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特許7394434ひび割れ補修方法およびひび割れ補修スプレー
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  • 特許-ひび割れ補修方法およびひび割れ補修スプレー 図1
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  • 特許-ひび割れ補修方法およびひび割れ補修スプレー 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ひび割れ補修方法およびひび割れ補修スプレー
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20231201BHJP
   C04B 41/68 20060101ALI20231201BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
E04G23/02 A
C04B41/68
B05B9/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019095236
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020190102
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】515213722
【氏名又は名称】株式会社フォーシェル
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】淺本 隆広
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-061201(JP,A)
【文献】特開2014-076932(JP,A)
【文献】特開2006-348677(JP,A)
【文献】特開2007-008801(JP,A)
【文献】特開2004-346635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
C04B 41/65-41/69
B05B 9/00-9/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸ナトリウムを主成分とする補修剤をセメント硬化体に生じたひび割れに注入するひび割れ補修方法であって、
記ひび割れに対して先の細い器具を用いて所定の間隔で複数のポンチ穴を形成する工程と、
補修スプレーに圧縮ガスとともに貯蔵された前記補修剤を、前記補修スプレーのノズルの先端を前記ポンチ穴を介して前記ひび割れに挿入した状態で、前記ノズルから噴射する工程と、
前記ひび割れの周囲に、水を散水する工程と、を備えていることを特徴とするひび割れ補修方法。
【請求項2】
ケイ酸ナトリウムを主成分とする補修剤と、
前記補修剤および圧縮ガスが貯蔵されたスプレー缶と、
前記スプレー缶の頭部に取り付けられたアクチュエータと、
前記アクチュエータと前記スプレー缶との取付部に設けられた逆止弁と、
前記スプレー缶内において前記補修剤を前記逆止弁に誘導する送液チューブと、
前記アクチュエータに取り付けられた噴出しノズルと、
前記スプレー缶の内部を移動することで前記補修剤を攪拌する複数の攪拌玉と、を備えるひび割れ補修スプレーであって、
前記送液チューブは、少なくとも前記逆止弁から前記スプレー缶の底部に至る長さを有していて、先端複数の前記攪拌玉の内の一つに形成された貫通孔に挿入された状態で当該攪拌玉に接着されていることを特徴とするひび割れ補修スプレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひび割れ補修方法およびひび割れ補修スプレーである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物には、経年劣化や大きな外力が作用することによりひび割れが生じる場合がある。コンクリート構造物に生じたひび割れに雨水などが浸透すると、コンクリート構造物の劣化の進行が早まってしまう。そのため、コンクリート構造物に生じたひび割れは速やかに補修するのが望ましい。
【0003】
ひび割れの補修方法としては、エポキシ樹脂などの樹脂系接着剤やウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂などをひび割れに注入する方法が知られている。しかしながら、樹脂系の接着剤は、経年劣化により効果が低下する恐れがある。そのため、特許文献1には、ケイ酸ナトリウムを主成分とする補修剤を、コンクリート部材の表面に塗布してひび割れに浸透させる補修方法が開示されている。この補修方法によれば、ひび割れに浸透した補修剤がコンクリート中のカルシウムと反応してゲル化することで、ひび割れを閉塞することができる。補修剤はコンクリートと反応してゲル化するため、補修剤が劣化することによって閉塞効果が低減することがない。
【0004】
