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特許7394413量子系の固有状態の取得方法、装置、デバイス及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】量子系の固有状態の取得方法、装置、デバイス及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/60 20220101AFI20231201BHJP
【FI】
G06N10/60
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022566475
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2021134932
(87)【国際公開番号】W WO2023045078
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】202111130173.1
(32)【優先日】2021-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522424072
【氏名又は名称】シェンジェン テンセント コンピューター システムズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN TENCENT COMPUTER SYSTEMS COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】Floor 35,Tencent Building,Kejizhongyi Avenue,Hi-tech Park,Nanshan District,Shenzhen,Guangdong 518057 China
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジャンラン
(72)【発明者】
【氏名】イン,イー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ズー
【審査官】福西 章人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-4387(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111599414(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113408733(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/410382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00-10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータデバイスによって実行される量子系の固有状態の取得方法であって、
ターゲット量子系に含まれる複数の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得て、前記複数のクラスターにおける各クラスターは少なくとも1つの粒子を含むステップと、
前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、複数の直積状態を得るステップと、
前記複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、前記圧縮されたヒルベルト空間の次元数は、前記ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数より小さいステップと、
前記ターゲット量子系のハミルトニアンと、前記圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンとを取得するステップと、
前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得するステップと、を含む、量子系の固有状態の取得方法。
【請求項2】
前記複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける前記ステップは、
前記複数の直積状態のそれぞれが対応するエネルギー値を取得するステップと、
前記複数の直積状態の中から、前記エネルギー値が条件に合致する複数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の直積状態の中から、前記エネルギー値が条件に合致する複数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける前記ステップは、
前記複数の直積状態の中から、前記エネルギー値が最小であるn個の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、前記nは正の整数であるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、複数の直積状態を得る前記ステップは、
前記複数のクラスターにおけるターゲットクラスターについて、前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得するステップと、
前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、前記ターゲットクラスターに対応する少なくとも1つの固有状態を取得するステップと、
前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態を直積演算し、前記複数の直積状態を得るステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得する前記ステップは、
前記複数のクラスターにおける前記ターゲットクラスター以外の他のクラスターを環境として、前記ターゲットクラスターの前記環境におけるハミルトニアンを取得し、前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを得るステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ターゲット量子系に含まれる複数の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得る前記ステップは、
前記ターゲット量子系に含まれる複数の粒子を、複数の異なる方式に従ってクラスター分割し、複数の異なるクラスター分割結果を得るステップであって、各クラスター分割結果は複数のクラスターを含むステップ、を含み、
前記複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける前記ステップは、
前記異なるクラスター分割結果にそれぞれ対応する複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得する前記ステップは、
対角化アルゴリズムを用いて前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを取得するステップであって、前記対角化アルゴリズムは、変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせた量子の固有状態の求解アルゴリズムのうち少なくとも1つを含むステップと、
前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを、前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして決定するステップと、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ターゲット量子系に含まれる複数の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得るために用いられ、前記複数のクラスターにおける各クラスターは少なくとも1つの粒子を含む分割モジュールと、
前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、複数の直積状態を得るために用いられる入手モジュールと、
前記複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるために用いられ、前記圧縮されたヒルベルト空間の次元数は、前記ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数より小さい選択モジュールと、
前記ターゲット量子系のハミルトニアンと、前記圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンとを取得するために用いられる第1取得モジュールと、
前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得するために用いられる第2取得モジュールと、を含む、量子系の固有状態の取得装置。
【請求項9】
前記選択モジュールは、
前記複数の直積状態のそれぞれが対応するエネルギー値を取得するステップに用いられる取得ユニットと、
前記複数の直積状態の中から、前記エネルギー値が条件に合致する複数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるステップに用いられる選択ユニットと、を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記選択ユニットは、前記複数の直積状態の中から、前記エネルギー値が最小であるn個の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、前記nは正の整数であるステップに用いられる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記入手モジュールは、
前記複数のクラスターにおけるターゲットクラスターについて、前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得するステップと、
前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、前記ターゲットクラスターに対応する少なくとも1つの固有状態を取得するステップと、
