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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ラミネート装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/10 20060101AFI20231201BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20231201BHJP
   B29C 51/16 20060101ALI20231201BHJP
   B32B 37/06 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B29C51/10
B29C51/12
B29C51/16
B32B37/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023138062
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】390007537
【氏名又は名称】株式会社ケーピープラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 竜哉
(72)【発明者】
【氏名】林 和司
(72)【発明者】
【氏名】小熊 靖
(72)【発明者】
【氏名】大西 一成
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-096381(JP,A)
【文献】特開2000-238759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0193323(US,A1)
【文献】実開昭56-149617(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00 - 51/46
B32B 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のフィルムを加熱する加熱手段と、前記フィルムを保持するフィルム保持手段と、前記フィルムを基材の表面に被覆成形する真空吸引手段または圧空手段と、を備えるラミネート装置において、
前記加熱手段と、前記フィルム保持手段に保持された前記フィルムとの間に配置される、熱遮蔽手段として中央部分より分割されて開閉するシャッター装置よりなり、
前記シャッター装置は、
前記フィルム保持手段により保持された前記フィルムを、前記加熱手段によって加熱する際には、開状態に制御され、
前記基材の表面に前記フィルムを前記真空吸引手段又は前記圧空手段によって密着させ、前記基材の表面に前記フィルムを融着させる際には、前記開状態または閉状態を選択して制御されること、
を特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のラミネート装置において、
前記シャッター装置は、
前記フィルムを加熱する際に、前記加熱手段が目標の温度になるまでは前記開状態または前記閉状態を選択して制御されること、
を特徴とするラミネート装置。
【請求項3】
請求項1に記載のラミネート装置において、
前記シャッター装置が、テレスコピック構造よりなり、前記フィルムの送り方向の前方と後方に分かれるように開状態とされること、
を特徴とするラミネート装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のラミネート装置において、
前記基材が、パルプモールド容器又は紙製折箱であること、
を特徴とするラミネート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器などの表面に樹脂フィルムを貼り付ける機能を有するラミネート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の情勢に鑑み、紙製容器の利用が見直されるようになってきた。しかし、従来使われていたプラスチック容器に代替して紙製容器を利用する場合には、液漏れなどの問題を解決する必要がある。そして、液漏れ対策の一環として紙製容器の上にラミネート加工をして液漏れを防ぐ工夫がなされる場合がある。
【0003】