コンクリートに生じたひび割れが微細な場合(ひび割れの幅が小さい場合)には、補修剤を浸透させることが困難であった。そのため、特許文献2には、微細なひび割れが生じたコンクリート部材の補修方法として、加熱したひび割れ部分を含むコンクリート部材の表面に補修剤を塗布した後、冷却する方法が開示されている。この補修方法は、冷却時のひび割れ内の圧力減少を利用して補修剤をひび割れの奥部にまで浸透させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-323333号公報
【文献】特開2019-027204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の補修方法では、コンクリート部材を加熱するのに手間がかかる。また、コンクリート部材のひび割れ部分を加熱するための装置が必要となる。また、壁面等に生じたひび割れを補修する場合には、横方向に補修剤を浸透させることができなかった。
【0007】
このような観点から、本発明は、補修対象物の向きや形状などに限定されることなく、簡易かつ安価にひび割れを補修することを可能としたひび割れ補修方法およびひび割れ補修スプレーを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のひび割れ補修方法は、ケイ酸ナトリウムを主成分とする補修剤をセメント硬化体に生じたひび割れに注入するものである。補修剤は、補修スプレーに圧縮ガスとともに貯蔵されている。本発明のひび割れ補修方法では、まず、前記ひび割れに対して先の細い器具を用いて所定の間隔で複数のポンチ穴を形成する。次に、前記補修スプレーのノズルの先端を前記ポンチ穴を介して前記ひび割れに挿入した状態で、前記ノズルから噴射する。そして、補修剤の噴射後、前記ひび割れの周囲に、水を散水する。
【0009】
かかるひび割れ補修方法によれば、圧縮ガスを利用して補修剤をひび割れ内に噴射するため、横向きや上向きに補修剤を浸透させる場合であっても、補修剤をひび割れの奥まで浸透させることができる。ひび割れ内に浸透した補修剤は、セメント硬化体(コンクリート、モルタル、セメントペースト等)のカルシウム分と反応してゲル化することでひび割れを塞ぐ。また、加熱装置等の特別な装置を要することなく施工することができる。
【0010】
また、本発明のひび割れ補修スプレーは、ケイ酸ナトリウムを主成分とする補修剤と、前記補修剤および圧縮ガスが貯蔵されたスプレー缶と、前記スプレー缶の頭部に取り付けられたアクチュエータと、前記アクチュエータと前記スプレー缶との取付部に設けられた逆止弁と、前記スプレー缶内において前記補修剤を前記逆止弁に誘導する送液チューブと、前記アクチュエータに取り付けられた噴出しノズルと、前記スプレー缶の内部を移動することで前記補修剤を攪拌する複数の攪拌玉とを備えている。前記送液チューブは、少なくとも前記逆止弁から前記スプレー缶の底部に至る長さを有していて、先端複数の前記攪拌玉の内の一つに形成された貫通孔に挿入された状態で当該撹拌玉に接着されている。
【0011】
かかるひび割れ補修スプレーによれば、ケイ酸ナトリウムを主成分とした補修剤をひび割れ内に噴射して、ひび割れの奥まで補修剤を浸透させることができる。また、送液チューブの先端に攪拌玉が取り付けられているため、スプレー缶の向きを変化させた場合であっても、攪拌玉の重量によって送液チューブの先端を常に缶の下側(補修剤内)に位置させることができる。そのため、スプレー缶を逆さ(上下を逆)にした場合であっても、補修剤をひび割れに注入することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のひび割れ補修方法およびひび割れ補修スプレーによれば、補修対象物の向きや形状などに限定されることなく、簡易かつ安価にひび割れを補修することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態のかかるひび割れ補修方法の概要を示す斜視図である。
図2】ひび割れ補修に使用するひびわれ補修スプレーを示す断面図である。
図3】ひび割れ補修スプレーの使用状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態では、図1に示すように、コンクリート構造物の壁(セメント硬化体)1に生じたひび割れ11を補修する場合について説明する。ひび割れ11の補修は、ケイ酸ナトリウムを主成分とする補修剤2をひび割れに注入することにより行う。
【0015】
補修剤2は、補修スプレー(ひび割れ補修スプレー)3を利用して、ひび割れに注入する。補修スプレー3は、図2に示すように、補修剤2および圧縮ガス4が貯蔵されたスプレー缶31と、スプレー缶31の頭部に取り付けられたアクチュエータ32と、アクチュエータ32とスプレー缶31との取付部に設けられた逆止弁33と、スプレー缶31内において補修剤2を逆止弁33に誘導する送液チューブ34と、アクチュエータ32に取り付けられた噴出しノズル35とを備えている。
【0016】
補修剤2を構成する材料は、ケイ酸ナトリウムを主成分としていれば限定されるものではないが、本実施形態では、ナトリウムシリケート、カリウムシリケートおよびリチウムシリケートのうちの少なくとも2種類以上のアルカリ金属化合物を混合してなるものを使用する。補修剤2の比重は限定されるものではないが、1.2~1.3程度とする。また、圧縮ガス4としては液化石油ガス(LPGまたはLPガス)を使用する。なお、圧縮ガス4の種類は限定されるものではなく、例えば、ジメチルエーテル(DME)を使用してもよい。
