(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】シリンダードライヤー及びシリンダードライヤーのドレン排出装置
(51)【国際特許分類】
D21F 5/10 20060101AFI20231201BHJP
F16T 1/00 20060101ALI20231201BHJP
D06B 15/00 20060101ALI20231201BHJP
D06B 15/09 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
D21F5/10
F16T1/00 E
D06B15/00
D06B15/09
(21)【出願番号】P 2019221759
(22)【出願日】2019-12-07
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】飛田 泰平
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-310699(JP,A)
【文献】特開昭51-123302(JP,A)
【文献】実公昭51-046487(JP,Y1)
【文献】特表平05-508214(JP,A)
【文献】実開昭55-106695(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0182534(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107312876(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B~J
D06B~J
F16T
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気の熱を利用して被加熱物を加熱するシリンダードライヤーであって、
蒸気が内部に導入され、回転しながら外周面を通過する被加熱物を加熱するシリンダーロール、
前記シリンダーロールの内部で発生したドレンを外部に排出するドレン排出部であって、前記シリンダーロールの内周面に対向してドレンが流入する開口を形成する開口端を有するサイフォン管と、ドレンを貯留する貯留部を有する貯留部材であって前記開口端を貯留部に収容して前記開口を水封する貯留部材と、を有するドレン排出部、
を備え、
前記貯留部材は、前記開口と前記シリンダーロールの内周面との間に位置するように、前記サイフォン管に支持され
、
前記貯留部は、平面形状が前記開口端の形状に沿った環状の溝である、
ことを特徴とするシリンダードライヤー。
【請求項2】
蒸気の熱を利用してシリンダーロールの外周面を通過する被加熱物を加熱するシリンダードライヤーにおいて、該シリンダーロールの内部に発生したドレンを排出するドレン排出装置であって、
前記シリンダーロールの内周面に対向してドレンが流入する開口を形成する開口端を有するサイフォン管、
ドレンを貯留する貯留部を有する貯留部材であって前記開口端を貯留部に収容して前記開口を水封する貯留部材、
を備え、
前記貯留部材は、前記開口と前記シリンダーロールの内周面との間に位置するように、前記サイフォン管で支持され
、
前記貯留部は、平面形状が前記開口端の形状に沿った環状の溝である、
ことを特徴とするシリンダードライヤーのドレン排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気の熱を利用して被加熱物を加熱するシリンダードライヤー及びシリンダードライヤーのドレン排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工場や繊維工場等における抄紙機などでの湿紙の乾燥には、ヤンキードライヤー等のシリンダードライヤーが用いられる(例えば、特許文献1参照)。シリンダードライヤーでは、シリンダーロールが回転しながら外周面を通過する被加熱物を加熱する。シリンダーロールは、蒸気が内部に導入され、蒸気の熱を利用して加熱を行う。また、シリンダードライヤーは、シリンダーロールの内部で発生したドレンを外部に排出する排出部(ドレン排出装置)を備える。
【0003】
ドレン排出装置は、開口がシリンダーロールの内周面に対向する排出管(サイフォン管)を備えている。サイフォン管の下流側には、例えばスチームトラップが配置される。ドレンは、開口からサイフォン管内を通過してスチームトラップに流入することで外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したシリンダードライヤーでは、シリンダーロールが回転するため、ドレンが波打つ場合がある。ドレンが波打っている状態では、サイフォン管に気体と液体(ドレン)とが交互に入りやすくなる。この場合、気体が含まれない場合に比べてドレンの排出効率が低下してしまう。また、サイフォン管の下流側にスチームトラップが配置されている場合、ドレンに含まれる気体によって、スチームトラップが開弁してしまうスチームロッキング現象が発生するおそれがある。このスチームロッキング現象によっても、ドレンの排出効率が低下してしまう。