特許文献1には、断熱性紙製容器および断熱性紙製容器に用いる原材料シートに関する技術が公開されている。断熱性紙製容器に用いる原材料シートにおいて、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を形成した原材料シートであって、該紙基材がヒドロキシカルボン酸またはその金属塩を0.3g/m以上6.0g/m以下含有する原材料シートを用いることで、断熱性に優れた紙製容器が提供できる。
【0004】
特許文献2には、防水紙およびその製造方法に関する技術が公開されている。紙基材と、紙基材の少なくとも片面に設けられた、繊維径が60μm以下の微細セルロース繊維を含む下塗り層と、下塗り層の上に最外層として設けられた、スチレン・アクリル系樹脂およびワックスを含む防水層と、を有することで、防湿性とともに防水性を備えた紙の製造が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-83202号公報
【文献】特開2023-59450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載される技術は、何れも平面状の紙基材の表面に防水層を設ける技術であり、熱成形した後の立体形状になっている紙製容器の表面に防水層を設けることは難しい。また、紙製折箱を利用したいという需要もあるが、平面状の紙基材に防水層を設けた後で、紙基材を立体的に折って紙製折箱を形成すると、隙間から漏れてしまう問題があり、接着剤などを用いてその部分を用いて塞ぐ方法は提案されているが、コストがかかる上に完全に漏れ防止をすることは難しい。
【0007】
近年、パルプモールド品や紙製折箱などの紙製容器の需要は高まっており、そうした製品に防水層を設けるために、ラミネートフィルムの裏面に粘着層などを設けて貼り付ける技術も開発されているが、粘着層を設けることでの問題も生じる。環境に配慮するという観点からしても、ラミネートフィルムは極力薄くしたいし、粘着層などを設ければリサイクルに影響が出ることや、コストが上がってしまうという点からも望ましくないからである。このため、紙製容器に対して用いることのできる新たな防水付与方法が模索されている。
【0008】
そこで、紙製容器の表面に防水層を設けることが可能となるラミネート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるラミネート装置は、以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)樹脂製のフィルムを加熱する加熱手段と、前記フィルムを保持するフィルム保持手段と、前記フィルムを基材の表面に被覆成形する真空吸引手段または圧空手段と、を備えるラミネート装置において、
前記加熱手段と、前記フィルム保持手段に保持された前記フィルムとの間に配置される、熱遮蔽手段として中央部分より分割されて開閉するシャッター装置よりなり、
前記シャッター装置は、
前記フィルム保持手段により保持された前記フィルムを、前記加熱手段によって加熱する際には、開状態に制御され、
前記基材の表面に前記フィルムを前記真空吸引手段又は前記圧空手段によって密着させ、前記基材の表面に前記フィルムを融着させる際には、開状態または閉状態を選択して制御されること、
を特徴とする。
【0011】
上記(1)に記載の態様により、中央部分から分割して開閉するシャッター装置をラミネート装置に用いることで、素早く加熱手段からフィルムに対する熱の伝達を遮断することができる。フィルムの加熱は例えば熱板や輻射式加熱手段を用いて行っているが、比較的昇温速度の早い輻射式加熱手段であっても、加熱をOFFにしてからのフィルムに与える影響(加熱)が無くなるまでに多少の時間を要する。
【0012】
しかし、シャッター装置を用いて加熱手段からフィルムに対する熱の伝達を遮断できる構成を採用することで、素早く加熱手段からの影響を遮断することが可能となる。この結果、薄手のフィルムを用いて基材の表面に被覆成形する場合には、過加熱によるフィルムのドローダウンの発生を抑えることができるために、皺の発生などの不具合を押さえることができ、結果的に生産効率の向上及び品質の安定に繋がる。また、金型や基材への密着性を高めるなどの目的で追加加熱したい場合には、シャッター装置を開状態にすることでフィルムへの加熱が可能となる。この際には、シャッター装置の開閉によって加熱を切り替えることが可能であるため、高速に過熱状態に移行できるため、加工時間の短縮に貢献することができる。
