し得る傾向がある。
工程Aの反応時間の下限は、より高い方が、目的の反応の進行が促進される傾向がある。
【0078】
前述の通り、当該反応は、有機溶媒の存在下、又は不存在下で実施され得る。
本明細書中、有機溶媒の例は、
当該溶媒の例は、
(1)アルコール溶媒[例:メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサントリオール];
(2)非芳香族炭化水素溶媒[例:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n-デカン、イソドデカン、トリデカン];
(3)芳香族炭化水素溶媒[例:ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、アニソール、メシチレン、インデン、ジフェニルスルフィド、];
(4)ケトン溶媒[例:アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メチルヘキサノン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、プロピオフェノン、イソホロン];
(5)ハロゲン化炭化水素溶媒[例:ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,3-ジクロロプロパン、1,4-ジクロロブタン、クロロホルム、クロロベンゼン];
(6)エーテル溶媒[例:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アニソール、フェネトール、1,1-ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)];
(7)エステル溶媒[例:酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、マロン酸ジエチル、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン];
(8)ニトリル溶媒[例:アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル];
(9)スルホキシド溶媒[例:ジメチルスルホキシド、スルホラン];
(10)アミド溶媒[例:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド];
(11)ニトロ溶媒[例:ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、4-ニトロフェネトール、o-ニトロトルエン];及び
(12)カーボネート溶媒[例:炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、]
を包含する。
溶媒としては、なかでも、非プロトン性溶媒等の不活性溶媒が好ましい。その例は、ニトリル溶媒(例:アセトニトリル、プロピオニトリル)、ニトロ溶媒(例:ニトロメタン、ニトロエタン)が例示される。
これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0079】
前記電解フッ素化において使用する電解槽としては、例えば、無隔膜式又は隔膜式の電解槽を使用し得るが、無隔膜式の電解槽が好適に使用できる。
電解方式としては、例えば、定電流電解又は定電位電解が使用され得るが、定電流電解が好適に使用できる。
電極としては、白金電極、炭素電極、BDD(ホウ素ドープダイヤモンド)電極、グラッシーカーボン電極、銀電極、又は銅電極等が使用され得るが、白金電極が好適に使用され得る。
【0080】
本開示の製造方法によれば、原料転化率は、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、及び更に好ましくは50%以上であることができる。
本開示の製造方法によれば、1個以上のFが導入された目的物について、目的化合物の収率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、及びより更に好ましくは80%以上であることができる。
【0081】
本開示の製造方法によれば、2個以上のFが導入された目的物について、目的化合物の収率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上、より更に好ましくは25%以上であることができる。
【0082】
組成物
本開示の一態様である組成物は、0.2M以上の金属フッ化物、フルオロアルコール、及び有機溶媒を含有する。
当該組成物が含有する、0.2M以上の金属フッ化物、フルオロアルコール、及び有機溶媒は、前記本開示の製造方法におけるこれらと同じであることができる。
従って、当業者は、当該組成物及びその具体的態様の詳細を、前記本開示の製造方法についての説明に基づいて、理解し得る。
【実施例】
【0083】
以下、実施例によって本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0084】
実施例1
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、2,2,2-トリフルオロエタノール(2mL)、アセトニトリル(8mL)、フッ化セシウム(608mg)、トリフェニルメタン(244mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が2F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、19F NMRによる定量を行ったところ、フルオロトリフェニルメタンの収率は15%であった。
【0085】
実施例2
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(2mL)、アセトニトリル(8mL)、フッ化カリウム(116mg)、トリフェニルメタン(244mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が2F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、19F NMRによる定量を行ったところ、フルオロトリフェニルメタンの収率は80%であった。
【0086】
実施例3
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(2mL)、ニトロメタン(8mL)、フッ化セシウム(608mg)、(フェニルチオ)酢酸エチル(196mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が2F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、19F NMRによる定量を行ったところ、α-フルオロ(フェニルチオ)酢酸エチルの収率は45%、α,α-ジフルオロ(フェニルチオ)酢酸エチルの収率は2%であった。
【0087】
実施例4
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(2mL)、ニトロメタン(8mL)、フッ化セシウム(608mg)、(フェニルチオ)酢酸エチル(196mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が4F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、19F NMRによる定量を行ったところ、α―フルオロ(フェニルチオ)酢酸エチルの収率は7%、α,α―ジフルオロ(フェニルチオ)酢酸エチルの収率は23%であった。
【0088】
実施例5
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(2mL)、アセトニトリル(8mL)、フッ化セシウム(304mg)、ビス(フェニルチオ)ジフェニルメタン(385mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が4F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、19F NMRによる定量を行ったところ、ジフルオロジフェニルメタンの収率は28%であった。
実施例6
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(2mL)、アセトニトリル(8mL)、フッ化セシウム(304mg)、2,2-ジフェニル-1,3-ジチオラン(258mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が4F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、19F NMRによる定量を行ったところ、ジフルオロジフェニルメタンの収率は20%であった。
【0089】
実施例7
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(2mL)、アセトニトリル(8mL)、フッ化セシウム(304mg)、(4-メトキシフェニル)酢酸エチル(194mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が4F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、19F NMRによる定量を行ったところ、α-フルオロ(4-メトキシフェニル)酢酸エチルの収率は5%、α,α-ジフルオロ(4-メトキシフェニル)酢酸エチルの収率は20%であった。
【0090】
実施例8
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(2mL)、アセトニトリル(8mL)、フッ化セシウム(304mg)、2-フェノキシ-2-(フェニルチオ)アセトニトリル(60mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が4F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、19F NMRによる定量を行ったところ、2-フルオロ-2-フェノキシ-2-(フェニルチオ)アセトニトリルの収率は40%であった。
【0091】
実施例9
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、アセトニトリル、フッ化セシウム、4-ブロモクメンを加え、空気雰囲気下、定電流電解を行ったところ、1-ブロモ-4-(1-フルオロ-1-メチルエチル)ベンゼンが得られた。
【0092】
実施例10
電極として白金板を接続した無隔膜セルへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(2mL)、アセトニトリル(8mL)、フッ化セシウム(304mg)、ジグライム(70mg)を加え、空気雰囲気下、室温で総通電量が4F/molとなるように5mA/cm2にて定電流電解を行った。電解終了後、質量分析によりフッ素化ジグライムのピークを検出した。