【0006】
この発明は、ドレンの排出効率を向上させることができるシリンダードライヤー及びシリンダードライヤーのドレン排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される蒸気の熱を利用して被加熱物を加熱するシリンダードライヤーは、シリンダーロール及びドレン排出部を備える。シリンダーロールは、蒸気が内部に導入され、回転しながら外周面を通過する被加熱物を加熱する。ドレン排出部は、シリンダーロールの内部で発生したドレンを外部に排出する。ドレン排出部は、シリンダーロールの内周面に対向してドレンが流入する開口を形成する開口端を有するサイフォン管と、ドレンを貯留する貯留部を有する貯留部材であって開口端を貯留部に収容して開口を水封する貯留部材と、を有する。貯留部材は、開口とシリンダーロールの内周面との間に位置するように、サイフォン管に支持される。
【0008】
上記貯留部は、平面形状が環状の溝であってもよい。
【0009】
本発明によって提供される、蒸気の熱を利用してシリンダーロールの外周面を通過する被加熱物を加熱するシリンダードライヤーにおいて、シリンダーロールの内部に発生したドレンを排出するドレン排出装置は、サイフォン管及び貯留部材を備える。サイフォン管は、シリンダーロールの内周面に対向してドレンが流入する開口を形成する開口端を有する。貯留部材は、ドレンを貯留する貯留部を有する貯留部材であって開口端を貯留部に収容して開口を水封する。また、貯留部材は、開口とシリンダーロールの内周面との間に位置するように、サイフォン管で支持される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、シンダーローラーの開口が貯留部材によって水封されているので、ドレンが波打っている状態であっても、シリンダーローラ内部の気体がサイフォン管に入ってしまうことを抑制できる。これにより、ドレンの排出効率を向上させることができる。また、サイフォン管の下流側にスチームトラップが配置されている場合であっても、気体がサイフォン管に入ってしまうことを抑制できるので、スチームロッキング現象が発生することを防止でき、ドレンの排出効率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施形態に係るシリンダードライヤーの概略構成を示す部分断面図である。
【
図2】この発明の実施形態に係るシリンダードライヤーのサイフォン管及びサイフォンプレートの概略構成を拡大して示す断面図である。
【
図3】この発明の実施形態に係るサイフォンプレートの平面図である。
【
図4】この発明の実施形態に係るシリンダードライヤーのサイフォン管及びサイフォンプレートの概略構成を拡大して示す断面図である。
【
図5】この発明の他の実施形態に係るシリンダードライヤーのサイフォン管及びサイフォンプレートの概略構成を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照してこの発明の実施形態であるシリンダードライヤーについて説明する。なお、この発明の構成は、実施形態に限定されるものではない。
【0013】
最初に、シリンダードライヤー1の構成について
図1~
図3を参照しつつ説明する。
図1は、この発明の実施形態に係るシリンダードライヤー1の概略構成を示す部分断面図である。
図2は、
図1に示すシリンダードライヤー1の一部を拡大した断面図であり、サイフォン管31及びサイフォンプレート33の概略構成を示す。
図3は、サイフォンプレート33の平面図である。
【0014】
シリンダードライヤー1は、製紙工場や繊維工場等における抄紙機などに用いられ、蒸気の熱を利用して湿紙等の被加熱物を加熱する。シリンダードライヤー1は、シリンダーロール10、ロータリージョイント部20及びドレン排出部30等を備える。
【0015】
シリンダーロール10は、中空の円筒形状であり、ロータリージョイント部20の中心軸を中心にして回転可能に配置される。シリンダーロール10は、回転しながら外周面に接する被加熱物(不図示)を、蒸気供給口21から供給された蒸気によって間接的に加熱する。なお、シリンダーロール10は回転しながら外周に接する被加熱物を加熱するが、ロータリージョイント部20、排出部30は回転しない。
【0016】
ロータリージョイント部20は、シリンダーロール10を回転可能に支持する。また、ロータリージョイント部20は、蒸気供給口21、供給路22、排出接続口23等を有する。蒸気供給口21は、供給管(不図示)と供給路22を連通し、蒸気を蒸気源(不図示)から供給路22に導入(供給)する。供給路22は、シリンダーロール10の内部に連通し、蒸気をシリンダーロール10に供給する。排出接続口23は、後述する水平管32に接続され、シリンダーロール10の内部のドレンを外部に排出する。
【0017】