【0013】
(2)(1)に記載のラミネート装置において、
前記シャッター装置は、
前記フィルムを加熱する際に、前記加熱手段が目標の温度になるまでは開状態または閉状態を選択して制御されること、
が好ましい。
【0014】
上記(2)に記載の態様により、加熱手段が目標の温度になるまでシャッター装置を閉状態として制御するために、フィルムに対する過加熱を抑制することが可能となる。フィルムの温度を制御するにあたって、加熱手段の温度立ち上がり時間が悪影響を及ぼすことが考えられるため、シャッター装置を開閉することでフィルムに対する温度影響を調整することが可能となる。また、必要に応じて開状態にすることでフィルムを加熱することも可能である。この結果、(1)に記載の効果と同様に過加熱によるフィルムのドローダウンの発生を抑えることができる。また、必要な加熱を加えることで、金型や基材へのフィルムの密着性を高めることができる。
【0015】
(3)(1)または(2)に記載のラミネート装置において、
前記シャッター装置が、テレスコピック構造よりなり、前記フィルムの送り方向の前方と後方に分かれるように開状態となること、
が好ましい。
【0016】
上記(3)に記載の態様により、シャッター装置の収まりを良くすることができる。シャッター装置は、加熱手段がフィルムを加熱するにあたって、フィルムを過度に加熱しないように熱を遮断する効果がある。したがって、開状態にある時は加熱手段とフィルムの間を遮らないように極力コンパクトになっていることが望ましい。そこで、シャッターにテレスコピック構造を採用することで、開状態のシャッター装置の収まりが良くなり、装置の小型化を図ることに貢献することができる。
【0017】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のラミネート装置において、
前記基材が、パルプモールド容器又は紙製折箱であること、
が好ましい。
【0018】
上記(4)に記載の態様により、パルプモールド容器または紙製折箱の表面に、防水機能を持たせた樹脂製のフィルムを貼り付けることが可能となる。環境に配慮した紙製容器に防水機能を持たせることで、例えば食品のトレイとして使いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の、ラミネート装置の概略構成についての説明図である。
図2】本実施形態の、基材の斜視図である。
図3】本実施形態の、製品の断面図である。
図4】本実施形態の、シャッター装置の平面図である。
図5】本実施形態の、シャッター装置の側面図である。
図6】本実施形態の、シャッター装置の動作説明図であり、(A)にはシャッター装置の閉状態を(B)にはシャッター装置の開く途中の状態を、(C)にはシャッター装置の開状態が示されている。
図7】本実施形態の、ラミネート手順を示す概略図であり、(A)には樹脂製フィルムの過熱状態を示し、(B)にはシャッター装置の閉状態を示し、(C)にはラミネート成形を行っている状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明に係る実施形態のラミネート装置100の構成の概略について説明をする。図1は、本実施形態の、ラミネート装置の概略構成について説明する説明図である。ラミネート装置100は、樹脂製フィルムSを加熱するための加熱手段110と、基材Bを固定し、昇降させる昇降台150と、加熱手段110と樹脂製フィルムSの間に配置されるシャッター装置120よりなる。成形対象となる樹脂製フィルムSを保持し、上側に配置された加熱手段110で加熱して基材Bの表面に樹脂製フィルムSを付着させるラミネート装置100である。
【0021】
樹脂製フィルムSは、基材Bに防水機能を付与するためのラミネートに用いるフィルムであり、熱可塑性樹脂よりなる透明なポリプロピレン(PP)製フィルム材を採用している。なお、JISの規格によればフィルムとは、厚さが250μm未満のプラスチックの膜状のものと定義されているが、本実施形態では樹脂製フィルムSの厚みについて20μm程度のものを使用することを想定している。この樹脂製フィルムSは、基材Bの表面に貼り付けられることで防水性を付与することができれば良く、必要に応じてその厚みを変更することを妨げない。また、樹脂製フィルムSはPP製のフィルムに限定されるものではないが、熱可塑性であって紙製容器に対して良好な接着性を有し、防水機能を付与できる樹脂であることが好ましい。