前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態を直積演算し、前記複数の直積状態を得るステップと、に用いられる、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記第1取得モジュールは、前記複数のクラスターにおける前記ターゲットクラスター以外の他のクラスターを環境として、前記ターゲットクラスターの前記環境におけるハミルトニアンを取得し、前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを得るステップに用いられる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記分割モジュールは、前記ターゲット量子系に含まれる複数の粒子を、複数の異なる方式に従ってクラスター分割し、複数の異なるクラスター分割結果を得て、各クラスター分割結果は複数のクラスターを含むステップに用いられ、
前記選択モジュールは、前記異なるクラスター分割結果にそれぞれ対応する複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるステップに用いられる、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記第2取得モジュールは、
対角化アルゴリズムを用いて前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを取得し、前記対角化アルゴリズムは、変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせた量子の固有状態の求解アルゴリズムのうち少なくとも1つを含むステップと、
前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを、前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして決定するステップと、に用いられる、請求項8~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
プロセッサ及びメモリを含み、前記メモリに少なくとも1つのコマンド、少なくとも1つのプログラム、コードセット又はコマンドセットが記憶され、前記少なくとも1つのコマンド、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又はコマンドセットは前記プロセッサにロードされ且つ実行されて請求項1~7のいずれか一項に記載の量子系の固有状態の取得方法を実現する、コンピュータデバイス。
【請求項16】
コンピュータコマンドを含み、前記コンピュータコマンドはコンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶され、プロセッサは前記コンピュータ読み取り可能記憶媒体から前記コンピュータコマンドを読み取り且つ実行することにより、請求項1~7のいずれか一項に記載の量子系の固有状態の取得方法を実現する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は量子技術分野に関し、特に量子系の固有状態の取得方法、装置、デバイス及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は2021年9月26日に出願された、出願番号202111130173.1、発明名称「量子系の固有状態の取得方法、装置、デバイス及び記憶媒体」の中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体は参照により本願に組み込まれる。
【0003】
量子計算の急速な発展に伴い、量子アルゴリズムは多くの分野で極めて有用なものとされ、そのうち、量子系の固有状態及び固有エネルギーを求めることは非常に重要な問題である。
【0004】
関連技術において、変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズムが提供されている。任意の量子系に対して、1つの試行波動関数を設計することができ、試行波動関数を絶えず変化させることにより、対応するエネルギーの最小値を見つけ、この時はすなわち基底状態のエネルギー及び基底状態である。同様に、量子系の第1励起状態は、基底状態に直交する波動関数に対応するエネルギーが最も低い状態である。基底状態が決定されると、それに直交する状態空間内で第1励起状態を見つけることができる。第2励起状態は基底状態及び第1励起状態に直交する波動関数に対応するエネルギーが最も低い状態であり、以下同様に、理論的にはこの方法で量子系における全ての固有状態を見つけることができる。
【0005】
量子デバイスにおいて状態の時間発展を実現するために、状態の時間発展方程式をデジタル化し、状態の発展行列を、量子デバイスにおける対応する量子ゲート操作に変換する必要がある。デジタル化のプロセスにおいて、必要とされる量子ゲート操作は量子ビット数の増加に伴って急速に増加する。したがって、計算に必要なリソースが大きくなり、量子アルゴリズムの優位性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の実施例は量子系の固有状態の取得方法、装置、デバイス及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的解決手段は以下のとおりである。
【0008】
本願の実施例の一態様によれば、
ターゲット量子系に含まれる複数の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得て、前記複数のクラスターにおける各クラスターは少なくとも1つの粒子を含むステップと、
前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、複数の直積状態を得るステップと、
前記複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、前記圧縮されたヒルベルト空間の次元数は、前記ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数より小さいステップと、
前記ターゲット量子系のハミルトニアンと、前記圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンとを取得するステップと、
前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得するステップと、を含む、コンピュータデバイスによって実行される量子系の固有状態の取得方法を提供する。
【0009】
本願の実施例の一態様によれば、
ターゲット量子系に含まれる複数の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得るために用いられ、前記複数のクラスターにおける各クラスターは少なくとも1つの粒子を含む分割モジュールと、
前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、複数の直積状態を得るために用いられる入手モジュールと、
前記複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるために用いられ、前記圧縮されたヒルベルト空間の次元数は、前記ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数より小さい選択モジュールと、
前記ターゲット量子系のハミルトニアンと、前記圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンとを取得するために用いられる第1取得モジュールと、
前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得するために用いられる第2取得モジュールと、を含む量子系の固有状態の取得装置を提供する。
【0010】
本願の実施例の一態様によれば、プロセッサ及びメモリを含み、前記メモリに少なくとも1つのコマンド、少なくとも1つのプログラム、コードセット又はコマンドセットが記憶され、前記少なくとも1つのコマンド、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又はコマンドセットは前記プロセッサにロードされ且つ実行されて上記量子系の固有状態の取得方法を実現するコンピュータデバイスを提供する。
【0011】
本願の実施例の一態様によれば、前記コンピュータ読み取り可能記憶媒体に少なくとも1つのコマンド、少なくとも1つのプログラム、コードセット又はコマンドセットが記憶され、前記少なくとも1つのコマンド、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又はコマンドセットは前記プロセッサにロードされ且つ実行されて上記量子系の固有状態の取得方法を実現するコンピュータ読み取り可能記憶媒体を提供する。
【0012】
本願の実施例の一態様によれば、コンピュータコマンドを含み、該コンピュータコマンドはコンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶され、コンピュータデバイスのプロセッサはコンピュータ読み取り可能記憶媒体から該コンピュータコマンドを読み取り、プロセッサは該コンピュータコマンドを実行し、該コンピュータデバイスに上記量子系の固有状態の取得方法を実行させる、コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムを提供する。
【0013】
ターゲット量子系を複数のクラスターに分割することにより、複数のクラスターの固有状態を取得し、さらに複数の直積状態を取得し、複数の直積状態をスクリーニングすることにより、一部の直積状態を選択して、圧縮されたヒルベルト空間を構築し、ヒルベルト空間の次元数を低減する。複数ビットが相互作用する高次元システムにおけるハミルトニアンの固有状態の求解という問題を、複数の低次元におけるハミルトニアンの固有状態の求解問題に分解し、さらに圧縮されたヒルベルト空間を構築し、ターゲット量子系におけるハミルトニアンの、圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンを計算することにより、該等価ハミルトニアンの固有値及び固有エネルギーをターゲット量子系の固有値及び固有エネルギーとして取得して、圧縮されたヒルベルト空間の次元数は、ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数より小さいため、デジタル化のプロセスにおいて、必要とされる量子ゲート操作が系の次元の増加に伴って急速に増加し、複数ビットの相互作用を実現するゲートの数が相互作用の次元の増加に伴って急速に増加するという状況を回避し、固有状態の取得に必要な計算量を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願の一実施例が提供する量子系の固有状態の取得方法のフローチャートである。