【0017】
スプレー缶31は、補修剤2および圧縮ガス4を貯蔵する容器である。スプレー缶31は、アルミニウム合金により構成されたいわゆるアルミ缶からなる。なお、スプレー缶31を構成する材料は、内容物(圧縮ガス4)に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、スチール缶であってもよい。スプレー缶31は、高さ約15mm、外径約5cmの円筒状を呈していて、スプレー缶31の底部は上向きかつ椀型に窪んでいる。また、スプレー缶31の上部(円筒状を呈する胴部の上部分)は、上に向かうにしたがって直径が縮小するように傾斜していて、上端部は蓋板37により遮蔽されている。また、蓋板37の中心部には、逆止弁33の弁棒38を挿通するための貫通孔が形成されている。なお、スプレー缶31の形状は限定されるものではなく、例えば、底部の窪みや上部の傾斜部は必ずしも形成されている必要はない。
【0018】
アクチュエータ32は、逆止弁33を開口するためのボタンの役割を果たすとともに、補修剤2を噴射するための送液路としての機能を果たす。アクチュエータ32は、蓋板37の上側において、逆止弁33の弁棒38の蓋板37から突出した部分に取り付けられている。アクチュエータ32には、噴出しノズル35が取り付けられている。アクチュエータ32は、弁棒38を介してスプレー缶31から供給された補修剤2を噴出しノズル35に誘導する。アクチュエータ32は、弁棒38に対して着脱可能である。補修スプレー3の未使用時には、アクチュエータ32を弁棒38から取り外して、補修スプレー3の頭部にキャップ(図示せず)を取り付ければよい。
【0019】
噴出しノズル35は、外径が1mmの金属管により構成されている。補修剤2として、浸透性に優れた水溶液を使用しているため、外径が1mmの噴出しノズル35であっても詰まり難く、細いひび割れに対しても補修することができる。噴出しノズル35は、アクチュエータ32に対して着脱可能であり、使用後に清掃(水洗い)することが可能である。噴出しノズル35を構成する材料は限定されるものではない。また、噴出しノズル35の長さは、適宜決定すればよい。噴出しノズル35の外径は、2mm以下であるのが望ましい。
【0020】
逆止弁33は、スプレー缶31の開口部を遮蔽してスプレー缶31の内容物(補修剤2および圧縮ガス4)の流出および外部からのスプレー缶31内への不純物の流入を防止するとともに、弁棒38を操作することにより開口させた際に補修剤2を噴射する際の流路として機能する。逆止弁33は、スプレー缶31の蓋板37の内面(スプレー缶31の内側に面する面)に取り付けられている。逆止弁33の上部(蓋板37との当接部)から延設された弁棒38は、蓋板37を貫通している。弁棒38は筒状の部材からなる。逆止弁33は、アクチュエータ32を介して弁棒38を押すことにより開口する。逆止弁33が開口すると、圧縮ガス4の圧力により補修剤2が弁棒38を介してアクチュエータ32に供給される。
【0021】
送液チューブ34は、スプレー缶31の内容物(補修剤2)を逆止弁33に誘導する。送液チューブ34の一端は逆止弁33に接続されていて、他端には攪拌玉36が取り付けられている。送液チューブ34は、少なくとも逆止弁33からスプレー缶31の底部に至る長さを有している。送液チューブ34は可とう性を有した軟質材料(例えば、ポリ塩化ビニル等)からなり、攪拌玉36の重さにより撓む。送液チューブ34は、撓んだ場合であっても、補修剤2を送液するための内空を確保する強度を有している。
【0022】
攪拌玉36は、スプレー缶31の内部を移動することで内容物(補修剤2)を攪拌する。攪拌玉36は、球状を呈している。攪拌玉36には送液チューブ34を挿入可能な貫通孔が形成されている。攪拌玉36は、貫通孔に送液チューブ34を挿入した状態で、送液チューブ34に接着されている。なお、攪拌玉36の送液チューブ34への固定方法は限定されるものではない。また、攪拌玉36を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、ガラスや金属を使用すればよい。スプレー缶31には、送液チューブ34に取り付けられた攪拌玉36の他に、他の攪拌玉36が配設されていてもよい。攪拌玉36の数や形状などは限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0023】
次に、補修スプレー3を利用したひび割れ補修方法について説明する。
ひび割れ11を補修する際には、図1に示すように、まず、ひび割れ11に噴出しノズル35の先端を挿入する。ひび割れ11の幅が小さくて噴出しノズル35を挿入することができない場合(例えば、ひび割れ幅が1mm以下)には、ひび割れ11に対して先の細い器具(例えば、千枚通しやドリル等)を用いて内径が1mm以上のポンチ穴12を形成し、このポンチ穴12に噴出しノズル35を挿入すればよい。このとき、ポンチ穴12同士の間隔は、例えば、50mm程度とする。また、ひび割れが壁(セメント硬化体)1を貫通している場合には、コンクリート部材の背面(補修スプレー3側の面の反対側の面)のひび割れ部を養生テープまたは再剥離型シーリング材で目止めを行うことで補修剤2の流出を防止する。
【0024】