ドレン排出部30は、シリンダーロール10の内部で発生したドレンを外部に排出するサイフォン式の排出装置(ドレン排出装置)である。ドレン排出部30は、サイフォン管31、水平管32、サイフォンプレート33等を有する。サイフォン管31は、L字形状を呈し、一端がサイフォンプレート33を介してシリンダーロール10の内周面に対向する。サイフォン管31の一端は、開口311を形成する開口端である。また、サイフォン管31の他端は、水平管32に接続される。水平管32は、供給路22の内部に配置され、サイフォン管31と排出接続口23とを連通する。ドレンは、サイフォンの原理によって、開口311からサイフォン管31内に流入し、水平管32及び排出接続口23を通過して、例えば排出接続口23の下流に配置されたスチームトラップ(不図示)から外部に排出される。
【0018】
サイフォンプレート33は、ドレンを貯留する貯留部331を有する貯留部材である。サイフォンプレート33は、開口311とシリンダーロール10の内周面との間に位置するように、サイフォン管31に固定支持されている。例えば、支持棒(不図示)でサイフォンプレート33とサイフォン管31とを連結することで支持すればよい。サイフォンプレート33とシリンダーロール10の内周面との間には、僅かな隙間が設けられている。
【0019】
貯留部331は、環状の溝であり、ドレンを貯留する。また、貯留部331は、
図2に示すように、開口311を形成するサイフォン管31の開口端を収容する。そのため、貯留部331は、
図4に示すように、ドレンが貯留されている状態では開口311を水封する。水封によって、シリンダーロール10の内部にある気体がサイフォン管31に流入することが防止される。なお、ドレンは、水封されている状態であっても、サイフォン管31に流入する。
【0020】
なお、貯留部331の深さ、サイフォン管31の開口端の貯留部内331における位置は、発生するドレンの量などに応じて決定すればよい。
【0021】
次に、ドレンの排出について
図4(A)~
図4(C)を参照しつつ説明する。
図4(A)~
図4(C)は、
図2に示す断面図にドレンWを表示した状態の一例を示す。
図4(A)は、ドレンWが波打っていない状態を示し、
図4(B)及び
図4(C)はドレンWが波打っている状態を示す。
【0022】
シリンダードライヤー1は、被加熱物を加熱する際、シリンダーロール10を回転させながらシリンダーロール10の内部に蒸気を導入する。そして、回転しているシリンダーロール10の内部にドレンが発生する。シリンダーロール10は回転しているので、発生したドレンWは、
図4(A)~
図4(C)に示すように、シリンダーロール10の内周面に沿って溜まる。また、サイフォンプレート33の貯留部331にもドレンが溜まるので、開口311も水封される。
【0023】
図4(A)に示すようにドレンWが波打っていない状態では、シリンダーロール10の内周面のドレンWが、貯留部331を介してサイフォン管31内に流入していく。また、ドレンWが波打っている状態では、
図4(B)及び
図4(C)に示すような状態が交互に繰り返し生じる。
図4(B)は、貯留部331を介して、シリンダーロール10の内周面のドレンWとサイフォン管31内のドレンWとが連結している状態である。この状態においては、シリンダーロール10の内周面のドレンWが、貯留部331を介してサイフォン管31内に流入していく。
図4(C)は、シリンダーロール10の内周面のドレンWとサイフォン管31内のドレンWとの連結が切れている状態である。この状態においても、ドレンWがサイフォン管31内に流入しようとするため、サイフォンプレート33がない場合には、気体がサイフォン管31に流入しやすいが、本実施形態では貯留部331のドレンWによって開口311が水封されているので、気体の流入が最小限に抑えられる。なお、この状態においては、貯留部331内のドレンWがサイフォン管31内に流入していく。
【0024】
以上のように、シンダーローラーの開口が貯留部材(サイフォンプレート)によって水封されているので、ドレンが波打っている状態であっても、シリンダーローラ内部の気体がサイフォン管に入ってしまうことを抑制できる。これにより、ドレンの排出効率を向上させることができる。また、サイフォン管の下流側にスチームトラップが配置されている場合であっても、気体がサイフォン管に入ってしまうことを抑制できるので、スチームロッキング現象が発生することを防止でき、ドレンの排出効率も向上する。
【0025】
なお、上述の実施形態の貯留部は、平面形状が環状であったが、開口を水封できる形状であれば、任意の形状を採用可能ある。例えば、
図5に示すようなサイフォンプレート(貯留部材)33′を用いてもよい。サイフォンプレート33′の貯留部331′は、平面形状が円形であって断面形状が椀型である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、シリンダードライヤーの内部に発生するドレンの排出効率を向上させるのに有用である。
【符号の説明】
【0027】
1 シリンダードライヤー
10 シリンダーロール
30 排出部
31 サイフォン管
32 水平管
33 サイフォンプレート(貯留部材)
311 開口
331 貯留部