図2】本願の別の実施例が提供する量子系の固有状態の取得方法のフローチャートである。
図3】本願の一実施例が提供するクラスターの分割方式の概略図である。
図4】本願の別の実施例が提供するクラスターの分割方式の概略図である。
図5】本願の別の実施例が提供する量子系の固有状態の取得方法のフローチャートである。
図6】本願の一実施例が提供する基底状態の精度の概略図である。
図7】本願の一実施例が提供する固有エネルギーの精度の概略図である。
図8】本願の一実施例が提供する量子系の固有状態の取得装置のブロック図である。
図9】本願の一実施例が提供する量子系の固有状態の取得装置のブロック図である。
図10】本願の一実施例が提供するコンピュータデバイスの構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願の実施例を紹介する前に、まず本願に関する幾つかの名詞を説明する。
【0016】
1.量子計算
量子論理に基づく計算方法であり、データを記憶する基本単位は量子ビット(qubit)である。
【0017】
2.量子ビット
量子計算の基本単位である。従来のコンピュータは、バイナリの基本単位として0と1を使用する。それに対して、量子計算は0と1を同時に処理でき、系は0と1の線形重ね合わせ状態
【0018】
【数1】
にあり、ここでα、βは、系の0及び1における複素確率振幅を表す。それらの絶対値の二乗|α|、|β|は、それぞれ0及び1における確率を表す。
【0019】
3.ハミルトニアン
量子系の総エネルギーのエルミート共役を記述した行列である。ハミルトニアンは物理用語で、系の総エネルギーを記述する演算子であり、一般的にHで表される。
【0020】
4.量子状態
量子力学において、量子状態は、量子数によって決定される微視的状態である。
【0021】
5.固有状態
1つのハミルトニアン行列Hに対して、
【0022】
【数2】
という方程式を満たす解|ψ>はHの固有状態と称され、固有エネルギーEを有する。基底状態は、量子系のエネルギーが最も低い固有状態に対応する。
【0023】
6.クラスター(cluster)
複数の粒子からなる集合である。物理分野において、本願の実施形態における粒子はスピン(spin)で参照することもできる。また、量子ビットは量子計算における基本単位であり、1つの量子ビットで物理系における1つの粒子/スピンをシミュレートすることができ、複数の量子ビットで1つの粒子/スピンをシミュレートすることもできる。
【0024】
7.固有状態
量子力学において、1つの力学的量が取り得る数値は、その演算子の全ての固有値である。固有関数によって記述された状態をこの演算子の固有状態と呼ぶ。自分の固有状態において、この力学的量は決定値を取り、即ちこの固有状態が属する固有値である。
【0025】
8.直積状態
量子力学において、系の状態(状態ベクトル)は1つの関数で表すことができ、「状態関数」と称する(それを1つの関数と理解してもよく、又は1つのベクトルと理解してもよく、両者は矛盾しない)。一粒子系の状態関数は1変数関数であり、多粒子系の状態関数は多変数関数である。この多変数関数の変数分離ができる場合、すなわち複数の1変数関数の積として直接記述することができる場合、それを「直積状態」と呼ぶ。
【0026】
9.第1励起状態
励起状態のうちエネルギーが最も低い励起状態である。
【0027】
10.対角化
対角行列は主対角線のみに非ゼロ要素を含む行列を指し、即ち、n×n行列Mが既知であり、i≠j、Mij=0であれば、該行列は対角行列である。A-1MAの結果が対角行列であるような行列Aが存在する場合、「行列Aが行列Mを対角化する」と呼ぶ。
【0028】
11.第二量子化(second quantization)
生成演算子及び消滅演算子に基づき、対称化されたヒルベルト空間で同種粒子系を処理する方法であり、これは一般に第二量子化法と呼ばれる。
【0029】
12.ヒルベルト空間
完全な内積空間を意味する。
【0030】
13.スピン(spin)
粒子の内在的な角運動量による内在運動である。量子力学では、スピンは、粒子の有する内在的な性質であり、その演算規則は、古典的な力学の角運動量に類似しており、したがって、磁場を発生する。
【0031】
14.量子ゲート
量子計算時、特に量子回路の計算モデルにおいて、1つの量子ゲート(Quantum gate、又は量子論理ゲート)が、数が少ない量子ビットを操作する基本的な量子回路である。
【0032】
15.変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズム
任意の物理系におけるハミルトニアンHに対して、Hを含む該物理系の1組の交換するオブザーバブルの完全集合の同時固有状態を
【0033】
【数3】
として、対応するエネルギー固有値をE<E<E<…と設定し、ここでEは基底状態エネルギーであり、
【0034】
【数4】
は基底状態の波動関数である。エネルギー
【0035】
【数5】
に対応する試行波動関数
【0036】
【数6】
を設計することができる。且つ
【0037】
【数7】
のみである時、等号を取ることができる。試行波動関数を絶えず変化させることにより、対応するエネルギーの最小値を見つけることができ、この時はすなわち基底状態のエネルギー及び基底状態の波動関数である。同様に、系の第1励起状態は、基底状態
【0038】
【数8】
と直交する波動関数に対応するエネルギーが最も低い状態である。基底状態が決定されると、それに直交する状態空間内で第1励起状態を見つけることができる。第2励起状態は基底状態及び第1励起状態に直交する波動関数に対応するエネルギーが最も低い状態であり、以下同様に、理論的にはこの方法に基づいて、系における全ての固有状態を見つけることができる。
【0039】
16.断熱近似に基づく量子の固有状態求解アルゴリズム
断熱近似とは、ある種の摂動が物理的システムにゆっくりと十分に作用する場合、該物理的系の瞬間的固有状態は一定であるとみなせることを意味する。したがって、物理系のハミルトニアンをゆっくりと十分に発展させることができれば、物理系は常にその瞬間的固有状態に沿って発展する。従って、量子デバイスにおいて簡単なハミルトニアンに対応する既知の固有状態を構築し、次いで求解対象である物理系のハミルトニアンに合致して、該既知の固有状態をゆっくりと十分に発展させることができ、合致時に量子デバイスを測定して得られる量子状態は、求解対象である、ハミルトニアンに対応する固有状態である。
【0040】
17.断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム
断熱近似には系がゆっくりと十分に発展することが求められるが、断熱近似に基づいて、急速断熱項を導入することにより、系の発展を加速して、より短い時間で目標の固有状態まで発展させることができる。
【0041】
18.断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせることで実現される量子の固有状態のリープ・フロッグ式求解アルゴリズム
任意のターゲット系に対して、フォームがターゲット系のハミルトニアンと類似し、結合強度が相対的に小さい1つ又は1組の基準点を構築することができ、1つの簡単なハミルトニアンに対応する既知の固有状態から、このような結合強度が相対的に小さい基準点に発展させようとする場合、その急速断熱項の形式が簡単であり、急速断熱に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズムによって基準点の固有状態を容易に求めることができる。次に断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズムを利用して、基準点の固有状態から、次の基準点又はターゲット系の固有状態まで発展させ、基準点とターゲット系のハミルトニアンが相対的に近いため、少ない時間(ステップ)で、断熱近似を実現することができる。
【0042】
一般的な多電子量子系において、第二量子化後の量子系のハミルトニアンは、式(1)のように表すことができる。
【0043】
【数9】
及びa はi番目の電子の基底状態における生成演算子及び消滅演算子であり、a、a 、、a及びaは同様に解釈することができ、それらは
【0044】
【数10】
を満たし、ここで[x,y]は反交換演算子であり、δ{i,j}はジャンプ演算子であり、i=jの場合、δ{i,j}=1であり、i≠jの場合、δ{i,j}=0である。Vij (2)及びVijkl (4)
【0045】
【数11】
は一電子及び二電子積分係数であり、ε0は該ハミルトニアンの基底状態のエネルギーである。フェルミ粒子とスピンとの間のマッピング理論、例えばBravyi-Kitaev変換又はJordan-Wigner変換により、この多電子量子系のハミルトニアンを、式(2)に示すような多スピン形式のハミルトニアンに書き換えることができる。
【0046】
【数12】
ここで
【0047】
【数13】
はi番目のスピンにおけるパウリ行列であり、{σ }は{σ }と同様に解釈することができ、
【0048】
【数14】
はマルチスピン相互作用の強度を表すための係数であり、適用性をよりよく示すために、このハミルトニアンの式は4つのスピン相互作用項(式(1)に対応する)のみで表されず、任意のN‘(<=N)個のスピン相互作用項を加味することができる。
【0049】
式(1)におけるハミルトニアンの固有状態|Ψ>及び固有エネルギーEを求めるために、一般的には、2次元ヒルベルト空間に対する対角化ツールを必要とする。代替として、本願は、高度に圧縮された空間において近似的であるが正確な対角化による求解を実現することができる量子系の固有状態の取得方法を提供する。
【0050】
本願の方法の実施例を説明する前に、まず本願の方法の実行環境を説明する。
【0051】