ひび割れ11に噴出しノズル35を挿入したら、アクチュエータ32を押すことで、逆止弁33を開口し、アクチュエータ32および噴出しノズル35を介して補修剤2をひび割れ11内に注入する。噴出しノズル35から噴射された補修剤2は、ひび割れ11に沿って上下左右に浸透する。補修剤2の注入は、噴出しノズル35の周囲の所定範囲においてひび割れ11の表面に補修剤2が染み出すまで行う。補修剤2の注入は、ひび割れ11に沿って約50mm間隔で行う。また、ひび割れ11が縦方向に形成されている場合には、ひび割れ11の下部から順次上方に移動しながら補修剤2を注入していく。なお、補修剤2を注入する際の間隔(ポンチ穴12同士の間隔)は限定されるものではない。
【0025】
ひび割れ11に補修剤2を注入したら、補修剤2を1時間から2時間以上、好ましくは1時期間から4時間程度乾燥させる。補修剤2の乾燥時間は、施工時の季節、気温、湿度等により適宜決定すればよい。補修剤2を乾燥させたら、ひび割れ11の周囲に水を散水する。水の散水は、霧吹き等を利用して、コンクリート部材の表面が湿る程度に行う。散水と乾燥を2回以上繰り返すものとする。散水の回数は限定されるものではなく、例えば1回でもよいし、3回以上行ってもよい。
【0026】
散水後、ひび割れ11の表面を水洗い清掃する。清掃は、コンクリート表面に滲出した補修剤2によるべたつきがなくなるまで行う。なお、コンクリート部材の清掃に洗剤を使用する場合には中性洗剤を使用し、洗剤は十二分に洗い流す。なお、ひび割れ11の清掃およびひび割れ11に対する散水は、水などをひび割れの内部に直接圧入することがないように行う。
【0027】
ひび割れ11に注入された補修剤2は、ひび割れ11に面するコンクリートのカルシウム分と反応してゲル化する。補修剤2がゲル化すると、ひび割れ11が塞がれるため、コンクリート部材(壁1)の内部への水や劣化因子の侵入を防ぎ、ひび割れ11の内部を保護することができる。また、アルカリ性の補修剤2を注入することで、コンクリート(壁1)内の鉄筋などの腐食を抑制することができる。
【0028】
また、補修剤2が注入されたひび割れ11の周囲に水を散水することで、コンクリートのカルシウム分とケイ酸ナトリウムとの反応が促進し、防水機能や止水効果が向上する。すなわち、水分を供給することで補修剤2が希釈されて比重が低下してコンクリート内に染み込み易くなるとともに、コンクリート内のカルシウム分が溶出しやすくなることで、反応が促進する。
【0029】
送液チューブ34の先端に攪拌玉36が取り付けられているため、図3に示すように、スプレー缶31を逆さ(アクチュエータ32を下側)にしても、送液チューブ34の先端は下側に位置する。そのため、送液チューブ34の先端(補修剤7の吸引口)が補修剤2内に配置された状態が維持されるため、スプレー缶31を逆さにした状態でも補修剤2の噴射が可能となる。
【0030】
ひび割れの補修は、特別な機器や工具を使用する必要はなく、補修スプレー3から噴射するのみで完了するため、作業が簡易である。また、特別な技術を必要としないため、作業者によって補修効果にムラが生じることもない。また、補修スプレー3は、高さ15cm~20cm程度、外径4~6cm程度と小型なため、ポケットなどに収容することができ、持ち運び易い。また、使用方法も簡単なため、作業員以外の職員などが構造物の点検時に、簡易に補修作業を実施することもできる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、噴出しノズル35をひび割れ11に挿入した状態で、補修剤2を注入するものとしたが、噴出しノズル35は必ずしもひび割れ11に挿入する必要はない。例えば、噴出しノズル35のひび割れ11の表面に当接させた状態で補修剤2を噴射することで、補修剤2をひび割れ11に圧入してもよい。また、ひび割れ11の表面を養生テープ等で覆った状態で、養生テープ内に噴出しノズル35を挿入して、補修剤2を噴射することで、ひび割れ11内に補修剤2を圧入してもよい。
また、ポンチ穴12は、クラック幅が大きい場合であっても形成してもよい。
【0032】
補修剤2のひび割れ11への注入および散水が完了したら、安心補修スティック(住友大阪セメント株式会社製)を利用して、ひび割れ11表面の補修を行ってもよい。安心補修スティックは、湿潤状態のひび割れ11に対して直角方向に擦り付けることでひび割れ11の表面に擦り込んだ後、乾燥させる。
【0033】
前記実施形態では、コンクリート壁(壁1)に生じたひび割れ11を補修剤2により補修する場合について説明したが、補修対象物は、セメント系硬化体により構成されたものであれば限定されるものではない。例えば、モルタルやセメントペースト等の補修に使用してもよい。また、補修対象物は壁1に限定されるものではなく、例えば、床板、橋梁、トンネル覆工等の補修に使用してもよい。また、タイルに生じたひび割れ11の補修に、本実施形態の補修スプレー3を使用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 壁(セメント硬化体)
11 ひび割れ
12 ポンチ穴
2 補修剤
3 補修スプレー(ひび割れ補修スプレー)
31 スプレー缶
32 アクチュエータ
33 逆止弁
34 送液チューブ
35 噴出しノズル
36 攪拌玉
37 蓋板
38 弁棒
4 圧縮ガス
図1
図2
図3