【0022】
図2に、基材の斜視図を示す。図3に、製品の断面図を示す。基材Bは、パルプモールド容器のような紙製のパッケージであり、図2に示すように複数個の容器がタイル上に並べられてなる。そして、図3に示すように基材Bの表面に樹脂製フィルムSを貼り付けることで製品50を得られる。製品50は、紙製のパッケージに樹脂製フィルムSにて防水性能を付与した、樹脂製フィルムSを付着させたものであり、例えばカレー容器などの食品容器である。ただし、特に食品容器に限定せずに、本発明を幅広く適用することを妨げない。
【0023】
このような基材Bは、図示しない任意の高さに昇降可能な昇降機構を備えた昇降台150に保持されている。そして、基材Bの上部には、保持装置130によって保持された樹脂製フィルムSが配置される。樹脂製フィルムSは、原反から巻き出されて保持される構成であり、図1の紙面左から右に向かって送られるようになっている。必要に応じてその構成を変更することを妨げない。例えば、樹脂製フィルムSが矩形に切られて枠体に納められて送られる構成であっても良い。
【0024】
加熱手段110は、図1に示すように、樹脂製フィルムSの上方に配置されて、樹脂製フィルムSを上面から加熱する目的で用いられる輻射式加熱を行うヒーター111群であり、複数のヒーター111がタイル状に並べられてなる。加熱手段110は、図示しない昇降装置に保持されており、樹脂製フィルムSに対して近接・離間可能なように任意の高さに移動可能な構成となっている。また、それぞれのヒーター111は、任意に出力調整することができる。
【0025】
加熱手段110の下には、閉状態で加熱手段110からの熱を物理的に遮蔽する目的で設けられた、シャッター装置120が配置される。図4に、シャッター装置の平面図を示す。図5に、シャッター装置120の側面図を示す。シャッター装置120は、中央が開いて左右に分かれて開くタイプであり、中央側に配置される第1扉121(121a、121b)と、その外側に配置される第2扉122(122a、122b)を備えている。第1扉121と第2扉122はテレスコピック構造となっている。
【0026】
シャッター装置120の開閉方向が樹脂製フィルムSの送り方向に一致するように、シャッター装置120はラミネート装置100に設けられている。したがって、シャッター装置120が開状態にある場合には、第1扉121a及び第2扉122aは図4に示すように進行方向の前側に重なって配置され、第1扉121b及び第2扉122bは進行方向の後ろ側に重なって配置される中央引き分け構造となっている。すなわち、シャッター装置120が開状態にある時には、加熱手段110から樹脂製フィルムSへの加熱をシャッター装置120が妨げない。
【0027】
なお、シャッター装置120の開閉方向は樹脂製フィルムSの送り方向と直交する方向と一致するように配置しても良いが、ラミネート装置100の幅を必要とすることになるので、ラミネート装置100の筐体が大きくなる要因となる。したがって、設計にあたっては適宜判断することが好ましい。
【0028】
ロッドレスシリンダ131は、樹脂製フィルムSの送り方向に平行に2条配置され、ロッドレスシリンダ131の長手方向に対して任意に移動させることのできるスライドテーブル132が備えられている。このスライドテーブル132の上面に、第1扉121が固定される。ロッドレスシリンダ131は図示しない圧縮空気が供給されることで駆動し、スライドテーブル132を前進端から後退端まで移動させる機能を有する。なお、ロッドレスシリンダ131の駆動が、圧縮空気によらず電動モーターを内蔵することで開閉する機構を採用することを妨げない。
【0029】
一方で、第2扉122の一端はローラースライドレール140に支持されている。図示しないが反対側の他端はローラーでガイドされている。ローラースライドレール140は、レール141とスライダー142よりなり、スライダー142に保持されたローラー143が、レール141内を移動することで、第2扉122の開閉がなされる。スライダー142は2つ用意されて、第2扉122の側面に固定されている。
【0030】
図6に、シャッター装置の動作説明図を示す。(A)には、シャッター装置が閉状態にあることを示し、(B)には、シャッター装置が駆動して第1扉が第2扉と重なった状態にあることを示し、(C)には、シャッター装置が開状態にあることを示している。シャッター装置120の開閉にはロッドレスシリンダ131が用いられ、図4及び図6(A)に示される閉状態にある場合には、ロッドレスシリンダ131の前進端にスライドテーブル132がある。