本願の実施例が提供する量子体系の固有状態の取得方法は、典型的なコンピュータ(PCなど)で実行して実現することができる。例えば典型的なコンピュータで、対応するコンピュータプログラムを実行することにより該方法を実現する。又は、典型的コンピュータと量子コンピュータとのハイブリッド環境において、例えば、典型的なコンピュータと量子コンピュータとの組み合わせによって対応するコンピュータプログラムを実行することにより該方法を実現できる。例示的に、量子コンピュータは、本願の実施例における複数のクラスターの固有状態の解を求め、等価ハミルトニアンの固有状態の解を求めるために用いられ、典型的なコンピュータは、本願の実施例における、固有状態の解を求める問題以外の他のステップを実現するために用いられる。
【0052】
以下の方法の実施例において、説明の便宜上、各ステップの実行主体がコンピュータデバイスであることのみを説明する。理解すべきこととして、該コンピュータデバイスは典型的なコンピュータであってもよく、典型的なコンピュータと量子コンピュータとのハイブリッド実行環境が含まれてもよく、本願の実施例はこれに限定されない。
【0053】
図1は、本願の一実施例が提供する量子系の固有状態の取得方法のフローチャートを示す。該方法の各ステップの実行主体はコンピュータデバイスであってもよい。該方法は、以下のステップ110~ステップ150のうちの少なくとも1つのステップを含むことができる。
【0054】
ステップ110では、ターゲット量子系に含まれる複数の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得て、各クラスターは少なくとも1つの粒子を含む。
【0055】
本願の実施例において、ターゲット量子系に含まれる複数の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得る。各クラスターはターゲット量子系の1つ又は複数の粒子を含み、異なるクラスターの間に同じ粒子を含まず、得られた複数のクラスターに含まれる粒子の数の和はターゲット量子系に含まれる粒子の総数に等しい。
【0056】
ターゲット量子系とは、固有状態が取得対象の量子系を指す。任意選択的に、クラスター分割の方式は複数ある。例示的に、N個の粒子を有する量子系を2つのクラスターに分割する場合、各クラスターはN及びN個の粒子を含み、N+N=Nであり、与えられたNの値に対して、このようなクラスター分割の選択可能な方式における数は、順列・組み合わせによって、最大値が
【0057】
【数15】
になるように計算することができる。
【0058】
例示的に、ターゲット量子系に10個の粒子を含み、ターゲット量子系に含まれる10個の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得て、各クラスターは少なくとも1つの粒子を含む。例えば、ターゲット量子系に含まれる10個の粒子を、5個の粒子を含む第1クラスターと、5個の粒子を含む第2クラスターとの2つのクラスターに分割する。別の例として、ターゲット量子系に含まれる10個の粒子を、4個の粒子を含む第1クラスターと、6個の粒子を含む第2クラスターとの2つのクラスターに分割する。
【0059】
ステップ120では、複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、複数の直積状態を得る。
【0060】
本願の実施例において、各クラスターに対して、それに対応する固有状態の解を求め、次いで複数のクラスターにおける各クラスターに対応する固有状態に基づき、複数の直積状態を取得する。
【0061】
例示的な実施例において、ステップ120は以下のいくつかのサブステップ1~サブステップ3を含むことができる。
【0062】
サブステップ1では、複数のクラスターにおけるターゲットクラスターについて、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得する。
【0063】
ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンはターゲットクラスターの実際のハミルトニアンの近似表示であり、ターゲットクラスターの現在の環境におけるハミルトニアンを求めることにより、該ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを得ることができる。任意選択的に、複数のクラスターにおけるターゲットクラスター以外の他のクラスターを環境として、ターゲットクラスターの環境におけるハミルトニアンを取得し、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得する。
【0064】
例示的に、ターゲット量子系は、クラスターA及びクラスターBの2つのクラスターに分割される。クラスターAに対して、クラスターBを環境とし、特定の量子状態の部分トレースを
【0065】
【数16】
とすると、クラスターAの近似ハミルトニアン
【0066】
【数17】
を得ることができ、ここでαはクラスターBのα番目の量子状態を指し、Hはターゲット量子系のハミルトニアンを指し、特定の量子状態とは環境におけるある特定の量子状態を指し、各環境の量子状態は、いずれも1つのクラスターAの近似ハミルトニアンに対応する。逆に、クラスターBについても同様の方法が適用される。まず孤立したクラスターAの量子状態
【0067】
【数18】
を環境の量子状態とし、次にクラスターBの近似ハミルトニアン
【0068】
【数19】
を得ることができ、βはクラスターAのβ番目の量子状態を指し、Hはターゲット量子系のハミルトニアンを指す。
【0069】
サブステップ2では、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、ターゲットクラスターに対応する少なくとも1つの固有状態を取得する。
【0070】
任意選択的に、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、ターゲットクラスターに対応する基底状態を取得することができる。任意選択的に、さらにターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、ターゲットクラスターに対応する励起状態を取得することができる。
【0071】
任意選択的に、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、対角化アルゴリズムを用いてターゲットクラスターに対応する少なくとも1つの固有状態を取得する。選択的に、対角化アルゴリズムは、変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせた量子の固有状態の求解アルゴリズムのうち少なくとも1つを含むがこれらに限定されない。
【0072】
例示的に、ターゲット量子系は、クラスターA及びクラスターBの2つのクラスターに分割される。クラスターAの近似ハミルトニアンH αを対角化し、少なくとも1つの固有状態
【0073】
【数20】
及び固有エネルギー
【0074】
【数21】
を得て、ここでiはi番目の固有状態/固有エネルギーを指し、αはクラスターBのα番目の量子状態を指す。同様に、クラスターBの等価ハミルトニアンHB β
【0075】
【数22】
のように対角化し、少なくとも1つの固有状態及び固有エネルギーを得て、ここでjはj番目の固有状態/固有エネルギーを指し、βはクラスターAのβ番目の量子状態を指す。
【0076】
サブステップ3では、複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態を直積演算し、複数の直積状態を得る。
【0077】
例示的に、ターゲット量子系を第1クラスターと第2クラスターの2つのクラスターに分け、第1クラスターは2つの固有状態に対応し、第2クラスターは2つの固有状態に対応し、上記合計4つの固有状態に対して直積演算を行い、4つの直積状態を得る。
【0078】
ステップ130では、複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0079】
本願の実施例において、圧縮されたヒルベルト空間の次元数は、ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数より小さい。
【0080】
例示的に、ターゲット量子系に10個の粒子が含まれる場合、ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数は210であり、圧縮されたヒルベルト空間の次元数は210未満である。
【0081】
任意選択的に、関連する直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。関連する直積状態とは直交関係を有する直積状態であり、すなわち他の状態に垂直な直積状態である。全ての直積状態が、自己無撞着に収束するように決定されることを望み、例えば
【0082】
【数23】
及び
【0083】
【数24】
であり、ここで{x}は集合を表し、iはi番目の固有状態/固有エネルギーを指し、αはクラスターBのα番目の量子状態を指し、jはj番目の固有状態/固有エネルギーを指し、βはクラスターAのβ番目の量子状態を指すが、複数の状態を考慮すると、規則的な再帰、反復は発散である。
【0084】
実験の結果、再帰、反復によっても、関連する直積状態の数は一般的に不変であることが分かった。したがって、関連する直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるために、反復ステップの数が限られる必要がある。
【0085】
例示的な実施例において、ステップ130は以下のサブステップ1~サブステップ2を含むことができる。
【0086】
サブステップ1では、複数の直積状態のそれぞれが対応するエネルギー値を取得する。
【0087】
サブステップ2では、複数の直積状態の中から、エネルギー値が条件に合致する複数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0088】
任意選択的に、複数の直積状態の中から、エネルギー値が最小であるn個の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、ここでnは正の整数である。本願の実施例において、nは設定数であり、上記n個の直積状態は設定数の直積状態とも呼ばれる。例示的に、複数の直積状態のエネルギー値を昇順にソートし、上位設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。例示的に、複数の直積状態のエネルギー値を降順にソートし、下位設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。設定数とは直積状態に対して設定される選択数であり、上位設定数とは直積状態を選択する時、設定数に基づいて順位が上位の直積状態を選択するのに対して、下位設定数とは直積状態を選択する時、設定数に基づいて順位が下位の直積状態を選択することである。例示的に、設定数が2である場合、1、2、3、4、5、6、7の7つの数字に対して、上位設定数に基づいて選択される数字は1及び2であり、下位設定数に基づいて選択される数字は6及び7である。
【0089】
任意選択的に、複数の直積状態の絡み合いの度合いに基づいてスクリーニングを行い、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けてもよい。一部の直積状態を選択する方法について、本願は限定しない。例示的に、複数の直積状態の中から、絡み合いの度合いが最小である設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0090】
ステップ140では、ターゲット量子系のハミルトニアンと、圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンを取得する。
【0091】
等価ハミルトニアンは、ターゲット量子系のハミルトニアンの等価表示を指す。該等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーは、ターゲット量子系の元のハミルトニアンと同じ固有状態及び固有エネルギーを有する。従って、等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを求めることにより、ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーを得ることができる。しかし、等価ハミルトニアンはターゲット量子系の圧縮されたヒルベルト空間におけるハミルトニアンの等価表示であり、次元数がターゲット量子系の元のハミルトニアンの次元数より小さいため、本願の技術的解決手段は固有状態の取得に必要な計算量を低減することができる。
【0092】
ステップ150では、等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーをターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得する。
【0093】
任意選択的に、対角化アルゴリズムを用いて等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを取得し、対角化アルゴリズムは、変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせた量子の固有状態の求解アルゴリズムのうち少なくとも1つを含む。以上から分かるように、本願の実施例において、実際の状況に応じて適切な対角化アルゴリズムを選択してターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーを取得することができ、本願の実施例が提供する量子系の固有状態を取得する解決手段は異なる状況に適用でき、量子系の固有状態取得の信頼性及び精度を向上させる。
【0094】
例示的に、等価ハミルトニアンの基底状態及び基底状態のエネルギーは、対角化アルゴリズムを用いて取得される。さらに、等価ハミルトニアンの基底状態に基づき、等価ハミルトニアンの第1励起状態、第2励起状態等の固有状態及び各固有状態に対応する固有エネルギーを求めることができる。
【0095】
以上から、本願が提供する技術的解決手段は、ターゲット量子系を複数のクラスターに分割して、複数のクラスターの固有状態を取得することにより、さらに複数の直積状態を取得し、複数の直積状態をスクリーニングして、一部の直積状態を選択し、圧縮されたヒルベルト空間を構築することにより、ヒルベルト空間の次元数を低減する。複数ビットが相互作用する高次元システムにおけるハミルトニアンの固有状態の求解という問題を、複数の低次元におけるハミルトニアンの固有状態の求解問題に分解し、さらに圧縮されたヒルベルト空間を構築し、ターゲット量子系におけるハミルトニアンの、圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンを計算することにより、該等価ハミルトニアンの固有値及び固有エネルギーをターゲット量子系の固有値及び固有エネルギーとして取得して、圧縮されたヒルベルト空間の次元数は、ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数より小さいため、デジタル化のプロセスにおいて、必要とされる量子ゲート操作が系の次元の増加に伴って急速に増加し、複数ビットの相互作用を実現するゲートの数が相互作用の次元の増加に伴って急速に増加するという状況を回避し、固有状態の取得に必要な計算量を低減させる。
【0096】
また、複数の直積状態のそれぞれが対応するエネルギー値に基づいて、エネルギー値が条件に合致する複数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、一方では、一部の直積状態を選択して、圧縮されたヒルベルト空間を構築し、ヒルベルト空間の次元数を低減し、他方では、実際の状況に応じて、異なる条件を設定し、異なる要件を満たす圧縮されたヒルベルト空間を構築し、これにより、圧縮されたヒルベルト空間をより柔軟に、自由に構築する。
【0097】
また、複数の直積状態の中から、エネルギー値が最小の設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、圧縮されたヒルベルト空間の次元数を可能な限り低減させ、固有状態の取得に必要な計算量を低減して、固有状態の計算効率を向上させる。
【0098】
また、複数のクラスターにおける各クラスターに対して、クラスターの近似ハミルトニアンに基づいて、該クラスターに対応する少なくとも1つの固有状態を取得し、さらに固有状態の直積演算により、複数の直積状態を取得し、即ち、複数のクラスターを分割して取得してから、取得した各クラスターをそれぞれ処理することにより、各クラスターにそれぞれ対応する複数の直積状態を取得し、後続の直積状態の選択結果をより正確にし、ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーの計算の精度を向上させる。
【0099】
また、複数のクラスターにおけるターゲットクラスター以外の他のクラスターを環境として、ターゲットクラスターの環境におけるハミルトニアンを取得し、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得し、すなわち、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得する時、該ターゲットクラスターと残りのクラスターとの関係を考慮することで、取得したターゲットクラスターの近似ハミルトニアンをより正確にする。
【0100】
任意選択的に、クラスター分割の方式は複数あり、図2は本願の別の実施例が提供する量子系の固有状態の取得方法のフローチャートを示す。該方法は以下のステップ210~ステップ250のうちの少なくとも1つのステップを含むことができる。
【0101】
ステップ210では、ターゲット量子系に含まれる複数の粒子を、複数の異なる方式に従ってクラスター分割することで、複数の異なるクラスター分割結果を得て、各クラスター分割結果は複数のクラスターを含む。
【0102】
例示的に、ターゲット量子系に10個の粒子を含み、ターゲット量子系に含まれる10個の粒子を、複数の異なる方式に従ってクラスター分割することで、複数の異なるクラスター分割結果を得る。例えば、図3に示すように、ターゲット量子系に含まれる10個の粒子を第1クラスターと第2クラスターの2つのクラスターに分けることができ、第1クラスターは4個の粒子を含み、第2クラスターは6個の粒子を含む。又は、ターゲット量子系に含まれる10個の粒子を、第3クラスターと第4クラスターの2つのクラスターに分けることができ、第3クラスターは5個の粒子を含み、第4クラスターは5個の粒子を含む。
【0103】
任意選択的に、ターゲット量子系に含まれる複数の粒子は、多階層クラスター分割される。例示的に、図4に示すように、ターゲット量子系に含まれる複数の粒子を第1階層クラスター分割することで、クラスターA及びクラスターBの2つのクラスターを得て、さらにクラスターA及びクラスターBを第2階層クラスター分割することで、クラスターa1、a2、a3、a4及びクラスターb1、b2、b3、b4を得る。
【0104】
ターゲット量子系に含まれる複数の粒子を、複数の異なる方式に従ってクラスター分割し、複数の異なるクラスター分割結果を得る。異なるクラスター分割結果に対して後続の計算を行う上で、異なる粒子間の相互作用を考慮して、誤差を減少させ、量子系の固有状態取得の精度を向上させることができる。
【0105】
ステップ220では、各クラスター分割結果に対して、該クラスター分割結果に含まれる複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、該クラスター分割結果に対応する複数の直積状態を取得する。
【0106】
各クラスター分割結果に対して、それに含まれる複数のクラスターにおける各クラスターに対応する固有状態を求め、次いで複数のクラスターにおける各クラスターに対応する固有状態に基づき、該クラスター分割結果に対応する複数の直積状態を取得する。
【0107】
ステップ230では、異なるクラスター分割結果にそれぞれ対応する複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0108】
例示的に、ターゲット量子系は10個の粒子を含み、第1分割結果はターゲット量子系に含まれる10個の粒子を、5個の粒子を含む第1クラスターと、5個の粒子を含む第2クラスターとの2つのクラスターに分割する。第2クラスター分割結果はターゲット量子系に含まれる10個の粒子を、4個の粒子を含む第3クラスターと、6個の粒子を含む第4クラスターの2つのクラスターに分割する。第3分割結果はターゲット量子系に含まれる10個の粒子を、4個の粒子を含む第5クラスターと、6個の粒子を含む第6クラスターの2つのクラスターに分割し、ここで、第5クラスターに含まれる粒子と第3クラスターに含まれる粒子は少なくとも1つ異なる一方で、第6クラスターに含まれる粒子と第4クラスターに含まれる粒子は少なくとも1つ異なる。