【0031】
そして、スライドテーブル132が移動されて、中央あたりに来た際に図6(B)に示すように、スライドテーブル132に取り付けられた第1扉121bの端部121b1が第2扉122bの端面121b1の内壁に当接することで、第2扉122bの移動を行う。そして、図6(C)に示すようにスライドテーブル132のスライドテーブル132の後退端にまで移動させた状態では、第1扉121bと第2扉122bが重なった状態となっている。なお、シャッター装置120の構造はこれに限定されるものではないが、装置中央から左右に分かれて開く構造が望ましく、テレスコピック構造を採用することがより望ましい。
【0032】
本発明によるラミネート装置100の構成の概略は上記の通りであり、次にラミネート装置100を用いた製品50の製造の手順について簡単に説明を行う。
【0033】
図7に、ラミネート手順を概略図で説明している。(A)には樹脂製フィルムの過熱状態を示し、(B)にはシャッター装置の閉状態を示し、(C)にはラミネート成形を行っている状態を示している。まずは、図7(A)に示すようにラミネート装置100の昇降台150に基材Bを配置する。そして、樹脂製フィルムSを保持装置130によって保持し、シャッター装置120を開状態としながら加熱手段110によって樹脂製フィルムSを加熱する。
【0034】
次に、図7(B)に示すように、加熱された樹脂製フィルムSが所定の温度に到達する時点で、シャッター装置120を閉状態とし、加熱手段110と樹脂製フィルムSとの間の熱伝達を物理的に遮断する。そして、基材Bを樹脂製フィルムSに近接させる。この時に、加熱手段110に図示しない昇降機構を備えて上昇させることで、樹脂製フィルムSやシャッター装置120から物理的な距離をとることで、樹脂製フィルムSに対する熱影響を下げることを妨げない。
【0035】
次に、図7(C)に示すように、真空吸引手段140によって基材Bの下側から空気を引いて、樹脂製フィルムSを基材Bの表面に吸着するような形でラミネートを行う。この結果、図2に示すように基材Bの上に樹脂製フィルムSが融着され、個別に切り出されることで製品50が得られる。
【0036】
本実施形態のラミネート装置100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0037】
まず、紙製容器の表面に防水層を設けることが可能となるラミネート装置100の提供が可能になる点が効果としてあげられる。これは、樹脂製フィルムSを加熱する加熱手段110と、樹脂製フィルムSを保持するフィルム保持手段(保持手段130)と、樹脂製フィルムSを基材Bの表面に被覆成形する真空吸引手段140と、を備えるラミネート装置100において、加熱手段110と、保持手段130に保持された樹脂製フィルムSとの間に配置される、熱遮蔽手段として中央部分より分割されて開閉するシャッター装置120よりなり、シャッター装置120は、保持手段130により保持された樹脂製フィルムSを、加熱手段110によって加熱する際には、開状態に制御され、基材Bの表面に樹脂製フィルムSを真空吸引手段又は圧空手段によって密着させ、基材Bの表面に樹脂製フィルムSを融着させる際には、閉状態に制御されること、を特徴とするからである。
【0038】
課題に示したように、紙製容器(基材B)の表面に防水層を設ける場合には、できるだけ粘着層を設けたくはないし、防水層として機能させる樹脂製フィルムSは薄い方が好ましい。そこで、加熱手段110によって適切に加熱して、適切なタイミングで基材Bの表面に真空吸引手段140を用いて成形することで、基材Bの表面に樹脂製フィルムSを融着させることが可能となる。ここで、樹脂製フィルムSの加熱手段110による加熱は、樹脂製フィルムSの厚みが薄くなるほどコントロールがシビアになる。過加熱によるドローダウンが発生してしまい、皺が寄ったり隙間ができたり製品50の不良に繋がりやすい。
【0039】
そこで、熱遮蔽手段としてシャッター装置120を備えることで、加熱手段110から樹脂製フィルムSへの加熱を遮断する。つまり、シャッター装置120は図1及び図1及び図4に示すように中央から左右に第1扉121(121a、121b)と、その外側に配置される第2扉122(122a、122b)が開いた開状態で、加熱手段110から樹脂製フィルムSへの加熱を遮断せず、閉状態にある場合には樹脂製フィルムSへの加熱を遮断することが可能である。シャッター装置120の開閉にはロッドレスシリンダ131を用いているため、1秒以下での開閉が可能である。