【0109】
第1分割結果、第2分割結果及び第3分割結果にそれぞれ対応する直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0110】
任意選択的に、複数の直積状態の中から、エネルギー値が最小である設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。例示的に、複数の直積状態のエネルギー値を昇順にソートし、上位設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。例示的に、複数の直積状態のエネルギー値を降順にソートし、下位設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0111】
好ましくは、それぞれ第1分割結果、第2分割結果及び第3分割結果に対応する直積状態の中から、エネルギー値が最小である設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。例示的に、第1分割結果に対応する直積状態の中から、エネルギー値が最小の設定数の直積状態を選択し、第1組直積状態を得て、第2分割結果に対応する直積状態の中から、エネルギー値が最小の設定数の直積状態を選択し、第2組直積状態を得て、第3分割結果に対応する直積状態の中から、エネルギー値が最小の設定数の直積状態を選択し、第3組直積状態を得て、第1組直積状態、第2組直積状態及び第3組直積状態を1組の基底ベクトルとして、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0112】
任意選択的に、第1分割結果、第2分割結果及び第3分割結果に対応する全ての直積状態の中から、エネルギー値が最小である設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。例示的に、第1分割結果、第2分割結果及び第3分割結果に対応する全ての直積状態を昇順にソートし、上位設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0113】
任意選択的に、複数の直積状態の絡み合いの度合いに基づいてスクリーニングを行い、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けてもよい。一部の直積状態を選択する方法について、本願は限定しない。例示的に、複数の直積状態の中から、絡み合いの程度が最小である設定数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0114】
ステップ240では、ターゲット量子系のハミルトニアンと、圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンを取得する。
【0115】
ステップ250では、等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーをターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得する。
【0116】
該方法におけるステップ240~250は上記量子系の固有状態の取得方法における図1に示すステップ140~150と同じであり、具体的には上記説明を参照することができ、ここでは説明を省略する。
【0117】
以上から、本願が提供する技術的解決手段は、ターゲット量子系に含まれる複数の粒子に対して複数の異なる方式のクラスター分割を行い、複数の異なるクラスター分割結果を取得し、各クラスター分割結果は複数のクラスターを含み、複数のクラスターの固有状態に基づいて複数の直積状態を取得し、異なるクラスター分割結果にそれぞれ対応する複数の直積状態から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、複数のクラスター分割結果で得られた直積状態を組み合わせて、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けることにより、誤差を減少させ、量子系の固有状態取得の精度を向上させることができる。
【0118】
以下ではターゲット量子系を水素鎖量子系とし、且つ1量子ビットで1スピンをシミュレートすることを例として、本願の技術的解決手段を説明する。水素鎖量子系の元のハミルトニアンは、式(3)のように表すことができる。
【0119】
【数25】
ここで、Hは水素鎖量子系の元のハミルトニアンを表し、Nは該水素鎖量子系に含まれるスピン数を表し、ZはパウリZ演算子を表し、XはパウリX演算子を表し、gは1スピンの自己作用力であり、gは2スピンの間の相互作用力である。
【0120】
図5は本願の別の実施例が提供する量子系の固有状態の取得方法のフローチャートを示す。該方法は以下のいくつかのステップ510~ステップ550のうちの少なくとも1つのステップを含むことができる。
【0121】
ステップ510では、水素鎖量子系に含まれる複数のスピンを、複数の異なる方式に従ってクラスター分割することで、複数の異なるクラスター分割結果を得て、ここで、各クラスター分割結果は複数のクラスターを含み、各クラスターは少なくとも1スピンを含む。
【0122】
例示的に、水素鎖の長さNは3≦N≦8(Nは正の整数)であり、2スピン(又は量子ビット)の相互作用の相対的な大きさはg2/g1=1に固定され、ここで、gは2スピン(又は量子ビット)の間の相互作用力であり、gは1スピン(又は量子ビット)の自己作用力である。
【0123】
例示的に、ターゲット量子系を、{A={s,s},B={s,…,s}}及び{A’={s,…,sN-2},B’={sN-1,…,s}}の2種類のクラスター分割方式に従ってクラスター分割し、ここでsiはi番目のスピンを指し、A、B、A’及びB’はそれぞれ1つのクラスターに対応する。なお、具体的なクラスター分割方式について、本願は限定せず、ここでは2種類のクラスター分割方式を例として、例示的に説明する。
【0124】
ステップ520では、各クラスター分割結果に対して、該クラスター分割結果に含まれる複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、該クラスター分割結果に対応する複数の直積状態を取得する。
【0125】
例示的に、上記4つのクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、4つの直積状態を取得する。
【0126】
任意選択的に、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、ターゲットクラスターに対応する少なくとも1つの固有状態を取得する。
【0127】
任意選択的に、ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、対角化アルゴリズムを用いてターゲットクラスターに対応する少なくとも1つの固有状態を取得する。選択的に、対角化アルゴリズムは、変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせた量子の固有状態の求解アルゴリズムのうち少なくとも1つを含むがこれらに限定されない。
【0128】
好ましくは、複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態を直積演算し、複数の直積状態を得る。
【0129】
例示的に、{A={s,s},B={s,…,s}}のクラスター分割方式を例として、まずクラスターAをターゲットクラスターとし、クラスターBの初期状態を
【0130】
【数26】
と仮定し、クラスターBをクラスターAの環境として、クラスターAの近似ハミルトニアンを得て、該近似ハミルトニアンは式(4)で表すことができる。
【0131】
【数27】
ここで、
【0132】
【数28】
【0133】
【数29】
であり、ZはパウリZ演算子を表し、XはパウリX演算子を表し、gは1スピンの自己作用力であり、gは2スピンの間の相互作用力であり、Nは該水素鎖量子系に含まれるスピンの数を表す。
【0134】
例示的に、Hの、基底状態及び第1励起状態の2つの固有状態が得られ、
【0135】
【数30】
とする。
【0136】
例示的に、クラスターAの基底状態
【0137】
【数31】
と第1励起状態
【0138】
【数32】
とから、2つのクラスターBの近似ハミルトニアンが得られ、該近似ハミルトニアンは式(5)のように表すことができる。
【0139】
【数33】
ここで、
【0140】
【数34】
【0141】
【数35】
【0142】
【数36】
であり、ZはパウリZ演算子を表し、XはパウリX演算子を表し、gは1スピンの自己作用力であり、gは2スピンの間の相互作用力であり、Nは該水素鎖量子系に含まれるスピンの数を表す。
【0143】
例示的に、2つのHの4つの固有状態(基底状態及び第1励起状態)
【0144】
【数37】
が得られ、そのうち、j={g,e}、β={g,e}である。
【0145】
例示的に、クラスターBの4つの固有状態
【0146】
【数38】
【数39】
【0147】
を得る。
【0148】
このような再帰による再発散を回避するために、第3ステップまでのみ反復し、反復回数について、本願は限定せず、ここでは3回の反復のみを例として例示的に説明する。
【0149】
例示的に、上記クラスターAの8つの固有状態
【0150】
【数40】
と上記クラスターBの4つの固有状態
【0151】
【数41】
に対して直積演算を行い、8つの直積状態を得る。
【0152】
例示的に、{A’={s,…,sN-2},B’={sN-1,…,s}}のクラスター分割方式に対して、上記方法に従ってクラスターA’の8つの固有状態及びクラスターB’の4つの固有状態を得て、それに対して直積演算を行い、8つの直積状態を得ることもできる。
【0153】
ステップ530では、異なるクラスター分割結果にそれぞれ対応する複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付ける。
【0154】
例示的に、上記クラスターA及びクラスターBの8つの直積状態の中から、4つの直積状態
【0155】
【数42】
【0156】
【数43】
【0157】
【数44】
を選択する。同様に、上記クラスターA’とクラスターB’の8つの直積状態の中から、4つの直積状態を選択する。合計8つの直積状態
【0158】
【数45】
に対して、シュミット直交化処理を行い、八次元のヒルベルト空間を特徴付けるための1組の基底ベクトル
【0159】
【数46】
を得る。
【0160】
ステップ540では、水素鎖量子系のハミルトニアン、圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンを取得する。
【0161】
例示的に、水素鎖量子系のハミルトニアン、八次元ヒルベルト空間における等価ハミルトニアンを取得し、該等価ハミルトニアンは式(6)のように表すことができる。
【0162】
【数47】
ここで、
【0163】
【数48】
であり、Hは水素鎖量子系の元のハミルトニアンを表し、
【0164】
【数49】
は1番目のクラスター分割方式で得られた基底ベクトルであり、
【0165】
【数50】
は2番目のクラスター分割方式で得られた基底ベクトルである。
【0166】
ステップ550では、等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを水素鎖量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得する。
【0167】
任意選択的に、対角化アルゴリズムを用いて等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを取得し、ここで、対角化アルゴリズムは、変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせた量子の固有状態の求解アルゴリズムのうち少なくとも1つを含む。
【0168】
例示的に、断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせた量子の固有状態の求解アルゴリズムを対角化アルゴリズムとすることを例として、等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを取得する。
【0169】
例示的に、断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズムにおいて、量子系は、その瞬間的固有状態に沿って発展する。等価ハミルトニアンHeffについては、初期ハミルトニアンHを選択してから、時間に伴って変化する断熱ハミルトニアンを設計すると、該断熱ハミルトニアンは式(7)のように表すことができる。
【0170】
【数51】
ここで、λ(t)は初期時刻λ(t=0)=0と、末尾時刻λ(t=T)=1を満たす。量子系の初期状態が固有状態に設定される場合、即ち
【0171】
【数52】
であれば、
【0172】
【数53】
の状況において、この量子系は等価ハミルトニアンに対応する固有状態に徐々に発展し、すなわち
【0173】
【数54】
である。実際には、距離が十分に近く、
【0174】
【数55】
【0175】
【数56】
であれば、発展時間Tも十分に短い。
【0176】
例示的に、断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズムでは、非断熱ハミルトニアンを導入する必要があり、該非断熱ハミルトニアンは式(8)のように表すことができる。
【0177】
【数57】
ここで、
【0178】
【数58】
は断熱ハミルトニアンHad(t)のt時刻における瞬間的固有状態である。従って、ハミルトニアンが
【0179】
【数59】
である量子系は、
【0180】
【数60】
及び
【0181】
【数61】
の場合、任意の操作時間において、厳密に固有状態上にあり、すなわち
【0182】
【数62】
である。実際には、非断熱ハミルトニアンは、単ビット近似又は交換子展開などの方法で近似的に推定することができる。
【0183】
断熱変化は距離が十分に近くない限り、所要時間又はステップが非常に多く、また、断熱ショートカット法における急速断熱項が複雑であるため、両者を組み合わせる。式(3)の近似ハミルトニアンを例として、初期ハミルトニアン
【0184】
【数63】
を選択し、及び2つの中間基準点ハミルトニアン
【0185】
【数64】
を設計し、該中間基準点ハミルトニアンは式(9)で表すことができる。
【0186】
【数65】
ここで、
【0187】
【数66】
【0188】
【数67】
であり、XはパウリX演算子を表す。
【0189】
例示的に、初期ハミルトニアン及び近似ハミルトニアンのパラメータである
【0190】
【数68】
【0191】
【数69】
も包括することができる。従ってここでのリープ・フロッグプロセスは合計3段階の変化プロセスを有する。各段階の変化した断熱ハミルトニアンは式(10)のように設計することができる。
【0192】
【数70】
ここで、
【0193】
【数71】
であり、XはパウリX演算子を表す。時間関数は、
【0194】
【数72】
である。ここでTは第i段階の変化時間である。初期状態が、H の基底状態に設定され、リープ・フロッグプロセスの軌跡は以下のとおりである。
【0195】
【数73】
さらに近似ハミルトニアンの固有状態
【0196】
【数74】
及び固有エネルギー
【0197】
【数75】
を得て、それを水素鎖量子系の固有状態及び固有エネルギーとする。
【0198】
例示的に、N>4の水素鎖に対して、多階層クラスター分割の方式を採用することができ、計算空間をN’<=4である水素鎖のハミルトニアンに制限し、例えば8個のスピンを有する水素鎖は、2スピン50個、3スピン5個、4スピン16個のハミルトニアンに分解して計算することができる。なお、計算空間の大きさについて、本願は限定せず、ここではN’<=4である水素鎖のハミルトニアンのみを例として例示的に説明する。
【0199】
上記水素鎖の長さNが3<=N<=8であり、二ビット相互作用の相対的な大きさがg/g=2の固定値である水素鎖量子系の固有状態を取得することについて、本願は実験検証を行い、ここで、基底状態
【0200】
【数76】
の精度F theorの結果図は図6に示すとおりであり、基底状態のエネルギーE theorの結果図は図7に示すとおりである。
【0201】
本願の量子系の固有状態の取得方法の精度を評価するために、精度関数
【0202】
【数77】
を定義する。ここでΨ theorは数値計算により得られた結果であり、Ψ theorは厳密な結果であり、厳密な結果は典型的なコンピュータにおいて、典型的なアルゴリズムである特異値分解により得られたものである。図6に示すように、本願の量子系の固有状態の取得方法で得られた結果は
【0203】
【数78】
であり、精度が高い。図7に示すように、基底状態のエネルギーEg theorの精度はさらに高い(>99.9%)。
【0204】
また、本願はさらに超伝導量子ビットシステムにおいて本願の量子系の固有状態の取得方法を実験して実現する。3つのスピンの相互作用を有する3スピン鎖量子系を例とし、そのハミルトニアン形式は式(11)に示すとおりである。
【0205】
【数79】
2組の実験を行い、第1組の実験は3つのスピンの相互作用の相対的な大きさをg/g=0.1に固定し、2つのスピン相互作用の大きさg/gを0~2.0に変更して、基底状態の精度
【0206】
【数80】
【0207】
【数81】
を得た。Fg theoは全てのプロセスが典型的なコンピュータで実行され、このプロセスを数値シミュレーションすることにより得られた基底状態の精度を指し、Fg expはクラスター及び等価ハミルトニアンHeffの対角化プロセスを量子ビットで実現し、最後に得られた基底状態の精度を指す。
【0208】
第2組の実験は2つのスピン相互作用の相対的な大きさをg/g=2.0に固定し、3つのスピンの相互作用の大きさg/gを0~2.0に変更して、基底状態の精度
【0209】
【数82】
【0210】
【数83】
を得た。F theoは全てのプロセスが典型的なコンピュータで実行され、このプロセスを数値シミュレーションすることにより得られた基底状態の精度を指し、Fg expはクラスター及び等価ハミルトニアンHeffの対角化プロセスを量子ビットで実現し、最後に得られた基底状態の精度を指す。
【0211】
以上から、本願が提供する技術的解決手段は、水素鎖長が3≦N≦8である水素鎖量子系を例として、推定を行い、且つ実験による検証及び実験データに基づいて、本願の量子系の固有状態の取得方法の精度が高いことを証明し、且つ、水素鎖量子系による検証を行い、本方法が汎用性を有することを証明した。
【0212】
以下は本願の装置の実施例であり、本願の方法の実施例を実行するために用いることができる。本願の装置の実施例に開示されていない詳細については、本願の方法の実施例を参照されたい。
【0213】
図8を参照し、それは本願の一実施例が提供する量子系の固有状態の取得装置のブロック図を示す。該装置800は、分割モジュール810、入手モジュール820、選択モジュール830、第1取得モジュール840及び第2取得モジュール850を含むことができる。
【0214】
分割モジュール810は、ターゲット量子系に含まれる複数の粒子をクラスター分割し、複数のクラスターを得て、前記複数のクラスターにおける各クラスターは少なくとも1つの粒子を含むステップに用いられる。
【0215】
入手モジュール820は、前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態に基づき、複数の直積状態を取得するステップに用いられる。
【0216】
選択モジュール830は、前記複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるステップであって、前記圧縮されたヒルベルト空間の次元数は、前記ターゲット量子系の元のヒルベルト空間の次元数より小さいステップに用いられる。
【0217】
いくつかの実施例において、前記選択モジュール830は、前記異なるクラスター分割結果にそれぞれ対応する複数の直積状態の中から、一部の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるステップに用いられる。
【0218】
第1取得モジュール840は、前記ターゲット量子系のハミルトニアンと、前記圧縮されたヒルベルト空間における等価ハミルトニアンとを取得するステップに用いられる。
【0219】
第2取得モジュール850は、前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして取得するステップに用いられる。
【0220】
いくつかの実施形態では、図9に示すように、前記選択モジュール830は取得ユニット831と選択ユニット832とを含む。