【0040】
このようにシャッター装置120での素早い加熱の遮断によって、従来のような加熱手段110への通電をカットしたり、加熱手段110を樹脂製フィルムSから遠ざけたり、或いは圧縮空気を使って強制的に冷却したりといった手段を用いた場合よりも、短時間で加熱手段110からの熱影響を遮断することが可能となる。シャッター装置120は、ロッドレスシリンダ131を用いて開閉される構造であり、短時間に開閉できる。このため、加熱手段110による樹脂製フィルムSへの過加熱を防ぐために、素早くシャッター装置120を閉めることができ、過加熱抑制に繋がる。
【0041】
したがって、樹脂製フィルムSに対する加熱時間をコントロールし易くなり、薄い樹脂製フィルムSを用いた場合にもドローダウンによる影響を抑えたり、ピンホールの発生などを抑制したりすることができる。基材Bへ樹脂製フィルムSを溶着する場合、重量を下げコストを下げる意味でも、薄手の樹脂製フィルムSを用いることが好ましい。また、製品50に対する樹脂製フィルムSの使用量を下げることで、環境への配慮アピールをすることに繋げられる。
【0042】
また、こうした基材Bへ樹脂製フィルムSを加熱して溶着することでラミネートを行う手法は、樹脂製フィルムSの裏面に粘着剤を設ける必要がなくなる点で、コストダウンを図ることに繋がり、結果的に製品50の生産性に寄与できる。
【0043】
なお、基材Bへ樹脂製フィルムSを加熱して溶着するにあたって、再度、シャッター装置120を開けて加熱をすることで、基材Bに対する樹脂製フィルムSの密着性を高めることが可能となるため、閉状態だけではなく開状態となるように制御することを妨げない。この場合は、樹脂製フィルムSの加熱後には一度閉状態とし、基材Bに樹脂製フィルムSが接したところで再度加熱して密着性を高めるような手順が考えられる。
【0044】
以上、本発明に係るラミネート装置100に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、樹脂製フィルムSとしてPP製のものを用いているが、これに代わる防水性能を有する樹脂製素材を用いることを妨げない。また、基材Bはパルプモールド容器としているが、紙製折箱に適用することを妨げない。紙製折箱の内側に樹脂製フィルムSによる防水層を設けることがでるので、折り目部分から浸水することを防ぐことができる。また、ラミネート成形の際には真空吸着手段140を用いると説明しているが、圧空成形手段を用いることを妨げない。
【0045】
また、シャッター装置120の使用タイミングについて、加熱手段110による樹脂製フィルムSの加熱終了の時に用いる事例を示しているが、加熱開始の時に用いることを妨げない。加熱手段110の加熱開始時にはシャッター装置120を閉状態としておき、加熱手段110が立ち上がる直前もしくは立ち上がった段階で開状態にするような使い方をすることで、樹脂製フィルムSの加熱時間をコントロールすることが可能となる。加熱手段110に、熱板を用いることで加熱時間を要する場合には有効に機能すると考えられる。
【符号の説明】
【0046】
S 樹脂製フィルム
B 基材
100 ラミネート装置
110 加熱手段
120 シャッター装置
130 保持手段
140 真空吸引手段
【要約】
【課題】紙製容器の表面に防水層を設けることが可能となるラミネート装置100の提供。
【解決手段】樹脂製フィルムSを加熱する加熱手段110と、樹脂製フィルムSを保持するフィルム保持手段(保持手段130)と、樹脂製フィルムSを基材Bの表面に被覆成形する真空吸引手段140と、を備えるラミネート装置100において、加熱手段110と、保持手段130に保持された樹脂製フィルムSとの間に配置される、熱遮蔽手段として中央部分より分割されて開閉するシャッター装置120よりなり、シャッター装置120は、保持手段130により保持された樹脂製フィルムSを、加熱手段110によって加熱する際には、開状態に制御され、基材Bの表面に樹脂製フィルムSを真空吸引手段又は圧空手段によって密着させ、基材Bの表面に樹脂製フィルムSを融着させる際には、閉状態に制御される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7