【0221】
取得ユニット831は、前記複数の直積状態のそれぞれが対応するエネルギー値を取得するステップに用いられる。
【0222】
選択ユニット832は、前記複数の直積状態の中から、前記エネルギー値が条件に合致する複数の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付けるステップに用いられる。
【0223】
いくつかの実施例において、前記選択ユニット832は、前記複数の直積状態の中から、前記エネルギー値が最小であるn個の直積状態を1組の基底ベクトルとして選択し、前記圧縮されたヒルベルト空間を特徴付け、前記nは正の整数であるステップに用いられる。
【0224】
いくつかの実施例において、前記入手モジュール820は、前記複数のクラスターにおけるターゲットクラスターについて、前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得するステップと、前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンに基づき、前記ターゲットクラスターに対応する少なくとも1つの固有状態を取得するステップと、前記複数のクラスターのそれぞれが対応する固有状態を直積演算し、前記複数の直積状態を得るステップと、に用いられる。
【0225】
いくつかの実施例において、前記第1取得モジュール840は、前記複数のクラスターにおける前記ターゲットクラスター以外の他のクラスターを環境として、前記ターゲットクラスターの前記環境におけるハミルトニアンを取得し、前記ターゲットクラスターの近似ハミルトニアンを取得するステップに用いられる。
【0226】
いくつかの実施例において、前記分割モジュール810は、前記ターゲット量子系に含まれる複数の粒子を、複数の異なる方式に従ってクラスター分割し、複数の異なるクラスター分割結果を得て、ここで、各クラスター分割結果は複数のクラスターを含むステップに用いられる。
【0227】
いくつかの実施例において、前記第2取得モジュール850は、対角化アルゴリズムを用いて前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを取得し、前記対角化アルゴリズムは、変分法に基づいて実現される量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似に基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱ショートカットに基づく量子の固有状態の求解アルゴリズム、断熱近似及び断熱ショートカットを組み合わせた量子の固有状態の求解アルゴリズムのうち少なくとも1つを含むステップと、前記等価ハミルトニアンの固有状態及び固有エネルギーを、前記ターゲット量子系の固有状態及び固有エネルギーとして決定するステップと、に用いられる。
【0228】
図10を参照し、図10は本願の一実施例が提供するコンピュータデバイス1000の構成ブロック図を示す。該コンピュータデバイス1000は、典型的なコンピュータであってもよい。該コンピュータデバイスは上記実施例で提供される量子系の固有状態の取得方法を実施するために用いることができる。具体的には、
該コンピュータデバイス1000は処理ユニット(例えばCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)と、GPU(Graphics Processing Unit、グラフィックスプロセッサ)と、FPGA(Field Programmable Gate Array、フィールドプログラマブル論理ゲートアレイ)等)1001と、RAM(Random-Access Memory、ランダムアクセスメモリ)1002及びROM(Read-Only Memory、リードオンリーメモリ)1003を含むシステムメモリ1004と、システムメモリ1004と中央処理ユニット1001とを接続するシステムバス1005とを備える。該コンピュータデバイス1000はさらに、サーバ内の各デバイス間での情報転送をサポートする基本入力/出力システム(Input Output System、I/Oシステム)1006と、オペレーティングシステム1013、アプリケーション1014、及び他のプログラムモジュール1015を記憶するための大容量記憶デバイス1007とを備える。
【0229】
任意選択的に、該基本入力/出力システム1006は、情報を表示するディスプレイ1008と、ユーザが情報を入力するためのマウス、キーボードなどの入力装置1009とを含む。該ディスプレイ1008及び入力装置1009はいずれもシステムバス1005に接続された入出力コントローラ1010を介して中央処理ユニット1001に接続される。該基本入力/出力システム1006はさらに、キーボード、マウス、又は電子スタイラスなど、複数の他のデバイスからの入力を受信して処理するための入出力コントローラ1010を備えてもよい。同様に、入出力コントローラ1010はさらに、ディスプレイパネル、プリンタ、又は他のタイプの出力デバイスへの出力も提供する。
【0230】
任意選択的に、大容量記憶デバイス1007は、システムバス1005に接続された大容量記憶コントローラ(図示せず)を介して中央処理装置1001に接続される。大容量記憶デバイス1007及びそれに関連するコンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータデバイス1000に不揮発性メモリを提供する。すなわち、該大容量記憶デバイス1007は、ハードディスク又はCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory、読み取り専用光ディスク)ドライブなどのコンピュータ読み取り可能媒体(図示せず)を備えてもよい。
【0231】
一般性を失うことなく、該コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を備えてもよい。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能コマンド、データ構成、プログラムモジュール、又は他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法又は技術で実現される、揮発性及び不揮発性、リムーバブル及び非リムーバブル媒体を含む。コンピュータ記憶媒体はRAM、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory、イレーサブル・プログラマブル・リードオンリーメモリ)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory、エレクトリカリー・イレーサブル・プログラマブル・リードオンリーメモリ)、フラッシュメモリ又は他のソリッドステートメモリ及びその技術、CD-ROM、DVD(Digital Video Disc、高密度デジタルビデオディスク)又は他の光記憶装置、カセットテープ、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置を含む。当然のことながら、当業者であれば該コンピュータ記憶媒体は上記の種類に限定されないことを理解する。上述のシステムメモリ1004及び大容量記憶デバイス1007をメモリと総称することができる。
【0232】
本願の実施形態によれば、該コンピュータデバイス1000は、インターネットなどのネットワークを介してネットワークに接続されたリモートコンピュータによって動作させることもできる。すなわち、コンピュータデバイス1000は、該システムバス1005に接続されたネットワークインタフェースユニット1011を介してネットワーク1012に接続されてもよく、又は、ネットワークインタフェースユニット1011を介して、他のタイプのネットワーク又はリモートコンピュータシステム(図示せず)に接続されてもよい。
【0233】
前記メモリはさらに少なくとも1つのコマンド、少なくとも1つのプログラム、コードセット又はコマンドセットを含み、該少なくとも1つのコマンド、少なくとも1つのプログラム、コードセット又はコマンドセットはメモリに記憶され、且つ設定により、1つ又は複数のプロセッサによって実行されて、上記量子系の固有状態の取得方法を実現する。
【0234】
当業者であれば理解できるように、図10に示す構成は、コンピュータデバイス1000を限定するものではなく、図示より多い又は少ないアセンブリを含むことができ、又は特定のアセンブリを組み合わせることができ、又は異なるアセンブリによる配置を採用することができる。
【0235】
例示的な実施例において、コンピュータ読み取り可能記憶媒体をさらに提供し、前記記憶媒体に少なくとも1つのコマンド、少なくとも1つのプログラム、コードセット又はコマンドセットが記憶され、前記少なくとも1つのコマンド、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は前記コマンドセットはプロセッサにおいて実行される時に上記量子系の固有状態の取得方法を実現する。
【0236】
好ましくは、該コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、ROM(Read Only Memory、リードオンリーメモリ)、RAM(Random Access Memory、ランダムアクセスメモリ)、SSD(Solid State Drives、ソリッドステートドライブ)又は光ディスク等を含むことができる。ここで、ランダムアクセスメモリはReRAM(Resistance Random Access Memory、抵抗変化型メモリ)及びDRAM(Dynamic Random Access Memory、ダイナミックランダムアクセスメモリ)を含むことができる。
【0237】
例示的な実施例において、コンピュータコマンドを含むコンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムをさらに提供し、該コンピュータコマンドはコンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶される。コンピュータデバイスのプロセッサはコンピュータ読み取り可能記憶媒体から該コンピュータコマンドを読み取り、プロセッサは該コンピュータコマンドを実行し、該コンピュータデバイスに上記量子系の固有状態の取得方法を実行させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10